説明

キメラアデノウイルスベクター

本発明は、キメラアデノウイルスベクター、および対象となる抗原に対する免疫応答を誘発するために該ベクターを使用するための方法を提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年2月28日出願の米国特許仮出願第60/778026号、2006年5月19日出願の米国特許仮出願第60/801,645号、2006年5月22日出願の米国特許仮出願第60/802,992号、2006年8月4日出願の米国特許仮出願第60/821,492号、2006年9月22日出願の米国特許仮出願第60/846,658号、および2006年9月28日出願の米国特許仮出願第60/848,195号の優先権を主張し、それらの開示内容は、全体がすべての趣旨で参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金援助を受けた研究または開発の下でなされた発明の権益に関する声明
該当なし
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ワクチンは多くの疾患および障害(例えば、ウイルス感染症、細菌感染症および癌)の予防および/または処置の手段として重要である。核酸ワクチンには、タンパク質または無毒化-生ワクチンに優るいくつかの利点がある。抗原を発現する核酸の標的細胞内への導入によって、対象となる抗原に対して免疫応答を発生させるワクチンの迅速な開発が可能になる。タンパク質ワクチンでは、新しいワクチンが作製されるたびに効果的かつ効率的なタンパク質精製方法を開発する必要がある。生ワクチンでは、病原体の増殖を完全には止めないが、ヒトにおける完全な安全性が証明されている弱毒化方法を特定する必要がある。タンパク質精製方法および弱毒化方法の開発は極めて時間のかかる工程である。対照的に、大半の核酸ワクチンは、対象となる抗原をコード化する核酸を適宜変更するだけで、毎回同じ製造技術を利用して非常に迅速に生産できる。複製能力のないアデノウイルスは、迅速に、予測通りに、かつ安価に作成される高力価な核酸ワクチン系である[Polo, J. M. and Dubensky, T. W., Jr., Drug Discov Today, 7(13), 719-727 (2002)(非特許文献1)]。しかし、当技術分野において公知のアデノウイルスベクターの投与後での抗原特異的な反応効率は低い。したがって、対象となる抗原に対して効率的に免疫応答を誘発させるために使用可能な新しいアデノウイルスベクターが当技術分野において必要とされている。本発明はこれらおよび他の必要性を満たす。
【0004】
【非特許文献1】Polo, J. M. and Dubensky, T. W., Jr., Drug Discov Today, 7(13), 719-727 (2002)
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、異種ポリペプチドをコード化する核酸を含むキメラアデノウイルスベクターおよび異種ポリペプチドに対する免疫応答を誘発するための方法を提供する。
【0006】
本発明の一態様では、(a) Toll様受容体(TLR)-3アゴニストをコード化する核酸に機能的に連結した第1のプロモーターおよび(b) 異種ポリペプチドをコード化する核酸に機能的に連結した第2のプロモーターを含む、発現カセットを含むキメラアデノウイルス発現ベクターを提供する。いくつかの態様では、TLR-3アゴニストはdsRNAである。いくつかの態様では、TLRアゴニストをコード化する核酸は、SEQ ID NO:3、7、8、9、10、11、および12から選択される配列を含む。いくつかの態様では、異種ポリペプチドは、HIV外被ポリペプチド(例えば、gp41、gp120、またはgp160)およびインフルエンザHAポリペプチドから選択される。いくつかの態様では、第1と第2のプロモーターは同じである。いくつかの態様では、第1と第2の態様は異なっている。いくつかの態様では、プロモーターはβアクチンプロモーターおよびCMVプロモーターから選択される。本発明はまた、発現ベクターを含む免疫原性組成物も提供する。
【0007】
本発明のさらなる態様では、哺乳動物被験体(例えば、マウス、ラット、もしくはモルモットなどのげっ歯類またはチンパンジー、アカゲザルなどの霊長類もしくはヒト)に免疫原性を有する有効量の組成物を投与することによる異種ポリペプチドに対する免疫応答の誘発方法を提供する。いくつかの態様では、非経口ではない任意の経路(例えば、経口、鼻腔内、または粘膜)を介してベクターを投与する。いくつかの態様では、樹状細胞、M細胞(microfold cell)および腸上皮細胞から選択した細胞において異種ポリペプチドが発現される。
【0008】
本発明のさらなる実施態様では、(a) 異種ポリペプチドをコード化する核酸に機能的に連結したプロモーターを含むキメラアデノウイルス発現ベクターおよび(b) TLR-3アゴニスト(例えば、dsRNA)を含む、免疫原性組成物を提供する。いくつかの態様では、TLR-3アゴニストは核酸によってコード化される。本発明はまた、哺乳動物被験体(例えば、マウス、ラット、もしくはモルモットなどのげっ歯類またはチンパンジー、アカゲザルなどの霊長類もしくはヒト)に組成物を非経口ではない任意の経路(例えば、経口、鼻腔内、または粘膜)を介して投与することによる免疫応答の誘発方法も提供する。
【0009】
本発明の別の態様では、SEQ ID NO:1、2、6、7、13、14、15、16、または17記載の配列を含む単離核酸を提供する。
【0010】
発明の詳細な説明
I. 序論
本発明は、対象となる抗原に対して免疫応答を誘発するために非経口ではなく投与できる新規のキメラアデノウイルスベクターを提供する。本発明のキメラアデノウイルスベクターには、異種ポリペプチドをコード化する核酸およびTLR-3アゴニストをコード化する核酸が含まれる。特に非経口ではない経路(例えば、経口、鼻腔内、または粘膜)を介して投与する場合、キメラアデノウイルスベクターは異種ポリペプチドに対して特異的な強力かつ効果的な免疫応答を誘発する。
【0011】
本発明は、ウイルスベクターと組み合わせて投与される場合に、dsRNA TLR-3アゴニストの投与が効果的なアジュバントであるという驚くべき発見に基づいている。実際に、dsRNA模倣体ポリI:Cについて提示された主な用途が抗ウイルス剤であったことを考えると、ウイルスベクターのアジュバントとしてのdsRNAの使用は直感に反しうる[Nemes, et al., Proc Soc Exp Biol Med.(1969) 132:776; Schafer, et al., Nature.(1970) 226:449; Fenje, et al., Nature (1970) 226:171.]。
【0012】
II. 定義
本明細書において、例えば、核酸、タンパク質、またはベクターに関連して使用する用語「キメラ」または「組換え」とは、異種核酸もしくはタンパク質の導入、または天然核酸もしくはタンパク質の改変によって修飾された核酸、タンパク質またはベクターを指す。このように、例えば、キメラベクターおよび組換えベクターには、天然(非キメラまたは非組換え)ベクター内には認められない核酸配列が含まれている。キメラアデノウイルス発現ベクターとは、異種ポリペプチドをコード化する核酸配列を含むアデノウイルス発現ベクターを指す。
【0013】
「発現ベクター」は、宿主細胞における特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いて、組換え技術または合成的に生成した核酸構築物である。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスまたは核酸断片の一部でありうる。典型的には、発現ベクターには、プロモーターに機能的に連結して転写される核酸が含まれる。
【0014】
本明細書において使用される、「プロモーター」および「発現制御配列」は、核酸の転写を指示する核酸制御配列の配置を指す。本明細書で使用している通り、プロモーターには、転写開始部位の近くに必要な核酸配列、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合のTATAエレメントなどが含まれている。任意に、転写開始部位から数千塩基対の場所に位置づけられる遠位性のエンハンサーあるいはリプレッサーエレメントもプロモーターに含まれる。プロモーターには、構成的プロモーターおよび誘導プロモーターが挙げられる。「構成的」プロモーターは、大半の環境条件下および発生条件下で活性なプロモーターである。「誘導」プロモーターは、環境制御または発生制御下で活性なプロモーターである。用語「機能的に連結した」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイ)と第2の核酸配列との間の機能的な結合を指し、ここで発現制御配列が第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0015】
本明細書で使用される用語「TLRアゴニスト」または「Toll様受容体アゴニスト」とは、Toll様受容体(例えば、TLR-2、TLR-3、TLR-6、TLR-7、またはTLR-8)に結合し、かつ刺激する化合物を指す。TLRアゴニストについては、MacKichan, IAVI Report.9:1-5 (2005) and Abreu et al., J Immunol, 174(8), 4453-4460 (2005)に記載されている。アゴニストは、その受容体への結合後にシグナル伝達を引き起こす。
【0016】
本明細書で使用される用語「TLR-3アゴニスト」または「Toll様受容体3アゴニスト」とは、TLR-3に結合し、かつ刺激する化合物を指す。二本鎖RNA、ウイルス由来dsRNA、ポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリI:C)-ポリアデニル-ポリウリジル酸(ポリA:U)およびポリI:ポリCなどの二本鎖RNAのいくつかの化学合成類似体、およびIFN-β生産を導くTLR-3に対する抗体(または抗体の架橋)を含む、TLR-3アゴニストが同定されている[Matsumoto, M, et al., Biochem Biophys Res Commun 24:1364 (2002), de Bouteiller, et al., J Biol Chem 18:38133-45 (2005)]。TLR-3アゴニストにはまた、発現したdsRNA (例えば、SEQ ID NO:3、7、8、9、10、11、または12に示す配列を含む核酸によってコード化されるdsRNA)も挙げられる。
【0017】
本明細書で使用される用語「TLR-7/8アゴニスト」または「Toll様受容体7/8アゴニスト」とは、TLR-7受容体またはTLR-8受容体のいずれかに結合し、かつ刺激する化合物を指し;これらの受容体はいくつかの同じリガンドを認識する。いくつかのTLR-7/8アゴニストが、ウイルス一本鎖RNA、イミキモド、ロキソリビン、ポリウリジル酸、またはレジキモドなどとして同定されている。
【0018】
一部の核酸に関して使用される「異種」とは、自然において互いに同じ関係にあることが見出だせない2またはそれ以上の部分配列を含む核酸を指す。例えば、典型的には、核酸は組換え技術によって産生されており、新しい機能的核酸を作るように配置された無関係な遺伝子由来の2またはそれ以上の配列を持ち、例えば、1つのソース由来のプロモーターおよび別のソース由来のコード領域が挙げられる。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が自然において互いに同じ関係が見出だせない2またはそれ以上の部分配列を含むことを指す(例えば、融合タンパク質)。
【0019】
「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書において互換的に用いられ、1本鎖または2本鎖のいずれかの形状のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびこれらのポリマーを指す。この用語には、合成、天然および非天然であり、対照核酸と同じ結合特性を有し、かつ対照ヌクレオチドと同様に代謝される、公知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基または連鎖を含む核酸が含まれる。このような類似体の例としては、限定はされないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミダート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0020】
特記されている場合を除き、特定の核酸配列にはまた、明示した配列の他に、保存的に修飾したその変異体(例えば、縮重コドン置換)および相補配列も含まれる。具体的には、1つまたは複数の選択した(またはすべての)コドンの3番目の位置を、混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換した配列を生成することで、縮重コドン置換を達成することができる(Batzer et al., Nucleic Acid Res.19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem.260:2605-2608 (1985); Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。核酸という用語は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換的に用いられる。
【0021】
抗原とは、T細胞受容体および/または抗体によって認識可能なタンパク質またはポリペプチド鎖の一部を指す。典型的には、抗原は、細菌、ウイルスまたは真菌のタンパク質から得られる。
【0022】
本発明の組成物の「免疫原性を有する有効用量または有効量」とは、異種ポリペプチドに特異的な免疫応答を誘発するまたは調節する量である。免疫応答としては、体液性免疫応答および細胞媒介性の免疫応答が挙げられる。免疫原性組成物は治療的または予防的に使用して、任意の病期の疾患を処置または予防することができる。
【0023】
「体液性免疫応答」は、血液の無細胞成分、つまり、血漿または血清によって媒介され;1個人から別の個人への血清または血漿の移入によって免疫が移入される。
【0024】
「細胞媒介性の免疫応答」は抗原特異的なリンパ球によって媒介され、1個人から別の個人への抗原特異的なリンパ球の移入によって免疫が移入される。
【0025】
キメラアデノウイルスベクターまたはキメラアデノウイルスベクターを含む組成物の「治療用量」または「治療的有効量」または「有効量」とは、異種ポリペプチドのソース(例えば、ウイルス、細菌、寄生生物、または癌)に関連する疾患および障害の症状の重症度を予防する、緩和する、和らげるまたは軽減する、ベクターの量またはベクターを含む組成物の量である。
【0026】
抗体とは、抗原に特異的に結合して、かつ認識する免疫グロブリン遺伝子またはその断片によってコード化されるポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、Δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、Δまたはεに分類され、これらはこの順にそれぞれ免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定める。
