説明

ガンの予後のためのマーカー候補を分析および最適化するための方法およびコンピュータープログラム製品

ある疾患に罹患している患者についての予後を確立するために使用される1つ以上のマーカーを評価および最適化するための方法およびコンピュータープログラム製品が提供される。さらに詳細には、この方法は、組織学的スライドのような身体サンプルの画像から抽出され得る多数の特徴を体系的に評価するための工程であって、このサンプルが1つ以上のバイオマーカーに対して曝されて、1つ以上の抽出された特徴に基づいて予後的な決定規則を確立され、その結果、実際の患者転帰の予測に最適である予後がこの決定規則によって得られる工程を包含する。このように、この方法およびコンピュータープログラム製品によって、有効な患者の治療管理のためのストラテジーを臨床家が開発することを補助する最適の予測的な予後が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ガンに罹患している患者の予後を確立するのにおける使用のための候補であり得るバイオマーカーを選択、分析および最適化するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
遺伝子増幅、遺伝子欠失および遺伝子変異は、異常なタンパク質発現を通じた異常な細胞挙動において顕著な役割を有することが公知である。懸念のある細胞挙動の範囲は、かなり多様な挙動、例えば、増殖または分化の調節を包含する。従って、例えば、種々の形態のガンのような複雑な疾患における有用な研究、診断および予後のツールを容易にするためには、遺伝子の増幅、欠失および変異、mRNA数量化またはタンパク質発現の分析における有効な検出および数量化が必要である。
【0003】
遺伝子の増幅、欠失および変異における検出および数量化、mRNA数量化またはタンパク質発現分析に関する多くの実験室技術が存在する。例えば、このような技術としては、ウエスタンブロット、ノーザンブロットおよびサザンブロット、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、酵素連結免疫分離アッセイ(enzyme−linked immunoseparation assay)(「ELISA」)、および競合的ゲノムハイブリダイゼーション(「CGH」)技術が挙げられる。しかし、顕微鏡は、慣用的に利用される。なぜなら、これは、細胞レベルでおよび細胞下のレベルで迅速な検討を可能にするが、比較的低コストで迅速に行なわれ得る情報技術であるからである。
【0004】
顕微鏡が選択された実験室技術である場合、この生物学的サンプルは、特定の検出および顕色準備を最初に受けている。一旦サンプルを調製すれば、専門家は代表的には定量的な研究において顕微鏡のみで、または定量的および一般的には標準化された研究においてカメラおよびコンピューターと組み合わされた顕微鏡でサンプルを分析する。ある場合には、この顕微鏡は、完全に自動の分析のために構成されてもよく、この顕微鏡は、電動のステージおよび焦点、電動の対物チェンジャー、自動の光強度制御装置などで自動化されている。
【0005】
検出のためのサンプルの調製は、例えば、ハイブリダイゼーションに基づくそして免疫標識に基づく準備技術のような、顕微鏡的な画像化分析に適している種々のタイプの準備技術に関与し得る。このような検出技術は、例えば蛍光ベースの技術そして可視色反応に基づく技術のような適切な顕色技術と組み合わされてもよい。
【0006】
インサイチュハイブリダイゼーション(「ISH」)および蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(「FISH」)は、例えば、遺伝子情報増幅および変異技術における検出および数量化のために用いられる検出および顕色技術である。ISHおよびFISHは両方とも、組織学的または細胞学的サンプルに適用され得る。これらの技術は、対応する正確な配列を認識するために特定の相補的なプローブを用いる。用いられる技術次第で、特定のプローブは、比色定量(cISH)マーカーまたは蛍光(FISH)マーカーを包含してもよく、次いで、このサンプルは、それぞれ透過顕微鏡または蛍光顕微鏡を用いて分析される。比色定量マーカーまたは蛍光マーカーの使用は、その使用者の目的に依存し、各々のタイプのマーカーは、特定の状況では他に比べて対応する利点を有する。
【0007】
画像化および顕微鏡技術は、遺伝子増幅、遺伝子欠失、遺伝子変異および異常なタンパク質発現を検出および/または定量するために用いられ得る、比色定量マーカーまたは染色の読み取りを最適化および標準化するように開発されており、これらのマーカーまたは染色は、ガンのような疾患の診断および/または予後の決定において補助し得る、異常な細胞活性を強調するように選択された適切なマーカーで処理された組織切片スライドを分析する際に可視化され得る。
【0008】
このような方法は、所定の組織サンプル内の標的分子種の定量的測定を行うために有用であるが、さらなる分子種がさらなるバイオマーカーにより、同じ組織サンプル内で強調される場合、それらは、直ちに認知できなくてもよく、そして組織サンプルをさらに体系的に分析して、ガンのような複雑な疾患に罹患している患者のさらに正確な予後を臨床家が得ることを可能にするためには、このような特徴を同定および定量する必要性が存在する。例えば、多くのタイプのガンでは、初期段階で診断される患者のうちわずかな割合が最終的に、10年内の疾患再発、転移または死亡のように、10年転帰が劣っている。しかし、初期段階で診断されたほとんどの癌患者が、良好な10年予後を有し、そしてさらなる積極的なアジュバント療法(例えば、化学療法)を必要とすることはなく、またはその利点も無いようである。例えば、現在の臨床コンセンサスとは、少なくともある程度の初期段階のリンパ節転移陰性の乳癌患者は、アジュバント化学療法を受けなければならないというものであるが、現在のところ、さらに積極的な治療のために患者をリスク分類するためのFDAの承認したアッセイは無い。これらの初期段階の乳癌患者のほとんどが、外科療法および/または放射線療法後にさらなる処置なしで長期生存を享受するので、これらの患者の全てについて、詳細にはガン化学療法に関連する有意な副作用という観点では、積極的なアジュバント療法を推奨することは不適切であると考えられる。良好な予後群および悪い予後群への最初の診断の時点で初期段階の乳癌患者のこれらの集団の識別を可能にする組成物および方法は、処置の適切な経過を選択するのにおいて臨床家を補助する。従って、乳癌患者、詳細には、初期段階の乳癌患者の予後を評価するための方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の予後基準およびマーカーの定量的なビデオ顕微鏡分析では、患者の転帰を予測することおよび処置の適切な経過を選択することにおいていくつかの手引きが得られるが、臨床的なビデオ顕微鏡データを利用して最適に特異的かつ感度のよいガン予後を、詳細には初期段階の患者で得る、体系的な方法が大いに必要とされる。さらに、ビデオ顕微鏡を介して同定された候補マーカーおよびその特徴を同定および評価して、ガンの予後の評価を補助するための方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
ガン患者の予後を決定するために適合した少なくとも1つのマーカーを分析するか、および/または評価するための方法およびコンピュータープログラム製品が提供される。ガン患者の予後を決定するために少なくとも1つのマーカーを分析するための方法は以下の工程を包含する:少なくとも1つのマーカーに対して身体サンプル(ガン患者から採取した)を曝露する工程と;画像処理システムを用いて少なくとも1つのスライドから撮った画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する工程であって、この少なくとも1つのスライドが、身体サンプルから調製される工程と;この少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して決定規則を適用して、この少なくとも1つの定量化可能な特徴とこの決定規則との間の関係に基づいてこのガン患者の予後を決定する工程。少なくとも1つのマーカーを分析するための方法のいくつかの実施形態では、この適用工程がさらに、上記少なくとも1つの定量化可能な特徴に対してある閾値を適用して、この少なくとも1つの定量化可能な特徴とこの閾値との間の関係に基づいてガン患者の予後を決定する工程を包含する。少なくとも1つのマーカーを分析するための方法のさらに別の実施形態では、この適用工程は、上記閾値について見なし(affectation)規則を適用する工程をさらに包含し、この見なし規則は、この閾値に関連する少なくとも1つの定量化可能な特徴のうちのある値に対応する良好な予後または不良な予後のいずれかを確立し得る。
【0011】
少なくとも1つのマーカーを評価するための方法は、この少なくとも1つのマーカーに対して複数の身体サンプルを曝露する工程であって、この複数の身体サンプルは、各々既知の転帰を有する、対応する複数の患者から採取されている工程を包含する。この方法は、画像処理システムを用いて複数のスライドの各々から採取した画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する工程をさらに包含する。この複数のスライドは、各々の患者に対応する複数の身体サンプルから調製され得る。さらに、この方法は、この複数のスライドの各々の少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して複数の候補の決定規則を適用して、この複数のスライドの各々について対応する候補予後を得る工程と;最適な決定規則を選択する工程であって、この最適な決定規則は、少なくとも1つの定量化可能な特徴に関しては、この候補決定規則から選択される工程とを包含する。最適な決定規則とは、この複数のスライドの各々についての候補予後がこの複数の患者の各々についての既知の転帰に最適に対応するものとする。例えば、最適な決定規則は、候補決定規則の各々についての特異性および感度を決定すること、そして(1,1)という最適の特異性と感度との対に最も近い特異性および感度を有する決定規則を選択することによって選択され得る。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態および本発明のコンピュータープログラム製品は、少なくとも1つのマーカーの統計的な独立性を評価して、この少なくとも1つのマーカーが、少なくとも1つの相補的なマーカーと実質的に統計的に独立している予後を提供し得ることを保証する工程をさらに包含する。さらに詳細には、上記の評価工程は、いくつかの実施形態では、以下の工程をさらに包含し得る:第一に、観察された転帰の頻度分布を、この少なくとも1つのマーカーに、および少なくとも1つの相補的なマーカーに曝された第一の複数の身体サンプルについての理論上の予後の頻度分布と比較する工程であって、この第一の複数の身体サンプルが公知の良好な転帰を有する患者に対応している工程と;第二に、観察された転帰の頻度分布を、この少なくとも1つのマーカーに、および少なくとも1つの相補的なマーカーに曝された第二の複数の身体サンプルについての理論上の予後の頻度分布と比較する工程であって、この第二の複数の身体サンプルが既知の不良な転帰を有する患者に対応している工程と;そして最終的に、この少なくとも1つの相補的なマーカーに関してこの少なくとも1つのマーカーの独立性を評価する(ある場合には、カイ二乗分析を用いて)工程。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、評価するための方法の適用工程は、各々の定量化可能な特徴に対して複数の候補閾値を適用して、この複数の身体サンプルの各々についてのこの複数の候補閾値の各々に対応する複数の候補予後を行う工程をさらに包含してもよい。さらに、この選択工程は、この複数のスライドの各々についての候補予後が、各々の複数の患者について既知の転帰に対して最適に対応するように、この複数の候補閾値から最適閾値を選択する工程をさらに包含してもよい。このような最適の閾値は、ある身体サンプル(例えば、組織学的スライド)に対して、マーカーの特定の定量化可能な特徴について決定された所定の値を適用した後に、その値を分類する、コンピューター制御された画像処理システムによる使用のためのツールを、例えば提供し得る。最適の閾値の上または下のいずれかとして一旦分類されれば、次いでこの所定の値を、適用された決定規則の結果に変換してもよく、次にこれを用いて、身体サンプルを採取した患者の予後を確立してもよい。
【0014】
他の実施形態では、この適用工程は、複数の候補閾値の各々について見なし規則を決定する工程をさらに包含してもよく、この見なし規則は、この複数の候補閾値の各々に関して、少なくとも1つの定量化可能な特徴の値に対応する良好な予後または不良な予後のいずれかを確立し得る。
【0015】
本発明の種々の実施形態によれば、この方法は、少なくとも1つのマーカーに対して複数の身体サンプルを曝露する工程を包含し得、このマーカーは、以下から選択され得る:比色定量バイオマーカー、SLPI、PSMB9、NDRG−1、Muc−1、ホスホ−p27、src、E2F1、p21ras、p53;およびそれらの組み合わせ。さらに、いくつかの実施形態では、この方法は、各々の複数のスライドから撮った画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する工程であって、この定量化可能な特徴が画像処理システムにより検出可能および定量化可能である工程を包含し得る。このような定量化可能な特徴としては以下を挙げてもよい:透過率;光学密度;細胞の形態;細胞タイプの割合;およびそれらの組み合わせ。
【0016】
上記でまとめられたこの方法工程はまた、コンピューターデバイス(例えば、染色された組織学的スライドの画像を捕獲するために適切である、顕微鏡システムおよび/または画像分析システムと組み合わされたコンピューターデバイス)上で実行可能な、そして上記の方法実施形態と関連した種々の機能を達成し得る、1つ以上の適切なコンピュータープログラム製品で実現され得てもよい。例えば、1実施形態によれば、ガン患者の予後を決定する画像処理システムを制御し得るコンピュータープログラム製品が提供され、このコンピュータープログラムは以下を含む:(1)画像処理システムを用いて複数のスライドの各々から撮った画像からある特徴を抽出するための実行可能部分であって、この複数のスライドが複数の患者から採取した複数の身体サンプルから調製されており、この各々の患者の転帰が既知であり、この複数の身体サンプルは、少なくとも1つのマーカーに曝されている、実行可能部分と;(2)この複数のスライドの各々の特徴に対して複数の候補決定規則を適用して、この候補決定規則および特徴の各々の可能な組み合わせについて候補予後を得るための実行可能部分と;(3)最適な予後に対応する最適な決定規則を選択するための実行可能部分であって、この最適な決定規則が、この特徴について候補決定規則から選択され、この最適な決定規則は、この複数のスライドの各々についての最適な予後が患者の各々について既知の転帰に最適に対応するものとする実行可能部分と。
【0017】
従って、最適な決定規則は、複数の患者の既知の転帰に基づいて、複数の患者の既知の転帰に比較した場合、予後が与える偽陽性の予後および偽因性の予後の数が最小になるような少なくとも1つの定量化可能な特徴を有する、少なくとも1つのマーカーの包括的な分析に基づく予後を提供し得る。従って、一旦選択すれば、この最適な決定規則を利用して、定量化可能な(例えば、画像処理システムにおける分析によって)1つ以上の特徴を有する1つ以上の比色定量マーカーの分析を最適化して、さらに正確に良好なまたは不良な転帰を予測し得る患者予後を得てもよい。従って、本発明の方法およびコンピュータープログラム製品によって、臨床家は、所定のマーカー(または1組のマーカー)を利用して、特定の疾患の初期段階の徴候しか示していない患者においてさえ不良な転機の頻度を予測することが可能になり得る。
【0018】
本発明を一般的な用語で記載してきたが、ここで添付の図面について言及する。この図面では、必ずしも一定の縮尺で記載していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、癌患者の予後を確立するのにおける使用のためのマーカーの候補を評価および最適化するための方法を提供する。以下に記載されるマーカー(およびその特定の特徴)は、乳癌患者、そしてさらに詳細には、初期段階の乳癌患者の予後を確立するには特に有用であるが、本明細書に開示された方法は、特定のタンパク質または例えば、比色定量バイオマーカー(マーカー)を介して染色しやすい他の標的分子の過剰発現に対して(例えば、臨床データを介して)関連し得る任意の疾患に罹患している患者の予後を確立するのにおける使用のためのマーカー候補物を評価および最適化するのに利用され得る。従って、当業者は、本明細書に開示される方法が、マークされて引き続き顕微鏡を介して分析され得るタンパク質または標的分子の発現に関連する、他の形態のガンまたは他の疾患を有する患者の予後を確立するのにおける使用のためのマーカーの分析および最適化に適用可能であり得るということを理解する。
