説明

キノキサリン誘導体及び電界発光素子

【課題】優れた電子輸送性およびホールブロッキング性を有し、かつ結晶化することなく
成膜できるキノキサリン誘導体を提供することを目的とする。
【解決手段】下記の一般式[C−1]に代表されるキノキサリン誘導体を合成する。


(式中、XおよびYは置換または無置換のアリール基、あるいは置換または無置換の複素
環残基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシル基、置換
または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)また、上記キノキ
サリン誘導体を用いた電界発光素子を含む有機半導体素子を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料であるキノキサリン誘導体、前記キノキサリン誘導体を用い
た有機半導体素子および電界発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機化合物は無機化合物に比べて、材料系が多様であり、適した分子設計により様々な
機能を有する材料を合成できる可能性がある。また、膜等の形成物が柔軟性に富み、さら
には高分子化させることにより加工性にも優れるという特長もある。これらの利点から、
近年、機能性有機材料を用いたフォトニクスやエレクトロニクスに注目が集まっている。
【0003】
例えば、有機半導体材料を機能性有機材料として用いたフォトエレクトロニクスデバイ
スの例として、太陽電池や電界発光素子(有機エレクトロルミネッセント素子ともいう)
が挙げられる。これらは有機半導体材料の電気物性(キャリア輸送性)および光物性(光
吸収あるいは発光)を活かしたデバイスであり、中でも特に、電界発光素子はめざましい
発展を見せている。
【0004】
電界発光素子の基本的なデバイス構造は、1987年にC.W.Tang等によって報
告されている。素子構造は、ホール輸送性の有機化合物と電子輸送性の有機化合物とを積
層させた合計約100nm程度の有機薄膜を、電極で挟んだダイオード素子の一種であり
、素子に電圧を印加すると、発光性の材料(蛍光材料)からなる電子輸送性の化合物から
の発光を得ることができる(例えば、C.W.Tang and S.A.Vansly
ke, ”Organic electroluminescent diodes”
, Applied Physics Letters,Vol.51, No.12,
913−915 (1987) 参照〔文献1〕。)。
【0005】
このように、有機半導体材料を用いた素子、中でも太陽電池や電界発光素子のようにヘ
テロ接合を用いる素子には、ホール輸送性材料と電子輸送性材料との組み合わせが必要不
可欠であると言える。
【0006】
ところが、有機半導体材料は一般に、潜在的にホール輸送性の材料が多い。また、その
キャリア移動度の絶対値を見ても、ホール輸送性材料のホール移動度の方が電子輸送性材
料の電子移動度に比べて数桁大きいのが現状である。したがって、電子輸送性の優れた電
子輸送性材料が望まれている。
【0007】
なお、電子輸送性材料としては、電子輸送性を有することで知られているキノキサリン
誘導体を2量化させることにより、熱物性を向上させたという報告がなされている(例え
ば、特開平6−207169号公報 参照〔文献2〕)。
【0008】
しかしながら、2量化することで分子間の相互作用は小さくなるため、電子輸送性は低
下する。また、エネルギーギャップ等の物性値も本来のキノキサリン誘導体から大きくず
れてしまう。
【0009】
また、キノキサリン骨格に縮合環を導入し、剛直な平面構造とすることで、熱物性値(
ガラス転移点や融点)を向上させたという報告もなされている(例えば、特開平9−13
025号公報 参照〔文献3〕)。
【0010】
しかし、この材料は熱物性値が高いという特徴を有しているものの、膜を形成した際に
アモルファス状態を維持しづらく、結晶化し易いというデメリットをも有している。
【0011】
その他、電子輸送性材料にはホールブロッキング性を併せ持つ材料(この場合を特にホ
ールブロッキング性材料という)が知られている。この場合、電子を輸送するという機能
の他にホールをブロックするという機能も有しているため、様々な応用が可能となる。例
えば電界発光素子において、ホールブロッキング性材料をホール輸送層と電子輸送層との
間に挿入することにより、ホールをホール輸送層内に閉じこめ、ホール輸送層において選
択的にキャリアを再結合させ、発光させたという報告がある(例えば、Yasunori
KIJIMA, Nobutoshi ASAI and Shin−ichiro
TAMURA, ”A Blue Organic Light Emitting D
iode”, Japanese Journal of Applied Physi
cs, Vol. 38, 5274−5277(1999) 参照〔文献4〕)。
【0012】
さらに、ホールブロッキング性の材料を三重項発光素子に用いることで効率の良い発光
が得られたという報告がなされている(例えば、D. F. O’Brien, M.
A. Baldo, M. E. Thompson and S. R. Forre
st, ”Improved energy transfer in electro
phosphorescent devices”, Applied Physics
Letters, vol. 74, No. 3, 442−444 (1999)
参照〔文献5〕)。
【0013】
なお、三重項発光素子は電界発光素子の高効率化に有効な技術であるが、ホールブロッ
キング材料を用いないと効率よく発光できないため、ホールブロッキング材料が重要なキ
ーとなる。
【0014】
このように、電子輸送性材料の中でもホールブロッキング材料の重要性は高いが、電子
輸送性が高く、なおかつホールブロッキング性も良好である材料となると、かなり限定さ
れてしまうのが現状である。その少数例として、例えば文献4、文献5でも用いられてい
るBCP(バソキュプロイン)が挙げられるが、蒸着膜の結晶化が激しく、実際のデバイ
スに適用する場合には信頼性に大きな悪影響を及ぼす。
したがって、電子輸送性材料の中でも、良好なホールブロッキング性を有する上に膜質
が良く、結晶化しにくいホールブロッキング性材料が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そこで、本発明では、優れた電子輸送性およびホールブロッキング性を有し、かつ結晶
化することなく成膜できるキノキサリン誘導体を提供することを目的とする。また、上記
キノキサリン誘導体を用いて有機半導体素子、およびその一種である電界発光素子を作製
することにより、高効率で駆動安定性の高い有機半導体素子、および電界発光素子を提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の構成は、下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)のキノキサリ
ン誘導体を提供するものである。
(1)一般式[C−1]で表されるキノキサリン誘導体。
【化1】