【0027】
T細胞は、遺伝子ファミリーによってコード化される特異的受容体(T細胞受容体)を発現する特定クラスのリンパ球を指す。認識されるT細胞受容体遺伝子としては、α、β、Δおよびγ遺伝子座が挙げられ、T細胞受容体は、典型的には (しかし、普遍的ではない)、短いペプチドを加えたMHCの複合体を認識する。
【0028】
適応免疫応答とは、T細胞および/または抗体による抗原の認識を指す。
【0029】
本明細書で使用される抗原提示細胞(APC)とは、T細胞に対して免疫原性ペプチドまたはその断片を提示して、免疫応答を活性化させるまたは高めることが可能な細胞を指す。APCとしては、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球および効率的なAPCとなるように操作されうる他の細胞が挙げられる。必要ではないが、これらの細胞では、抗原提示能が高まり、T細胞応答の活性化および/もしくは維持が改善されて、それ自体が抗腫瘍効果を持つ、ならびに/または受容物質と免疫学的に互換性を持つように(つまり、HLAハプロタイプが一致する)ように遺伝子組換えできる。APCは、骨髄、末梢血液、腫瘍および腫瘍周辺組織を含む、任意の様々な生体液および器官から単離でき、ならびに自己細胞、同種細胞、同系細胞または異種細胞でありうる。典型的には、APCは主要組織適合(MHC)遺伝子座由来の受容体を利用して、T細胞に短いポリペプチドを提示する。
【0030】
アジュバントは非特異的な免疫応答エンハンサーである。適当なアジュバントとしては、例えば、コレラ毒素、モノホスホリルリピドA(MPL)、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、Quil AおよびAl(OH)が挙げられる。アジュバントはまた、Toll様受容体のように第2のシグナル分子を通じてAPC活性化およびT細胞の提示の強化をもたらす物質であり得る。Toll様受容体の例としては、二本鎖RNA、細菌の鞭毛、LPS、CpG DNA、および細菌のリポペプチドを認識する受容体が挙げられる([先日Abreu et al., J Immunol, 174(8), 4453-4460 (2005)]に概説された)。
【0031】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用されており、アミノ酸残基のポリマーを指す。これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0032】
用語「アミノ酸」とは、天然アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様に作用するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によってコード化されるアミノ酸、ならびに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、y-カルボキシグルタミン酸、O-セリンリン酸などのアミノ酸である。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、つまり、水素、カルボキシル基、アミノ基および、R基に結合したy炭素、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾R基(例えばノルロイシン)または修飾ペプチド骨格を有するが、しかし、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を保持している。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化合物を指す。
【0033】
本明細書においてアミノ酸は、一般に公知のそれらの3文字記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字記号のいずれかで示すことができる。同様に、ヌクレオチドは一般に受け入れられているそれらの1文字コードによって示すことができる。
【0034】
「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸および核酸の両方の配列に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体とは、同じもしくは実質的に同じ配列をコード化するそれら核酸を指し、または、核酸がアミノ酸配列をコード化しない場合、実質的に同じ配列を指す。遺伝暗号の縮重のため、機能的に同じ多くの核酸が、任意の所与のタンパク質をコード化する。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUはすべてアミノ酸アラニンをコード化する。したがって、アラニンがコドンによって特定される各位置で、コドンはコード化ポリペプチドを変えることなく記載されている対応するコドンのいずれかに変えることができる。このような核酸変化は「サイレント変化」であり、保存的に修飾された変化の1種である。ポリペプチドをコード化する本明細書の各核酸配列はまた、核酸のすべての可能なサイレント変化も記載する。核酸の各コドン(通例、メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通例、トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子をもたらすことができることを当業者は認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコード化する核酸の各サイレント変化は、各記載される配列に必然的に含まれている。
【0035】
アミノ酸配列について、コード化配列において単一アミノ酸または少数のアミノ酸を改変、付加または欠失させる、核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の配列への個々の置換、欠失、付加が、「保存的に修飾された変化」であり、この改変によって化学的に同様なアミノ酸によってアミノ酸が置換されることを当業者は認識するであろう。機能的に同様なアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。保存的に修飾されたこのような変異体は、本発明の多型変異体、種間ホモログおよび対立遺伝子に加えられ、かつ除外されない。
【0036】
以下の8グループは、それぞれ互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:
1) アラニン(A)、グリシン(G);
2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4) アルギニン I、リジン(K);
5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7) セリン(S)、スレオニン(T);および
8) システイン(C)、メチオニン(M)
(例えばCreighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
【0037】
語句「選択的に(または特異的に)ハイブリダイズする」とは、配列が複雑な混合物(例えば、全細胞またはライブラリーDNAもしくはRNA)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、分子が特定のヌクレオチド配列にのみ結合、二本鎖形成、またはハイブリダイズすることを指す。
【0038】
語句「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、典型的には、プローブが核酸の複雑な混合物中においてその標的部分配列にハイブリダイズするが、他の配列にはハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は配列に依存しており、かつ異なる環境において異なっている。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な手引きは、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays" (1993)に見ることができる。一般的に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHで特定の配列の熱融解点Iよりも約5〜10℃低くなるように選択する。融解温度(Tm)は、標的と相補的なプローブの50%が標的配列と平衡状態でハイブリダイズする温度(規定のイオン強度、pHおよび核酸濃度)である(標的配列は過剰に存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有される)。ストリンジェントな条件とは、塩濃度が約1.0M未満のナトリウムイオン、典型的には、pH7.0から8.3で約0.01から1.0Mナトリウムイオン濃度(または他の塩)であり、ならびに温度が、短いプローブ(例えば10から50ヌクレオチド)で少なくとも約30℃、長いプローブ(例えば50ヌクレオチドより多い)で少なくとも約60℃となる条件である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加によっても達成できる。選択的または特異的なハイブリダイゼーションにおいて、陽性シグナルは、バックグラウンドの少なくとも2倍、任意でバックグラウンドのハイブリダイゼーションの10倍である。例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は下記でありうる:42℃の50%ホルムアミド、5×SSCおよび1% SDSでインキュベート、または、65℃の5×SSCおよび1% SDSでインキュベート、65℃の0.2×SSCおよび0.1% SDSで洗浄。
【0039】
核酸がコード化するポリペプチドが実質的に同一である場合、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸もやはり実質的に同一である。例えば、遺伝暗号によって許容される最高コドン縮重を利用して核酸コピーを作製する場合にこれが起こる。このような場合、典型的には、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で核酸をハイブリダイズさせる。例示的な「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」としては、40%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDSの37℃の緩衝液中でのハイブリダイゼーション、および45℃の1×SSC中での洗浄が挙げられる。ハイブリダイゼーション陽性は、バックグラウンドの少なくとも2倍である。当業者であれば、代わりのハイブリダイゼーション条件および洗浄条件を利用して、同程度にストリンジェントな条件を提供できることを容易に認識するであろう。
【0040】
「抗体」とは、抗原に特異的に結合してかつ認識する、免疫グロブリン遺伝子またはその断片由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドを指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子としては、κ、λ、α、γ、Δ、εおよびμ定常領域遺伝子ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖はγ、μ、α、Δまたはεに分類され、これらはこの順にそれぞれ免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを定める。
【0041】
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、四量体からなる。各四量体は同一の2対のポリペプチド鎖から成り、各対が1つの「軽」鎖(約25 kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70 kDa)を有する。各鎖のN末端が、主に抗原認識に関与する約100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を定める。用語、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指す。
【0042】
語句、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的に(または選択的に)免疫反応性である」とは、タンパク質またはペプチドについて言及する場合、タンパク質の異種集団および他の生物におけるタンパク質の存在の決定要因となる結合反応を指す。したがって、指定されたイムノアッセイの条件下で、特異抗体が特定タンパク質にバックグラウンドの少なくとも2倍結合し、かつ相当量がサンプル中に存在する他のタンパク質に実質的に結合しない。このような条件下での抗体への特異的結合には、特定のタンパク質に対するその特異性で選択される抗体が必要となりうる。例えば、融合タンパク質に対して産生したポリクローナル抗体を選択して、融合タンパク質に対しては特異的に免疫反応性であるが、融合タンパク質の個々の成分に対しては免疫反応性でないポリクローナル抗体のみを得ることができる。この選択が、個々の抗原と交差反応する抗体を差し引くことで達成できる。様々なイムノアッセイフォーマットを使用して、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択できる。例えば、通例、固相ELISAイムノアッセイを使用して、あるタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択する(イムノアッセイフォーマットおよび特異的反応性の判定に使用可能な条件の説明については、例えば、Harlow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manual (1988)参照)。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍でありおよび、より典型的には、バックグラウンドの10から100倍以上である。
【0043】
ポリヌクレオチドは、天然配列(つまり、個々のポリペプチドまたはdsRNAまたはその一部をコード化する内因性配列)を含むか、またはそのような配列の変異体を含むことができる。天然抗原を含むポリペプチドと比較して、コード化ポリペプチドの生物活性が低下しないように、ポリヌクレオチド変異体は1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含むことができる。置換、付加、欠失および/または挿入を含まないdsRNAと比較して、コード化dsRNAのTLR-3アゴニスト活性が低下しないように、ポリヌクレオチド変異体は1つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含むことができる。変異体は、好ましくは、天然ポリペプチドもしくはその一部をコード化するポリヌクレオチド配列、またはTLR-3アゴニスト活性を有するdsRNAをコード化するポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%を示す。
