説明

キメラ因子H結合タンパク質(FHBP)およびその使用方法

N.メニンギティディスの様々なfHbp変種株に対して殺菌性である抗体を誘発することができるキメラfHbp、および使用方法が提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年4月30日に出願された米国仮出願第61/174,424号の優先権を主張し、その仮出願は、全体として、全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
連邦支援の研究に関する言明
本発明は、公衆衛生総局助成金番号R01 AI46464およびC06 RR16226における政府支援でなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
発明の分野
本発明は、ナイセリア−メニンギティディス(Neisseria meningitidis)によって引き起こされる疾患についてのワクチンに関する。
【背景技術】
【0004】
ナイセリア−メニンギティディスは、ヒト上気道にコロニー形成するグラム陰性細菌であり、最も顕著には髄膜炎および敗血症の、世界的な孤発性および周期性の流行的発生の原因である。発病率および罹患率は、2歳未満の小児で最も高い。他のグラム陰性細菌のように、ナイセリア−メニンギティディスは、典型的には、原形質膜、ペプチドグリカン層、莢膜多糖と共に細胞壁を構成する外膜、および外側の環境へ突き出す線毛を有する。ナイセリア−メニンギティディスの被包性菌株は、小児および若年成人における細菌性髄膜炎および敗血症の主な原因である。侵襲性ナイセリア−メニンギティディス感染症の流行および経済的重要性によって、異なる菌株にわたる、特に異なる血清型または血清亜型を有する遺伝子的に多様なB群菌株にわたる免疫を与えることができる効果的なワクチンについての研究が促されている。
【0005】
H因子結合タンパク質(fHbp、当技術分野においてリポタンパク質2086(Fletcherら、Infect Immun 2004;72:2088〜2100)、ゲノム由来ナイセリア抗原(GNA)1870(Masignaniら、J Exp Med 2003;197:789〜99)、または「741」とも呼ばれる)は、表面に露出したリポタンパク質として細菌内で発現するN.メニンギティディスのタンパク質である。fHbpの重要な機能は、ヒト補体fHを結合して、それが補体活性化を下方制御することである。fHの細菌表面への結合は、病原体が非免疫性ヒト血清または血液中で生存して、自然宿主防御を逃れる重要な機構である。
【0006】
遺伝的および地理的多様性を代表する、第1の研究における71のN.メニンギティディス株、および第2の研究における200超の菌株の分析から、N.メニンギティディス菌株は、(アミノ酸配列変異性および免疫的交差反応性に基づいた変種1(v.1)、変種2(v.2)、および変種3(v.3)と呼ばれる(Masignaniら、J Exp Med 2003;197:789〜99))3つのfHbp変種群に細分されている。他の研究者(Fletcherら、2004)は、A(Masignaniのv.2およびv.3を含む)およびB(v.1)と名付けられた2つのサブファミリーへそのタンパク質を細分している。変種1菌株は、疾患を引き起こすB群分離株の約60%を占める(Masignaniら、2003、前記)。各変種群内において、アミノ酸配列の約92%以上くらいの保存性がある。具体的には、各変種群内の保存性は、89%から100%の間の範囲であるが、変種群の間(例えば、v.1とv.2の間)では、59%程度まで低くなり得る。そのタンパク質は、N.メニンギティディスの全ての知られた菌株によって発現している。
【0007】
異なるfHbp変種を発現する広域の菌株に対して効果的である殺菌抗体応答を誘発することができる単一のfHbpポリペプチドの必要性が残っている。
【発明の概要】
【0008】
N.メニンギティディスの異なるfHbp変種株に対して殺菌性である抗体を誘発することができるキメラfHbpおよび使用方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A−1G】約69個の固有のH因子結合タンパク質の供給源菌株および特性を列挙する表7を示す図である。
【図2A−2E】fHbp可変セグメントA〜Eにおける固有配列、およびセグメントIDを含む各変種群由来の固有ペプチドの数を列挙する表8を示す図である。セグメントIDは、各可変セグメントについての識別名である。別個の配列変種は、セグメントを表すための文字、A〜Eで始まり、続いて、それぞれ、ペプチドID 1(fHbp v.1)かまたはペプチドID 28(fHbp v.3)かのいずれか由来の対応するfHbpセグメントとのそのセグメントの相同性を示すためのαまたはβ、その後に各別個の配列についての番号が続く固有の識別名が割り当てられた。変種群1、2、および3における数は、副表において各セグメント(A〜E)の一部のセグメントIDについて提供されている。
