説明

キッチン装置

【課題】調理スペースの前からでも楽に洗い動作を行うことができるキッチン装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シンクと、前記シンクの側方に設けられた調理スペースと、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に前記吐水した水により被洗浄物を洗浄可能な洗浄エリアを形成可能な水栓と、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に設けられ、前記水栓からの吐水を指示可能な入力部とを備え、前記水栓は、前記水をシンク底面に対して斜め下方に吐水可能な吐水口を有する吐水部を備え、前記入力部は、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に設けられ、且つ前記吐水口よりも下方に設けられたことを特徴とするキッチン装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、キッチン装置に関し、具体的にはシンクと水栓とを備えたキッチン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチン装置を用いた調理などの際には、使用者はシンクの横に設けられた調理台の前に立って、調理材を切る、あるいは混ぜるなどの動作を行いながら、包丁や野菜などを簡単に洗いたい場合が多い。これは、使用者がシンクの横に設けられた調理台の前に立ち、調理を継続しながら、例えば、手や、包丁、まな板、あるいは野菜などをサッと洗う動作である。このように、使用者が調理台の前に立ち、調理を継続しながら、シンクおよび水栓の方向に包丁や野菜などを差し出してサッと洗う動作を、「簡単洗い」と呼ぶことにする。
【0003】
「簡単洗い」は、主にすすぎ洗いを行う動作である。「簡単洗い」の洗浄時間は短く、例えば約2秒程度である。そのため、水栓の近傍に移動するために身体の重心を移動させる動作や、調理台の前に戻るために再び身体の重心を移動させる動作などの無駄な動作をなくすことができると、使用者は「簡単洗い」を効率的に行うことができる。また、吐水および止水のための動作を短時間で行うことができると、使用者は「簡単洗い」を効率的に行うことができる。これにより、調理作業の効率化を図ることができる。
【0004】
これに対して、使用者がシンクの正面に立って洗い動作を行うことがある。これは、主にこすり洗いを行う動作であり、具体的には食器洗いや、泥汚れ、油汚れ、あるいは肉や魚の「ヌメリ」などを洗う動作である。これを、「丁寧洗い」と呼ぶことにする。また、汚れの落ち難いものを洗う動作であるため、シンクおよび水栓の正面に立って、食事を終えた後の油汚れ等がついた食器類や、魚を切った後のまな板などを差し出して洗うことが多い。
【0005】
ここで、実際の調理中の動作は、調理台の前に立った使用者が調理材を切る、あるいは混ぜるなどの動作を行いながら、その調理台の前に立ち、調理を継続しながら包丁などを簡単に洗うといった「簡単洗い」の動作を行う頻度が「丁寧洗い」よりも多い。これは、本発明者による調査に基づいている。この調査の一例によれば、調理中の洗い動作の中で、「簡単洗い」は約7割程度の頻度で行われ、一方で、「丁寧洗い」は約3割程度の頻度で行われている。
しかしながら、これまでのキッチン装置は、使用者がシンクの正面に立って洗い動作を行うことを想定して作られてきた。つまり、シンクの側方に設けられた調理台の前に立った使用者が、その調理台の前に立ち、調理を継続しながらシンクの水栓の方向に向かって斜めに被洗浄物を差し出して洗う動作は、ほとんど想定されていなかった。そのため、水栓は、一般的にシンクの中心、すなわち使用者がキッチン装置に対峙したときのシンクの左右方向に対する中心に設けられている。
【0006】
これまでのキッチン装置の場合、使用者は、調理台の前に立ち、調理を継続しながら洗い動作を行うためには、すなわち「簡単洗い」を行うためには、洗い動作を行うたびに、まずシンクの中心に設けられた水栓の正面近傍に移動する必要があり、身体の重心移動を行わなければならない。そして、使用者は、例えばレバーなどを操作して水栓から吐水させ、洗浄を行い、再び例えばレバーなどを操作して止水させる必要がある。そしてさらに、使用者は、調理台の前に戻るために、再び身体の重心移動を行わなければならない。このように、これまでのキッチン装置では、調理台の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」を行う際、使用者は手や身体を大きく動かす必要があるという点において改善の余地があった。
【0007】
また、水栓がシンクの中心よりも調理台側に設けられた台所装置がある(特許文献1)。しかしながら、特許文献1では、調理台の前に立ち、調理を継続しながら斜め方向(シンクの方向)に洗浄対象物を差し出して洗うなどといった動作(ここでいう「簡単洗い」)に関する記載はないため、吐水された水によって形成される被洗浄物を洗浄可能な洗浄エリアが、調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に形成されること、および水栓からの吐水を指示可能な入力部が調理スペースの前に立つ人の届く範囲内に設けられていることについて全く開示されていない。
【0008】
また、水栓の吐止水を操作する操作部を、水栓本体上で、且つ吐水口より上方に設けた自動水栓がある(特許文献2)。しかしながら、特許文献2に記載の水栓装置をキッチンに適用した場合、水を使用する際に一旦吐水口よりも上方に手を持ち上げ、操作部に対して操作を行い、その後、吐水口よりも下方の吐水に対して手や被洗浄物を挿入するといった上下方向に対する手の移動が発生してしまい、使用者に対して負担がかかる恐れがある。また、本発明における「簡単洗い」に関する記載は無い。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−105095号公報
【特許文献2】特開2007−154586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができるキッチン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、シンクと、前記シンクの側方に設けられた調理スペースと、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に前記吐水した水により被洗浄物を洗浄可能な洗浄エリアを形成可能な水栓と、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に設けられ、前記水栓からの吐水を指示可能な入力部とを備え、前記水栓は、前記水をシンク底面に対して斜め下方に吐水可能な吐水口を有する吐水部を備え、前記入力部は、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に設けられ、且つ前記吐水口よりも下方に設けられたことを特徴とするキッチン装置である。
このキッチン装置によれば、水栓は、調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に吐水を指示可能な入力部と洗浄エリアを形成することができる。これにより、使用者は、水栓からの吐水を行う際や、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」を行う際に手や体を大きく動かさなければならないという課題を解決することができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
【0012】
また、水栓からの吐水を指示可能な入力部は、調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に設けられているため、使用者は、水栓からの吐水を行う際に水栓の正面近傍に移動する必要はない。これにより、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」を行う際に手や身体を大きく動かさなければならないという課題をより解決することができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでもより楽に洗い動作を行うことができる。また、入力部は、調理スペースの前に立つ人の届く範囲内に設けられているため、使用者は、吐水のための動作を短時間で行うことができる。これにより、使用者は、「簡単洗い」を効率的に行うことができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでもより楽に洗い動作を行うことができる。
【0013】
しかしながら、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に入力部を設けたとしても、特許文献2のように吐水口の上方に入力部が設けられた場合、使用者は吐水口下方にて作業を行いたいのに、一旦手を吐水口上方に持ち上げて吐水操作を行う、といった無駄な動きを行わなければならない。
これに対して、本発明の水栓は吐水口の下方に入力部を設けることにより、吐水口下方にて手や被洗浄物を洗浄する際、手の上下方向に対する動作量を低減することが可能となるため、より使用者の身体負荷を低減することが可能となる。
これによれば、手や体を大きく動かさなければならないという体の重心移動だけでなく、洗浄を行う際の手の動作量も低減することができるため、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」をさらに楽に且つ効率的に行うことができる。
【0014】
また、第2の発明は、前記水栓の吐水部が前記調理スペースの上面に対して上方に傾斜し、前記シンクの奥行方向と平行な方向に水を吐水可能としたことを特徴とするキッチン装置である。
また、水栓の吐水部は、調理スペースの上面に対して上方に傾斜しているため、水栓と調理スペースの上面との間の空間を広く確保することができる。そのため、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作において、その水栓が邪魔になるおそれは少ない。
