説明

キチン系糞便改質剤を含む吸収性物品

キチン系糞便改質剤が、使い捨て吸収性物品に堆積した糞便の少なくとも一部分と接触可能であるよう、使い捨て吸収性物品に配置された有効濃度のキチン系糞便改質剤を含む、糞便を受けることに適合した使い捨て吸収性物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつ、成人用失禁製品など使い捨て吸収性物品を含む、体の排泄物を吸収する及び/又は閉じ込める物品に関する。より具体的には、本発明は、使い捨て吸収性物品に堆積することのある糞便又は他の体外排泄物の物理的特性を改質するように作用する1以上の薬剤を含む使い捨て吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつ及び成人失禁用ブリーフなど吸収性物品の主要な機能は、体の滲出物が、衣類、又は着用者と接触することのある寝具など他の物品を汚す、濡らす、或いは汚染するのを防ぐことである。近年、使い捨ておむつは非常に人気があり、その便利さ及び確実性のために、耐久性のある布の吸収性物品にほぼ取って代わった。しかしながら、そのような使い捨て吸収性物品の有効性にもかかわらず、体の滲出物は依然として漏れることが多いため、又はおむつ内に貯蔵されるため、排泄物が着用者の皮膚を汚す及び/又は刺激する。更に、体の滲出物は皮膚に強固に粘着することが多く、洗浄が困難になり、長期間に亘る残留物汚染の可能性を増大する。当該技術分野の吸収性物品に伴うこれらの、及び他の重要な問題の根本的な原因は、加えられた剪断応力下の移動性と体の滲出物との、特に糞便との粘着性にある。
【0003】
困難な浄化及び/又は残留物による皮膚の汚染などの漏れ及び/又は不適切な汚染による望ましくない影響は、おむつに堆積した糞便物質に関して特に明白である。おむつに閉じ込められた糞便は、着用者の皮膚を長時間に亘って損なうことになり、おむつから漏れる糞便のために、ほぼ常に、不愉快な汚い後始末に当面する。故に、トップシート上の糞便物質の移動を制限するために、及び/又はおむつに糞便物質を更に良好に閉じ込めるために、バリア(遮蔽物)、ポケット、スペーサー、横方向のバリア、孔あきトップシートなどの機構をおむつに加えるいくつかの試みが行われてきた。しかしながら、そのような試みはこれらの問題の根本的な原因(即ち、糞便の特性)と取り組んでいないため、またその費用及び複雑性のために、ほぼ不成功であった。更に、糞便を隔離する又は閉じ込めるための手段の多くは、一定の物理的特性(例:粘度、遊離水の含有量、及び粒度)を有する糞便物質に関するもので、非常に狭い範囲外にある物理的特性を有する滲出物には有効でない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故に、改善された糞便管理特性を有する吸収性物品を提供することが望ましい。更に、着用者又は介護人への、糞便又は他の粘稠な体外排泄物の負の影響を最小にする性能を有する経済的な使い捨て物品を提供することは、有利である。物品への糞便の受入れ及び/又は物品内での糞便の不動化を改善するために、及び/又は糞便による着用者の皮膚の汚染を低減するために、化学的に又は物理的に糞便と反応して糞便の特性を変えるように設計された物品を提供することも有利である。同様に、物理的又は化学的に改質された糞便を、着用者の皮膚及び/又は衣類から離して、予想される使用時間に亘って安全に且つ清潔に貯蔵するのに充分に有効な収容力及び保持能力を有する物品を提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様に従って、糞便を受けることに適合した使い捨て吸収性物品が提供される。該使い捨て吸収性物品は:
キチン系糞便改質剤が、同物品に堆積した糞便の少なくとも一部分と接触して使用可能であるように、同物品に配置された有効濃度のキチン系糞便改質剤を含む。
【0006】
本発明の第2態様に従って、第1腰部区域と、第1腰部区域に対向する第2腰部区域と、第1腰部区域と第2腰部区域との間に位置する股部区域とを有する、糞便を受けることに適合した使い捨て吸収性物品が提供される。該使い捨て吸収性物品は:
(a)液体透過性トップシート;
(b)トップシートの少なくとも一部分に接合した液体不透過性バックシート;
(c)トップシートの少なくとも一部分とバックシートの少なくとも一部分との間に位置する吸収性コア;及び
(d)キチン系糞便改質剤が、物品に堆積した糞便の少なくとも一部分と接触可能であるように該物品に配置され、該物品に堆積することのある該糞便の少なくとも一部分の粘度又は硬度が変わるようにした有効濃度のキチン系糞便改質剤、
を有する吸収性物品。
【0007】
本発明の第3態様に従って、第1腰部区域と、第1腰部区域に対向する第2腰部区域と、第1腰部区域と第2腰部区域との間に位置する股部区域とを有する、糞便を受けることに適合した使い捨て吸収性物品が提供される。該使い捨て吸収性物品は:
(a)液体透過性トップシート;
(b)該トップシートの少なくとも一部分に接合した液体不透過性バックシート;
(c)該トップシートの少なくとも一部分と該バックシートの少なくとも一部分との間に位置する吸収性コア;
(d)ミリジュールのエネルギーあたり0.19グラム/平方センチ/ミリジュール(0.50グラム/平方インチ/ミリジュール)より大きいアクセプタンスアンダープレッシャーを有する腰部管理要素;及び
(e)有効濃度のキチン系糞便改質剤、
を有する吸収性物品。
【0008】
引用されるすべての特許、論文、文献、及び他の資料は、その関連部分において本明細書に参考として組み込まれるが、いずれの文献の引用もそれが本発明に関して先行技術であるとの容認として解釈されるべきではない。
【0009】
特に指定しない限り、すべてのパーセント、比率、及び割合は重量によるものであり、すべての温度は摂氏温度(℃)によるものである。すべての測定値は、特に指定しない限りSI単位による。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書は、本発明を特定して指摘し明白に請求する特許請求にて結論とするが、以下の好ましい実施形態の説明を添付図面と関連して読むことにより、本発明を更によく理解できると考えられている。
【0011】
本明細書で使用する「糞便を受けることに適合した吸収性物品」(「吸収性物品」)という用語は、体の滲出物を吸収して閉じ込めるデバイスを指し、より具体的には、体から排泄された糞便を含むがこれに限定されない様々な滲出物を吸収して閉じ込めるために、着用者の体に対して又は近接して配置されるデバイスを指す。用語「使い捨て」は、本明細書において、洗濯、又は他の方法で吸収性物品として修復若しくは再使用することを一般に意図しない(即ち、その物品を、1回の使用後に廃棄するか、好ましくはリサイクルするか、堆肥化するか、そうでなければ環境に適応した方法で処分することを意図する)吸収性物品を記述するのに用いる。本明細書で使用する用語「おむつ」とは、一般に乳幼児及び失禁者により胴体下部の周囲に着用される吸収性物品を指す。本発明はまた、失禁用ブリーフ、失禁用下着、吸収性挿入物、トレーニングパンツ、おむつホルダー及びライナーなど、他の吸収性物品にも適用可能である。
【0012】
本発明の一実施形態では、吸収性物品は使い捨ておむつである。一般的には、最近の使い捨ておむつは、液体透過性トップシート、液体不透過性バックシート;好ましくはトップシートの少なくとも一部分とバックシートの少なくとも一部分との間に位置する吸収性コア;サイドパネル;弾性化したレッグカフ;弾性的ウエスト機構;及び締着装置を具備する。一実施形態では、使い捨ておむつの対向する側面を縫い合わせるか、又は結合して、パンツを形成することも可能である。これにより、この物品は、トレーニングパンツのようなプルオン型おむつとして使用可能になる。使い捨ておむつの構造、組み立て、及び様々な構成要素についての追加の実例ではあるが、非限定的な情報は:米国特許第3,860,003号(ビューエル(Buell));米国特許第5,151,092号(ビューエル(Buell));米国特許第5,221,274号(ビューエル(Buell));米国特許第5,554,145号(ロー(Roe)ら、1996年9月10日);米国特許第5,569,234号(ビューエル(Buell)ら);米国特許第5,580,411号(ニース(Nease)ら);米国特許第6,004,306号(ロブレス(Robles)ら);米国特許第5,938,648号(ラボン(LaVon)ら);米国特許第5,865,823号(クーロ(Curro));米国特許第5,571,096号(ドブリン(Dobrin)ら);米国特許第5,518,801号(チャペル(Chappell)ら);米国特許第4,573,986号(ミネトラ(Minetola)ら);米国特許第3,929,135号(トンプソン(Thompson));米国特許第4,463,045号(アール(Ahr)ら);米国特許第4,609,518号(クーロ(Curro)ら);米国特許第4,629,643号(クーロ(Curro)ら);米国特許第5,037,416号(アレン(Allen)ら);米国特許第5,269,775号(フリーランド(Freeland)ら);米国特許第4,610,678号(ワイズマン(Weisman)ら);米国特許第4,673,402号(ワイズマン(Weisman)ら);米国特許第4,888,231号(アンシュタット(Angstadt));米国特許第5,342,338号(ロー(Roe));米国特許第5,260,345号(デスマライス(DesMarais)ら);米国特許第5,026,364号(ロバートソン(Robertson));米国特許第3,848,594号(ビューエル(Buell));米国特許第4,846,815号(スクリップス(Scripps));米国特許第4,946,527号(バトレル(Battrell));米国特許第4,963,140号(ロバートソン(Robertson)ら);米国特許第4,699,622号(トゥーサン(Toussant)ら);米国特許第5,591,152号(ビューエル(Buell)ら);米国特許第4,938,753号(ヴァン・ゴムペル(Van Gompel)ら);米国特許第5,669,897号(ラボン(LaVon)ら);米国特許第4,808,178号(アジズ(Aziz)ら);米国特許第4,909,803号(アジズ(Aziz)ら);米国特許第4,695,278号(ローソン(Lawson))、及び米国特許第4,795,454号(ドラグー(Dragoo)に発行)、に見出される。
