説明

キムチ風味食品およびその製造方法

【課題】健康食品であるキムチを、簡単で日常的に摂取し易く、かつ新鮮な感覚を有する食品の形態で提供する。
【解決手段】少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有するキムチ風味食品。キムチ風味食品は、代表的には、キムチ風味健康食品、キムチ風味飲料、キムチ風味サプリメントである。
少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材を含む原料の細片物または抽出物と甘味料を、水および/またはアルコールに懸濁または溶解させ、液状の形態に調製するか、または、上記の細片物または抽出物と甘味料を混合し、固形状の形態に調製することを特徴とする、キムチ風味飲料またはサプリメントの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい味感および食感を有するキムチ風味食品に関し、さらに具体的には、健康に良いとされるキムチを日常的に摂取しやすいように、少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有する健康食品あるいは飲料、サプリメントなどの形態としたキムチ風味食品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キムチは16世紀頃から朝鮮半島で発達した漬け物で、20世紀末には日本国内でも大変なブームとなり、現在、国内の漬け物消費の上位を占めている食品である。一般的に、キムチは唐辛子、ニンニク、果物、生姜、魚介類などを野菜にまぶして乳酸発酵させてできあがる発酵食品を言うものであり、その中に含まれる主に唐辛子、ニンニクなどの成分により、体熱産生や、代謝促進、便通改善などの生理効果があると言われている。
【0003】
特開2003−245062号公報(特許文献1)には、キムチ等の発酵食物に、これら漬け物類の発酵環境下で継代培養して得られた耐性乳酸菌および耐性酵母菌を保存剤として添加した健康食品が開示されている。特開2003−18955号公報(特許文献2)には、グルタチオンを産生する酵母の変異酵母菌をキムチ等の発酵食物に添加した健康食品が開示されている。特表2003−533194号公報(特許文献3)には、通常の白キムチ材料にオプンシアフィカスミディアをさらに配合して製造した健康食品としての白キムチが開示されている。
【特許文献1】特開2003−245062号公報
【特許文献2】特開2003−18955号公報
【特許文献3】特表2003−533194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、キムチの薬味素材は野菜の副材料であって単独で食品として摂取するものではなかった。キムチは、発酵による通常の製造方法では塩分、酸味などの味、まぶした野菜の量により一度にたくさんの量を摂取することができない。本発明は、健康食品であるキムチを、簡単にかつ日常的に摂取し易い形態で、しかも新鮮な味感および食感を有するキムチ風味食品として提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者等は、キムチの風味に必要な素材の組み合わせおよび処理条件等の検討を行った。その結果、唐辛子、ニンニクおよび果物はそのうちのいずれが欠けてもキムチ風味とはいえず、また味感上の摂取し易さ等の点から甘味料の添加が重要であり、これら4つの素材は必須要素であることを見出し、すなわち、上記の素材の組み合わせを主たる最低限の原料とし、これらの原料を適当な比率で調整・配合して飲料、サプリメント、健康食品等の食品の形態にすることにより上記目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の構成を要旨とするキムチ風味食品およびその製造方法に関するものである。
(1)少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とする、キムチ風味健康食品。
(2)少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とする、キムチ風味飲料。
(3)少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とする、キムチ風味サプリメント。
(4)少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材を含む原料の細片物または抽出物と甘味料を、水および/またはアルコールに懸濁または溶解させ、液状の形態に調製することを特徴とする、キムチ風味飲料の製造方法。