しかしながら、その水栓がシンクの中心、より具体的にはシンクの左側面と右側面との中心に設置されている場合には、水栓から吐水された水は、調理スペースの前にいる使用者に向かってくるため、その使用者は恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれがある。また、シンクに着水した水が飛散することにより生ずる「水跳ね」が、使用者に向かってくるおそれがある。そのため、使用者は、水跳ねに対して恐怖感を感ずるおそれがある。
これに対して、本発明の水栓は、シンクの中心よりも調理スペース側に設置され、シンクの奥行方向と平行な方向に吐水可能であるため、水栓から吐水された水は、調理スペースの前にいる使用者に向かってくることはない。そのため、使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。また、水跳ねが調理スペースの前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。そのため、使用者は、水跳ねに対して恐怖感を感ずるおそれは少ない。これによれば、水栓の吐水部が調理スペースの上面に対して上方に傾斜していることにより生ずる新たな課題を解決することができる。
また、水栓の吐水部は、調理スペースの上面に対して上方に傾斜しているため、水栓がシンクの中心よりも調理スペース側に設置されていても、水栓と、調理スペースの上面と、の間の空間を広く確保することができる。これにより、鍋などのより大きい被洗浄物を洗浄する場合でも、使用者は、水栓に邪魔されることなく楽に洗浄できる。
あるいは、このキッチン装置によれば、水栓は、シンクの中心よりも調理スペース側に設置されているため、
水栓が調理スペースの上面と平行方向(水平方向)に延在していると、その水栓が邪魔になるおそれがある。これは、水栓と、調理スペースの上面と、の間の空間が狭くなり、被洗浄物がその水栓に干渉するおそれがあるためである。
これに対して、本発明の水栓の吐水部は、調理スペースの上面に対して上方に傾斜しているため、水栓と調理スペースの上面との間の空間を広く確保することができる。そのため、水栓がシンクの中心よりも調理スペース側に設置されていても、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作において、その水栓が邪魔になるおそれは少ない。これによれば、水栓がシンクの中心よりも調理スペース側に設置されていることにより生ずる新たな課題を解決することができる。
しかしながら、この場合でも、水栓から吐水された水が調理スペースの前にいる使用者に向かってくると、その使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれがある。また、水跳ねが、使用者に向かってくるおそれがある。そのため、使用者は、水跳ねに対して恐怖感を感ずるおそれがある。また、水栓がシンクの中心よりも調理スペース側に設置されているため、使用者は、水栓から吐水された水がシンクの外部へ飛散する恐怖感を感ずるおそれがある。
これに対して、本発明の水栓は、シンクの奥行方向と平行な方向に水を吐水可能であるため、水栓から吐水された水は、調理スペースの前にいる使用者に向かってくることはない。そのため、その使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。また、水跳ねが調理スペースの前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。そのため、使用者は、水跳ねに対して恐怖感を感ずるおそれは少ない。また、水栓の吐水部は、調理スペースの上面に対して上方に傾斜し、調理スペースの上面に対して垂直ではなく斜め下方に吐水できるため、水栓から吐水された水がシンクの外部へ飛散することを抑制することができる。そのため、使用者は、水栓から吐水された水がシンクの外部へ飛散する恐怖感を感ずるおそれは少ない。これによれば、水栓がシンクの中心よりも調理スペース側に設置されていること、および水栓の吐水部が調理スペースの上面に対して上方に傾斜していることにより生ずる新たな課題を解決することができる。
【0015】
このキッチン装置によれば、水栓の吐水部が調理スペースの上面に対して上方に傾斜しているため、水栓の下方、すなわち吐水口の下方に大きな空間を有することができる。そのため、使用者が吐水口下方で操作する領域が広くなるので、水栓の形状により水栓が邪魔になり、入力部へ手を挿入しにくいといった操作の不具合を大幅に低減することが可能となる。
これによれば、水栓の形状によっては吐水口下方への被洗浄物の挿入が困難になるおそれがあるという課題を解決することができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。
【0016】
また、第3の発明は、前記入力部は、前記シンクの上面よりも下方に設けられたことを特徴とするキッチン装置である。
ここで、水栓から吐出される吐水を利用する際に、被洗浄物の挿入によって発生する水はねをシンク上面から外部へ飛散させないため、シンク内部で吐水を用いることが望ましい。そのため、このキッチン装置によれば、入力部をシンクの上面よりも下方に設けることで、作業を行うシンク内部にて操作を行い、更に吐水を使用することが可能となるため、吐水を使用するために手を上下方向に大きく移動させること無く吐水操作、及び吐水を利用することが可能となるため、使用者の身体負荷を大幅に低減することが可能となる。
これによれば、入力部の上下方向(高さ方向)の位置によっては、シンク上面から外部へ水が飛散するおそれがあるという課題を解決することができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。
【0017】
また、第4の発明は、前記入力部は、前記シンク内の前記調理スペース側の側面に設けられたことを特徴とするキッチン装置である。
ここで、キッチンにおいてシンク近傍の作業は様々な動作があるため、吐水操作を行うための動作とそれ以外の調理動作とを識別することは困難である。特にシンク内部においては、調理器具等を置く、洗い動作を行うといった物の設置及び動作が混在する場所であるため、吐水操作を行う動作を識別することは困難である。
そこで、このキッチン装置によれば、シンク内部の調理スペース側の側面に入力部を設ける構造とすることとしている。シンク内部では、シンク側壁近傍での洗い動作は調理器具や食器等を洗浄中にシンク側壁に衝突させる恐れがあるため、洗浄動作をシンク側壁近傍で行うことは非常に少ない。そのため、シンク側壁近傍においては、調理作業を行う際に発生する動作が少なくなり、入力部に対する操作を識別することが容易となるため、ご認識による誤吐水を防止することが可能となる。更に、調理スペースから行う「簡単洗い」を行う際に、調理スペースから最短距離にて操作を行う場所で、且つ作業スペースと洗浄エリアとの間に入力部を設置することが可能となるため、入力部に対する操作を行うために手を大きく移動させること無く、作業スペースから洗浄エリアに移動する最中に入力部に対して操作を行なうことが可能となるため、使用者の身体負荷を大幅に低減することが可能となる。
これによれば、入力部の位置によっては、吐水操作を行うための動作なのか、それ以外の調理動作なのかを識別することが困難であるという課題を解決することができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに向上させることができる。
【0018】
また、このキッチン装置によれば、入力部は、シンクの上面すなわちシンクの開口面よりも下方に設置されているため、吐水を開始させる際の使用者の手は、シンクの上面よりも下方、すなわちシンクの内部に規定される。そのため、シンク内に存在する使用者の手や包丁などの被洗浄物に着水し水跳ねした水は、シンク内に収まりやすい。これにより、水跳ねした水がシンクの外部に飛散することを抑制することができる。
ここで、洗浄エリアは、調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に形成されるため、使用者は、被洗浄物に着水し水跳ねした水が使用者自身に飛散してくる恐怖感を感ずるおそれがある。あるいは、使用者は、被洗浄物に着水し水跳ねした水がシンクの外部へ飛散する恐怖感を感ずるおそれがある。
【0019】
これに対して、本発明のキッチン装置によれば、使用者が調理スペースでの作業から洗浄エリアに「簡単洗い」を行おうとする際、まず入力部によって吐水を開始するためにシンク内に手を差し入れることとなる。これにより、使用者の手や包丁などの被洗浄物は、シンクの上面よりも下方、すなわちシンクの内部に位置する。次に、「簡単洗い」を行うため、使用者は手や被洗浄物を洗浄エリアに移動させることとなるが、その場合の最も最短距離にある洗浄エリアは、シンクの上面よりも下方、すなわちシンクの内部である。つまり、使用者が、吐水の開始から「簡単洗い」を行う作業において、シンクの内部によって作業するのが最も効率的となる構成となっている。シンク内で「簡単洗い」を行うように誘導することで、水跳ねした水はシンク内に収まりやすいため、使用者は、水跳ねした水が使用者自身に飛散してくる恐怖感や、その水がシンクの外部へ飛散する恐怖感を感ずるおそれは少ない。これにより、使用者が水跳ねに対して恐怖感を感ずるおそれがあるという課題を解決することができ、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」の作業性をさらに効率化させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、調理スペースの前からでも楽に洗い動作を行うことができるキッチン装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
【図2】調理台を利用する使用者の可動域の一例を例示する平面模式図である。