【0013】
本発明の他の一実施形態では、吸収性物品の一部、例えばトップシートの一部分又は全部、バリアレッグカフの一部分又は全部などは、当該技術分野において既知であるように、ローションにより任意にコーティングすることも可能である。好適なローションの例には、米国特許第5,607,760号(ロー(Roe));米国特許第5,609,587号(ロー(Roe));米国特許第5,635,191号(ロー(Roe)ら)、米国特許第5,643,588号(ロー(Roe)ら);及び米国特許第5,968,025号(ロー(Roe)ら)に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
(キチン系糞便改質剤)
本発明の吸収性物品は、1以上のキチン系糞便改質剤(「FMA」、「粘稠な体外排泄物改質剤」、又は「改質剤」)を、糞便など、粘稠な体外排泄物の化学的又は物理的特性を改質可能な有効濃度で含む。本明細書で使用する「キチン系糞便改質剤」(又はFMA)は、本明細書で説明される硬度方法によって測定されるとき、所定の糞便類似物又は好ましくは実際の糞便の硬度を少なくとも約100%に増加し得るいかなるキトサン物質も指す。しかしながら、特定の物品のデザイン及び糞便のタイプ次第で、糞便の有効粘度を増す、糞便の脱水の容易さを増す、糞便のべたつきを低減する、糞便の粘着特性を低減する、又は上記のいかなる組み合わせの実施形態もが考察される。本発明の糞便改質剤は、固体糞便の特性を改質できることもあるが、FMAは一般に、応力レオメーターで平行プレートを使用する応力レオメトリー試験で、1秒−1(one 1/sec)の剪断速度で、約10cPを超え、約10cP未満の(約35℃で)、及びより厳密には、1秒−1(one 1/sec)の剪断速度で、約10cP〜10cPの粘度をほぼ有する粘稠な流体の糞便の特性を変えるのに最も有効である。(参考として、水は、20で1.0cPの粘度を有し、JIFクリーミーピーナッツバター(プロクター・アンド・ギャンブル社(the Procter & Gamble Co.)(オハイオ州シンシナティー)から入手可能)は、この同じ剪断速度、25℃で約4X10cPの粘度を有する。)本明細書で使用する、粘度を決定する方法は、後の試験方法のセクションで詳細に説明される。
【0015】
本明細書で使用するとき、FMAは、いかなるキトサン類、変性キトサン類、架橋キトサン類、キトサン塩類、及び他のキトサン系物質も指す。
【0016】
理論に限定されることを望むものではないが、キチン系糞便改質剤は、水結合の程度を増すことによって一般的に糞便の構造部材を増大し、粘度の増加を導き、糞便の移動性を低減する増粘剤として機能することがあると考えられている。更にその上、キチン系糞便改質剤は、糞便における化学的構成要素と複合し、糞便内で、増大した構造部材及び剛性の区域を形成するイオンの錯化剤としても機能することがあるとも考えられている。生じる錯体は、糞便内の水をより堅固に安定化させるか又は結合させるように作用する。最後に、キチン系糞便改質剤は、糞便中の遊離水で溶解し、水と浸透的に「結合」し、その結果、糞便の硬い「構造部材」を増すことによって、糞便の粘度を増すことがあるとも考えられている。
【0017】
糞便でのFMAの特定の効果にかかわらず、FMAは、糞便に対してその機能を使用できるはずである。「FMA」に関連して本明細書で使用する「使用可能である」という用語は、吸収性物品に又は着用者の皮膚に堆積した糞便の少なくとも一部分に直接接触するように、吸収性物品の通常着用過程にFMAが吸収性物品内に位置するか、又は吸収性物品若しくは吸収性物品の構成要素によって提供されることを指す。FMAが構造部材内に位置する場合(例えばトップシートの下の吸収層に)、糞便がトップシートをほぼ貫通可能であるべきである。そのような場合、次の方法のセクションで説明されるアクセプタンス測量によって測定されるとき、構造部材がミリジュールのエネルギーあたり0.19グラム/平方センチ/ミリジュール(0.50グラム/平方インチ/ミリジュール)より大きい、好ましくはミリジュールのエネルギーあたり0.38グラム/平方センチ/ミリジュール(1.0グラム/平方インチ/ミリジュール)より大きい、アクセプタンスアンダープレッシャーを有する場合、FMAは、「使用可能である」。FMAが被包性である場合、FMAは、糞便が吸収性物品を汚すときに又はほぼそのときに、吸収性物品によって解放されるべきである。例えば、FMAは、尿又は糞便の水分との接触で、糞便に接触するためにFMAを溶解し、解放する水溶性フィルムによって保持されることもある。
【0018】
本明細書で使用するとき、FMAの「有効濃度」は、吸収性物品における又は着用者の皮膚上における、(後に説明される硬度方法によって測定されるような)糞便の少なくとも一部分の硬度に、測定可能な効果を有するのに必要なFMAの相対量を指す。「有効濃度」を説明するデータを後に提供する。好ましくは、処理する糞便の少なくとも約0.01重量%のFMAの濃度が望ましく、より典型的には糞便の約0.1〜約50重量%が糞便に対して使用可能である。例えば、おむつにおける25グラムの糞便の全荷重を5重量%の濃度で処理するために(即ち、「嵩」の処置)、1.25グラムのFMAが、糞便の塊に対して使用可能でなければならない(糞便の比重は1.0である)。故に、FMAは、好ましくは、物品の約0.001重量%〜約50重量%の範囲の濃度で、より好ましくは、濃度は、物品の約0.01重量%〜約20重量%の範囲で吸収性物品に存在する。
【0019】
FMAは、好ましくは、室温(20〜25℃)で処理される糞便の約20重量%以下の濃度で、硬度を約100%増すことができる。より好ましくは、FMAは、処理される糞便の約10重量%以下の濃度で、硬度を約100%増すことができる。更により好ましくは、FMAは、処理される糞便の約5重量%以下の濃度で、硬度を約100%増すことができる。他の好ましい実施形態では、FMAは、処理される糞便の約1重量%以下の濃度で、硬度を約100%増すことができる。更に他の好ましい実施形態では、FMAは、処理される糞便の約0.5重量%以下の濃度で、硬度を約100%増すことができる。典型的には、FMAは、処理される糞便の約0.1重量%〜約10重量%の濃度で硬度を約100%増すことができる。
【0020】
好ましくは、硬度における画定された増加は、糞便との接触後、約30分の範囲内で、より好ましくは約15分以内で、更により好ましくは約5分以内で、更により好ましくは約3分以内で、最も好ましくは約1分で行われる。典型的には、所望の硬度変化は、約1分〜約10分の範囲内で行われる。より好ましい実施形態では、硬度における画定された増加は、処理される糞便の約5重量%以下のFMA濃度で約3分以内に、又は処理される糞便の約1.5重量%のFMA濃度で3分以内に行われる。他の好ましい実施形態では、FMAは、約5%以下の濃度で約3分以内に、糞便類似物又は実際の糞便の硬度を約200%増加することができる。更に他の好ましい実施形態では、FMAは、約5%以下の濃度で約3分以内に、糞便類似物又は実際の糞便の硬度を約400%増すことができる。
【0021】
キトサンは、天然多糖類であるキチンを部分的又は完全に脱アセチル化したものである。キトサンは、典型的にはキチン(ポリ−β(1−4)−N−アセチル−D−グルコサミン)の脱アセチル化によって作成されるアミノポリサッカリドであり、セルロースにおけるC−2ヒドロキシル基が、キトサンにおける一級アミン基と置換されたことを除いて、構造的にセルロースと類似している。キチンは、キノコ類の細胞壁や昆虫及び甲殻類の固い殻など、自然界に広く存在する。
【0022】
キトサンの製造方法は、周知である。一般的には、キチンは粉末に粉砕されて、酢酸など、有機酸で非物質化される。次に、水酸化ナトリウムなど、塩基で処理することによりタンパク質及び脂質が除去され、次に、40%の水酸化ナトリウムなど、濃縮した塩基で処理することによりキチンが脱アセチル化される。
【0023】
キトサンの特性は、その高分子電解質及びポリマー炭水化物の特質と関連している。故に、キトサンは、水に、約6.5を超えるpHのアルカリ溶液に、又は有機溶媒にほぼ不溶性である。一般に、ギ酸、酢酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、及びクエン酸などの有機酸の希釈液には容易に溶解し、例えば硫酸は除き、鉱酸の希釈液にも容易に溶解する。一般にキトサンを溶解するのに要する酸の量は、アミノ基と化学量論的におおよそ比例する。キトサン中に存在するアミノ基のpKaは6.0〜7.0であるため、極めて低濃度の酸又はほとんど中性に近い溶液中でプロトン化することができ、このバイオポリマーはカチオン性の性質を有するようになる。