(式中、XおよびYはアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または
無置換の複素環残基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキ
シル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
(2)一般式[C−2]で表されるキノキサリン誘導体。
【化2】

(式中、XおよびYはアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または
無置換の複素環残基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキ
シル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
(3)一般式[C−3]で表されるキノキサリン誘導体。
【化3】

(式中、XおよびYはアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または
無置換の複素環残基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキ
シル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
(4)一般式[C−4]で表されるキノキサリン誘導体。
【化4】

(式中、XおよびYはアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または
無置換の複素環残基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキ
シル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
(5)一般式[C−5]で表されるキノキサリン誘導体。
【化5】

(式中、XおよびYはアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または
無置換の複素環残基を示し、R〜Rは、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキ
シル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)
(6)(1)乃至(5)のいずれか一において、
一般式[C−6]で表される前記複素環残基を含むキノキサリン誘導体。
【化6】

(式中、AはSまたはOを示す。)
【0017】
上述した(1)〜(6)に示す本発明のキノキサリン誘導体は、ジケトンとジアミンを
材料として用いることにより合成することができる。なお、本発明で用いるキノキサリン
誘導体(FuQn)の合成方法は、下記に示す合成方法に限定されるものではない。なお
、合成方法の一例として(5)に示すキノキサリン誘導体の合成スキームを以下[C−7
]に示す。
【化7】