【図3】調理台を利用する使用者の右手・右腕の可動域の一例、および洗浄エリアの一例を例示する平面模式図である。
【図4】比較例にかかる水栓の吐水方向および洗浄エリアを例示する平面模式図である。
【図5】調理台の上面に対して上方に傾斜した水栓を右側方から眺めた断面模式図である。
【図6】調理台の上面に対して平行に延在した水栓を右側方から眺めた断面模式図である。
【図7】本実施形態の水栓から吐水させる動作を説明するための平面模式図である。
【図8】調理台と入力部と洗浄エリアとの位置関係を説明するための平面模式図である。
【図9】本実施形態の具体例にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
【図10】本具体例の入力部を説明するための断面模式図である。
【図11】本具体例の変形例の入力部を説明するための断面模式図である。
【図12】本実施形態の他の具体例にかかるキッチン装置を表す断面模式図である。
【図13】本具体例にかかるキッチン装置を情報から眺めた平面模式図である
【図14】本実施形態のさらに他の具体例にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
【図15】本実施形態のさらに他の具体例にかかるキッチン装置を表す平面模式図である。
【図16】本実施形態の水栓を表す模式図である。
【図17】本実施形態のシャワー吐水用の散水板を例示する模式図である。
【図18】本実施形態にかかるキッチン装置を上方から眺めた平面模式図である。
【図19】被洗浄物に対して水が斜め方向から吐水された状態を例示するための斜視模式図である。
【図20】被洗浄物に対して水が斜め方向から吐水された状態を側面から眺めた側面模式図である。
【図21】被洗浄物に対して水が斜めに吐水された場合の水跳ねについて説明するための模式図である。
【図22】(A)入力部が吐水口上方に設置されたキッチン装置にに対して使用者が操作を行う側面模式図である。 (B)入力部を操作後に吐水に手を移動する側面模式図である。
【図23】(A) (A)入力部が吐水口下方に設置されたキッチン装置に対して使用者が操作を行う側面模式図である。 (B)入力部を操作後に吐水に手を移動する側面模式図である。
【図24】(A)入力部がシンク上面よりも下方に設置されたキッチン装置に対して使用者が操作を行う側面模式図である。 (B)入力部を操作後に吐水に手を移動する側面模式図である。
【図25】(A)入力部がシンク上面よりも下方に設置され、斜め上方に傾斜した水栓が設置されたキッチン装置にに対して使用者が操作を行う側面模式図である。 (B)入力部を操作後に吐水に手を移動する側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
また、図2は、調理台の前に立つ使用者の可動域の一例を例示する平面模式図である。
【0023】
本実施形態にかかるキッチン装置100は、キッチンキャビネット200と、水栓400と、水栓400からの吐水を指示可能な入力部500と、を備える。キッチンキャビネット200は、水栓400から吐水された水を受けるシンク220と、シンク220の左側方に延在する調理台(調理スペース)210と、を有する。なお、調理台210は、シンク220の右側方に延在していてもよい。また、シンク220は、水栓400から吐水された水を受ける機能を有し、左側面223と、後面224と、右側面225と、前面226と、底面227と、を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、「湯」を含むものとする。
【0024】
入力部500は、図2に表したように、調理台210の前に立つ使用者の可動域601、602、603、604内の少なくともいずれか、すなわち人の届く範囲601、602、603、604内の少なくともいずれかに設けられている。可動域601は、使用者の右手・右腕の可動域の一例を例示しており、可動域602は、使用者の左手・左腕の可動域の一例を例示しており、可動域603は、使用者の右脚・右足の可動域の一例を例示しており、可動域604は、使用者の左脚・左足の可動域の一例を例示している。
【0025】
ここで、本願明細書において、「入力部」という範囲には、人の意志にかかわらず、あるいは人の意志が介在しないにもかかわらず、水栓からの吐水を指示可能なものが含まれるものとする。つまり、例えば洗面器における自動水栓のように、水栓の下方に手を持っていくだけで吐水を指示可能なものは、本願明細書における「入力部」に含まれる。
一方、本願明細書において、「吐水操作部」とは、「入力部」のうち、人が「吐水させよう」という意志をもって行う動作により、はじめて水栓からの吐水を指示可能なものである。したがって、例えば水栓の下方に手を持っていくだけで吐水を指示可能なものは、本願明細書における「吐水操作部」には含まれない。
そして、「入力部」および「吐水操作部」が人の手の動き等を検知する測距センサなどの赤外線透光式のセンサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどの場合には、それら「入力部」および「吐水操作部」は、「センサ機器本体」だけではなく、そのセンサの「検知エリア」をも意味するものとする。また、マーカーの付近に手をかざすと、センサが人体を検知して吐水を指示可能なものや、マニュアル式のスイッチあるいはレバー等、人が明確な意思を持って行う操作により吐水を指示可能なものは、本願明細書における「吐水操作部」である。
なお、入力部および吐水操作部は、例えば、マニュアル式のスイッチあるいはレバーや、測距センサなどの赤外線投光式のセンサや、ドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどであり、特に限定されるわけではない。また、図1および図2に表したキッチン装置100では、入力部500は、シンク220の左側面223に設けられているが、これだけに限定されず、例えば足・脚で入力可能なようにキッチンキャビネット200の下方部に設置されていてもよい。この入力部500については、後に詳述する。
【0026】
水栓400は、図1に表したように、吐水部を有し、その吐水部は整流用吐水口(吐水口)410と、シャワー用吐水口(吐水口)423と、を有する。そのため、水栓400は、整流水およびシャワー水を吐水することができる。なお、「整流」とは水流が略一本の吐水形態を意味し、「シャワー」とは水流が複数本の吐水形態を意味するものとする。整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423の構造、および水栓400の吐水形態については、後に詳述する。
【0027】
また、水栓400は、図1に表したように、キッチン装置100に対峙した使用者からみてシンク220の奥側、すなわちキッチン装置100の後方、且つキッチンキャビネット200の上面に設けられている。水栓400の下方部、すなわちキッチンキャビネット200に取り付けられている近傍の部分は、調理台210の上面、すなわちキッチンキャビネット200の上面に対して略垂直に設けられている。一方、水栓400の吐水部である所定寸法よりも上方部は、調理台210の上面、すなわちキッチンキャビネット200の上面に対して上方に傾斜している。
【0028】
さらに、水栓400は、図2に表したように、シンク220の中心CL、より具体的にはシンク220の左側面223と右側面225との中心CLよりも調理台210側に設置されている。そのため、水栓400から吐水された水により洗浄対象物(以下、単に「被洗浄物」と称する)を洗浄できる領域(洗浄エリア)401は、図2に表したように、シンク220の中心CLよりも調理台210側に寄っている。これら水栓400の形状や設置形態、および使用者が被被洗浄物を洗浄できる洗浄エリア401について、以下図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
【0029】
図3は、調理台の前に立つ使用者の右手・右腕の可動域の一例、および洗浄エリアの一例を例示する平面模式図である。
また、図4は、比較例にかかる水栓の吐水方向および洗浄エリアを例示する平面模式図である。
また、図5は、調理台の上面に対して上方に傾斜した水栓を右側方から眺めた断面模式図である。
また、図6は、調理台の上面に対して平行に延在した水栓を右側方から眺めた断面模式図である。
【0030】
例えば、キッチン装置100において調理する場合には、調理中において、調理台の前に立った使用者が調理材を切る、あるいは混ぜるなどの動作を行いながら、包丁や野菜などを簡単に洗うことがある。これは、シンク220の側方に設けられた調理台210の前に立ちつつ、例えば包丁、まな板、あるいは汚れの少ない野菜などを洗う動作である。すなわち、使用者が調理台210の前に立ちつつ、その調理台210からシンク220および水栓400の方向に野菜などを差し出して洗う動作である。以下、これを「簡単洗い」と称する。
【0031】
「簡単洗い」は、主にすすぎ洗いを行う動作である。「簡単洗い」の洗浄時間は短く、例えば約2秒程度である。そのため、水栓400の近傍に移動するために身体の重心を移動させる動作や、調理台210の前に戻るために再び身体の重心を移動させる動作などの無駄な動作をなくすことができると、使用者は「簡単洗い」を効率的に行うことができる。また、吐水および止水のための動作を短時間で行うことができると、使用者は「簡単洗い」を効率的に行うことができる。これにより、調理作業の効率化を図ることができる。
【0032】
ここで、例えば、一般的なキッチン装置のように、水栓がシンク220の中心CL上であってその奥側に設置されている場合を考えてみる。この場合において、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定するために、図4および図6に表した水栓400bのように、シンク220の中心CLから調理台210の上面と平行方向(水平方向)に水栓400bを延在させると、その水栓400bが邪魔になるおそれがある。これは、水栓400bと、調理台210の上面と、の間の空間が狭くなり、被洗浄物がその水栓400bに干渉するおそれがあるためである。
