説明

キナーゼおよびホスファターゼアッセイ

キナーゼまたはホスファターゼ活性を検出およびモニターするための組成物、方法、およびキットについて記述する。組成物には典型的に、ペプチド、検出可能部分、およびプロテアーゼ切断部位が含まれる。キナーゼまたはホスファターゼによってペプチドを改変すると、ペプチドのタンパク質分解に対する感受性が変化して、それによって組成物の検出可能な特性の変化が起こる。キナーゼまたはホスファターゼ活性の基質または調節物質を決定するためのパネルアッセイについても記述する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、キナーゼおよびホスファターゼアッセイに関し、より詳しくはキナーゼおよびホスファターゼ活性のモニタリングにとって有用な組成物、方法、およびキットに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる、2003年7月29日に提出された米国特許仮出願第60/490,771号の恩典およびそれに対する35 USC§119(e)の下での優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
背景
細胞内活性の最も重要なクラスの一つは、タンパク質の翻訳後改変である。翻訳後改変活性は、生きている細胞内でタンパク質を改変して、その生物活性および/または機能に変化を引き起こす。主要なタイプのタンパク質翻訳後改変には、タンパク質の燐酸化、メチル化、プレニル化、グリコシル化、ユビキチン化、硫酸化、およびタンパク質分解が含まれる。
【0004】
キナーゼおよびホスファターゼによるタンパク質の改変は一般的に、タンパク質機能を調節するための重要なメカニズムとして認識されている。タンパク質キナーゼは、主にアミノ酸のチロシン、セリン、またはトレオニン上に燐酸基を付加することによって(燐酸化)タンパク質を改変する。対照的に、タンパク質ホスファターゼは、これらの燐酸基を除去するように作用する。タンパク質の燐酸化状態の変化は、酵素活性、タンパク質の局在、およびタンパク質-タンパク質相互作用に影響を及ぼしうる。そのような変化はその後、細胞の代謝、調節、増殖、および分化を調節しうる。
【0005】
研究者らは、400より多いヒト疾患および障害が、タンパク質キナーゼの遺伝的欠損によって発生することを発見した。このように、ヒトゲノムによってコードされる600を超えるキナーゼおよびホスファターゼは、おそらく薬物の強力な標的となる。しかし、タンパク質キナーゼ活性を測定する現在の方法は、多くの短所を有し、薬物に関するキナーゼの迅速なスクリーニング能を妨害する。例えば、キナーゼ活性を測定する現行の多くの方法が、対象タンパク質基質への32Pの取り込みおよび測定に依存している。細胞全体において、これは細胞のATPプールを効率的に標識するために、および標的タンパク質が放射活性によって確実に効率よく標識されるように、高レベルの放射活性を用いる必要がある。一つまたは複数の試験薬と共にインキュベートした後、細胞を溶解して、その燐酸化の相対的程度を決定するために対象タンパク質を精製しなければならない。この方法は、アーチファクトによる燐酸化または脱燐酸化を回避するために、多数の細胞、長いプレインキュベーション時間、および注意深い操作および洗浄段階を必要とする。ELISA型のアプローチを用いて燐酸化特異的抗体に基づくアッセイのような別のキナーゼアッセイ法は、燐酸化タンパク質と非燐酸化タンパク質とを識別する抗体を産生する難しさを伴う。
【0006】
このように、感度がよく、使用が単純で、ハイスループットスクリーニング法に適応できるキナーゼおよびホスファターゼ酵素活性をモニターするアッセイが必要である。
【発明の開示】
【0007】
概要
本発明は、翻訳後改変活性に関する認識モチーフのようなモチーフと、検出可能部分とを有するペプチドを含む組成物に基づく。組成物は意外にも、キナーゼおよびホスファターゼ活性を含む翻訳後改変活性のセンサーとして有用である。組成物はまた、そのような活性の調節物質を決定するために用いることができる。本発明はまた、翻訳後改変活性の基質および調節物質を決定する方法にも関する。
【0008】
一つの局面において、本発明は、組成物を提供する。組成物には、アミノ酸5個〜50個の長さを有するペプチドが含まれうる。例えば、ペプチドは、アミノ酸8〜50個の長さ、アミノ酸8〜25個の長さ、またはアミノ酸8〜15個の長さを有しうる。組成物には、ペプチドに会合する、例えば共有結合(任意でリンカー(L)を通して)または非共有結合によって会合する第一の検出可能部分が含まれうる。適したリンカーには、GABA、ジアミノペンタニル、およびアミノヘキサノイル基が含まれる。
【0009】
いくつかの態様において、組成物には、第二の検出可能部分が含まれうる。したがって、本明細書において記述されるいくつかの組成物において、第一の検出可能部分と第二の検出可能プローブ部分とは、ダーククエンチング(dark quenching)RETペアを形成することができる。他の態様において、第一の検出可能部分と第二の検出可能部分とは、FRETペアを形成することができる。いくつかの態様において、第一の部分は7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミドであって、第二の検出可能部分は5-FAMである。
【0010】
一つの局面において、ペプチドは、AIYAA(SEQ ID NO:1);QDYLS(SEQ ID NO:4);EIYGV(SEQ ID NO:7);X1がG、A、またはEであるTX1YVA(SEQ ID NO:110);EEYIQ(SEQ ID NO:17)、またはDYSQV(SEQ ID NO:20)から選択されるモチーフを含みうる。モチーフは、チロシンキナーゼの認識モチーフとなりえて、

から選択することができる。そのような認識モチーフを有するペプチドには、以下が含まれる:

【0011】
いくつかの態様において、チロシンキナーゼの認識モチーフがEAIYAAP(SEQ ID NO:2)である場合、チロシンキナーゼは、Abl1、Abl2、BMX、CSF1R、Csk、EPHB4、Fes/Fps、FGFR1、FGFR4、Fgr、FLT3、Fyn、Hck、IGF1R、IRKβ、ITK、Jak3、KDR、c-KIT、Lck、Lyn A、Lyn B、c-MET、Src、Src N1、Src N2、SYK、TIE2、TRKa、およびYESからなる群より選択することができる。または、チロシンキナーゼの認識モチーフがDQDYLSL(SEQ ID NO:5)である場合、チロシンキナーゼはCaMKII、CDK7/CycH、CK1δ、IKKα、およびIKKβから選択することができる。もう一つの態様において、チロシンキナーゼの認識モチーフがEEIYGVI(SEQ ID NO:8)である場合、チロシンキナーゼは、Abl1、Abl2、BMX、CSF1R、Csk、EPHB4、Fes/Fps、FGFR1、Fgr、FLT3、Fyn、Hck、IGF1R、IRKβ、IRTK、ITK、Jak3、KDR、c-KIT、Lck、Lyn A、Lyn B、c-MET、Src、Src N1、Src N2、SYK、TIE2、TRKa、またはYESとなりうる。さらにもう一つの態様において、チロシンキナーゼの認識モチーフがLTGYVAR(SEQ ID NO:11)である場合、チロシンキナーゼはCSF1R、FLT3、またはc-KITとなりうる。さらなる態様において、チロシンキナーゼの認識モチーフがEEEYIQI(SEQ ID NO:18)である場合、チロシンキナーゼは、EGFR、Zap-70、PDGFR、FGFR4、Abl 1、またはLyn Bとなりうる
【0012】
もう一つの局面において、ペプチドは、RR(S/T)L(SEQ ID NO:145);L(S/T)TT(SEQ ID NO:146);L(S/T)LD(SEQ ID NO:147);X1がV、A、またはQであって、X2がVまたはLとなりうるRX1(S/T)X2(SEQ ID NO:148);TS(S/T)L(SEQ ID NO:149);X1がPまたはIとなりえて、X2がG、K、またはDとなりうるX1(S/T)PX2(SEQ ID NO:150);X1がA、E、またはQとなりえて、X2がYまたはHとなりうる(S/T)X1X2VA(SEQ ID NO:151);I(S/T)IAN(SEQ ID NO:152);SIA(S/T)I(SEQ ID NO:153);S*が燐酸化セリンである(S/T)VPPS*P(SEQ ID NO:154);X1がAまたはEとなりえて、X2がIまたはQとなりうるDX1(S/T)X2(SEQ ID NO:155);およびD(S/T)QV(SEQ ID NO:156)から選択されるモチーフを有しうる。
【0013】
もう一つの局面において、ペプチドには、X1がF、W、またはYとなりうるRRX1(S/T)L(SEQ ID NO:45);X1がF、W、またはYとなりうるLX1(S/T)TT(SEQ ID NO:48);X1がF、W、またはYとなりうるX1L(S/T)LD(SEQ ID NO:51);X1がV、A、またはQとなりえてX2がF、W、またはYとなりえて、およびX3がVまたはLとなりうるRX1X2(S/T)X3(SEQ ID NO:54);X1がF、W、またはYとなりうるTX1S(S/T)L(SEQ ID NO:61);X1がPまたはIとなりえてX2がF、W、またはYとなりえて、およびX3がG、K、またはDとなりうるX1X2(S/T)PX3(SEQ ID NO:64);X1がF、W、またはYとなりえてX2がA、E、またはQとなりえて、およびX3がYまたはHとなりうるX1(S/T)X2X3VA(SEQ ID NO:71);X1がF、W、またはYとなりうるIX1(S/T)IAN(SEQ ID NO:78);X1がF、W、またはYとなりうるSIAX1(S/T)I(SEQ ID NO:81);S*が燐酸化セリンである(S/T)VPPS*P(SEQ ID NO:84);X1がAまたはEとなりえてX2がF、W、またはYとなりえて、およびX3がIまたはQとなりうるDX1X2(S/T)X3(SEQ ID NO:87);ならびにX1がF、W、またはYとなりうるDX1(S/T)QV(SEQ ID NO:92)から選択されるモチーフが含まれうる。
【0014】
特定の態様において、モチーフはRRF(S/T)L(SEQ ID NO:157);LF(S/T)TT(SEQ ID NO:158);YL(S/T)LD(SEQ ID NO:159);X1がV、A、またはQとなりえてX2がVまたはLとなりうるRX1F(S/T)X2(SEQ ID NO:160);TFS(S/T)L(SEQ ID NO:161);X1がPまたはIとなりえてX2がG、K、またはDとなりうるX1F(S/T)PX2(SEQ ID NO:162);X1がA、E、またはQとなりえてX2がYまたはHとなりうるF(S/T)X1X2VA(SEQ ID NO:163);IF(S/T)IAN(SEQ ID NO:164);SIAF(S/T)I(SEQ ID NO:165);X1がAまたはEとなりえてX2がIまたはQとなりうるDX1F(S/T)X2(SEQ ID NO:166)およびDY(S/T)QV(SEQ ID NO:167)から選択されうる。
【0015】
もう一つの局面において、本発明は、セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフとなりうるモチーフを含むペプチドを提供する。セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフの例には、

S*が燐酸化セリンであるFSVPPS*PD(SEQ ID NO:85);EDAFSII(SEQ ID NO:88);EDEFSQN(SEQ ID NO:89);またはEGDYSQV(SEQ ID NO:93)が含まれる。そのような認識モチーフを有するペプチドには以下が含まれる:

S*が燐酸化セリンであるPRPFSVPPS*PDK(SEQ ID NO:86);EEDAFSIIGK(SEQ ID NO:90);REDEFSQNEEK(SEQ ID NO:91);IIKIFSPDVEK(SEQ ID NO:70);およびEGDYSQVLEK(SEQ ID NO:22)。
【0016】
セリン/トレオニンキナーゼの認識部位がLRRFSLG(SEQ ID NO:46)である場合、セリン/トレオニンキナーゼは、Akt1、Akt2、Akt3、Aurora A、CaMKII、CDK2/CycA、CDK3/CycE、CDK7/CycH、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K1β、MAPKAP-K1γ、MSK1、PAK2、PKA、PKG、およびROCKからなる群より選択されうる。他の態様において、セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがGLFSTTP(SEQ ID NO:49)である場合、セリン/トレオニンキナーゼは、p38γ、p38δ、およびREDKから選択されうる。または、セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがNRVFSVA(SEQ ID NO:55)である場合、セリン/トレオニンキナーゼは、Akt3、AMPK、CaMKII、CDK7/CycH、CHK2、IKKα、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K2、MAPKAP-K3、MAPKAP-K5、PAK2、PKA、PKCβII、REDK、ROCK、ROCK2、またはSGK1となりうる。もう一つの態様において、セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがPRAFSVG(SEQ ID NO:56)である場合、セリン/トレオニンキナーゼは、Akt1、Akt2、Akt3、CaMKII、CDK7/CycH、IKKβ、MAPKAP-K1α/RSK1、MAPKAP-K1β/RSK2、MAPKAP-K1γ/RSK3、MSK1、PAK2、PIM1、PKA、PKG、REDK、およびSGK1からなる群より選択されうる。セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフはRRQFSLR(SEQ ID NO:57)となりうるが、この場合セリン/トレオニンキナーゼは、Akt1、Akt2、Akt3、CaMKII、CHK1、CHK2、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K1β、MAPKAP-K1γ、MSK1、p70 S6キナーゼ、PAK2、PIM1、PKA、PKCα、PKCβI、PKCβII、PKCγ、PKCδ、PKCε、PKCζ、PKCη、PKCθ、PKCτ、PKG、ROCK1、ROCK2、またはSGK1となりうる。もう一つの態様において、セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフはRTFSSLA(SEQ ID NO:62)であって、セリン/トレオニンキナーゼは、Akt1、CDK2/CycA、CDK6、IKKβ、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K1β、MAPKAP-K1γ、p70 S6キナーゼ、PAK2、およびPKAからなる群より選択される。セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフはAPFSPGG(SEQ ID NO:65)となりえて、セリン/トレオニンキナーゼは、CDK2/CycA、CDK3/CycE、ERK1、ERK2、IKKα、p38β、p38γ、およびp38δからなる群より選択されうる。
【0017】
本明細書に記述の如何なる組成物にも、キモトリプシンプロテアーゼ切断部位、カスパーゼ3プロテアーゼ切断部位、カテプシンGプロテアーゼ切断部位、トリプシンプロテアーゼ切断部位、エラスターゼプロテアーゼ切断部位、エンドプロテアーゼAsp-Nプロテアーゼ切断部位、またはエンドプロテアーゼGlu-Nプロテアーゼ切断部位のようなプロテアーゼ切断部位が含まれうる。特定の態様において、プロテアーゼ切断部位には、配列FS、FT、またはYが含まれうる。
【0018】
組成物は、光学特性、磁気特性、または放射活性特性のような検出可能な特性を示すことができる。例えば、光学特性は、励起波長でのモル吸光係数、量子効率、励起スペクトル、放射スペクトル、最大励起波長、最大放射波長、二つの波長での励起幅の比、二つの波長での放射幅の比、励起状態の寿命、異方性、放射光の偏光、共鳴エネルギー転移、またはある波長での放射のクエンチングとなりうる。光学特性は、蛍光特性、例えば蛍光励起スペクトル、蛍光放射スペクトル、最大蛍光励起波長、最大蛍光放射波長、二つの波長での蛍光励起幅の比、二つの波長での蛍光放射幅の比、蛍光励起状態の寿命、蛍光異方性、またはある波長での蛍光放射のクエンチングとなりうる。特定の態様において、組成物は、250〜750 nmで最大蛍光励起を示し、450〜800 nmで最大蛍光放射を示しうる。
【0019】
検出可能部分は、例えば5-FAM、6-FAM、7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミド、6-クロロ-7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミド、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン、テトラメチルローダミン-5-イソチオシアネート、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート、5-カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、6-カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、5-カルボキシテトラメチルローダミン、6-カルボキシメチルローダミン、および7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸のような蛍光分子となりうる。他の態様において、検出可能部分は、結合ペアのメンバー、例えば抗体のエピトープまたはビオチンである。
【0020】
もう一つの局面において、本発明は、キナーゼの特徴を調べる方法を提供する。方法には、タンパク質キナーゼが組成物を燐酸化するために有効な条件で既に記述された組成物をタンパク質キナーゼに接触させる段階、およびタンパク質キナーゼの組成物の燐酸化能を測定する段階が含まれる。
【0021】
さらにもう一つの局面において、本発明は、キナーゼの基質を同定する方法を特徴とする。方法には、上記の組成物をタンパク質キナーゼに接触させる段階;組成物およびタンパク質キナーゼをプロテアーゼに接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;ならびにプロテアーゼ混合物における測定可能な特性を、タンパク質キナーゼを欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と比較する段階が含まれる。プロテアーゼ混合物における測定可能な特性が対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と異なれば、組成物はタンパク質キナーゼの基質であると同定される。キナーゼとの接触段階の際にATPが存在しうる。いくつかの態様において、プロテアーゼ混合物における測定可能な特性を、ATPを欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と比較して、プロテアーゼ混合物における測定可能な特性が対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と異なれば、組成物がキナーゼの基質であると同定される。
【0022】
方法のいくつかの態様において、二つまたはそれ以上の異なる組成物を、接触段階の際に、タンパク質キナーゼおよびATPに独立して接触させて、二つまたはそれ以上のキナーゼ混合物を形成する。キナーゼ混合物のそれぞれを、プロテアーゼとの接触段階の際に、プロテアーゼに独立して接触させて、二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成する。プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較する。他の態様において、二つまたはそれ以上の異なるタンパク質キナーゼを接触段階の際に組成物およびATPに独立して接触させて、二つまたはそれ以上のキナーゼ混合物を形成する。キナーゼ混合物のそれぞれを、独立してプロテアーゼに接触させて、二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成し、プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較する。
【0023】
測定可能な特性の比較は、プロテアーゼ接触段階と同時に、またはプロテアーゼ接触段階の後に行うことができる。接触段階は、例えばプロテアーゼ混合物に試薬を加えることによって、またはプロテアーゼ混合物を加熱することによって、プロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害することによって終了することができる。試薬はアプロチニン、PMSF、TPCK、AEBSF、キモトリプシン阻害剤1、およびキモトリプシン阻害剤2となりうる。
【0024】
本発明はまた、キナーゼの活性の調節物質を同定する方法も提供する。方法において、タンパク質キナーゼの混合物、タンパク質キナーゼの基質、および試験化合物の混合物を混合する;混合物をプロテアーゼに接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する;ならびにプロテアーゼ混合物における測定可能な特性を、試験化合物の非存在下での基質、タンパク質キナーゼおよびプロテアーゼの対照混合物における測定可能な特性と比較する。プロテアーゼ混合物における測定可能な特性が対照混合物における測定可能な特性と異なれば、試験化合物はキナーゼ活性の調節物質であると同定される。ATPはキナーゼ接触段階の際に存在しうる。
【0025】
いくつかの態様において、二つまたはそれ以上の異なる試験化合物を、接触段階においてタンパク質キナーゼ、ATP、および基質に独立して接触させて、二つまたはそれ以上のキナーゼ混合物を形成することができる。キナーゼ混合物のそれぞれを、プロテアーゼに独立して接触させて、二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成し、プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較する。他の態様において、二つまたはそれ以上の異なるタンパク質キナーゼを、独立してATP、試験化合物、および基質に接触させて、二つまたはそれ以上のキナーゼ混合物を形成する;キナーゼ混合物のそれぞれを、独立してプロテアーゼに接触させて二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成する;ならびにプロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較する。比較段階は、プロテアーゼ接触段階の際、または後に行うことができる。プロテアーゼ接触段階は既に記述されたとおりに終了してもよい。
【0026】
もう一つの局面において、本発明は、燐酸化された組成物を提供する。そのような組成物はホスファターゼの基質として有用となりうる。例えば、上記のモチーフにおけるYまたはS/Tは、例えば化学的または酵素的に燐酸化されてもよい。他の態様において、チロシンキナーゼまたはS/Tキナーゼの認識モチーフにおけるそれぞれYまたはS/Tは燐酸化されて、それによってタンパク質ホスファターゼの認識モチーフとなってもよい。タンパク質ホスファターゼ認識モチーフの例には:

が含まれ、式中S*は燐酸化セリンを表し、T*は燐酸化トレオニンを表す。
【0027】
ホスファターゼ認識モチーフを含むペプチドの例には、

が含まれ、式中、Y*は燐酸化チロシンを表す。他の態様において、ホスファターゼ認識モチーフを含むペプチドは、

から選択される配列を有する。
【0028】
特定の態様において、ホスファターゼ認識モチーフはEAIY*AAP(SEQ ID NO:24)であり、ホスファターゼは、PTP1B、LAR、およびLCAからなる群より選択される。または、ホスファターゼ認識モチーフはDQDYLS*L(SEQ ID NO:27)となりえて、ホスファターゼは、PP1α、PP2A、PP2B、またはPP2Cとなりうる。他の態様において、ホスファターゼ認識モチーフは、LRRFS*LG(SEQ ID NO:96)であって、ホスファターゼは、PP1α、PP2A、およびPP2Cからなる群より選択される。さらに他の態様において、ホスファターゼ認識モチーフはGLFS*TTP(SEQ ID NO:99)であって、ホスファターゼは、PP1α、PP2A、PP2B、またはPP2Cから選択される。さらに、ホスファターゼ認識モチーフはNRVFS*VA(SEQ ID NO:105)となりえて、ホスファターゼは、、PP1α、PP2A、PP2B、もしくはPP2Cとなりうる;ホスファターゼ認識モチーフはPRAFS*VG(SEQ ID NO:106)となりえて、ホスファターゼは、PP1α、PP2A、およびPP2Bからなる群より選択される;ホスファターゼ認識モチーフはRRQFS*LR(SEQ ID NO:107)となりえて、ホスファターゼは、PP1α、PP2A、もしくはPP2Bとなりうる;ホスファターゼ認識モチーフは、RTFSS*LA(SEQ ID NO:112)となりえて、ホスファターゼは、PP1α、PP2A、もしくはPP2Bとなりうる;ホスファターゼ認識モチーフはAPFS*PGG(SEQ ID NO:115)となりえて、ホスファターゼは、PP1αもしくはPP2Aとなりうる;ホスファターゼ認識モチーフは、EEIY*GVI(SEQ ID NO:30)となりえて、ホスファターゼは、PTP1B、LAR、もしくはLCAとなりうる;または、ホスファターゼ認識モチーフはLTGY*VAR(SEQ ID NO:33)となりえて、ホスファターゼはPTP1B、LAR、もしくはLCAとなりうる。
【0029】
さらなる局面において、本発明は、ホスファターゼの特徴を調べる方法を提供する。方法には、タンパク質ホスファターゼが組成物を脱燐酸化するために有効な条件で、上記の組成物(例えば、燐酸化組成物)をタンパク質ホスファターゼに接触させる段階、およびタンパク質ホスファターゼの組成物の脱燐酸化能を測定する段階が含まれる。
【0030】
本発明はまた、上記の組成物をタンパク質ホスファターゼに接触させる段階;組成物とタンパク質ホスファターゼとをプロテアーゼに接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;およびプロテアーゼ混合物における測定可能な特性を、ホスファターゼを欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と比較して、プロテアーゼ混合物における測定可能な特性が対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と異なる場合、組成物がホスファターゼの基質であると同定される段階が含まれる、ホスファターゼの基質を同定する方法を提供する。
【0031】
特定の態様において、二つまたはそれ以上の異なる組成物を独立してホスファターゼに接触させて、二つまたはそれ以上ののホスファターゼ混合物を形成する;ホスファターゼ混合物のそれぞれをプロテアーゼに独立して接触させて、二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成する;プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較する。他の態様において、二つまたはそれ以上の異なるホスファターゼを独立して組成物に接触させる;ホスファターゼ混合物のそれぞれを独立してプロテアーゼに接触させて、二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成する;およびプロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較する。
【0032】
本発明はまた、タンパク質ホスファターゼ、タンパク質ホスファターゼの基質、および試験化合物の混合物を接触させるて、ホスファターゼ混合物を形成する段階;ホスファターゼ混合物をプロテアーゼに接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;およびプロテアーゼ混合物における測定可能な特性を、試験化合物を欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と比較して、プロテアーゼ混合物における測定可能な特性が対照混合物における測定可能な特性とは異なれば、試験化合物がホスファターゼ活性の調節物質であると同定される段階を含む、ホスファターゼの活性の調節物質を同定する方法を提供する。特定の態様において、二つまたはそれ以上の異なる試験化合物を、ホスファターゼおよび基質に独立して接触させて、二つまたはそれ以上のホスファターゼ混合物を形成してもよい;ホスファターゼ混合物のそれぞれを、プロテアーゼに独立して接触させて、二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成してもよい;およびプロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較してもよい。他の態様において、二つまたはそれ以上のホスファターゼを試験化合物および基質に独立して接触させて、二つまたはそれ以上のホスファターゼ混合物を形成する;ホスファターゼ混合物のそれぞれをプロテアーゼに独立して接触させて、二つまたはそれ以上のプロテアーゼ混合物を形成する;およびプロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性を、対応する対照混合物における測定可能な特性と比較する。
【0033】
さらなる局面において、本発明は製造品を提供する。製造品には、包装材料、および包装材料に関連した本明細書に記述の組成物が含まれうる。製造品はさらに、タンパク質キナーゼまたはタンパク質ホスファターゼ;プロテアーゼ;ATP;および/または緩衝液を含みうる。
【0034】
特に明記していなければ、本明細書において用いられた全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記述した方法および材料と類似または同等の方法および材料を、本発明の実践または試験において用いることができるが、適した方法および材料を以降に記述する。さらに、材料、方法、および実施例は、説明的であって、制限すると意図されない。本明細書において言及した全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾する場合は、定義を含めて、本明細書が優先するであろう。
【0035】
本発明の一つまたは複数の態様の詳細は、添付の図面および下記の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、および長所は、説明および図面、ならびに請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0036】
詳細な説明
本発明は、ペプチドおよび検出可能部分を含む組成物を、キナーゼまたはホスファターゼ活性を含む翻訳後改変活性のセンサーとして作用するようにデザインできるという知見に一部基づいている。ペプチドを含む組成物の翻訳後改変によって、非改変ペプチドと比較してプロテアーゼによる改変ペプチドの切断の速度および効率の調節が起こる。組成物においてペプチドに少なくとも一つの結合部分が結合すると、組成物におけるペプチドの切断が組成物の検出可能な特性の変化に連結して、これを用いて、試料における翻訳後活性をモニターするおよび翻訳後活性の調節物質に関してアッセイことができる。図1を参照されたい。
【0037】
本発明の組成物は、アッセイ法、特に新薬発見およびプロフィール決定のためのハイスループットの縮小スクリーニング系の方法において用いることができる。さらに、本明細書に記述の方法およびキットは典型的に、ウェル間の変動を消失させるために比測定分析を用いることによって、大きいダイナミックレンジ、高いZ'-因子値、および増加した感度を示す。最後に、本発明の方法は、ほぼ初速度条件で行うことができ、キナーゼおよびホスファターゼ阻害剤に関して正確なIC50値を生じることができる。
【0038】
定義
一般的に、本明細書において用いた命名法、ならびに本明細書に記述の蛍光、コンピューター、検出、化学、および臨床検査技法の多くは当技術分野において一般的に用いられている。
【0039】
省略語:t-BOC、tert-ブチルオキシカルボニル;Bzl、ベンジル;CaMK、カルモジュリン依存的キナーゼ;CKI、カゼインキナーゼ1;PDGF、血小板由来増殖因子;Fmoc、フルオレニルメチルオキシカルボニル;EGF、上皮細胞増殖因子;ELISA、酵素結合イムノソルベントアッセイ;FGF、線維芽細胞増殖因子;HF、フッ化水素;HOBT、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール;PyBop、ベンゾトリアゾール-I-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート;TFA、トリフルオロ酢酸;FITC、フルオレセインイソチオシアネート;RET、共鳴エネルギー転移;FRET、蛍光共鳴エネルギー転移;FAM、カルボキシフルオレセイン。
【0040】
開示を通して用いられるように、以下の用語は、特に明記していなければ、以下の意味を有すると理解されるであろう:
【0041】
「RET」は、共鳴エネルギー転移を意味し、発色団間の共鳴相互作用によって熱エネルギーに実質的に変換することなく、およびドナーとアクセプターとが運動的衝突を起こすことなく、エネルギー量子が、その吸収部位から分子または分子系におけるその利用部位まで、原子間距離よりかなり大きい距離にわたって無放射線伝幡されることを意味する。ドナーは、最初にエネルギー(例えば、光学エネルギー)を吸収する部分であり、アクセプターは、エネルギーが実質的に転移される部分である。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)および時間分解型蛍光共鳴エネルギー転移(TR-FRET)は、RETのタイプである。
【0042】
「アクセプター」という用語は、共鳴エネルギー転移を通して作用する化学または生物学的部分、例えばクエンチャーを指す。RET応用において、アクセプターは、ドナー蛍光部分から転移されたエネルギーを蛍光として再度放出してもよく(例えば、FRET)、この場合は「アクセプター蛍光部分」である。本明細書において用いられるように、そのようなドナー蛍光部分およびアクセプター蛍光部分は、「FRETペア」と呼ばれる。アクセプターの例には、クマリンおよび関連蛍光体;フルオレセインのようなキサンテン;蛍光タンパク質;ロドールおよびローダミン;レソルフィン;シアニン;ジフルオロボラジアザインダセン;ならびにフタロシアニンが含まれる。他のRET応用において、アクセプターは一般的に転移エネルギーを再放出せず、時に「ダーククエンチャー」と呼ばれる。蛍光ドナー部分およびダーククエンチングアクセプター部分は、本明細書において「ダーククエンチングRETペア」と呼ぶことがある。ダーククエンチャーの例には、インジゴ;ベンゾキノン;アントラキノン;アゾ化合物;ニトロ化合物;インドアニリン;ならびにジおよびトリフェニルメタンが含まれる。
【0043】
「クエンチャー」という用語は、検出可能部分からの光の放射(例えば、蛍光の放射)を減少させることができる分子または化合物の一部を指す。そのような減少には、光子が蛍光部分から通常放射される時間より後の光の放射を減少することが含まれる。クエンチングは、共鳴エネルギー転移(RET)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、光誘導電子転移、項間交差の常磁性増強、Dexter交換カップリング、ダーククエンチング、および励起カップリング(例えば、ダーク複合体の形成)を含む、いくつかの任意のメカニズムによって起こる可能性がある。好ましいクエンチャーには、RET、特にFRETによって作用するクエンチャーが含まれる。
【0044】
「ビード」という用語は、球体またはミクロスフェアのような実質的に球状の粒子を指す。ビードは、広い範囲内の大きさで用いてもよい。好ましいビードは、典型的に直径0.01〜100 μmの範囲である。ビードは、任意の材料で構成されてもよく、蛍光、発光、エレクトロルミネッセント、化学発光、磁性、または常磁性プローブを含んでもよい。そのようなビードは、Molecular Probes、Sigma、およびPolyscienceを含む多様な販売元から市販されている。
【0045】
「切断部位」、「プロテアーゼ切断部位」、および「プロテアーゼ部位」は、互換的に用いられ、プロテアーゼによって切断されうるアミド結合、および結合のいずれかの側の一つまたは複数のアミノ酸を指す。「P1」、「P2」、「P3」等という命名は、結合に対してN-末端の1位のアミノ酸、2位のアミノ酸、および3位のアミノ酸を指す。「P'1」、「P'2」、「P'3」等の命名は、下記に示すように、結合に対してC-末端の1位のアミノ酸、2位のアミノ酸、および3位のアミノ酸を指す。