【0020】
本明細書に開示される方法はまた、選択された処置に対する乳癌患者の応答を予測するのに有用であり得るマーカーを評価するのに用途を見出す。「選択された処置に対する乳癌患者の応答を予測すること(predicting the response of a breast cancer patient to a selected treatment)」とは、ある患者が特定の処置で正または負の転帰を被る可能性を評価することであるものとする。本明細書において用いる場合、「正の処置転帰の暗示(indicative of a positive treatment outcome)」とは、選択された処置から患者が有益な結果(例えば、完全または部分的な寛解、腫瘍サイズの減少など)を受ける可能性の増大をいう。「負の処置転帰の暗示(indicative of a negative treatment outcome)」とは、背景にある乳癌の進行に関して選択された処置から患者が利益を受けない確率の増大を意味する。本発明のいくつかの局面では、選択された処置とは化学療法である。
【0021】
本明細書に開示される方法はまた、ガン、詳細には乳癌を同定または診断するのにおいて有用なマーカーを評価および/または最適化するのに用途を見出し得る。「乳癌を診断する(diagnosing breast cancer)」とは、例えば、乳癌の存在を診断または検出すること、疾患の進行をモニタリングすること、および乳癌の指標である細胞またはサンプルを同定または検出することを包含するものとする。ガンを診断、検出および同定するという用語は、本明細書において交換可能に用いられる。特定の実施形態では、本発明の方法は、所定のマーカーが身体サンプル(例えば、染色された組織学的スライドまたは細胞学的スライド)において過剰発現されるかまたは発現低下を妨げるかのいずれかである場合、このマーカーの検出によって特徴づけおよび/または診断され得る、乳癌または他の疾患を診断するのにおいて最も有効であるマーカーおよび/またはマーカーの組み合わせを最適化することによって、初期段階の乳癌の検出を容易にし得る。
【0022】
本明細書に記載される方法は、所定のマーカー(バイオマーカーまたは比色定量バイオマーカー)であってその過剰発現が所定の患者の良好な転帰または不良な転帰のいずれかの指標であり得るマーカーの選択された特徴に対する複数の閾値の適用に関する。当業者は、本発明の方法が、例えば、黒色腫の場合には発現の低下を示すメラスタチンのような発現低下を示すマーカーに適用され得るということを理解する。さらに、本発明の方法によって、1つ以上のバイオマーカーに曝されている組織サンプル(例えば、調製された組織学的スライド)の比色定量分析によって強調され得る定量化可能な特徴(およびそれに適用される複数の閾値)の体系的な分析に基づいて、ガンがないままである可能性が高い(すなわち、予後が良好)患者から、疾患再発を被る可能性が高い(すなわち、予後が不良)患者の識別が可能になる。さらに詳細には、本発明の方法は、マーカー(例えば、比色定量バイオマーカー)に曝されている所定の組織サンプルの特徴を評価する工程、ならびにこのマーカーがこの特徴に関して分析され得るように各々の特徴の最適の閾値を選択し、そしてこのマーカー/閾値の組み合わせが既知の実際の患者の転帰に比較した場合最も正確である予後を与えるように対応する最適閾値を選択する工程といった体系的なプロセスを包含する。従って、本発明の方法はマーカー、その特徴および各々の特定の特徴についての閾値の最適の組み合わせを選択して、初期段階のガン患者のより正確な予測を得るためにさらに用いられ得る。
【0023】
本発明によって評価されるバイオマーカーとしては遺伝子およびタンパク質が挙げられる。このようなバイオマーカーとしては、このバイオマーカーをコードする核酸配列の全体または部分的配列、またはこのような配列の相補体を含むDNAが挙げられる。バイオマーカー核酸としてはまた、目的の任意の核酸配列の全体または部分的な配列を含むRNAが挙げられる。バイオマーカータンパク質は、本発明のDNAバイオマーカーによってコードされるかまたはそれに対応するタンパク質である。バイオマーカータンパク質は、任意のバイオマーカータンパク質またはポリペプチドの全体的または部分的なアミノ酸配列を含む。
【0024】
「バイオマーカー(biomerker)」とは、組織または細胞中でのその発現レベルが正常または健常な細胞または組織の発現レベルに比較して変更されている任意の遺伝子またはタンパク質である。本発明の1実施形態によるバイオマーカーは、その過剰発現がガンの予後と、そして詳細には本明細書に提示される実施例では、乳癌の予後と相関している遺伝子またはタンパク質である。ある場合には、患者サンプルにおける目的のバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせの選択的な過剰発現は、乳癌の予後が劣っていることの兆候である。「予後が劣ることの兆候(indicative of poor prognosis)」とは、この特定のバイオマーカーの過剰発現が、背景にあるガンもしくは腫瘍、転移のぶり返しもしくは再発、または5年未満の死亡の可能性の増大を伴っているものとする。予後が劣ることの徴候であるバイオマーカーは、本明細書において、「悪い転帰のバイオマーカー(bad outcome biomerkers)」と呼ばれ得る。本発明の他の局面では、目的のバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせの選択的な過剰発現は良好な予後の徴候である。本明細書において用いる場合、「良好な予後の徴候(indicative of good prognosis)」とは、患者が少なくとも5年間ガンのないままである確率の増大をいう。このようなバイオマーカーは、「良い転帰のバイオマーカー(good outcome biomerkers)」と呼ばれ得る。
【0025】
本発明の方法によって評価され得るバイオマーカーとしては、その過剰発現が上記のようなガンの予後と相関する任意の遺伝子またはタンパク質が挙げられる。バイオマーカーとしては、ガンの予後が劣る徴候である遺伝子およびタンパク質(すなわち、悪い転帰のバイオマーカー)、および良好な予後の徴候である遺伝子およびタンパク質(すなわち、良好な転帰のバイオマーカー)が挙げられる。特定の目的のバイオマーカーとしては、細胞の成長および増殖の調節、細胞周期の制御、DNA複製および転写、アポトーシス、シグナル伝達、血管形成/リンパ形成または転移に関与する遺伝子およびタンパク質が挙げられる。いくつかの実施形態では、このバイオマーカーは、組織再構築に関与するプロテアーゼ系、細胞外マトリックス変性および隣接組織の浸潤を調節する。任意のバイオマーカーであってその過剰発現がガン予後の徴候であるバイオマーカーは、本発明の方法において分析および/または利用され得るが、乳癌の予後を評価する特定の実施形態では、バイオマーカーは、SLPI、p21ras、MUC−1、DARPP−32、ホスホ−p27、src、MGC14832、myc、TGFβ−3、SERHL、E2F1、PDGFRα、NDRG−1、MCM2、PSMB9、MCM6およびp53からなる群より選択される。さらに好ましくは、乳癌の予後を確立するのにおける目的のバイオマーカーは、SLPI、PSMB9、NDRG−1、Muc−1、ホスホ−p27、src、E2F1、p21rasまたはp53を含む。本発明の1局面では、本明細書に含まれる実験的な実施例に図示されるように、乳癌予後を評価するための方法は、E2F1ならびにSLPI、src、ホスホ−p27、p21rasおよびPSMB9からなる群より選択される少なくとも1つの他のバイオマーカーの過剰発現を検出する工程を包含する。
【0026】
本明細書において考察される「特徴(feature)」という用語は、所定のマーカーおよび/またはバイオマーカーに対する曝露によって身体サンプル中で生成された知覚可能および/または定量化可能な変動をいう。特徴としては、例えば、顕微鏡技術および画像処理システムを用いて検出され得る、比色定量マーカー(上で考察されるマーカーを含む)の染色特徴によって生成される透過率または光学密度値の変動を挙げることができる。このような顕微鏡技術および/または画像処理システムを用いて、目的の特定のバイオマーカーの存在を視覚的に示すように染色した(従って、対応する、目的の特定のタンパク質および/または標的分子の存在を示す)後に、生物学的サンプルの画像を得る。これらの方法および関連のシステムのいくつか、例えば、参照によって本明細書に援用される、Marcelpoilらに対する米国特許出願09/957,446号(第‘446号出願)およびMarcelpoilらの米国特許出願10/057,729号(第‘729号出願)に開示されるものは、画像システムおよび関連のソフトウェアによって決定されるような、それぞれカラー色素マーカーの光学密度または透過値によって示される代表的なカラー色素マーカーの存在に基づいて、所定の画像に存在する各々の分子種の相対量を決定するための、画像処理システム、方法および関連のコンピュータープログラム製品の使用を開示する。これらの技術によって、各々の標的分子またはタンパク質であってその過剰発現が組織サンプルスライドに適用された比色定量バイオマーカーによって明らかにされ得る分子またはタンパク質の相対量の定量的な決定をさらに行うことができる。例えば、所定のマーカーの特徴の発現は、マークされた組織サンプルスライドのデジタル画像を用いて明らかにされ得、ここでこのマーカーは、その成分の赤、緑および青(RGB)の色の部分から色素原分離を用いてバックグラウンド染色および/または他のマーカーから分離され、その結果このマーカーの相対的な(バックグラウンドの染色および/または他のマーカーからの染色に対する)寄与は、患者から採取された身体サンプル内の細胞または目的領域(ROI)内で決定され得る。
【0027】
本発明の種々の実施形態によれば、種々の特徴(定量化可能および定量化不能の両方)は、目的領域(ROI)、種々の視野(FOV)または全体的な組織学的スライドの画像を捕獲し、かつその中に規定される形態学的境界、例えば、核、細胞質および細胞膜を含む細胞の種々の領域を決定し得る画像処理システムを用いて、マークされた組織サンプル(例えば、比色定量バイオマーカーで染色された調製された組織学的スライド)から撮った画像から抽出され得る。スライドおよび/または身体サンプル内の形態学的境界を決定するためのこの画像処理工程は、分割(セグメンテーション)として公知である。目的領域(ROI)は、種々の実施形態に従って、スライド全体、スライドの一部、スライドの別個の選択された部分および/またはFOV全体にまたがってもよい。形態学的な境界の正確な分割(顕微鏡および/または画像分析を介する)が多くの特徴の決定に必要である。なぜなら、種々の異なるバイオマーカータイプが所定の身体サンプルの細胞内の別個の細胞下位置を示すからである。例えば、いくつかのバイオマーカーは、細胞の核内でのみ標的分子の過剰発現を明らかにする。他のマーカーは、細胞の細胞質内のまたは細胞膜内の標的分子の過剰発現を明らかにし得る。例えば、表1は、乳癌の予後および/または診断を確立するのに用いられるいくつかのマーカーを示しており、これは細胞下位置の各々の領域にそって列挙されている。
【0028】
例示的な特徴の添付の付表に記載されるとおり、特定の細胞記述子特徴、例えば、CELL、CYTO、MEMBおよびNUCL(それぞれ、細胞、細胞質、細胞膜および細胞の核をいう)は、身体サンプルの細胞内の位置記述子として機能し、ここで特定のマーカーによって示される特徴は、例えば、色素または染色液の色素原分離を用いて検出および/または定量化され得る。
【0029】
また、添付の付表に示されるのは、所定のバイオマーカーまたはバイオマーカーの組み合わせの予後値を最適化するために、本発明の方法によって抽出、試験および/または定量化され得る種々のバイオマーカーの多数の他の例示的な特徴である。この特徴は、以下のように一般に分類される:形状記述子特徴;質感および/またはヒストグラムの記述子特徴(特定のバイオマーカーによって強調され得る標的分子過剰発現の量および変動に関して主に統計的な決定をいう);スペクトル記述子特徴(例えば、標的分子の過剰発現を明らかにするために用いられ得る種々の比色定量バイオマーカーおよび/または対比染色の透過率または光学密度);階層的な記述子特徴(画像システムによって捕獲される階層的な対象物に対して定量化可能な特徴を計算するために用いられる);および細胞記述子特徴(CELL、CYTO、MEMBおよびNUCLを含む)(上記され、そして例示的な特徴の付表に詳細であるとおり)。一般に上記され、そしてそこに添付される付表にはさらに詳細である特徴の列挙は、排他的であるということを意味せず、そして例としてのみ機能するということを意味する。本発明の方法は、種々の異なる定量化可能な特徴(およびそれらの種々の組み合わせ)を利用して、所定のマーカーまたはマーカーの組み合わせの予後値を最適化し得る。本発明のコンピュータープログラム製品の実施形態によれば、本明細書に記載される特徴は、目的領域(ROI)をマーク、細胞または組織サンプルの種々の区画および成分を区分する、および/または成分RGB部分へ染色液または色素を分解する能力を有する画像処理システムを制御して、透過率、輝度、光学密度および/または他のスペクトル的な特徴を決定するように構成された、例えば、制御装置(例えば、コンピューターデバイス)によって自動方式で検出され得る。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、上記および他の特徴を組み合わせて、所定の患者の診断および/または予後を得る目的のために有用性を有し得る定量化可能な特徴を作成するために、いくつかのタイプの背景にある特徴を組み込む略式の特徴を作成してもよい。このような略式の特徴を構築するためには、他のさらに特異的な特徴を定量化して、試験し、バイオマーカーおよび/またはバイオマーカーの収集によって強調された特徴から予後および/または診断の値を得るために臨床家の探究にさらに重要性をある場合には有し得る略式の特徴を作成してもよい。例えば、本明細書に記載される実験的な実施例では、利用される特徴としては、身体サンプル(例えば組織学的スライド)において同定された特定の目的領域(ROI)において強調され得る細胞の所定の収集物に存在するとみなされる種々の段階のガン細胞の数字的な割合が挙げられる。当業者は、病理学者が、目的領域(ROI)(例えば、周囲の領域よりも濃く染色されると考えられる組織学的スライドの領域)に存在するマーカーの程度を確認することによって例えば顕微鏡を介してみられるようなマーカーで染色されている細胞を「類別(grade)」し得るということを理解する。病理学者による視覚的な類別は、細胞に存在するマーカーの相対的なレベルを確認するために有用であるが、このような類別はかなり主観的であって、種々の臨床家によって、そして種々の状況で変化し得る。従って、本発明における略式の特徴を構築するには、疑わしいガン細胞を例えば、0(標的された細胞区画に存在するマーカーの完全な欠失を示す)、1(標的された細胞区画に存在するある程度少量のマーカーを示す)、2(標的された細胞区画に存在するマーカーの中度のレベルを示す)または3(標的された細胞区画に存在する高レベルのマーカーを示す)としてより客観的に類別してもよい。このような類別は、ビデオ−顕微鏡システムおよび/または画像処理システム、例えば、第‘446号出願および第‘729号出願に開示されるようなシステムを用いて自動方式で達成され得る。下で表2においてまとめるとおり、本発明の1実施例によれば、NUCL、CYTO、MEMB、DYE2、ODおよびMEANによって示される特徴を組み合わせて、ある範囲の値を有する光学的な透過値を得てもよく、この値は、所定の細胞で所定の比色定量バイオマーカー(またはある場合には、その比色定量成分)(例えば、「DYE2」で示される)のレベルを決定するために区分され得る。同じ色素を用いて、所定のバイオマーカーを比色定量バイオマーカー(例えば、通常用いられる色素染色液、例えば、DABまたは当業者に周知の他のものなど)にさせてもよいが、本発明によって評価される種々の異なるバイオマーカーは、種々の細胞区画(例えば、核、細胞膜および/または細胞質)における標的分子の存在を明らかにし得る。この例示的な閾値(透過率の値に対応する)は、表2で示される場合、以下のカテゴリーのうちの1つへ各々の可視細胞をこのように送り出し得る:0、1、2または3。非染色細胞の期待される数に対応するカテゴリー0の評価(すなわち、マーカーに曝された場合、標的分子の過剰発現を示さないことが見出された細胞)は、画像処理システムおよび/または顕微鏡を用いて行われてもよい。0(非染色)細胞の適切な数はさらに、1、2および3つの細胞領域の算出(下に列挙される決定を用いる)から、この特定の実施形態において得られる、平均腫瘍細胞面積(例えば、CELL_AERAと呼ばれる特徴から評価される1100ピクセル(例示的な特徴の付表を参照のこと))を用いて算出され得る:
【0031】
【化1】