【0033】
これに対して、図4および図5に表した水栓400aのように、調理台210の上面に対して上方に水栓400aの吐水部を傾斜させると、水栓400aと、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができる。そのため、その水栓400aが邪魔になるおそれは少ない。また、水栓400aは、図5に表したように、調理台210の上面に対して垂直ではなく斜め下方に吐水するため、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定することができる。
【0034】
しかしながら、そうすると、水栓400aから吐水された水は、図4に表した矢印のように、調理台210の前にいる使用者に向かってくる。このとき、その使用者は、水栓400aから吐水された水が使用者自身に向かってくるため、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれがある。また、シンク220に着水した水が飛散することにより生ずる「水跳ね」が、使用者に向かってくるおそれがある。
【0035】
そこで、本実施形態にかかるキッチン装置100では、図3に表したように、水栓400は、シンク220の中心CLよりも調理台210側に設置されている。また、水栓400は、図3に表した矢印のように、シンク220の奥行方向と平行方向に吐水できる。あるいは、水栓400は、キッチン装置100の前方に向かって吐水できる。あるいは、水栓400は、キッチン装置100に対峙した使用者の視線と平行方向に吐水できる。これによれば、水栓400から吐水された水は、調理台210の前にいる使用者に向かってくることはないため、その使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。また、水跳ねが調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。
【0036】
またさらに、本実施形態の水栓400の吐水部は、図1および図5に表したように、調理台210の上面に対して上方に傾斜しているため、水栓400と、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができる。これにより、鍋などのより大きい被洗浄物を洗浄する場合でも、使用者は、水栓400に邪魔されることなく楽に洗浄できる。また、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定することができるため、使用者は楽に「簡単洗い」を行うことができる。
【0037】
次に、他の場合を考えてみる。より具体的には、水栓がシンク220の中心CL上であってその奥側に設置されている場合において、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定するために、まず、その水栓をシンク220の中心CLよりも調理台210側に移動させてみる。しかしながら、そのように水栓を移動させたとしても、図6に表した水栓400bのように、水栓が調理台210の上面と平行方向(水平方向)に延在していると、その水栓が邪魔になるおそれがある。これは、前述した如くである。
【0038】
そこで、本実施形態にかかるキッチン装置100では、水栓400の吐水部は、シンク220の中心CLよりも調理台210側に設置された状態において、図1および図5に表したように、調理台210の上面に対して上方に傾斜している。そのため、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定しつつ、水栓400と、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができる。また、水栓400は、図3に表した矢印のように、シンク220の奥行方向と平行方向に吐水できる。そのため、使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。また、水跳ねが調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。さらに、使用者は、楽に「簡単洗い」を行うことができる。
【0039】
このように、本実施形態の水栓400の吐水部は、調理台210の上面に対して上方に傾斜し、シンク220の中心CLよりも調理台210側に設置され、シンク220の奥行方向と平行方向に吐水可能である。そのため、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定することができ、使用者は楽に「簡単洗い」を行うことができる。また、水栓400と、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができるため、その水栓400が邪魔になるおそれは少ない。また、水栓400から吐水された水は、調理台210の前にいる使用者に向かってくることはないため、その使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。さらに、水跳ねが、調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。これらにより、使用者は、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
【0040】
次に、水栓400の吐水および止水について、図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態の水栓から吐水させる動作を説明するための平面模式図である。
また、図8は、調理台と吐水操作部と洗浄エリアとの位置関係を説明するための平面模式図である。
なお、図7(a)は、本実施形態にかかるキッチン装置を上方から眺めた平面模式図であり、図7(b)は、図7(a)に表したキッチン装置のC−C断面図である。
【0041】
本実施形態にかかるキッチン装置100では、使用者が水栓400から吐水させるためには、まず吐水を開始させるための使用者による所定動作(動作M1)が必要である。例えば、吐水操作部500がマニュアル式のスイッチあるいはレバーである場合には、その所定動作は、スイッチやレバーを操作する動作である。また、例えば、吐水操作部500が赤外線投光式のセンサやマイクロ波センサなどの非接触式(非接触型)のセンサである場合には、その所定動作は、非接触式のセンサに手などをかざす動作である。
【0042】
そして、使用者は、吐水を開始させるための所定動作を行い吐水を開始させた後、被洗浄物を洗浄エリア401に移動させる(動作M2)。これにより、使用者は、洗浄エリア401において被洗浄物を洗浄することができる。つまり、使用者が本実施形態にかかるキッチン装置100において洗浄を行うためには、吐水を開始させるための所定動作(動作M1)と、被洗浄物を洗浄エリア401に移動させる動作(動作M2)と、を行う必要がある。
【0043】
そこで、本実施形態にかかるキッチン装置100では、吐水操作部500は、図8に表したように、右手・右腕の可動域601内であって、調理台210と洗浄エリア401との間に設置されることがより好ましい。すなわち、吐水操作部500は、図8に表した設置エリア501内に設置されることがより好ましい。
【0044】
これによれば、使用者は、吐水を開始させるためには、右手・右腕の可動域601内にある吐水操作部500に対して所定動作を行う必要があるため、吐水を開始させる際の使用者の手の位置は規定される。つまり、吐水が開始した際には、使用者の手の位置は、吐水操作部500の近傍に存在する。そのため、吐水が開始した際に、使用者の手が不意に濡れることを抑制することができる。また、図8に表したように、吐水操作部500が調理台210と洗浄エリア401との間に設置されていることにより、吐水が開始した際に、使用者の手が不意に濡れることを抑制しつつ、「簡単洗い」の動作を軽減することができる。これは、キッチン装置100を上方からみた平面視において、調理台210から洗浄エリア401へ向かう手の動きの線上(動線上)に吐水操作部500が設置されているためである。
【0045】
次に、本実施形態のキッチン装置の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、本実施形態の具体例にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
また、図10は、本具体例の吐水操作部を説明するための断面模式図である。
また、図11は、本具体例の変形例の吐水操作部を説明するための断面模式図である。 なお、図10および図11は、図9に表したA−A断面図に相当する。
【0046】
本具体例にかかるキッチン装置100aでは、図9に表したように、設置エリア501(図8参照)内であってシンク220の左側面223に、吐水操作部500aが設置されている。また、吐水操作部500aは、図10に表したように、水栓400の整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方、より具体的にはシンク220の上面すなわちシンク220の開口面であって、本具体例にかかるキッチン装置100aにおいては、調理台210の上面よりも下方に設置されている。
【0047】
吐水操作部500aは、例えば使用者の手・腕などで操作可能なマニュアル式のスイッチであり、例えば「ON/OFFスイッチ」などと呼ばれるプッシュスイッチなどである。つまり、使用者が吐水操作部500aを図10に表した矢印510aの方向に押す毎に、「ON」と「OFF」とが切り替わる。
【0048】
また、本具体例のキッチン装置100aは、制御部110と、開閉弁120と、配水管130と、を備える。水栓400は、配水管130を介して開閉弁120に接続されている。そして、制御部110は、吐水操作部500aから送信された信号に基づいて開閉弁120の開閉動作を制御することにより、水栓400からの吐水および止水を制御することができる。その他、水栓400の構造や設置位置、あるいは調理台210やシンク220の構造などについては、図1〜図8に関して前述した如くである。
