説明

ガーゼカウントホルダ

【課題】操作性に優れ、手術に際して使用されるガーゼのカウントミスを有効に防止できるよう改良されたガーゼカウントホルダを提供する。
【解決手段】ガーゼカウントホルダを構成する2つの細長いプレート材10、30には、長手方向に間隔をおいて複数の突起部15、35が対向して設けられており、各突起部は、揺動可能な爪状フラップ16、36を備える。対向する爪状フラップ16と36の先端同士を連結して保持爪50を構成するとともに、隣接する2つの保持爪50、50が、ガーゼを1枚保持する保持部Aとして機能する。両プレート材10、30を閉じた時、隣接する2つの保持爪50、50同士が互いの先端を近接させてガーゼを保持する。反対に、両プレート材10、30を開くと、これと連動して、先端を近接させた2つの保持爪50、50が互いに離れる方向に退避し、これによって、ガーゼ5を出し入れする経路Bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のガーゼについて、その数を明確に把握した上で保持することのできるガーゼカウントホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
ガーゼカウントホルダは、代表的には、手術に際して使用される。手術においては、止血等のために複数枚のガーゼが使用されるが、手術で開けた体内に誤ってガーゼを残したまま傷口を縫合してしまうという医療ミスがしばしば報告されている。
このような医療ミスは、手術前に用意したガーゼの数を明確に把握しておき、傷口を縫合する前に、同数のガーゼが(体外に)存在することを確認することで、確実に防ぐことができる。
【0003】
このような目的で使用されるガーゼ計数手段は、特許文献1、2等に提案されている。しかしながら、これらの文献に開示されたガーゼ計数手段では、ホルダにガーゼをセットする操作が煩わしい。
すなわち、特許文献1では、その図1、図3に示される通り、スリット状または鍵穴状の係止部にガーゼがセットされるので、これらの狭い部分にガーゼを押し込む操作が面倒である。
また、特許文献2では、狭いくり抜き穴にガーゼを通す必要があり、やはり面倒な作業となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3447655号
【特許文献2】特開2007-330445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述のような手術に際して使用するのに好適なガーゼカウントホルダであって、ガーゼのセットまたは取出しの操作性に優れ、カウントミスを有効に防止できるよう改良されたものを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
本発明は、上記課題を有効に解決するために創案されたものであって、以下の特徴を供えたガーゼカウントホルダを提供する。
【0007】
本発明のガーゼカウントホルダは、保持するガーゼの枚数に等しい数の保持部を備えている。
(ア)
当該ガーゼカウントホルダは、細長い第1プレート材および第2プレート材を備え、両プレート材は長手方向側縁において互いに開閉可能に連設されている。
両プレート材には、連設された側縁とは反対側の側縁に、上記長手方向に間隔をおいて複数の突起部が対向して設けられている。
各突起部は、上記長手方向に沿って突出し揺動可能な爪状フラップを備える。
対向する「第1プレート材上の爪状フラップ」と「第2プレート材上の爪状フラップ」とが、先端同士が連結されて保持爪を構成するとともに、上記長手方向に隣接する2つの保持爪が、上記保持部の1つとして機能する。
(イ)
第1プレート材と第2プレート材を閉じた時、上記隣接する2つの保持爪同士が互いの先端を近接させて、当該2つの保持爪と両プレート材との間にガーゼを保持する。
一方、第1プレート材と第2プレート材を開くと、これと連動して、先端を近接させた2つの保持爪が互いに離れる方向に退避し、これによって、ガーゼを出し入れする経路が形成される。
【0008】
上記構成を有するガーゼカウントホルダにおいては、最初、第1プレート材と第2プレート材を開いた状態とすることで、上記経路から各保持部にガーゼを簡単にセットできる。次に、両プレート材を閉じると、これに連動して隣接する2つの保持爪同士が互いの先端を近接させ、当該2つの保持爪と両プレート材との間にガーゼを保持する。
つまり、開いた状態で簡単にガーゼをセットし、その後、両プレート材を閉じると、ガーゼが確実に保持される。ガーゼを取り出す際には、上とは逆に、第1プレート材と第2プレート材を開き、保持爪が退避することで現れる経路から、スムーズに取出し操作を行うことができる。
このように、ガーゼのセットおよび取出しの操作が容易で、しかも確実にガーゼを保持できる。
【0009】
特に、先端を近接させた状態にある2つの保持爪と両プレート材との間に形成される開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有するよう構成した場合には、ガーゼ総数のカウント結果に対する信頼性がさらに高くなる。
【0010】
なお、本明細書において、2つのプレート材を「第1」、「第2」と区別しているが、これは説明の便宜上のものに過ぎず、いずれが「第1」または「第2」であってもよい。
【0011】
さらに、本発明において、以上の構成を備えたガーゼカウントホルダを2つ用意して、それぞれを第1ユニットおよび第2ユニットとし、両者を回動可能に連結してもよい。これにより、保持できるガーゼの数が2倍になるとともに、両ユニットを折り畳むことでコンパクトに保管等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガーゼカウントホルダの正面図。