他の実施形態では、細胞数は、細胞領域を決定する以外の方法を用いて算出されてもよい(例えば、核に局在するマーカーで染色されるFOV内の核をカウントすることによって)。一旦、0、1、2および3の細胞タイプの数(それぞれ、N、N、NおよびN)が決定されれば(例えば、表2に示される種々の閾値を用いて)、0、1、2および3の細胞の割合が算出され得る。表3は、所定の割合で反映される細胞のタイプを示す数的な識別子とともに接頭語CELL_PERCENTを用いてこれらの新規な略式の特徴の名称を示す。これらの例示的な略式の特徴は、単なる割合として算出され得る。例えば、CELL_PERCENT_0は、以下のように算出され得る:
【0032】
【化2】

上記のCELL_PERCENTの略式の特徴は、本明細書に記載の実験的な実施例において用いられるが、多数の可能性のある定量化可能な特徴は、本発明の方法およびコンピュータープログラム製品の実施形態の一部として評価され得る。例えば、例示的な特徴の付表に開示される1つ以上の比色定量特徴(例えば、画像分析システムを用いて、染色された組織学的スライドの分析に関連する)を組み合わせて別のタイプの略式の特徴を形成してもよく、またはこの付表に記載される個々の特徴を個々に用いて分析してもよい。
【0033】
上記の種々の特徴および略式の特徴を身体サンプル(またはそれから調製されるスライド、例えば組織学的スライドなど)を染色するために用いられ得る1つ以上のマーカーの分析において適用して、ガン患者(例えば、初期段階の乳癌患者)の予後を確立(またはその確立を補助)してもよい。本発明の実施形態によれば、マーカーまたはその特徴の種々の組み合わせを、本発明の実施形態を用いて評価して、所定のマーカーまたはマーカーの組み合わせの感度および特異性が最適化され得るように、特徴、特徴の閾値(例えば、所定の目的領域(ROI)における2型ガン細胞の所定のCELL_PERCENT)およびマーカーのタイプの最適の組み合わせを確立してもよい。さらに、他のタイプの患者ベースの特徴を、以下のような(限定はしないが)本明細書に開示される特徴と組み合わせてもよい;患者年齢;患者の医学的既往歴;およびガン患者の可能性のある予後および/または診断を示す他の要因。例えば、リンパ節転移、腫瘍サイズ、組織学的等級、エストロゲンおよびプロゲステロンのレセプターレベル、Her2/neu状態、腫瘍倍数性および家族歴は全てが、初期段階の乳癌患者の予後の達成を補助する予後因子および/または診断因子であり得る。
【0034】
本発明の方法およびコンピュータープログラム製品を用いて、特徴、閾値およびマーカーの組み合わせを効率的にかつ体系的に分析し、そして評価して任意の所定のガン患者の予後を確立するのにおける最適の特異性および感度を決定してもよい。本発明の方法およびコンピュータープログラム製品では、特異性および感度を評価するためのエンドポイントは、予後(例えば、特定の候補マーカーおよび/または対応する候補の特徴(単数または複数)を用いて予測された転帰)と実際の臨床的な転帰(すなわち、患者がガンなしのままであるか、または5年以内に再発を被るか)との比較である。図2に示されるとおり、多数の候補の特徴/閾値の組み合わせによって得られる候補予後を、本発明の方法において用いられる身体サンプルの既知の転帰に基づいて示される4つの象限のマトリックスにプロットして、下にさらに詳細に記載されるような、所定のマーカー/特徴(および/または決定規則)の組み合わせによって得られた真の陽性210、真の陰性240、偽の陽性220および偽の陰性230の予後の数を決定してもよい。真の陽性210、真の陰性240、偽の陽性220および偽の陰性230の予後の相対的な数を算出した後、特徴的な感度および特異性の対を算出して、予後ツールとしてマーカー/特徴/決定規則の組み合わせの有効性を評価してもよい(下にさらに詳細に記載されるように)。
【0035】
本明細書において用いる場合、「特異性(specificity)」とは、本発明の方法が真の陰性を正確に特定し得るレベルをいう。臨床研究では、特異性は、真の陰性の数を真の陰性および偽陽性の合計で割ることによって算出される(図2の象限において候補予後をプロットすることによって決定されるように)。「感度(sensiitivity)」とは、本発明の方法が、真に陽性であるサンプルを正確に特定し得るレベルであるものとする。感度は、臨床研究において真の陽性の数を真の陽性および偽因性の合計で割ることによって算出される(また図2の象限において候補予後をプロットすることによっても決定される)。いくつかの実施形態では、開示された方法によってカバーされないマーカー、特徴および閾値の所定の組み合わせの感度は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。さらに、本発明の評価方法によって到達可能な特異性は好ましくは少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。
【0036】
本明細書において用いる場合、「真の(true)」および「偽の(false)」陽性および陰性という定義は、このマーカーまたはマーカーの組み合わせが、良好な転帰のマーカーとみなされるかまたは不良な転帰のマーカーとみなされるかに基づく。すなわち、良好な転帰のマーカー(すなわち、良好な予後の徴候)の場合、「真の陽性(true positive)」とは、本発明の方法(例えば、免疫組織化学による陽性染色)によって決定される場合、目的のバイオマーカーの過剰発現を示すサンプルであって、良好な実際の臨床転帰が確認されているサンプルをいう。対象的に、「偽陽性(false positive)」は、良好な転帰のバイオマーカー(単数または複数)の過剰発現を示すが、不良な実際の臨床転帰が確認されている。良好な転帰のマーカーに関して「真の陰性(true negatives)」および「偽陰性(false negatives)」は、マーカーの過剰発現を示さず(例えば、免疫組織化学の方法で陽性に染色しない)、そしてそれぞれ、不良および良好な実際の臨床的転帰が確認されている。
【0037】
同様に、不良な転帰のマーカーの場合、「真の陽性(true positives)」とは、関心のあるマーカーまたはマーカーの組み合わせの過剰発現を示すサンプルであって、不良な実際の臨床転帰が確認されているサンプルをいう。まとめると、良好および不良な転帰のバイオマーカーの両方に関して「真の陽性」とは、実際の臨床転帰(すなわち、良好または不良)が正確に予測されるサンプルをいう。「偽陽性」は、良好な転帰のバイオマーカーの過剰発現を示すが、良好な実際の転帰が確認されている。不良な転帰のバイオマーカーに関して「真の陰性」および「偽陰性」は、バイオマーカーの過剰発現を示さず、そしてそれぞれ良好および不良な実際の臨床転帰が確認される。本発明の方法およびコンピュータープログラム製品は、多数のマーカー、マーカーの特徴および所定の特徴の閾値を用いて行われた予後と、実際の臨床転帰との体系的な比較を利用して、正確な臨床転帰によって規定される場合、マーカー、特徴および閾値のどの最適の組み合わせが最も正確であるかを決定する。
【0038】
図1は、ガン患者の予後を決定するために利用され得る少なくとも1つのマーカーを評価するための本発明の1実施形態による方法の模式的なフロー図を示す。工程110は、暴露工程を示しており、これは、あるマーカー(またはある場合には複数のマーカー)に対して複数の身体サンプルを曝露する工程を包含する。この複数の身体サンプルは、例えば、対応する複数の患者であって、各々の患者の臨床的な転帰が既知である患者から採取されている。上記にさらに詳細に記載されるように、このマーカーは、所定の細胞において過剰発現され得る、種々の標的分子(例えば、タンパク質など)を検出するために用いられ得る種々の比色定量バイオマーカーを含んでもよい。この身体サンプルとしては、マーカーを評価するために本発明の方法を用いている疾患を有する患者から採取された生検組織サンプルを包含し得る。
【0039】
工程120は、本発明の1方法による次の工程を示しており、この工程は、画像処理システムを用いて複数のスライドの各々からとった画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する工程を包含し、ここでこの複数のスライドは、既知の転帰を有する各々の患者に対応する複数の身体サンプルから調製される。このスライドは、生検コアサンプルまたは他の組織サンプルの連続切片を保持してもよく、そして本発明の方法の一部として評価の下にあり得る1つ以上のマーカーに曝されてもよい。このスライドは、定量化可能な特徴の抽出(例えば、色、陰影、輝度、透過率(TRANS)、光学密度(OD)、または上記にさらに詳細に記載される他の特徴における感知可能な変化)を容易にするように着色されるかおよび/または染色される組織学的スライドを包含し得る。例えば、スライドは、身体サンプルが曝されているマーカー(または複数のマーカー)を強調するように構成された染色液で処理されてもよい。さらに、このスライドは、目的のマーカー(単数または複数)の染色を強調する傾向の着色および/または染色の特徴を有する対比染色で処理されてもよい。当業者は、このような比色定量染色がDAB(マーカーの出現を茶に染色する傾向である)を含んでもよいこと、そして対比染色は、ヘマトキシリン(正常な形態の細胞を青に染色する傾向である)を含んでもよいことを理解する。さらに、任意の染色されたスライドを、例えば、第‘446号出願および第‘729号出願に開示される色素原分離技術を用いて分析してもよい。
【0040】
上記のように、この抽出工程は、例えば、所定の画像(例えば、スライド全体、カメラの視野(FOV)または選択された目的領域(ROI))を分析するように構成された画像分析システムおよび関連の制御装置(例えばコンピューターデバイス)を用いて、スライドのビデオ−顕微鏡画像から特徴を抽出する工程を包含し得る。例示的な特徴の添付の付表に詳細に記載されるとおり、所定のマーカー(またはマーカーのセット)に曝されているスライドの画像に関連する多くの異なる特徴を抽出して分析してもよい。ある実施形態では、病理学者のような臨床家は、画像分析システムを利用してROI(例えば、大量の所定のマーカーの存在を示すようにDABで濃く染色された顕微鏡画像のある領域に対応する)を選択し得る。ROI内では、画像分析システム(およびそれと連絡されている制御装置)を用いて、添付の付表に記載される多数の特徴を隔離して分析してもよい。例えば、ROI内の多数の細胞を計算してもよく、そしてその中の1型細胞の割合を同様に計算してもよい(例えば、ROI内に含まれる種々の細胞区画(マーカーのタイプに依存する)を通じて透過される光の光学密度を決定した後に、表2に概説されるディスパッチャー(dispatcher)設定を適用することによって)。閾値または客観的な決定規則を適用することによって((工程130を参照のこと)下に詳細に記載される)、この特徴は、ほとんどの場合、定量化可能な特徴、例えば、割合、細胞数、面積、輝度、透過率および/または光学密度である。例えば、添付の実験的な実施例では、種々のROIから抽出される略式の特徴としては、1型、2型および3型のガン細胞の割合(およびこれらの割合の組み合わせ)が挙げられ、ここでこの割合は、さらに特異的な特徴(細胞の染色された領域の透過率および/または光学密度などであって、これは所定の細胞に特定のタイプの記号(例えば、1型、2型または3型)を割り当てるために用いられる)を組み合わせることによって計算された。
【0041】
本発明の方法の1実施形態の工程130は、複数のスライドの各々の抽出された定量化可能な特徴に対して複数の候補の決定規則を適用して、このスライドの各々について対応する候補予後を得る工程を包含する。「決定規則(decision rule)」は、見なし規則(所定の閾値よりも大きい定量化可能な特徴が、良好な予後の徴候であるか、または不良な予後の徴候であるかの決定を包含する)を含むいくつかの成分および所定の定量化可能な特徴の閾値から構成され得る。単一の特徴を有する単一のマーカーの分析においては、この決定規則は、特定の特徴の二者択一であり得る。本発明の多くの実施形態によれば、全体的な決定規則は、良好な候補予後または不良な候補予後のいずれかを行う(候補閾値および対応する見なし規則に依存して)工程を包含する。例えば、1実施形態によれば、良好な予後は、ゼロ(0)と示されてもよいし、そして不良な予後は(1)と示され得る。しかし、各々の可能な閾値について、見なし規則について2つの可能な選択肢が存在する(すなわち、良好な予後(0)は、閾値未満の値を指してもよいし、あるいは不良な予後(1)は、閾値未満の値を指してもよい)。従って、各々の見なし規則(各々の可能性のある閾値について)は、各々の身体サンプル(転帰が既知である患者に対応する)について評価され得、そして図2に示されるような以下のカテゴリーのうちの1つに対応する4つの象限のうちの1つに位置される;真の陽性(象限a、210)、偽陽性(象限b、220)、偽陰性(象限c、230)、および真の陰性(象限d、240)。次いで、各々の閾値についての最適の見なし規則が図2において各々の象限について、その象限における良好および不良な転帰の出現に基づいて、見なし規則を選択することによって決定され得るように、可能性のある予後を、各々の身体サンプル(既知の転帰を有する患者に対応する)についての各々の可能性のある閾値/見なし規則の組み合わせについて行ってもよい。
【0042】
例えば、マーカーの特定の定量化可能な特徴(F)の閾値(T)を考慮すれば、2つの見なし規則が予後を決定するために可能である。第一の可能性のある規則は、FがTより大きい場合、その予後は不良(1)であるということである。第二の可能性のある規則は:FがTより大きい場合、その予後は良好(0)であるということである。これらの可能性のある見なし規則の各々について、その予測される予後は、正確な患者転帰を正確に予測し得る(すなわち、真の陽性または真の陰性を生じる)か、または正確な患者転帰を予測できないかもしれない(すなわち、偽陽性または偽陰性を生じる)。図2のどの象限が最も可能性のある予後を含むかを決定して、どの見なし規則が所定の定量化可能な特徴に最も適切であるかを決定することができる。例えば、図2を参照して、第一の可能性のある規則の可能性のある予後をプロットして、結果がどこに位置するかを決定してもよい。さらに、第二の可能性のある規則についての可能性のある予後をプロットして、結果が図2に描かれる象限内の何処に存在するかを決定し得る。適切な象限において両方の可能性のある見なし規則をプロットした後に、最適の見なし規則は、良好なおよび不良な転帰の全体的な数に対して正規化された、予測される良好な転帰対不良な転帰の比を決定することによって決定され得る。例えば、所定の特徴および閾値に関して、ほとんどのプロットされたポイントは、第一の可能な見なし規則(F>Tである場合、予後=不良(1))が用いられる場合、真の陽性象限に位置し得る。この場合、以下の候補決定規則が作成され得る:閾値を上回る定量化可能な特徴を示す患者は、不良な予後を有するとみなされる(疾患について陽性である)。別の実施例では、ほとんどのプロットされたポイントは、第一の可能な規則(F<Tである場合、予後=良好(0))が用いられる場合、偽陰性の象限に位置し得る。この場合、候補決定規則は以下のように読み取られ得る:閾値を上回る定量化可能な特徴を示す患者は、良好な予後を有するとみなされる(疾患について陰性である)。当業者は、他の統計的な方法が効率的な決定規則を見出すために利用され得ることを理解する。例えば、線形判別、二次判別、一般化線形モデル、ロジスティック回帰、ペナライズド判別(penalized discrimination)、フレキシブル判別、混合判別、および/または他の統計的な方法を利用して、このような決定規則を本発明の工程130の一部として見出してもよい。
【0043】
図1に示されるとおり、工程140は、少なくとも1つの定量化可能な特徴について、候補決定規則から選択される、最適の決定規則を選択する工程を包含する。最適の決定規則は、複数のスライドの各々についての候補予後が、各々の複数の患者について既知の転帰に最適に対応するように選択される。例えば、決定規則は、身体サンプルを採取した患者の臨床転帰に比較した場合、偽陰性および偽陽性の数が最小になる最適な予後の予後ツールを得るように、複数の候補決定規則から選択される(工程110を参照のこと)。上記のとおり、候補決定規則は、閾値成分および見なし規則の成分の両方を有する。複数の候補閾値(および見なし規則)を体系的に評価することによって、複数のスライドの各々についてそれから生じる最適の予後が複数の患者(それからこの複数のスライドが作成される)の各々について既知の転帰に最も密接に対応し得るように、最適の閾値を選択してもよい。さらに、所定の決定規則の有効性は、式7および8において下に示されるような特異性および感度を用いて試験してもよい。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、最適の決定規則を選択することはさらに、複数の候補決定規則の各々に対応する複数の特異性と感度との対を決定する工程をさらに含む。このような実施形態では、各々の候補決定規則について(および複数の候補閾値および対応する見なし規則の各々について)の特異性および感度は、各々の候補決定規則由来の候補予後を、身体サンプルを採取した各々の患者についての実際の既知の転帰に対して比較することによって計算され得る。この比較を行うことにおいて、真の陽性(象限a)、偽陽性(象限b)、偽陰性(象限c)、および真の陰性(象限d)の相対的な数の各々は、図2に示されるような象限系を用いて決定され得る。各々の象限についての相対的な数を用いて、感度および特異性の対(sens、spec)は、以下の式を用いて各々の候補決定規則および各々の複数の候補閾値について計算され得る:
【0045】
【化3】