【0049】
ここで、水栓400から水を吐水させるときには、図10に表した矢印510aのように、使用者は、シンク220の上面よりも下方に設置された吐水操作部500aを押す。そうすることにより、制御部110は、開閉弁120を開き、水栓400から水を吐水させることができる。一方、水栓400からの水を止水させるときには、図10に表した矢印510aのように、使用者は、吐水操作部500aを再度押す。そうすることにより、制御部110は、開閉弁120を閉じ、水栓400からの水を止水させることができる。
なお、本具体例において、止水を行う手段としては、水栓400からの吐水が一定量吐水されたのを判断して止水を行う定量止水や、ある一定時間が経過したら止水を行うタイマー式の止水などでも良い。これによれば、使用者は、水栓400からの水を止水させるための動作を行う必要はない。そのため、使用者は、洗い動作を効率よく行うことができ、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
【0050】
このように、本具体例によれば、吐水操作部500aはマニュアル式のスイッチであるため、使用者は、その吐水操作部500aを容易に視認することができる。そのため、使用者が吐水および止水を行う際に吐水操作部500aの位置を探すなどといった無駄な動作を抑制することができ、使用者は確実に吐水および止水を行うことができる。また、吐水操作部500aは「ON/OFFスイッチ」であるため、使用者は、例えば野菜や包丁などの被洗浄物を持ったままでも吐水および止水を行うことができる。
【0051】
また、吐水操作部500aは、水栓400の整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方に設置されているため、使用者の上下方向の無駄な動作を抑制することができる。より具体的には、吐水操作部500aは、整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方に設置されているため、吐水を開始させる際の使用者の手は、整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方に規定される。そして、水栓400からの水は、整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423から下方に吐水されるため、使用者は、吐水操作部500aを押した後、略水平方向に手を移動させることにより洗浄を行うことができる。これにより、使用者の上下方向の無駄な動作を抑制することができる。
【0052】
さらに、吐水操作部500aは、シンク220の上面よりも下方に設置されていることにより、水跳ねした水がシンク220の外部に飛散することを抑制することができる。より具体的には、吐水操作部500aは、シンク220の上面よりも下方に設置されているため、吐水を開始させる際の使用者の手は、シンク220の上面よりも下方、すなわちシンク220の内部に規定される。そのため、シンク220内に存在する使用者の手や被洗浄物に着水し水跳ねした水は、シンク220内に飛散しやすい。つまり、シンク220内に存在する使用者の手や被洗浄物に着水し水跳ねした水は、シンク220内に収まりやすい。これにより、水跳ねした水がシンク220の外部に飛散することを抑制することができる。
【0053】
またさらに、吐水操作部500aは、シンク220内であって調理台210側の側面(左側面223)に設置されているため、水跳ねが軽減される。その結果、使用者の手や被洗浄物からの水滴などで水栓400や吐水操作部500aが汚れることを抑制することができる。より具体的には、吐水操作部500aはシンク220の左側面223に設けられているため、使用者は、吐水を開始させるとき(「簡単洗い」を行うとき)には、まず調理台210から手をシンク220側へ移動させる。そして、使用者は、シンク220の上面よりも下方に設置された吐水操作部500aへその手を移動させ吐水操作部500aを押す。続いて、使用者は、略水平方向の洗浄エリア401に手を移動させることにより洗浄を行う。使用者の手の動きがこのように誘導されることにより、その使用者の手は、吐水方向に対して側方から且つシンク220内で水栓400からの水にアプローチされる。これにより、使用者の手や被洗浄物において生ずる水跳ねを軽減することができる。
【0054】
なお、吐水操作部500aは、図11に表したように、シンク220に適宜設けられた斜面228に設置されていてもよい。斜面228は、調理台210からシンク220の底面227へ向かう方向に傾斜している。そして、使用者は、斜面228に設置された吐水操作部500aを矢印520aの方向に押すことにより、吐水および止水を行うことができる。図11に表した変形例によれば、使用者は、吐水操作部500aをより容易に視認することができる。そのため、使用者が吐水および止水を行う際に吐水操作部500aの位置を探すなどといった無駄な動作をより抑制することができ、使用者はより確実に吐水および止水を行うことができる。また、斜面228に付着した水や汚れなどは、シンク220に流れやすい。したがって、斜面228やその近傍の調理台210をより清潔に保つことができる。
【0055】
ここで、使用者の上下方向に対する動作の低減について図面を用いて詳細に記載する。
図22に、従来の、吐水口よりも上方に入力部500を備えた水栓の構成図を、図23に、本発明の一具体例における吐水口よりも下方に入力部500を備えた水栓400の構成図を示す。
図22において、使用者が水栓400からの吐水を開始するためには、手かざしを行うために吐水口上方に備えた検知エリアである入力部500に対して手かざしを行い(図22(A))、その後、供給される吐水に対して被洗浄体を挿入するために、吐水口下方に対して手を移動させる(図22(B))必要がある。このように、吐水口上方に入力部500を設けると、一旦水栓400上方に手を持ち上げ、その後吐水口下方に手を下げるといった使用者の腕の上下方向への移動が発生する。そのため、使用者の腕は上下方向の移動に伴う負荷が発生するため、水を使用する毎に手の負荷が増大することになる。特に、操作する手に調理器具等を持った状態で操作する場合には、この腕の上下方向に対する移動は使用者にとって大きな負荷となってしまう。そこで、本発明のように、入力部500を吐水口下方に設置することにより、吐水が供給される方向にて操作を行なうことが可能なため、図23のように、吐水口の下方近傍に手かざしを行い、その後僅かな動作を行うことで、腕を大きく上下に移動させること無く水を使用することが可能となる。また、水が付着している手にて吐水口上方の入力部500を操作した際には、手から落ちる水によって水栓400が濡れてしまい、汚れの原因や、入力部500の誤検知等に繋がる恐れがあるが、吐水口下方に設置していることにより、手がどのような状況においても、その状況に左右されること無く操作可能であり、且つ水栓400を濡らす、汚すといった不具合を発生することなく、使用者の負荷を大幅に低減した水栓を提供することが可能となる。このように、水栓400からの水を供給するために行う入力部500に対する操作において、腕の上下方向の移動量を低減することが可能となるため、調理台210から大幅に身体を移動させること無く行なうことができる「簡単洗い」を、腕の負荷を低減させることでより容易に「簡単洗い」を実現することが可能となる。
【0056】
また、本発明においては、シンク底面227に対して斜め下方に吐水を可能とする水栓400で、吐水口下方に入力部500を設置する構成としている。この構成により、吐水口から使用者の方向に向かって吐水が行われるため、水栓400、特に吐水部を使用者の方向に大きく接近させること無く、「簡単洗い」が可能な調理台210の前に立った使用者の手の可動範囲以内に吐水を供給することが可能となる。更に、水栓400を使用者の方向に大きく接近させることが無いため、シンク上方の調理作業を行う空間を広く取ることが可能なため、水栓400を避けながら調理作業を行うといった無駄な動作を低減することができる。
【0057】
次に、シンク上面よりも下方に入力部500を設置した場合の、使用者の上下方向に対する身体の負荷について図面を用いて示す。図24にシンク上面より下方に入力部500を設けた水栓400について示す。一般的に、洗浄動作等を行う際には、被洗浄物に吐水が衝突した際に発生する水跳ねをシンク外部に飛散することを抑制するために、使用者はシンク上面よりも下方にて洗浄動作を行なうことが多い。そのため、本発明においては、水栓から吐水を供給させるための入力部500をシンク上面よりも下方に設置するようにしている。これにより、使用者は、洗浄動作を行うシンク内部にて吐水操作を行い、その後大きな腕の上下運動を行うことなく吐水を利用することが可能となるため、腕の上下運動に対する負荷を低減することが可能となる。これにより、調理台210から大きく身体を動かすことなく吐水を使用する「簡単洗い」を、水跳ねを考慮した使用者の動きに対しても手の上下方向の移動量を低減することにより、通常の「簡単洗い」よりも更に使用者の身体負荷を低減することが可能となる。
【0058】
また、水栓400の形状においても更に手の上下方向に対する移動量を低減することが可能となる。ここで、図25にシンク上面に対して傾斜し、シンクの奥行方向と平行な方向に水を吐水可能とした水栓400を搭載したキッチン装置の構成図を示す。図25のように、水栓400はシンク上方に向かって傾斜した構造となるため、吐水口下方に広い作業空間を構成することが可能となる。この形状においては、調理台210から水を使用する際に、手を挿入する動作を行うと、作業を行う空間に水栓400が存在しないため、手の挿入が容易となり、特に「簡単洗い」を行う場合に、作業空間にある400をよけるといった動作を行うことなく水を使用することが可能となるため、より身体負荷を低減して水を使用することが可能となる。更に、水栓形状において作業空間に水栓400が存在しないため、吐水口下方に入力部500を設けた場合においても、水栓400に手が衝突することを回避するために、水栓400の位置を気にしながら操作を行うといった入力部500を操作する際に行う追加の動作を低減することが可能となるため、腕の上下方向に対する移動量の低減だけでなく、入力部500を操作するために水栓400への衝突を避けるといった動作も低減することが可能となるため、より身体負荷を低減することが可能となる。