【0044】
2もしくはそれ以上の核酸(例えばTLR-3アゴニストであるdsRNA)またはポリペプチド配列との関連で、用語「同一の」またはパーセント「同一性」とは、比較ウインドウにわたる最高一致に関する比較および整列させた場合に同じである、または同じであるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定の割合(つまり、特定の領域にわたり、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%以上の同一性)を有する2もしくはそれ以上の配列または部分配列、あるいは以下の配列比較アルゴリズムの1つを利用するか、またはマニュアルアラインメントおよび目視検査によって測定した指定領域を指す。このような配列は「実質的に同一である」と言われる。この定義は、試験配列の相補体も指す。任意に、長さが少なくとも約10個から約100個、約20から約75個、約30個から約50個のアミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって同一性は存在する。
【0045】
配列比較において、典型的には、1配列が対照配列としての役割を果たし、試験配列と比較される。配列比較アルゴリズムを利用して、試験配列および対照配列をコンピュータに入力する場合、部分配列配位を適宜定めて、必要であれば、かつ配列アルゴリズムプログラムパラメータを定める。デフォルトプログラムパラメータを利用できる、または代用パラメータを定めることができる。次に、配列比較アルゴリズムによって、プログラムパラメータに基づき、対照配列との比較で試験配列の配列相同性(%)を算出する。
【0046】
本明細書で使用される「比較ウインドウ」には、約10から約500、約25から約200、約50から約150からの連続位置の数のいずれか1つのセグメントに関する参照が挙げられ、ここで2つの配列を任意に整列させた後、配列を同じ数の連続位置の対照配列と比較できる。比較のための配列のアラインメント方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman, Adv.Appl.Math.2:482 (1981)の局所的ホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol.Biol.48:443 (1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Nat 'l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似法のための検索、コンピュータによるこれらアルゴリズムの実施(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、またはマニュアルアラインメントおよび目視検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., 編集 1995 増補)を参照されたい)によって、行うことができる。
【0047】
有用なアルゴリズムの1例は、PILEUPである。PILEUPでは、逐次的ペアアラインメントを使用して、関連する配列群から複数の配列アラインメントを作製して、関係および配列相同性(%)を示す。それはまた、アラインメントの作製に使用されるクラスタリング関係を示す系図またはデンドグラムもプロットする。PILEUPでは、Feng & Doolittle, J. Mol.Evol.35:351-360 (1987)の逐次的アラインメント方法の単純化したものを利用する。利用した方法は、Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-153 (1989)による記載の方法と類似している。プログラムによって、最高300の配列、それぞれ最長5,000のヌクレオチドまたはアミノ酸を整列させることができる。複数のアラインメント手順は、2つの最もよく似たペアアラインメントから始めて、2つの整列させた配列のクラスターを生成する。そして、このクラスターを次の最も関連する配列または整列させた配列のクラスターに対して整列させる。2つの個々の配列のペアアラインメントを単純に延長させることで、配列の2つのクラスターを整列させる。最終アラインメントを、一連の逐次的ペアアラインメントによって達成する。配列比較の領域について特定の配列およびそれらのアミノ酸またはヌクレオチド配位を定めること、およびプログラムパラメータを定めることによって、プログラムを実行する。PILEUPを使用して、対照配列を他の試験配列と比較して、以下のパラメータを利用して配列相同性(%)を決定する:デフォルトギャップウェイト(3.00)、デフォルトギャップ長ウェイト(0.10)および加重エンドギャップ。PILEUPはGCG配列解析ソフトウェアパッケージ(例えば、バージョン7.0 (Devereaux et al., Nuc. Acids Res.12:387-395 (1984))から得ることができる。
【0048】
配列相同性(%)および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの別の例は、BLAST およびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これは、それぞれAltschul et al., Nuc. Acids Res.25:3389-3402 (1977)およびAltschul et al., J. Mol.Biol.215:403-410 (1990)に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から公開されている。このアルゴリズムには、問い合わせ配列における長さWの短いワードを同定することによる高スコアリング配列ペア(HSP)をまず同定することが含まれ、これは、データベース配列において同じ長さのワードを整列させた場合、一部の正値の閾値スコアTと一致する、またはこれを満たすのいずれかである。Tは近傍のワードスコア閾値を指す(Altschul et al., 前記)。これらの初期の近傍ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見いだすための捜索を開始する際のシードとしての役割を果たす。累積アラインメントスコアを増大することが可能な限り、ワードヒットを各配列に沿って両方向で延長させる。ヌクレオチド配列についてパラメータM(1ペアのマッチ残基での報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチ残基でのペナルティースコア;常に<0)を利用して累積スコアを算出する。アミノ酸配列では、スコアリングマトリックスを利用して累積的スコアを算出する。以下の場合に各方向のワードヒットの延長は停止させる:累積アラインメントスコアがその最高達成値から量Xだけ減る場合;1つまたは複数のマイナススコア残基アラインメントの蓄積によって、累積スコアがゼロもしくはそれ未満になる場合;またはいずれか一方の配列の末端に達した場合。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXが、アラインメントの感度およびスピードを決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)では、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖比較をデフォルトとして使用する。アミノ酸配列では、BLASTPプログラムにおいて、ワード長3、期待値(E)10、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4および両鎖比較をデフォルトとしてとして使用する。
【0049】
BLASTアルゴリズムではまた、2つの配列間での類似性に関する統計解析も実施する(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1測定値は、最小合計確率(P(N))であり、これによって2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間でのマッチングが偶然に起こる確率が示される。例えば、仮に試験核酸と対照核酸との比較で最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満および最も好ましくは約0.001未満である場合、核酸は対照配列と類似性があると見なされる。
【0050】
III. 本発明の組成物
本発明はキメラアデノウイルスベクターを含む組成物を提供する。いくつかの態様では、本発明のキメラアデノウイルスベクターは、異種ポリペプチドをコード化する核酸に機能的に連結した第1のプロモーターおよびTLR3アゴニストをコード化する核酸に機能的に連結した第2のプロモーターを含む。第1および第2のプロモーターは同じであるかまたは異なりうる。いくつかの態様では、第1および第2のプロモーターは、βアクチンプロモーターおよびCMVプロモーターから独立して選択される。
【0051】
いくつかの態様では、キメラアデノウイルスベクターは、アデノウイルスのゲノム(E1遺伝子およびE3遺伝子マイナス)ならびにIRF-3およびTLR-3の下流の他のシグナル分子を活性化する遺伝子をコード化する核酸を含む。細胞によって組換えアデノウイルス(rAd)が産生されるように、キメラベクターをAdのE1遺伝子を発現する細胞に投与できる。このrAdは回収することができ、かつ異種ポリペプチドに対する免疫応答を誘発させるために哺乳動物体内の別の細胞にトランスジェニック組成物を送達する感染の1ラウンドを実行できる。
【0052】
A. 適当なアデノウイルスベクター
いくつかの態様では、アデノウイルスベクターは、例えば、E1/E3領域の欠失したAd5およびE4領域の欠失したAd5を含む、アデノウイルス5である。他の適当なアデノウイルスベクターには、抗原を送達し、かつトランス遺伝子抗原に対する適応免疫応答を誘発するために十分な株2、経口試験された株4および7、腸内アデノウイルス40および41ならびに他の株(例えばAd34)が挙げられる[Lubeck et al., Proc Natl Acad Sci USA, 86(17), 6763-6767 (1989); Shen et al., J Virol, 75(9), 4297-4307 (2001); Bailey et al., Virology, 202(2), 695-706 (1994)]。いくつかの態様では、アデノウイルスベクターは、生きた複製不能アデノウイルスベクター(rAd5の欠失したE1およびE3など)、生きた無毒化アデノウイルスベクター(E1B55K欠失ウイルスなど)または天然の複製能を有する生きたアデノウイルスベクターである。
【0053】
脊椎動物細胞をインビボで形質転換させるために使用する発現ベクター内の転写および翻訳制御配列は、ウイルス源によって提供されることができる。例えば、一般に使用されるプロモーターおよびエンハンサーは、例えば、βアクチン、アデノウイルス、シミアンウイルス(SV40)およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)由来である。例えば、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、ネズミ乳房腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、トランスデューサープロモーターまたは哺乳動物細胞での発現において効果が認められている他のプロモーターの指揮下でのタンパク質発現を可能にするベクターが適している。制御配列が選択した宿主細胞と適合性があるならば、さらなるウイルスゲノムプロモーター配列、制御配列および/またはシグナル配列を使用できる。
【0054】
B. 異種ポリペプチド
適当な異種ポリペプチドをコード化する核酸は、例えば、ウイルス抗原、細菌抗原、癌抗原、真菌抗原または寄生生物抗原などの抗原由来から得ることができる。
【0055】
ウイルス抗原は、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Shiver et al. Nature 415(6869):331 (2002)に記載のgag (p55およびp160)、pol、env (gp120およびgp41);Genbankアクセッション番号EF363127、EF363126、EF363125、EF363124、EF363123、EF363122、EF192592およびEF192591記載のHIVゲノム配列;Genbankアクセッション番号EF396891、EF396890、EF396889、EF396888、EF396887、EF396886、EF396885、EF396884、EF396883、EF396882、EF396881、EF396880、EF396879、EF396878、EF396877、EF396876、EF39687、EF396874、EF396873およびEF396872記載のHIV gag配列;Genbankアクセッション番号EF396810、EF396809、EF396808、EF396807、EF396806、EF396805、EF396804、EF396803、EF396802、EF396801、EF396800、EF396799、EF396798、EF396797、EF396796、EF396795、EF396794、EF396793、EF396792およびEF396791記載のHIV pol配列;ならびにGenbankアクセッション番号9:EF367234、EF367233、EF367232、EF367231、EF367230、EF367229、EF367228、EF367227、EF367226、EF367225、EF367224およびEF367223記載のHIV env配列;ヒトパピローマウイルス(例えば、Donnelly et al., J Infect Dis.173:314 (1996)記載のキャプシドタンパク質L1およびGenbankアクセッション番号EF362755、EF362754、NC_001694、NC_001693、NC_001691、NC_001690、NC_005134、NC_001458、NC_001457、NC_001354、NC_001352、NC_001526およびX94164記載の配列など)、エプスタイン・バーウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、腸内ウイルス、A型、B型、C型およびE型肝炎(例えばLubeck et al., PNAS USA 86:6763 (1989)記載のB型肝炎表面抗原およびGenbankアクセッション番号AB236481、AB236471、AB206501、AB206489、AB206487、AB221788、AB221777、AB221773、AR933671、AR933670、AB236514、AB236513、AB236512、AB236511、AB236510、AB236509、AB236508、AB236507記載の配列など);C型肝炎NS 5 (例えば、Genbankアクセッション番号X59609、DQ911563、S71627、S70787、S70786、S70341、S62220、S70790、S70789、S70788およびAB204642参照)、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルス、ポリオウイルス、痘瘡ウイルス、狂犬病ウイルスおよび水疱瘡ウイルスから得ることができる。インフルエンザ抗原としては、例えば、ヘマグルチニン(HA)、基質タンパク質1 (M1)および核タンパク質(例えば、Donnelly, et al., Vaccine 15:865 (1997)およびGenbankアクセッション番号AB294219、AB294217、AB294215、AB294213、EF102944、EF102943、EF102942、EF102941、EF102940、EF102939、EF102938、EF102937、EF102936、EF102935、EF102934、EF102933、DQ643982、DQ464354、CY019432、CY019424、CY019416、CY019408、CY019400、CY019392、CY019384、CY019376、CY019368、CY019360、CY019352、EF124794、EF110519、EF110518、EF165066、EF165065、EF165064およびEF165063記載のインフルエンザHA配列;Genbankアクセッション番号AB292791、CY019980、CY019972、CY019964、CY019956、CY019948、CY019940、CY019628、CY019652、CY019644、CY019932、CY019924、CY019916、CY019908、CY019900、CY019892、CY019884、CY019876、CY019868、CY019860記載のインフルエンザM1配列;ならびにGenbankアクセッション番号AB292790、CY019461、CY019974、CY019966、CY019958、CY019950、CY019942、CY019630、CY019654、CY019646、CY019934、CY019926、CY019918、CY019910、CY019902、CY019894、CY019886、CY019878、CY019870およびCY019862記載のインフルエンザNP配列が挙げられる。