【0018】
具体的には、ジケトンとジアミンをクロロホルム(脱水クロロホルム)、アルコール(
メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール)等の溶媒中で攪拌還流する。途中
、p−トルエンスルホン酸を加えさらに攪拌還流を行う。この反応時間は1〜24時間が
好ましい。
【0019】
なお、上記各構成において、キノキサリン誘導体の各構造は、XおよびYがアルキル基
、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または無置換の複素環残基を有しており
、平面構造とならないことから膜を形成した際におけるアモルファス状態を維持し、結晶
化しにくい構造とすることができる。従って、従来技術で示した文献3で開示されたXお
よびYが環状構造とする場合に比べ、成膜性の面で著しい効果を有している。
【0020】
さらに、XおよびYが上述した構造を有する場合には電荷の偏りが生じるため、電子輸
送性を向上させることができる。なお、電子輸送性を向上させる上では複素環残基を有す
ることがより好ましい。
【0021】
また、本発明の別の構成は、上記構成((1)〜(6))におけるキノキサリン誘導体
を用いた電界発光素子を含む有機半導体素子である。
【0022】
また、本発明の別の構成は、上記構成((1)〜(6))におけるキノキサリン誘導体
が電子輸送性に優れた材料であることから、前記キノキサリン誘導体を電子輸送性材料と
して用いた電界発光素子である。
【0023】
また、本発明の別の構成は、上記構成((1)〜(6))におけるキノキサリン誘導体
とゲスト材料を含む発光層を有することを特徴とする電界発光素子である。本発明のキノ
キサリン誘導体は、エネルギーギャップが広いという特徴を有していることから、ホスト
材料として用い、他のゲスト材料と共に発光層を形成することができる。
【0024】
なお、上記構成において、本発明のキノキサリン誘導体は、ホスト材料の広いエネルギ
ーギャップが要求される燐光性物質をゲスト材料として用いた場合には特に好ましい。
【0025】
一方、本発明のキノキサリン誘導体は、エネルギーギャップが広く、450nm付近に
蛍光波長を示すことから青色発光用のゲスト材料としても用いることができる。なお、本
発明のキノキサリン誘導体は、電子輸送性を有する材料であり、一般に電子輸送性を有す
る材料をゲスト材料として用いることにより膜抵抗を低下できることが知られているため
、駆動電圧を低下させる上で効果的である。
【0026】
また、本発明の別の構成は、上記構成((1)〜(6))におけるキノキサリン誘導体
がホールブロッキング性においても優れていることからホールブロッキング性材料として
用いたことを特徴とする電界発光素子である。
【0027】
また、上記構成において、本発明のキノキサリン誘導体はエネルギーギャップの広い材
料であることから、前記キノキサリン誘導体をホールブロッキング材料としてホールブロ
ッキング層に用いた場合には、広いエネルギーギャップが要求される燐光性物質を含む発
光層を有する構成が特に好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明を実施することにより、優れた電子輸送性およびホールブロッキング性を有し、
かつ結晶化することなく成膜できるキノキサリン誘導体が得られた。また、上記キノキサ
リン誘導体を用いて有機半導体素子、およびその一種である電界発光素子を作製すること
により、高効率で駆動安定性の高い有機半導体素子、および電界発光素子を提供すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の電界発光素子の素子構造を説明する図である。
【図2】本発明の電界発光素子の素子構造を説明する図である。
【図3】本発明の電界発光素子の素子構造を説明する図である。
【図4】本発明の電界発光素子の素子構造を説明する図である。
【図5】電界発光素子の素子特性を示すグラフである。
【図6】電界発光素子の素子特性を示すグラフである。
【図7】電界発光素子の素子特性を示すグラフである。
【図8】電界発光素子の素子特性を示すグラフである。
【図9】本発明のキノキサリン誘導体のIRスペクトルを示すグラフである。
【図10】図10Aと図10Bは、本発明のキノキサリン誘導体およびBCP薄膜の表面写真である。
【図11】本発明のキノキサリン誘導体のH−NMRの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明における電界発光素子の素子構成は、基本的には、一対の電極(陽極及び陰極)
間に上述したキノキサリン誘導体((1)〜(6)に示す)を含む電界発光層(正孔注入
層、正孔輸送層、発光層、ブロッキング層、電子輸送層、電子注入層)を挟持した構成で
あり、例えば、陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔
輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送
層/電子注入層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ホールブロッキング層
/電子輸送層/陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ホールブロッキング層/
電子輸送層/電子注入層/陰極等の構成を有する電界発光素子において、電子輸送層、ブ
ロッキング層、または発光層に前記キノキサリン誘導体を用いることができる。
【0031】
また、本発明の電界発光素子は基板に支持されていることが好ましく、該基板について
は特に制限はなく、従来の電界発光素子に用いられているものであれば良く、例えば、ガ
ラス、石英、透明プラスチックなどからなるものを用いることができる。
【0032】
また、本発明の電界発光素子の陽極材料としては、仕事関数の大きい(仕事関数4.0
eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好
ましい。なお、陽極材料の具体例としては、ITO(indium tin oxide
)、酸化インジウムに2〜20[%]の酸化亜鉛(ZnO)を混合したIZO(indi
um zinc oxide)の他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タ
ングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co
)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(TiN)等を用いるこ
とができる。
【0033】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さい(仕事関数3.8eV以下)金属、合金、
電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。なお、陰極材料
の具体例としては、元素周期律の1族または2族に属する元素、すなわちLiやCs等の
アルカリ金属、およびMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金
(Mg:Ag、Al:Li)や化合物(LiF、CsF、CaF)の他、希土類金属を
含む遷移金属を用いて形成することができるが、Al、Ag、ITO等の金属(合金を含
む)との積層により形成することもできる。
【0034】
なお、上述した陽極材料及び陰極材料は、蒸着法、スパッタリング法等により薄膜を形
成することにより、それぞれ陽極及び陰極を形成する。膜厚は、10〜500nmとする
のが好ましい。
【0035】
また、本発明の電界発光素子において、電界発光層におけるキャリアの再結合により生
じる光は、陽極または陰極の一方、または両方から外部に出射される構成となる。すなわ
ち、陽極から光を出射させる場合には、陽極を透光性の材料で形成することとし、陰極側
から光を出射させる場合には、陰極を透光性の材料で形成することとする。
【0036】
また、電界発光層には公知の材料を用いることができ、低分子系材料および高分子系材
料のいずれを用いることもできる。なお、発光層を形成する材料には、有機化合物材料の
みから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含めるものとする。
【0037】