なお、本具体例の入力部500は、非接触式のセンサの「検知エリア」として記載したが、入力部500は非接触式のセンサ本体であっても良い。
【0059】
図12は、本実施形態の他の具体例にかかるキッチン装置を表す断面模式図である。
また、図13は、本具体例にかかるキッチン装置を情報から眺めた平面模式図である。 本具体例の入力部500dは、非接触式(非接触型)のセンサであり、例えば測距センサなどの赤外線投光式のセンサやドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどである。入力部500dは、図12に表したように、例えば、水栓400の上端近傍に設けられている。また、入力部500dの検知エリアは、図12および図13に表したように、水栓400からの吐水と、入力部500dの検知エリアと、は重複している。
なお、本具体例の入力部500dは、非接触式のセンサであるため、図1および図2に関して前述したように、入力部500dは、「センサ機器本体」だけではなく、そのセンサの「検知エリア」すなわち検知エリア503dをも意味する。その他の構造や設置形態などについては、図9〜図11に関して前述した具体例と同様である。
本具体例のキッチン装置100bにおいて、水栓400から水を吐水させるときには、使用者は、水栓400から吐水させるための特別な動作を行うことなく、吐水を開始させることができる。より具体的には、使用者は、水栓400から吐水させるために入力部500dの近傍に手をかざすなどといった動作を行う必要はない。つまり、使用者は、水栓400から吐水させようという意志をもたなくとも、手を洗浄エリア401に差し出すだけで吐水させることができる。言い換えれば、本具体例においては、検知エリア503dと洗浄エリア401が重なっているため、入力部500dは、使用者の意志にかかわらず、あるいは使用者の意志が介在しないにもかかわらず、水栓400からの吐水を指示することができる。
本具体例においても、水栓400は、調理台210の前に立つ人の手の届く範囲内に洗浄エリア401を形成することができる。これにより、調理台210の前に立ち、調理を継続しながら行う洗い動作である「簡単洗い」を行う際に手や身体を大きく動かさなければならいという課題を解決することができる。そのため、調理スペースの前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
【0060】
図14は、本実施形態のさらに他の具体例にかかるキッチン装置を表す斜視模式図である。
本具体例の吐水操作部500bは、非接触式(非接触型)のセンサであり、例えば測距センサなどの赤外線投光式のセンサやドップラーセンサなどのマイクロ波センサなどである。本具体例においては、センサの検知エリアがセンサの直近であることから、吐水操作部500bへの操作を、すなわち検知エリアにおける操作とみなす。つまり、本具体例の吐水操作部500bは、非接触式のセンサであるため、図1および図2に関して前述したように、吐水操作部500bは、「センサ機器本体」だけではなく、そのセンサの「検知エリア」をも意味する。吐水操作部500bは、図9〜図11に関して前述した吐水操作部500aと同様に、設置エリア501(図8参照)内であってシンク220の左側面223に設置されている。また、吐水操作部500bは、水栓400の整流用吐水口410およびシャワー用吐水口423よりも下方、より具体的にはシンク220の上面すなわち調理台210の上面よりも下方に設置されている。その他の構造や設置形態などについては、図9〜図11に関して前述した具体例と同様である。
【0061】
本具体例のキッチン装置100bにおいて、水栓400から水を吐水させるときには、使用者は、シンク220の上面よりも下方に設置された吐水操作部500bに手をかざす。すなわち、吐水操作部500bの検知エリアに手をかざす。ここで、非接触式のセンサである吐水操作部500bが設置された近傍のシンク220には、吐水操作部500bの設置位置を案内する目印などが設けられていることがより好ましい。これによれば、使用者は、吐水操作部500bの位置を容易に視認することができるため、使用者が吐水および止水を行う際に吐水操作部500bの位置を探すなどといった無駄な動作を抑制することができる。
【0062】
そして、使用者が吐水操作部500bに手をかざすと、制御部110は、開閉弁120を開き、水栓400から水を吐水させることができる。
一方、水栓400からの水を止水させるときには、使用者は、シンク220内に設けられた吐水継続判定エリア(図示しない)から手を抜くだけでよい。つまり、使用者が吐水継続判定エリアから手を外すと、制御部110は、開閉弁120を閉じ、水栓400からの水を止水させることができる。そのため、使用者は、水栓400からの水を止水させるための動作を行う必要はなく、例えば吐水操作部500bに手をかざしたり、マニュアル式のスイッチなどを押したりする必要はない。
なお、使用者に特別な動作をさせずに止水を行う手段としては、水栓400からの吐水が一定量吐水されたのを判断して止水を行う定量止水や、ある一定時間が経過したら止水を行うタイマー式の止水などでも良い。
【0063】
より具体的には、吐水継続判定エリア内において、シンク220内において手や被洗浄物などのような動く物を検知しなくなると、制御部110は、開閉弁120を閉じて水栓400からの水を止水する。あるいは、吐水継続判定エリアから手や被洗浄物などの物が抜けたことを検知すると、制御部110は、開閉弁120を閉じて水栓400からの水を止水する。これにより、使用者は、洗浄を完了した後に止水させるための動作を行う必要はなく、吐水継続判定エリアから手を抜くことにより水栓400からの水を止水させることができる。
【0064】
本具体例によれば、吐水操作部500bは非接触式のセンサであるため、使用者は、例えば野菜や包丁などの被洗浄物を持ったままでも吐水および止水を容易に行うことができる。また、使用者は、吐水操作部500bやその近傍のシンク220などに直接的に触れなくとも、吐水操作部500bに手をかざすことにより吐水および止水を行うことができる。そのため、使用者の手が汚れている場合であっても、吐水操作部500bやその近傍のシンク220などを清潔に保つことができる。
【0065】
また、使用者は、止水させるための動作を行うことなく、吐水継続判定エリアシンク220内から手を抜くことにより水栓400からの水を止水させることができる。そのため、使用者は、洗い動作を効率よく行うことができ、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。また、その他の効果についても、図9〜図11に関して前述した具体例と同様の効果を得ることができる。
【0066】
図15は、本実施形態のさらに他の具体例にかかるキッチン装置を表す平面模式図である。
本具体例の吐水操作部500cは、使用者の足で操作可能な「フットスイッチ」である。この吐水操作部500cは、例えば図9〜図11に関して前述した「ON/OFFスイッチ」と同様である。すなわち、使用者は、吐水操作部500cを足で押すことにより、「ON」と「OFF」とを切り替えることができる。そのため、吐水操作部500cは、図15に表したように、本具体例にかかるキッチン装置100cに対峙した使用者の足元に設置されている。なお、吐水操作部500cの設置位置は、これだけに限定されるわけではなく、図15に表した破線の吐水操作部500cのように、使用者の膝や腿などの脚で操作可能な位置であってもよい。つまり、本具体例の吐水操作部500cは、右脚・右足の可動域603(図2参照)あるいは左脚・左足の可動域604(図2参照)の内部に設けられている。その他の構造や設置形態などについては、図9〜図11に関して前述した具体例と同様である。
【0067】
本具体例のキッチン装置100bにおいて、水栓400から水を吐水させるときには、使用者は、足あるいは脚により吐水操作部500cを押す。そうすることにより、制御部110は、開閉弁120を開き、水栓400から水を吐水させることができる。一方、水栓400からの水を止水させるときには、使用者は、足あるいは脚により吐水操作部500cを再度押す。そうすることにより、制御部110は、開閉弁120を閉じ、水栓400からの水を止水させることができる。
【0068】
本具体例によれば、使用者は、足あるいは脚により吐水操作部500cを操作することができるため、例えば鍋などの比較的大きな被洗浄物を両手で持っている場合でも、吐水および止水を容易に行うことができる。また、その他の効果についても、図9〜図11に関して前述した具体例と同様の効果を得ることができる。
【0069】
次に、本実施形態の水栓400の構造および吐水形態について、図面を参照しつつさらに詳細に説明する。
図16は、本実施形態の水栓を表す模式図である。
なお、図16(a)は、水栓を正面から眺めた正面模式図であり、図16(b)は、図16(a)に表した水栓のA−A断面を表す断面模式図であり、図16(c)は、図16(a)に表した水栓のB−B断面を表す断面模式図である。
【0070】
水栓400は、上方部に整流用吐水口410と、整流用吐水口410の下方部に貯留部430と、を有する。貯留部430は、一端を開口し、上下方向を長手方向とする略直方体形状を有する。そして、貯留部430の開口部分を覆うように、図示しない散水板(図17参照)が設けられている。そのため、本実施形態の水栓400は、整流水とシャワー水とを吐水することができる。整流水とシャワー水との切替は、例えば水栓400の先端に設けられた図示しない切替部によって行うことができる。この切替部は、水栓400の根元や、キッチンキャビネット200の上面に設けられていてもよい。
【0071】
