説明

ガラス繊維結合剤組成物及びガラス繊維マット

【解決手段】有機ポリマーエマルジョンにポリオキシアルキレンアルキルエーテルを存在させたガラス繊維結合剤エマルジョン。
【効果】本発明によるガラス繊維結合剤の使用により、従来より柔軟性のあるガラス繊維マットが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維チョップドストランドマット等のガラス繊維製マットなど、ガラス繊維製織布又は不織布の製造に利用されるガラス繊維結合剤組成物、及びこれを用いて形成されたガラス繊維製マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維チョップドストランドマット等のガラス繊維製マットの結合剤には、特開昭52−99397号公報(特許文献1)、特開平6−108355号公報(特許文献2)、特開平9−143840号公報(特許文献3)、特開平10−101813号公報(特許文献4)に記載されるように、合成樹脂エマルジョン又は合成樹脂粉末が使用されてきた。合成樹脂エマルジョンの場合、粒子径が0.01〜1μmのため、ガラス繊維製マットに均一に付着するが、ガラス繊維の交点に効率的に付着しないため、接着力不足が発生する。このため、付着量を増やすということが行われるが、乾燥速度が遅い、コストが高くなるなどの問題が発生している。一方、合成樹脂粉末の粒子径は200〜500μmであるため、ガラス繊維交点への付着は効率的に行われる。ところが、散布という形式のため、粉末が飛散して作業環境を悪くする問題がある。また、付着が均一に行われないために、部分的に接着不良が発生するなどの問題が発生している。
【0003】
上記の問題を解決するため、いわゆる有機ポリマーを主成分とするエマルジョンが開発され使用されているが、得られたマットが硬く、柔軟性に欠けていた。このため、柔軟性を補うために可塑剤を添加する必要があるが、これは、時間経過とともに揮発し、品質劣化の原因になるなどの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述のガラス繊維チョップドストランドマット等のガラス繊維製職布・不織布の製造に使用できる結合剤であり、柔らかいマットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、有機ポリマーエマルジョンとこの有機ポリマーエマルジョンにポリオキシアルキルアルキレンエーテルを存在させることにより、上述した従来の問題点を解決し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、有機ポリマーエマルジョンの固形分にたいしてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを6〜20%存在させることを特徴とするガラス繊維結合剤組成物を提供する。
また、本発明は、柔らかいガラス繊維製マットを提供する。
本発明に係るガラス繊維結合剤組成物は、ガラス繊維製織布又は不織布用、特にガラス繊維チョップドストランドマット等のガラス繊維製マットの製造に好適に用いられるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のガラス繊維系結合剤組成物は、柔らかいマットが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、有機ポリマーエマルジョンの固形分にたいしてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを6〜20%である。
【0008】
本発明に用いられる有機ポリマーエマルジョンは、塩化ビニル樹脂系エマルジョン、(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、シリコーン樹脂系エマルジョン、エポキシ樹脂系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、SBRやNBR等のゴム系エマルジョン等のエマルジョンであり、これらの一種又は二種以上が使用される。より好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体系エマルジョン、SBRやNBR等のゴム系エマルジョン等のエマルジョンが用いられる。
【0009】
上述の有機ポリマーエマルジョン粒子表面の電荷は、アニオン、ノニオン又はカチオンのいずれの電荷を持つものでもよいが、弱アニオン又はアニオンが望ましい。
【0010】
上述の有機ポリマーエマルジョンを得るためには、不飽和単量体を乳化重合により合成してもよいし、市販されている有機ポリマーエマルジョンを使用してもよい。
市販されている有機ポリマーエマルジョンとしては、(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョンでは、日信化学工業(株)製のビニブラン2598、東亜合成(株)製のアロンA−104等が、スチレン/アクリル酸エステル共重合体系エマルジョンでは、日信化学工業(株)製のビニブラン2590、クラリアントポリマー(株)製のモビニール975A等が、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンでは、日信化学工業(株)製のビニブラン1006、コニシ(株)製のボンドCH−20等が、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体系エマルジョンでは、日信化学工業(株)製のビニブラン1245L、日栄化工(株)製のライフボンドAV−650Y4等が、ウレタン樹脂系エマルジョンでは、大日本インキ化学工業(株)製のハイドランHW−311、HW−333、三洋化成工業(株)製のパーマリンUA−150等が、エチレン/酢酸ビニル共重合体系エマルジョンでは、住友化学工業(株)製のスミカフレックスOM−4000等が、ゴム系エマルジョンでは、日本エイチアンドエル(株)製のナルスターSR−100、SR−112、日本ゼオン(株)製のNipol1561等がそれぞれ挙げられるが、この限りではない。