なお、電界発光層は、正孔注入性材料からなる正孔注入層、正孔輸送性材料からなる正
孔輸送層、発光性材料からなる発光層、ブロッキング性材料からなるブロッキング層、電
子輸送性材料からなる電子輸送層、電子注入性材料からなる電子注入層などを組み合わせ
て積層することにより形成される。
【0038】
本発明において、キノキサリン誘導体を電子輸送層に用いる場合には、電界発光層は、
少なくとも陽極側に発光層、陰極側にキノキサリン誘導体を含む電子輸送層とを積層して
形成される。なお、その他の正孔注入層、正孔輸送層は、必要に応じて組み合わせて用い
ることもできる。この場合に用いる具体的な材料を以下に示す。
【0039】
正孔注入性材料としては、有機化合物であればポルフィリン系の化合物が有効であり、
フタロシアニン(以下、H−Pcと示す)、銅フタロシアニン(以下、Cu−Pcと示
す)等を用いることができる。また、導電性高分子化合物に化学ドーピングを施した材料
もあり、ポリスチレンスルホン酸(以下、PSSと示す)をドープしたポリエチレンジオ
キシチオフェン(以下、PEDOTと示す)や、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール
(以下、PVKと示す)などを用いることもできる。
【0040】
正孔輸送性材料としては、芳香族アミン系(すなわち、ベンゼン環−窒素の結合を有す
るもの)の化合物が好適である。広く用いられている材料として、例えば、先に述べたT
PDの他、その誘導体である4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−ア
ミノ]−ビフェニル(以下、α−NPDと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N,N
−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’,
4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニル
アミン(以下、MTDATAと示す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げ
られる。
【0041】
発光性材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(以下、
Alqと示す)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(以下、Al
mqと示す)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(以下
、BeBqと示す)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−(4−ヒドロキシ−ビ
フェニリル)−アルミニウム(以下、BAlqと示す)、ビス[2−(2−ヒドロキシフ
ェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(以下、Zn(BOX)と示す)、ビス[2−(
2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(以下、Zn(BTZ)と示す)
などの金属錯体の他、各種蛍光色素が有効である。
【0042】
そして、キノキサリン誘導体を含む電子輸送層には、先に示したキノキサリン誘導体(
(1)〜(6))のいずれかを用いることとする。
【0043】
また、本発明において、キノキサリン誘導体を発光層におけるホスト材料として用いる
場合には、発光層は、少なくともホスト材料であるキノキサリン誘導体と、ゲスト材料と
を含む発光層により形成される。なお、その他の正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、
およびブロッキング層は必要に応じて組み合わせて用いることもできる。この場合におい
て、正孔注入層、正孔輸送層は、キノキサリン誘導体を電子輸送層に用いた場合と同様の
材料を用いることができる。
【0044】
なお、電子輸送性材料としては、先に述べたAlq、Almq、BeBqなどの
キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体や、混合配位子錯体であるBA
lqなどが好適である。また、Zn(BOX)、Zn(BTZ)などのオキサゾール
系、チアゾール系配位子を有する金属錯体もある。さらに、金属錯体以外にも、2−(4
−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾ
ール(以下、PBDと示す)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−
1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(以下、OXD−7と示す)などの
オキサジアゾール誘導体、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−
(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(以下、TAZと示す)、3−(4−
tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)
−1,2,4−トリアゾール(以下、p−EtTAZと示す)などのトリアゾール誘導体
、バソフェナントロリン(以下、BPhenと示す)、バソキュプロイン(以下、BCP
と示す)などのフェナントロリン誘導体を用いることができる。
【0045】
また、ブロッキング性材料としては、上で述べたBAlq、OXD−7、TAZ、p−
EtTAZ、BPhen、BCP等を用いることができる。
【0046】
なお、この場合における発光層はホスト材料であるキノキサリン誘導体((1)〜(6
))とゲスト材料とを組み合わせることにより形成される。
【0047】
発光層に用いるゲスト材料としては、キナクリドン、ジエチルキナクリドン(DEQ)
、ルブレン、ペリレン、DPT、Co−6、PMDFB、BTX、ABTX、DCM、D
CJTの他、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(以下、Ir(ppy)と示
す)、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポル
フィリン−白金(以下、PtOEPと示す)等の三重項発光材料(燐光材料)を用いるこ
とができる。
【0048】
これに対して本発明では、キノキサリン誘導体を電界発光層におけるゲスト材料として
用いることもでき、この場合には、電界発光層は、少なくともゲスト材料であるキノキサ
リン誘導体と、ホスト材料とを含む電界発光層により形成される。なお、その他の正孔注
入層、正孔輸送層、電子輸送層、およびブロッキング層は必要に応じて組み合わせて用い
ることもできる。これらの材料は上述した材料と同様の材料を用いることができる。
【0049】
さらに、本発明において、キノキサリン誘導体をブロッキング層に用いる場合には、電
界発光層は、少なくとも陽極側に発光層、陰極側にキノキサリン誘導体を含むブロッキン
グ層とを積層して形成される。なお、その他の正孔注入層、正孔輸送層、および電子輸送
層は必要に応じて組み合わせて用いることもできる。この場合において、正孔注入層、正
孔輸送層は、キノキサリン誘導体を電子輸送層に用いた場合と同様の材料を用いることが
でき、また電子輸送層は、キノキサリン誘導体を発光層のホスト材料として用いた場合と
同様の材料を用いることができる。
【0050】
なお、ブロッキング層にキノキサリン誘導体を用いる場合には、発光性材料として上述
した材料の他に三重項発光材料を用いることがより好ましく、白金または、イリジウムを
中心金属とする錯体を用いることができる。三重項発光材料としては、トリス(2−フェ
ニルピリジン)イリジウム(以下、Ir(ppy)と示す)、2,3,7,8,12,
13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン−白金(以下、PtO
EPと示す)などが挙げられる。
【0051】
以下に、本発明の合成例、実施例および比較例を用いて本発明について説明するが、本
発明は、これらの例によって限定されるものではない。
【0052】
(合成例1)
[C−7]で示した合成例について詳細に説明する。
【化8】

