説明

ガーゼカウントホルダ

【課題】操作性に優れ、カウントミスを有効に防止できるように改良されたガーゼカウントホルダを提供する。
【解決手段】保持するガーゼ5の枚数に等しい数の開口部10と、各開口部を部分的に閉止する揺動フラップ20と、を備えるガーゼカウントホルダ。揺動フラップ20は、開口部の全体を開口状態とする開位置と、同開口部10を部分的に閉止する閉位置との間を揺動可能である。また、開口部10は、相対的に開口面積の大きな大開口領域と、相対的に開口面積の小さな小開口領域とを含む。開口部10にガーゼ5を挿通した状態で、揺動フラップ20を閉位置まで揺動させると、大開口領域11のみが実質的に閉止され、小開口領域12にガーゼが保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のガーゼについて、その数を明確に把握した上で保持することのできるガーゼカウントホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
ガーゼカウントホルダは、代表的には、手術に際して使用される。手術においては、止血等のために複数枚のガーゼが使用されるが、手術で開けた体内に誤ってガーゼを残したまま傷口を縫合してしまうという医療ミスがしばしば報告されている。
このような医療ミスは、手術前に用意したガーゼの数を明確に把握しておき、傷口を縫合する前に、同数のガーゼが(体外に)存在することを確認することで、確実に防ぐことができる。
【0003】
このような目的で使用されるガーゼ計数手段は、特許文献1、2等に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3447655号
【特許文献2】特開2007-330445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述のような手術に際して使用するのに好適なガーゼカウントホルダであって、操作性に優れ、カウントミスを有効に防止できるよう改良されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたものであって、以下の特徴を供えたガーゼカウントホルダを提供する。
本発明のガーゼカウントホルダは、「保持するガーゼの枚数に等しい数の開口部」と「各開口部を部分的に閉止する揺動フラップ」とを備える。
(ア)揺動フラップは、上記開口部の全体を開口状態とする開位置と、同開口部を部分的に閉止する閉位置と、の間を揺動可能である。
(イ)上記開口部は、相対的に開口面積の大きな大開口領域と、相対的に開口面積の小さな小開口領域とを含む。
(ウ)上記開口部にガーゼを挿通した状態で、揺動フラップを閉位置まで揺動させると、大開口領域のみが実質的に閉止され、小開口領域にガーゼが保持される。
【0007】
上記構成を有するガーゼカウントホルダにおいては、最初に、開口面積の大きな大開口領域にガーゼを挿通させるので、ガーゼのセットが容易となる。この状態で、揺動フラップを閉位置に揺動させると、大開口領域は閉止され、開口面積の小さな小開口領域のみが開口状態を維持し、この小開口領域に、ガーゼが確実に保持されることとなる。
つまり、開口部に対して簡単にガーゼをセットし、その後、揺動フラップを閉位置とすることで、ガーゼが確実に保持される。したがって、操作が容易で確実にガーゼを保持できる。
【0008】
特に、小開口領域の開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有するよう構成した場合には、ガーゼ総数のカウント結果に対する信頼性がさらに高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るガーゼカウントホルダの使用方法を説明する概略図。
【図2】図1のガーゼカウントホルダにおける揺動フラップの機能を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0011】
≪基本構成≫
図1は、本発明の一実施形態に係るガーゼカウントホルダの使用方法を示す概略図である。詳細は後述するが、大雑把に言うと、まず、揺動フラップ20を上に上げた状態(開位置)で、プレート8の開口部10にガーゼ5を挿通する(図1a)。次に、揺動フラップ20を閉位置まで揺動させて、ガーゼ5を保持する(図1b)。
揺動フラップ20を閉位置にしたとき、開口部の狭い一部領域(小開口領域)だけが開口状態に維持され、ここにガーゼ5が保持されることとなる。
【0012】
図2は、本発明のガーゼカウントホルダを構成するプレート8を図示している。この実施形態では、ガーゼカウントホルダは、細長い平板状プレート8で構成され、その長さ方向に並ぶ5つの開口部10を備える。各開口部10は、相対的に開口面積の大きな大開口領域11と、相対的に開口面積の小さな小開口領域12と、を含んでいる。
主として、大開口領域11はガーゼ5をセットするために、小開口領域12はガーゼ5を保持するために、それぞれ使用される。
【0013】
揺動フラップ20は、各開口部10の近傍に揺動可能に配置されていて、閉位置と開位置の間で揺動可能である。
開位置では、図1(a)および図2(a)に示したように、揺動フラップ20は、上方に上げられて、開口部10の全体を開口させる。
閉位置では、図1(b)および図2(b)に示したように、揺動フラップ20は、開口部10の大開口領域11のみを実質上閉止して、小開口領域12のみが開口状態に維持されて、ここにガーゼ5が保持される。
【0014】
図1(b)および図2(b)から分かるように、揺動フラップ20は、閉位置において、大開口領域11を完全に閉止する必要はない。僅かな隙間が残っても、小開口領域12にガーゼ5を保持するのに十分な程度に、大開口領域11を閉止できれば足りる。
【0015】
以上の構成を有する本発明のガーゼカウントホルダによれば、揺動フラップ20が開位置にあるとき、開口面積の大きな大開口領域11が開口しているので、簡単にガーゼ5を開口部10に挿通させることができる(セットが簡単)。