(5)少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材を含む原料の細片物または抽出物と甘味料を混合し、固形状の形態に調製することを特徴とする、キムチ風味サプリメントの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
従来、キムチの薬味素材は野菜の副材料であって単独で食品として摂取するものではなかったが、本発明は、少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有させたキムチ風味食品(キムチ風味健康食品、キムチ風味飲料、キムチ風味サプリメント等)とすることにより、副材料である薬味素材と甘味料のみで新鮮な味感および食感を有する摂取し易いキムチ風味の食品を提供することができる。上述のように、キムチの中に含まれる主に唐辛子、ニンニクなどの成分により、体熱産生や、代謝促進、便通改善などの生理効果の他、脳機能の改善(単純計算能力アップ、気分改善)、覚醒作用があると言われているが、通常の製造方法では塩分、酸味などの味、まぶした野菜の量により一度にたくさんの量を摂取することができず、有効成分を日常的かつ効率的に摂取し易い形態となってはいない。本発明によれば、従来のように嵩のある野菜と一緒に多量に摂取する必要なく、キムチ風味の健康食品として有効成分を効率的に摂取することができる。さらに、本発明によるキムチ風味食品は、新鮮なキムチ風味の感覚を有しながら塩味および酸味の少ないさっぱりとした淡泊な味感を有し、簡単にかつ日常的に摂取し易い健康食品として有用である。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明によるキムチ風味食品は、少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とする、キムチ素材を主原料とするもしくはキムチ素材から本質的になる食品であり、別の観点から一つの態様においてキムチ風味健康食品でもある。また、その具体的形態の典型的な例は、キムチ風味飲料およびキムチ風味サプリメントである。本発明においては、基本的に、キムチ用薬味素材としての唐辛子、ニンニクおよび果物に加えて甘味料を含んでいればよい。果物としては、例えばレモン、みかん、りんご、なし、スイカ等を例示することができるが、甘みのバランスの点で特にみかん等の柑橘類が好ましい。
【0009】
本発明において、「少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材・・・甘味料」とは、上記の材料が本発明に必要な基本的材料(主材料)であるが、一般に用いられる他のキムチ用薬味素材を適宜含んでいてもよいということを意味する。従って、本発明によるキムチ風味食品の態様において、上記のような主材料の他に、所望により他の薬味素材、例えば、しょうが、長ネギ等を副材料として適量添加することができる。上記の基本的なキムチ用薬味素材と共に配合してもよい副材料(生または乾燥物)としては、上記したような他の薬味素材の他に、野菜(白菜、大根、ニラ、きゅうり等)、魚介類(イカ、カキ、鰹、イワシ、昆布、塩辛類等)、木の実、野菜エキス、魚介エキス等を例示することができる。主材料の一つである甘味料としては、砂糖、乳糖、果糖、水飴等の天然物由来甘味料、あるいはアスパルテーム、スクラロース等の合成甘味料が使用できるが、砂糖が代表的である。本発明のキムチ風味食品は、典型的には材料を発酵させずに所望の食品形態に形成したものであるが、必要に応じて乳酸菌の存在下で乳酸発酵させたものであってもよい。また、通常、具体的な食品の形態(飲料、サプリメント等)により後述するような補助剤あるいは更に添加剤等が必要となる。本発明において、基本的材料としての唐辛子、ニンニク、果物および甘味料の相互の配合比率あるいは含有量は、特に味、香り等に関して前記したような効果([発明の効果]の項)を奏するように適宜設定することができる。上記の唐辛子、ニンニク、果物、甘味料(砂糖として)の配合比は、例えば、サプリメント(錠剤)では乾燥重量比で通常1:1.5〜3:1.5〜3:4〜8程度であり、飲料では乾燥重量比で通常1:2〜10:2〜10:40〜150程度である。また、これらの材料を生、液汁(果汁など)、エキス(ニンニクエキス、カプサイシン抽出物など)、成分(カプサイシンなど)等の他の形態で使用する場合には、材料中の水分あるいは特定成分の通常の含有量等を考慮しておよその相当量を換算して設定することもできる。また、副材料の含有量も、使用形態により同様にしておよその相当量を換算することができる。
【0010】
以下、本発明によるキムチ風味食品の典型的な形態およびその製造方法について例示的に説明する。