【0024】
本明細書で使用するのに好適なキトサン物質には、水溶性キトサン及び非水溶性キトサンの両方が含まれる。本明細書で使用するとき、物質が大量の水にほぼ溶解して透明且つ安定した溶液を形成し、それによって元来の粒子状形態を失い、本質的に水溶液全体に亘って分子分散するようになるときに、その物質が水溶性であるとみなされる。本明細書に用いるのに好ましいキトサン物質は、水溶性である、即ち、25℃、1気圧で、水100グラムに少なくとも0.5グラム、好ましくは少なくとも1グラム、より好ましくは少なくとも2グラムのキトサン物質が溶解する。所定の化合物の「溶解度」は、本明細書では、25℃、1気圧で、脱イオン水中で沈澱のない状態で溶解した前記化合物の量と理解されたい。
【0025】
キトサン物質(即ち、キトサン、キトサン塩類、変性キトサン類、架橋キトサン、及び他のキトサン系物質)は、一般に幅広い分子量を有することも可能である。幅広い分子量を有するキトサン物質が、本発明に使用するのに好適である。本発明の一実施形態では、本明細書において使用するためのキトサン物質は、1グラムモルあたり約1,000〜約10,000,000グラム、より好ましくは約2,000〜約1,000,000の範囲の分子量を有する。分子量とは、重量平均分子量を意味する。キトサン物質の重量平均分子量を測定する方法は、当業者には既知である。典型的な方法には、例えば、光散乱法、固有粘度、及びゲル透過クロマトグラフィーが挙げられる。一般に、キトサン物質の分子量を示すのに最も都合がよい粘度は、円筒形の#64スピンドルを使用して、ブルックフィールド粘度計を用い、25℃で、1.0重量%の水溶液における粘度である。キトサン物質の粘度は、1.0重量%の酢酸水溶液を使用するなどして、対応するキトサン塩の粘度を測定することにより、間接的に測定するのが一般的である。本発明において使用するのに好適なキトサン物質は、25℃で、1.0重量%の水溶液における粘度が、好適には約1cP〜約80,000cP(センチポアズ)、より好適には約30cP〜約10,000cP、更により好適には50cP〜約1,000cP、更により好適には100cP〜500cPである。
【0026】
キトサン物質のpHは、キトサン物質を調製するために使用される過程による。本明細書において使用するのに好ましいキトサン物質は、典型的には約4〜約6、より好ましくは4〜5.5、更により好ましくは約4.5〜約5の範囲の酸性のpHを有する。非常に好ましいpHは、皮膚のpHと一致する約pH5である。キトサン物質のpHとは、本明細書では、25℃、1気圧で、pH計で測定した1%キトサン溶液(キトサン物質1グラムを100グラムの蒸留水に溶解したもの)のpHを意味する。
【0027】
本発明の一実施形態では、本明細書で使用するキトサン物質は、キトサン塩類、特に水溶性キトサン塩類である。キトサン塩類の生成には、様々な酸を使用することができる。使用に好適な酸は、水溶性であるか部分的に水溶性であり、キトサンのアンモニウム塩を生成するのに充分に酸性であるが、キトサンの加水分解を引き起こすほど酸性ではなく、キトサンの反応部位をプロトン化させるのに充分な量存在する。
【0028】
無機酸によって生成されるキトサン塩の例には、キトサン塩酸塩、キトサン臭化水素酸塩、キトサンリン酸塩、キトサンスルホン酸塩、キトサンクロロスルホン酸塩、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有機酸によって生成されるキトサン塩の例には、キトサンギ酸塩、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサングリコール酸塩、キトサンマロン酸塩、キトサンエポキシコハク酸塩、キトサン安息香酸塩、キトサンクロロ酢酸塩、キトサンアジピン酸塩、キトサンクエン酸塩、キトサンサリチル酸塩、キトサンプロピン酸塩、キトサンニトリロ三酢酸塩、キトサンイタコン酸塩、キトサンヒドロキシ酢酸塩、キトサン酪酸塩、キトサンイソブル酸塩、キトサンアクリル酸塩、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば無機酸と有機酸の両方を含む酸の混合物を用いて、キトサン塩を生成するのも好適である。
【0029】
本明細書における使用に好適ないくつかのキトサン塩は、キトサンとアミノ酸との反応によって生成されるものを含む。アミノ酸は、酸性基とアミノ官能基の両方を含有する分子である。他の酸の代わりにアミノ酸を使用することは、それらのキトサンアミノ酸塩がより高い皮膚適合性を有するので、極めて好ましい。実に、アミノ酸のほとんどが、皮膚に自然に存在している。ピロリドンカルボン酸のキトサン塩は、有効な保湿剤であり、皮膚に対する刺激がない。本明細書で使用するアミノ酸には、直鎖アミノ酸及び/又はシクロアミノ酸の両方が含まれる。本明細書で使用するアミノ酸の例には、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニン、グリシン、セリン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリンなどが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアミノ酸の好適な一例は、ピロリドンのカルボン酸であるピロリドンカルボン酸である。
【0030】
いくつかの好ましいキトサン塩には、キトサンとピログルタミン酸との混合物であるキトサンピログルタミン酸塩;キトサン塩酸塩;及び2−ピロリドンカルボン酸のキトサン塩であるキトソニウムピロリドンカルボン酸塩が挙げられる。そのようなキトサン塩の調製の過程を詳細に説明しているPCT国際公開特許WO87/7618(ユニオンカーバイド社(Union Carbide Corporation)、1987年12月12日出願)を参照する。
【0031】
本明細書で使用するのに好適な他のキトサン物質には、架橋キトサン類及び変性キトサン類が挙げられる。本発明で使用するのに好適な架橋剤は一般に水溶性であり、実質的にキトサンの糞便改質特性を低減しない。好適な架橋剤の1つは、キトサン物質上にある活性基と反応できる、少なくとも2つの官能基又は官能価を有する有機化合物である。このような活性基の例には、カルボン酸基(−COOH)、アミノ基(−NH)、又はヒドロキシル基(−OH)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような好適な架橋剤の例には、ジアミン類、ポリアミン類、ジオール類、多価アルコール類、ポリカルボン酸類、ポリオキシド類、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。キトサン溶液に架橋剤を導入する方法の1つは、溶液の調製時に架橋剤とキトサンとを混合することである。他の好適な架橋剤には、A13+、Fe3+、Ce3+、Ce4+、Ti4+、Zr3+、Cr3+及びこれらの組み合わせなど、2より多い正電荷を有する金属イオンが含まれる。
【0032】
本発明で架橋剤を使用する実施形態では、架橋剤の好適な量は、架橋キトサンを調製するために使用されるキトサンの乾燥総重量の約0.001重量%〜約30重量%、より厳密には約0.02重量%〜約20重量%、より厳密には約0.05重量%〜約10重量%、最も好ましくは約0.1重量%〜約5重量%である。
【0033】
本明細書での好適な使用のための変性キトサンには、グルカンの鎖がペンダント基を有するいかなるキトサンも含まれる。そのような変性キトサンの例には、カルボキシメチルキトサン、メチルピロリドンキトサン、グリコールキトサンなどが挙げられるが、これらに限定されない。メチルピロリドンキトサンは、米国特許第5,378,472号(ムッツァレリー(Muzzarelli)、1995年1月3日発行)に説明され、水溶性グリコールキトサン及びカルボキシメチルキトサンは、PCT国際公開特許WO87/07618(ユニオンカーバイド社(Union Carbide Corporation)、1987年12月12日出願)に説明されている。本明細書に用いるのに特に好適な変性キトサンには、水溶性の共有結合キトサン誘導体、又は、親電子有機試薬とキトサン塩とを接触させることによって得られるイオン結合キトサン誘導体が挙げられる。そのような水溶性キトサン誘導体は、米国特許第5,621,088号(グルーバー(Gruber))及び米国特許第5,597,811号(グルーバー(Gruber))に説明されている。
【0034】