【0046】
「検出可能部分」という用語は、マーカー、指標物質、または造影剤として有用な化学部分を指す。検出可能部分は、吸収分光学、発光分光学、蛍光分光学、磁気共鳴分光学(例えば、MRI)、または放射性同位元素検出によって検出することができる可能性がある。「蛍光部分」という用語は、電磁エネルギーを吸収することができ、そのエネルギーのいくつかの分画を少なくとも部分的に電磁放射として再放射することができる検出可能部分を指す。適した蛍光部分には、クマリンおよび関連色素、フルオレセインのようなキサンテン色素、ロドールおよびローダミン、レソルフィン、シアニン色素、ビマン、アクリジン、イソインドール、ダンシル色素、ルミノールおよびイソルミノール誘導体のようなアミノフタル酸ヒドラジン、アミノフタルイミド、アミノナフタリミド、アミノベンゾフラン、アミノキノリン、ジシアノヒドロキノン、半導体蛍光ナノクリスタル、蛍光タンパク質、ならびに蛍光ユーロピウムおよびテルビウム複合体および関連化合物が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの態様において、検出可能部分は、特異的結合ペアのメンバーとなりうる、または特異的結合ペアのメンバーに会合(例えば共有結合)することができる。特異的結合ペアは、互いに特異的相互作用することができる、例えば互いに対する親和性を有する分子対である。例えば、特異的結合ペアは、リガンド-タンパク質結合ペア、例えば酵素-基質、ビオチン-ストレプトアビジン、またはエピトープ-抗体結合ペアとなりうる。検出可能部分を含む結合ペアは、検出可能部分を含まない対応する結合ペアより大きい見かけの大きさを有し、結合ペア単独のいずれかのメンバーより大きい見かけの大きさを有する。結合ペアの複合体は、本明細書に記述の方法によって、または当業者に公知の他の方法によって、例えばイムノアッセイフォーマット、ゲルシフトアッセイ、またはクロマトグラフィーアッセイによって検出することができる。
【0047】
「モチーフ」という用語は、長さがアミノ酸少なくとも5個のアミノ酸配列を指す。いくつかの態様において、モチーフはホスファターゼまたはキナーゼの「認識モチーフ」、すなわちタンパク質ホスファターゼまたはタンパク質キナーゼの基質として有効であるアミノ酸配列となりうる。いくつかの態様において、認識モチーフは、少なくとも一つのアミノ酸置換によって天然に存在する配列から改変されてもよい。いくつかの態様において、認識モチーフに関するキナーゼまたはホスファターゼの親和性(見かけのKd)は、約1 mMもしくはそれ未満、約10 μMもしくはそれ未満、約1μMもしくはそれ未満、または約0.1μMもしくはそれ未満である。認識モチーフは、最適または好ましい認識モチーフである必要はないが、キナーゼによるその燐酸化が検出できる配列、またはホスファターゼによる脱燐酸化が検出できる配列を含む。いくつかの態様において、認識モチーフはプロテアーゼ切断部位と重なり合うまたは含む。他の態様において、プロテアーゼ切断部位は、認識モチーフと重なり合わない、または含まない。
【0048】
「調節する」という用語は、活性またはプロセスの部分的または完全な増強または阻害を指す(例えば、速度または効率の減弱によって)。
【0049】
「調節物質」という用語は、生体高分子(例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、ホルモン、多糖類、脂質)、有機分子のような化学化合物(天然に存在するまたは天然に存在しない)、または細菌、植物、真菌、もしくは動物(特に、ヒトを含む哺乳類)細胞もしくは組織のような生体材料からの抽出物を指す。調節物質は、本明細書に記述されるスクリーニングアッセイに含めることによって、生物学的プロセスまたは複数のプロセスの阻害剤または増強剤(直接または間接的)(例えば、アゴニスト、部分的アンタゴニスト、部分的アゴニスト、逆アゴニスト、アンタゴニスト、抗新生物剤、細胞障害剤、新生物トランスフォーメーションまたは細胞増殖の阻害、細胞増殖促進剤等)としての潜在的活性に関して評価してもよい。調節物質の活性は、公知、不明、または部分的に公知であってもよい。
【0050】
「天然に存在しない」という用語は、物体、化合物、または化学物質を自然界に認めることができないという事実を指す。例えば、生体(ウイルスを含む)に存在し、天然起源から単離することができ、実験室でヒトによって意図的に改変されていないペプチドまたはポリヌクレオチドは、天然に存在するが、ヒトによって意図的に改変されているそのようなペプチドまたはポリヌクレオチドは、天然に存在しない。
【0051】
「光学特性」という用語は、組成物、化合物、または部分の特性を指し、以下のいずれか一つとなりうる:適当な励起波長でのモル吸光係数、蛍光もしくは発光量子効率、励起スペクトルもしくは放射スペクトルの形状、最大励起波長もしくは最大放射波長、二つの異なる波長での励起幅の比、二つの異なる波長での放射幅の比、励起状態の寿命、蛍光異方性、または自然発生的な、もしくは電磁、電気、もしくは化学的な刺激もしくは反応に反応した組成物、化合物、もしくは部分に由来する他の任意の測定可能な光学特性。一つのタイプの光学特性は、蛍光特性であり、これは蛍光に基づく技術を用いて検出することができる光学特性を指す。蛍光特性は、以下の任意の一つとなりうる:適当な励起波長でのモル吸光係数、蛍光量子効率、励起または放射スペクトルの形状、最大励起波長、蛍光部分の励起時または励起後一つもしくはそれ以上の時間での任意の波長における放射幅、異なる二つの波長での励起幅の比、異なる二つの波長での放射幅の比、励起状態の寿命、蛍光異方性、または蛍光部分の他の任意の測定可能な特性。いくつかの態様において、蛍光特性は、二つまたはそれ以上の波長での蛍光放射または蛍光放射比を指す。
【0052】
「ペプチド」という用語は、アミド結合によって結合した二つまたはそれ以上のアミノ酸のポリマーを指す。アミノ酸は、β-アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンを含む天然または非天然アミノ酸であってもよい。論評に関しては、Spatola, A.F., 「Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins」、B. Weinstein編、Marcel Dekker, New York, p 267(1983)を参照されたい。本発明において用いたアミノ酸は全て、D-またはL-異性体であってもよい。燐酸化(例えば、ホスホセリン(側鎖のヒドロキシルで燐酸化)、ホスホチロシン(側鎖のフェニル環のヒドロキシルで燐酸化))、およびホスホトレオニン(側鎖のヒドロキシル基)、硫酸化、メチル化、またはプレニル化アミノ酸を含む化学改変または置換アミノ酸も同様に、特定の応用に関してペプチドを作製するために用いることができる。
【0053】
「翻訳後改変」および「翻訳後型改変」という用語は互換的に用いられ、ペプチドにおける一つまたは複数のアミノ酸残基の酵素的または非酵素的改変を指す。典型的な改変には、燐酸化、脱燐酸化、グリコシル化、メチル化、硫酸化、ユビキチン化、プレニル化、およびADP-リボシル化が含まれる。好ましい翻訳後型改変には、燐酸化および脱燐酸化が含まれる。翻訳後改変という用語には、タンパク質-タンパク質相互作用、またはアロステリック調節剤、他の調節剤、もしくはカルシウム、cAMP、もしくはイノシトールホスフェートのような二次伝達物質の、モチーフ、認識モチーフ、もしくはペプチドに対する結合のような、タンパク質の活性、構造、もしくは機能に影響を及ぼす非共有結合型改変が含まれる。
【0054】
「試験化合物」という用語は、例えば、キナーゼまたはホスファターゼの推定の調節物質であるか否かを決定するために、本発明の一つまたは複数のスクリーニング法によって試験される化合物を指す。試験化合物は、無機化学物質、有機化学物質、タンパク質、ペプチド、糖質、脂質、またはその組み合わせのような任意の化学物質となりうる。典型的に、0.01マイクロモル濃度、1マイクロモル濃度、および10マイクロモル濃度のような、様々な既定濃度(例えば、様々な希釈液)の試験化合物をスクリーニングに用いる。試験化合物対照には、試験化合物の非存在下でのシグナルの測定、または標的活性を調節することが知られている化合物との比較が含まれうる。
【0055】
組成物
本発明の組成物にはペプチドが含まれる。本発明のペプチドはアミノ酸5個〜50個の長さを有することができ、一つまたは複数のモチーフが含まれうる。典型的に、モチーフは長さがアミノ酸5個またはそれより長い。モチーフは認識モチーフ、例えばチロシンキナーゼ、セリン/トレオニンキナーゼ、またはホスファターゼの認識モチーフとなりうる。本発明の化合物には、第一の検出可能部分が含まれ、いくつかの態様において、第二の検出可能部分が含まれうる。本発明の組成物にはプロテアーゼ切断部位が含まれうる。
【0056】
キナーゼおよびホスファターゼ
一般的に、タンパク質キナーゼは、アミノ酸、主にアミノ酸のチロシン、セリン、またはトレオニン上の遊離のヒドロキシル基に燐酸基を付加すること(燐酸化として知られるプロセス)によって、ペプチド上で作用する。これらの反応を酵素的に触媒するタンパク質キナーゼは、構造的および機能的特性に基づいて異なる多数のファミリーに分類される可能性がある。ファミリー内のキナーゼは、類似の全体的トポロジー、類似の調節様式、および/または類似の基質特異性(例えば、米国特許第6,410,255号の表1を参照されたい)を有する可能性がある。例えば、キナーゼのAGC(タンパク質キナーゼA、G、またはC)ファミリーメンバーは、塩基性アミノ酸(例えば、RまたはK)を有する燐酸化認識モチーフを好む可能性があるが、CMGC群のメンバーはプロリン含有モチーフを好む可能性がある。
【0057】
もう一つのキナーゼファミリーは、アミノ酸のセリンまたはトレオニンを燐酸化するセリン/トレオニンキナーゼ、およびアミノ酸のチロシンを燐酸化するチロシンキナーゼである。
【0058】
本発明において用いるために適したセリン/トレオニン(S/T)キナーゼには、以下が含まれるがこれらに限定されない。

【0059】
本発明において用いるために適したチロシンキナーゼには以下が含まれるがこれらに限定されない:Abl1、Abl2、BMX、Brk、CSF1R、Csk、Erb-B2、EGFR、EphB4、Fes/Fps、FGFR1、FGFR3、FGFR4、Fgr、FLT3、Fyn、FynT、HCK、Hyl、IGF1R、IRKβ、ITK、Jak3、KDR、c-KIT、Lck、Lyn A、Lyn B、c-MET、Src、Src N1、Src N2、SYK、Tec、TIE2、TRKA、VEGFR-1/Flt、YES、およびIRTK。受容体チロシンキナーゼとして特徴が示され、同様に適しているチロシンキナーゼには、EGFR、EphB4、Erb-B2、FGFR1、FGFR3、FGFR4、FLT3/FLT2、FMS/CSFR1、IGF1R、KDR、c-KIT、c-MET、TIE2、TRKA、およびVEGFR-1/Fltが含まれる。可溶性チロシンタンパク質キナーゼとして特徴が調べられるチロシンタンパク質キナーゼも同様に適しており、これらには、Abl1、Abl2、Brk、BMX、Csk、Fes/Fps、Fgr、Fyn、FynT、Hck、Hyl、ITK、Jak3、Lck、LynA、LynB、Src、Src、N1、SYK、Tec、およびYESが含まれる。CLK1は二重タンパク質キナーゼであり、同様に本発明において用いてもよい。
【0060】
真核細胞タンパク質ホスファターゼは、構造的および機能的に多様な酵素であり、異なる三つの遺伝子ファミリーに分類されている。これらのファミリーの二つは、アミノ酸のホスホセリンおよびホスホトレオニンを脱燐酸化するが、タンパク質チロシンホスファターゼファミリー(PTPs)は、アミノ酸のホスホチロシンを脱燐酸化する。PTPのサブファミリーである二重特異的ホスファターゼは、三つ全てのホスホアミノ酸を脱燐酸化する。それぞれのファミリーにおいて、触媒ドメインは高度に保存されていることが報告されており、調節ドメインおよびサブユニットによって機能的多様性が与えられている。
【0061】
タンパク質セリンまたはトレオニンホスファターゼ1型および2A型は、細胞抽出物におけるホスファターゼ活性の95%に関与することが報告されている(Brautigan and Shriner, Methods. Enzymol. 159:339〜346(1988))。これらの酵素は広い基質特異性を有し、異なる細胞下局在への酵素のターゲティングを通してインビボで調節される可能性がある。哺乳類ゲノムにおいてコードされるタンパク質チロシンホスファターゼの総数は、500〜約2000であると推定されている。
【0062】
本発明において用いるためのホスファターゼには、以下が含まれるがこれらに限定されない:PTEN、PTP-meg 1、T-細胞PTP N2、PTP1B、LAR、LCA、PP1α、PP2A、PP2B、およびPP2C。
【0063】
タンパク質の燐酸化および脱燐酸化を測定するためのモチーフおよびペプチド
キナーゼまたはホスファターゼ活性を検出または測定するために適したモチーフには、一般的に、改変された場合に、非改変組成物と比較してプロテアーゼによる組成物の切断速度を調節するアミノ酸残基が含まれる。典型的に、本発明のペプチドには、単一のプロテアーゼ切断部位(いくつかの応用ではより多くのプロテアーゼ切断部位が有用である可能性がある)を有するモチーフが含まれ、水溶液中で可溶性(例えば、0.1 mg/mlまたはそれ以上)である。当業者は、特定の組成物に関するペプチドのデザインおよび大きさおよび特定のプロテアーゼの選択が、組成物が用いられる適応に依存することを認識するであろう。例えば、共鳴エネルギー転移型の応用の場合、ペプチドは典型的に、長さがアミノ酸5〜50個、または長さがアミノ酸8〜50個、または長さがアミノ酸8〜25個、または長さがアミノ酸8〜15個の範囲である。極性に基づく応用では、これらおよびより大きいペプチド(例えば、長さがアミノ酸50〜100個、およびタンパク質ドメイン全体までおよびそれを含む)が望ましい可能性がある。
【0064】
本発明にとって適したペプチドには、溶解度を増強するために、特にその末端で塩基性アミノ酸が含まれてもよい。さらに、いくつかの態様において、ペプチドには、検出可能部分(例えば、フルオレセイン誘導体)との結合座を提供するためにC-末端Kが含まれうる。プロテアーゼ切断部位は、モチーフまたは認識モチーフ内を含むペプチドにおける任意の位置に存在しうる。モチーフ、認識モチーフ、またはプロテアーゼ切断部位は、第一または第二の検出可能部分に関してペプチド内の任意の位置に存在してもよい。
【0065】
チロシン燐酸化または脱燐酸化
チロシンキナーゼ活性を検出およびモニターするための組成物は、モチーフ(例えば、チロシンキナーゼの認識モチーフ)をペプチドに組み入れ、典型的に組成物において唯一の芳香族アミノ酸として単一のチロシン(Y)を有する。特定の場合では、P'1、P'2、またはP'3位の陰性荷電アミノ酸の数を消失または減少させることも同様に好ましいかも知れない。チロシン指向性のタンパク質キナーゼ活性によるチロシンアミノ酸の燐酸化は、非燐酸化組成物と比較して、プロテアーゼ(例えば、キモトリプシン)による組成物の加水分解速度を調節する。チロシンキナーゼの認識モチーフおよびペプチド基質の説明となる例は、プロテアーゼキモトリプシンの使用に関する米国特許第6,410,255号の表2において示される。チロシンキナーゼに関する他の例としてのモチーフ、認識モチーフ、およびペプチドを、下記の表1に示す。
【0066】
(表1)

【0067】
タンパク質チロシンホスファターゼ活性を検出する組成物は、モチーフ(例えば、チロシンキナーゼの認識モチーフ)をペプチドに組み入れ、この場合、モチーフにおける一つまたは複数のチロシンアミノ酸が燐酸化される。そのような組成物におけるチロシン指向性タンパク質ホスファターゼ活性によるチロシンアミノ酸の脱燐酸化は、燐酸化組成物と比較してプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン)による加水分解速度を調節する。例となるホスファターゼモチーフ、認識モチーフ、およびペプチドを下記の表2に示し、式中Y*は燐酸化チロシンを示す。
【0068】
(表2)

【0069】
セリン/トレオニン(S/T)燐酸化または脱燐酸化
セリンまたはトレオニンキナーゼ活性を測定するための組成物は、典型的に単一の芳香族アミノ酸(Tyr、Trp、またはPhe)を含むモチーフ(例えば、S/Tキナーゼの認識モチーフ)を、一般的にセリンまたはトレオニンアミノ酸の約3個のアミノ酸内に組み入れる。セリンまたはトレオニンアミノ酸は、適当なセリンまたはトレオニン特異的キナーゼによって燐酸化される。特定の場合では(選択されるプロテアーゼに応じて)、セリンまたはトレオニンの燐酸化によって燐酸化の際に組成物のタンパク質分解に対する感受性が確実に大きく調節されるように、P'1、P'2、またはP'3位における陰性荷電アミノ酸(例えば、AspまたはGluアミノ酸)の数を消失または減少させることも、同様に好ましい可能性がある。例となる認識モチーフおよびペプチドの例は、キモトリプシンの使用に関する米国特許第6,410,255号の表3において提供される。S/Tキナーゼに関する例としてのモチーフ、認識モチーフ、およびペプチドも同様に下記の表3に示す。
【0070】
(表3)


【0071】
タンパク質セリンまたはトレオニンホスファターゼ活性を検出する組成物は、ペプチドにモチーフ(例えば、S/Tキナーゼに関する認識モチーフ)を組み入れ、モチーフにおける一つまたは複数のセリンまたはトレオニンアミノ酸が燐酸化される。組成物におけるセリンまたはトレオニンアミノ酸のセリンまたはトレオニン指向性タンパク質ホスファターゼ活性による脱燐酸化は、燐酸化組成物と比較してプロテアーゼ(例えば、キモトリプシン)による加水分解速度を調節する。例となるホスファターゼモチーフ、認識モチーフ、およびペプチドを下記の表4に示し、式中(S/T)*は、燐酸化セリンまたはトレオニンを示し、S*は燐酸化セリンを示し、およびT*は燐酸化トレオニンを示す。
【0072】
(表4)


【0073】
プロテアーゼ
本発明において用いるための多くのプロテアーゼが、高純度で一般的に入手可能である。典型的に、組成物に関するプロテアーゼのタンパク質分解活性は、モチーフにおける翻訳後改変された(例えば、燐酸化)アミノ酸の有無によって調節される。好ましい組成物は、非改変の場合と比較して、改変された場合にタンパク質分解反応性の有意な調節、例えば少なくとも1.5、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、35、40、50、または100倍の調節を示す。例としてのプロテアーゼに関して下記の表5を参照されたい。
【0074】
(表5)