【0056】
適当なウイルス抗原としては、例えば、ウイルスの非構造タンパク質も挙げられる。本明細書で使用される用語「ウイルスの非構造蛋白」とは、キャプシドやウイルス周囲タンパク質を作る構造ポリペプチドなどの構造ポリペプチドをコード化しないウイルス核酸によってコード化されるタンパク質を指す。非構造タンパク質としては、例えば、ベネズエラウマ脳炎(VEE)、EEEまたはセムリキ森林ウイルス由来の非構造タンパク質1、2、3および4(それぞれNS1、NS2、NS3およびNS4)など、ウイルス核酸の複製およびウイルス遺伝子発現を促進させるタンパク質が挙げられる(Dubensky et al., J Virol, 70(1), 508-519 (1996); Petrakova et al J Virol 2005 79(12): 7597-608; U.S. Patent Nos.5,185,440; 5,739,026; 6,566,093; and 5,814,482)。適当なαウイルスのいくつかの代表例としては、アウラ(ATCC VR-368)、ベバルウイルス(ATCC VR-600、ATCC VR-1240)、カバッソウ(Cabassou)(Genbankアクセッション番号AF398387、ATCC VR-922)、チクングニヤウイルス(ATCC VR-64、ATCC VR-1241)、東部ウマ脳炎ウイルス(Genbankアクセッション番号AY705241、AY705240、ATCC VR-65、ATCC VR-1242)、フォートモーガン(ATCC VR-924)、ゲタウイルス(ATCC VR-369、ATCC VR-1243)、キジラガチ(Kyzylagach)(ATCC VR-927)、マヤロ(ATCC VR-66)、マヤロウイルス(ATCC VR-1277)、ミドルバーグ(Middleburg)(ATCC VR-370)、ムカンボウイルス(ATCC VR-580、ATCC VR-1244)、ヌドゥム(Ndumu)(ATCC VR-371)、ピクスナウイルス(ATCC VR-372、ATCC VR-1245)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373、ATCC VR-1246)、セムリキ森林(Genbankアクセッション番号AJ251359、ATCC VR-67、ATCC VR-1247)、シンドビスウイルス(Genbankアクセッション番号J02363、ATCC VR-68、ATCC VR-1248)、トネト(Tonate)(ATCC VR-925)、トリニティ(Triniti)(ATCC VR-469)、ウナ(Una)(ATCC VR-374)、ベネズエラウマ脳脊髄炎(ATCC VR-69)、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルス(Genbankアクセッション番号AY986475、AY973944、NC 001449、ATCC VR-923、ATCC VR-1250 ATCC VR-1249、ATCC VR-532)、西部ウマ脳脊髄炎(ATCC VR-70、ATCC VR-1251、ATCC VR-622、ATCC VR-1252)、ワタロア(Whataroa)(ATCC VR-926)およびY-62-33(ATCC VR-375)が挙げられる。
【0057】
細菌抗原は、例えば、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、ヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、炭疸菌(Bacillus anthracis)、バシラス・セレウス(Bacillus cereus)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、腸チフス菌(Salmonella typhi)、ビブリオコレラ(Vibrio chloerae)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ペスト菌(Yersinia pestis)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、マイコプラズマ属、ナイセリア・ランスデュサー(Neisseria ransducer s)、レジュネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)、発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)および志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ビブリオコレラ(Vibrio cholera)(例えば、Genbankアクセッション番号U25679、A09803、EF158842、X76391、AF390572に記載のコレラ毒素サブユニットB;Wu et al., Infection and Immunity Vol. 69(12):7695 (2001)およびGenbankアクセッション番号NC_002505 and AE004169記載のコレラ毒素共調節線毛(TCP);ヘリコバクター・ピロリ(Genbankアクセッション番号AY848858、AF042737、AF042736、AF042735、AF042734、NC_000921記載のVacA;Genbankアクセッション番号AF043490、AF043489、AF043488、AF043487記載のCagA;Genbankアクセッション番号AF284121、AF284120、AF284119、AF284118、AF284117、AF284116、AB045143、AB045142、AF227081、AF227080、AF227079、AF227078、AF227077、AF227076、AF227075、AF227074記載のNAP;Genbankアクセッション番号NC_000921記載のHspまたはカタラーゼ;Genbankアクセッション番号AM417610、AM417609、AM417608、AM417607、AM417606、AM417605、AM417604、AM417603、AM417602、AM417601およびAM417600記載の尿素分解酵素;Genbankアクセッション番号NC_000913、U00096、NC_002655、BA000007、AE014075記載の大腸菌(E. coli)抗原;Genbankアクセッション番号AB214865、AB214864、AB214863、AB214862記載の大腸菌線毛抗原を含み;Genbankアクセッション番号X83966、V00275、X83966、J01646、V00275、M35581、M17873、M17874、K01995、M61015、M17894、M17101、K00433記載の大腸菌易熱性エンテロトキシンから得ることができる。
【0058】
寄生虫抗原は、例えば、ジアルジアランブリア(Giardia lamblia)、リーシュマニア属 、トリパノソーマ属、トリコモナス属、マラリア原虫(例えば、Genbankアクセッション番号XM_001347551、X07802、AF193769、AF179423、AF154117およびAF030628に記載のpfs25配列などのプラスモディウム・ファシパラム(P.faciparum)表面タンパク質抗原;Genbankアクセッション番号L25843に記載のpfs28配列;Genbankアクセッション番号EF158081、EF158079、EF158078、EF158076、EF158075およびEF158085記載のpfs45配列;Genbankアクセッション番号AF356146、AF356145、AF356144、AF356143、AF356142、AF356141、AF356140、AF356139、AF356138、AF356137、AF356136、AF356135、AF356134、AF356133、AF356132、AF356131、AF356130、AF356129、AF356128、AF356127記載のpfs84、pfs 48/45配列;Genbankアクセッション番号NC_000910、XM_001349564、AE001393、L22219、L08135、およびAF269242記載のpfs 230配列;Genbankアクセッション番号DQ641509、DQ641508、DQ641507、AY639972、AY639971、AY639970、AY639969、AY639968、AY639967、AY639966およびAY639965記載のPvs25配列などの三日熱マラリア原虫(P. vivax)抗原;ならびにGenbankアクセッション番号AB033364、AB033363、AB033362、AB033361、AB033360、AB033359、AB033358、AB033357、AB033356、B033355、AB033354、AB033353、AB033352、AB033351、AB033350、AB033349、AB033348、AB033347、AB033346およびAB033345記載のPvs28配列);住血吸虫属、ヒト結核菌(例えば、Genbankアクセッション番号AX253506、AX253504、AX253502およびAX211309記載のAg85配列;Genbankアクセッション番号BX842572、BX842573、BX842574、BX842575、BX842576、BX842577、BX842578、BX842579、BX842580、BX842581、BX842582、BX842583、BX842584およびNC_000962記載のMPT64、ESAT-6、CFP10、R8307、MTB-32、MTB-39、CSP、LSA-1、LSA-3、EXP1、SSP-2、SALSA、STARP、GLURP、MSP-1、MSP-2、MSP-3、MSP-4、MSP-5、MSP-8、MSP-9、AMA-1、1型内在性膜タンパク、RESA、EBA-175およびDBA配列;Genbankアクセッション番号AY299175、AY299174、AY299144、AF547886およびAF547885記載のHSP65配列)から得ることができる。
【0059】
癌抗原の例としては、例えば、結腸癌、胃癌、膵臓癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、乳房癌、皮膚癌(例えば、黒色腫)、白血病、リンパ腫または骨髄腫において発現させた抗原が挙げられ、例示的な癌抗原としては、例えば、HPV L1、HPV L2、HPV E1、HPV E2、胎盤アルカリ燐酸分解酵素、AFP、BRCA1、Her2/neu、CA15-3、CA 19-9、CA-125、CEA、Hcg、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(Upa)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤が挙げられる。
【0060】
真菌抗原は、例えば、足部白癬、体部白癬、股部白癬、爪白癬、クラドスポリウムカリオニ(Cladosporium carionii)、コクシジオイデスイミチス(Coccidioides immitis)、カンジダ属、アスペルギルスフミガーツス(Aspergillus fumigatus)およびニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)から得ることができる。
【0061】
免疫原性ポリペプチドをコード化する核酸は、典型的には、組換えDNA方法によって産生される(例えば、Ausubel, et al. ed. (2001) Current Protocols in Molecular Biology参照)。例えば、免疫原性ポリペプチドをコード化するDNA配列は、cDNA断片および短いオリゴヌクレオチドリンカー、または一連のオリゴヌクレオチドから組み合わせることができるか、または適当なプライマーを使用してcDNAから増幅させて、組換え発現ベクター(つまり、プラスミドベクターまたはウイルスベクター)に挿入させ、かつ組換え転写ユニットとして発現させることのできる合成遺伝子を提供できる。ひとたび免疫原性ポリペプチドをコード化する核酸が産生されれば、インビボまたはエクスビボ発現に適した組換え発現ベクターにこれを挿入できる。
【0062】
組換え発現ベクターは、哺乳動物またはウイルス遺伝子から得られる適当な転写または翻訳調節エレメントに機能的に連結された、免疫原性ポリペプチドをコード化するDNA配列を含む。このような調節エレメントには、転写プロモーター、転写を調節する任意のオペレーター配列、適当なmRNAリボゾーム結合部位をコード化する配列、および転写や翻訳の終結調節配列が含まれる。複製起点および形質転換体の識別を容易にする選択マーカーをさらに組み入れることができる。組換え発現ベクターに使用する遺伝子は、遺伝子産物が2つの異なるベクター上にあるように複数のウイルスに分けることができ、ならびにこのベクターを同時形質導入に使用して、すべての遺伝子産物をトランス中で提供する。挿入物のサイズ制限、またはウイルス産生細胞株に対する結合遺伝子産物の毒性など、遺伝子産物を分けるのには理由がある場合がある。