キトサン誘導体の調製に用いるのに好適な親電子有機試薬は、1分子あたり2〜18個の炭素原子又はそれ以上の炭素原子を含み、典型的には1分子あたり2〜10個の炭素原子を含む。更に、親電子有機試薬は反応性基を含み、即ちこの基は求核原子と共有結合を形成できる。典型的な親電子有機試薬には、例えば、ラウリル、クロロ硫酸ナトリウム、ジメチル硫酸塩、クロロエタン硫酸ナトリウム、モノクロロ酢酸、アルキルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルトリメトキシシラン、1,2−エポキシドデカンなどの、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、グリシドール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、メチルクロライド、エチルクロライド、無水イサトイン酸、無水コハク酸、無水オクテニルコハク酸、無水酢酸、γ−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、1,3−プロパンスルトン、アクリルアミド、グリシジルトリメチル塩化アンモニウム、グリシジルジメチル塩化アルキルアンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。親電子有機試薬の好ましい種類の1つには、エポキシ基、少なくとも1つの酸性基、好ましくは2つの酸性基を含み、1分子あたり3〜18個、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する親電子有機試薬がある。その他の好ましい親電子有機試薬には、シス−親電子有機試薬及びトランス−親電子有機試薬があるが、特に好ましいのはシス−親電子有機試薬である。親電子有機試薬は、キトサンの遊離アミン又は未加工ヒドロキシル基のいずれかと反応することもある。キトサンのアミンの機能性は、一般的にヒドロキシル基より強い求核性の部位とみなされることが既知である。結果として、弱い親電分子は、キトサンのヒドロキシル基とよりもアミン基とより容易に反応する傾向がある。
【0035】
更に、親電子有機試薬基の他に、ヒドロキシアルキルエーテル基(例えばヒドロキシエチル又はヒドロキシプルピルエーテル基)、カルボキシアルキルエーテル基(例えばカルボキシメチル基)、アミド基(例えばスクシニル基)、エステル基(例えばアセテート基)、又はアミノ基(例えば3−(塩化トリメチルアンモニウム)ヒドロキシルプロピル又は3−(塩化ジメチルオクタデシルアンモニウム)ヒドロキシプロピルエーテル基)などのその他の置換基を含んだ変性キトサンも調整することができる。これらのその他の置換基は、親電子有機試薬との反応前又は反応後に導入するか、キトサン塩と親電子有機試薬及びその他の誘導体化試薬とを反応させるのと同時に導入することも可能である。
【0036】
典型的には、こうした共有結合キトサン誘導体は次のような工程を経て得ることができる。(a)キトサン塩(例えば既に記載のいずれか)を有効量の水性腐食媒質中で分散させ、遊離アミン基を含む中和キトサンを生成する。(b)親電子有機試薬をスラリー中に加える。(c)キトサン上における親電子有機試薬の置換を促進するのに有効な温度及び期間でスラリーを維持して共有結合キトサン誘導体を生成し、共有結合キトサンを水性媒質に溶解させる。キトサン誘導体は塩、即ちイオン結合体に、又は共有結合体に調製することができる。そのようなキトサン誘導体の調製工程は、米国特許第5,621,088号(グルーバー(Gruber)1997年4月15日発行)及び米国特許第5,597,811号(グルーバー(Gruber)、1997年1月28日発行)に詳細に説明されている。
【0037】
好適なキトサン類は、多数の業者から市販されている。市販のキトサン物質の代表的なものは、例えばヴァンソン社(Vanson Company)から入手可能なものである。
【0038】
本明細書で使用するのに好ましい1つのキトサン塩は、脱アセチル化度が85%を超え、水への溶解度が1%(25℃、1気圧で100グラムの蒸留水に1グラムが溶解する)、pHが4.5、及び粘度が100cps〜300cpsであるキトサンピロリドンカルボン酸(キトソニウムピロリドンカルボン酸とも呼ばれる)である。このキトサンピロリドンカルボン酸は、アマコール社(Amerchol Corporation)から商品名キタメロ(Kytamero)PC(登録商標)として市販されている。好適なキトサン塩の他の例は、アマコール社(Amerchol Corporation)(ニュージャージー州エジソン(Edison))からキタメール(Kytamer)(登録商標)PCとして市販されているキトサンピロリドンカルボン酸塩である。他の好適なFMAは、PCT国際公開特許WO01/80911に説明されている。
【0039】
典型的には、使い捨ておむつなど吸収性物品は、約0.5グラム/平方メートル〜約500グラム/平方メートル、好ましくは約1グラム/平方メートル〜約200グラム/平方メートル、より好ましくは約3グラム/平方メートル〜約100グラム/平方メートル、最も好ましくは約4グラム/平方メートル〜約50グラム/平方メートルのレベルで、FMA又はその混合物を含む。
【0040】
表IIは、糞便類似物及び/又は糞便に関する様々なFMAの濃度の効果を示している。FMAと糞便類似物又は糞便との混合が、次のサンプル調製方法で説明されている。
【表1】

1.ニュージャージー州ホボケン(Hoboken)のコグニス・ケア・ケミカルズ社(Cognis Care C hemicals)から入手可能な市販のキトサン、ハイダゲン(Hydagen)HCMF
ある実施形態では、物品内の糞便の全質量を処理する(即ち「嵩」の処理)のが望ましい一方、いくつかの好ましい実施形態では、糞便の一部分のみがFMAで処理される。これらの実施形態では、FMAは、相対的に浅く糞便内に浸透するのみで、その結果、相対的に硬く、べたつかない改質された外側層を形成することがある。これは、FMA利用の観点から、又はFMAを糞便の塊内に混合する必要を取り除くために、好ましいとも言える。改質された外側層とは、糞便の塊の残部と異なる物理的特性を有する、糞便の塊の表面の、又は表面近くの、糞便の区域又は層である。好ましくは、改質された層は、残りの糞便より硬く(即ち高い降伏応力を有する)、べたつかず、及び/又は糞便に含まれる揮発性分子の拡散に対する高い抵抗性を有し、結果として、糞便の塊の拡散/移動性の低減、及び/又は着用者の皮膚への糞便の塊の粘着の低減、及び/又は糞便のにおいの低減をもたらす。好ましくは、改質された外側層区域は、厚さ約1ミクロン〜約1000ミクロンであり、また糞便の塊全体又はそのいずれかの部分を覆うことも可能である。例えば、それは、皮膚/糞便境界面で、糞便のみを処理するのに好適であることも可能である(例えば、粘着を低減する、及び/又は洗浄を促進する、又は着用者の皮膚での拡散を低減する、又は吸収を促進する、又は物品内の拡散を低減する)。故に、10重量%の濃度で、皮膚又は物品のトップシートの30平方センチの面積の上で、糞便の塊の厚さ1ミリメートルの層を処理するために、(糞便の比重が1.0であると仮定して)糞便と接触する区域における糞便に対して、0.30グラムのFMAが使用できねばならない。
【0041】
様々な実施形態では、FMAは、液体、固体(例えば粉末、繊維、フィルム、ウェブ)、若しくは半固体、又はこれらの組み合わせであることもある。FMAは、水/油若しくは油/水エマルション、懸濁液、又は混合物で提供されることが可能である。FMAは、別個の個々の要素として(例えば繊維性バット、又は吸収性物品内の若しくは同物品に取り付けた層として)吸収性物品に配置されることもあり、ローション若しくはスキンケア組成物、ウェブなど担体溶媒の中又は上に保持されることもあり、包み、セル、若しくは封筒の構造部材で取り外し可能に封じ込められることもある。
【0042】
FMAがスキンケア組成物により放出される実施形態では、FMAは、スキンケア組成物に可溶性であることもあり、又は懸濁液の状態で若しくは単純な混合物として保持されることもある。
【0043】
FMAは、糞便へのFMAの付着によって直接、糞便に放出されてもよいか、糞便への付着の前に、最初に着用者の皮膚若しくは吸収性物品の他の要素に付着することもある。担体溶媒は、吸収性物品と一体であることも、或いは、おむつ、トレーニングパンツ、下着、若しくは他の吸収性物品に先だって又はその代わりに着用者に適用される(好ましくは少なくとも肛門周辺の上に)別個の吸収性物品を構成することも、又は同物品の構成要素であることも可能である。
【0044】
任意の担体溶媒が存在する場合、FMAは、粘着剤(特に水溶性粘着剤)、水素結合、取り外し可能な封入、スプレー、コーティングなど、当該技術分野において既知のいかなる手段を使用して、任意の担体溶媒に接合されることもある。吸収性物品への又はその構成要素へのFMAの水素結合は、FMA又は基材の少なくとも一部分のどちらかを水で僅かに濡らすことによって行われることもある。乾燥すると、FMAは吸収性物品に取り外し可能に固定される(即ち液体、水とのその後の接触が、固着を破断する)。この効果は、濡れると「ゲル化する」及びべたつくFMAにとっては強化となる。濡れは、接触前又は接触時に、FMA、吸収性物品のどちらか、又は両方を高湿度環境(例えば80%RH以上)にさらすことによって達成されることがある。或いは、その接触前又は接触時に、FMA又は吸収性物品のどちらかの少なくとも一部分の上に、水をスプレー、霧吹き、又は霧状にかけてもよい。そのような場合、構造部材は、吸収性物品に組み込まれる前に、好ましくは乾燥される。
【0045】