また、切替部は、1つの配管から2つの配管に分岐され、且つ一方の流路のみに給水可能とされたスイッチやレバーであってもよい。この切替部は、機械的に流路を変更させるような構成を有することができる。さらに、切替部は、流路分岐後から水栓400に至るまでの流路上に設けられた、電気的に「ON/OFF」可能なバルブであってもよい。この切替部は、バルブを駆動させる制御基板が設けられ、使用者の操作に応じて一方のバルブを「ON」にし、他方を「OFF」にするような構成を有することができる。このように、水栓400は、例えば整流用配水管411およびシャワー用配水管431を別途内部に設けることにより、切替部分の設置に伴うスペースを確保することなく2つの形態の吐水を提供することができる。そのため、小型で且つ使用者の欲する吐水を供給可能となる。
【0072】
水栓400の左右方向の幅L2は、被洗浄物の大きさに応じた設定とすることが望ましい。例えば、洗浄する対象は一般的に手、包丁や鍋等の調理器具、あるいは食材等であるが、左右方向を幅広く設定すると、小さなものを洗う際に余分な水を使用してしまう。これは、長手方向を有する被洗浄物を使用者が水栓400に向けて自然に差し出すと、被洗浄物の長手方向はシンク220の奥行方向と略平行となるためである。一方、左右方向を幅狭く設定すると、大きなものを洗浄する際に狭い範囲にしか水がかからないため、手を大きく動かして洗浄を行う必要がある。
【0073】
そこで、本実施形態では、手や包丁等を簡単に洗うことを考慮に入れて水栓400の左右方向の幅L2を設定することで、「簡単洗い」では被洗浄物を差し出すだけで洗浄可能とした。例えば、水栓400の左右方向の幅L2を約40mm程度とすることで、手や包丁の刃の部分を左右方向に手を移動させること無く洗浄することが可能となる。また、まな板のように面積の広い調理器具に対しても、後に詳述するように、水栓400はシンク220の奥行方向を長手方向とする吐水が可能であるため、調理器具を吐水の長手方向に動かす動作を低減して洗浄することが可能となる。そのため、使用者の洗浄動作における負荷を低減することが可能となる。但し、これらの寸法はこれだけに限られるわけではなく、適宜変更することができる。
【0074】
図17は、本実施形態のシャワー吐水用の散水板を例示する模式図である。
なお、図17(a)は、散水板を正面から眺めた正面模式図であり、図17(b)は、複数のシャワー用吐水口を有するシャワー用吐水部を例示する模式図である。
【0075】
図17(a)に表した散水板420は、水栓400の貯留部430の開口部分を覆うように固定される。散水板420は、シャワー用吐水部421を有し、このシャワー用吐水部421は、水をシャワー水として吐水するためのシャワー用吐水口423を有する。シャワー用吐水部421は、例えば5行×2列で配列されている。また、シャワー用吐水部421には、シャワー用吐水口423が例えば同心円状に2列で配列されており、合計約30個程度のシャワー用吐水口423が1組として設けられている。水は、それぞれのシャワー用吐水口423から吐出され、シャワー水としてシンク220に着水する。
【0076】
散水板420をこのような構成にすることによって、シャワー用吐水口423から吐出された洗浄水は部分的に集中した形状となる。これにより、シャワー用吐水口が散水板の全体に拡散して配置されている場合に比べて、図17(a)に表した散水板420は、各シャワー用吐水部421に対峙した被洗浄物の一部に対して洗浄水を局所的に衝突させることができる。そのため、被洗浄物の付着物をより効率よく洗い流すことができる。
【0077】
また、複数個のシャワー用吐水部421を設け、且つ散水板420におけるシャワー用吐水口423の開口面積を十分に確保することにより、洗浄水が被洗浄物に対して局所的に衝突したとしても、散水板420は吐水量を十分に確保することができる。そのため、被洗浄物に衝突した後の吐水の広がりを十分に確保することができる。さらに、吐水を被洗浄物の全体に拡散することもでき、被洗浄物全体への吐水も可能となる。
【0078】
なお、包丁などの長手方向を有する調理器具等を洗浄することを考慮すると、シャワー用吐水部421は散水板420の長手方向(図17(a)における縦方向)に沿って設けられることが好ましい。これは、図16に関して前述したように、使用者が長手方向を有する被洗浄物を水栓400に自然に差し出すと、被洗浄物の長手方向はシンク220の奥行方向と略平行となるためである。
【0079】
ここで、シャワー用吐水口423およびシャワー用吐水部421についてさらに詳述する。
洗浄水が被洗浄物に衝突した際の状況は、シャワー用吐水口423の口径によって異なる。例えば、シャワー用吐水口423の口径を小さくしてシャワー用吐水口423の口数を一定にした場合、シャワー用吐水口423から吐出される洗浄水の流速は速くなる。その洗浄水は多くの水流となって吐出されるため、被洗浄物に当たった際の衝撃によって発生する水跳ねは、近傍にある流速の速い水流によって遮られる。そのため、洗浄水が使用者に対して飛散することをより低減させることが可能となる。
【0080】
また、流速が速い吐水を行うことが可能であるため、1本の水流に対する断面積は小さくとも、洗浄水は被洗浄物に対してより大きな衝突エネルギーを有することが可能となる。例えば、葉物野菜の泥汚れのように小さい隙間等に入った汚れを、断面積の小さい水流は衝突エネルギー用いて洗浄することが可能となる。
【0081】
一方、シャワー用吐水口423の開口面積を広げた場合には、各水流における洗浄水の衝突エネルギーは低減するものの、洗浄水が被洗浄物に衝突した際に広がる水膜は大きくなる。そのため、被洗浄物全体に対するすすぎを効率良く行うことが可能となる。また、1つのシャワー用吐水部421は複数の水流を有するため、洗浄水はシャワー用吐水部421と対峙した被洗浄物に対して複数の衝突点を持つことが可能となる。そのため、付着物に対する洗浄効果を向上させることも可能となる。
【0082】
但し、各シャワー用吐水口423から吐水される水流同士が接触又は交差すると、水流が被洗浄物と異なる方向へ進行するため、水跳ねの原因ともなり得る。そこで、シャワー用吐水部421に設けられた各シャワー用吐水口423同士の間隔を一定間隔以上空けることにより、水流同士の接触を抑制することが好ましい。例えば、各シャワー用吐水口423の端面同士の距離を、シャワー用吐水口423の直径と同じ長さ以上に設定することにより、各水流間に水流一本分以上の間隔を保持することが可能となる。そのため、容易に水流が接触することを防止することが可能となる。
【0083】
また、シャワー用吐水口423は、図17(a)および図17(b)に表したように、同心円状に複数の円を設け、その円周上に一定間隔毎に配置されることが好ましい。シャワー用吐水部を一重の円で構成し、その円周上にシャワー用吐水口を配置した場合には、シャワー用吐水部から吐水される流水群は中抜け状態の吐水となってしまう。そのため、洗浄水は被洗浄物の一定の部位のみに衝突することになり、付着物を効率よく洗浄することが困難となるおそれがある。
【0084】
これに対して、複数の同心円を設け、その円周上にシャワー用吐水口423を設けることで、シャワー用吐水部421に対峙する被洗浄物に対して効率よく洗浄水を吐水することが可能となる。そのため、付着物を効率よく洗浄することが可能となる。また、複数の同心円にシャワー用吐水口423を設けることにより、内側(同心円の中心側)に位置する同心円状の流水群の水跳ねが、外側に位置する同心円状の流水群に遮られるため、全体的な水はねの量を低減することができる。
【0085】
但し、前述したように、各シャワー用吐水口423の間隔を十分に確保して、水流同士の接触を防止することが好ましい。1つの同心円状に配置されたシャワー用吐水口423については、前述したように各シャワー用吐水口423同士の間隔を一定間隔以上空けることが望ましいが、隣接する同心円状に配置されたシャワー用吐水口423同士の間隔においても同様に一定間隔以上を空けることが望ましい。例えば、隣接するシャワー用吐水部421の各同心円の直径をシャワー用吐水口423の直径の4倍以上あるいは4倍以下に設定することが好ましい。これにより、各同心円状に配置されたシャワー用吐水口423から吐水される水流同士には、水流の断面積の少なくとも一本分以上の間隔を保持することが可能となる。そのため、容易に水流が接触することを防止することが可能となる。
【0086】
散水板420に設けられたシャワー用吐水口423の全体の幅L5、すなわち配設されたシャワー用吐水口423の全体の左端部と右端部との間の寸法(幅L5)は、例えば約20mm程度に設定することができる。一方、散水板420に設けられたシャワー用吐水口423の全体の上下方向(図17(a)における縦方向)の長さL6、すなわち配設されたシャワー用吐水口423の全体の上端部と下端部との間の長さL6は、例えば約65mm程度に設定することができる。
【0087】
図18は、本実施形態にかかるキッチン装置を上方から眺めた平面模式図である。
本実施形態の水栓400の吐水部は、図1に関して前述したように、調理台210の上面に対して上方に傾斜している。そのため、シャワー用吐水口423から吐水された水は、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水される。また、散水板420は、図17(a)に表したように、シャワー用吐水部421およびシャワー用吐水口423を有する。そして、その吐水部は、シンクの奥行方向を長手方向とする形状を有する。
【0088】
ここで、吐水部とは、吐水口全体の左端部と右端部と上端部と下端部とで囲まれた部分をいう。すなわち、例えば図17(a)に表した散水板420においては、シャワー用吐水口423の全体の左端部と右端部と間の長さ(L5)および上端部と下端部との間の長さ(L6)とで囲まれた部分をいう。そのため、シャワー用吐水口423および散水板420に対して垂直にみた状態において、シャワー水全体は、左右方向の幅(L5)が約20mm程度、上下方向の長さ(L6)が約65mm程度の略矩形の形状を有することができる。なお、整流用吐水口410については、整流用吐水口410の開口形状自体が吐水部となる。
【0089】