【0063】
C. TLRアゴニスト
本発明の方法に従い、TLRアゴニストを使用して異種ポリペプチドに対する免疫応答を高める。いくつかの態様では、TLR-3アゴニストを使用する。他の態様では、TLR 7/8アゴニストを使用する。本明細書に記載のTLRアゴニストは、対象となる抗原をコード化する発現ベクターと同時に送達できるか、または対象となる抗原をコード化する発現ベクターとは別々に(つまり、時間的または空間的に)送達できる。例えば、発現ベクターは非経口ではない経路(例えば、経口、鼻腔内、または粘膜)を介して投与でき、一方で、TLR-アゴニストは非経口経路(例えば、筋肉内、腹腔内、または皮下)によって送達される。
【0064】
1. TLR-3アゴニスト
本発明の好ましい態様では、TLR-3アゴニストを使用して対象となる抗原の免疫認識を刺激する。TLR-3アゴニストは、例えば、ショートヘアピンRNA、ウイルス由来RNA、二本鎖またはショートヘアピンRNAを形成できる短いRNA断片および低分子干渉RNA (siRNA)を含む。本発明の一態様では、TLR-3アゴニストは、例えば、シンドビスウイルス由来dsRNAまたはdsRNAウイルス中間体などのウイルス由来dsRNAである[Alexopoulou et al., Nature 413:732-8 (2001)]。いくつかの態様では、TLR-3アゴニストはショートヘアピンRNAである。ショートヘアピンRNA配列は、典型的には、リンカー配列によって連結させた2本の相補配列を含む。特定のリンカー配列は、本発明の重要な局面ではない。2本の相補配列の結合によるdsRNAの形成を妨げない限り、適当な任意のリンカー配列を使用できる。
【0065】
いくつかの態様では、ショートヘアピンRNAは、SEQ ID NO:3、4、5、8、9、10、11、もしくは12に記載の配列、SEQ ID NO:3、4、5、8、9、10、11、もしくは12に記載の配列と実質的な同一性を有する配列、またはSEQ ID NO:3、4、5、8、9、10、11、もしくは12に記載の配列の変異体を含む。特定の態様では、TLR-3アゴニストであるdsRNAは、特定のポリペプチドをコード化しないが、応答細胞(例えば、樹状細胞、末梢血単核球細胞またはマクロファージ)とインビトロまたはインビボで接触した際に炎症誘発性サイトカイン(例えば、IL-6、IL-8、TNF-α、IFN-α、IFN-β)を産生する。一部の場合、TLR-3アゴニストをコード化する核酸(例えば、発現したdsRNA)および異種抗原をコード化する核酸を含むキメラアデノウイルスベクターは、同じ製剤中で投与される。他の場合、TLR-3アゴニストをコード化する核酸および異種ポリペプチドをコード化する核酸を含むキメラアデノウイルスベクターは、別の製剤中で投与される。TLR-3アゴニストをコード化する核酸および異種抗原をコード化する核酸を含むアデノウイルスベクターを、別の製剤中で投与する場合、それらの投与は同時または連続的でありうる。例えば、TLR-3アゴニストをコード化する核酸を最初に投与して、続いてキメラアデノウイルスベクターを投与できる(例えば、1、2、4、8、12、16、20、または24時間後、2、4、6、8、または10日後)。または、アデノウイルスベクターを最初に投与して、続いてTLR-3アゴニストをコード化する核酸を投与できる(例えば、1、2、4、8、12、16、20、または24時間後、2、4、6、8、または10日後)。いくつかの態様では、TLR-3アゴニストをコード化する核酸および異種抗原をコード化する核酸は同じプロモーターの制御下にある。他の態様では、TLR-3アゴニストをコード化する核酸および異種抗原をコード化する核酸は異なるプロモーターの制御下にある。
【0066】
二本鎖RNAの数種の化学合成類似体が市販されている。これらには、ポリイノシン-ポリシチジル酸(ポリI:C)、ポリアデニル酸:ポリウリジル酸(ポリA:U)およびポリI:ポリCが含まれる。TLR-3に対する抗体(または抗体の架橋)は、IFN-βまたは炎症誘発性サイトカインの産生も導くことができる[Matsumoto et al., Biochem.Biophys.Res.Commun.24: 1364 (2002), de Bouteiller et al., J Biol. Chem.18:38133-45 (2005)]。市販の任意の配列のsiRNA断片はまた、Invitrogenなどの供給元からも入手できる。
【0067】
2. TLR7/8アゴニスト
いくつかの態様では、TLRアゴニストはTLR7/8アゴニストである。TLR7/8リガンドは、典型的には、一本鎖のウイルス由来RNAである。受容体はエンドソームなどの細胞内コンパートメント内で発現されるため、すべての短いRNA断片がTLR7/8シグナルカスケードを引き起こすわけではなく、なぜならそれらは正しいコンパートメントに到達する必要があるからである。外因性添加によってこれを引き起こすことが示されているいくつかのリガンドは、ポリウリジル酸、レジキモドおよびイミキモドである[Westwood, et al., Vaccine 24: 1736-1745(2006)]。
【0068】
IV. 薬学的組成物
本明細書に記載のベクターを含む薬学的組成物はまた、生物活性を有するか、または生物活性のない他の化合物も含むことができる。必要なはいが、ポリペプチドは、例えば、米国特許第4,372,945号および第4,474,757号に記載のように他の高分子に接合させることができる。薬学的組成物は、一般的に、予防および治療の目的で使用できる。投与されたキメラアデノウイルスベクターが所望の部位に到達できるように、薬学的組成物は胃での分解からの保護方法を含みうる。口腔環境では、EudragitおよびTimeClockの放出システムならびにアデノウイルス専用に設計された他の方法[Lubeck et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86(17), 6763-6767 (1989); Chourasia and Jain, J Pharm Pharm Sci, 6(1), 33-66 (2003)]を含め、これらのいくつかが利用可能である。経口送達用のDNAおよび薬のマイクロカプセル化について既に記載されている方法もいくつか存在する(例えば、米国特許出願第2004043952号参照)。いくつかの態様では、Eudragitシステムを使用して、より低い小腸にキメラアデノウイルスベクターを送達する。しかし、小腸の他の部位への送達においても作用する必要がある。
【0069】
上記の通り、本発明のキメラアデノウイルスベクターは、当業者に公知の任意の送達システムを使用して送達できる。Rolland (1998) Crit. Rev. Therap. Drug Carrier Systems 15:143-198および本明細書で引用されている参考文献に記載の技術など、多数の遺伝子送達技術が当技術分野において周知である。
【0070】
免疫原性組成物に異種ポリペプチド(例えば、免疫原性ポリペプチド)をコード化するポリヌクレオチドの薬学的に許容される塩が含まれうることは明らかであろう。これらの塩は、有機塩基(例えば、1級、2級および3級アミンならびに塩基性アミノ酸の塩)および無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩)を含む、薬学的に許容される非中毒性の塩基から調製できる。塩の一部の特定の例としては、注射用のリン酸塩緩衝生理食塩液と生理的食塩水が挙げられる。
【0071】
当業者に公知の任意の適当な担体は、本発明の薬学的組成物でも使用できる。適当な担体としては、例えば、水、生理食塩水、アルコール、油脂、ワックス、緩衝剤、マンニトールなどの固体担体、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖および炭酸マグネシウム、または生分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸ポリグリコール酸)が挙げられる。適当な生分解性ミクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号、第5,075,109号、第5,928,647号、第5,811,128号、第5,820,883号に開示されている。免疫原性ポリペプチドおよび/または担体ウイルスは、生分解性ミクロスフェア内に封入できるか、またはミクロスフェア表面に結合させることができる。
【0072】
このような組成物はまた、緩衝剤(例えば、中性緩衝食塩水またはリン酸塩緩衝生理食塩液)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖またはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、酸化防止剤、静菌薬、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、レシピエントの血液よりも製剤を等張、低張性または弱高張にする溶質、懸濁剤、増粘剤および/または防腐剤を含むこともできる。または、本発明の組成物を凍結乾燥物として製剤化できる。化合物を周知の技術を利用してリポソーム内に封入することもできる。
【0073】
本発明のいくつかの態様では、組成物はアジュバントをさらに含む。適当なアジュバントとしては、例えば、国際公開公報第04/020592号、Anderson and Crowle, Infect. Immun.31(1):413-418 (1981)、Roterman et al., J. Physiol. Pharmacol, 44(3): 213-32 (1993), Arora and Crowle, J. Reticuloendothel. 24(3): 271-86 (1978)およびCrowle and May, Infect. Immun. 38(3): 932-7 (1982)に記載されている脂質化合物および非脂質化合物、コレラ毒素(CT)、CTサブユニットB、CT誘導体CTK63、大腸菌熱不安定エンテロトキシン(LT)、LT誘導体LTK63、A1(OH)3および多イオン性有機酸が挙げられる。適当な多イオン性有機酸としては、例えば、6,6'-[3,3'-ジメチル(demithyl)[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジイル]ビス(アゾ)ビス[4-アミノ-5-ヒドロキシ-1,3-ナフタレン-ジスルホン酸] (Evans Blue)および3,3'-[1,1'ビフェニル]-4,4'-ジイルビス(アゾ)ビス[4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸] (Congo Red)が挙げられる。多イオン性有機酸が、任意の種類の投与と併用した、任意の遺伝子ワクチン接種方法に使用できることを当業者は理解するであろう。
【0074】
他の適当なアジュバントとしては、例えば、イミキモドおよびレジキモドなどのイミダゾキノリンファミリーのメンバーといった局所免疫調節薬が挙げられる(例えば、Hengge et al., Lancet Infect. Dis. 1(3):189-98 (2001)参照)。発現したTLR-3アゴニスト(例えば、dsRNA)およびTLR-7アゴニスト(例えば、ssRNA)もまた本発明において使用されうる。
【0075】
さらなる適当なアジュバントとして、例えば、さらなるミョウバンを基材としたアジュバント(例えば、アルハイドロゲル(Alhydrogel)、リハイドラゲル(Rehydragel)、リン酸アルミニウム、アルガムリン(Algammulin));油を基材としたアジュバント(フロインド不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Mich.)、Specol、RIBI、TiterMax、Montanide ISA50またはSeppic MONTANIDE ISA720);非イオン性ブロック共重合体を基材としたアジュバント、サイトカイン(例えば、GM-CSFまたはFlat3-リガンド);Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.);AS-2 (SmithKline Beecham, Philadelphia, Pa.);カルシウム、鉄または亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁剤;アシル化糖;カチオンまたはアニオン誘導体化多糖類;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリル脂質AおよびQuil Aが市販されている。GM-CSFまたはインターローイキン-2、-7または-12などのサイトカインも適当なアジュバンである。ヘモシアニン(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン)およびヘモエリトリンも本発明において使用できる。例えば、キチン、キトサンおよび脱アセチル化キチンなどの多糖類アジュバントもアジュバントとして適当である。他の適当なアジュバントとして、ムラミルジペプチド(MDP、NアセチルムラミルLアラニルDイソグルタミン)、細菌性ペプチドグリカンおよびそれらの誘導体(例えば、トレオニル-MDPおよびMTPPE)が挙げられる。トレハロースジミコール酸の有無にかかわらず、BCGおよびBCG細胞壁骨格(CWS)も本発明においてアジュバントとして使用できる。トレハロースジミコール酸自体を使用できる(例えば、米国特許第4,579,945号参照)。解毒化エンドトキシンもまた単剤または他のアジュバントとの併用でアジュバントとして有用である(例えば、米国特許第4,866,034号、第4,435,386号、第4,505,899号、第4,436,727号、第4,436,728号、第4,505,900号および第4,520,019号)。サポニンQS21、QS17、QS7もアジュバントとして有用である(例えば、米国特許第5,057,540号、欧州特許第0362 279号、国際公開公報第96/33739号および国際公開公報第96/11711号参照)。他の適当なアジュバントとしては、Montanide ISA 720 (Seppic, France)、SAF (Chiron, Calif., United States)、ISCOMS (CSL)、MF-59 (Chiron)、SBASの一連のアジュバント(例えば、SmithKline Beecham , Rixensart, Belgiumから入手できるSBAS-2、SBAS-4もしくはSBAS-6またはこれらの変異体)、Detox (Corixa, Hamilton, Mont.)およびRC-529 (Corixa, Hamilton, Mont.)が挙げられる。
【0076】
スーパー抗原も本発明におけるアジュバントとしての使用に考慮される。スーパー抗原としては、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌のα、β、γおよびΔエンテロトキシン、ならびにα、β、γおよびΔ大腸菌エキソトキシンなどのブドウ球菌属のエクソタンパク質が挙げられる。一般的なブドウ球菌属のエンテロトキシンは、ブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA)およびブドウ球菌エンテロトキシンB (SEB)からブドウ球菌エンテロトキシンE (SEE)まで記載されるように公知である(Rott et al., 1992)。化膿連鎖球菌B (SEB)、クロストリジウム・パーフリンジェンスエンテロトキシン(Bowness et al., 1992)、化膿連鎖球菌の細胞膜関連タンパク質(CAP) (Sato et al., 1994)および黄色ブドウ球菌の毒物ショック症候群毒素1 (TSST1) (Schwab et al., 1993)はさらなる有用なスーパー抗原である。