FMAは、吸収性物品の表面で又は表面近くで(例えばトップシート/糞便境界面で)、吸収性物品内で(排出物管理要素の中で)、又は糞便の塊の身体側(即ち皮膚、又は吸収性物品の平面より上の他の表面に最初に付着した)表面で、糞便に接触することも可能である。典型的には、FMAは、吸収性物品の、着用者の肛門と関連する区域(例えば、おむつにおいては股区域)で糞便と接触する。或いは、着用者の肛門で又は肛門近くでFMAがオリフィス、フランジ、弁、などを通過するとき、糞便がFMAに接触することもある。そのような場合、FMAは、体から押し出されるときの糞便の通過圧力によって、オリフィス又は弁から(例えば貯臓器から)表出されるか引き出されることもある。オリフィスは、シート、封筒、包み、又はFMA若しくは体からの糞便の出口に近接して配置されたFMAを含む組成物を含有する他の構造部材における、スリット、溝、又は穿孔を含むこともある。オリフィスは、糞便との接触により溶解してFMA又はFMAを含む組成物を解放する可溶性フィルムによって、最初に密閉されることもある。或いは、糞便の通過又は圧力によって構造部材が変形するとき、オリフィスが開けられることもある。体の圧力及び動きに加えて、糞便の圧力が、FMAがオリフィスを通って糞便へ表出されるのを助けることもある。
【0046】
他の実施形態では、FMAは、レッグカフ、ウエストバリア、ウエストバンド、ウエストポケットなどのガスケットと、又は糞便を離間する要素と関連することもある。FMAが、レッグカフ、ウエストバリア、又はウエストポケットなどのガスケット要素と関連する実施形態では、FMAは、着用者からの排泄物の出口(例えば肛門)の最も近くに配置されたガスケットの部分と関連するのが好ましい。
【0047】
FMAは、受動的に(例えば、通常の着用状態中に糞便が流れてFMAに接触する)、活動的に(例えば、吸収性物品における要素が信号に反応して、FMAを糞便に放出する/解放する)、又は第2の担体によって(例えば、着用者の皮膚に最初に付着する粉末又は他のスキンケア組成物)放出されることもある。糞便へのFMAの放出は、糞便押出し圧力、重量、温度、酵素活性、水分含有量、及び/又はpH;尿の存在(例えば、排便に反応した又は排便を予期した、尿が誘発するFMAの解放);体の動き、圧力、若しくは熱;又は吸収性物品の繰り返される着用中の他のいかなる誘引若しくは事象、の結果として発生することもある。
【0048】
FMAは最初、吸収性物品若しくはその任意の、部分内、又はその上に貯蔵され、次に、本明細書で説明されるいずれかの誘引事象によって解放されることもある。ある好ましい実施形態では、吸収性物品が糞便に侵される前にFMAが移動及び/又は損失するのを防ぐために、及び/又は使用中にFMAが糞便と接触するような位置決めを助けるために、FMAはフィルムの下に、セル、包み、封筒などの中に、取り外し可能に封入される。
【0049】
(任意の排泄物処理要素)
本発明の一実施形態では、吸収性物品は腰部管理要素を含むこともある。腰部管理要素は、粘性流体排泄物の受入れ、貯蔵、及び/又は不動化の管理を助けるように設計される。腰部管理要素は、股部区域若しくは腰部区域のいずれかを含む吸収性物品のどこにでも位置することもでき、コア、レッグカフなどのいかなる構造部材若しくは要素と関連しても又はそれに含まれることもある。好ましい実施形態では、腰部管理要素は、吸収性物品の着用時に着用者の肛門周辺近くにある区域に位置する。これは、排泄されたいかなる排泄物の腰部管理要素の上又は近くへの堆積を確実にするのを補助することにある。本発明のFMAは、糞便と接触する位置にある限り、貯蔵要素のどの部分と関連してもよい。
【0050】
腰部管理要素は、排泄物を受入れる、貯蔵する、又は不動化することができるいかなる物質又は構造部材であることも可能である。故に、腰部管理要素は、相互に作用する単一物質又は多くの物質を含むことも可能である。更に、腰部管理要素は、吸収性物品の他の要素と一体であることも、吸収性物品の1以上の要素と直接的に若しくは間接的に接合した1以上の独立した要素であることもある。更に、腰部管理要素は、コアから分離している構造部材を含むことも、コアの少なくとも一部分を含むか若しくは一部分であることもある。
【0051】
腰部管理要素として使用する好適な材料には、大形開放気泡発泡体、マクロ孔質耐圧縮性不織布嵩高品、開放及び閉塞気泡発泡材の大形の粒状成形物(マクロ及び/又はミクロ孔質)、嵩高不織布、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン発泡体若しくは粒状物、多数の垂直配向のループ状繊維ストランドを含む構造部材、打ち抜き穴若しくは窪みを有する上述の吸収性コアの構造部材、などが挙げることが可能である。(本明細書で使用する用語「ミクロ孔質」とは、毛管作用により流体を移送できる材料を指す。用語「マクロ孔質」とは、細孔が大きすぎて流体の毛管移送ができない材料を指し、一般に径が約0.5ミリメートルよりも大きい孔を有し、より厳密には、径が約1.0ミリメートルより大きい孔を有する。)腰部管理要素の一実施形態は、非圧縮厚さ約1.5ミリメートルを有する、機械的に固定するループランディング要素を含み、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)の3M社からXPL−7124として入手できる。他の実施形態は、110グラム/平方メートルの坪量及び7.9ミリメートルの非圧縮厚さを有する6デニールの織縮された繊維を含む樹脂接着された嵩高不織布を含み、その材料は、ジョージア州レンス(Wrens)にあるグリット社(the Glit Company)から入手できる。他の好適な吸収性及び非吸収性腰部管理要素は、(1999年8月24日、ロー(Roe)に発行された)米国特許第5,941,864号、名称「改良された糞便貯蔵性を有する使い捨て吸収性物品」に説明されている。更に、腰部管理要素又はそのいずれかの部分は、腰部管理要素の性能又は他の特性を加える、強化する、又は変えるために、FMA、ローション、若しくは他の既知の物質を含むことも、又はそれでコーティングされることもある。
【0052】
更に、腰部管理要素が存在するとき、排泄物を受けて閉じ込めるためのポケット、排泄物に空隙を提供するスペーサー、吸収性物品における排泄物の動きを制限するためのバリア、吸収性物品に堆積した排泄物の材料を受入れて閉じ込める区画若しくは空隙など、又はこれらのいかなる組み合わせを含むことが可能である。腰部管理要素として吸収性物品に使用されるポケット及びスペーサーの実施例は、米国特許第5,514,121号(ロー(Roe)ら);米国特許第5,171,236号(ドレイル(Dreier)ら);米国特許第5,397,318号(ドレイル(Dreier));米国特許第5,540,671号(ドレイル(Dreier));PCT国際公開特許WO93/25172、名称「衛生的な吸収性物品において使用するためのスぺーサー及びそのようなスペーサーを有する使い捨て吸収性物品(Spacers For Use In Hygienic Absorbent Articles And Disposable Absorbent Articles Having Such Spacer)」(1993年12月3日公開);米国特許第5,306,266号(フリーランド(Freeland));及び米国特許第5,997,520号(アール(Ahr)ら)に説明されている。区画又は空隙の実施例は、米国特許第4,968,312号(カーン(Khan));米国特許第4,990,147号(フリーランド(Freeland));米国特許第5,062,840号(ホルト(Holt)ら);及び米国特許第5,269,755号(フリーランド(Freeland)ら)に開示されている。好適な横方向のバリアの実施例は、米国特許第5,554,142号(ドレイル(Dreier)ら);PCT国際公開特許WO94/14395、名称「横方向の直立した仕切りを有する吸収性物品(Absorbent Article Having An Upstanding Transverse Partition)」(1994年7月7日公開、フリーランド(Freeland)ら);及び米国特許第5,653,703号(ロー(Roe)ら)に説明されている。低粘度糞便の管理に特に好適な他の構造部材の実施例は、米国特許第5,941,864号(ロー(Roe)ら)、米国特許第5,977,430号(ロー(Roe)ら)、及び米国特許第6,013,063号(ロー(Roe)ら)に開示されている。
【0053】
FMAは、マクロ粒子状要素上に又は同要素内に保持されることもある。これらのマクロ粒子状要素は、トップシート、カフ、若しくは吸収性物品の他の機構に(取り外し可能又は不可能に)取り付けた腰部管理要素に含まれることもあり、又は体に独立的に取り付けた分離した吸収性物品の状態で遊離することもある。更に、FMAを保持する、収容する、放出する、又は混合する構造部材のいずれもが、FMAと糞便との接触面積を増すように、及び/又は混合を促進するように設計された突出部又は他の3次元構造部材を含むことも可能である。
【0054】
腰部管理要素を含む、本発明における吸収性物品のこれらの実施形態は、ミリジュールの入力エネルギーあたりでの腰部管理要素の平方インチあたり粘性流体排泄物の約0.5グラムより多い、アクセプタンスアンダープレッシャーを有する腰部管理要素を任意に有することもある。より好ましくは、粘性流体排泄物のミリジュールのエネルギーあたり約0.236グラム/平方センチ/ミリジュール(0.6グラム/平方インチ/ミリジュール)より大きいアクセプタンスアンダープレッシャーを有する腰部管理要素である。更により好ましくは、粘性流体排泄物のミリジュールのエネルギーあたり約0.31グラム/平方センチ/ミリジュール(0.8グラム/平方インチ/ミリジュール)より大きい、最も好ましくは約0.39グラム/平方センチ/ミリジュール(1.0グラム/平方インチ/ミリジュール)より大きいアクセプタンスアンダープレッシャーを有する腰部管理要素である。一般に、少なくともミリジュールのエネルギーあたり約0.236グラム/平方センチ/ミリジュール(0.6グラム/平方インチ/ミリジュール)〜ミリジュールのエネルギーあたり約3.94グラム/平方センチ/ミリジュール(10.0グラム/平方インチ/ミリジュール)と、ミリジュールのエネルギーあたり約0.31グラム/平方センチ/ミリジュール(0.8グラム/平方インチ/ミリジュール)〜ミリジュールのエネルギーあたり約3.94グラム/平方センチ/ミリジュール(10.0グラム/平方インチ/ミリジュール)の、アクセプタンスアンダープレッシャーを有することが可能であることが判明した。