(2,3−Di−furan−2−yl−dibenzo[f,h]quinoxali
neの合成)
【0053】
ジケトンとして化学反応式[C−7]中に示す1,2−Di−fran−2−yl−e
thane−1,2−dione1.90g(10mmol)、ジアミンとしてPhen
anthrene−9,10−diamine2.14g(10mol)をそれぞれ入れ
たナスフラスコに脱水クロロホルム(300ml)を加え、攪拌還流した。加熱開始から
30分後スパチュラー1杯のp−トルエンスルホン酸を加え24時間攪拌還流をおこなっ
た。反応終了後 HClaq、NaHCOaq、HOで抽出した。得られた溶液にM
gSO(無水)を加え終夜攪拌をおこなった。エバポレーターで乾固させたのち、常温
減圧乾燥をおこなった。精製はカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)でRf
=0.80のところを回収した。カラム精製し黄緑色粉末を昇華精製したところ淡黄色の
針状結晶を得た。この淡黄色の針状結晶の示差走査熱量分析(DSC)の結果、融点は2
02℃であった。また、図9に示す赤外線吸収スペクトル測定の結果、原料の−NH
来の吸収3500〜3300cm−1とα−ジケトン由来の1680cm−1付近のピー
クが消失していることから反応が進行したものと考えられる。
【0054】
なお、得られた化合物を単離し、H−NMRによる分析を行った。測定結果を図11
に示す。(基準:TMS、溶媒:クロロホルム、測定波長:400MHz)σ(ppm)
=6.61(1H°2−フラン)、6.94(1H 2−フラン)、7.63(1H 2
フラン)、7.74−7.79(2H フェナントレン)、8.61−8.64(1H
フェナントレン)、9.24−9.28(1H フェナントレン)。この結果、化学式[
化7]中に示す構造を有する2,3−Di−furan−2−yl−dibenzo[f
,h]quinoxalineであることが確認された。
【0055】
(合成例2)
化学式[C−8]に示すジケトンおよび化学式[C−9]に示すジアミンを用いた以外
は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−10
]に示す。
【化9】