【図2】図1aの状態(閉じた状態)のガーゼカウントホルダの斜視図。
【図3】図1bの状態(開いた状態)のガーゼカウントホルダの斜視図。
【図4】図1のガーゼカウントホルダの使用方法を説明する図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るガーゼカウントホルダを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0014】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の一実施形態に係るガーゼカウントホルダを示す正面図である。後述するように、ガーゼカウントホルダを構成する2つのプレート材10、30は、開閉が可能であって、図1(a)は閉じた状態を、図1(b)は開いた状態を示している。図2は閉じた状態での斜視図で、図3は開いた状態での斜視図である。
ガーゼカウントホルダは、長手方向側縁において互いに開閉可能に連設された細長い第1プレート材10および第2プレート材30を備える。正面から見ると、第1プレート材10だけが見える(図1)。
【0015】
第1プレート材10には、長手方向に間隔をおいて複数の突起部15設けられており、各突起部15は、横方向に(プレート材10の長手方向に)突出し、揺動可能な爪状フラップ16を備える。
第2プレート材30も、第1プレート材10と同じ構成であって、長手方向に間隔をおいて複数の突起部35設けられており、各突起部35は、横方向に(プレート材30の長手方向に)突出し、揺動可能な爪状フラップ36を備える。
【0016】
第1プレート材10と第2プレート材30は、突起部15、35が設けられた側縁とは反対側の側縁において、互いに開閉可能に連設されている。図示した例では、第1プレート材10と第2プレート材30は、薄肉部8を介して開閉可能となるように構成された一体物であるが、両プレート材を別々に作成して、何らかの連結手段で開閉可能に連結してもよい。
【0017】
図3は、第1プレート材10と第2プレート材30を開けた状態で示す斜視図である。矢印“R”で示したように、第1プレート材10と第2プレート材30は、薄肉部8を回転軸として回転することで、閉じたり開いたりすることができる。「第1プレート材上の突起部15が備える爪状フラップ16」と「第2プレート材上の突起部35が備える爪状フラップ36」とは、先端同士が可動連結されて1つの保持爪50を構成している。さらに、隣接する2つの保持爪50、50が、保持部Aとして機能する。
保持部Aの数は手術に際して予め用意しておくガーゼ5の枚数に等しく、したがって、このガーゼカウントホルダを使用することで、手術前に用意した全てのガーゼ5が看者の体外に取り出されていることが簡単かつ確実に確認できる。
【0018】
なお、突起部15、35は、プレート材10、30の長手方向に複数存在するが、両端の突起部は片側にだけ保持爪50を備え、その間の4つの突起部は両側に保持爪50を備えることとなる。
【0019】
図4は、ガーゼカウントホルダの使用方法を説明している。第1プレート材10と第2プレート材30を閉じた時(重ね合わせた時)、隣接する2つの保持爪50、50同士が互いの先端を近接させて、当該2つの保持爪と両プレート材10、30との間にガーゼを保持する。このように、2つの保持爪が1つの保持部Aを構成している。
第1プレート材10と第2プレート材30を開くと、この動作と連動して、先端を近接させていた2つの保持爪50、50が互いに離れる方向に退避し、これによって、ガーゼ5を出し入れする経路Bが形成される(図4)。
【0020】
以上の構成を有する本発明のガーゼカウントホルダによれば、両プレート材10、30が開いた状態にあるとき、退避した2つの保持爪50、50間の経路B(図4)から簡単にガーゼ5をセットでき、取り出すことも容易である。
両プレート材10、30を重ね合わせると、保持爪50、50が互いの先端を近接させて、当該2つの保持爪と両プレート材10、30との間にガーゼ5を保持する(固定が簡単)。
【0021】
図示した例では、ガーゼカウントホルダは、5枚のガーゼを保持するように構成されているが、保持部Aの数を変更して、適宜の枚数のガーゼを保持するよう構成できる。
また、2つのプレート材10、30を「第1」、「第2」と区別しているが、これは説明の便宜上のものに過ぎず、いずれが「第1」または「第2」であってもよい。
【0022】
≪両プレート材10、30の相対位置を仮止めする係止手段≫
上に説明したように、ガーゼカウントホルダは、開閉可能な2つのプレート材10、30を開いた状態でガーゼ5をセットし、閉じるとガーゼ5が保持(固定)される。したがって、これらの操作を容易にするために、両プレート材10、30を開いた状態、あるいは閉じた状態に仮止めする係止手段を設けることが好ましい。
係止手段の具体的構成は特に限定されない。例えば、弾性変形する凹部と凸部を利用したスナップ係合手段や、一方のプレート材に設けたフック部を他方のプレート材に引っ掛けて固定する手段等、適宜の構成を採用可能である。
【0023】
≪保持爪50の具体的な形状≫
保持爪50の具体的な形状は、図示したものに限られず、ガーゼを良好に保持できるよう、種々の形を採用できる。また、図示した例では、1つの保持部Aを構成する2つの保持爪50、50が同一の形状(左右対称)を有するが、右側と左側で異なる形状の保持爪としてもよい。
【0024】
≪各保持部Aに対して、ガーゼ1枚のみが確実に保持されるための構成≫
ガーゼカウントホルダにおいては、ガーゼの枚数を正確に把握できることが重要であるため、1つの保持部Aに対してガーゼが1枚だけ保持されることが確実となる構成が好ましい。