従って、上に一般的に記載されるとおり、感度とは、マーカーに関して陽性であると評価されている(すなわち、真の陽性であるとみなされる)不良な転帰の患者の確率をいう。同様に、特異性とは、マーカーに関して陰性であると評価されている(すなわち、真の陰性であるとみなされる)良好な転帰の患者の確率をいう。
【0046】
次いで、各々の感度および特異性の対を、図3に示されるように2次元の感度および特異性のチャートにプロットしてもよく、ここで各々のポイントは、複数の候補決定規則の各々について(そして複数の候補閾値の各々について)算出された特異性および感度の値をいう。図3に示されるチャートはまた、実際の臨床転帰に対応するデータのセットに比較して候補決定規則のセットについての感度値310および対応する特異性値300のプロットを示す受信者動作特性(ROC)曲線として公知である。理想的な予後試験は、ポイント1でプロットされた理想的な感度および特異性の対320を有し、この1は、全ての予後結果が真の陽性または真の陰性のいずれかから構成されることを示す(図2における象限a210およびd240を参照のこと)。ROC曲線上の各々のプロットされた感度および特異性について、ユークリッド距離は、プロットされた対と理想的な対との間の特異性の相違350および感度距離340を用いて、プロットされた対と理想的な対320との間で(1,1)で計算され得る。図3に示されるようなROC曲線をプロットした後に、理想的な対320に対する最小ユークリッド距離320を有する特異性と感度との対を、この最適な決定規則(および対応する最適閾値および/または見なし規則)が評価されているマーカーおよび特徴的な組み合わせの特異的な感度および特異性の対を標的するために選択され得るように特定してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、最適な決定規則は、評価されているマーカーおよび特徴の組み合わせの感度および特異性の両方を最大化する(すなわち、理想的な(1,1)感度および特異性の対にアプローチする)ように選択され得る。
【0047】
図4に示されるように、本発明のいくつかの方法はさらに、ブロック150において体系的に示されるさらなる工程を包含し得、この工程は、少なくとも1つのマーカーの統計的な独立性を評価して、このマーカーが少なくとも1つの相補的なマーカーと実質的に統計的に独立している予後を得ることができることを保証する工程を包含する。従って、この実施形態は、身体サンプルに加えられたマーカーの所定の対について、それから得られた予後が実質的に統計的に独立しており、その結果1つのマーカーがこの相補的なマーカーに関して実質的に反復性の情報を提供しないこと確実にし得る。これによって、例えば、相補的なマーカーは、第一のマーカーと組み合わせては、この2つが実質的に統計的に独立していない場合は、用いられないことが確実にされ得る。この2つのマーカーの依存状態によって、それらが二重であること、および第二のマーカーの添加は、マーカーの所定の対の予後力(prognostic power)に対してさらなる価値を付け加えないことが示され得る。マーカーの所定のパネルの予後力を最適化するためには、このパネルにおける別のマーカーに比較した場合、二重の予後情報を与えるマーカーの使用を最小化することによってシグナル「ノイズ(noise)」の量を減少させることも所望される。
【0048】
2つのマーカーの統計的な独立性の評価は、例えば、いくつかの実施形態では、以下のさらなる工程を包含し得る:(1)第一のマーカーに対しておよび相補的なマーカーに対して曝した身体サンプルの第一のセットについての理論的な予後の頻度分布に対して、観察された転帰の頻度分布を比較する工程であって、ここでこの第一のセットの身体サンプルは良好な転帰が既知である患者に対応する工程および;(2)第一のマーカーに対しておよび相補的なマーカーに対して曝した身体サンプルの第二のセットについての理論的な予後の頻度分布に対して、観察された転帰の頻度分布を比較する工程であって、ここでこの第二のセットの身体サンプルは不良な転帰が既知である患者に対応する工程および;(3)カイ二乗(X)分析を用いて、少なくとも1つの相補的なマーカーに関して少なくとも1つのマーカーの独立性を評価する工程。
【0049】
例えば、X分析は、ある時点で2つのマーカーを考慮して、患者(身体サンプルに対応する)の転帰を考慮する場合にマーカーの独立性を評価するために行われ得る。表7は、特定のマーカー対について良好および不良な転帰の患者小集団の両方についてどのようにしてX値を得たかの詳細である。1実施例によれば、X値は、0.05というエラー確率(p)で7.81と計算された。従って、以下の結果を伴うようである:(1)もしXGood<7.81であるならば、HGoodは、拒絶できない;(2)もしXBad<7.81であるならば、HBadは、拒絶できない;従って:(3)もし(XGood<7.81でかつXBad<7.81)であるならば、Hは、拒絶できず、かつこのマーカーは独立しているとはみなせない。
【0050】
本明細書に開示される方法はまた、コンピューターデバイス(例えば、染色された組織学的スライドまたは細胞学的スライドの画像を獲得するのに適切な顕微鏡システムおよび/または画像分析システムと組み合わされたコンピューターデバイス)上で実行可能であり、かつ本明細書に記載の方法および関連のシステムに関連する種々の機能を達成し得る1つ以上の適切なコンピュータープログラム製品で実現され得る。さらに詳細には、図1および4に図示される方法の実施形態の工程120、130、140および150は、理解されるべき方法工程を達成するかそうでなければ施行するための1つ以上の実行可能部分を有するコンピュータープログラム製品で達成され得る。例えば、このようなコンピュータープログラムの実施形態では、この実行可能部分は、コンピューターデバイス(または他の制御デバイス)と、本明細書に含まれる例示的な特徴の付表に記載されかつ詳細である1つ以上の特徴を抽出するために適切な顕微鏡システムまたは画像分析システムとの間の連絡を容易にすることによって、図1および図4に示される工程120を達成し得る。例えば、工程120によって模式的に図示される実行可能部分は、特定のマーカーの染色特徴に対応する染色された組織学的スライドのデジタル画像(画像分析システムを介して得た)から統計的なデータ(または別の定量化可能な特徴)を抽出し得る。
【0051】
さらに、本発明のコンピュータープログラム製品の実行可能な部分はまた、網羅的な複数の決定規則の複数の組み合わせ(ある場合には、複数のマーカーの組み合わせおよびその特徴について、可能性のある閾値および/または見なし規則の体系的な評価を含む)の各々に対応するある順序の候補予後を作成するために、複数のスライドの各々から抽出した少なくとも1つの定量化可能な特徴に対する網羅的な複数の候補決定規則の体系的な適用を介して図1および図4に示される工程130を達成し得る。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、本発明のコンピュータープログラム製品の実行可能部分はまた、検討中の複数のスライドに対応する各々の患者についての既知の転帰を用いて各々の候補予後についての特異性と感度との対を算出することによって、図1および図4に示される工程140を行うかまたは容易にし得る。従って、工程140に模式的に図示される実行可能部分は、標的されたおよび/または最適の特異性と感度との対に対応する決定規則を決定し得る。
【0053】
最終的に、図4の工程150に示されるとおり、本発明のコンピュータープログラム製品の実行可能部分はまた、カイ二乗分析または本発明の方法の実施形態に関する上記の他の技術を用いて2つ以上のマーカーのマーカー独立性の決定を指示および/または促進し得る。このような決定はまた、複数のスライド(およびその画像)を撮った患者集団における特定の転帰の有病率を考慮し得る。
【0054】
従って、当業者は、本発明のコンピュータープログラム製品の実施形態が、マーカーのセットを評価して、標的されたおよび/または最適の特異性および感度レベルにアプローチするかおよび/または達する、マーカーの組み合わせおよびそれに対応する決定規則を決定する場合に生じ得る、閾値、見なし規則および対応する配列に基づく決定規則の複雑な組み合わせを体系的に評価するために利用され得ることを理解する。
【0055】
当業者は、本発明の方法における任意のまたは全ての工程が、人によって行われるか、あるいは自動化された方式で行われ得ることを理解する。従って、身体サンプル調製(例えば、工程110を参照のこと)、サンプル染色(例えば、工程110を参照のこと)およびバイオマーカー発現の検出(例えば、工程120を参照のこと)の工程は自動化され得る。さらに、ある実施形態では、本発明の免疫組織化学的方法は、病理学者による陽性染色細胞の同定を容易にするために、コンピューター化された画像化装置および/またはソフトウェアと組み合わせて用いられる。本明細書に開示される方法はまた、他の予後予測方法または分析(例えば、腫瘍サイズ、リンパ節状態、他のバイオマーカー(例えば、Her2/neu、Ki67、エストロゲンレセプター(ER)、プロゲステロンレセプター(PR)およびp53を含む)の発現レベル)と組み合わされてもよい。この方式では、本明細書に記載される方法を用いるバイオマーカーの最適化および評価は、本発明によって評価される種々のバイオマーカーの過剰発現の検出を容易にして、この種々のバイオマーカーの1つ以上の過剰発現に関連し得る疾患に罹患している患者の予後のより正確な決定を可能にし得る。
【0056】
さらに、本発明の多くの改変および他の実施形態は、前述の記載および関連の図面、付表および実施例において呈示された教示の利点を有する、本発明が関係する当該分野の当業者には思いつくものである。従って、本発明は開示された特定の実施形態に限定されないこと、そして改変および他の実施形態は添付の特許請求の範囲内に含まれるものであることが理解される。本明細書において特定の用語が使用されるが、それらは、一般的かつ記述的な意味でのみ用いられ、そして限定の目的ではない。
【0057】
以下の実験的な実施例は、乳癌患者の予後を確立するのに用いられ得る4つの候補バイオマーカーおよび定量化可能な略式の特徴の例示的なパネルを評価するのにおける本発明の実施形態の使用を記載する。これは例示のために提供されるのであって、限定の目的ではない。
【実施例】
【0058】
(実験的な実施例:乳癌予後を確立するためのバイオマーカー(SLPI、p21ras、E2F1およびsrc)のパネルの評価)
序:
本明細書に含まれる実験的な実施例によれば、本発明の実施形態は、バイオマーカーであってその過剰発現が種々のタイプの乳癌を有する患者の診断および予後を確立するのに有用であり得るバイオマーカーの組み合わせを評価するために用いられ得る。添付の実験的な実施例の場合、および本発明の他の実施形態において、マーカーのパネルは、最適の配列ベースの決定規則を決定するために評価され得る。「乳癌(breast cancer)」とは、例えば、悪性の病変として生検によって分類される状態であるものとする。乳癌予後の臨床的な描写は、医学の分野で周知である。当業者は、乳癌が、例えば、癌腫および肉腫を含む、乳房組織の任意の悪性腫瘍をいうことを理解する。特定の実施形態では、乳癌とは、非浸潤性乳管癌(DCIS)、上皮内小葉癌(LCIS)または粘液性癌である。乳癌はまた、浸潤性導管癌(IDC)または浸潤性小葉癌(ILC)をいう。本発明のほとんどの実施形態では、目的の被験体は、乳癌と疑われるかまたは実際に乳癌と診断されたヒト患者である。
【0059】
The American Joint Committee on Cancer(AJCC)は、「TNM」分類スキームを用いる乳癌病期分類のための標準化システムを開発している。患者は、原発性の腫瘍サイズ(T)、局所リンパ節状態(N)および遠隔転移(M)の有/無について評価され、次いで要因のこの組み合わせに基づいて病期0〜IVに分類される。このシステムでは、原発性の腫瘍サイズは、0〜4のスケールに分類される(T0=原発性腫瘍の証拠なし;T1=≦2cm;T2=>2cm−≦5cm;T3=>5cm;T4=胸壁または皮膚に直接拡大した任意のサイズの腫瘍)。リンパ節状態は、N0〜N3に分類される(N0=局所リンパ節に転移がない;N1=移動可能な、同じ側の腋窩リンパ節への転移;N2=一方に対してまたは他の構造に対して固定された同じ側のリンパ節(単数または複数)への転移;N3=胸骨の真下の同じ側のリンパ節への転移)。転移は、遠位の転移が無い(M0)かまたは存在することによって分類される。任意の臨床段階で乳癌患者の予後を確立するために用いられるマーカーの評価は、本発明によって包含されるが、初期段階の乳癌での乳癌患者の予後を確立するために用いられるマーカーの評価および最適化は、特に目的とされる。「初期段階の乳癌(early−stage breast cancer)」とは、病期0(その場所の乳癌)、I(T1、N0、M0)、IIA(T0−1、N1、M0またはT2、N0、M0)およびIIB(T2、N1、M0またはT3、N0、M0)であるものとする。初期段階の乳癌患者は、リンパ節転移をほとんどまたは全く示さない。本明細書において用いる場合、「リンパ節転移(lymph node involvement)」または「リンパ節状態(lymph node status)」とは、ガンがリンパ節に転移しているか否かをいう。乳癌患者は、これに基づいて、「リンパ節陽性」または「リンパ節陰性」と分類される。乳癌患者を同定して疾患を病期分類する方法は、周知であり、これには手動による検査、生検、患者のおよび/または患者の家族歴の検討、および画像化技術、例えば、マンモグラフィー、核磁気共鳴(MRI)およびポジトロン放出断層撮影(PET)を挙げることができる。