【化10】

【化11】

【0056】
(合成例3)
化学式[C−11]に示すジケトンおよび化学式[C−12]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
13]に示す。
【化12】

【化13】

【化14】

【0057】
(合成例4)
化学式[C−14]に示すジケトンおよび化学式[C−15]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
16]に示す。
【化15】

【化16】

【化17】

【0058】
(合成例5)
化学式[C−17]に示すジケトンおよび化学式[C−9]に示すジアミンを用いた以
外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−1
8]に示す。
【化18】

【化19】

【化20】

【0059】
(合成例6)
化学式[C−19]に示すジケトンおよび化学式[C−12]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
20]に示す。
【化21】

【化22】

【化23】

【0060】
(合成例7)
化学式[C−21]に示すジケトンおよび化学式[C−15]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
22]に示す。
【化24】

【化25】

【化26】

【0061】
(合成例8)
化学式[C−23]に示すジケトンおよび化学式[C−9]に示すジアミンを用いた以
外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−2
4]に示す。
【化27】

【化28】

【化29】

【0062】
(合成例9)
化学式[C−25]に示すジケトンおよび化学式[C−12]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
26]に示す。
【化30】

【化31】

【化32】

【0063】
(合成例10)
化学式[C−27]に示すジケトンおよび化学式[C−15]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
28]に示す。
【化33】

【化34】

【化35】

【0064】
(合成例11)
化学式[C−29]に示すジケトンおよび化学式[C−9]に示すジアミンを用いた以
外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−3
0]に示す。
【化36】

【化37】

【化38】

【0065】
(合成例12)
化学式[C−31]に示すジケトンおよび化学式[C−12]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
32]に示す。
【化39】

【化40】

【化41】

【0066】
(合成例13)
化学式[C−33]に示すジケトンおよび化学式[C−15]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
34]に示す。
【化42】

【化43】

【化44】

【0067】
(合成例14)
化学式[C−35]に示すジケトンおよび化学式[C−9]に示すジアミンを用いた以
外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−3
6]に示す。
【化45】

【化46】

【化47】

【0068】
(合成例15)
化学式[C−37]に示すジケトンおよび化学式[C−12]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
38]に示す。
【化48】

【化49】

【化50】

【0069】
(合成例16)
化学式[C−39]に示すジケトンおよび化学式[C−40]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
41]に示す。
【化51】

【化52】

【化53】

【0070】
(合成例17)
化学式[C−42]に示すジケトンおよび化学式[C−40]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
43]に示す。
【化54】

【化55】

【化56】

【0071】
(合成例18)
化学式[C−44]に示すジケトンおよび化学式[C−40]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
45]に示す。
【化57】

【化58】

【化59】

【0072】
(合成例19)
化学式[C−46]に示すジケトンおよび化学式[C−40]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
47]に示す。
【化60】

【化61】

【化62】

【0073】
(合成例20)
化学式[C−48]に示すジケトンおよび化学式[C−12]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
49]に示す。
【化63】