【図3】69個の固有のアミノ酸配列に基づいたfHbpの系統樹を示す図である。
【図4】パネルAは、可変セグメント(V)と共に縦に長い長方形として示された、リンカーの位置を示すfHbpの概略図であり、そのリンカーは、本明細書では不変セグメント(I)とも呼ばれている。パネルBは、各不変セグメントについてのアミノ酸配列を列挙する表である。
【図5】可変セグメントA(残基8〜73)(パネルA)およびB(残基79〜93)(パネルB)における固有fHbpアミノ酸配列の系統樹を示す図である。
【図6】可変セグメントC(残基98〜159)(パネルA)およびD(残基162〜180)(パネルB)における固有fHbpアミノ酸配列の系統樹を示す図である。
【図7】可変セグメントE(残基186〜253)における固有fHbpアミノ酸配列の系統樹を示す図である。
【図8】パネルAは、より一般的な6個のモジュラー群型を含む、系統学的分析から推定された9個のfHbpモジュラー構造の概略図である。灰色セグメントは、ペプチドID 1に相同的なα祖先配列を表し、一方、白色セグメントは、ペプチド28に相同的なβ祖先配列を表す。本明細書で分析された固有fHbpアミノ酸配列の約94%は、最初の6個のモジュラー群型(I、II、III、IV、V、およびVI)のうちの1つに属する。パネルB:分析されたfHbpのうちの4個が、示された3個のモジュラー構造のうちの1つとして分類されている。その構造は、矢印によって指定された、可変セグメント内の接合点を含む。パネルCは、可変セグメント内でα祖先配列がβへ切り替わり、または逆である地点(J、J、およびJ)のアミノ酸残基を列挙する表である。
【図9】ヒトH因子の断片との複合体におけるfHbpの座標に基づいたH因子結合タンパク質の構造的モデルを表す図である(Schneiderら、(2009)Nature 458:890〜3)。下に続くパネルのそれぞれにおける左のモデルは、膜側を向けるfHbpを示す;中央のモデルは露出側を向けている;および右のモデルはfHbpの膜側を下に描いている。パネルA:2つの構造的ドメインを描く略画表示。B:H因子結合性残基が黒色で描かれ、不変セグメントのアミノ酸残基が白色で描かれている、空間充填モデル。C:不変セグメントのアミノ酸残基がパネルBにおいてのように白色で描かれ、抗fHbpモノクローナル抗体のエピトープに影響する残基は黒色で示されている、空間充填モデル。
【図10A−10I】275個のペプチドIDを含む、分析に用いられた固有のH因子結合タンパク質変種の特定の特性を列挙する表9を示す図である。N末端可変配列についての配列識別名は以下の通りである:GGGS(配列番号7)、SGSGG(配列番号8)、GGGSGG(配列番号9)、GGGSGS(配列番号10)、GSGG(配列番号11)、GGGSGGGG(配列番号12)、GGGSGGGSGG(配列番号13)、およびGGSGG(配列番号14)。
【図11】赤外線検出でのイムノブロッティングにより測定されたfHbp発現を示す図である。パネルAおよびC:モジュラー群I(ID 1)もしくはVI(ID 77)における組換えタンパク質、または対応するモジュラー群におけるfHbpを発現する菌株由来の加熱死菌細胞。モジュラー群Iタンパク質は、モジュラー群IおよびIVにおけるほぼ全てのfHbpを認識するマウス抗fHbpモノクローナル抗体JAR 5で検出された。モジュラー群VIタンパク質は、モジュラー群II、III、V、およびVIにおけるほぼ全てのタンパク質を認識する抗fHbpモノクローナル抗体JAR 31で検出された(実施例セクションにおける表6参照)。パネルBおよびD:パネルAおよびCに示された組換えタンパク質の対応する結合からの標準曲線。
【図12】系統的に収集されたN.メニンギティディスB群症例分離株の間でのfHbpモジュラー群の頻度を示す図である。データは、Murphyら[16]によって報告された米国(N=432)、英国(N=536)、およびフランス(N=244)において収集された分離株の配列、ならびにカリフォルニア(2003〜2004年)、メリーランド(1995年および2005年)、および9つの州における小児科病院(2001〜2005年)からの143個の追加の米国分離株の新しく得られた配列からである。