【0060】
「予後(prognosis)」という用語は、当該分野において認識され、そして特に疾患緩和、疾患再発、腫瘍再発、転移および死亡の確率に関して、乳癌または乳癌予後のありそうな経過についての予測を包含する。本明細書に記載される実施例の目的に関して、「良好な予後(good prognosis)」とは、乳癌に罹患している患者が少なくとも5年間にわたって疾患がない(すなわちガンがない)ままである確率をいうが、「不良な予後(poor prognosis)」とは、5年未満内の、背景にあるガンまたは腫瘍、転移の再燃もしくは再発、または死亡の確率を意味するものとする。「良好な転帰(good outcome)」を有すると分類された癌患者は、少なくとも5年間にわたって背景にあるガンまたは腫瘍がないままである。対照的に、「不良な転帰(bad outcome)」の癌患者は、5年内の疾患再燃、腫瘍再発、転移または死亡を被る。本明細書において用いる場合、予後または疾患なしの生存時間を評価するための相対的な時間は、腫瘍または抑制の外科的な除去、緩和または腫瘍増殖の阻害で始まる。
【0061】
本明細書において上記されるように、多数の臨床的および予後の乳癌要因は、当該分野で公知であり、そして処置の転帰および疾患の再発の確率を予測するために用いられる。このような要因としては、リンパ節転移、腫瘍サイズ、組織学的等級、エストロゲンおよびプロゲステロンのホルモンレセプター状態(ER/PR)、Her2/neuレベルおよび腫瘍倍数性が挙げられる。本発明の方法を用いて、初期段階の乳癌患者の予後を確立するのに用いられるマーカーおよびその特徴の組み合わせの評価は、これらの評価または他の臨床的および予後要因と独立してまたはそれと組み合わせて体系的な方式で達成され得る。
【0062】
本発明の方法によって、他の公知の予後指標(例えば、リンパ節転移、腫瘍サイズ、組織学的等級、エストロゲンおよびプロゲステロンのレセプターのレベル、Her2/neu状態、腫瘍倍数性および家族歴)の分析に比較して乳癌予後の優れた評価が得られるような、候補バイオマーカー(およびその特徴)の体系的な評価が可能になる。
【0063】
乳癌は、例えば、手術、放射線療法、ホルモン療法、化学療法またはそれらのいくつかの組み合わせを含み得るいくつかの別のストラテジーによって管理される。当該分野で公知であるように、個々の乳癌患者についての処置決定は、転移したリンパ節の数、エストロゲンおよびプロゲステロンレセプターの状態、原発性腫瘍のサイズおよび診断時の疾患の状態に基づき得る。本明細書に開示される方法を用いる診断の時点での不良な予後または良好な予後のリスク群への患者の層別化によって、さらなるまたは別の処置決定作成要因を得てもよい。本発明の方法によって、良好な予後を有する乳癌患者を、再発を被る可能性が高い乳癌患者(すなわち、診断の時点でさらなる積極的な処置が必要であるかまたはその利点があるかもしれない患者)から識別するために用いられる候補バイオマーカーの分析および評価が可能になる。本発明の方法は、初期段階の乳癌患者のより正確な予後を確立するのにおいて候補バイオマーカー(またはバイオマーカーのパネル)の予後価値を最大化するように、適切なバイオマーカー、その特徴および特徴の閾値を選択するのにおいて特定の使用を見出す。上記で考察されるとおり、疾患の初期段階で診断された乳癌患者のほとんどが、外科および/または放射線療法後にアジュバント療法なしに長期生存を享受する。しかし、これらの患者のうちかなりの割合(約20%)が、疾患再発または死亡を被り、これは、初期段階の乳癌患者の幾例かまたは全てがアジュバント療法(例えば、化学療法)を受けなければならないという臨床的な推奨につながる。本発明の方法は、バイオマーカーおよびその特徴であって、この高リスクの、初期段階の乳癌患者の劣った予後集団をより強調し得る、バイオマーカーおよびその特徴を評価すること、およびそれによって、どの患者が継続したおよび/またはより積極的な治療および処置後の緻密なモニタリングの利益があるかを決定することにおいて用途を見出す。
【0064】
この実験的な実施例では、本発明の方法を利用して、4つの候補バイオマーカー(SLPI、p21ras、E2F1およびsrc)のパネルおよび各々のバイオマーカーに対応する単一の略式の特徴(画像処理システムを用いて抽出される)を評価した。この実施例は、本発明の1実施形態に従って、最適の配列ベースの決定規則の決定を示す。この実施例において利用される特徴は、病理学者によって目的領域(ROI)として特定された乳癌腫瘍領域における1+、2+および3+細胞の割合に関連する。これらの特徴に基づいて、感度および特異性の対は、最適の配列ベースの決定規則(閾値および見なし規則から構成される)を用いて選択されたマーカー/特徴の組み合わせについて最大化された。
【0065】
(材料および方法:)
この実験的な実施例では、200例を超える患者を分析して、乳癌予後を確立するために異なるマーカーおよび特徴の組み合わせを評価および最適化した。表4にまとめられるとおり、患者のこの集団は、全く異種であって、T1N0〜T3N0にまたがる種々の段階の腫瘍を示す。患者の標的化される特徴は、それらの良好な転帰または良好な転帰の状態である。良好な転帰の患者は、5年後に疾患のないままの患者である;不良な転帰の患者は、5年内に再発または死亡を有する患者として規定された。身体サンプルおよびそれからとった対応するスライドは、特異性と感度との対が上記のような各々の可能性のあるマーカー/特徴/閾値の組み合わせについて決定できるように、既知の転帰を有する身体サンプルが得られるように、各々の患者から採取した。
【0066】
次いで、この研究由来の身体サンプル(表4に概説される同じ患者集団由来)を、4のバイオマーカーのパネルに曝して(表5を参照のこと)、マークされたスライドを本発明の方法に供するように、対応するスライドを作成した。以下の工程は、本発明の方法を、これがこの実験的な実施例に適用されるとおり、強調している:(1)色素原分離は、最良の染色を示した各々のマーカーについて最適であった(第‘446号出願および第‘729号出願の色素原分離方法に従う);(2)分割設定は、その細胞下局在化に従って各々のマーカーについてカスタマイズした;表1を参照のこと(核、細胞質または膜)。(また、例示的な特徴の添付の付表に強調されたNUCL、CYTOおよびMEMBの特徴も参照のこと);そして(3)特徴は、規定のROI内で、細胞、視野(FOV)および焦点のレベルで抽出され、そして出力ファイルに運ばれた(XML形式)。
【0067】
次いで、本発明の1実施形態による特定のコンピュータープログラム製品(この実施例では「マルチマーカーアナライザー(Multi Marker Analyzer)」と命名される)を用いて、このマーカーの組み合わせの評価および最適化を完了した。1実施形態によれば、このコンピュータープログラム製品は、顕微鏡を用いて得られた組織マイクロアレイ(TMA)または組織切片XMLファイルのいずれかの全部または一部をローディングされて、TMAキーを記載しているXMLファイル(TMA分析の場合)、または患者の臨床状態および患者評価を得るExcelファイル(組織切片分析の場合)ならびに全てのさらなる分析を用いて、これらのファイルに含まれるデータを併合し得るように構成される。この併合プロセスは、各々の身体サンプル(各々の患者に対応する)について顕微鏡を介して抽出された特徴と、患者:識別番号および医学的状態(良好または不良な転帰を含む)および病理学者の評価について、それがXML形式のファイルに含まれない場合、TMAキー(またはExcelファイル)において保持される情報との会合からなる。
【0068】
表5は、この実施例において評価されたマーカー(SLPI、p21ras、E2F1およびsrc)および各々のマーカータイプについて抽出された対応するCELL_PERCENT略式の特徴を列挙する(この実施例は、4つのマーカーについての配列ベースの決定規則の評価を示しており、ここでは単一のマーカー/単一の特徴の閾値を分析して、最適の配列ベースの決定規則を決定した)。この決定規則は、図1に概説される本発明の方法を用いて作成され、ここでこの予測される予後(マーカーの各々の可能性のある配列について、この各々のマーカーは、「オン(on)」(1)または「オフ(off)」(0)のいずれかである。各々の特定のマーカーについて評価された特徴についての閾値を決定するために(表5を参照のこと)、各々の可能性のある閾値の量(0〜100%)を分析して、この実施例について身体サンプルを採取した研究における種々の患者についての転帰と比較した。例えば、図5は、E2F1マーカーに対応するCELL_PERCENT_2についての分布曲線を示す。このプロットは、不良な転帰の患者520の分布および良好な転帰の患者510の分布を、CELL_PERCENT_2値の関数として示す。図5に示されるように、上限を2〜3パーセント上って、不良な転帰の患者(520)は、良好な転帰の患者(510)よりも有意に高い頻度である。2.46%の閾値550を用いて、予後の指標としてE2F1マーカー単独の使用でそれぞれ0.54および0.75という感度および特異性が得られる。表5のカラム3は、図5におけるデータからのE2F1マーカーについて決定された得られた決定規則を示す(これは、2.46%の閾値およびE2F1についての見なし規則(2.46%より大きいCELL_PERCENT_2である場合「オン」)の両方を含む)。
【0069】
候補予後(配列の各々の可能性のある組み合わせに対応する)を生成し、次いで真の陽性210、偽陽性220、偽陰性230および真の陰性240の数を決定するために、図2における象限系を用いて評価される各々の身体サンプルについて実際の転帰と比較した。上記に詳細に記載されるように、一旦適切な象限にプロットされれば、各々の可能性のある決定規則に対応する特異性および感度の値を算出した(このような計算の結果は表6に示す)。表6のデータから決定された配列ベースの決定規則は、以下のように読むことができる:E2F1がON(すなわち1)であり、かつONである唯一のマーカーではないならば、この患者は、不良な転帰、そうでなければ良好な転帰とみなされる。
【0070】
結果:
SLP1、p21ras、E2F1およびsrcについての唯一の割合の特徴を、表5に規定される閾値および決定規則とともに用いて、60%の感度および80%の特異性が、むしろ単一の配列ベースの決定規則を用いてこのサンプルセットで達成された:E2F1がON(すなわち1)であり、かつONである唯一のマーカーではないならば、この患者についての最適な予後は、不良な転帰である。従って、この患者についての予後は、そうでなければ良好な転帰である。
【0071】
上記のとおり、E2F1単独に基づく予後決定規則は、それぞれ、54%および75%の感度および特異性を与える。しかし、解釈に基づくマーカー組み合わせを用いて、E2F1がONであり、かつSLPI,p21rasまたはsrcのいずれかがONである場合、60%の感度および80%の特異性がもたらされる(表6の結果によって規定される配列ベースの決定アルゴリズムを用いて)。
【0072】
(付表:例示的な特徴)
以下の特徴は、例えば、コンピューターデバイスのような制御装置と組み合わせて、画像化システムまたはビデオ−顕微鏡システムを用いて、身体サンプル(例えば、染色された組織学的スライドまたは細胞学的スライド)の画像から調製され得る定量化可能な特徴のタイプの徴候である。さらに、以下の特徴を、本明細書に記載のコンピュータープログラム製品の実施形態を用いて抽出および/または計算してもよい。いくつかの実施形態では、特定の標的分子の過剰発現(および得られた色素染色)に関連し得る特定の疾患についての予後徴候に対応し得る値を定量するために臨床家によって容易に利用され得る略式の特徴を構築するために、以下の特徴を計算および/または組み合わせてもよい。
【0073】
特徴の以下の付表は、例示の目的で提供されるものであって、限定のためではないことが理解されるべきである。当業者は、他の特徴が目的の特徴であってもよく、そして本発明の方法およびコンピュータープログラムの製品の実施形態を用いて1つ以上のマーカーを評価するために抽出かつ分析されてもよいことを理解する。
【0074】
(A.形状記述子特徴)
(1.面積(AREA))
これは、ブロブ(blob)中の前面のピクセル数であり(ホールはカウントしない)、マスク(2進法表示)はMである。ピクセル−ミクロン対応(k)が利用可能である場合、これはスライド上のブロブ(M)の物理的面積を表す(マイクロメートル)。ピクセル−ミクロンの物理的対応(k)が利用可能でない場合、面積(AREA)は測定されたピクセルの数である(k=1)。
【0075】
【化4】