【0075】
ペプチドの燐酸化または脱燐酸化を測定するために用いてもよいプロテアーゼには、燐酸化アミノ酸の有無がその組成物に対するプロテアーゼの活性を調節する少なくとも一つのモチーフの位置を含む組成物を認識するプロテアーゼが含まれる。燐酸化アミノ酸(例えば、チロシン、セリン、またはトレオニン)を含むまたは欠損するモチーフの選択における柔軟性と共に、プロテアーゼ選択における柔軟性によって、多くのタンパク質キナーゼまたはホスファターゼ活性を本発明を用いて測定することができる。
【0076】
本発明の方法の細胞に基づく応用において、細胞内におけるプロテアーゼの発現は調節される(例えば、プロテアーゼをコードする誘導型核酸構築物を用いて)。適した核酸構築物は、当業者によって日常的に設計および用いることができる。そのような細胞に基づくアッセイにおいて、燐酸化残基の有無がその組成物に対するプロテアーゼ活性を調節する少なくとも一つのモチーフ位置を含む組成物の適当な測定可能な(例えば、光学)特性を、プロテアーゼの発現の増加の開始後1回またはそれ以上の間隔でモニターすることができる。
【0077】
検出可能部分
検出可能部分の選択は、検出様式、特定の機器の利用性、および検出可能部分をペプチドに結合させる容易さを含む、多数の要因によって支配される。特定の用途に関連する可能性がある他の要因には、組成物の溶解度に及ぼす検出可能部分の影響、組成物に関する翻訳後活性またはプロテアーゼ活性の速度論、およびアッセイの所望の検出感度が含まれる。
【0078】
多数の検出可能部分が市販されており、または容易に作成することができる。一般的に、検出可能部分は光学特性、磁気特性、または放射活性特性を示すことができる。このように、ペプチドに一度会合すると、得られた組成物は、検出可能部分によって、検出可能部分単独の場合と類似または同じ光学特性、磁気特性、または放射活性特性を示すことができる。いくつかの態様において、検出可能部分とペプチドとの会合は、検出可能部分の検出特性をより大きいまたはより小さい程度に改変する可能性がある。例えば、ペプチドに対する蛍光体の結合によって、溶液中で蛍光体単独の場合とは異なる最大放射を有する組成物が得られる可能性がある。他の態様において、検出可能部分は、特異的結合ペアのメンバーとなりうる。例えば、検出可能部分は、リガンド-タンパク質結合ペアのリガンドメンバー、例えばビオチン-ストレプトアビジン結合ペアのビオチンメンバーとなりうる。
【0079】
蛍光検出可能部分に関して、好ましい蛍光体は典型的に、良好な量子収率、長い励起状態寿命、および長い吸光係数を示し、衝突によるクエンチングおよび褪色に対して抵抗性であり;およびペプチドに容易に結合されなければならない。赤色およびほぼ赤外線レンジで吸収および発光を示す蛍光体は、バックグラウンドの散乱蛍光の減少およびより大きい組織への透過のために、動物全体の試験において有用である。例となる蛍光体の例には、シアニン、オキサジン、チアジン、ポルフィリン、フタロシアニン、バイオラントロンのような蛍光赤外線放射多核芳香族炭化水素、蛍光タンパク質、近赤外スクアレイン色素(例えば、Dyes and Pigments 17:19〜27(1991)、1997年5月20日に交付されたLakowicz et al.に対する米国特許第5,631,169号において示されるように、ならびにその開示が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,745,076号および第4,670,572号のルテニウムおよびランタニド複合体のような有機-金属錯体)が含まれる。
【0080】
本発明において用いるために適した蛍光体およびダーククエンチャーは、例えばMolecular Probes(Eugene, OR)、Attotec(Germany)、Amersham、およびBiosearch Technologies(Novato, CA)から市販されている。特異的蛍光体には、フルオレセインイソチオシアネート(特にフルオレセイン-5-イソチオシアネート)、5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン)、6-FAM(6-カルボキシフルオレセイン)、5,6-FAM、7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミド、6-クロロ-7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミド、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン、テトラメチルローダミン-5(および-6)-イソチオシアネート、1,3-ビス-(2-ジアルキルアミノ-5-チエニル)-置換スクアリン、5(および6)カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、5(および6)-カルボキシテトラメチルローダミン、ならびに7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸が含まれるがこれらに限定されない。広範囲の放射スペクトルを有する半導体蛍光ナノクリスタルが、入手可能であり、これは非常に蛍光が強く、同様に有用である(Bruchez et al.、Science 281:2013〜2016を参照されたい)。
【0081】
ランタニド錯体(例えば、EuまたはTbの金属キレート)も同様に有用であり、酸素によって消光しないという長所を有する。その長い寿命(他の蛍光体がnsであるのに対しmsの次数)のために、バックグラウンドシグナルが崩壊した後に蛍光シグナルを測定してもよいことから、生体試料の自己蛍光の容易な抑制が可能となる。したがって、EuまたはTb金属キレートのようなランタニド錯体は、例えば時間分解型FRET(TR-FRET)応用において特に有用となる可能性がある。例えば、米国特許第5,639,615号、第5,622,821号、および第5,656,433号を参照されたい。
【0082】
説明となる発光部分には、化学発光、エレクトロルミネッセント、および生物発光化合物が含まれる。好ましい生物発光化合物には、ファイアフライ、細菌、またはコメツキムシのルシフェラーゼ、アエコリン、および他の光タンパク質のような生物発光タンパク質が含まれる(例えば、1989年6月22日に交付されたThompson et al.に対する米国特許第5,221,623号;1997年11月4日に交付されたCampbellに対する米国特許第5,683,888号;1997年9月7日に交付されたDeLuca et al.に対する米国特許第5,674,713号;1997年7月22日に交付されたWoodに対する米国特許第5,650,289号;および1998年12月1日に交付されたTatsumi et al.に対する米国特許第5,843,746号に記述されるような)。好ましいエレクトロルミネッセント部分には、例えば、1997年1月28日に交付されたGudibandeに対する米国特許第5,597,910号に記述されるようなルテニウム錯体が含まれる。好ましい化学発光部分には、1983年2月8日に交付されたMandle et al.に対する米国特許第4,372,745号;1997年8月12日に交付されたWoodhead et al.に対する米国特許第5,656,207号;1998年9月1日に交付されたBronstein et al.に対する米国特許第5,800,999号に記述されるような1,2-ジオキセタンに基づく部分が含まれる。
【0083】
磁性検出可能部分には、MR造影剤、例えば常磁性、強磁性、もしくは反磁性金属イオンのキレート、または磁気粒子(例えば、USPIOs、MIONs;米国特許第5,262,176号を参照されたい)が含まれる。いくつかの態様において、キレートは、1997年5月13日に交付されたLauffer et al.に対する米国特許第5,628,982号;1993年9月7日に交付されたElgavish et al.に対する米国特許第5,242,681号に記述されるような親油性基を含んでもよい。MR造影において有用な金属キレートの論評に関しては、Lauffer、「Paramagnetic Metal Complexes as Water Proton Relaxation Agents for NMR Imaging:Theory and Design.」、Chem. Rev. 87(5):901〜927(1987);およびCaravan et al.、「Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure, Dynamics, and Applications」、Chem. Rev. 99(9):2293〜2352(1999)を参照されたい。
【0084】
いくつかの応用において、それをより疎水性にして細胞膜に対して透過性にするために検出可能部分を誘導体化することが望ましいかも知れない。誘導体基は、細胞内で加水分解を受けて、組成物を再生して、このようにそれらを細胞内に捕獲する可能性がある。この目的に関して、構造におけるフェノールヒドロキシルまたは遊離のアミンは、Bundgaard, H.、「Design of Prodrugs」、Elsevier Science Publishers(1985)、第1章、3頁、以下参照に記述されるように、C1-C4アシル基(例えば、ホルミル、アセチル、n-ブチル)によってアシル化される、または例えばエステルおよび炭酸塩に変換される。蛍光部分のさらなる改変はまた、例えば4/21/98に交付されたTsien et al.に対する米国特許第5,741,657号に記述されるように行ってもよい。
【0085】
検出可能部分は、検出可能部分とペプチドとのあいだにスペーサーを提供するリンカー(L)によってペプチドに結合させて、それによってペプチドの認識モチーフとキナーゼまたはホスファターゼとの相互作用における検出可能部分の立体的または電荷による妨害を防止してもよい。好ましいリンカーは、細胞条件で実質的に安定であり、ペプチドおよび検出可能部分に容易に結合する。例には、γ-アミノ-n-酪酸(GABA)、ジアミノペンタン、およびアミノヘキサノイルのような柔軟な脂肪族リンカーと共に、堅固な芳香族リンカーが含まれる。そのようなリンカーは当技術分野で公知であり、例えばMolecular Probesによって出版されている「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals」、Richard Haugland著において記述されている。
【0086】
非共有結合法も同様に、ペプチドを検出可能部分に結合させるために用いてもよい。例えば、ペプチドは、係争中の米国特許第6,054,271号;第6,008,378号、および第5,932,474号に記述されるように、蛍光部分に関する特異的結合部位を含むように設計してもよい。次に標識は、ペプチドと膜透過性蛍光結合パートナーとのインキュベーションによって行ってもよく、これは無傷の生存細胞内でペプチドの発現を可能にする、および無傷の生存細胞内で本発明の組成物を作製するためにインサイチューでこれらのペプチドのその後の標識を可能にするという長所を有する。
【0087】
蛍光タンパク質
いくつかの細胞に基づく応用に関して、蛍光検出可能部分には、内因性の蛍光タンパク質、機能的に操作された蛍光タンパク質、およびその変種が含まれる。そのようなタンパク質を用いることによって、他の共因子または蛍光体を添加することなく、蛍光体とペプチドを生存細胞内で発現させることができる。そのような組成物は、例えば組成物およびプロテアーゼの発現を急激に増加させるために誘導制御型ヌクレオチド配列を用いることによって、既定の細胞集団、組織、またはトランスジェニック生物内で翻訳後活性のモニター能を提供する。
【0088】
内因性の蛍光タンパク質が単離されており、ウミシイタケであるレニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis)、R.コリケリ(R. kollikeri)、およびR.ムレレイ(R. mullerei)を含む多くの海洋種から、ならびにウミエラであるプチロサルクス(Ptilosarcus)、スチラツラ(Stylatula)、およびアカントプチルム(Acanthoptilum)と共に太平洋北西部クラゲ、アエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)からクローニングされている(Szent-Gyorgyi et al.(SPIE conference 1999)、D.C. Prasher et al.、Gene 111:229〜233(1992))。これらのタンパク質は、タンパク質内部の内部アミノ酸の環状化および酸化を通して、強い蛍光の内因性の発色団を形成することができ、これはトリプトファンおよびチロシンのような弱い蛍光アミノ酸からスペクトル上で分離することができる。
【0089】
蛍光タンパク質はまた、他の生物においても認められている。例えば、ビブリオ・フィッシェリ(Vibrio fischeri)株Y-1の黄色蛍光タンパク質のクローニングおよび発現が、T.O. Baldwin et al.、Biochemistry(1990)29:5509〜15に記述されている。このタンパク質は、蛍光共因子としてフラビンを必要とする。渦鞭毛藻類であるシンビオジニウム種(Symbiodinium sp.)のペリジニン-クロロフィルのクローニングが、B.J. Moms et al.、Plant Molecular Biology(1994)24:673:77において記述された。このタンパク質の一つの有用な局面は、これが赤色で蛍光を発する点である。シネココックス(Synechococcus)のような海洋性シアノバクテリアからのフィコビリタンパク質、例えばフィコエリスリンおよびフィコシアニンのクローニングは、S.M.Wilbanks et al.、J. Biol. Chem.(1993)268:1226〜35に記述されている。これらのタンパク質は、蛍光共因子としてフィコビリンを必要とし、そのタンパク質への挿入は補助酵素を伴う。タンパク質は赤色波長で黄色の蛍光を発する。同様にPCT US 01/04625号を参照されたい。
【0090】
天然のGFPと比較して、明確なスペクトル特性、改善された明度および哺乳類細胞における増強された発現およびフォールディングを有する、アエクオレア・ビクトリアのGFPの多様な変異体が作製されている(例えば、米国特許第6,410,255号の表7および同様にSullivan and Kay編「Green Fluorescent Proteins」、第2章、19〜47頁、Academic Press;1997年4月29日に交付されたTsien et al.に対する米国特許第5,625,048号;1998年7月7日に交付されたTsien et al.に対する米国特許第5,777,079号;1998年9月8日に交付されたCormack et al.に対する米国特許第5,804,387号を参照されたい)。多くの場合において、これらの機能的に操作された蛍光タンパク質は、野生型のアエクオレアのGFPに対して優れたスペクトル特性を有し、本発明の組成物において用いるために好ましい。
【0091】
細胞に基づくアッセイ
本発明の方法はまた、細胞に基づくアッセイにおいても用いることができる。一つの態様において、生きている細胞内での組成物の組換えによる産生は、蛍光タンパク質(例えば、検出可能部分)と対象ペプチドとを融合タンパク質としてコードする配列を有する核酸の発現を含む。一つの態様において、組成物は第一の蛍光タンパク質(例えば、第一の検出可能部分として)、YまたはS/Tキナーゼに対する認識モチーフのようなモチーフを含むペプチド、プロテアーゼ部位、および第二の蛍光タンパク質(第二の検出可能部分として)を単一のポリペプチド鎖として互いに融合させて含む。蛍光タンパク質をコードする核酸は、当技術分野で公知の方法によって得ることができる。例えば、タンパク質をコードする核酸は、蛍光タンパク質のDNA配列に基づくプライマーを用いて、適した生物からのcDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができる。PCR法は、例えば、米国特許第4,683,195号;Mullis et al.(1987)Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 51:263;およびErlich編、「PCR Technology」(Stockton Press, NY, 1989)に記述されている。その後、適したクローンを同定して、単離し、典型的に1秒間に数千個の細胞を分析することができる蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)によって特徴を調べてもよい。トランスフェクトした細胞における発現ベクターの構築および遺伝子の発現は、当技術分野で同様に周知である分子クローニング技術を用いることを含む;例えば、Sambrook et al.、「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1989)、および「Current Protocols in Molecular Biology」、F.M. Ausubel et al.編を参照されたい。対象ポリペプチドの発現をコードする配列を細胞にトランスフェクトするために用いられる核酸は、一般的に、ペプチドおよび蛍光タンパク質を含む組成物の発現をコードするヌクレオチド配列に機能的に結合した発現制御配列を含む発現ベクターの形となるであろう。