【図13】モジュラー群I〜VIからのfHbpで免疫されたマウス由来の血清プールの血清殺菌活性を示す図である。黒色バーは、同種試験菌株に対して試験された各モジュラー群についての3〜4つの血清プールの中央値力価を表す。白色バーは、試験菌株に対するそれぞれの異種性血清プールの中央値力価を表す。+は、菌株のそれぞれによるfHbpの相対的発現を指す;+/−を有する菌株は、低fHbp発現株を表す(実施例セクションにおける表5の値を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明および本発明の特定の例示的実施形態を記載する前に、当然ながら、そのようなものは変化し得るため、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されないことは理解されるべきである。本明細書に用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、本発明の範囲は添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるから、限定的であることを意図するものではないこともまた理解されるべきである。
【0011】
値の範囲が提供される場合、文脈上明らかに他の指示がない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値と下限値の間のそれぞれの介在する値、およびその述べられた範囲における任意の他の述べられた値または介在する値が本発明内に含まれることは理解されている。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、そのより小さい範囲に独立して含まれることができ、その述べられた範囲における任意の具体的に除外された限界に従って、同様に本発明内に含まれる。述べられた範囲がその限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0012】
他に規定がない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語および科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと類似または等価の任意の方法および材料もまた、本発明の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料はここで記載されている。本明細書で言及された全ての刊行物は、その引用されている刊行物に関連した方法および/または材料を開示および記載するために参照により本明細書に組み入れられている。
【0013】
本明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明らかに他に規定されていない限り、複数の指示対象を含むことは留意されなければならない。したがって、例えば、「1つの抗原(an antigen)」への言及は、複数のそのような抗原を含み、「そのタンパク質(the protein)」への言及は、1つまたは複数のタンパク質への言及を含むなどである。
【0014】
本明細書で論じられている刊行物は、ただ単に、本出願の出願日前のそれらの開示として提供されている。本発明が、先発明という理由でそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものとして解釈されるべきことは本明細書には存在しない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、その実際の刊行日を別途、確認する必要があり得る。
【0015】
本発明の例示的実施態様の詳細な説明
本開示は、N.メニンギティディスの異なるfHBP変種株に対して殺菌性である抗体を誘発することができるキメラfHbpを提供する。
【0016】
定義
GNA1870、GNA 1870、ORF2086、LP2086(リポタンパク質2086)、および「741」としても文献中で知られている「H因子結合タンパク質」(fHbp)は、N.メニンギティディスの表面上に提示されるリポタンパク質であるN.メニンギティディスのポリペプチドを指す。N.メニンギティディス株は、アミノ酸配列変異性および免疫的交差反応性に基づいて(Masignaniら、J Exp Med 2003;197:789〜99)、3つのfHbp変種群(いくつかの報告(Masignaniら、2003、前記)において、変種1(v.1)、変種2(v.2)、および変種3(v.3)、ならびに他の報告(例えば、Fletcherら、2004 Infect Immun 2088〜2100参照)においてファミリーAおよびBと呼ばれる)へ細分されている。N.メニンギティディスに見出されるそれぞれ固有のfHbpはまた、図1A〜1G(表7)および図10A〜10I(表9)に示されているように、neisseria.orgによるペプチドIDを割り当てられている。