ここで、E={p|p∈M}であり、
範囲は、[0,∞[である。
【0076】
(2.周長(PERIMETER))
これは、ブロブの稜(任意のホールの稜を含む)のトータルの長さであり、マスク(2進法表示)はMである。ここで、対角の稜がデジタル化される場合に生成される階段効果についても考慮に入れる(内側の角は、2ではなく、√2としてカウントされる)。単一のピクセルのブロブ(面積=1)は、4.0という周長を有する。ピクセル−ミクロン対応(k)が利用可能である場合、これはスライド上のブロブ(M)の物理的周長を表す(マイクロメートル)。ピクセル−ミクロンの物理的対応が利用可能でない場合(k=1)。
【0077】
【化5】

pが内部でかつpが角である場合、q(n)=√2であり、
それ以外の場合、q(n)=4−Σ(t,l,r,b)である。
範囲は、[0,∞[である。
【0078】
(3.MINFERET)
これは、最小Feret直径(ある特定数の角をチェックした後に見出される、対象物にフィットする長方形のボックスの最小境界直径)である。ピクセル−ミクロン対応(k)が利用可能である場合、これはスライド上のブロブ(M)の物理的なMinFeret直径を表す(マイクロメートル)。ピクセル−ミクロンの物理的対応が利用可能でない場合(k=1)。
範囲は、[0,∞[である。
【0079】
(4.MAXFERET)
これは、最大Feret直径(ある特定数の角をチェックした後に見出される、対象物にフィットする長方形のボックスの最大境界直径)である。ピクセル−ミクロン対応(k)が利用可能である場合、これはスライド上のブロブ(M)の物理的なMaxFeret直径を表す(マイクロメートル)。ピクセル−ミクロンの物理的対応が利用可能でない場合(k=1)。
範囲は、[0,∞[である。
【0080】
(5.コンパクト度(COMPACTNESS))
この値は、円について最小であり(1.0)、そして周長(P)と面積(A)とから得られる。形状が回旋状であればあるほど、この値は大きくなる。
【0081】
【化6】

範囲は、[1,∞[である。
【0082】
(6.粗さ(ROUGHNESS))
これは、ブロブがどれほど粗いかの尺度であり、周長(P)を凸面の周長(P)で割ったものに等しい。滑らかな凸面の対象物は、1.0という最小の粗さを有する。
【0083】
【化7】

範囲は、[0,1]である。
【0084】
(7.ELONGATION)
この値は、真の長さ/幅に等しい。これは、細長い対象物に用いられるべきである。
範囲は、[0、∞[である。
【0085】
(B.ヒストグラム記述子特徴)
(1.合計(SUM))
SUMは、個々のピクセルスコア全ての合計である。
【0086】
【化8】