【0055】
或いは、排泄物受入れ要素は、ミリワット(mW)の力あたりの腰部管理要素の平方インチあたり少なくとも約1.5グラムの、より好ましくは力の約1.18グラム/平方センチ/ミリワット(3.0グラム/平方インチ/ミリワット)より大きい、更により好ましくは力の約1.97グラム/平方センチ/ミリワット(5.0グラム/平方インチ/ミリワット)より大きい、最も好ましくは力の約3.94グラム/平方センチ/ミリワット(10.0グラム/平方インチ/ミリワット)より大きい、レセプティブティイアンダープレッシャーを任意に有することも可能である。一般に、力の約0.59〜約19.68グラム/平方センチ/ミリワット(1.5〜約50.0グラム/平方インチ/ミリワット)であり、また力の約1.97〜約19.68グラム/平方センチ/ミリワット(5.0〜約50.0グラム/平方インチ/ミリワット)のレセプティブティイアンダープレッシャーを有することもある。
【0056】
レセプティブティイアンダープレッシャー及びアクセプタンスアンダープレッシャーのこうした好ましいパラメーターは、使用を意図するときに好ましくは評価される一体化した吸収性物品に関する。即ち、使用を意図される吸収性物品が1つより多い構成要素又は層を含む場合、吸収性物品の構成要素又は層の全てが、その性能を測定するとき、通常の使用中であるように設定されるべきである。アクセプタンスアンダープレッシャー性能を決定する方法のより詳細な説明が、下記の試験方法のセクションに含まれる。
【0057】
(試験方法)
(粘度)
粘度類似物又は糞便を、応力レオメーターによって決定することも可能である。好適なレオメーターは、T.A.インスツルメンツ社(Instruments,Inc.)(デラウエア州、ニューキャッスル(New Castle))からモデル番号SC100として入手可能である。レオメーターは、ステンレス平行プレート取り付け具を利用する。レオメーターは、サンプルが上に置かれる剛性水平の第1プレートと、第2プレートの軸線が第1プレートに対して直交するように第1プレート上に取り付けられる第2プレートとを有する。第2プレートは、径が2又は4センチである。硬く、べたつき、又は非常に粘液質のサンプルに2センチの平行プレートを使用し、非常に流れやすい若しくは「水様の」糞便又は類似物のサンプルに4センチの平行プレートを使用する。第1と第2のプレートを、測定過程中2000ミクロンまで離間する。第2プレートを、軸方向回転のために駆動軸へ接続する。駆動モータ及び歪みセンサも、駆動軸に取り付ける。全ての測定は、標準温度、標準圧力、及び標準湿度で、即ち21.1℃(70°F)、1気圧、及び50%の湿度で行われるべきである。
【0058】
試験される類似物又は糞便の好適なサンプル(典型的には2〜3グラム)を、第1プレートの上で中心を合わせ、第2プレートの軸線より下でほぼ中心を合わせて置く。試験前に未消化食物の大きい片(例えば種)があれば、取り除く。第1プレートを、所定の位置まで上げる。第2プレートの径を越えてはみ出したサンプルの過剰量を、へらを使用して取り除く。次に、測定過程中の水分損失による縁効果を防止するために、水をサンプルの縁部の周りに霧吹きする。硬いペースト状サンプルの場合、50〜50,000ダイン/平方センチの剪断応力がプログラムされて、レオメーターによりサンプルへ加えられる。流れやすい水のようなサンプルについては、5〜5000ダイン/平方センチの範囲の剪断応力が使用される。データを、指数法則関数に適合し、そこにおいて見掛粘度はkj(n−1)、kはコンシステンシー(cPxsec(n−1)の単位)、jは剪断速度(l/秒の単位)、及びnは剪断インデックス(無次元)である。従って、jが1秒−1(one 1/sec)であるとき、粘度はkである。(プレートは、試験中を通して、35°Cで維持される。)
【0059】
(硬度方法)
硬度を、スティーブンス・ファーネル社(Stevens-Farnell)のQTS−25テキスチャー・アナライザー、モデル7113−5キログラムと、486以上のプロセッサを有するインテル系マシンの関連するソフトウエアとを使用して測定する。1/2インチのステンレススチール球形プローブ及び類似物容器が設けられる。適切なプローブは、英国ハットフィールド(Hatfield)にあるレオナルド・ファーネル社(Leonard Farnell Co.)から入手できるTA18プローブである。類似物容器は、長さ7〜約16ミリメートルの、線状低密度ポリエチレンのシンチレーションバイアル瓶(内径1.397センチ+/−0.0127センチ(0.55インチ+/−0.005インチ)を有する)を切断することによって作成できる。好適なバイアル瓶は、キンブルガラス社(Kimble Glass Company)(ニュージャーシー州 バインランド(Vineland))から#58503−7バイアル瓶として入手可能である。類似物容器は、上縁部まで(水平に)、試験される類似物(本明細書で説明されるような類似物A又は類似物B)又は糞便を充填する。改質剤が評価される場合、次に説明されるサンプル調製方法によりサンプルを調製する。バイアル瓶を、1.27センチ(1/2インチ)の球形ステンレススチールプローブの下に中心を合わせて置く。プローブを、バイアル瓶中の類似物の表面にちょうど接触するように下げる。プローブを、約100ミリメートル/分で下向きに7ミリメートル移動し、停止する。硬度は、プローブの7ミリメートルの行程で記録された抵抗力のグラムでの最大値である。(室温及び類似物又は糞便は、測定過程の間、約18.3〜23.9°C(65〜75°F)にするべきである。)参考のために、硬度は、物質の粘稠モジュールと弾性モジュールとの組み合わせである、物質の複合モジュールに強く関係することが判明した。
【0060】
(類似物Aを作成する方法)
ウルトラダウンディッシュウォッシングリキッド(ULTRA DAWN DISHWASHING LIQUID)(オハイオ州シンシナティー(Cincinnnati)のプロクター・アンド・ギャンブル社(the Procter & Gamble Co)から入手可能)1.5グラムを空の金属の混合ボウルに添加する。フェクロン(Feclone)FPS−2及びフェクロン(Feclone)FPS−4を、それぞれ10グラム、ダウン(Dawn)を含むボウルに添加する。(フェクロン(Feclone)材料は両方共、ペンシルバニア州バリーフォージュ(Valley Forge,)のシリクロンスタジオ(Siliclone Studios)から入手可能。)次に、93.3°C(200°F)まで加熱した蒸留水200ミリリットルを混合ボウルに添加する。次に、生じる混合物を、ゴム又はプラスチックのへらを使用して、混合物に空泡を入れないように注意深く、均一になるまで(通常、約3〜5分)手で攪拌する。適切に調製されるとき、上記の硬度方法によって測定される類似物Aは、約7〜約10グラムの抵抗力の硬度を有する。
【0061】
(類似物Bを作成する方法)
粘性流体排泄物の類似物である類似物Bは、オハイオ州ブレックスビル(Brecksville)のグッドリッチ社(B.F.Goodrich Corporation)から入手可能なカーボポール(Carbopol)941、10グラム又は等価のアクリル酸ポリマーを蒸留水900ミリリットル中で混合することによって作成される糞便物質の類似物である。カーボポール(Carpobol)941及び蒸留水を別々に計量し、測定する。径5.08センチ(2インチ)のパドル(オハイオ州シンシナティー(Cincinnati)のVWRサイエンティフィックプロダクツ社(Scientific Products Corp.)からカタログ#BR4553−64で入手可能、0.95cm(3/8”)の攪拌シャフトBR4553−52に固定)を有する3ブレードのマリンタイプのプロペラを、蒸留水を攪拌するのに使用する。プロペラ速度を、混合中は450回転数/分(rpm)で一定にする。攪拌機には、飛まつを生じることなく渦巻きを形成させる。カーボポール(Carbopol)をゆっくりと水中にふるい入れて、渦巻きに引き込み、白い塊又は「魚眼」を形成することなく混合する。混合物を、全てのカーボポール(Carbopol)を添加するまで攪拌して、その後2分間攪拌する。混合物を含むボウルの側面をこすり、必要なだけボウルを回転させて、均一な混合物を作成する。(混合物は空泡で僅かに曇ることがある。)次いで、ニュージャージー州、フィリップスバーグ(Phillipsburg)のベーカー社(J.T.Baker Co.)から入手可能な1.0Nの体積測定のNaOH溶液100グラムを計量して、ゆっくりとその混合物に注ぎ、均一になるまで攪拌する。混合物は濃くなり、透明になるはずである。その混合物にアルカリ溶液を添加し、その後2分間攪拌する。その中和された混合物を少なくとも12時間平衡させ、その後96時間以内にアクセプタンスアンダープレッシャーテストを使用する。類似物Bの混合物を使用する前に、混合物が均一であることを確実にするために、低速(約50回転数/分(rpm))で約1分間容器の中で攪拌する。