この目的を達成するための本発明の特徴は、次の通りである。
【0025】
図2の閉じた状態において、1つの保持部Aを構成する2つの保持爪50、50と、両プレート材10、30との間に形成される開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有するよう設定しておく。
ガーゼは柔軟な布材であるが、1枚のガーゼを丸める、あるいは折り畳む等して中間部分を適度な圧力をもって保持するとき、当該保持される部分の断面積が想定される。本発明においてこの断面積に要求される性質は、ガーゼの不要な抜け落ちが防止されるとともに、当該面積内に2枚のガーゼを保持することが、自然な力作業では明らかに困難となることである。
開口領域の面積をそのように設定しておくことで(換言すると、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりとしておくことで)、もし誤って最初に1つの保持部Aに2枚のガーゼを入れてしまった場合であっても、両プレート材10、30を閉じる際に、その操作がスムーズに行えないこととなるので、その時点で枚数の誤りに気付くことができ、余分な1枚を除去できる。
なお、そのような開口面積の具体的な値は、対象となるガーゼの大きさによって当然に異なるので、予め対象となるガーゼの大きさを決めた上で、ガーゼカウントホルダは製造されることとなる。
【0026】
≪第2実施形態≫
図5は、本発明の第2実施形態を示している。第2実施形態に係るガーゼカウントホルダは、折畳可能に連結された2つのユニット1、2で構成される。ユニット1、2は、それぞれ、図1〜図4で説明した第1実施形態に実質的に等しい。
【0027】
両ユニットの第2プレート材上の突起部35同士を回動可能に連結しているので、図5に示したように、全体を2つに折り畳んでコンパクト化することができる。図示した例では、突起部35同士が薄肉部9を介して回動可能となるように一体構成されているが、両ユニットの適宜の箇所を回動可能に連結し、折畳みに都合が良いように構成すればよい。また、両プレート材を別々に作成して、何らかの連結手段で回動可能に連結することもできる。
【0028】
第2実施形態のガーゼカウントホルダによれば、コンパクトな構成で、第1実施形態の2倍の枚数のガーゼを保持することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
8、9 薄肉部
10 第1プレート材
15 突起部
16 爪状フラップ
30 第2プレート材
35 突起部
36 爪状フラップ
50 保持爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持するガーゼ(5)の枚数に等しい数の保持部(A)を備えるガーゼカウントホルダであって、
(ア)
当該ガーゼカウントホルダは、細長い第1プレート材(10)および第2プレート材(30)を備え、両プレート材(10、20)は長手方向側縁において互いに開閉可能に連設されており、
両プレート材(10、30)には、連設された側縁とは反対側の側縁に、上記長手方向に間隔をおいて複数の突起部(15、35)が対向して設けられており、
各突起部は、上記長手方向に沿って突出し揺動可能な爪状フラップ(16、36)を備え、
対向する第1プレート材上の爪状フラップ(16)と第2プレート材上の爪状フラップ(36)とが、先端同士が連結されて保持爪(50)を構成するとともに、
上記長手方向に隣接する2つの保持爪(50、50)が、上記保持部(A)の1つとして機能し、
(イ)
第1プレート材(10)と第2プレート材(30)を閉じた時、上記隣接する2つの保持爪(50、50)同士が互いの先端を近接させて、当該2つの保持爪と両プレート材(10、30)との間にガーゼ(5)を保持し、
第1プレート材(10)と第2プレート材(30)を開くと、これと連動して、先端を近接させた2つの保持爪(50、50)が互いに離れる方向に退避し、これによって、ガーゼ(5)を出し入れする経路(B)が形成される、ガーゼカウントホルダ。
【請求項2】
上記第1プレート材(10)および第2プレート材(30)を、閉じた状態、または開いた状態の少なくとも一方で係止する係止手段を備える、請求項1記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項3】
上記隣接する2つの保持爪(50、50)が互いに異なる形状を有する、請求項1または2記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項4】
第1プレート材(10)と第2プレート材(30)を閉じて上記隣接する2つの保持爪(50、50)同士が互いの先端を近接させたとき、当該2つの保持爪と両プレート材(10、30)との間に形成される開口面積が、実質上、ガーゼ1枚だけを保持できる拡がりを有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載のガーゼカウントホルダ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のガーゼカウントホルダを2つ備え、これらを回動可能に連結して構成される、ガーゼカウントホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−85951(P2012−85951A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237322(P2010−237322)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】