範囲は、透過率、および光学密度について[0,∞[である。
【0087】
(2.平均値(MEAN))
算術的な平均値は、一般に平均と呼ばれるものである:「平均値(mean)」という言葉は、修飾語なしで用いる場合、算術的な平均値を指すものと仮定され得る。この平均値は、全てのスコアの合計をスコアの数で割ったものである。平均値はほぼ対称な分布の中心の傾向の優れた尺度であるが、非対称な分布ではミスリードされ得る。なぜなら、これは、極端なスコアによって大きく影響され得るからである。従って、中央値のような他の統計値が、高頻度に極めて非対称な反応時間または家計所得のような分布についてのさらなる情報であり得る。
【0088】
それらの平均値からのスコアの二乗偏差の合計は、任意の他の数からのそれらの二乗偏差よりも小さい。
【0089】
正規分布に関しては、平均は最も有効である。従って中心の傾向の全ての尺度のサンプル変動に対して最も影響を受けない。
【0090】
【化9】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0091】
(3.最小値(MIN))
最小値とは、分布の最小値である。
【0092】
【化10】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0093】
(4.Q1)
Q1は、分布の25番目のパーセンタイルである。スコアの25%はQ1の下であり、そして75%はQ1の上である。
【0094】
【化11】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0095】
(5.中央値(MEDIAN))
中央値は、分布の中央である:スコアの半分が中央値の上であり、半分が中央値の下である。この中央値は、極端なスコアに対しては平均よりも感度が低い。このため、中央値は、高度に非対称な分布については平均値よりも優れた尺度になる。
【0096】
中央値からの各数の絶対偏差の合計は、任意の他の数からの絶対偏差の合計よりも低い。
【0097】
平均値、中央値および最頻値は、対称的な分布では等しい。平均は、正に傾斜した分布においては中央値よりも高く、負に傾斜した分布においては中央値よりも低い。
【0098】
【化12】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0099】
(6.Q3)
Q3は、分布の75番目のパーセンタイルである。スコアの75%はQ3の下であり、そして25%はQ3の上である。
【0100】
【化13】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0101】
(7.最大値(MAX))
最大値は、分布の最大値である。
【0102】
【化14】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0103】
(8.最頻値(MODE))
最頻値は、分布において最も頻繁に存在するスコアであり、中心の傾向の尺度として用いられる。中心の傾向の尺度としての最頻値の利点は、その意味が明らかであるということである。さらに、これは名目データとともに用いられ得る中心の傾向の唯一の尺度である。
【0104】
最頻値は、サンプル変動に対して大きく影響を受ける。従って、中心の傾向の唯一の尺度として用いることは推奨されない。この最頻値のさらなる不利な点は、多くの分布が2つ以上の最頻値を有することである。これらの分布は「多モード」と呼ばれる。
【0105】
正規分布では、平均値、中央値および最頻値は同一である。
【0106】
【化15】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0107】
(9.3平均値(TRIMEAN))
3平均値は、25番目のパーセンタイル+50番目のパーセンタイル(中央値)の二倍+75番目のパーセンタイルを加算して4で割ることによって算出される。
【0108】
3平均値はほとんど、中央値として極端なスコアに影響を受けず、そして非対称な分布においては算術的平均値よりもサンプリングの変動には支配されにくい。これは正規分布についての平均よりも有効ではない。
【0109】
【化16】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0110】
(10.トリム平均(TRIMMEDMEAN)50)
トリム平均は、特定の割合の最低スコアおよび最高スコアを捨て、残りのスコアの平均を算出することによって計算される。50%トリム平均は、スコアの低方25%および高方25%を捨て、残りのスコアの平均を取ることによって、算出される。中央値とは、100%トリム平均であり、そして算術的平均値とは0%トリム平均である。
【0111】
トリム平均は明白に、算術的な平均値よりも、極端なスコアの影響は受けにくい。従って、非対称な分布の平均値よりも、サンプリングの変動に対する影響を受けにくい。これは正規分布については平均値よりも有効でない。
【0112】
【化17】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0113】
(11.範囲(RANGE))
範囲とは、散らばりまたはばらつきの最もシンプルな尺度である:これは、最大の値と最も簡単な値との差に等しい。この範囲は、散らばりの有用な尺度であり得る。なぜなら、これはそのように容易に理解されるからである。しかし、これは極端なスコアに対しては極めて鋭敏である。なぜなら、わずか2つの値に基づくだけであるからである。この範囲はほぼ、散らばりの唯一の尺度としては用いられるべきではないが、標準偏差または半−四分位範囲のような散らばりの他の尺度に対する補充として用いられる場合、有益であり得る。
【0114】
【化18】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0115】
(12.半−四分位範囲(SEMIINTERQUARTILERANGE)
半−四分位範囲は、散らばりまたはばらつきの尺度である。これは、75番目のパーセンタイル(しばしば(Q3)と呼ばれる)と25番目のパーセンタイル(Q1)との差の二分の一として算出される。
【0116】
ある分布におけるスコアの半分は、Q3とQ1との間にあるので、半−四分位範囲は、スコアの1/2をカバーするのに必要な距離の1/2である。対称的な分布では、中央値の下の1つの半−四分位範囲から中央値の上の1つの半−四分位範囲まで広がる区間は、このスコアの1/2を含む。しかし、これは、非対称な分布については真ではない。
【0117】
この半−四分位範囲は、極端なスコアの影響はほとんど受けない。なぜなら、これは、非対称な分布については散らばりの良好な尺度であるからである。しかし、これは、標準偏差よりも正規分布におけるサンプルの変動の影響を受けやすい。従って、ほぼ正規的に分布しているデータについてはあまり用いられない。
【0118】
【化19】

範囲は透過率について、[0,1]であり、
範囲は光学密度について、[0.0000,2.4065]である。
【0119】
(13.分散(VARIANCE))
分散は、分布がどの程度散らばっているかの尺度である。これは、平均値からの各数の平均二乗偏差として計算される。
【0120】
【化20】

範囲は、[0,∞[である。
【0121】
(14.標準偏差(STDEV))
この特徴は、サンプルに基づく標準偏差を評価する。標準偏差は、値が平均の値(平均値)からどの程度広く分散しているかの尺度である。この標準偏差は、分散の平方根である。これは、散らばりの最も一般に用いられる尺度である。
【0122】
極端なスコアに対して範囲よりは感度はないが、標準偏差は半四分位範囲よりも感度がある。従って、半四分位範囲は、極端なスコアの可能性が存在する場合に標準偏差を補完するはずである。
【0123】
【化21】

範囲は、[0,∞[である。
【0124】
(15.歪曲(SKEW))
この特徴は、分布の歪度を返す。歪度は、平均値まわりの分布の非対称の程度を特徴付ける。分布は、一方のテールがもう一方よりも長い場合に歪む。正の歪度は、より正の値に向かって広がる非対称のテールを有する分布を示す。負の歪度は、より負の値に向かって広がる非対称のテールを有する分布を示す。
【0125】
【化22】

範囲は、]−∞,+∞[であり、
Sはサンプル標準偏差である。
【0126】
(16.尖度(KURTOSIS))
この特徴は、データセットの尖度を返す。尖度は、正規分布と比較した分布の相対的な先鋭度または平坦度を特徴付ける。正の尖度は、比較的先鋭な分布を示す。負の尖度は、比較的平坦な分布を示す。尖度は分布のテールのサイズに基づく。
【0127】
【化23】

範囲は、]−∞,+∞[であり、
Sはサンプル標準偏差である。
【0128】
(C.透過率および光学密度特徴(TRANS、ODなど))
(1.TRANS−透過率)
透過率は、入射光束に対する、透過性物体によって透過されたトータルの光点または光束の比である(通常は垂直入射について与えられる)。
【0129】
【化24】

範囲は、[0,1]である。
【0130】
画像内では、透過率は8ビットで特徴付けられ、[0,255]範囲内で256の値をもたらす。背景にある計算が、このような離散値に基づく場合、しかし、計算された特徴は、[0,1]の範囲中で0%〜100%の透過率で表される。
【0131】
【化25】

(2.OD−光学密度)
光学密度は、透過率の対数の負の値として、透過率に関連する。画像内では、透過率は、8ビットで識別され、[0,255]範囲内で256の値をもたらす。
【0132】
【化26】

範囲は、透過率の8ビットの識別に起因して、[0.0000,2.4065]であり一時的なOD画像バッファも離散バッファである。
【0133】
【化27】

背景にある計算がこのような離散値に基づく場合、しかし、計算された特徴は、0から無限(理論上)に及ぶ実OD値に従って表現され、実際には8ビットの制約に起因して2.4065へ上限をおく。
【0134】
3.輝度および色素特徴(LUMIN、DYE1、DYE2、DYE3)
透過率または光学密度ヒストグラム上で計算したヒストグラム特徴は、RGB画像の輝度(「LUMIN」)またはピクセル(R、G、B)値(「DYE1」、「DYE2」、または「DYE3」)についての色素原モデルを解析した後に算出された目的の色素のいずれかを反映する。RGB色素原分離モデルは、例えば、‘446号出願および‘729号出願に記載される。
【0135】
LUMIN(Y)=0.299R 0.587G+0.114B従来の浮動小数点式(33)
LUMIN(Y)=[(9798R+19235G+3736B)/32768]コードによって用いられる式(34)
注記:色素原の誤差、色素の確かさ
解析した場合、RGB色素原分離モデルは、再構築誤差を評価するが、これは各々の色素の寄与に由来するRGB値の再構築に基づいてピクセルの入力RGBと再計算されたRGBとの間のRGB空間内のユークリッド距離である。この誤差は、上記のRGB色素原分離モデルの方法および装置を用いて報告された目的の対象物の各々全てのピクセルについて評価され得る。
【0136】
シェーディング補正および画像正規化を行うために用いられる白色参照画像を獲得する場合、光学システム内で記録された各々のRGB値およびノイズレベル(NOISE)について測定した色素原の誤差に依存して、確かさは、このピクセルについて評価される透過率が、異なる透過率の間を識別するためのヒトの眼の能力から統計的に変化していない確率に基づいて、各々の色素について算出される。
【0137】
D.階層的記述子特徴
スライド(例えば、組織学的スライド)またはスライドの画像内で異なる階層的な対象(例えば、細胞、細胞膜、核または他の対象物)に対して特徴を計算する場合、この特徴は、以下の階層的な参照視野に関して評価され得る:その対象物に関してスライド(SLIDE)、焦点(FOCUS)、視野(FOV)または細胞(CELL)。
【0138】
・スライド:「SLIDE」、および関連の「FOCUS」、「FOV」、「CELL」
・焦点:「FOCUS」、および関連の「FOV」、「CELL」
・視野:「FOV」、および関連の「CELL」
・細胞:「CELL」。
【0139】
E.細胞の記述子特徴
細胞特徴を計算する場合、その特徴は、以下の細胞または細胞下位置の1つ以上において反映される:細胞全体(CELL)、核(NUCL)、細胞質(CYTO)または細胞膜(MEMB)。
【0140】
・細胞全体:「CELL」
・核:「NUCL」
・細胞質:「CYTO」
・膜:「MEMB」。
【0141】
付随する表:
(表1:例示的なマーカーおよびそれらのそれぞれの細胞下局在のリスト)
【0142】
【表1】

(表2:選択された細胞のカテゴリー1、2または3への見なすことをもたらすディスパッチャー設定)
【0143】
【表2】

(表3:略式の特徴のパーセンテージ)
【0144】
【表3】

(表4:身体サンプルを採取した患者の詳細および転帰(例示的な実施例))
【0145】
【表4】

(表5:例示的な実施例のための略式の特徴のパーセンテージ(配列ベースの決定規則のために決定された閾値を示す))
【0146】
【表5】

(表6:例示的な実施例由来のSLPI、p21ras、E2F1およびSRCの組み合わせのための配列解釈アプローチを用いる感度および特異性の対。(配列S0110は、以下のように読み取られなければならない:SLPI=OFF/p21ras=ON/E2F1=ON/src=OFF))
【0147】
【表6】