明確にするために、本開示は、v.1、v.2、およびv.3という専門用語を用いる。(菌株8047、ペプチドID 77由来の)変種2(v.2)fHbpタンパク質および(菌株M1239、ペプチドID 28由来の)変種3(v.3)fHBPの長さは、MC58(ペプチドID 1)のそれと、それぞれ、−1アミノ酸残基および+7アミノ酸残基、異なるため、v.2およびv.3fHbpタンパク質の残基を指すために用いられる番号付けは、これらのタンパク質の実際のアミノ酸配列に基づく番号付けとは異なる。したがって、例えば、v.2またはv.3 fHBP配列の位置166におけるロイシン残基(L)は、v.2タンパク質の位置165およびv.3タンパク質の位置173の残基を指す。
【0017】
用語「異種性の」または「キメラの」は、異なる源に由来する構造によって定義される2つの構成要素を指す。例えば、「異種性の」がキメラポリペプチドとの関連で用いられる場合、キメラポリペプチドには、異なる系統学的な分類の異なるポリペプチド由来であり得る作動可能に連結されたアミノ酸配列(例えば、α祖先アミノ酸配列由来の第1の構成要素およびβ祖先アミノ酸配列由来の第2の構成要素)が挙げられる。同様に、キメラポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとの関連における「異種性の」には、異なる遺伝子由来であり得る作動可能に連結された核酸配列(例えば、fHbp v.1ポリペプチドをコードする核酸由来の第1の構成要素およびfHbp v.2ポリペプチドをコードする核酸由来の第2の構成要素)が挙げられる。本明細書に記載されているようなキメラポリペプチドは、異なるポリペプチドに通常見出される単一のポリペプチドにおけるエピトープの提示を提供する。他の例示的な「異種性」核酸には、コード配列を含む核酸が、そのコード配列のとは異なる遺伝的起源の由来である制御エレメント(例えば、プロモーター)に、(例えば、そのプロモーター、そのコード配列、または両方に対して異なる遺伝的起源であり得る、関心対象の宿主細胞において発現を提供するために)作動可能に連結している、発現構築物が挙げられる。例えば、fHbpポリペプチドまたはそのドメインをコードするポリヌクレオチオドに作動可能に連結したT7プロモーターは、異種性核酸であると言われる。組換え細胞との関連における「異種性の」は、その核酸が存在する宿主細胞とは異なる遺伝的起源である核酸(またはポリペプチドなどの遺伝子産物)の存在を指す。例えば、1つの菌株のナイセリアのアミノ酸配列または核酸配列は、別の菌株のナイセリア宿主に対して異種性である。
【0018】
アミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列との関連における「由来の」(例えば、v.1 fHbp「由来の」アミノ酸配列)とは、ポリペプチドまたは核酸が、参照ポリペプチドまたは核酸(例えば、天然のfHbpタンパク質またはコード核酸)の配列に基づいている配列を有することを示すように意図され、タンパク質または核酸が作製される供給源または方法に関して限定的であることを意図するものではない。細菌株との関連における「由来の」とは、菌株が、親株の継代インビボもしくはインビトロ培養によって得られ、および/または親株の改変によって得られた組換え細胞であることを示すように意図される。
【0019】
「保存的アミノ酸置換」とは、1つのアミノ酸残基を、そのアミノ酸側鎖の化学的および物理的性質(例えば、電荷、サイズ、疎水性/親水性)を共有する別のものの代わりにすることを指す。「保存的置換」は、アミノ酸残基の以下の群内での置換を含むことが意図される:gly、ala;val、ile、leu;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;およびphe、tyr。本明細書に開示されたキメラfHBPとの関連における保存的アミノ酸置換は、関心対象のエピトープの提示を保存するように選択される。そのような置換のガイダンスは、関心対象のエピトープを提示するポリペプチドのアミノ酸配列のアラインメントから引き出すことができる。
【0020】
用語「防御免疫」とは、哺乳動物に投与されるワクチンまたは免疫スケジュールが、ナイセリア−メニンギティディスによって引き起こされる疾患の発生を防ぎ、遅らせ、もしくは疾患の重症度を低下させ、または疾患の症状を減少させ、もしくは完全に除去する免疫応答を誘導することを意味する。ナイセリア−メニンギティディスに対する殺菌抗体の産生が、ヒトにおけるワクチンの保護効果を予測するものとして当分野で受け入れられていることは留意されるべきである(Goldschneiderら、1969、J.Exp.Med. 129:1307;Borrowら、2001 Infect Immun.69:1568)。