そのため、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水された水が調理台210の上面を横切る際の水平方向断面は、図18に表した領域440の如く、シンクの奥行方向を長手方向とする形状を呈している。領域440の前後方向の長さL1(図5参照)は、例えば約70mm〜75mm程度である。これは、長手方向の長さL6(図17参照)が約65mm程度であるシャワー水が、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水された場合の長さである。一方、図17(a)に表したようなシャワー用吐水口423の全体の左端部と右端部との幅L5が約20mm程度である場合には、領域440の左右方向の長さL8も同様に約20mm程度となる。
【0090】
このように、水栓400から吐水された水の水平方向断面が、シンク220の奥行方向を長手方向とする形状を呈することにより、水栓400は、洗浄水を広範囲に吐水することができる。例えば、包丁などのように全長が長い被洗浄物に対しては、被洗浄物の全長の略半分の長さに対して洗浄水を吐水し、且つ被洗浄物上を流れる流水によって残りの略半分の長さを洗い流すことができる。
【0091】
次に、水栓400の吐水部が調理台210の上面に対して傾斜して設けられていることの効果、水が調理台210の上面に対して斜め方向から吐水されることの効果、および領域440がシンク220の奥行方向を長手方向とする形状を呈することの効果について図面を参照しつつ説明する。
【0092】
図19は、被洗浄物に対して水が斜め方向から吐水された状態を例示するための斜視模式図である。
また、図20は、被洗浄物に対して水が斜め方向から吐水された状態を側面から眺めた側面模式図である。
なお、図20(a)は、一本の水流を例示する模式図であり、図20(b)は、複数の水流を例示する模式図である。
【0093】
図19に表したように、水栓400から吐水された水480が被洗浄物700に対して斜めに着水すると、水480は略進行方向である矢印A、矢印B、または矢印Cの方向に流れようとする。そのため、水480が被洗浄物700に着水したときに、被洗浄物700と水480との衝突面が広くなり、水480は被洗浄物700の表面の広い範囲に広がろうとする。
【0094】
さらに、図18に表した領域440のように、吐水断面が長手方向を有する形状の吐水を被洗浄物700に対して当てる場合には、図20(b)に表したように、水480は例えば矢印Aなどの略一方向に連なって流れようとする。そのため、被洗浄物700に付着した汚れなどは、着水した水の流れと一緒になって洗い流される。したがって、斜め方向から吐水された(着水した)効果と、吐水断面の形状が長手方向を有する形状となるように吐水された(着水した)効果と、の相乗効果によって洗浄効果が向上する。
【0095】
本実施形態にかかるキッチン装置100は、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水することができ、且つ吐水された水の水平方向断面がシンク220の奥行方向を長手方向とする形状を呈するように吐水することができる。そのため、これらの相乗効果によって洗浄効果を向上させることができる。
【0096】
図21は、被洗浄物に対して水が斜めに吐水された場合の水跳ねについて説明するための模式図である。
水栓400から吐水された水480が被洗浄物700に対して斜めに着水した場合には、図19および図20に関して前述したように、水480は被洗浄物700の表面の広い範囲に広がろうとする。したがって、被洗浄物700の表面には、広い範囲に渡って水膜480aが形成される。
【0097】
さらに、水480は被洗浄物700に対して斜めに着水するため、水膜480aは被洗浄物700の表面上を流れようとする。広い範囲に渡って水膜480aが流れると、水栓400から吐水された水480は、この流れを有する水膜480aの上に着水する。流れを有する水膜480aの上に着水した水480は、すぐに水膜480aの流れに乗って、水膜480aと一緒に流れる。そのため、この水膜480aの上に着水した水480は、被洗浄物700に直接着水した水のようには水跳ねしない。したがって、水跳ねを減少させることができる。
【0098】
また、水膜480aによって水跳ねを生じた場合であっても、断面が長手方向を有する形状の水を被洗浄物700に対して当てる場合には、隣り合う水流との間の領域485において、その水跳ねは打ち消される。したがって、さらに水跳ねを減少させることができる。つまり、広い範囲に渡って流れを有する水膜480aが形成されることと、隣り合う水流との間の領域485が存在することと、によって水跳ねを減少させることができる。これにより、人の手の届く範囲に洗浄エリア401が形成された場合でも、水跳ねが、調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によれば、本実施形態の水栓400の吐水部は、調理台210の上面に対して上方に傾斜し、シンク220の中心CLよりも調理台210側に設置され、シンク220の奥行方向と平行方向に吐水可能である。そのため、洗浄エリア401を調理台210側であって右手・右腕の可動域601内に設定することができ、使用者は楽に「簡単洗い」を行うことができる。また、水栓400と、調理台210の上面と、の間の空間を広く確保することができるため、その水栓400が邪魔になるおそれは少ない。また、水栓400から吐水された水は、調理台210の前にいる使用者に向かってくることはないため、その使用者は、恐怖感や圧迫感などを感ずるおそれは少ない。また、水跳ねが、調理台210の前にいる使用者に向かってくるおそれは少ない。さらに、入力部500は、調理台210の前に立つ使用者の可動域601、602、603、604内の少なくともいずれか、すなわち人の届く範囲601、602、603、604内の少なくともいずれかに設けられている。これらにより、使用者は、調理台210の前に立ち、調理を継続しながらでも楽に洗い動作を行うことができる。
【0100】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、キッチン装置100などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや水栓400の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
例えば、キッチンキャビネット200の上面とシンク220の後面224との間(略稜線部分)に、ある一定の角度で傾斜した図示しない傾斜面を設け、水栓400は、この傾斜面に対して略垂直に設けられていてもよい。さらに、水栓400は、その傾斜面から調理台210の上面に対して水平方向に設けられていてもよい。これらの場合であっても、水栓の所定の寸法よりも上方部は、図1に表した水栓400の吐水部と同様に、調理台210の上面に対して傾斜して設けることができる。これらの水栓の形状は、キッチンキャビネット200に水栓400を取り付ける面が異なる場合にも、調理台210の上面に対して斜め方向から吐水できるものであり、どのようなキッチンキャビネット200に対しても本発明の効果を得ることができる。また、その傾斜面には水が溜まりにくく、シンク220に向かって水が流れやすいため、水栓400の根元に水垢などの汚れが付着し難いという効果も得られる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0101】
100、100a、100b、100c キッチン装置、 110 制御部、 120開閉弁、 130 配水管、 200 キッチンキャビネット、 210 調理台、 220 シンク、 223 左側面、 224 後面、 225 右側面、 226 前面、 227 底面、 228 斜面、 400、400a、400b 水栓、 401 洗浄エリア、 410 整流用吐水口、 411 整流用配水管、 420 散水板、 421 シャワー用吐水部、 423 シャワー用吐水口、 430 貯留部、 431 シャワー用配水管、 440 領域、 480 水、 480a 水膜、 485 領域、 500入力部(吐水操作部)、500a、500b、500c 吐水操作部、 500d 入力部、 501 設置エリア、 510a、520a 矢印、 601、602、603、604 可動域、 700 被洗浄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクと、
前記シンクの側方に設けられた調理スペースと、
前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に前記吐水した水により被洗浄物を洗浄可能な洗浄エリアを形成可能な水栓と、
前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に設けられ、前記水栓からの吐水を指示可能な入力部とを備え、
前記水栓は、前記水をシンク底面に対して斜め下方に吐水可能な吐水口を有する吐水部を備え、
前記入力部は、前記調理スペースの前に立つ人の手の届く範囲内に設けられ、且つ前記吐水口よりも下方に設けられたことを特徴とするキッチン装置。
【請求項2】
前記吐水部が前記調理スペースの上面に対して上方に傾斜し、前記シンクの奥行方向と平行な方向に水を吐水可能としたことを特徴とする請求項1記載のキッチン装置。
【請求項3】
前記入力部は、前記シンクの上面よりも下方に設けられたことを特徴とする請求項1から2の何れか1項記載のキッチン装置。
【請求項4】
前記入力部は、前記シンク内の前記調理スペース側の側面に設けられたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載のキッチン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−285787(P2010−285787A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139680(P2009−139680)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】