【化64】

【化65】

【0074】
(合成例21)
化学式[C−50]に示すジケトンおよび化学式[C−15]に示すジアミンを用いた
以外は合成例1と同様にして反応を行った。得られたキノキサリン誘導体を化学式[C−
51]に示す。
【化66】

【化67】

【化68】

【実施例1】
【0075】
本実施例では、本発明のキノキサリン誘導体を電界発光層の一部に用いて作製される電
界発光素子について説明する。なお、本実施例では、基板上に形成される電界発光素子の
素子構成について図1を用いて説明する。
【0076】
まず、基板100上に電界発光素子の第1の電極101が形成される。なお、本実施例
では、第1の電極101は陽極として機能する。材料として透明導電膜であるITO(i
ndium tin oxide)を用い、スパッタリング法により110nmの膜厚で
形成する。なお、ここで用いるスパッタリング法としては、2極スパッタ法、イオンビー
ムスパッタ法、または対向ターゲットスパッタ法等がある。
【0077】
次に、第1の電極(陽極)101上に電界発光層102が形成される。なお、本実施例
では、電界発光層102が正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸
送層114の積層構造を有し、電子輸送層114に本発明のキノキサリン誘導体を用いる
場合について説明する。
【0078】
第1の電極101が形成された基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに第1の電極
101が形成された面を下方にして固定し、真空蒸着装置の内部に備えられた蒸発源に銅
フタロシアニン(以下、Cu−Pcと示す)を入れ、抵抗加熱法を用いた蒸着法により2
0nmの膜厚で正孔注入層111を形成する。
【0079】
次に正孔輸送性に優れた材料により正孔輸送層112を形成する。ここでは4,4’−
ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下、α−NPD
と示す)を同様の方法により、30nmの膜厚で形成する。
【0080】
次に発光層113が形成される。なお、発光層113において正孔と電子が再結合し、
発光を生じる。ここでは、Alqを同様の方法により50nmの膜厚で形成する。
【0081】
そして、電子輸送層114が形成される。なお、電子輸送層114は、本発明のキノキ
サリン誘導体により形成される。キノキサリン誘導体としては、合成例1〜21に示す材
料を用いることができるが、本実施例では、合成例1に示す2,3−ジフラン−2−イル
−ジベンゾ[f,h]キノキサリンを同様の方法により20nmの膜厚で形成する。
【0082】
上述したように積層構造を有する電界発光層102を形成した後、陰極として機能する
第2の電極103をスパッタリング法または蒸着法により形成する。なお、本実施例では
、電界発光層102上にアルミニウムリチウム合金(Al:Li)(100nm)をスパ
ッタリング法により形成することにより第2の電極103を得る。
【0083】
以上により、本発明のキノキサリン誘導体を用いた電界発光素子が形成される。なお、
本実施例では、基板上に形成される第1の電極が陽極材料で形成され、陽極として機能す
る場合について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、第1の電極を陰極材
料で形成し、陰極として機能させることもできる。ただし、この場合(陽極と陰極とを入
れ替えた場合)には、電界発光層の積層順が本実施例で示した場合と逆になる。さらに、
本実施例では、第1の電極(陽極)は透明電極であり、第1の電極(陽極)側から電界発
光層で生じた光を出射させる構成としているが、本発明はこれに限定されることはなく、
透過率を確保するために適した材料を選択することにより第2の電極(陰極)側から光を
出射させる構成とすることもできる。
【0084】
なお、本実施例に示すように本発明のキノキサリン誘導体を電子輸送層に用いることに
より、電子輸送性、およびブロッキング性に優れた電子輸送層を形成することができるの
で駆動電圧が低く、発光効率に優れた電界発光素子が得られる。
【実施例2】
【0085】
本実施例では、本発明のキノキサリン誘導体を電界発光層の一部に用いて電界発光素子
を作製する場合であって、実施例1に示した場合と異なる構成について説明する。具体的
には、本発明のキノキサリン誘導体を電界発光層の発光層に用いる場合について図2を用
いて説明する。
【0086】
実施例1と同様に第1の電極201が形成され、第1の電極201上に電界発光層20
2が蒸着法により形成される。
【0087】
まず、第1の電極201に接して正孔注入層211が形成される。正孔注入層211を
形成する材料としては、公知の正孔注入性材料を用いることができるが、本実施例では、
Cu−Pcにより20nmの膜厚で蒸着法により形成する。
【0088】
次に、正孔輸送層212が形成される。正孔輸送層212を形成する材料としては、公
知の正孔輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDにより30nm
の膜厚で蒸着法により形成する。
【0089】
次に、発光層213が形成される。本実施例では、発光層213を形成する材料のうち
ホスト材料に本発明のキノキサリン誘導体(合成例1〜21に示した材料を含む)を用い
、ゲスト材料としては公知の発光性材料を用いることができるので、本実施例では、キノ
キサリン誘導体のうち合成例1に示す2,3−ジフラン−2−イル−ジベンゾ[f,h]
キノキサリンと、ペリレンとを共蒸着法により30nmの膜厚で形成する。
【0090】
次に、電子輸送層214が形成される。電子輸送層214を形成する材料としては、公
知の電子輸送性材料を用いることができ、具体的にはBAlq、PBD、OXD−7、B
CP等を用いることができるが、本実施例では、発光層に用いたキノキサリン誘導体、具
体的には2,3−ジフラン−2−イル−ジベンゾ[f,h]キノキサリンを用い、20n
mの膜厚で蒸着法により形成する。
【0091】
そして、電界発光層202が積層形成されたところに第2の電極203を実施例1と同
様にして形成することにより、電界発光素子が得られる。
【0092】
なお、本実施例に示すように本発明のキノキサリン誘導体を発光層のホスト材料として
用いることで、キノキサリン誘導体が有するエネルギーギャップの広さを有効に活かすこ
とができるため、発光効率を高める上で非常に効果的である。
【実施例3】
【0093】
本実施例では、発光層に本発明のキノキサリン誘導体を用いる場合であるが、実施例2
とは構成が異なる場合について説明する。なお、この構成においては、発光層と電子輸送
層以外の構成については、実施例2と同様であるので説明は省略する。
【0094】
図3において、第1の電極301と第2の電極303に挟まれて形成される電界発光層
302のうち、本実施例では、発光層313のゲスト材料として本発明のキノキサリン誘
導体を用いる。なお、ここで用いるキノキサリン誘導体としては、合成例1〜合成例21
で説明した材料を用いることができる。
【0095】
そして、ホスト材料であるCBPと共蒸着することにより発光層313が形成される。
ここで用いるホスト材料としては公知の材料を用いることができる。具体的には、TPD
、α−NPD、TCTA、PBD、OXD−7、BCP等を用いることができる。
【0096】
なお、本発明のキノキサリン誘導体は、エネルギーギャップが広く、450nm付近に
蛍光波長を示すことから青色発光用のゲスト材料としても用いることができる。また、本
発明のキノキサリン誘導体は、電子輸送性を有する材料であり、一般にキャリア輸送性を
有する材料をゲスト材料として用いることにより膜抵抗を低下させることが知られている
(「第45回 日経マイクロデバイス・セミナー 有機EL最前線」日経BP社、日経マ
イクロデバイス、p.31〜312 参照〔文献6〕)。すなわち、本実施例に示す
ように本発明のキノキサリン誘導体を発光層のゲスト材料として用いることにより駆動電
圧を低下させることができる。
【実施例4】
【0097】
本実施例では、本発明のキノキサリン誘導体を電界発光層の一部に用いて電界発光素子
を作製する場合であって、実施例1に示した場合と異なる構成について説明する。具体的
には、本発明のキノキサリン誘導体を電界発光層のホールブロッキング層に用いる場合に