【0092】
もう一つの態様において、組成物には、レポータータンパク質(例えば、第一の検出可能部分として)、YまたはS/Tキナーゼに対する認識モチーフのような、本明細書において記述したモチーフを含むペプチド、プロテアーゼ部位、および多量体化ユビキチン融合タンパク質が、単一のポリペプチド鎖として共に含まれうる。これらの態様において、モチーフ含有ペプチドはレポータータンパク質と多量体化ユビキチン融合タンパク質とのリンカーとして機能する。そのようなポリペプチドは、細胞においてキナーゼ(またはホスファターゼ)のアッセイを行うために用いることができる。例えば、適したキナーゼが、細胞に存在して活性である場合、ペプチドは燐酸化されて、プロテアーゼによる分解を受けず、それによってユビキチン融合タンパク質がレポータータンパク質を脱安定化(例えば、分解を促進する)することができる。キナーゼ活性が存在しないまたは阻害される場合、モチーフ含有ペプチドはプロテアーゼによる分解を受けて、それによって多量体化ユビキチン融合タンパク質によるレポータータンパク質の脱安定化およびレポータータンパク質活性の保存が妨害される。適したレポータータンパク質、多量体ユビキチン融合タンパク質、およびそのような態様において用いられる構築物は、国際公開公報第01/57242号に記述されている。
【0093】
測定および検出法
測定および検出法には、蛍光分光法、発光分光法、吸収分光法、および磁気共鳴分光法(例えば、NMR、MRI)が含まれるがこれらに限定されない。蛍光法には、連続的または時間分解型蛍光分光法、蛍光相関分光法、蛍光偏光分光法、および共鳴エネルギーに基づく蛍光分光法が含まれる。蛍光材料に関してそのようなアッセイを行う方法は当技術分野で周知であり、例えば、Lakowicz, J.R.、「Topics in Fluorescence Spectroscopy」、第1〜3巻、New York:Plenum Press(1991);Herman, B., 「Resonance energy transfer microscopy, in Fluorescence Microscopy of Living Cells in Culture.」、Part B, Methods in Cell Biology vol.30, Taylor, D.L. & Wang, Y.-L.編、San Diego:Academic Press(1989), pp.219〜243;Turro, N.J., Modern Molecular Photochemistry, Menlo Park;Benjamin/Cummings Publishing Col, Inc.(1978), pp. 296〜361;およびBernard Valeur, 「Molecular Fluorescence:Principles and Applications」、Wiley VCH, 2002に記述されている。
【0094】
特定の応用に関して特異的検出可能部分(例えば特異的蛍光体またはクエンチャー)を選択して使用することは、当技術分野で一般的に公知である;例えば、共鳴エネルギー転移パートナーの選択に関するスペクトルオーバーラップ積分表を含むBerlman, I.B.、「Energy transfer parameters of aromatic compounds」、Academic Press, New York and London(1973)を参照されたい。さらなる情報源には、Molecular Probes Catalog(2003)およびウェブサイト;ならびにTsien et al.、1990「Handbook of Biological Confocal Micorscopy」、pp. 169〜178が含まれる。
【0095】
方法およびアッセイ
本発明の組成物は、多様な方法において用いることができる。通常、化学合成、蛍光のモニタリングおよび検出、光学、分子生物学、ならびにコンピューターソフトウェアおよび統合に関して標準的な技術が用いられる。化学反応、細胞アッセイ、および酵素反応は典型的に、適当であれば製造元の明細書に従って行われる。一般的に、その全てが参照により本明細書に組み入れられる、蛍光技術に関して、Lakowicz, J.R, 「Topics in Fluorescence Spectroscopy」、(第3巻)New York:Plenum Press(1991)、およびLakowicz, J.R, 「Emerging applications of florescence spectroscopy to cellular imaging:lifetime imaging, metal-ligand probes, multi-photon excitation and light quenching」、Scanning Microsc. Suppl. Vol. 10(1996), pages 213〜24;分子生物学の方法に関して、Sambrook et al.、「Molecular Cloning:A Laboratry Manual」第二版(1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;細胞生物学の方法に関して、「Cells:A Laboratory Manual」、第一版(1998)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;ならびに一般的に光学法に関して「Optics Guide 5 Melles Griot(登録商標)」、Irvine, CA、および「Optical Waveguide Theory」、Snyder & Love(Chapman & Hallによる出版)を参照されたい。
【0096】
本発明の組成物は、燐酸化組成物を調製するために用いることができる。本発明の方法はまた、キナーゼまたはホスファターゼの特徴を調べるために、例えば速度論または熱力学的パラメータを測定するために用いることができる。一つの方法において、組成物は、キナーゼまたはホスファターゼとの反応において用いられる。キナーゼまたはホスファターゼが組成物をそれぞれ燐酸化または脱燐酸化するために有効な条件で、組成物をキナーゼまたはホスファターゼに接触させて、キナーゼが組成物を燐酸化(またはホスファターゼが脱燐酸化)する能力を測定する。組成物の燐酸化能は、多くの方法で、例えば所定の期間、キナーゼの特定の濃度、または特定の温度での組成物の%燐酸化に関して;または速度論パラメータ(例えば、Vmax、Km)に関して測定してもよい。実施例1および2ならびに図3〜5および8〜9を参照されたい。組成物を用いる方法は、例えば米国特許第6,410,255号、第5,917,012号、およびRodems et al.、「A FRET-based Assay Platform for Ultra-High Density Drug Screening of Protein Kinases and Phosphatases」、ASSAY and Drug Development Technologies, Vol. 1(1-1), Nov. 2002に記述されている。
【0097】
本発明の方法は、組成物がキナーゼまたはホスファターゼの基質であるか否かを決定するために用いることができる。一つの方法において、組成物を、酵素、例えばタンパク質キナーゼまたはタンパク質ホスファターゼに接触させる;次に、組成物および酵素をプロテアーゼに接触させる;ならびにプロテアーゼ混合物における測定可能な特性をモニターする。測定可能な特性は、組成物の検出可能な特性、組成物の切断産物の検出可能な特性(例えば、ドナー蛍光部分の検出可能な特性、またはアクセプター蛍光部分の検出可能な特性)、酵素、緩衝液、もしくは試薬の検出可能な特性、またはその任意の組み合わせとなりうる。例えば、測定可能な特性は、組成物が部分的に切断された(例えば、70%切断)後の、ある波長での真の蛍光放射(または、二つの波長での真の蛍光放射の比)であってもよい。この状況において、測定可能な特性は、無傷の組成物と切断産物の混合物の、検討される特定の波長での混合物の蛍光放射への関与を反映する。
【0098】
キナーゼ反応に関して、組成物をキナーゼに接触させる場合(例えば、キナーゼ酵素とのインキュベーションのあいだ)に、ATPが一般的に含まれる。当業者は、ホスファターゼ酵素を用いるそれらの方法において、上記の対象燐酸化組成物をホスファターゼ酵素に接触させることを認識するであろう。接触段階のインキュベーション条件は、例えば酵素濃度、基質濃度、温度、インキュベーション時間を変化させることができる。インキュベーション温度条件は、典型的に約15〜約40℃となりうる;いくつかの態様において、温度はほぼ室温、例えば約20〜25℃であってもよい。
【0099】
プロテアーゼ混合物における測定可能な特性を、対照混合物における測定可能な特性と比較してもよい。対照混合物には、組成物およびプロテアーゼが含まれ、典型的に、酵素を添加せずに、および/またはATPを添加せずに(例えば、キナーゼ反応の場合)調製される。他の対照試料は、プロテアーゼによる燐酸化組成物の如何なる切断も補正するために、プロテアーゼと共にインキュベートした組成物の燐酸化型を含みうる。当業者は典型的に、参照のために適当な対照混合物をデザインすることができる。
【0100】
測定可能な特性は、キナーゼまたはホスファターゼとのインキュベーションのあいだ、またはキナーゼもしくはホスファターゼのインキュベーションが終了した後モニターすることができる。同様に、測定可能な特性は、プロテアーゼのインキュベーションのあいだ、またはプロテアーゼのインキュベーションが終了した場合にモニターすることができる。典型的に、測定可能な特性は、既定のキナーゼ、ホスファターゼ、またはプロテアーゼインキュベーション期間の後に測定される。例えば、測定可能な特性はキナーゼ(ホスファターゼ)またはプロテアーゼのインキュベーション開始後12時間以内に測定してもよい。いくつかの態様において、測定可能な特性は、開始30分、1時間、2時間、または4時間以内に測定される。プロテアーゼのインキュベーションは、タンパク質分解活性を阻害する試薬(例えば、アプロチニン、PMSF、TPCK、AEBSF、キモトリプシン阻害剤1、キモトリプシン阻害剤2)を添加すること、プロテアーゼ試料を加熱および/または変性させること、およびpHまたは金属濃度を変化させること(例えば、活性部位金属をキレート化することによって)を含む、多くの公知の方法によって停止させることができる。
【0101】
組成物は、プロテアーゼ混合物における測定可能な特性が適当な対照混合物における測定可能な特性と異なる場合に、キナーゼ(またはホスファターゼ)の基質であると同定される。一般的に、測定可能な特性は、対照混合物における測定可能な特性に対して統計学的に有意差がなければならない。差が統計学的に有意であるか否かは、測定可能な特性のタイプ、測定のタイプ、および実験条件に依存するであろうことを、当業者は認識するであろう。測定可能な特性を比較して統計学的有意差があれば、その基質をさらなる試験に用いてもよいことを示していると理解される。典型的に、測定可能な特性における差は、適当なパラメトリックまたはノンパラメトリック統計学、例えばカイ二乗検定、スチューデントt-検定、マン-ホイトニー検定、またはF-検定によって、p<0.05で統計学的に有意であると見なされる。いくつかの態様において、差は、p<0.01、p<0.005、またはp<0.001で統計学的に有意である。
【0102】
典型的に、検出可能な特性は、蛍光特性のような光学特性であろう。一つの局面において、方法は、プロテアーゼによる切断の前後の組成物の蛍光異方性測定の差に基づいてもよい。この場合、組成物は典型的に、モチーフ、例えばキナーゼまたはホスファターゼの認識モチーフを含むペプチド部分、プロテアーゼ部位、および蛍光検出可能な部分を含む。キナーゼ(またはホスファターゼ)活性によるペプチドの改変によって、プロテアーゼがペプチドを切断する速度の調節が起こり、これは切断時の組成物の蛍光偏光における測定可能な(例えば、統計学的に異なる)変化によって感知される。
【0103】
偏光の測定は、その蛍光体の励起状態寿命と比較した蛍光体の相対的回転運動に基づく。希釈溶液における球体の分子の場合、偏光(p)と回転運動の程度の関係は容易に導出することができる(Weber, 「Polarization of the fluorescence of solutions, in Fluorescence and Phosphorescence Analysis.」、Don Hercules(編)、Interscience Publishers, New York, Chapter 8, page 217〜240(1966)を参照されたい)。回転運動は、分子の回転拡散定数に関連し、したがって分子容積に関係しうる。実際に、分子の大きさと蛍光体からの放射光の相対的偏光とのあいだに密接な相関を認める。その結果、本発明の組成物がプロテアーゼによる作用を受ける場合、蛍光偏光の有意な変化が起こりうる。偏光に基づくアッセイは比較的設定が容易であり、広い濃度、温度、およびイオン強度範囲にわたって得ることができる。
【0104】
方法のもう一つの態様において、蛍光異方性測定は、組成物のペプチドの一つの末端を固体マトリクスまたはビードに結合させることによって増強することができる。いずれの場合においても、組成物の切断によって、固体マトリクスまたはビードから分離された場合の組成物切断産物の回転柔軟性が増加するために、蛍光偏光の大きい低下が起こる。
【0105】
もう一つの局面において、本発明は、蛍光読み取り値を提供するために、二つの蛍光部分のあいだ(FRET)、生物発光部分と蛍光部分のあいだ(生物発光共鳴エネルギー転移BRET)、または蛍光部分とクエンチャー(例えば、RETダーククエンチング)のあいだの共鳴エネルギー転移を利用する。
【0106】
FRET応用において、組成物は典型的に、モチーフ(例えば、認識モチーフ)およびプロテアーゼ切断部位が二つの検出可能部分のあいだに存在するように、ペプチドに結合させた第一の蛍光検出可能部分と第二の蛍光検出可能部分とを含む。この状況において、プロテアーゼによるペプチドの切断によって、第一の蛍光部分と第二の蛍光部分のあいだにエネルギー転移の変化が起こり、これを用いて、キナーゼまたはホスファターゼ活性をモニターおよび測定してもよい。
【0107】
FRETの場合、蛍光部分は典型的に、部分(アクセプター蛍光部分)の一つの励起スペクトルが、ドナー蛍光部分の放射スペクトルと重なり合うように選択される。ドナー蛍光部分は、ドナー蛍光部分の励起スペクトル内での適当な波長および強度の光によって、およびアクセプター蛍光体の直接励起が最小限となる条件で励起される。ドナー蛍光部分は非放射的手段によって吸収エネルギーをアクセプターに転移させ、次にアクセプターは吸収エネルギーの一部を特徴的波長で蛍光放射として再放射する。これらの態様において、EuまたはTb金属キレートのようなLn錯体を、上記のように蛍光ドナー部分として用いる。典型的に、Ln錯体は、その放射バンドの一つがアクセプター蛍光部分の励起バンドと重なり合うように選択される。
【0108】
FRETは、ドナーからの蛍光シグナル強度の減少、その励起状態の期間の減少、および/またはアクセプター蛍光部分からの蛍光の放射の増加として現れうる。ドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分とを有するペプチドが切断されると、ドナー蛍光部分およびアクセプター蛍光部分は物理的に分離して、FRETは減少または消失する。これらの状況において、ドナーからの蛍光の放射は増加して、アクセプターからの蛍光の放射は減少する。したがって、ドナーに特徴的な波長でのアクセプターに対する放射幅の比(例えば、最大放射)は、FRET条件での同じ比(例えば、ドナーの放射がアクセプターによって消光(例えば、減少)する場合)と比較して増加するはずである。
【0109】
FRETの効率は、ドナー蛍光部分とアクセプター蛍光部分の分離距離および方向、ドナー部分の蛍光量子収率、およびアクセプター部分のスペクトルオーバーラップに依存する。Forsterは、関係を導出した:

式中、EはFRETの効率であり、FおよびF°はそれぞれ、アクセプターの存在下および非存在下でのドナーの蛍光強度であり、Rはドナーとアクセプターの距離である。Roは、エネルギー転移効率が最大の50%である距離であり、以下によって表される(Åで):

式中、K2は、自由に移動するドナーおよびアクセプターに関して0.67に近い平均値を有する方向因子であり、Qは、消光していない蛍光ドナーの量子収率、nは介在媒体の屈折率、およびJはオーバーラップの積分であり、これはスペクトルオーバーラップの程度を定量項で表す。FRETが50%有効である特徴的な距離Roは、ドナーの量子効率、アクセプターの吸光係数、ドナーの放射スペクトルとアクセプターの励起スペクトルとのオーバーラップ、および二つの蛍光体の方向因子に依存する。
【0110】
FRETの程度の変化は、「比決定」と呼ばれるプロセスである、ドナーおよびアクセプター部分からの蛍光量の比の変化の関数として決定することができる。比を計算することによって、アッセイは例えば、基質濃度のウェル間の変動、光褪色、および励起強度に対する感受性が低くなり、このようにアッセイをより強固にすることができる。これは、得られたデータの質がその後の分析および解釈にとって重要である自動スクリーニング応用において特に重要である。
【0111】
例えば、方法のいくつかの態様において、二つの異なる波長での蛍光放射の比を、プロテアーゼ混合物および対照混合物のあいだで比較する、比測定分析を行う。典型的なFRETに基づくアッセイにおいて、二つの波長は、組成物の二つの検出可能な(例えば、蛍光)部分の最大放射に対応しうる。このように、組成物がキナーゼの基質である場合、燐酸化組成物は、プロテアーゼによる切断に対する感受性が低くなるであろう。したがって、燐酸化組成物は、ドナーとアクセプター部分(例えば、FRETペア)のあいだでFRETを維持し、それによってドナー対アクセプター部分の低い放射比が得られる。しかしそのような場合、対照試料はプロテアーゼによる切断を受けるであろう。切断はドナーとアクセプター部分のあいだのFRETを破壊し、それによってドナー対アクセプター部分のより大きい放射比が得られる。いくつかの態様において、対照混合物の放射比は、プロテアーゼ混合物の放射比より1.5、2、3、4、5、7、10、15、20、25、30、40、50、または100倍大きいであろう。
【0112】
本発明はまた、試料(例えば、細胞、抽出物、精製タンパク質、組織、生物)が一般的なキナーゼもしくはホスファターゼ活性、または特異的キナーゼもしくはホスファターゼ活性、例えばAbl-1キナーゼ活性を有するか否かを決定するために用いることができる。方法は典型的に、試料を組成物に接触させる段階(例えば、組成物を燐酸化(または脱燐酸化)することができる適当な条件で)、ならびに試料および組成物の混合物をプロテアーゼ、例えば翻訳後改変の非存在下で組成物を切断することが知られているプロテアーゼに接触させる段階を含む。試料における翻訳後改変活性の程度は、例えば上記のように、試料-組成物混合物の測定可能な特性をモニターすること、および対照混合物の測定可能な特性とそれを比較することによることによって評価される。
【0113】
いくつかの場合において、組成物およびプロテアーゼは、同時に試料に加えてもよい。または、試料が細胞を含む場合、方法は、典型的に、細胞の刺激の後に組成物の存在下で細胞を溶解する段階、または組成物が細胞内で発現される場合には、組成物の改変を測定するためにプロテアーゼの存在下で細胞を溶解する段階を含むであろう。
【0114】
アッセイの一つの応用は、細胞内翻訳後活性を測定できるように、生きている真核細胞または原核細胞に組成物を導入または発現させることである。一つの局面において、方法は第一の蛍光タンパク質、モチーフ(例えば、認識モチーフ)およびプロテアーゼ部位を含むペプチド、ならびに第二の蛍光タンパク質を単一のポリペプチド鎖として共に融合して含む組成物を含む。この場合、第一の蛍光タンパク質および第二の蛍光タンパク質は、上記のようにFRETが起こりうるように選択されるであろう。機能的に操作された蛍光タンパク質のペアは、米国特許第6,410,255号の表7に示されるように、Topaz(S65G、S72A、K79R、T203Y)およびW1B(F64L、S65T、Y66W、N146I、M153T、V163A)であろう。
【0115】
もう一つの局面において、方法は、蛍光部分に対する一つまたは複数の結合部位、モチーフ(例えば、認識モチーフ)、およびプロテアーゼ切断部位を含むペプチドを含む組成物を含みうる。例えば、結合部位は、1997年10月21日に提出された、「Methods of Using Synthetic Molecules and Target Sequences」と題する係争中の米国特許出願第08/955,050号;1997年10月21日に提出された、「Synthetic Molecules that Specifically React with Target Sequence.」と題する米国特許出願第08/955,859号;および1997年10月21日に提出された「Target Sequences for Synthetic Molecules.」と題する米国特許出願第08/955,206号に記述されるように、蛍光部分を認識する配列を含みうるであろう。この場合、認識モチーフ、プロテアーゼ切断部位、および結合部位を含むペプチドの発現は、上記のような遺伝子手段を用いて行うことができるであろう。結合部位に結合することができる膜透過性蛍光部分を付加すれば、本発明に従う組成物をインサイチューで作製することができるであろう。
【0116】
方法のもう一つの応用は、例えば構築物の発現を誘導することによって、組成物、キナーゼもしくはホスファターゼ、またはプロテアーゼのいずれかの発現を急激に増加させるために、誘導制御型ヌクレオチド配列を用いることである。適したプロテアーゼを、細胞内で発現、誘導、または膜転座配列を用いて導入することができるであろう(1998年9月15日にLin et al.に交付された米国特許第5,807,746号を参照されたい)。FRETの効率は典型的にプロテアーゼ発現の増加の発生後1回またはそれ以上の時間間隔でモニターしてもよい。
【0117】
BRET応用において、組成物は典型的に、モチーフおよびプロテアーゼ部位がそのあいだに存在するように、ペプチドに結合させた発光部分と蛍光部分とを含む。この場合、プロテアーゼによるペプチドの切断によって、発光部分と蛍光部分とのあいだのエネルギー転移の変化が起こり、これを用いて上記のようにキナーゼまたはホスファターゼ活性を決定してもよい。この場合において、発光および蛍光部分は、典型的に発光部分の放射スペクトルが蛍光部分の励起スペクトルと重なり合うように選択される。発光部分は、化学発光、エレクトロルミネッセント、または生物発光反応を通して光を提供することから、発光部分における励起状態を作製するために直接光励起を必要としない。代わりに、適当な基質または電圧を、励起状態発光部分を作製するために発光部分に提供(または適用)しなければならない。生物発光タンパク質の場合、そのような基質は一般的にルシフェリン(例えば、1997年7月22日にWoodに交付された米国特許第5,650,289号を参照されたい)と呼ばれる。BRETが起こると、発光部分の励起状態からのエネルギーは、発光部分からの光として放射されるよりむしろ、非放射活性手段によって蛍光部分に転移される。発光および蛍光部分は典型的に、特徴的な波長で光を放射するように選択されることから、二つの放射比も同様に、上記のFRETに基づく応用に関して記述したように、比測定読み取り値を提供することができる。BRETは、発光部分からの蛍光シグナルの強度の減少、その励起状態寿命の減少、および/または蛍光部分からの蛍光の放射の増加として現れうる。発光部分と蛍光部分とを結合するペプチド基質が切断されると、発光部分と蛍光部分は、物理的に分離し、BRETは減少または消失する。これらの状況では、発光部分からの光の放射が増加して、蛍光部分からの蛍光の放射は減少する。BRETの効率は典型的に、FRETに関して先に記述したように同じ分離および方向因子に依存する。
【0118】
ダーククエンチングRET応用において、組成物は典型的に、モチーフおよびプロテアーゼ部位がそれらのあいだに存在するように、ペプチドに結合させた第一の蛍光部分(例えば、ドナー)およびダーククエンチャー部分(例えば、アクセプター)を含む。この場合において、プロテアーゼによるペプチドの切断によって、第一の蛍光部分とダーククエンチャー部分のあいだのエネルギー転移の変化が起こり、これを用いて翻訳後活性をモニターしてもよい。蛍光部分およびダーククエンチャー部分は典型的に、ダーククエンチャー(アクセプター部分)の吸収スペクトルがドナー蛍光部分の放射スペクトルと重なり合うように、選択される。ドナー蛍光部分は、ドナー蛍光部分の励起スペクトル内で適当な強度の光によって励起される。ドナー蛍光部分は非放射活性手段によって吸収エネルギーをダーククエンチャーに転移するが、この場合吸収されたエネルギーの実質的な量を光として再放射しない(例えば、ダーククエンチングRETペアを形成する)。ダーククエンチングRETは、ドナーからの蛍光シグナル強度の減少、またはその励起状態寿命の減少として現れうる。ドナー蛍光部分とダーククエンチャー部分とを結合するペプチドが切断されると、ドナー蛍光部分とダーククエンチャー部分とが物理的に分離して、ダーククエンチングRETは減少または消失する。これらの状況では、ドナー蛍光部分からの蛍光放射が増加する。
【0119】
本発明において企図される消光のもう一つのメカニズムは、蛍光体とクエンチャーのあいだの励起子二量体(例えば、静的クエンチング)の形成および検出を含む。典型的に、静的クエンチングは、蛍光体とクエンチャーの相互作用によって、安定な非蛍光または弱い蛍光の基底状態複合体が形成される場合に起こる。この複合体は典型的に、蛍光体とは異なる吸収スペクトルを有することから、吸収の変化が存在することは、このタイプのクエンチングの診断となる(対照的に、衝突クエンチングは、一過性の励起状態相互作用であり、したがって吸収スペクトルに影響を及ぼさない)。純粋な静的クエンチングは、蛍光強度を減少させることができないが、測定された放射寿命を必ずしも減少させない。
【0120】
磁気検出に基づくアッセイにおいて、組成物は典型的に、上記のように、モチーフ(例えば、認識モチーフ)およびプロテアーゼ部位を有するペプチドに結合させた金属キレートまたは金属粒子を含む。これらの場合において、金属キレートまたは粒子は、切断されたペプチドと比較して無傷のペプチドに結合または会合した場合に変化するであろう特徴的な磁気シグナル、例えばT1、T2、またはR1を有するように選択しなければならない。プロテアーゼによるペプチドの切断によって磁気シグナルの変化が起こり、これを用いて翻訳後活性をモニターしてもよい。
【0121】
放射性同位元素の検出に基づくアッセイにおいて、組成物は典型的に、モチーフ(例えば、認識モチーフ)およびプロテアーゼ部位を有するペプチドに結合させた放射性同位元素(例えば、32P、35S、3H、14C、または当業者に公知の他の物質)を含む。これらの場合において、タンパク質分解切断の前後での放射標識(例えばゲル内で)の位置のモニタリング、または切断産物の大きさのモニタリング(例えばゲル内で)は、翻訳後活性をモニターする方法を提供する。
【0122】
本発明のアッセイは、キナーゼまたはホスファターゼ活性を変化または調節する化合物を同定するための薬物スクリーニングアッセイにおいて用いることができる。一つの態様において、アッセイはインビトロで、薬物スクリーニングが望ましい活性を含む試料(例えば、細胞もしくは細胞溶解物から単離された試料、または精製もしくは部分精製酵素)について行われる。既知量の活性を含む試料を、本発明の組成物および試験化合物に接触させる。試料の活性は、上記のように、例えば組成物の測定可能な特性をモニターすることによって、プロテアーゼの添加後モニターされる。試験化合物の存在下での試料の測定可能な特性を、試験化合物の非存在下で同様に処置した試料の測定可能な特性と比較することができる(例えば、対照反応)。差があれば、試験化合物が活性を変化させることを示している。好ましい態様において、方法は、キナーゼまたはホスファターゼ活性の推定の阻害剤を評価するために用いられる。
【0123】
もう一つの態様において、試験化合物がキナーゼまたはホスファターゼ活性を変化または調節する能力を決定してもよい。これらのアッセイにおいて、上記のように、本発明の組成物をコードする発現ベクターをトランスフェクトした細胞を、異なる量の試験化合物に曝露して、適したプロテアーゼの誘導または導入後、各細胞における測定可能な特性(例えば、FRETまたは蛍光分極のような光学特性)に及ぼす影響を決定することができる。典型的に、本発明の如何なる方法に関しても、測定可能な特性における変化は無処置対照における変化と比較される。
【0124】
本発明の任意の方法は、ハイスループットまたは超ハイスループットで行うように改変することができる。例えば、特定のキナーゼまたはホスファターゼの基質を同定する方法を、複数の組成物(例えば、二つまたはそれ以上の異なる組成物)を独立して特定のキナーゼまたはホスファターゼに接触させて、複数の酵素混合物を形成するように改変してもよい。それぞれの酵素混合物をプロテアーゼによって処置して、それぞれのプロテアーゼ混合物の測定可能な特性をモニターして、適当な対照試料と比較する。同様に、特定の組成物を、複数のキナーゼまたはホスファターゼの基質として、その適切性に関して評価することができる(例えば、二つまたはそれ以上の異なるキナーゼまたはホスファターゼ)。このように、特定の組成物を複数の酵素に接触させて、複数の酵素混合物を形成してもよい。それぞれの混合物をプロテアーゼによって処置して、それぞれのプロテアーゼ混合物の測定可能な特性をモニターして、適当な対照試料と比較する。当業者は、そのようなハイスループット法が、複数の組成物が複数の異なる酵素の基質としての適切性に関してスクリーニングされるマルチウェルプレートまたは2-Dアレイパネルフォーマットに対して特に感受性があることを認識するであろう。下記の実施例4を参照されたい。マルチウェルプレートをインキュベートおよびモニターする装置は当技術分野で公知である。キナーゼまたはホスファターゼ活性の調節物質を同定する方法に関して、類似のパネルアッセイを想像してもよい。下記の実施例3を参照されたい。
【0125】
もう一つの態様において、複数の異なる組成物を単一のキナーゼまたはホスファターゼに同時に接触させてもよい;次に、反応混合物をプロテアーゼに接触させて、測定可能な複数の特性をモニターして、適当な対照試料の測定可能な特性と比較してもよい。典型的に、組成物のそれぞれは、それぞれのFRETペアを互いに独立して追跡することができるように、ドナーの特徴的な励起波長およびドナー対アクセプターの放射比を有するFRETを含む。適当な対照試料には、キナーゼ、ホスファターゼ、および/またはATPの非存在下でプロテアーゼによって処置した複数の組成物が含まれるであろう。当業者が認識するであろうように、他の測定可能な特性も同様にモニターして、ダーククエンチングRETの検出可能部分および磁気検出応用と共に、そのような方法を用いることを促進することができる。
【0126】
または、試料におけるキナーゼまたはホスファターゼ活性の活性プロフィールを作製するために、公知の認識モチーフを有する組成物のアレイを作製してもよい。この場合、アレイのスクリーニングを用いて、活性を含む試料と共にアレイをインキュベートして、適当なプロテアーゼを加え、その後アレイのそれぞれのメンバーからの測定可能な特性をモニターすることによって、試料内の活性の特徴を調べる。試料との曝露後により効率よく改変されるアレイメンバーは、そのアレイメンバーの測定可能な特性が適当な対照試料と比較して変化している程度によって同定される可能性がある。
【0127】
本発明の発明のダイナミックレンジ、質、および強固さは、統計学的に評価することができる。例えば、Z'-因子はアッセイシグナルダイナミックレンジと、シグナル測定に関連した変動の双方を反映するように設計された統計値である。シグナル対ノイズ(S/N)またはシグナル対バックグラウンド(S/B)比は、試料における変動、バックグラウンド測定、およびシグナルのダイナミックレンジを考慮に入れておらず、これらのみではこの点において不十分である。Z'-因子は、これらの要因を考慮に入れて、しかも無次元であるために、類似のアッセイを比較するために用いることができる。Z'因子の値とアッセイの質との関連を、下記の表6に要約する。典型的に、本発明のアッセイは、0.5より大きい、または0.5に等しいZ'-因子を生じる。
【0128】
Z'因子は、方法のダイナミックレンジを評価することによって決定してもよい。いくつかの態様において、ダイナミックレンジは、0%阻害および100%阻害対照によって定義してもよい。0%阻害対照は、本発明の組成物をキナーゼおよびATPに接触させてキナーゼ混合物を形成し、キナーゼ混合物をプロテアーゼに接触させてプロテアーゼ混合物を形成し、およびプロテアーゼ混合物における測定可能な特性をモニターすることによって行われる。測定可能な特性は、445 nmでのクマリンの放射対520 nmでの蛍光の放射の比のような、放射比となりうる。典型的に、キナーゼ反応物の反応条件は、既定の期間(例えば、30分、1時間、2時間、または4時間)において組成物の約10〜40%を燐酸化するように選択される。試料の%燐酸化は、以下の等式を用いて計算することができる:
%燐酸化=1−[((放射比×Fc)−Fa)/((Fb−Fa)+(放射比×(Fc−Fd)))]
式中、放射比は、先に記述したように、ドナー放射シグナル対アクセプター放射シグナルの比である;Faは、100%燐酸化対照のドナー放射シグナルの平均値である;Fbは0%燐酸化対照のドナー放射シグナルの平均値である;Fcは、100%燐酸化対照のアクセプター放射シグナルの平均値である;およびFdは0%燐酸化対照のアクセプター放射シグナルの平均値である。
【0129】
100%阻害対照は、0%燐酸化組成物を生じるためにATPの非存在下で(キナーゼの100%阻害)同様に行われる。100%燐酸化組成物はまた、対照として含まれうる。0%および100%阻害対照は、1試料あたり2個ずつ行うことができる。次に、Z'-因子を以下のように計算する:
Z'-因子=(1−(3×σ0%阻害)+(3×σ100%阻害))/(100%阻害のμ−0%阻害のμ)
【0130】
(表6)

【0131】
本発明の方法は、様々な分光光度測定系について用いることができる。一つの態様において、システムは、1)アッセイの試薬、および2)例えばインキュベートするためのおよび/またはプレートまたは容器からのシグナルを検出するための、少なくとも一つのプレート(例えば、マルチウェルプレート)、容器、およびマルチウェルプラットフォームのようなプラットフォームを含む装置を含む。システムはさらに、試料またはプレートからのシグナルを検出するために適当な検出器のような検出器を含んでもよい。システムは、多数のプレート、容器、またはマルチウェルプラットフォームを含みうる。この状況において、アッセイ試薬には、例えば緩衝液、共因子、酵素またはプロテアーゼのようなタンパク質、糖質、脂質、核酸、その活性断片、DMSOのような有機溶媒、化学物質(例えば、ATP)、分析物、治療物質、組成物、細胞、抗体、リガンド等のような生化学的または生物学的インビトロまたはインビボ試験技法を行うために有用な任意の試薬が含まれる。この状況において、活性断片は、本発明の試薬の活性を実質的に有する試薬の一部である。
【0132】
本発明の組成物は、キナーゼまたはホスファターゼ活性の基質および調節物質を同定するための自動で統合可能なワークステーションを利用するシステムおよび方法を用いるために適している。そのようなシステムは一般的に当技術分野において記述されている(Kramer et al.に対する米国特許第4,000,976号(1977年1月4日交付)、Host et al.に対する第5,104,621号(1992年4月14日交付)、Bjornson et al.に対する第5,125,748号(1992年6月30日交付)、Kowalskiに対する第5,139,744号(1992年8月18日交付)、Bjornson et al.に対する第5,206,568号(1993年4月27日交付)、Mazza et al.に対する第5,350,564号(1994年9月27日)、Harootunianに対する第5,589,351号(1996年12月31日交付)、およびBaxter Deutschland GMBHに対するPCT出願国際公開公報第93/20612号(1993年10月14日交付)、McNeil et al.に対する国際公開公報第96/05488号(1996年2月22日交付)、Agong et al.に対する国際公開公報第93/13423号(1993年7月8日交付)、および1998年5月14日に提出されたStylli et al.に対するPCT/US98/09526を参照されたい)。
【0133】
本発明のいくつかの態様に関して、特にプレートあたり96、192、384、864、および3456ウェルを有するプレートに関して、システムに統合するための検出器が利用できる。そのような検出器は、米国特許第5,589,351号(Harootunian)、米国特許第5,355,215号(Schroeder)、およびPCT特許出願国際公開公報第93/13423号(Akong)に記述される。または、プレート全体を、Molecular Dynamics FluorImager 595(Sunnyvale, CA)のようなイメージャーを用いて「読み取」ってもよい。3,456ウェルを含む864ウェルより多いマルチウェルプラットフォームも同様に、本発明において用いることができる(例えば、6/2/98に提出されたPCT/US98/11061を参照されたい)。
【0134】
もう一つの態様において、システムは、例えば1980年8月5日にJohnsonに交付された米国特許第4,216,245号、1998年2月24日にTrollに交付された米国特許第5,721,435号、および1997年2月11日にGordon et al.に交付された米国特許第5,601,980号に記述されているように、基層に分散された組成物の二次元アレイを含んでもよい。そのようなシステムは、多数の組成物および/または多数の試料のプロフィールを、単純な小さいハイスループットフォーマットで迅速に調べる能力を提供する。
【0135】
本発明はまた、キットのような製造品を提供する。典型的にキットには、容器および本発明の組成物が含まれる。いくつかの態様において、キットには、以下の一つまたは複数が含まれうる:マルチウェルプレート、プロテアーゼ、一つまたは複数の酵素(キナーゼまたはホスファターゼ酵素)、緩衝液、ATP源、およびキットの使用説明書。キットは、キナーゼもしくはホスファターゼ活性の基質を決定するために、またはキナーゼもしくはホスファターゼ活性の調節物質を同定するために有用となりうる。
【0136】
実施例
実施例1−キナーゼ基質によるキナーゼ速度論パラメータの決定
a.セリン/トレオニンキナーゼであるAkt 1キナーゼの速度論パラメータの決定
ATPをCorning 384ウェル丸底非結合表面プレートにおいて連続希釈した。Akt 1の基質、SEQ ID NO:59を、C-末端リジンのε-NH2に7-ヒドロキシクマリン部分を、およびN-末端GABAリンカーに5-FAM部分を結合させることによって改変して米国特許第6,410,255号に記述されるように調製し、これをAkt 1キナーゼと混合して、ATP希釈液に加えた。SEQ ID NO:59の最終濃度は各ウェルにおいて2μMであり、Akt 1の最終濃度は16 nMであった。プレートを室温で1時間インキュベートした。キモトリプシンを各ウェルに加えて(最終濃度100 ng/ml)、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取った。曲線の適合およびデータの表示は、GraphPad SoftWare, Inc.のPrism(商標)ソフトウェアを用いて行った。見かけのKmは15μMであった。
【0137】
b.チロシンキナーゼであるAbl 1キナーゼの速度論パラメータの決定
ATPをCorning 384ウェル丸底非結合表面プレートにおいて連続希釈(0.8μM〜100 μM)した。Abl 1の基質、SEQ ID NO:3を、C-末端リジンのε-NH2に7-ヒドロキシクマリン部分を、およびN-末端GABAリンカーに5-FAM部分を結合させることによって改変して米国特許第6,410,255号に記述されるように調製し、これをAbl 1キナーゼと混合して、ATP希釈液に加えた。SEQ ID NO:3の最終濃度は各ウェルにおいて2μMであり、Abl 1の最終濃度は16 nMであった。プレートを室温で1時間インキュベートした。キモトリプシンを各ウェルに加えて(最終濃度1.25 ng/ml)、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取った。曲線の適合およびデータの表示は、GraphPad SoftWare, Inc.のPrism(商標)ソフトウェアを用いて行った。図3から認められるように、Abl 1キナーゼのSEQ ID NO:3によるVmaxは、7%であり、0.02 pmol/分に対応し、見かけのKmは7μMであった。図3を参照されたい。
【0138】
実施例2−キナーゼ濃度に及ぼす%燐酸化の依存性およびZ'-因子値の評価
a.Akt 1
Akt 1キナーゼを384ウェル丸底非結合表面プレートにおいて連続希釈(最終濃度は156 ng/ml〜20,000 ng/ml)した。Akt 1の基質、SEQ ID NO:59(先の実施例1aに記述するように改変した;最終濃度2μM)の溶液およびATP(最終濃度15μM)を加えることによってキナーゼ反応を開始した。プレートを室温で1時間インキュベートした。キモトリプシンを各ウェルに加えて(最終濃度100 ng/ml)、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取った。曲線の適合およびデータの表示は、GraphPad SoftWare, Inc.のPrism(商標)ソフトウェアを用いて行った。
【0139】
%燐酸化データを図4に示す。様々なキナーゼ濃度および基質の%燐酸化に関するZ'-因子値を下記の表7に示す。10%もの少ない基質が燐酸化される場合でも高いZ'-因子値が認められる。
【0140】
(表7)Akt 1のZ'-因子値

【0141】
b.Abl 1
Abl 1キナーゼを384ウェル丸底非結合表面プレートにおいて連続希釈(最終濃度は4.9 ng/ml〜10,000 ng/ml)した。Abl 1の基質、SEQ ID NO:3(先の実施例1bに記述するように改変した;最終濃度2μM)の溶液およびATP(最終濃度7μM)を加えることによってキナーゼ反応を開始した。プレートを室温で1時間インキュベートした。キモトリプシンを各ウェルに加えて、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取った。曲線の適合およびデータの表示は、GraphPad SoftWare, Inc.のPrism(商標)ソフトウェアを用いて行った。
【0142】
%燐酸化データを図5に示す。様々なキナーゼ濃度および基質の%燐酸化に関するZ'-因子値を下記の表8に示す。10%もの少ない基質が燐酸化される場合でも高いZ'-因子値が認められる。
【0143】
(表8)Abl 1アッセイのZ'-因子値