また、上述の有機ポリマーエマルジョンを乳化重合で得る場合、ラジカ重合で合成することが一般的である。この場合原料の単量体としては、ラジカル重合能を有する不飽和基含有単量体を使用する。
【0011】
乳化には公知の界面活性剤(アニオン系、ノニオン系、カチオン系等)が使用される。
【0012】
本発明は、特許2004−175772で開示されているエマルジョンにも適用され、優れた効果を発揮する。
【0013】
本発明で得られたガラス繊維結合剤組成物の一般的使用方法を述べる。ガラス繊維製織布・不織布、例えば、ガラス繊維チョップドストランドマットの場合、ガラス溶融炉の底部に取り付けられた多数のノズルからガラスフィラメントを紡出し、直後に酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン等からなる集束剤を付与して集束し、ストランドとした後、巻き取ってケーキを形成する。次にこのケーキを乾燥し、そこから複数本のストランドを引き出し、所定の長さに切断する。(これをチョップドストランドという)。
その後、これらの切断物を移動するネットコンベヤ上に均等にガラス繊維チョップドストランドマットを作製する。このガラス繊維チョップドストランドマットに熱硬化性樹脂を含浸させたえ熱硬化性樹脂を硬化させることによりFRPが作られる。
【0014】
塗布量は、ストランド切断物(ガラス繊維堆積物)に対して、通常0.5〜20重量%、望ましくは1〜10質量%である。塗布量が0.5質量%未満の場合、ガラス繊維製織布・不織布のガラス繊維間の接合力が不足するし、20質量%を超える場合、FRP作製時の熱硬化性樹脂の含浸性が低下する。また、塗布する際、本発明のガラス繊維結合剤組成物をそのまま使用してもよいし、水等で適宜希釈してもよい。
【0015】
塗布後の乾燥条件は、100〜200℃の温度で乾燥することが望ましい。
【0016】
本発明の方法で得られたガラス繊維結合剤組成物は、ガラス繊維製織布・不織布、具体的にはマット、特にガラス繊維チョップドストランドマット、グラスウールマット等のガラス繊維製マットの製造に適している。
【0017】
また、本発明で得られたガラス繊維結合剤組成物は、上述したガラス繊維集束剤としても利用できる。一般にガラス繊維集束剤は、フィルム形成剤、表面処理剤、潤滑剤、帯電防止剤等から成り、主成分であるフィルム形成剤として、本発明で得られたガラス繊維結合剤組成物を利用できる。
【0018】
更に、本発明で得られたガラス繊維結合剤組成物は、ガラスクロス等の織物の目止め剤としても利用できる。
【0019】
本発明の方法で得られたガラス繊維製マット用ガラス繊維結合剤組成物は、ガラス繊維チョップドストランドマット、グラスウールマット等のガラス繊維製マットの製造に適している。
【0020】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。なお、実施例中の部及び%は、重量部及び重量%を示す。
【実施例】
【0021】
アクリルエステル樹脂、ポリ酢酸ビニルを主成分とする固形分40%のエマルジョン(試料−1)と該エマルジョン固形分に対してポリオキシアルキレンアルキルエーテル7.5%添加した(試料−2)を作製し、それらを固形分3%に水で希釈する。そして、1mあたり450gの割合で均一に散布したガラス繊維にこの希釈液を飽和状態以上に含ませる。その後、吸引して、余分な希釈した当該ガラス繊維結合剤組成物を取り除く。次に、200度の乾燥炉で1分間乾燥してマットを製造し、引張強度、柔らかさを測定した。結果は第1表の通りである。
なお、評価試験において、1mあたり450gのマットのサンプルを縦150mm、幅100mmにカットする。引張強度の測定方法は、サンプルを幅方向で固定し、荷重を加えて、切断したときの荷重を引張強度とした。また、やわらかさの測定方法は、同上のサンプルを幅方向に固定し、それを30秒間放置する。放置前後の垂直方向の距離の差を柔らかとした。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示した割合で混合したガラス繊維結合剤組成物を使用して、マットにした試験結果を表2に示す。
【0024】
【表2】

【0025】
表2のガラス繊維結合剤組成物の使用量は、マットのガラス繊維に対して0.6重量%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ポリマーエマルジョンにポオキシアルキレンアルキルエーテルを存在させたガラス繊維結合剤組成物
【請求項2】
有機ポリマーエマルジョンの固形分にたいしてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを6〜20%存在させたガラス繊維結合剤組成物
【請求項3】
有機ポリマーエマルジョンが、(メタ)アクリル酸エステル樹脂系エマルジョン、スチレン/アクリル酸エステル共重合体系エマルジョン、酢酸ビニル樹脂系エマルジョン、酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸エステル共重合体系エマルジョン、ウレタン樹脂系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、ゴム系エマルジョンから選ばれた一種又は二種以上である請求項1又は2記載のガラス繊維結合剤組成物。
【請求項4】
請求項1、2、3で結合されたガラス繊維マット。

【公開番号】特開2008−95053(P2008−95053A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300882(P2006−300882)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000102924)エヌビイエル株式会社 (22)
【Fターム(参考)】