(表7:良好な転帰の患者についてのX値(XGood)および不良な転帰の患者についてのX値(XBad)の計算が得られるX分析式の詳細)
【0148】
【表7】

本明細書において言及される全ての刊行物および特許出願は、本発明が関与する当該分野の当業者のレベルの指標となる。全ての刊行物および特許出願は本明細書において、各々の個々の刊行物および特許出願が特異的にかつ個々に参照によって援用されるように示されるのと同じ程度まで参照によって援用される。
【0149】
前述の本発明は、理解の明確化の目的のために図示および実施例によっていくらか詳細に記載されているが、添付の実施形態の範囲内において、特定の変化および改変が実施され得ることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】図1は、本発明の1実施形態による少なくとも1つのマーカーを評価するための方法およびコンピュータープログラム製品のブロック図を示す。
【図2】図2は、対応する実際の転帰に比較した場合に候補予後がその中に存在し得る4つの可能性のある象限のグラフ表示を示す−示した象限を用いて、候補予後についての感度および特異性を作成してもよい;
【図3】図3は、マーカーの特徴および/または閾値の最適の組み合わせを選択して、本発明の1実施形態によるマーカーまたはマーカーの組み合わせによって達成された予後の感度および特異性の両方を最大化するために用いられ得る、プロットされた感度および特異性の対のROC曲線の例を示す。
【図4】図4は、本発明の1実施形態に従って、少なくとも1つのマーカーを評価し、そして少なくとも1つの相補的なマーカーに関してこの少なくとも1つのマーカーの独立性を評価するための方法およびコンピュータープログラム製品のブロック図を示す。
【図5】図5は、候補閾値のスケールに対して良好および不良な転帰の分布をプロットすることによる、単独のマーカー分析における所定の特徴についての最適閾値の決定の視覚表示を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン患者の予後を決定するために少なくとも1つのマーカーを分析するための方法であって:
該少なくとも1つのマーカーに対して身体サンプルを曝露する工程であって、該身体サンプルはガン患者から採取されている、工程と;
画像処理システムを用いて少なくとも1つのスライドから撮った画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する工程であって、該少なくとも1つのスライドは該身体サンプルから調製される工程と;
該少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して決定規則を適用して、該少なくとも1つの定量化可能な特徴と該決定規則との間の関係に基づいて該ガン患者の予後を決定する工程と;
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記適用工程が、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴に対してある閾値を適用して、該少なくとも1つの定量化可能な特徴と該閾値との間の関係に基づいて前記ガン患者の予後を決定する工程をさらに包含する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記適用工程がさらに、前記閾値について見なし規則を適用する工程を包含し、該見なし規則が、該閾値に関連する少なくとも1つの定量化可能な特徴のうちのある値に対応する良好な予後または不良な予後のいずれかを確立し得る、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、前記抽出工程がさらに、目的領域であって、それから前記少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する領域を特定する工程を包含し、該目的領域が、前記画像処理システムを用いて前記少なくとも1つのスライドから撮った画像内である、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つのマーカーが:
比色定量的なバイオマーカー;
SLPI;
PSMB9;
NDRG−1;
Muc−1;
ホスホ−p27;
src;
E2F1;
p21ras;
p53;および
それらの組み合わせ、
からなる群より選択される、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴が:
透過率;
光学密度;
細胞形態;
マーカー強度および細胞形態によって特徴付けられた細胞タイプの割合;ならびに
それらの組み合わせ、
からなる群より選択される、方法。
【請求項7】
少なくとも1つのマーカーを分析して、ガン患者の予後を決定するために画像処理システムを制御し得るコンピュータープログラム製品であって、該コンピュータープログラム製品は、コンピューター読み取り可能な記憶媒体を備え、該媒体はその中に記憶されたコンピューター読み取り可能なプログラムコード部分を有し、該コンピューター読み取り可能なプログラムコード部分は:
画像処理システムを用いて少なくとも1つのスライドから撮った画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出するための実行可能部分であって、該少なくとも1つのスライドは、ガン患者から採取した身体サンプルから調製され、該身体サンプルは、該少なくとも1つのマーカーに曝されている、実行可能部分と;
該少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して決定規則を適用して、該少なくとも1つの定量化可能な特徴と該決定規則との間の関係に基づいて該ガン患者の予後を決定するための実行可能部分と;
を備える、コンピュータープログラム製品。
【請求項8】
請求項7に記載のコンピュータープログラム製品であって、適用するための前記実行可能部分が、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して閾値を適用して、該少なくとも1つの定量化可能な特徴と該閾値との間の関係に基づいて前記ガン患者の予後を決定するための実行可能部分をさらに含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータープログラム製品であって、適用するための前記実行可能部分が、前記閾値についての見なし規則を適用するための実行可能部分をさらに含み、該見なし規則が、該閾値に関して前記少なくとも1つの定量化可能な特徴の値に対応する良好な予後または不良な予後のいずれかを確立し得る、コンピュータープログラム製品。
【請求項10】
ガン患者の予後を決定するために適合された少なくとも1つのマーカーを評価するための方法であって、該方法は:
該少なくとも1つのマーカーに対して複数の身体サンプルを曝露する工程であって、該複数の身体サンプルは、各々既知の転帰を有する、対応する複数の患者から採取されている工程と;
画像処理システムを用いて複数のスライドの各々から撮った画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する工程であって、該複数のスライドが、各々の患者に対応する該複数の身体サンプルから調製されている工程と;
該複数のスライドの各々の少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して複数の候補の決定規則を適用して、該複数の候補決定規則および該少なくとも1つの定量化可能な特徴の複数の組み合わせの各々について候補予後を提供する工程と;
最適な予後に対応する最適な決定規則を選択する工程であって、該最適な決定規則は、該少なくとも1つの定量化可能な特徴に関する候補決定規則から選択され、該最適な決定規則は該複数のスライドの各々についての最適な予後が該複数の患者の各々についての既知の転帰に最適に対応することを提供する、工程と、
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記適用工程が、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して複数の候補閾値を適用して、前記複数の身体サンプルの各々についての該複数の候補閾値の各々に対応する複数の候補予後を生じる工程をさらに包含し、かつ前記選択工程が、前記複数のスライドの各々についての最適な予後が、前記複数の患者の各々についての既知の転帰に対して最適に対応するように、該複数の候補閾値から最適閾値を選択する工程をさらに包含する、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記適用工程がさらに、前記複数の候補閾値の各々についての見なし規則を決定する工程をさらに包含し、該見なし規則は、該複数の候補閾値の各々に関する少なくとも1つの定量化可能な特徴のうちの1つの値に対応する良好な予後または不良な予後のいずれかを確立し得る、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、前記選択工程がさらに:
前記複数の候補決定規則の各々に対応する複数の特異性と感度との対を決定する工程と;
該複数の特異性と感度との対を、受信者動作特性曲線上にプロットする工程と;
各々の前記複数の特異性と感度との対、および最適特異性と感度との対の間の複数のユークリッド距離を算出する工程と;
該最適特異性と感度との対に対して最小のユークリッド距離を有する特異性と感度との対に対応する最適な決定規則を選択する工程と;
を包含する、方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、前記抽出工程がさらに、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する目的領域を同定する工程を包含し、該目的領域が、前記画像処理システムを用いて複数のスライドの各々から撮った画像内である、方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、前記少なくとも1つのマーカーの統計的な独立性を評価して、該少なくとも1つのマーカーが、少なくとも1つの相補的なマーカーと実質的に統計的に独立している予後を提供し得ることを保証する工程をさらに包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記評価工程がさらに:
観察された転帰の頻度分布を、算出された理論上の予後の頻度分布と比較する工程であって、ここで、前記少なくとも1つのマーカーが、該少なくとも1つのマーカーおよび前記少なくとも1つの相補的なマーカーに曝された第一の複数の身体サンプルのさらなるマーカーと独立しており、該第一の複数の身体サンプルが既知の良好な転帰を有する患者に対応するならば、以下の工程を行う、工程、
観察された転帰の頻度分布を、算出された理論上の予後の頻度分布と比較する工程であって、ここで、該少なくとも1つのマーカーが、該少なくとも1つのマーカーおよび該少なくとも1つの相補的なマーカーに曝された第二の複数の身体サンプルの該さらなるマーカーと独立しており、該第二の複数の身体サンプルが既知の不良な転帰を有する患者に対応するならば、以下の工程を行う、工程、
該少なくとも1つの相補的なマーカーに関して該少なくとも1つのマーカーの独立性を評価する工程と、
を包含する、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記評価工程がさらに、カイ二乗分析を用いて前記少なくとも1つの相補的なマーカーに関して前記少なくとも1つのマーカーの独立性を評価する工程をさらに包含する、方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法であって、前記少なくとも1つのマーカーが:
比色定量的なバイオマーカー;
SLPI;
PSMB9;
NDRG−1;
Muc−1;
ホスホ−p27;
src;
E2F1;
p21ras;
p53;および
それらの組み合わせ、
からなる群より選択される、方法。
【請求項19】
請求項10に記載の方法であって、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴が:
透過率;
光学密度;
細胞形態;
マーカー強度および細胞形態によって特徴付けられた細胞タイプの割合;ならびに
それらの組み合わせ、
からなる群より選択される、方法。
【請求項20】
ガン患者の予後を決定するために適合した少なくとも1つのマーカーを評価するための画像処理システムを制御し得るコンピュータープログラム製品であって:該コンピュータープログラム製品は、コンピューター読み取り可能な記憶媒体を備え、該媒体はその中に記憶されたコンピューター読み取り可能なプログラムコード部分を有し、該コンピューター読み取り可能なプログラムコード部分は:
画像処理システムを用いて複数のスライドの各々から撮った画像から少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出するための実行可能部分であって、該複数のスライドは、各々既知の転帰を有する、対応する複数の患者から採取した複数の身体サンプルから調製され、該複数の身体サンプルは、該少なくとも1つのマーカーに曝されている、実行可能部分と;
該複数のスライドの各々の該少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して網羅的な複数の候補決定規則を適用して、該網羅的な複数の候補決定規則および該少なくとも1つの定量化可能な特徴との複数の組み合わせの各々について候補予後を提供するための実行可能部分と;
最適な予後に対応する最適な決定規則を選択するための実行可能部分であって、該最適な決定規則は、該少なくとも1つの定量化可能な特徴についての候補決定規則から選択され、該最適な決定規則は、該複数のスライドの各々についての最適な予後が該複数の患者の各々について既知の転帰に最適に対応することを提供する、実行可能部分と、
を含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項21】
請求項20に記載のコンピュータープログラム製品であって、適用するための前記実行可能部分が、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴に対して複数の候補閾値を適用して、前記複数の身体サンプルの各々についての複数の候補閾値の各々に対応する複数の候補予後を生成するための実行可能部分をさらに含み、かつ、該選択のための実行可能部分は、前記複数のスライドの各々についての最適な予後が前記複数の患者の各々についての既知の転帰に最適に対応するように、該複数の候補閾値から最適閾値を選択するための実行可能部分をさらに包含する、コンピュータープログラム製品。
【請求項22】
請求項21に記載のコンピュータープログラム製品であって、複数の候補閾値を適用するための前記実行可能部分が、該複数の候補閾値の各々について見なし規則を決定するための実行可能部分をさらに包含し、該見なし規則は、該複数の候補閾値の各々に関する前記少なくとも1つの定量化可能な特徴のうちの1つの値に対応する良好な予後または不良な予後のいずれかを確立し得る、コンピュータープログラム製品。
【請求項23】
請求項20に記載のコンピュータープログラム製品であって、前記選択工程のための実行可能部分がさらに:
前記網羅的な複数の候補決定規則の各々に対応する複数の特異性と感度との対を決定するための実行可能部分と;
該複数の特異性と感度との対を、受信者動作特性曲線上にプロットするための実行可能部分と;
各々の該複数の特異性と感度との対、および最適特異性と感度との対の間の複数のユークリッド距離を算出するための実行可能部分と;
該最適特異性と感度との対に対して最小のユークリッド距離を有する特異性と感度との対に対応する最適な決定規則を選択するための実行可能部分と;
を包含する、コンピュータープログラム製品。
【請求項24】
請求項20に記載のコンピュータープログラム製品であって、前記抽出のための実行可能部分がさらに、前記少なくとも1つの定量化可能な特徴を抽出する目的領域を同定するための実行可能部分を含み、該目的領域が、前記画像処理システムを用いて複数のスライドの各々から撮った画像内である、コンピュータープログラム製品。
【請求項25】
請求項20に記載のコンピュータープログラム製品であって、前記少なくとも1つのマーカーの統計的な独立性を評価して、該少なくとも1つのマーカーが、少なくとも1つの相補的なマーカーと実質的に統計的に独立している予後を提供し得ることを保証するための実行可能部分をさらに含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項26】
請求項25に記載のコンピュータープログラム製品であって、前記評価のための実行可能部分がさらに:
観察された転帰の頻度分布を、前記少なくとも1つのマーカーおよび前記少なくとも1つの相補的なマーカーに曝された第一の複数の身体サンプルについての理論上の予後の頻度分布と比較するための実行可能部分であって、該第一の複数の身体サンプルが、既知の良好な転帰を有する患者に対応している、実行可能部分と;
観察された転帰の頻度分布を、該少なくとも1つのマーカーおよび該少なくとも1つの相補的なマーカーに曝された第二の複数の身体サンプルについての理論上の予後の頻度分布と比較するための実行可能部分であって、該第二の複数の身体サンプルが、既知の不良な転帰を有する患者に対応している実行可能部分と;
該少なくとも1つの相補的なマーカーに関して該少なくとも1つのマーカーの独立性を評価するための実行可能部分と、
を含む、コンピュータープログラム製品。
【請求項27】
請求項26に記載のコンピュータープログラム製品であって、評価のための前記実行可能部分が、カイ二乗分析を用いて前記少なくとも1つの相補的なマーカーに関して前記少なくとも1つのマーカーの独立性を評価するための実行可能部分をさらに含む、コンピュータープログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−513793(P2008−513793A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532659(P2007−532659)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/033931
【国際公開番号】WO2006/036726
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507006097)トリパス イメージング, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】