【0144】
c.PKAおよびPKCαキナーゼ
先に概要した実験と類似の実験を、PKAおよびPKCαに対して組成物8個(SEQ ID NO:47、50、43、58、59、60、63、および68)について行った。図8は、それに対してスクリーニングされる組成物8個のセリン/トレオニンキナーゼPKAによる%燐酸化を示す。示されるように、上記のように改変したSEQ ID NO:47は、低いキナーゼ濃度でも最大の燐酸化を生じたことから、最善のキナーゼ基質である。
【0145】
図9は、それに対してスクリーニングされる組成物8個のPKCαによる%燐酸化を示す。示されるように、記述のように改変したSEQ ID NO:60のみがこのS/Tキナーゼによって燐酸化される。
【0146】
実施例3−キナーゼ活性の調節物質の同定
a.Abl 1(チロシンキナーゼ)阻害剤
試験化合物2個(Calbiochemか 入手可能なスタウロスポリンおよびゲニステイン)を、Abl 1によるAbl 1基質(SEQ ID NO:3、先の実施例1bに記述されるように改変した)の燐酸化の阻害能に関して評価した。それぞれの試験化合物の連続希釈液(最終濃度0.3〜500,000 nM)を384ウェルプレートに分配した。Abl 1キナーゼ/Abl 1基質溶液5 μl(最終濃度、1.5 ng Abl 1/ウェルおよび2 μM Abl 1基質/ウェル)を、ATP 2.5 μL(最終濃度10 μM)と共に各ウェルに加えた。プレートを混合して室温で1時間インキュベートした。キモトリプシン5μlを各ウェルに加えて(最終濃度1μg/ml)、プレートを混合して室温で1時間インキュベートした。プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取った。曲線の適合およびデータの表示は、GraphPad SoftWare, Inc.のPrism(商標)ソフトウェアを用いて行った。
【0147】
Abl 1アッセイのダイナミックレンジは、0%および100%阻害対照を行うことによって定義された。0%阻害対照はAbl 1基質の30%を燐酸化したのに対し、100%阻害対照は、ATPの非存在下で行われたキナーゼ反応であったが、この場合Abl 1基質は燐酸化されなかった。非燐酸化Abl 1基質はキモトリプシンによって完全に切断されることから、これはFRETの喪失および445 nm(クマリン)/520 nm(フルオレセイン)での放射比の増加を示すであろう。
【0148】
図6は、Abl 1によるAbl 1基質の燐酸化に関するスタウロスポリンおよびゲニステインによる阻害曲線を示す。IC50値は、同じ放射比の半最大シフトを生じる阻害剤濃度として定義される。図6におけるエラーバーは、3回の実験の平均値からの一標準偏差を表す。図6から認められうるように、IC50は、スタウロスポリンに関して33 nM、およびゲニステインに関して4.1μMである。
【0149】
b.Akt 1(セリン/トレオニンキナーゼ)阻害剤
試験化合物2個(スタウロスポリンおよびRo-31-8220(Calbiochemから入手可能))を、Akt 1によるAkt 1基質(SEQ ID NO:59、先の実施例1aに記述されるように改変した)の燐酸化の阻害能に関して評価した。それぞれの試験化合物の連続希釈液(最終濃度0.019〜50,000 nM)を384ウェルプレートに分配した。Akt 1キナーゼ/Akt 1基質溶液5 μl(最終濃度、42 ng Akt 1/ウェルおよび2 μM Akt 1基質/ウェル)を、ATP 2.5 μL(最終濃度10.5 μM)と共に各ウェルに加えた。プレートを混合して室温で1時間インキュベートした。キモトリプシン5μlを各ウェルに加えて(最終濃度100 ng/ml)、プレートを混合して室温で1時間インキュベートした。プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取った。曲線の適合およびデータの表示は、GraphPad SoftWare, Inc.のPrism(商標)ソフトウェアを用いて行った。
【0150】
Akt 1アッセイのダイナミックレンジは、0%および100%阻害対照を行うことによって定義された。0%阻害対照はAkt 1基質の30%を燐酸化したのに対し、100%阻害対照は、ATPの非存在下で行われたキナーゼ反応であったが、この場合Akt 1基質は燐酸化されなかった。非燐酸化Akt 1基質はキモトリプシンによって完全に切断されることから、これはFRETの喪失および445 nm(クマリン)/520 nm(フルオレセイン)での放射比の増加を示すであろう。
【0151】
図7は、Akt 1によるAkt 1基質の燐酸化に関するスタウロスポリンおよびRo-31-8220による阻害曲線を示す。IC50値は、同じ放射比の半最大シフトを生じる阻害剤濃度として定義される。図7におけるエラーバーは、3回の実験の平均値からの一標準偏差を表す。図7から認められうるように、IC50は、スタウロスポリンに関して17.2 nM、およびRo-31-8220に関して408 nMである。
【0152】
実験を、15μM ATPおよび3 ng/ウェルAkt 1を用いて繰り返し、同様に成功した。
【0153】
実施例4−キナーゼの基質を評価するためのパネルアッセイ
組成物を、一連のマルチウェル(96または384ウェル)プレートフォーマットにおいてS/TおよびYキナーゼに対してスクリーニングして、セリン/トレオニンキナーゼおよび/またはチロシンキナーゼの基質としての適切性を評価した。それぞれの組成物は、C-末端リジンのε-NH2に結合した7-ヒドロキシクマリン部分と、N-末端GABAリンカーに結合した5-FAM部分とを有する。
【0154】
以下のキナーゼをスクリーニングした:

【0155】
384マルチウェルプレートは、以下のように行列を定義する:プレートの行1〜20のそれぞれは特定のキナーゼに対応し、各キナーゼ行における列1〜16はキナーゼ基質の可能性がある異なる組成物8個の1試料あたり2個ずつに対応する。行21〜24は、対照行に対応し、0%燐酸化対照(キナーゼの100%阻害、ATPなし)および100%燐酸化対照(例えば、合成燐酸化組成物)を表す。キナーゼ20個の組に関して、各キナーゼの2×最終濃度を、プレートのそれぞれのキナーゼ行の各列に分配する。キナーゼ緩衝液5μlを対照行21〜24に加える。組成物およびATPのそれぞれを各キナーゼ行の適当な列に加えると、最終濃度は2μM組成物/0.8 μM ATP/ウェルとなる;これらの試料を1試料あたり2個ずつ調製する。同様に組成物を対照行23および24の適当な列に加えると、最終濃度2μMの非燐酸化組成物が得られる。対象燐酸化組成物を行21および22の適当な列に加えると、最終濃度2μMの燐酸化組成物が得られる。次に、プレートをシェーカー上で混合して、室温で1時間インキュベートして、キナーゼ反応を進行させる。キモトリプシン5μlを各ウェルに加える。プレートをプレートシェーカー上で混合して室温で1時間インキュベートする。プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取る。様々なキナーゼ濃度による類似のアッセイも同様に行う。
【0156】
実施例5−ホスファターゼアッセイ
組成物8個をホスファターゼ6個に対してスクリーニングして、ホスファターゼの基質としてのその適格性を評価した。組成物はSEQ ID NO:31、97、100、103、109、110、113、および118に対応し、それぞれのペプチドは、C-末端リジンのε-NH2に結合した7-ヒドロキシクマリン部分と、N-末端GABAリンカーに結合した5-FAM部分とを有する。以下のホスファターゼを用いた:PP1α、PP2A、PP2B、PP2C、PTP1B、およびLAR。
【0157】
各組成物を、ホスファターゼのそれぞれに関して適当なホスファターゼ緩衝液を用いて4μMに希釈した。ホスファターゼのそれぞれを適当なホスファターゼ緩衝液(販売元によって推奨されるように)を用いる連続滴定によって希釈した(希釈毎にホスファターゼ濃度の2倍減少)。各ホスファターゼ希釈液の容量は5μlであった。各4μM組成物5μlを各ホスファターゼの各連続希釈液に加えた。試料をプレートシェーカー上で60秒間混合して、室温で1時間インキュベートした。反応は1試料あたり2個ずつ行った。ホスファターゼ反応を1時間行った後、キモトリプシン5μlを各反応に加えた。プレートをプレートシェーカー上で混合して室温で1時間インキュベートした。次に、いずれかの組成物がいずれかのホスファターゼの基質であるか否かを評価するために、プレートをTECAN SAFIRE(商標)モノクロメーターに基づく蛍光プレートリーダー(400 nmでの励起(バンド幅12 nm);445 nmでの放射(バンド幅12 nm);および520 nmでの放射(バンド幅12 nm))を用いて読み取った。以下に対応する各組成物およびホスファターゼに関する適当な対照を調製した:組成物の非燐酸化型(無処置);ホスファターゼのみによって処置した組成物の非燐酸化型;キモトリプシンのみによって処置した組成物の非燐酸化型;ホスファターゼとキモトリプシンの双方によって処置した非燐酸化型組成物;燐酸化組成物(無処置);ホスファターゼ単独によって処置した燐酸化組成物;およびキモトリプシン単独によって処置した燐酸化組成物。
【0158】
結果は、SEQ ID NO:100、109、および110がPP1αの基質であることを示した。同様に、SEQ ID NO:103、109、110、および113はPP2Aの基質であった;SEQ ID NO:100および110はPP2Bの基質であった;SEQ ID NO:100、109、および110はPP2Cの基質であった;ならびにSEQ ID NO:31はPTP1BおよびLARの双方の基質であった。
【0159】
本発明の多くの態様を記述してきた。それにもかかわらず、様々な改変を行ってもよく、それらも本発明の趣旨および範囲に含まれると理解されるであろう。したがって、他の態様も以下の請求の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】プロテアーゼに対する組成物の異なる感受性が蛍光シグナルに及ぼす影響を示す略図である。キナーゼ反応において、キナーゼの基質(例えば、本発明に従う組成物)は、キナーゼによって燐酸化される。示されるように、非燐酸化および燐酸化状態の基質は、基質のN-およびC-末端上のドナーおよびアクセプター蛍光体のあいだでFRETを示す。展開(プロテアーゼ)反応において、燐酸化および非燐酸化基質をプロテアーゼに曝露すると、プロテアーゼは燐酸化基質と比較して非燐酸化基質を異なるように切断する。検出パネルにおいて示すように、非燐酸化基質の切断によって、ドナーおよびアクセプター蛍光体のあいだのFRETが破壊され、それによってアクセプター蛍光放射値に対するドナー蛍光放射値の比が測定可能に変化する。
【図2】チロシン(図2A)またはセリン/トレオニン(図2B)キナーゼの活性の調節物質を同定するフローチャートである。
【図3】Abl 1キナーゼの速度論パラメータの導出を示す。
【図4】Akt 1キナーゼ濃度に及ぼす%燐酸化の依存性を示す。
【図5】Abl 1キナーゼ濃度に及ぼす%燐酸化の依存性を示す。
【図6】Abl 1キナーゼの用量依存的阻害を示す。
【図7】Akt 1キナーゼの用量依存的阻害を示す。
【図8】PKAキナーゼの様々な濃度による%燐酸化データを示す。
【図9】PKCαの様々な濃度による%燐酸化データを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む組成物:
a)以下からなる群より選択されるモチーフを含む、アミノ酸5〜50個の長さを有するペプチド:
EIYGV(SEQ ID NO:7)、
X1がG、A、またはEとなりうるTX1YVA(SEQ ID NO:110)、
EEYIQ(SEQ ID NO:17)、および
DYSQV(SEQ ID NO:20);ならびに
b)該ペプチドに会合している第一の検出可能部分。
【請求項2】
以下を含む組成物:
a)以下からなる群より選択されるモチーフを含む、アミノ酸5〜50個の長さを有するペプチド:
RR(S/T)L(SEQ ID NO:145)、
L(S/T)TT(SEQ ID NO:146)、
L(S/T)LD(SEQ ID NO:147)、
X1がV、A、またはQとなりえて、X2がVまたはLとなりうるRX1(S/T)X2(SEQ ID NO:148)、
TS(S/T)L(SEQ ID NO:149)、
X1がPまたはIとなりえて、X2がG、K、またはDとなりうるX1(S/T)PX2(SEQ ID NO:150)、
X1がA、E、またはQとなりえて、X2がYまたはHとなりうる(S/T)X1X2VA(SEQ ID NO:151)、
I(S/T)IAN(SEQ ID NO:152)、
SIA(S/T)I(SEQ ID NO:153)、
S*が燐酸化セリンである(S/T)VPPS*P(SEQ ID NO:154)、
X1がAまたはEとなりえて、X2がIまたはQとなりうるDX1(S/T)X2(SEQ ID NO:155)、および
D(S/T)QV(SEQ ID NO:156);ならびに
b)該ペプチドに会合している第一の検出可能部分。
【請求項3】
以下を含む組成物:
a)以下からなる群より選択されるモチーフを含む、アミノ酸5〜50個の長さを有するペプチド:
X1がF、W、またはYとなりうるLX1(S/T)TT(SEQ ID NO:48)、
X1がF、W、またはYとなりうるX1L(S/T)LD(SEQ ID NO:51)、
X1がV、A、またはQとなりえて、X2がF、W、またはYとなりえて、かつX3がVまたはLとなりうるRX1X2(S/T)X3(SEQ ID NO:54)、
X1がF、W、またはYとなりうるTX1S(S/T)L(SEQ ID NO:61)、
X1がF、W、またはYとなりえて、X2がA、E、またはQとなりえて、かつX3がYまたはHとなりうるX1(S/T)X2X3VA(SEQ ID NO:71)、
X1がF、W、またはYとなりうるIX1(S/T)IAN(SEQ ID NO:78)、
X1がF、W、またはYとなりうるSIAX1(S/T)I(SEQ ID NO:81)、
S*が燐酸化セリンである(S/T)VPPS*P(SEQ ID NO:84)、
X1がAまたはEとなりえて、X2がF、W、またはYとなりえて、かつX3がIまたはQとなりうるDX1X2(S/T)X3(SEQ ID NO:87)、および
X1がF、W、またはYとなりうるDX1(S/T)QV(SEQ ID NO:92)。
【請求項4】
ペプチドに会合している第一の検出可能部分をさらに含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
ペプチドが以下からなる群より選択されるモチーフを含む、請求項3記載の組成物:
LF(S/T)TT(SEQ ID NO:158)、
YL(S/T)LD(SEQ ID NO:159)、
X1がV、A、またはQとなりえて、X2がVまたはLとなりうるRX1F(S/T)X2(SEQ ID NO:160)、
TFS(S/T)L(SEQ ID NO:161)、
X1がA、E、またはQとなりえてX2がYまたはHとなりうるF(S/T)X1X2VA(SEQ ID NO:163)、
IF(S/T)IAN(SEQ ID NO:164)、
SIAF(S/T)I(SEQ ID NO:165)、
X1がAまたはEとなりえて、X2がIまたはQとなりうるDX1F(S/T)X2(SEQ ID NO:166)、および
DY(S/T)QV(SEQ ID NO:167)。
【請求項6】
第一の検出可能部分がペプチドに共有結合している、請求項1、2、4、または5記載の組成物。
【請求項7】
ペプチドがプロテアーゼ切断部位を含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
プロテアーゼ切断部位が、キモトリプシンプロテアーゼ切断部位、カスパーゼ3プロテアーゼ切断部位、カテプシンGプロテアーゼ切断部位、トリプシンプロテアーゼ切断部位、エラスターゼプロテアーゼ切断部位、エンドプロテアーゼAsp-Nプロテアーゼ切断部位、およびエンドプロテアーゼGlu-Nプロテアーゼ切断部位からなる群より選択される、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
第二の検出可能部分をさらに含む、請求項1、2、4、または5記載の組成物。
【請求項10】
ペプチドがアミノ酸8〜50個の長さを有する、請求項1〜5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
ペプチドがアミノ酸8〜25個の長さを有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
ペプチドがアミノ酸8〜15個の長さを有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
光学特性、磁気特性、または放射性特性を示す、請求項1、2、4、または5記載の組成物。
【請求項14】
励起波長でのモル吸光係数、量子効率、励起スペクトル、発光スペクトル、最大励起波長、最大発光波長、二つの波長での励起幅の比、二つの波長での発光幅の比、励起状態の寿命、異方性、放射光の偏光、共鳴エネルギー転移、およびある波長での発光のクエンチングからなる群より選択される光学特性を示す、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
光学特性が、蛍光励起スペクトル、蛍光発光スペクトル、最大蛍光励起波長、最大蛍光発光波長、二つの波長での蛍光励起幅の比、二つの波長での蛍光発光幅の比、蛍光励起状態の寿命、蛍光異方性、およびある波長での蛍光発光のクエンチングからなる群より選択される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
250〜750 nmの範囲で最大蛍光励起を示し、450〜800 nmで最大蛍光発光を示す、請求項13または15記載の組成物。
【請求項17】
検出可能部分が、5-FAM、6-FAM、7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミド、6-クロロ-7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミド、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、ジクロロトリアジニルアミノフルオレセイン、テトラメチルローダミン-5-イソチオシアネート、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート、5-カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、6-カルボキシフルオレセインのスクシンイミジルエステル、5-カルボキシテトラメチルローダミン、6-カルボキシメチルローダミン、および7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸からなる群より選択される、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
第一の検出可能部分が特異的結合ペアのメンバーである、請求項1、2、4、または5記載の組成物。
【請求項19】
第一の検出可能部分と第二の検出可能プローブ部分とがダーククエンチング(dark quenching)RETペアを形成する、請求項9記載の組成物。
【請求項20】
第一の検出可能部分と第二の検出可能部分とがFRETペアを形成する、請求項9記載の組成物。
【請求項21】
第一の検出可能部分が7-ヒドロキシクマリン-3-カルボキサミドであり、第二の検出可能部分が5-FAMである、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
検出可能プローブ部分がリンカー(L)を通してペプチドに共有結合される、請求項1、2、4、または5記載の組成物。
【請求項23】
LがGABA、ジアミノペンタニル、およびアミノヘキサノイルからなる群より選択される、請求項19記載の組成物。
【請求項24】
モチーフが、以下からなる群より選択される、チロシンキナーゼの認識モチーフである、請求項1記載の組成物:

【請求項25】
モチーフが、以下からなる群より選択される、セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフである、請求項3または5記載の組成物:

【請求項26】
以下を含む、組成物:
a)以下からなる群より選択されるモチーフまたは認識モチーフを含む、アミノ酸5〜50個の長さを有するペプチド:
AIYAA(SEQ ID NO:1)、
QDYLS(SEQ ID NO:4)
X1がF、W、またはYとなりうるRRX1(S/T)L(SEQ ID NO:45)、
X1がPまたはIとなりえて、X2がF、W、またはYとなりえて、かつX3がG、K、またはDとなりうるX1X2(S/T)PX3(SEQ ID NO:64)、
RRF(S/T)L(SEQ ID NO:157)、
X1がPまたはIとなりえてX2がG、K、またはDとなりうるX1F(S/T)PX2(SEQ ID NO:162)、

【請求項27】
認識モチーフがチロシンキナーゼの認識モチーフであって、EAIYAAP(SEQ ID NO:2)であり、チロシンキナーゼが、Abl1、Abl2、BMX、CSF1R、Csk、EPHB4、Fes/Fps、FGFR1、FGFR4、Fgr、FLT3、Fyn、Hck、IGF1R、IRKβ、ITK、Jak3、KDR、c-KIT、Lck、LynA、LynB、c-MET、Src、Src N1、Src N2、SYK、TIE2、TRKa、およびYESからなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
認識モチーフがチロシンキナーゼの認識モチーフであって、DQDYLSL(SEQ ID NO:5)であり、チロシンキナーゼがCaMKII、CDK7/CycH、CK1δ、IKKα、およびIKKβからなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項29】
認識モチーフがセリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフであって、LRRFSLG(SEQ ID NO:46)であり、セリン/トレオニンキナーゼが、Akt1、Akt2、Akt3、Aurora A、CaMKII、CDK2/CycA、CDK3/CycE、CDK7/CycH、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K1β、MAPKAP-K1γ、MSK1、PAK2、PKA、PKG、およびROCKからなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項30】
セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがGLFSTTP(SEQ ID NO:49)であり、セリン/トレオニンキナーゼが、p38γ、p38δ、およびREDKからなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項31】
セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがNRVFSVA(SEQ ID NO:55)であって、セリン/トレオニンキナーゼが、Akt3、AMPK、CaMKII、CDK7/CycH、CHK2、IKKα、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K2、MAPKAP-K3、MAPKAP-K5、PAK2、PKA、PKCβII、REDK、ROCK、ROCK2、およびSGK1からなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項32】
セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがPRAFSVG(SEQ ID NO:56)であって、セリン/トレオニンキナーゼが、Akt1、Akt2、Akt3、CaMKII、CDK7/CycH、IKKβ、MAPKAP-K1α/RSK1、MAPKAP-K1β/RSK2、MAPKAP-K1γ/RSK3、MSK1、PAK2、PIM1、PKA、PKG、REDK、およびSGK1からなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項33】
セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがRRQFSLR(SEQ ID NO:57)であって、セリン/トレオニンキナーゼが、Akt1、Akt2、Akt3、CaMKII、CHK1、CHK2、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K1β、MAPKAP-K1γ、MSK1、p70 S6キナーゼ、PAK2、PIM1、PKA、PKCα、PKCβI、PKCβII、PKCγ、PKCδ、PKCε、PKCζ、PKCη、PKCθ、PKCτ、PKG、ROCK、ROCK2、およびSGK1からなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項34】
セリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフがRTFSSLA(SEQ ID NO:62)であって、セリン/トレオニンキナーゼが、Akt1、CDK2/CycA、CDK6、IKKβ、MAPKAP-K1α、MAPKAP-K1β、MAPKAP-K1γ、p70 S6キナーゼ、PAK2、およびPKAからなる群より選択される、請求項25記載の組成物。
【請求項35】
認識モチーフがセリン/トレオニンキナーゼの認識モチーフであって、APFSPGG(SEQ ID NO:65)であり、セリン/トレオニンキナーゼが、CDK2/CycA、CDK3/CycE、ERK1、ERK2、IKKα、p38β、p38γ、およびp38δからなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項36】
チロシンキナーゼの認識モチーフがEEIYGVI(SEQ ID NO:8)であって、チロシンキナーゼが、Abl1、Abl2、BMX、CSF1R、Csk、EPHB4、Fes/Fps、FGFR1、Fgr、FLT3、Fyn、Hck、IGF1R、IRKβ、IRTK、ITK、Jak3、KDR、c-KIT、Lck、LynA、LynB、c-MET、Src、Src N1、Src N2、SYK、TIE2、TRKa、およびYESからなる群より選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項37】
チロシンキナーゼの認識モチーフがLTGYVAR(SEQ ID NO:11)であ、チロシンキナーゼがCSF1R、FLT3、およびc-KITからなる群より選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項38】
チロシンキナーゼの認識モチーフがEEEYIQI(SEQ ID NO:18)であって、チロシンキナーゼが、EGFR、Zap-70、PDGFR、FGFR4、Abl 1、およびLyn Bからなる群より選択される、請求項24記載の組成物。
【請求項39】
ペプチドが以下からなる群より選択される、請求項1記載の組成物:

【請求項40】
ペプチドが以下からなる群より選択される、請求項3記載の組成物:

【請求項41】
プロテアーゼ切断部位がFS、FT、またはYである、請求項7記載の組成物。
【請求項42】
以下を含む、キナーゼの特徴付けをする方法:
a)タンパク質キナーゼが組成物を燐酸化するために有効な条件で、請求項1、2、4、または26記載の組成物とタンパク質キナーゼとを接触させる段階;および
b)該タンパク質キナーゼの組成物燐酸化能を測定する段階。
【請求項43】
以下を含む、キナーゼの基質を同定する方法:
a)請求項1、2、4、または26記載の組成物をタンパク質キナーゼに接触させる段階;
b)該組成物および該タンパク質キナーゼとプロテアーゼとを接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;および
c)該プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と、タンパク質キナーゼを欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性とを比較する段階であって、該プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性が、該対照プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性と異なれば、該組成物が該タンパク質キナーゼの基質であると同定される段階。
【請求項44】
ATPが、接触段階a)の間中存在する、請求項43記載の方法。
【請求項45】
以下を含む、キナーゼの基質を同定する方法:
a)請求項1、2、4、または26記載の組成物とタンパク質キナーゼおよびATPとを接触させる段階;
b)該組成物、該タンパク質キナーゼ、および該ATPとプロテアーゼとを接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;
c)該プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と、該ATPを欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性とを比較する段階であって、該プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性が、該対照プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性と異なれば、該組成物が該タンパク質キナーゼの基質であると同定される段階。
【請求項46】
請求項1、2、4、または26記載の二つ以上の異なる組成物と、タンパク質キナーゼおよびATPとを接触段階a)の間中独立して接触させて、二つ以上のキナーゼ混合物を形成する方法であって、該キナーゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)の間中独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項45記載の方法。
【請求項47】
二つ以上の異なるタンパク質キナーゼと、組成物およびATPとを接触段階a)の間中独立して接触させて、二つ以上のキナーゼ混合物を形成する方法であって、該キナーゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)の間中独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項45記載の方法。
【請求項48】
比較段階c)が接触段階b)と同時に起こる、請求項45記載の方法。
【請求項49】
比較段階c)が接触段階b)の後に起こる、請求項45記載の方法。
【請求項50】
接触段階b)がプロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害することによって終了する、請求項49記載の方法。
【請求項51】
タンパク質分解活性が、プロテアーゼ混合物に試薬を加えることによって、またはプロテアーゼ混合物を加熱することによって阻害される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
試薬が、アプロチニン、PMSF、TPCK、AEBSF、キモトリプシン阻害剤1、およびキモトリプシン阻害剤2である、請求項51記載の方法。
【請求項53】
以下を含む、キナーゼの活性の調節物質を同定する方法:
a)タンパク質キナーゼ、該タンパク質キナーゼの基質、および試験化合物の混合物を形成する段階;
b)該混合物とプロテアーゼとを接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;ならびに
c)該プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と、該試験化合物の非存在下での該基質、該タンパク質キナーゼ、および該プロテアーゼの対照混合物における測定可能な特性とを比較する段階であって、該プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性と、該対照混合物における該測定可能な特性とが異なれば、該試験化合物が該キナーゼの活性の調節物質であると同定される段階。
【請求項54】
ATPが接触段階a)の間中存在する、請求項53記載の方法。
【請求項55】
以下を含む、キナーゼの活性の調節物質を同定する方法:
a)タンパク質キナーゼ、該タンパク質キナーゼの基質、ATP、および試験化合物を接触させてキナーゼ混合物を形成する段階;
b)該キナーゼ混合物とプロテアーゼとを接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;
c)該プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と、該試験化合物の非存在下での該組成物、該タンパク質キナーゼ、および該プロテアーゼを含む対照混合物における測定可能な特性とと比較する段階であって、該プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性と、該対照混合物における該測定可能な特性とが異なれば、該組成物が該キナーゼの活性の調節物質であると同定される段階。
【請求項56】
二つ以上の異なる試験化合物と、タンパク質キナーゼ、ATP、および基質とを接触段階a)において独立して接触させて、二つ以上のキナーゼ混合物を形成する方法であって、該キナーゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)において独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項55記載の方法。
【請求項57】
二つ以上の異なるタンパク質キナーゼと、ATP、試験化合物、および基質とを、接触段階a)において独立して接触させて、二つ以上のキナーゼ混合物を形成する方法であって、該キナーゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)において独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項55記載の方法。
【請求項58】
比較段階c)が接触段階b)のあいだに起こる、請求項55記載の方法。
【請求項59】
比較段階c)が接触段階b)の後に起こる、請求項55記載の方法。
【請求項60】
接触段階b)がプロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害することによって終了する、請求項59記載の方法。
【請求項61】
タンパク質分解活性が、プロテアーゼ混合物に試薬を加えることによって、またはプロテアーゼ混合物を加熱することによって阻害される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
試薬が、アプロチニン、PMSF、TPCK、AEBSF、キモトリプシン阻害剤1、およびキモトリプシン阻害剤2である、請求項61記載の方法。
【請求項63】
モチーフにおけるYが燐酸化される、請求項1記載の組成物。
【請求項64】
モチーフにおけるS/Tが燐酸化される、請求項2、3、4、または5記載の組成物。
【請求項65】
チロシンキナーゼの認識モチーフがYで燐酸化されて、該燐酸化された認識モチーフがタンパク質ホスファターゼの認識モチーフである、請求項24記載の組成物。
【請求項66】
ペプチドが、以下からなる群より選択されるタンパク質ホスファターゼ認識モチーフを含む、請求項5記載の組成物:

式中、S*は燐酸化セリンを表し、およびT*は燐酸化トレオニンを表す。
【請求項67】
ペプチドがタンパク質ホスファターゼ認識モチーフを含み、ペプチドが以下からなる群より選択される、請求項1記載の組成物:

式中、Y*は燐酸化チロシンを表す。
【請求項68】
ペプチドが以下からなる群より選択される配列を有する、請求項3記載の組成物:

S*は燐酸化セリンを表し、T*は燐酸化トレオニンを表す。
【請求項69】
ホスファターゼ認識モチーフが、Y*が燐酸化チロシンであるEAIY*AAP(SEQ ID NO:24)であって、該ホスファターゼがPTP1B、LAR、およびLCAからなる群より選択される、請求項65記載の組成物。
【請求項70】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるDQDYLS*L(SEQ ID NO:27)であって、該ホスファターゼがPP1α、PP2A、PP2B、およびPP2Cからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項71】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるLRRFS*LG(SEQ ID NO:96)であって、該ホスファターゼがPP1α、PP2A、およびPP2Cからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項72】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるGLFS*TTP(SEQ ID NO:99)であって、該ホスファターゼがPP1α、PP2A、PP2B、およびPP2Cからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項73】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるNRVFS*VA(SEQ ID NO:105)であって、該ホスファターゼがPP1α、PP2A、PP2B、およびPP2Cからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項74】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるPRAFS*VG(SEQ ID NO:106)であって、該ホスファターゼがPP1α、PP2A、およびPP2Bからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項75】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるRRQFS*LR(SEQ ID NO:107)であって、該ホスファターゼがPP1α、PP2A、およびPP2Bからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項76】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるRTFSS*LA(SEQ ID NO:112)であって、該ホスファターゼがPP1α、PP2A、およびPP2Bからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項77】
ホスファターゼ認識モチーフが、S*が燐酸化セリンであるAPFS*PGG(SEQ ID NO:115)であって、該ホスファターゼがPP1αおよびPP2Aからなる群より選択される、請求項66記載の組成物。
【請求項78】
ホスファターゼ認識モチーフが、Y*が燐酸化チロシンであるEEIY*GVI(SEQ ID NO:30)であって、該ホスファターゼがPTP1B、LAR、およびLCAからなる群より選択される、請求項65記載の組成物。
【請求項79】
ホスファターゼ認識モチーフが、Y*が燐酸化チロシンであるLTGY*VAR(SEQ ID NO:33)であって、該ホスファターゼがPTP1B、LAR、およびLCAからなる群より選択される、請求項65記載の組成物。
【請求項80】
以下を含む、ホスファターゼの特徴付けをする方法:
a)請求項63または64記載の組成物と、タンパク質ホスファターゼが組成物を脱燐酸化するために有効な条件で、タンパク質ホスファターゼとを接触させる段階;および
b)該タンパク質ホスファターゼの、該組成物脱燐酸化能を測定する段階。
【請求項81】
以下を含む、ホスファターゼの基質を同定する段階:
a)請求項63または64記載の組成物とタンパク質ホスファターゼとを接触させる段階;
b)該組成物および該タンパク質ホスファターゼとプロテアーゼとを接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;ならびに
c)該プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と、該ホスファターゼを欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性とを比較する段階であって、該プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性と該対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性とが異なれば、該組成物が該ホスファターゼの基質であると同定される段階。
【請求項82】
請求項63または64記載の二つ以上の異なる組成物とホスファターゼとを接触段階a)の間中独立して接触させて、二つ以上のホスファターゼ混合物を形成する方法であって、該ホスファターゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)の間中独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項81記載の方法。
【請求項83】
二つ以上の異なるホスファターゼと組成物とを接触段階a)の間中独立して接触させる方法であって、該ホスファターゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)の間中独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項81記載の方法。
【請求項84】
以下を含む、ホスファターゼの活性の調節物質を同定する方法:
a)タンパク質ホスファターゼ、該タンパク質ホスファターゼの基質、および試験化合物の混合物を接触させてホスファターゼ混合物を形成する段階;
b)該ホスファターゼ混合物とプロテアーゼとを接触させて、プロテアーゼ混合物を形成する段階;ならびに
c)該プロテアーゼ混合物における測定可能な特性と、該試験化合物を欠損する対照プロテアーゼ混合物における測定可能な特性とを比較する段階であって、該プロテアーゼ混合物における該測定可能な特性と、該対照混合物における該測定可能な特性とが異なれば、該試験化合物が該ホスファターゼの活性の調節物質であると同定される段階。
【請求項85】
二つ以上の異なる試験化合物と、ホスファターゼおよび基質とを接触段階a)の間中独立して接触させて、二つ以上のホスファターゼ混合物を形成する方法であって、該ホスファターゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)の間中独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項84記載の方法。
【請求項86】
二つ以上の異なるホスファターゼと、試験化合物および基質とを接触段階a)の間中独立して接触させて、二つ以上のホスファターゼ混合物を形成する方法であって、該ホスファターゼ混合物のそれぞれとプロテアーゼとを接触段階b)の間中独立して接触させて、二つ以上のプロテアーゼ混合物を形成させ、かつ該プロテアーゼ混合物のそれぞれにおける測定可能な特性と、対応する対照混合物における測定可能な特性とを比較する、請求項84記載の方法。
【請求項87】
以下を含む製品:
a)包装材料;および
b)該包装材料に関連した請求項1、2、4、5、26、63、または64記載の組成物。
【請求項88】
タンパク質キナーゼまたはタンパク質ホスファターゼをさらに含む、請求項87記載の物品。
【請求項89】
プロテアーゼをさらに含む、請求項87記載の物品。
【請求項90】
ATPをさらに含む、請求項88記載の商品。
【請求項91】
特異的結合ペアのメンバーがエピトープである、請求項18記載の組成物。
【請求項92】
特異的結合ペアのメンバーがビオチンである、請求項18記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−500710(P2007−500710A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522034(P2006−522034)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/024359
【国際公開番号】WO2005/012329
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(502221282)インヴィトロジェン コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】