ついて図4を用いて説明する。
【0098】
実施例1と同様に第1の電極401が形成され、第1の電極401上に電界発光層40
2が蒸着法により形成される。
【0099】
まず、第1の電極401に接して正孔注入層411が形成される。正孔注入層411を
形成する材料としては、公知の正孔注入性材料を用いることができるが、本実施例では、
Cu−Pcにより20nmの膜厚で蒸着法により形成する。
【0100】
次に、発光層412が形成される。発光層412を形成する材料としては、公知の発光
材料を用いることができるが、本実施例では、α−NPDにより30nmの膜厚で蒸着法
により形成する。
【0101】
次に、ホールブロッキング層413が形成される。なお、ホールブロッキング層413
は、本発明のキノキサリン誘導体により形成される。キノキサリン誘導体としては、合成
例1〜21に示す材料を用いることができるが、本実施例では、合成例1に示す2,3−
ジフラン−2−イル−ジベンゾ[f,h]キノキサリンを同様の方法により20nmの膜
厚で形成する。
【0102】
次に、電子輸送層414が形成される。電子輸送層414を形成する材料としては、公
知の電子輸送性材料を用いることができるが、本実施例では、Alqにより30nmの
膜厚で蒸着法により形成する。
【0103】
そして、電界発光層402が積層形成されたところに第2の電極403を実施例1と同
様にして形成することにより、電界発光素子が得られる。
【0104】
なお、本実施例に示すように本発明のキノキサリン誘導体をホールブロッキング層41
3に用いることによりホールを発光層412に閉じ込めることができるため、発光効率を
高めることができる。
【実施例5】
【0105】
本実施例では、実施例1で示した素子構成を有する電界発光素子(ITO/Cu−Pc
(20nm)/α−NPD(30nm)/Alq(30nm)/FuQn(20nm)
/CaF(1nm)/Alの素子特性について測定した。なお、本実施例におけるキノキ
サリン誘導体(FuQn)としては、合成例1に示す2,3−ジフラン−2−イル−ジベ
ンゾ[f,h]キノキサリンを用いた。その結果を図5〜8のプロット3に示す。図5に
おける輝度−電流密度特性においては、プロット3に示すように電流密度が100mA/
cmの場合において、4000cd/m程度の輝度が得られた。
【0106】
また、図6に示す輝度−電圧特性においては、プロット3に示すように8Vの電圧を印
加したところ1000cd/m程度の輝度が得られた。
【0107】
また、図7に示す電流効率−輝度特性においては、プロット3に示すように100cd
/mの輝度が得られた場合における電流効率は2.8cd/A程度であった。
【0108】
さらに、図8に示す電流−電圧特性は、プロット3に示すように7Vの電圧を印加した
ところ0.4mA程度の電流が流れた。
【0109】
(比較例1)
これに対して、実施例5で測定した素子構造とは異なり、キノキサリン誘導体からなる
電子輸送層を有しない構造の電界発光素子(ITO/Cu−Pc(20nm)/α−NP
D(30nm)/Alq(30nm)/CaF(1nm)/Alの素子特性について測
定した。その結果を図5〜8のプロット1に示す。図5における輝度−電流特性において
は、プロット1に示すように電流密度が100mA/cmの場合において、4000c
d/m程度の輝度が得られた。この結果は、実施例5における素子構造の場合と大差な
かった。
【0110】
また、図6に示す輝度−電圧特性においては、プロット1に示すように8Vの電圧を印
加したところ6000cd/m程度の輝度が得られた。なお、この場合において、印加
電圧に対する輝度は大きくなっているが、電子輸送層を有しない構造であるため電界発光
層全体が薄くなることに大きく起因している。そのため、この構造における電界発光素子
が実施例2に示す構造よりも素子特性が良いと解するべきではない。
【0111】
また、図7に示す電流効率−輝度特性においては、プロット1に示すように100cd
/mの輝度が得られた場合における電流効率は2.2cd/A程度であった。すなわち
、プロット3に示す実施例2の素子構造に比べて電流効率が悪いという結果が得られた。
この結果は、実施例2の素子構造において、電子輸送層を形成するキノキサリン誘導体が
ホールブロッキング性に優れており、ホールを発光層に閉じ込めることにより効率よく発
光が得られることを示している。
【0112】
さらに、図8に示す電流−電圧特性は、プロット1に示すように7Vの電圧を印加した
ところ1mA程度の電流が流れた。これも、流れる電流量は電界発光層の膜厚に影響を受
けることから図6における結果の解釈と同様に、この構造における電界発光素子が実施例
2に示す構造よりも素子特性が良いと解するべきではない。
【0113】
(比較例2)
さらに、実施例5で測定した素子構造において、電子輸送層に本発明のキノキサリン誘
導体ではなく従来からブロッキング性の材料として用いられているバソキュプロイン(以
下、BCPと示す)を用いて作製した電界発光素子(ITO/Cu−Pc(20nm)/
α−NPD(30nm)/Alq(30nm)/BCP(20nm)/CaF(1nm
)/Alの素子特性について測定した。その結果を図5〜8のプロット2に示す。図5に
おける輝度−電流特性においては、プロット2に示すように電流密度が100mA/cm
の場合において、4000cd/m程度の輝度が得られた。この結果は、実施例5に
おける素子構造の場合と大差なかった。
【0114】
また、図6に示す輝度−電圧特性においては、プロット2に示すように8Vの電圧を印
加したところ200cd/m程度の輝度しか得られなかった。すなわち、バソキュプロ
インを用いた場合における素子特性は、本発明のキノキサリン誘導体を用いて形成された
電子輸送層を有する電界発光素子に比べ、電子注入輸送性において劣っているということ
ができる。
【0115】
また、図7に示す電流効率−輝度特性においては、プロット2に示すように100cd
/mの輝度が得られた場合における電流効率は3.1cd/A程度であったが、全体と
しては、本発明のキノキサリン誘導体を用いて形成された電子輸送層を有する電界発光素
子と同様の特性を示した。すなわち、ブロッキング性に関しては本発明のキノキサリン誘
導体は従来のBCPと同程度の特性を維持できることが示された。
【0116】
さらに、図8に示す電流−電圧特性は、プロット2に示すように7Vの電圧を印加した
ところ0.08mA程度の電流が流れた。同じ膜厚で比較するとキノキサリンを含む電界
発光素子の法がBCPを用いた場合に比べ電流−電圧特性に優れていることからキノキサ
リン誘導体を用いることにより電界発光素子の電子注入輸送性が高められたということが
できる。
【実施例6】
【0117】
本実施例では、本発明のキノキサリン誘導体からなる薄膜の膜表面の様子について説明
する。図10Aには、基板上にキノキサリン誘導体の薄膜が50nm程度成膜され、封止
基板で封止されたサンプルを示す。なお、この場合におけるキノキサリン誘導体の薄膜は
、表面が結晶化することなく安定な膜であった。
【0118】
(比較例3)
キノキサリン誘導体の薄膜の代わりにBCPの薄膜を成膜したこと以外は実施例6と同
様にサンプルを作製した。その結果、図10Bに示すように時間の経過に伴いBCPの薄
膜は結晶化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表されるキノキサリン誘導体。
【化1】

(式中、XおよびYはアルキル基、置換または無置換のアリール基、あるいは置換または無置換の複素環残基を示し、R1〜R6は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換の複素環残基を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−168396(P2010−168396A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95736(P2010−95736)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【分割の表示】特願2004−551194(P2004−551194)の分割
【原出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】