その後、揺動フラップ20を下方に揺動させて閉位置とすると、大開口領域11は閉止され、開口面積の小さな小開口領域12のみが開口状態を維持し、ここにガーゼ5が適正に保持・固定される(固定が簡単)。
【0016】
≪各開口部に対して、ガーゼ1枚のみが確実に保持されるための構成≫
ガーゼカウントホルダにおいては、ガーゼの枚数を正確に把握できることが重要であるため、1つの開口部に対してガーゼが1枚だけ保持されることが確実となる構成が好ましい。
この目的を達成するための本発明の特徴は、次の通りである。
【0017】
小開口領域の開口面積を、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有するよう設定しておく。ガーゼは柔軟な布材であるが、1枚のガーゼを丸める、あるいは折り畳む等して中間部分を適度な圧力をもって保持するとき、当該保持される部分の断面積が想定される。本発明においてこの断面積に要求される性質は、ガーゼの不要な抜け落ちが防止されるとともに、当該面積内に2枚のガーゼを保持することが、自然な力作業では明らかに困難となることである。
小開口領域の面積をそのように設定しておくことで(換言すると、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりとしておくことで)、もし誤って最初に1つの開口部10内に2枚のガーゼを入れてしまった場合であっても、揺動フラップ20を閉位置に揺動させる際に、その揺動操作がスムーズに行えないこととなるので、その時点で枚数の誤りに気付くことができ、余分な1枚を除去できる。
なお、そのような開口面積の具体的な値は、対象となるガーゼの大きさによって当然に異なるので、予め対象となるガーゼの大きさを決めた上で、ガーゼカウントホルダは製造されることとなる。
【0018】
≪指掛かり部≫
上述の通り、揺動フラップ20は開位置と閉位置の間を揺動するが、揺動フラップ20を指で操作する場合、その操作が容易となるように、揺動フラップ20に指掛かり部25を設けている。つまり、図2(a)中のA−A断面図に最も良く現れているように、揺動フラップ20にはその周縁から立設する指掛かり部25を有する。
勿論、具体的な指掛かり部25の形状は、図示したものに限られず、指で操作するのに適していれば、適宜の形状を採用することが可能である。
【0019】
≪位置固定手段およびクリック手段≫
揺動フラップ20が閉位置にきたとき、その状態を固定する位置固定手段、あるいは、揺動フラップ20が閉位置にきたときに、そのことを感覚的に知らせるクリック手段を設けることが好ましい。
具体的には種々の公知構成を採用できるが、例えば、図2中の部分拡大図に模式的に示したように、揺動フラップ20を含めたプレート8全体を弾性材料で作成し、揺動フラップ20の周縁に突起26を、これに対応する開口部10の周縁に凹部16を、それぞれ形成する。そして、揺動フラップ20が閉位置にきたときに、突起26と凹部16が係合することで、カチッカチッという節度感を伴う適度なクリックが与えられる。これにより、使用者は、直観的にそのことを認識できる。
同時に、突起26と凹部16が係合することで、揺動フラップ20の位置が一時的に固定され、これが位置固定手段として機能する。ただし、位置固定手段とクリック手段を別々に設けることも可能であるし、具体的な構成についても、他の公知の構成を適宜採用することができる。
【0020】
≪その他≫
開口部10の具体的な形状は、図示したものに限られず、適宜変更を加えることが可能である。
また、図示した例では、ガーゼを保持する開口部の総数は5で、各揺動フラップ20の表面には、カウントを容易にするためのナンバリングを付している。しかし、開口部の総数は必要に応じて適宜設定することが可能であり、ナンバリングの有無および具体的態様についても適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0021】
5 ガーゼ
8 プレート
10 開口部
11 大開口領域
12 小開口領域
16 凹部
20 揺動フラップ
25 指掛かり部
26 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持するガーゼ(5)の枚数に等しい数の開口部(10)と、各開口部を部分的に閉止する揺動フラップ(20)と、を備えるガーゼカウントホルダであって、
(ア)揺動フラップ(20)は、上記開口部(10)の全体を開口状態とする開位置と、同開口部(10)を部分的に閉止する閉位置と、の間を揺動可能であり、
(イ)上記開口部(10)は、相対的に開口面積の大きな大開口領域(11)と、相対的に開口面積の小さな小開口領域(12)とを含み、
(ウ)上記開口部(10)にガーゼ(5)を挿通した状態で、揺動フラップ(20)を閉位置まで揺動させると、大開口領域(11)のみが実質的に閉止され、小開口領域(12)にガーゼが保持される、ガーゼカウントホルダ。
【請求項2】
上記小開口領域(12)の開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有する、請求項1記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項3】
上記揺動フラップ(20)は、これを操作する指と係合する指掛かり部(25)を備える、請求項1または2記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項4】
上記揺動フラップ(20)が閉位置にきたときに、そのことを節度感をもって知らせるクリック手段(16、26)を備える、請求項1〜3のいずれか1つに記載のガーゼカウントホルダ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−29985(P2012−29985A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173800(P2010−173800)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】