【0062】
類似物Bは、正確に調製されるとき、55〜65グラムの「硬度」値を有するはずである。硬度を、スティーブン・ファーネル(Stevens-Farnell)QTS−25テキスチャ−・アナライザー、モデル7113−5キログラムと、486以上のプロセッサを有する、インテル系マシンの関連するソフトウエアとを使用して測定する。1.27センチ(1/2インチ)のステンレススチール球形プローブと類似物容器とを用意する。適切なプローブは、英国ハットフィールド(Hatfield)にあるレオナルド ファーネル社(Leonard Farnell Co.)から入手できるTA18プローブである。類似物容器は、長さ7〜15ミリメートルの、線状低密度ポリエチレンのシンチレーションバイアル瓶(1.397センチ+/−0.0127センチ(0.55インチ+/−0.005インチの内径を有する)を切断することによって作成できる。好適なバイアル瓶は、ニュージャージー州バイランド(Vineland)のキンブルガラス社(Kimble Glass Company)から#58503−7バイアル瓶として入手可能である。類似物容器に、試験される類似物を上端縁部から2ミリメートル以内まで充填する。バイアル瓶は、1.27センチ(1/2インチ)の球形のステンレススチールプローブの下で中心を合わせる。プローブを、バイアル瓶内の類似物の表面から約1ミリメートルの深さまで下げる。プローブを、100ミリメートル/分で下向きに7ミリメートル下げて、停止させる。硬度は、プローブの7ミリメートル行程上でプローブにより生じた最大記録抵抗力である。(室温及び類似物は、測定過程の間、約18.3〜23.9°C(65〜75°F)にするべきである。)
糞便類似物Aの、合性糞便類似物材料の参考硬度値は、9.7グラム抵抗力である。類似物Aは、典型的な「流れやすい」糞便の水分含有量、硬度、及び粘着特性を表す。
【0063】
いくつかの比較例と類似物Aとの混合の効果が、次の表1に明示されている。全ての比較物質が類似物Aと混合された。硬度における所望の変化が比較物質によって達成されなかったことは明白である。
【表2】

1.ダイエタリーファイバーコントロール(Dietary Fiber Control)、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)(ミズーリ州 セントルイス(St.Louis)S−2388)
2.ジョンソン・アンド・ジョンソン社(Johnson & Johnson,Co)(ニュージャージー州スキルマ ン(Skillman))
【0064】
(アクセプタンス及びレセプティビティイアンダープレッシャー)
アクセプタンスアンダープレッシャーを、図1に説明される装置139を使用する次の試験によって測定する。中空のプレキシグラス円筒形体140を、約9.5ミリメートル厚さのステンレススチールプレート142の上に取り付ける。プレート142は、約10.16センチx10.16センチ(約4インチx4インチ)の正方形である。円筒形体140及びプレート142の組み合わせは、高さ7.6センチ(約3.0インチ)、内径5.08センチ(約2.00インチ)、及び外径6.3センチ(約2.48インチ)を有する。円筒形体140の底部は、プレート142より下に約3.5ミリメートルの深さに伸びる。口唇部143は、試験糞便又は類似物166が指定された試験区域の外側に漏れるのを防ぐ。それぞれが5.08センチ(約2.0インチ)の径を有する2つの625グラムの重り156をも設ける。
【0065】
円筒形の24.6グラムのプレキシグラス重り144が設けられる。重り144は、5.08センチ(約2.0インチ)の径を有するので、精密公差で円筒形体140内に適合するが、円筒形体140の穴141の上から下まで自由に滑動できる。この配置により、約119パスカル(Pa)(約0.017ポンド/平方インチ)の圧力、及び約20.27平方センチ(約3.142平方インチ)の試験区域が設けられる。所望する場合、重り144は、円筒形体140に容易に挿入され、そこから取り出されることを可能にするハンドル145を有することも可能である。そうした場合、ハンドル145と円筒形の重り144とを組み合わせた質量は、24.6グラムに等しいはずである。
【0066】
アクセプタンスアンダープレッシャー特性について試験される構造部材のサンプル146が提供される。サンプル146を、既存のおむつから切断するか、おむつに成形されていない材料から作成できる。サンプル146は、物品において使用することを意図される構造部材全て、又はトップ層161を含む、評価される物品の構造部材全てを含む。サンプル146を、10.16センチx10.16センチ(約4インチX4インチ)の寸法の正方形に切断する。
【0067】
本明細書で説明されるような別個の腰部管理要素の、アクセプタンスアンダープレッシャー性能を測定するために、下部構造又は層の代わりに、図2に示されるような標準貯蔵要素147を使用してアクセプタンスアンダープレッシャー試験が行われる。標準貯蔵要素147には、図2に示されるような、規則的に離間した径4.3ミリメートルの153個の穴168のパターンを有する、10.16センチの正方形(4インチの正方形)、1.6ミリメートル厚さのアルミニウムプレートが含まれる。穴は、約26個/平方インチあるように配置される。)
10.16センチx10.16センチ(4インチx4インチ)の寸法の高坪量吸取紙149、5枚が提供される。吸取紙材料149は、好ましくは、#632−025として、ペンシルバニア州マウントホーリースプリングス(Mt.Holly Springs)のアールストロム・フィルトレーション社(Ahlstrom Filtration,Inc.)から入手可能な、約90グラム/平方メートルの坪量を有する濾過等級紙である。
【0068】
サンプル146のトップ層161を取り外し、サンプル146の残りの構成要素又は層(多数の構成要素又は層がある場合)、及び5枚の吸取紙材料149をほぼ0.01グラム単位で計重する。故に、サンプル146がおむつから取られる場合、トップシート、第2トップシート、獲得層、吸収性コアなどおむつの層を、計重前に分離する。(単一層が2つ以上の永久的に接着された要素を含む場合がある。)そのように実施する際、サンプル146を破らないように、又はサンプル146のいかなる部分にも意図しない大きな変形を起こさないように注意しなければならない。サンプル146の層は、サンプル146の隣接する層からの分離を補助するために凍結させることも可能である。その凍結は、マサチューセッツ州、ウオルサムにあるフィリップスECG社(Philips ECG Inc.)製のPH100−15回路冷媒を使用して達成できる。
【0069】
次に、サンプル146の側が吸取紙材料149から離れて着用者に面することが意図される、5枚重ねの吸取紙材料149の最上部の上に最初の形体のようにサンプル146を再度載せる。
【0070】
サンプル146と吸取紙材料149の集成体は、スティーブンス・ファーネル(Stevens Farnell)QTS−25モデル7113−5キログラムテキスチャー・アナライザー160(英国ハットフィールド(Hatfield)にあるレオナルド・ファーネル社(Leonard Farnell Co.)から入手できる)の測定表面164の上で、またプローブ162の下で中心を合わせて置く。好適なプローブ162は、英国ハットフィールドのレオナルド・ファーネル社(the Leonard Farnell Co.)から入手可能な、末端部が平坦な円筒形の100センチのアルミニウム伸長ロッド「QTSM3100」である。円筒形体140は、サンプル146の上で中心を合わせて置く。2つの625グラムの重り156は、プレート142の対向する隅部(対角線に)に載置されて、そのプレートを安定化する。サンプル146の最上部まで、円筒形体140の穴141を通して約10立方センチメートルの粘性流体の排泄物類似物166(本明細書で説明される類似物B)を分配するために、約4〜6ミリメートルの開口部を有する注射器が使用される。
【0071】
粘性流体の排泄物類似物166の類似物Bの適量が測定されて円筒形体140に入れられると、24.6グラムの重り144が、類似物の表面で落ちつくまで、円筒形体140の穴140にゆっくりと、静かに挿入される。テキスチャー・アナライザー160を作動させ、プローブ162が、約144.6グラムの抵抗力に達するまで、10ミリメートル/分の速度で円筒形の重り144を押す。テキスチャー・アナライザー160は、一旦144.6グラムの抵抗力に達すると、下向行程を停止するように設定される。レコーダーは、5グラムの抵抗力で起動するように設定される。(144.6グラムの最大抵抗力は、加えられる700パスカル又は45.36グラム/2.54平方センチ(0.1ポンド/平方インチ)の圧力に対応する。)一旦144.6グラムの抵抗力に達すると、プローブ162はその開始位置まで引っ込められる。
【0072】