【0011】
本発明のキムチ風味飲料は、少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とするものであり、一般に、少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材を含む原料(主材料の他に野菜等の前記副材料を含んでいてもよい)の細片物または抽出物と甘味料を、水および/またはアルコールに懸濁または溶解させ、液状の形態に調製することにより得ることができる。ここで、細片物とは、生または乾燥された原料を細片化もしくは微細化して適当な小片に調製したもので、微細化された原料の大きさは摂取するときの所望の食感等により特に限定されないが、好ましい食感の例として、例えば0.1〜3mm程度(乾燥状態)の微細片とすることができる。生の原料を細片化する方法としては、ミキサー、コロイダー等が例示され、乾燥された原料を細片化する方法としては、ピンミル、ハンマーミル等が例示される。また、原料の乾燥は、通常の乾燥機を用いた加熱法、凍結乾燥機を用いた凍結乾燥法等の任意の方法を使用することができる。唐辛子、ニンニク、果物の主材料については、抽出物等も含めて乾燥物、すり下ろし物等が市販されており、それらを実用的かつ簡便に使用することもできる。上記の原料は、所望により乳酸菌の存在下で乳酸発酵(通常20〜35℃で1〜7日間程度)させておいてもよい。
【0012】
キムチ風味飲料の一つの態様において、上記のような細片物と甘味料を、補助剤としての水または食用アルコール中に分散状態で配合し、必要に応じて他の添加物、例えば増粘剤(でんぷん、デキストリン、ペクチン等)、香料等を適量配合することにより混濁タイプのキムチ風味飲料を調製することができる。上記の補助剤としては、所望により水と食用アルコールの混合液であってもよい。
【0013】
キムチ風味飲料の他の態様において、原料の抽出物と甘味料を補助剤としての水、食用アルコールまたはその混合物のいずれかの溶媒中に溶液状態で配合することにより、清澄タイプのキムチ風味飲料を調製することができる。抽出は、生または乾燥された原料またはそれを適当な小片に切断したものを、上記の溶媒で抽出することにより行うことができる。抽出条件は、通常、原料を適当量の上記溶媒中において、温度が20〜100℃程度で、抽出時間が5〜30分間程度である。抽出物は、濾過等により不要物を除去したものまたは上記の溶媒で希釈したものと甘味料をそのまま、あるいは所望により前記の添加物をさらに配合して溶液状態のキムチ風味飲料とすることができる。また、乾燥(加熱乾燥、凍結乾燥等)された抽出物と甘味料を、上記の溶媒中に配合することにより清澄タイプのキムチ風味飲料を調製することができる。なお、抽出物としては唐辛子抽出物、ニンニク抽出物、果物抽出物(例えば濃縮みかん果汁)等が市販されており、それらを実用的に使用することもできる。
【0014】
本発明によるキムチ風味飲料において、主材料としての唐辛子、ニンニクおよび果物の総含量は飲料全量に対して通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%(乾燥物として)程度である。もう一つの主材料である甘味料の含量は、飲料全量に対して通常5〜15重量%(砂糖として)程度である。また、飲料全量中の副材料(他の薬味、野菜、魚介類等)の含量は通常0〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%(乾燥物として)程度である。残りは主として水分および必要に応じてデキストリン等の増粘剤である。
【0015】
本発明のキムチ風味サプリメントは、少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とするものであり、通常、少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材を含む原料の細片物または抽出物と甘味料を混合し固形状の形態に調製することにより得ることができる。固形状の形態としては錠剤、粉末、顆粒、カプセル、ペースト等の形態が例示される。これらの各種形態は、前記した細片物または抽出物と甘味料を混合してそのまま、あるいは一般的に食品および医薬の分野における常法に従って賦形剤(例えばデキストリン、ゼラチン)等の補助剤、添加剤(例えばカルボキシメチルセルロース(CMC))等を適量加えてサプリメントとして形成することができる。
【0016】