【0021】
語句「ナイセリア−メニンギティディスの莢膜群Bの菌株によって引き起こされる疾患」は、ナイセリア−メニンギティディスの莢膜群Bのメンバーによるヒトの感染において存在する任意の臨床症状または臨床症状の組合せを含む。これらの症状には、ナイセリア−メニンギティディスの莢膜群Bの病原株による上気道のコロニー形成、細菌の粘膜および粘膜下血管床への侵入、敗血症、敗血症性ショック、炎症、出血性皮膚病変、線維素溶解および血液凝固の活性化、腎不全、肺不全、および心不全などの臓器不全、副腎出血および筋肉梗塞、毛細管漏出、浮腫、末梢性肢虚血、呼吸促迫症候群、心膜炎、ならびに髄膜炎が挙げられるが、それらに限定されない。
【0022】
語句「広域防御免疫」とは、ワクチンまたは免疫スケジュールが、ナイセリア−メニンギティディスの少なくとも1つより多い菌株に対して(および少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つの菌株に対して、少なくとも8つ、またはそれ以上の菌株に対してであり得る)「防御免疫」を誘発することを意味し、菌株のそれぞれは、異なるfHbp亜変種またはfHbp変種を発現する。本開示は、具体的には、任意の莢膜群(例えば、A、B、またはC)のメンバーによって引き起こされる疾患に対して保護を与えるワクチンまたはワクチン投与計画を企図し、含む。ナイセリア−メニンギティディスの莢膜群Bの菌株によって引き起こされる疾患に対する保護は、この莢膜群に関する疾患を引き起こす菌株の疫学的蔓延および広く効果的な群Bワクチンの欠如によって関心をもたれている。
【0023】
抗原(例えば、ポリペプチド抗原)との関連における句「抗体に特異的に結合する」または「特異的免疫反応性である」とは、他の分子の異種性集団も含む可能性がある試料において抗原の存在に基づき、および/または抗原の存在の証拠となる結合反応を指す。したがって、指定された条件下で、特定化された1つまたは複数の抗体は、試料において特定の1つまたは複数の抗原に結合し、試料に存在する他の分子に有意な量では結合しない。抗原のエピトープ(例えば、ポリペプチドのエピトープ)との関連における「抗体に特異的に結合する」または「特異的免疫反応性である」とは、他のエピトープの異種性集団も、加えて抗原の異種性集団も含む可能性がある抗原(例えば、ポリペプチド)におけるエピトープの存在に基づき、および/またはエピトープの存在の証拠となる結合反応を指す。したがって、指定された条件下で、特定化された1つまたは複数の抗体は、抗原の特定のエピトープに結合し、その抗原内および/または試料中に存在する他のエピトープに有意な量では結合しない。
【0024】
語句「免疫応答を誘発するのに十分な量で」とは、特定の抗原調製物の投与前と後に測定される免疫応答指標間に検出可能な差があることを意味する。免疫応答指標には、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、殺菌性アッセイ、フローサイトメトリー、免疫沈降法、オークタロニー免疫拡散法;例えば、スポット、ウェスタンブロット、または抗原アレイの結合検出アッセイ;細胞毒性アッセイなどのアッセイによって検出されるような、抗体力価または特異性が挙げられるが、それらに限定されない。
【0025】
「表面抗原」は、ナイセリア−メニンギティディスの表面構造に存在する抗原(例えば、外膜、莢膜、線毛など)である。
【0026】
「単離された」とは、その化合物が天然で存在し得る環境とは異なる環境にある関心対象の実体を指す。「単離された」とは、関心対象の化合物について実質的に濃縮され、および/または関心対象の化合物が部分的もしくは実質的に精製されている試料内にある化合物を含むことを意図される。
【0027】
「濃縮された」とは、関心対象の化合物が生体試料(例えば、その化合物が天然で存在する試料、またはそれが投与後に存在する試料)などの出発試料、または化合物が(例えば、細菌性ポリペプチド、抗体、キメラポリペプチドなどとして)作製された出発試料中のその化合物の濃度より高い濃度(例えば、少なくとも3倍高い、少なくとも4倍高い、少なくとも8倍高い、少なくとも64倍高い、またはそれ以上)で存在するように、試料が非自然的に(例えば、実験者または臨床医によって)操作されることを意味する。
【0028】