【0077】
本明細書で提供する薬学的組成物中において、例えば、主にTh1型またはTh2型の免疫応答を誘発するようにアジュバント組成物をデザインできる。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN-γ、TNF-α、IL-2およびIL-12)は、投与した抗原に対する細胞媒介性の免疫応答の誘導に有利に働く。対照的に、高レベルのTh2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-10)は、体液性免疫応答の誘導に有利に働く傾向がある。本明細書で提供する免疫原性ポリペプチドを含む組成物の経口送達の後、典型的には、Th1型およびTh2型の反応を含む免疫応答が誘発される。
【0078】
本明細書に記載の組成物は、徐放性製剤の一部として投与できる(つまり、投与後に化合物の徐放性をもたらすカプセルまたはスポンジなどの剤形)。このような製剤は、一般的に、周知の技術を利用して調製できる(例えば、Coombes et al.(1996) Vaccine 14:1429-1438参照)。徐放性製剤には、担体マトリクスに分散させた、および/または律速膜に囲まれた貯蔵部位内に含まれるポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは抗体が含まれうる。
【0079】
このような製剤中で使用する担体には、生体適合性があり、そしてまた生分解性もありうる;好ましくは、製剤は比較的一定レベルで活性成分を放出させる。このような担体としては、ポリ(ラクチド-ポリ-グリコリド)の微小粒子、ならびにポリアクリレート、ラテックス、デンプン、セルロースおよびデキストランが挙げられる。他の遅延放出性担体としては、非液状の親水性コア(例えば、架橋多糖類またはオリゴ糖)を含む超分子バイオベクター、および、任意で、両親媒性化合物を含む外層(例えば、国際公開公報第94/20078号;国際公開公報第94/23701号;および国際公開公報第96/06638号参照)が挙げられる。徐放性製剤中における活性化合物の含量は、移植部位、放出速度および予測される放出の持続時間、および処置または予防する状態の性質に左右される。
【0080】
薬学的組成物は、単位用量、または密閉アンプルまたはバイアルなど多用量容器で提供できる。これらの容器は、好ましくは、製剤の滅菌製を保つために密封する。一般に、製剤は、油性または水性の媒体中で、懸濁剤、液剤または乳剤として保存できる。あるいは、薬学的組成物は、使用直前に滅菌の液状担体の付加だけを必要とする凍結乾燥条件で保存できる。
【0081】
V. 本発明の治療上の使用
本発明の一局面として、例えば、ウイルス感染症、細菌感染症、寄生虫感染症、真菌感染症または癌などの疾患を有する被験体または患者から抗原特異的免疫応答を誘発させるための、本明細書に記載の免疫原性組成物の使用が含まれる。本明細書で使用する「被験体」または「患者」は、例えば、げっ歯類、ネコ科動物、イヌまたは霊長類などの任意の温血動物、好ましくはヒトを指す。免疫原性組成物は、疾患の任意の病期(つまり、前癌、癌または転移性段階)における処置または疾患の予防に使用できる。例えば、本明細書に記載の組成物は、HIVもしくは肝炎などのウイルス性疾患の処置、または癌の予防または処置に使用できる。このような方法の中で、典型的には、薬学的組成物を患者に投与する。患者は疾患または障害に苦しんでいる、または苦しんでいない(例えば、ウイルス感染症、細菌感染症または癌)。したがって、上記の薬学的組成物は、疾患または障害(例えば、ウイルス感染症、細菌感染症または癌)の発症を予防する、あるいは疾患または障害(例えば、ウイルス感染症、細菌感染症または癌)に罹患した患者の処置に使用できる。疾患または障害は、当技術分野において一般的に受け入れられている基準を利用して診断できる。例えば、ウイルス感染症は患者のサンプルにおけるウイルス力価の測定によって診断でき、細菌感染症は患者のサンプルにおける細菌を検出することで診断でき、ならびに癌は悪性腫瘍の存在を検出することで診断できる。薬学的組成物は、原発腫瘍の外科切除および/または放射線療法の施行または従来の化学療法薬の投与の前または後のいずれかに投与できる。
【0082】
免疫療法は典型的には、能動免疫療法であり、能動免疫療法における処置は、免疫応答改善薬剤(本明細書で提供する免疫原性ポリペプチドをコード化する核酸を含む組成物)の投与による、例えば腫瘍または細菌またはウイルス感染細胞に対して反応する宿主の内因性免疫系のインビボ刺激に依存する。
【0083】
本明細書に記載の予防的または治療的組成物の投与回数および用量は、個人間でばらつきがあり、標準技術を利用して容易に設定できる。52週間にわたって1から10用量を投与できる場合が多い。典型的には、1ヶ月間隔で3用量を投与し、より典型的には、は、2〜3ヶ月間ごとに2〜3用量投与する。特定の治療においては、むしろ年1回にすることが可能である。その後、定期的にブースターワクチン接種を施すことができる。個々の患者ならびに特定の疾患および障害には、代替プロトコルが適切でありうる。適当な用量は、上記の通りに投与した場合に、例えば、抗腫瘍、抗ウイルスまたは抗菌の免疫応答を促進でき、ならびに基礎レベル(つまり、未処置)よりも少なくとも10〜50%上回る量の化合物である。このような反応は、患者における抗腫瘍抗体を測定することによって、または、例えば、患者の腫瘍細胞、患者のウイルス感染細胞または患者の細菌感染細胞をインビトロで殺傷できる細胞溶解性T細胞のワクチン依存的生成によってモニターできる。このようなワクチンはまた、ワクチン未接種患者と比較して、ワクチン接種患者における臨床転帰の改善(例えば、より頻繁な寛解、完全または部分的またはより長い無病生存期間)を導く免疫応答を起こすこともできるはずである。典型的には、ウイルス力価の量は1.0×104 pfu/匹から1.0×1015 pfu/匹の間でありうる。適当な用量サイズは患者の体格に応じて変動するが、しかし、典型的には、約0.01mlから約10 mlの範囲、より典型的には、約0.025mlから約7.5mlの範囲、最も典型的には、約0.05mlから約5mlの範囲で変動する。特定の患者または処置する特定の疾患や障害に基づいて用量サイズを調節できることを当業者は理解する。経口投与では、キメラアデノウイルスベクターを丸剤に都合よく製剤化できる。
【0084】
一般に、適当な用量および治療計画では、治療上および/または予防上の利益を提供すのに十分な量の活性化合物が提供される。未処置患者との比較で、処置済み患者における臨床転帰の改善(例えば、より頻繁な寛解、完全または部分的またはより長い無病生存期間)を確証することによって、このような反応をモニターできる。このような免疫応答は、一般的に、上記の標準増殖、細胞毒性またはサイトカインのアッセイを利用して評価でき、これらは処置前後に患者から入手されたサンプルを用いて実施できる。
【0085】
例えば、免疫原性ポリペプチドに特異的である、体液中において免疫原性ポリペプチドと抗体の間で形成される抗原抗体結合物の検出を利用して、免疫原性ポリペプチドに関連する疾患または障害について、特定の免疫原性ポリペプチドが関与する治療の有効性をモニターできる。治療開始前および治療開始に続いて、個人から採取した体液サンプルでの抗原抗体結合物を上記の方法によって解析できる。簡単に説明すると、両サンプルにおいて検出される抗原抗体結合物の数を比較する。第1のサンプル(治療前)と比較して、第2番のサンプル(治療開始後)における抗原抗体結合物の数の実質的な変化によって、治療の成功が反映される。
【0086】
A. 本発明の組成物の投与
本発明の方法にしたがって、キメラアデノウイルスベクターを含む組成物を非経口ではない任意の経路(例えば、経口的に、鼻腔内に、または経粘膜的に、例えば腟、肺、だ液腺、鼻腔、小腸、結腸、直腸、扁桃腺もしくはパイエル板を介して)によって投与する。上記の通り、組成物を単剤で、またはアジュバントと一緒に投与できる。いくつかの態様では、アジュバントは核酸配列(例えば、IL-2、GM-CSF、IL-12または鞭毛抗原をコード化する核酸)によってコード化される。本発明のいくつかの態様では、アジュバントは組成物と同時投与する。本発明の他の態様では、アジュバントは組成物の投与後、例えば組成物の6、12、18、24、36、48、60、または72時間後に投与する。
【0087】
B. 対象となる抗原に対する免疫応答の検出
異種ポリペプチドに対する免疫応答は、例えば、CD4+またはCD8T細胞の特異的活性化の検出、またはポリペプチドに特異的に結合する抗体の存在の検出など、当技術分野において公知の任意の手段を利用して、検出可能である。
【0088】
粘膜性、体液性または細胞媒介性の免疫応答に関連するCD4またはCD8T細胞の特異的活性化は様々な方法で検出できる。特異的なT細胞活性化の検出方法としては、限定はされないが、T細胞の増殖、サイトカイン(例えば、リンホカイン)産生または細胞溶解活性の産生(つまり、免疫原性ポリペプチドに特異的な細胞傷害性T細胞の産生)が挙げられる。CD4T細胞については、特異的なT細胞活性化の好ましい検出方法は、T細胞の増殖の検出である。CD8T細胞については、特異的なT細胞活性化の好ましい検出方法は、51Cr放出アッセイを利用した細胞溶解活性の生成の検出である(例えば、Brossart and Bevan, Blood 90(4): 1594-1599 (1997) and Lenz et al., J. Exp. Med. 192(8):1135-1142 (2000)参照)。
【0089】
T細胞増殖の検出は、公知の様々な技術を利用して遂行できる。例えば、T細胞増殖は、DNA合成速度の測定によって検出できる。増殖刺激を受けたT細胞は、DNA合成速度の上昇を示す。DNA合成速度の典型的な測定方法は、例えば、新たに合成されるDNAに取り込まれるヌクレオシド前駆体であるトリチウム標識チミジンによるT細胞の同位体標識培養による。トリチウム標識チミジンの取り込み量は、液体シンチレーション分光光度計を使用して測定できる。T細胞増殖の他の検出方法としては、インターローイキン2(IL-2)産生、Ca2+流量または3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムなどの染料の取り込み量の増加を測定することが挙げられる。あるいは、リンホカイン(例えば、インターフェロンγ)の合成を測定でき、または免疫原性ポリペプチドに応答できるT細胞の相対数を定量化できる。
【0090】
当技術分野において公知のイムノアッセイを利用して、粘膜抗体反応を含む抗体免疫応答(別称、体液性免疫応答またはB細胞応答)を検出できる[Tucker et al., Mol Therapy, 8, 392-399 (2003); Tucker et al., Vaccine, 22, 2500-2504 (2004)]。適当なイムノアッセイとしては、Davidらの二重モノクローナル抗体サンドウィッチイムノアッセイ技術(米国特許第4,376,110号);モノクローナル-ポリクローナル抗体サンドウィッチアッセイ(Wide et al., in Kirkham and Hunter, eds., Radioimmunoassay Methods, E. and S. Livingstone, Edinburgh (1970));Gordonらの「ウェスタンブロット」法(米国特許第4,452,901号);標識リガンドの免疫沈降(Brown et al.(1980) J.Biol.Chem.255:4980-4983);例えば、Rainesら(1982)が記載している酵素免疫吸着測定法(ELISA)(J. Biol.Chem.257:5154-5160);蛍光色素の使用を含む免疫細胞化学法(Brooks et al.(1980) Clin.Exp.Immunol.39:477);および活性の中和(Bowen-Pope et al.(1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:2396-2400)が挙げられる。上記のイムノアッセイに加えて、米国特許第3,817,827号、第3,850,752号、第3,901,654号、第3,935,074号、第3,984,533号、第3,996,345号、第4,034,074号および第4,098,876号など、他の多くのイムノアッセイを利用できる。
【0091】
実施例
以下の実施例は本発明の例示を意図しており、本発明を限定しない。
【0092】
実施例1:キメラアデノウイルスベクター(DSI)の構築
TLR-3アゴニストが発現させる対象となる抗原に対する適応免疫応答を改善できることを実証するために、いくつかの異なる対象となる抗原をコード化する核酸配列を含むいくつかの異なるキメラアデノウイルスベクターを構築した。この実施例では、gp120をコード化する核酸(NIH AIDS Reagent and Reference Reagent Programから)をCMVプロモーターの制御下に置き、シャトルベクター(pShuttle, Qbiogene)内の開始コドンの少し上流に小さなイントロンを持たせた。gp120をコード化する核酸の下流にbGHのポリAテールを置いた。ベクター配列をSEQ ID NO:1に示している。ベクターpAd (Qbiogene)との相同的組換えを行い、gp120をコード化する核酸を含む組換えAd (E1/E3欠失)を産生可能なベクターを作成した。新しいpAd-CMV-gp120発現構築物を293細胞内にトランスフェクトさせてDSIを作成した。標準方法により 力価を測定した。
【0093】
実施例2:DSI (ベクター+TLR-3アゴニスト)は、抗原特異的免疫応答を誘発に関して、標準的なrAd5よりも優れている
TLR-3アゴニストの添加によって適応免疫応答を改善できるか否かを判定するために、10×107 PFUのrAd-CMV-gp120+5ug/ml ポリI:C(DS1)またはrAd-CMV-gp120単剤(rAd5)のいずれかを0週目または3週目に動物に強制経口投与した。いずれのベクターにおいてもCMVプロモーターの制御下でHIV gp120を発現させており、組換えE1/E3欠失アデノウイルス5型を使用している。Tucker, et al., Mol Ther 8:392 (2004)に記載の抗gp120 IgG ELISAによって、初回投与後3週目および6週目での血漿中におけるgp120に対する抗体力価を測定した。図1に示す通り、初回経口投与後3週目および6週目のいずれでもタンパク質gp120に対する抗体反応の誘発において、DS1はrAd5よりも有意に良好に機能した。特に、6週目でのgp120に対する平均抗体力価は、rAd5群よりもDS1群で100倍良好であった。3週目と6週目の間に平均力価が20倍以上上昇しているが、一方、rAd5群は平均抗体力価のわずかな上昇を示すのみであった点で、4週目での再投与によってDS1群は高められることも考えられる。結果から、対象となる抗原をコード化する核酸を含むキメラアデノウイルスベクターの経口投与の後、TLR-3アゴニストの添加によって対象となる抗原に対するAd5媒介性の抗体反応を改善できることが実証される。アッセイの陽性対照として、3週目にgp120+フロイント完全アジュバントを皮下注射した動物の血清も抗gp120 ELISAにおいて測定した。未処置動物およびdsRNA類似体単剤(dsRNA)を投与した動物をそれぞれELISAの陰性対照およびバックグラウンド対照として使用した。各群に6匹の動物が含まれた。