重り144を円筒形体140から取り外し、次いで、円筒形体140に残っている類似物Bをサンプルに落とさないように注意して、円筒形体140をサンプル146の表面から取り外す。次いでサンプル146のトップ層161を、可能ならば、下部層の表面に平行にトップ層161を引っ張ることにより、サンプル146の下部層から取り外す。トップ層161を下部層に平行に引っ張ることにより取り外すことが難しい一定の構造の場合、トップ層161をサンプル146の下部層から剥離するか、又は持ち上げることも可能である。サンプル146が単一層のみを含む場合、次に説明される標準受入れ要素151を、サンプル146のトップ層161として利用する。サンプル146の下部層と吸取紙材料149を次に計重する。サンプル146によって受入れられる試験類似物Bの量は、サンプル146のトップ表面層を貫通する試験類似物Bにより生じる、サンプル146の下部層と吸取紙材料149とを組み合わせた重量の、ミリジュールの単位面積ベースで行われた単位仕事あたりの増加に等しい。単位仕事を計算するのに使用される、圧力を受ける面積対距離のカーブを、144.6グラムの最大力を記録するまで移動する合計距離を通して、下向き行程上のプローブに抗する力を積分して計算する。単位仕事を、下記の等式を使用して計算する。
【0073】
単位仕事(ミリジュール)=圧力を受ける面積対距離のカーブ(グラム/ミリメートル)(9.81メートル/平方スクウェア)/(1000ミリメートル/メートル)
次の等式を使用して、アクセプタンスアンダープレッシャーを計算する:
アクセプタンスアンダープレッシャー=(構造部材における類似物の量(グラム)/試験面積(平方インチ))/必要な仕事(ミリジュール)
リセプティビティイアンダープレッシャーを、上述のようなアクセプタンスアンダープレッシャーと同じ方法で測定する。ただしプローブ162の下向き行程での144.6グラムの抵抗力の到達に必要な時間を測定及び記録する。リセプティビティイアンダープレッシャーを、下記の等式を使用して計算する。
【0074】
リセプティビティイアンダープレッシャー(グラム/平方インチ/ミリワット)=アクセプタンスアンダープレッシャー(グラム/平方センチ/ミリジュール)/144.6グラムの抵抗力に到達するために必要な時間(秒)
(キトサン塩酸塩を作成する方法)
脱イオン水1057ミリリットルに1.0MHCL5.39グラムを混合して、水性塩酸(HCL)溶液を作成する。次いで、キトサン(ハイダゲン(Hydagen)HCMF)10.72グラムを、上記の水性HCL溶液に添加し、すべてのキトサンを溶解し、透明な溶液になるまで室温(22°C)で勢いよく攪拌する。次いで、生じる混合物を、長さ65.4センチ、幅45.1センチ(長さ25.75インチ、幅17.75インチ)、及び深さ2.54センチ(1インチ)を有するアルミニウムの平たい容器(例えばリンカーンフードサービスプロダクツ社(Lincoln Foodservice Products)(48604、インディアナ州フォートウェイン(Fort Wayne)、North Hadley Road1111)のモデル#9002)に均等に注ぐ。容器を水平の向きに維持し(即ち、シートの底面によって画定される平面を、重力方向に垂直に保持する)、溶液は液体の状態である。次いで容器及び内容物をドラフトに配置し、室温(即ち、約22°〜25°Cの範囲)で36時間乾燥させる。乾燥すると、キトサン塩酸塩は、容器から容易に取り外されるフィルムとして容器に残る。フィルムを容器から取り外し、約1センチx1センチ〜10センチx10センチの寸法を有する小片に手で破断して、長さ20.32センチ、幅20.32センチ、及び深さ5.08センチ(長さ8インチ、幅8インチ、及び深さ2インチ)の第2アルミニウム容器に配置する。容器及び内容物を、43.3°C(110°F)で24時間、対流式オーブンで加熱し、乾燥した脆性シートを作成する。次いで、生じた脆性シートを手で、最大寸法が5センチ以下の小片に破砕する。これらの脆性フィルムの小片は、コーヒーミル(例えばマサチューセッツ州ボストンのジレット社(The Gillette Company)、ブラウンUS部からのブラウンオートマティックコーヒーグラインダー(Braun Automatic Coffee Grinder)、モデル#KSM4B)を使用してより小さいフレークに破砕され、最大フレークは、約9平方ミリメートルの面積及び約0.5ミリメートルの厚さを有する。平均フレークは、約1〜2平方ミリメートルであり、約0.1〜約0.4ミリメートルの厚さを有する。
【0075】
(サンプル調製方法)
事前に清潔にした250ミリリットルのVWR銘柄のトレースクリーン(TraceClean)広口瓶(VWR#15900−196)を、天秤の上に配置し、風袋を量る。所望量のFMAをそのカップで計量し、その正確な重量を記録する。FMAの重量を記録した後、天秤で再度、風袋を量る。所望量の糞便又は類似物を、FMAを含むカップで計量する。糞便又は類似物の正確な量を記録して、標準エアセルビスクレーパー(Standard Ayre Cervi-Scraper)(VWR#15620−009)のへら末端部を使用して、FMA及び糞便又は類似物が均一になるまで勢いよく攪拌する(総攪拌時間はほぼ約2分である)。この方法における目的のために、攪拌過程の始まりを、t=0分と確定する。サンプルを混合した後、所望の反応時間のうちの残り時間の間、そのままにしておく。本明細書で提示されるデータとして、この反応時間、tを、攪拌過程開始から3分経過後として設定する。次に、それを、標準エアセルビスクレーパー(Standard Ayre Crevi-Scraper)のへら末端部を使用して、硬度方法において上述した16mmの容器に入れ、硬度試験を行う(上述のように、攪拌過程開始からt=3分で始まる)。
【0076】
本発明の特定の実施形態を例示し、記載してきたが、様々なその他の変更及び修正を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことが可能であることは当業者には明白である。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】構造部材の、アクセプタンスアンダープレッシャー特性及びストレージアンダープレッシャーを測定するために使用されることがある装置の正面概略図。
【図2】標準貯蔵要素の平面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨て吸収性物品に堆積した糞便の少なくとも一部分と接触可能であるように、前記使い捨て吸収性物品に配置された有効濃度のキチン系糞便改質剤を含む、糞便を受けることに適合した使い捨て吸収性物品。
【請求項2】
第1腰部区域と、前記第1腰部区域に対向する第2腰部区域と、前記第1腰部区域と前記第2腰部区域との間に位置する股部区域とを有する、糞便を受けることに適合した次を含む吸収性物品であって、
(a)液体透過性トップシート;
(b)前記トップシートの少なくとも一部分に接合した液体不透過性バックシート;
(c)前記トップシートの少なくとも一部分と前記バックシートの少なくとも一部分との間に位置する吸収性コア;及び
(d)前記物品に堆積した前記糞便の少なくとも一部分と接触可能であるように該物品に配置され、該物品に堆積することのある該糞便の少なくとも一部分の粘度又は硬度が変わるようにした有効濃度の該キチン系糞便改質剤、
を有する吸収性物品。
【請求項3】
第1腰部区域と、前記第1腰部区域に対向する第2腰部区域と、前記第1腰部区域と前記第2腰部区域との間に位置する股部区域とを有する、糞便を受けることに適合した次を含む吸収性物品であって、
(a)液体透過性トップシート;
(b)前記トップシートの少なくとも一部分に接合した液体不透過性バックシート;
(c)前記トップシートの少なくとも一部分と前記バックシートの少なくとも一部分との間に位置する吸収性コア;
(d)ミリジュールのエネルギーあたり0.19グラム/平方センチ/ミリジュール(0.50グラム/平方インチ/ミリジュール)より大きいアクセプタンスアンダープレッシャーを有する腰部管理要素;及び
(e)有効濃度のキチン系糞便改質剤、
を有する吸収性物品。
【請求項4】
前記キチン系糞便改質剤が、キトサン、キトサン塩類、キトサン誘導体類、変性キトサン、及びこれらの混合物から成る群から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記物品中に処理された前記糞便が硬度を有し、また前記硬度が、該物品の5.0重量%以下の濃度で前記キチン系糞便改質剤によって100%以上増加する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記糞便の硬度が、前記物品の1.0重量%以下の濃度で前記キチン系糞便改質剤によって100%以上増加する請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記キチン系糞便改質剤が、前記物品の0.001重量%以上の濃度で存在する請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記キチン系糞便改質剤がキトサン塩酸塩である請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−517806(P2006−517806A)
【公表日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553592(P2004−553592)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036149
【国際公開番号】WO2004/045662
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】