標的遺伝子の「ノックアウト」とは、例えば、標的遺伝子発現が検出できず、もしくはわずかであり、および/または遺伝子産物が機能的でなく、もしくは有意に機能的であるとはいえないように、標的遺伝子の機能の減少を結果として生じる、遺伝子の配列の変化を指す。例えば、LPS合成に関与する遺伝子の「ノックアウト」は、遺伝子の発現が検出できず、もしくはわずかなレベルでのみ存在し、および/または遺伝子産物の生物活性(例えば、酵素活性)が改変前に対して有意に低下し、もしくは検出できないように、実質的に減少しているという意味を示す。「ノックアウト」は、標的遺伝子の変化が、例えば、所定の条件設定(例えば、温度、モル浸透圧濃度)への暴露、標的遺伝子変化を促進する物質への暴露などによって生じ得るコンディショナルノックアウトを含む。標的遺伝子の「ノックイン」は、標的遺伝子によって提供される機能の増加を結果として生じる、宿主細胞ゲノムにおける遺伝子変化を指す。
【0029】
本明細書に用いられる場合、「非天然の」とは、天然で通常では見出されず、その代わりに、ヒトによって人工的に作製および/または改変されているタンパク質(例えば、fHbp)を指す。非天然の対象fHbpは、化学的合成または組換え方法によって作製することができる。例えば、「非天然のキメラ」は、「人間が作り出したキメラ」を指し、天然では見出されない異種性構成要素を有するfHbpを含む。
【0030】
fHbpおよびfHbpコード核酸
本開示によって企図されるさらなる例示的なキメラfHbpを記載する前に、天然のfHbpを記載することは有益である。
【0031】
便宜上、かつ明確にするために、N.メニンギティディス株MC58のv.1 fHBP(ペプチドID 1)の天然のアミノ酸配列を、全ての天然のv.1、v.2、およびv.3 fHbpアミノ酸配列について、加えて本明細書に記載されたキメラfHbpについての参照配列として独断的に選択した。特に断りのない限り、アミノ酸残基の位置もまた、本明細書ではペプチドID 1を参照して付けられる。ペプチドID 1の配列は下記に示されている:
CSSGGGGVAADIGAGLADALTAPLDHKDKGLQSLTLDQSVRKNEKLKLAAQGAEKTYGNGDSLNTGKLKNDKVSRFDFIRQIEVDGQLITLESGEFQVYKQSHSALTAFQTEQIQDSEHSGKMVAKRQFRIGDIAGEHTSFDKLPEGGRATYRGTAFGSDDAGGKLTYTIDFAAKQGNGKIEHLKSPELNVDLAAADIKPDGKRHAVISGSVLYNQAEKGSYSLGIFGGKAQEVAGSAEVKTVNGIRHIGLAAKQ(配列番号1)
【0032】
図1A〜1G(表7)および図10A〜10I(表9)に列挙された配列についての変種群および他の分類体系の多様性にもかかわらず、下記の実施例に記載されているような、69個の固有のfHbp配列の第1の分析および全ての275個のペプチドIDの第2の分析によって、fHbp内のアミノ酸配列の数個の異なるひと続きが、分析された全てのfHbpの間で保存されていることが明らかにされた。下記の実施例セクションに示された系統学的研究によって示されているように、これらの保存アミノ酸配列は、それぞれの可変セグメントが由来し得る2つの祖先配列を定義する系統樹においてクラスター形成するアミノ酸配列のモジュラーセグメントへfHbpを分離する。図5〜7に示されているように、fHbpにおける可変セグメントのそれぞれは、2つの祖先アミノ酸配列(便宜上、αまたはβと名付ける)の1つであると分類することができる。
【0033】
モジュラーセグメントに基づいてfHbpを特徴づけるために用いられる命名構造は、図4のパネルAに示されている。図4のパネルAにおける四角形は、保存配列(I)を表し、可変セグメントはN末端エレメント、V、V、V、V、またはVセグメントと名付けられている。保存配列のアミノ酸配列は図4のパネルBに列挙されている。
【0034】
したがって、天然のfHbpは、式:I−Nte−I−V−I−V−I−V−I−V−I−V−I(式中、「Nte」はN末端エレメントを指し、「I」は「不変」セグメントを指し、「V」はα祖先型かまたはβ祖先型のいずれかの可変セグメントを指す)によって定義することができる。
【0035】
より詳細に下記で開示されているように、本開示の非天然のキメラfHbpは、Iセグメントが隣接するVセグメントの様々な組合せによって構築することができる。そのようなキメラfHbpの構築に用いることができる不変セグメントおよび可変セグメントは、N末端からC末端へ下記でより詳細に記載されている。このモジュラー分類はまた、Neisseria.orgウェブサイト(neisseria.org/perl/agdbnet/agdbnet.pl?file=nm_fhbp.xml)に見出すことができる。ウェブサイトにおいて、下記のような祖先群αおよび祖先群βは、それぞれ、1および2と呼ばれている。例えば、Vα2−Vα1−Vβ5−Vα5−Vα8はA1.2−B1.1−C2.5−D1.5−E1.8となる。