【0094】
実施例3:第2のキメラアデノウイルスベクター(DSIb)および第3のキメラアデノウイルスベクター(DS1c)の構築
緑色螢光タンパク質(GFP)をコード化する核酸を、標準的な制限酵素消化を利用してpShuttle-CMV (Qbiogene)に挿入した。GFPをコード化する核酸配列を含む組換えAd (E1/E3欠失)を産生可能なベクターを生成するために、上記のベクターpAd (Qbiogene)との相同組換えによってプラスミドpShuttleCMV-GFPを組み合わせた。インフルエンザA/PR/8/34のヘマグルチニン(HA)をコード化する核酸をクローニングして、pShuttle-CMVベクター(Qbiogene)(SEQ ID NO:13)内に置いた。HAをコード化する核酸配列を含む組換えAd (E1/E3欠失)を産生可能なベクターを生成するために、上記のベクターpAd (Qbiogene)との相同組換えによってプラスミドpShuttleCMV-HA (PR/8)を組み合わせた。新しいpAd-CMV-GFPおよびpAd-CMV-HA発現構築物を293細胞内にトランスフェクトさせて組換えAdを生成した。標準方法により力価を測定した。
【0095】
実施例4:抗原特異的免疫応答の誘発に関して、DSIb (Ad-CMV-GFP+TLR-3アゴニスト)およびDS1c(Ad-CMV-HA+TLR-3アゴニスト)は標準的なrAd5よりも優れている
1.0×107 PFUのAd-CMV-GFP+5ug/ml ポリI:C(DS1b)またはAd-CMV-GFP (rAd5)のいずれかを、0週目に動物に強制経口投与した。いずれのウイルスにおいてもCMVプロモーターの制御下でGFPを発現させており、組換えE1/E3欠失アデノウイルス5型を使用している。抗GFP IgG ELISAによって、初回ウイルス投与後3週目での血漿中におけるGFPに対する抗体力価を測定した。図2に示す通り、初回経口投与後3週目でのタンパク質GFPに対する抗体反応の誘発において、DS1b群はrAd5よりも有意に良好に機能した。
【0096】
脾細胞の四量体染色によって、GFPに対するCD8T細胞応答を測定した。0、4、8および10週目に動物にワクチン接種して、10週目に脾臓を回収した。CD8-FITCおよびBalb/cマウスにおけるGFPに対する免疫優性エピトープを認識する四量体で脾細胞を染色した。結果では、四量体陽性のCD8細胞を誘発する際、DS1bベクターの経口投与がrAd単剤よりも統計的に良好であることが示された(図2b)。
【0097】
1.0×107 PFUのAd-CMV-HA+5ug/ml ポリI:C (DS1c)またはAd-CMV-HA (rAd5)のいずれかを0週目に動物に強制経口投与した。いずれのウイルスにおいてもCMVプロモーターの制御下でHAを発現させており、組換えE1/E3欠失アデノウイルス5型を使用している。抗PR8/34 IgG ELISAによって、初回投与後3週目での血漿中におけるHAに対する抗体力価を測定した。ELISAプレートを5ug/mlの全A/PR8/34溶解物(Advanced Biotechnology Incorporated, Gaithersburg, MD)でコーティングした点を除いて、抗体反応の測定手順は、前述の手順と同様である。図2Cに示す通り、初回経口投与後3週目でのインフルエンザに対する抗体反応の誘発において、DS1c群はrAd5よりも有意に良好に(約100倍良好)機能した。これらの試験の結果はまた、キメラ組換えアデノウイルスベクターと一緒にTLR-3アゴニストを使用するアプローチが、一般的に、複数の異なる異種抗原に適用可能であり、抗体力価が100倍改善されることも実証している。
【0098】
実施例5:非経口経路ではない送達は、非経口経路よりも優れている
動物の大腿四頭筋に5ug/mlの1.0×107 pfuのpAd-CMV-gp120 (DS10+/-ポリI:C)を直接注入することで筋肉内送達について試験した。上記の通り、GFPに対する血漿、血清IgG力価を測定した。各群に6匹の動物が含まれた。図3Aに示す通り、TLR-3アゴニストの群の投与後3週目にgp120に対する有意な抗体力価が認められた(筋肉内rAd+PI)(図3a)。
【0099】
マウスの鼻腔内に5ug/ml DS1c+/-polyを20ul (1.1×106 pfu)投与することで鼻腔内投与について試験した。滅菌生理的食塩水中で製剤化したウイルスを投与する前に、イソフルランで軽くマウスを麻酔した。結果は、標準的なrAd-CMV-HAを投与した動物と比較して、rAd-CMV-HA+ポリI:C (DS1c)での抗体力価が若干高くなった。DS1c (N=6)群およびrAd (N=5)群について、個々の動物として結果をプロットする。陰性対照として未処置動物(n=4)を使用する。
【0100】
実施例6:発現TLR3アゴニストの構築
アニーリング時に二本鎖RNA

のヘアピンを作るように設計した45 bpの断片を形成するDNAオリゴを注文することで、短い45 bpの断片を合成した。ヒトβアクチンプロモーターおよびBGHポリAテールを含むプラスミドpSK内にこの短い断片(luc1と呼ぶ)をクローニングさせた。このプラスミドをpSk-luc1と呼ぶ。
【0101】
実施例7:pSK-luc 1は樹上細胞培養物においてポリI:Cと同様に機能し、ポリI:CおよびrAdの効果は相加的である
上記の実施例6において発現させたTLR-3アゴニストが、TLR-3リガンドポリI:Cのように炎症誘発性サイトカインおよび樹上細胞成熟の誘導因子として機能できるか否かを判定するために、発現させたdsRNA TLR-3アゴニストを樹上細胞培養物中で試験した。初代樹上細胞培養物を作るために、Balb/cマウス大腿骨の骨髄をDMEM培地中でflt-3リガンド(200 ng/ml)、5%血清と共に培養させた。初代骨髄培養物を準備してから5日目、293細胞にpSk-luc1、pSK-β2 (200 bpヘアピンを形成するβガラクトシダーゼの長い断片)またはpcDNA3 (空の発現ベクター)のいずれかをトランスフェクトした。6日目に、トランスフェクトさせた細胞にUV照射処置(40 kJ/cm2で20秒間)して、アポトーシスを起こさせて、これらの細胞を樹状細胞に与えた。ポリI:C (1ug/ml)、rAd (1 pfu/細胞)、rAd+ポリI:C、pSK-luc1トランスフェクト細胞、pSK-β2トランスフェクト細胞またはpcDNA3トランスフェクト細胞を樹状細胞に与えて、一晩培養させた。図4Aに示す通り、マウスIL-6 ELISAによる測定で、pSK-luc1トランスフェクト細胞によって樹上細胞の活性化が有意に改善できる。この実験の結果はまた、rAd+TLR3リガンド(ポリI:C)の併用によって、樹上細胞の活性が大幅に改善できることも示している。
【0102】
追加のリガンドも試験した。SEQ ID NO:11 (m1)に示すTLR -3アゴニストもまた、luc1とほぼ同じ大きさのdsRNAヘアピンを形成する。ヒトβアクチンプロモーターの制御下でのpSK-ベクター内へのクローニング前に、オリゴヌクレオチドをオーバーラップさせて、アニーリングさせることでこれらを作成した。上記の通りにベクターを293細胞内にトランスフェクトさせて、初代樹状細胞に与えた。図4Cに示した通り、これらの追加リガンドは、リガンドluc1と同様に樹状細胞を活性化できる(図4B)。
【0103】
実施例8:第4のキメラアデノウイルスベクター(DS2)および迅速クローニングベクター(DS2β-lucおよびDS2C-luc)の構築
gp120をコード化する核酸(NIH AIDS Research and Reference Reagent Program提供)をCMVプロモーターの制御下に置き、シャトルベクター内の開始コドンの少し上流に小さなイントロンを持たせた(pShuttleCMV, Qbiogene)。gp120をコード化する核酸の下流にbGHのポリAテールを置いた。gp120をコード化する核酸およびTLR-3アゴニストをコード化する核酸のいずれも2つの別々のプロモーターの制御下で1つのベクター内に含まれるように、ヒトβアクチンプロモーターおよびポリAの制御下のdsRNA TLR-3アゴニストluc1 (上記実施例5に記載)をgp120 pShuttleベクター内に挿入した。対象となる抗原をコード化する核酸の発現およびTLR-3アゴニストの発現の方向を図5に例示している。
【0104】
対象となる任意の抗原をコード化する核酸をCMVプロモーターの制御下に挿入でき、ヒトβアクチンプロモーターまたはCMVプロモーターのいずれかを利用してdsRNA TLR-3アゴニストの発現を促進するように、DS2β-luc (SEQ ID NO:14)およびDS2C-luc (SEQ ID NO:15)と呼ばれる2つの汎用ベクターも構築した。特に、ベクターDS2C-lucには対象となる抗原をコード化する核酸を容易にクローニングできるKpn 1部位が1ヶ所ある。対象となる任意の抗原をコード化する核酸をクローニング部位に挿入させて、抗体および対象となる抗原に対するT細胞応答を誘発できるベクターを迅速に製造できるため、これらのベクターの目的はその後のベクター構築をより簡単にすることである。GFPをコード化する核酸およびdsRNA LR-3アゴニストluc1を含む組換えAd(E1/E3欠失)を産生可能なベクターを生成するために、DS2とベクターpAd(Qbiogene)との相同組換えを上記の通りに行なった。新しいpAd-βアクチン-luc1-CMV-gp120発現構築物を293細胞内にトランスフェクトすることで組換えAdを生成した。標準方法により力価を測定した。
【0105】
実施例9:DS2の経口送達後の抗原特異的免疫応答の誘導
1.0×107 PFUのpAd-CMV-gp120+TLR-3アゴニストluc1 (DS2)またはpAd-CMV-gp120 (rAd5)のいずれかを週目に動物に強制経口投与した。いずれのベクターにおいてもCMVプロモーターの制御下でgp120を発現させており、組換えE1/E3欠失アデノウイルス5型を使用している。抗gp120 IgG ELISAによって、ウイルス投与後3週目での血漿中におけるgp120に対する抗体力価を測定した。ELISAのプロトコルは先に記載されている(Tucker, et al., Mol Therapy 8:392 (2004))。DS2が、実験で使用した異種抗原であるgp120に対する抗体において約2ログの改善を誘発できることを結果は示している。DS2ベクターには、発現gp120をコード化する核酸配列およびdsRNA TLR-3アゴニストを発現する核酸配列が含まれる。アッセイの陽性対照として、10μgのgp120タンパク質+フロイント完全アジュバントを皮下注射した2匹の動物の血清も抗gp120 ELISAにおいて測定した。未処置動物をELISAの陰性対照として使用した。各群に6匹の動物が含まれた。結果は図6に例示する。
【0106】
実施例10:DS3の経口送達後の抗原特異的免疫応答の誘導
1.0×107 PFUのpAd-CMV-インフルエンザHA (A/PR/8/34由来)+TLR7/8リガンドポリウリジル酸(DS3)またはpAd-CMV-H A(rAd5)のいずれかを0週目に動物に強制経口投与した。いずれのベクターにおいてもCMVプロモーターの制御下でインフルエンザHAを発現させており、組換えE1/E3欠失アデノウイルス5型を使用している。抗インフルエンザHA IgG ELISAによって、ウイルス投与後3週目での血漿中におけるHAに対する抗体力価を測定した。各群に6匹の動物が含まれた。結果は図7に例示する。
【0107】
実施例11:第5、第6および第7のキメラアデノウイルスベクターの構築(DS2b、DS2b-forおよびND1.1 214)
CelTek (Nashville, TN)によって遺伝子インフルエンザHA (A/Indo/5/2005)を合成して、シャトルベクター内の開始コドンの少し上流に小さなイントロンを伴うCMVプロモーターを持つベクターpShuttleCMV (Qbiogene)内に置いた。DS2bについて図5に示した方向で、ベクター内の抗原の下流にヒトβアクチンプロモーターおよびポリAを伴うluc1 DNA (実施例5に記載)を配置した。luc1の配列は、

であり、完成したpShuttleベクターをSEQ ID NO:6に示している。シャトルベクター内のプロモーターを伴うluc1の別の方向をSEQ ID NO:7に記載しており、DS2b-forと表示している。上記のTLR-3アゴニストluc1およびインフルエンザHAの発現を促進させる2つの別々のCMVプロモーターを含む別のpShuttleベクター(DS2bC-HAと呼ぶ)(SEQ ID NO:16)も構築した。別々のプロモーターの下でHAをコード化する核酸およびTLR-3アゴニストluc1を含む組換えAd (E1/E3欠失)を産生可能なベクターを生成するために、ベクターpAd (Qbiogene)との相同組換えを上記の通りに行なった。新しいpAd構築物を293細胞内にトランスフェクトすることで組換えAdを生成した。標準方法により力価を測定した。DS2C-lucを含む完成させたpAdベクターをND1.1 214と名付けて、2007年2月22日にATCC patent depositoryに寄託した(Manassus, VA)。このキメラアデノウイルスベクターの核酸配列をSEQ ID NO:17に示している。異種抗原をコード化する核酸をボールドテキストにしており、5'末端のCla I認識部位および3'末端のNot 1認識部位で両側が挟まれている。TLR-3アゴニストをコード化する核酸配列をイタリック体にしており、リンカー配列をボールド体にしている。対象となる任意の抗原をコード化する核酸配列および任意の適当な発現させたTLR-3アゴニストをコード化する核酸配列をキメラアデノウイルスベクターに挿入できる。
【0108】
実施例12:DS2bの経口送達後の抗原特異的免疫応答の誘導
1.0×107 PFUのリバース方向(DS2b)またはフォワード方向(DS2b-for)のpAd-CMV-HA+TLR-3アゴニストluc1、またはpAd-CMV-HA (rAd5)のいずれかを0週目に動物に強制経口投与した。これらのウイルスにおいてCMVプロモーターの制御下でHAを発現させており、組換えE1/E3欠失アデノウイルス5型を使用している。抗HA IgG ELISAによって、ウイルス投与後3週目での血漿中におけるHAに対する抗体力価を測定した。結果は、標準的なrAdベクター(rAd5)よりもDS2bベクターの方がタンパク質HAに対する高い抗体反応を誘発させることを示す。DS2bベクターは、HAを発現するrAd5を含み、ならびにToll様受容体3 (TLR3)アゴニスト、二本鎖RNAのヘアピンを発現し、コード化されるdsRNAリガンドによって対象となる抗原に対する適応免疫応答が改善できることを示している。図8Aおよび図6に示す通り、発現させたdsRNAによって複数の異なる異種抗原に対する適応免疫応答が向上することができる。未処置動物をELISAの陰性対照に使用した。各群に6匹の動物が含まれた。
【0109】