本発明によるキムチ風味サプリメントにおいて、主材料としての唐辛子、ニンニクおよび果物の含量は通常0.5〜80重量%、好ましくは5〜20重量%(乾燥物として)程度である。もう一つの主材料である甘味料の含量は、サプリメント全量に対して通常5〜15重量%(砂糖として)程度である。また、サプリメント全量中の副材料(他の薬味、野菜、魚介類等)の含量は通常0〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%(乾燥物として)程度である。残りは上記キムチ材料および甘味料以外の添加物(賦形剤等)である。
【0017】
上記のようにして得られた調製物は、一般に、飲料の場合は液状物を通常のドリンクビンやアルミボトル缶等の容器に充填し、ホットパック、湯殺菌等で殺菌処理して飲料とし、また、サプリメントの場合には固形状の形成物を打錠してサプリメントとすることにより、最終的に本発明によるキムチ風味食品(キムチ風味健康食品、キムチ風味飲料、キムチ風味サプリメント等)の製品とする。
【0018】
本明細書において、特に断りのない限り%表示は重量%を意味する。以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
表1に示すような配合割合(重量比)に従い、キムチ用薬味素材として一味唐辛子、ニンニクすり下ろし、レモン果肉、甘味料として砂糖、および他の成分として増粘剤(でんぷん)を水に配合し、吸収を良くするために最後に食品用アルコールを添加し混合した。この混合物を通常のドリンクビンおよびアルミボトル缶に充填し、ホットパックで殺菌処理して混濁タイプのキムチ風味飲料とした。これを10名のパネラーで官能評価を行ったところ、表4に示すような良好な結果を得た。また、果物としてリンゴ(果肉)を使用し、同様にして調製した飲料について官能評価を行ったところ、同様の評価結果が得られた。
【0020】
【表1】

【実施例2】
【0021】
表2に示すような配合割合(重量比)に従い、キムチ用薬味素材としてカプサイシン抽出物(カプサイシン約10重量%含有)、ガーリックエキス、レモン果汁、甘味料として砂糖、および他の成分としてデンプン、赤系色素(カプシカム色素)、レモンフレーバーを水に配合し、吸収を良くするために最後に食用アルコールを添加し混合した。この混溶液を通常のドリンクビンおよびアルミボトル缶に充填し、ホットパックで殺菌処理して清澄タイプの飲料とした。これを10名のパネラーで官能評価を行ったところ、表4に示すような良好な結果を得た。また、果物として温州みかん(果汁)を使用し、同様にして調製した飲料について官能評価を行ったところ、同様の評価結果が得られた。
【0022】
【表2】

【実施例3】
【0023】
表3に示すような配合割合(重量比)に従い、キムチ用薬味素材として一味唐辛子、乾燥ニンニク、乾燥レモン、甘味料として砂糖、および他の成分としてデキストリンの各粉体物を混合し、通常の打錠機を用いて打錠し、キムチ風味サプリメントとした。これを10名のパネラーで官能評価を行ったところ、表4に示すような良好な結果を得た。また、同じ材料を使用し、唐辛子、ニンニク、果物、砂糖の割合を1:1.5〜3:1.5〜3:4〜8(重量比)の範囲で調製したサプリメントについて官能評価を行ったところ、同様の評価結果が得られた。
【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

本発明によるキムチ風味食品は、全体として、新鮮なキムチ風味の感覚を有しながら塩味および酸味の少ないさっぱりとした淡泊な味感を有し、簡単にかつ日常的に摂取し易い食品であった。
【実施例4】
【0026】
表5に示すような配合割合(重量比)に従って各材料を水に配合し、発酵させたキムチ風味ドリンクを製造した。この飲料について官能評価を行ったところ、辛みがやわらぎ新鮮な味感および食感を有するキムチ風味の飲料であった。
【0027】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とする、キムチ風味健康食品。
【請求項2】
少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とする、キムチ風味飲料。
【請求項3】
少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材の細片物または抽出物と甘味料を含有することを特徴とする、キムチ風味サプリメント。
【請求項4】
少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材を含む原料の細片物または抽出物と甘味料を、水および/またはアルコールに懸濁または溶解させ、液状の形態に調製することを特徴とする、キムチ風味飲料の製造方法。
【請求項5】
少なくとも唐辛子、ニンニクおよび果物を組み合わせたキムチ用薬味素材を含む原料の細片物または抽出物と甘味料を混合し、固形状の形態に調製することを特徴とする、キムチ風味サプリメントの製造方法。