反対方向のベクター(DS2for)について、0週目および5週目での動物1匹当たり1.0×107 pfuの経口または筋肉内投与後いずれかの抗体反応を検証した。初回投与後4週目および7週目にHAに対する抗体反応を測定した。図8Bに示す通り、反対方向のベクターによって異種抗原に対する実質的な抗体反応も誘発できる。4週目の時点で、DS1bベクターおよびDS1bforベクターによって、HAに対する同様の反応が誘発された。重要なことは、抗体反応を促進させることの効果がDS1bforベクターで実証され、複数の投与量を利用して異種抗原に対する抗体反応を増大可能であることが示された。
【0110】
キメラアデノウイルスベクターによるアプローチの潜在能力に関する別の例も示した。ベクターND1.1 214を経口投与(1.0×107 pfu)または鼻腔内投与(3×106 pfu)によって動物に与えて、3週目に異種抗原に対する抗体反応を測定した。図8Cに示す通り、HAに対する実質的な抗体反応を経口投与後に測定し、rAdベクターの単回経口投与での典型的な値を大幅に下回っていた。
【0111】
すべての出版物、特許公報、特許および本明細書において引用したGenbankアクセッション番号の出願書類は、個々の各出版物、特許公報または特許が具体的かつ個別に参照により組み入れられるように示したかのごとく、全体としてすべての趣旨で参照により本明細書に組み入れられる。
【0112】
非公式の配列表



































































































【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】ベクターの経口送達後での抗原特異的免疫応答の誘発において、TLR-3アゴニストと併用した本発明のキメラアデノウイルスベクター(つまり、DS1)が、標準的なアデノウイルスベクター(つまり、rAd5)よりもより効果的であることを実証するデータを示している。図1Aは、アデノウイルスベクターの経口送達後3週目でのHIV外被タンパク質(つまり、gp120)に対する抗体力価を表すデータを図示している。図1Bは、アデノウイルスベクターの経口送達後6週目でのHIV外被タンパク質(つまり、gp120)に対する抗体力価を表すデータを図示している。
【図2】抗原特異的免疫応答の誘発において、TLR-3アゴニストと併用した本発明のキメラアデノウイルスベクター(つまり、DS1bまたはDS1c)が、標準的なアデノウイルスベクター(つまり、rAd5)よりもより効果的であることを実証するデータを示している。図2Aは、ベクターの経口投与後3週目での抗GFP IgGの力価を表すデータを図示している。図2Bは、0、4および8週目のベクター投与後10週目でのGFPに対するCD8+T細胞応答を表すデータを図示している。図2Cは、ベクターの経口投与後3週目での抗HA抗体の力価を表すデータを図示している。
【図3】非経口ではない投与時での免疫応答の誘発において本発明のキメラアデノウイルスベクターが優れていることを実証するデータを示している。図3Aは、DS1の筋肉内投与後3週目での抗gp120抗体の力価を表すデータを示している。図3Bは、DS1cの鼻腔内投与後3週目での抗HA抗体の力価を表すデータを示している。
【図4】発現させたTLR-3リガンドアゴニストが抗原提示細胞の活性化を誘発できることを実証するデータを示している。図4Aは、発現させたdsRNA TLR-3アゴニストluc1による樹状細胞の活性化を表すデータを示している。図4Bは、発現させたdsRNA TLR-3アゴニストluc1およびm1による樹状細胞の活性化を表すデータを示している。
【図5】本発明のキメラアデノウイルスベクター、つまり、発現させるdsRNA TLR-3アゴニストをコード化する核酸を含むキメラアデノウイルスベクターの図説である。
【図6】本発明のキメラアデノウイルスベクターが経口送達後での抗原特異的免疫応答の誘発において効果があることを実証するデータを示している。図6は、dsRNA TLR-3アゴニストluc1をコード化する核酸配列を含むキメラアデノウイルスの経口投与後3週目での抗gp120抗体の力価を表すデータを示している。
【図7】抗原特異的免疫応答の誘発において、TLR-7/8アゴニストの有効性が劣ることを実証するデータを示している。
【図8】経口送達後の抗原特異的免疫応答の誘発において、本発明のキメラアデノウイルスベクターが効果的であることを実証するデータを示している。図8Aは、dsRNA TLR-3アゴニストluc1をコード化する核酸配列を含むキメラアデノウイルスの経口投与後4週目での抗HA抗体の力価を表すデータを示している。図8Bは、dsRNA TLR-3アゴニストluc1をコード化する核酸配列を含むキメラアデノウイルスの投与後4週目または7週目での抗HA抗体の力価を表すデータを示している。図8Cは、dsRNA TLR-3アゴニストluc1をコード化する核酸配列を含むキメラアデノウイルスの経口または鼻腔内投与後3週目での抗HA抗体の力価を表すデータを示している。
【配列表フリーテキスト】
【0114】
配列の簡単な説明
SEQ ID NO:1には、キメラアデノウイルスベクターDS1のヌクレオチド配列を示している。
【0115】
SEQ ID NO:2には、キメラアデノウイルスベクターDS2のヌクレオチド配列を示している。
【0116】
SEQ ID NO:3には、TLR-3アゴニストをコード化するヌクレオチド配列を示している。
【0117】
SEQ ID NO:4には、TLR-3アゴニストをコード化するヌクレオチド配列を示している。
【0118】
SEQ ID NO:5には、TLR-3アゴニストをコード化するヌクレオチド配列を示している。
【0119】
SEQ ID NO:6には、インフルエンザHAをコード化する核酸およびTLR-3アゴニスト(luc)をコード化する核酸を含むキメラアデノウイルスベクターのヌクレオチド配列を示しており、ここでインフルエンザHAとTLR-3アゴニストは同方向である。
【0120】
SEQ ID NO:7には、インフルエンザHAをコード化する核酸およびTLR-3アゴニスト(luc)をコード化する核酸を含むキメラアデノウイルスベクターのヌクレオチド配列を示しており、ここでインフルエンザHAとTLR-3アゴニストは逆方向である。
【0121】
SEQ ID:8には、ショートヘアピンRNA TLR-3アゴニストをコード化するヌクレオチド配列を示している。配列の相補的部分を大文字で示しており、およびリンカー配列を小文字で示している。
【0122】
SEQ ID NO:9には、ショートヘアピンRNA TLR-3アゴニスト(g1)をコード化するヌクレオチド配列を示している。配列の相補的部分を大文字で示しており、およびリンカー配列を小文字で示している。
【0123】
SEQ ID NO:10には、ショートヘアピンRNA TLR-3アゴニスト(luc)をコード化するヌクレオチド配列を示している。配列の相補的部分を大文字で示しており、およびリンカー配列を小文字で示している。
【0124】
SEQ ID NO:11には、ショートヘアピンRNA TLR-3アゴニスト(m1)をコード化するヌクレオチド配列を示している。配列の相補的部分を大文字で示しており、およびリンカー配列を小文字で示している。
【0125】
SEQ ID NO:12には、ショートヘアピンRNA TLR-3アゴニストをコード化するヌクレオチド配列を示している。配列の相補的部分を大文字で示しており、およびリンカー配列を小文字で示している。
【0126】
SEQ ID NO:13には、キメラアデノウイルスベクターDS1cのヌクレオチド配列を示している。配列には、HA (PR8 /34)をコード化するヌクレオチドが含まれる。
【0127】
SEQ ID NO:14には、キメラアデノウイルスベクターDS2β-lucのヌクレオチド配列を示している。ベクターは、βアクチンプロモーターの制御下にあるTLR-3アゴニストlucをコード化する配列を含む。ベクターはまた、対象となる抗原をコード化する核酸配列の挿入のためのオープンクローニング部位も含む。
【0128】
SEQ ID NO:15には、キメラアデノウイルスベクターDS2C-lucのヌクレオチド配列を示している。ベクターは、CMVプロモーターの制御下にあるTLR-3アゴニストlucをコード化する配列を含む。ベクターはまた、対象となる抗原をコード化する核酸配列の挿入のためのオープンクローニング部位も含む。
【0129】
SEQ ID NO:16には、CMVプロモーターの制御下でTLR-3アゴニストlucをコード化する核酸配列および別のCMVプロモーターの制御下でHA(鳥インフルエンザ)をコード化する核酸配列を含む、pshuttleベクターのヌクレオチド配列を示している。
【0130】
SEQ ID NO:17には、キメラアデノウイルスベクターND1.1 214のヌクレオチド配列を示している。異種抗原をコード化する核酸をボールドテキストにしており、5'末端のCla I認識部位および3'末端のNot 1認識部位で両側が挟まれている。TLR-3アゴニストをコード化する核酸配列をイタリック体にしており、リンカー配列をボールド体にしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のエレメントを含む発現カセットを含むキメラアデノウイルス発現ベクター:
(a) Toll様受容体-3 (TLR-3)アゴニストをコード化する核酸に機能的に連結した第1のプロモーター;および
(b) 異種ポリペプチドをコード化する核酸に機能的に連結した第2のプロモーター。
【請求項2】
TLR-3アゴニストをコード化する核酸がdsRNAをコード化する核酸を含む、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項3】
TLR-3アゴニストをコード化する核酸がSEQ ID NO:3、4、5、8、9、10、11、および12からなる群より選択される配列を含む、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項4】
異種ポリペプチドがHIV envポリペプチドである、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項5】
HIV envポリペプチドが、gp41、gp120、およびgp160からなる群より選択される、請求項4記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項6】
異種ポリペプチドがインフルエンザHAポリペプチドである、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項7】
第1のプロモーターと第2のプロモーターが同じである、請求項1記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項8】
第1のプロモーターおよび第2のプロモーターがそれぞれCMVプロモーターである、請求項7記載のキメラアデノウイルス発現ベクター。
【請求項9】
請求項1記載の発現ベクターおよび薬学的に許容される担体を含む、免疫原性組成物。
【請求項10】
哺乳動物被験体に免疫原性を有する有効量の請求項1記載のベクターを投与する段階を含む、免疫応答の誘発方法であって、免疫応答が異種ポリペプチドに対するものであり、かつ投与経路が、経口、鼻腔内、および粘膜からなる群より選択される、方法。
【請求項11】
樹状細胞、M細胞(microfold cell)、および腸上皮細胞からなる群より選択される細胞において異種ポリペプチドが発現される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物がヒトである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
以下を含む免疫原性組成物:
(a) 異種ポリペプチドをコード化する核酸に機能的に連結したプロモーターを含むキメラアデノウイルス発現ベクター;
(b) TLR-3アゴニスト;および
(c) 薬学的に許容される担体。
【請求項14】
プロモーターがCMVプロモーターである、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
TLR-3アゴニストがdsRNAおよびポリI:Cからなる群より選択される、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
異種ポリペプチドがHIV envポリペプチドである、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
HIV envポリペプチドがgp41、gp120、およびgp160からなる群より選択される、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
異種ポリペプチドがインフルエンザHAポリペプチドである、請求項13記載の組成物。
【請求項19】
TLR-3アゴニストが異種ポリペプチドの投与後48時間以内に投与される、請求項13記載の組成物。
【請求項20】
TLR-3アゴニストがSEQ ID NO:3、4、5、8、9、10、11、および12からなる群より選択される配列を含む核酸である、請求項13記載の組成物。
【請求項21】
(a) 異種ポリペプチドをコード化する核酸に機能的に連結したプロモーターを含むキメラアデノウイルス発現ベクター;
(b)TLR-3アゴニスト
を哺乳動物被験体に投与する段階を含む、免疫応答を誘発するための方法であって、免疫応答が異種ポリペプチドに対するものである、方法。
【請求項22】
プロモーターが、CMVプロモーターおよびヒトβアクチンプロモーターからなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
異種ポリペプチドがHIV envポリペプチドである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
HIV envポリペプチドが、gp41、gp120、およびgp160からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
異種ポリペプチドがインフルエンザHAポリペプチドである、請求項21記載の方法。
【請求項26】
TLR-3アゴニストがdsRNAである、請求項21記載の方法。
【請求項27】
TLR-3アゴニストがキメラアデノウイルス発現ベクターの投与後48時間以内に投与される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
SEQ ID NO:1、2、3、7、14、15、16、または17に記載の配列を含む、単離核酸。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公表番号】特表2009−533018(P2009−533018A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557403(P2008−557403)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/005386
【国際公開番号】WO2007/100908
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508259353)バクサート インコーポレーティッド (2)
【Fターム(参考)】