【0036】
不変セグメント
fHbpは、本明細書で分析された全てのfHbpアミノ酸配列の間で保存されているアミノ酸配列を含む。保存配列は、α祖先アミノ酸配列かまたはβ祖先アミノ酸配列のいずれかに由来する可変セグメントに隣接する。これらの保存配列は、本明細書では「不変配列」または「不変セグメント」と呼ばれ、天然のfHbpにおける組換えの部位としての役割を果たし得る。これらの不変セグメントが可変セグメントに隣接している場合、不変セグメントは「リンカー」配列と呼ばれる場合がある。これらの配列は、本明細書に開示されたfHbp間でアミノ酸配列同一性を示すが、そのようなアミノ酸配列は、なお特定の保存的アミノ酸置換を許容することができる。したがって、本明細書に用いられる場合、用語「不変セグメント」は、本明細書に記載された特定のアミノ酸配列に限定されると解釈されるべきではなく、少なくとも、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含んでもよい。
【0037】
図4に示されているように、天然のfHbpに見出される最もN末端側の不変セグメントは残基1から始まり、アミノ酸配列CSSG(配列番号2)である。最初の不変セグメントCSSG(I)のすぐC末端側は、約1個〜約6個のグリシンまたはセリン残基の可変N末端エレメントである。様々なN末端エレメントは図1A〜1G(表7)および図10A〜10I(表9)に列挙されている。2番目の不変セグメント(I)はアミノ酸配列GGであり、それは、N末端エレメントのC末端側に位置し、N末端エレメントの長さに依存して残基6、7、または11から始まる(例えば、変種3のペプチドID 28において、Iは残基11から始まる)。次の不変セグメント、Iは、SRFDF(配列番号3)のアミノ酸配列によって定義され、Iおよび可変セグメントのC末端側の残基74に位置する。IのC末端側であるIは、アミノ酸配列GEFQ(配列番号4)によって定義され、残基94に位置する。Iはアミノ酸配列DDによって定義され、IのC末端側の残基159にある。IのC末端側に位置するIは、IEHLK(配列番号5)またはIEHLE(配列番号6)によって定義され、残基180から始まる。最後に、天然のfHbpにおける最もC末端側の不変セグメントは残基252から始まり、KQのアミノ酸配列によって定義される。
【0038】
各不変セグメントが始まる上記に列挙された残基位置は、N末端エレメントの長さおよび可変セグメントのアミノ酸配列に依存して1残基から8残基までシフトする場合がある。上記で述べられているように、本開示を通して非天然のキメラfHbpに関して用いられる残基番号付けは、便宜上、かつ明確にするために、変種1菌株であるMC58のfHbp(ペプチドID 1)のアミノ酸配列番号付けに基づいている。
【0039】
本明細書で分析された配列に基づいて、不変セグメントの長さは、約2アミノ酸残基から約5アミノ酸残基までの範囲である。
【0040】
可変セグメント
上記で述べられているように、可変セグメント(V)は、本明細書で不変セグメント(I)とも呼ばれるリンカーに隣接している。可変N末端エレメントに加えて、fHbpにおいて5つの可変セグメントがあり、それらは、N末端からC末端へV、V、V、V、およびVと名付けられており、それぞれは、上記で論じられた不変セグメントに隣接している。前に言及されているように、可変セグメントのそれぞれは、2つの祖先アミノ酸配列:αまたはβのうちの1つからであると分類することができる。例えば、Vαは、可変セグメントAがα祖先アミノ酸配列に由来し、Vβはβ祖先アミノ酸配列に由来する可変セグメントAを指す。より具体的な例において、Vα1は、可変セグメントAが、図2A(表8、セグメントA)におけるセグメントID A.α.1として示されるアミノ酸配列であり、それは、可変セグメントのα祖先配列の1つの対立遺伝子である。下記のように、本開示のキメラfHbpは、各セグメントが、非依存的に、α祖先型かβ祖先型のいずれかから選択され得る可変セグメントの非天然の組合せ、および/または図2A〜2E、表8に示された対応するセグメントの任意の対立遺伝子の非天然の組合せを含む。
【0041】
α祖先可変セグメントおよびβ祖先可変セグメントは、それぞれ、特定のシグネチャアミノ酸残基によって定義される。加えて、α祖先可変セグメントは変種1群のfHbp(例えば、ペプチドID 1)との配列類似性を示し、一方、β祖先可変セグメントは変種3群のfHbp(例えば、ペプチドID 28)との配列類似性を示す。各可変セグメントについてのαまたはβ祖先のシグネチャアミノ酸残基は下記で論じられている。
【0042】
それらの対応するアミノ酸シグネチャ配列によって定義されることに加えて、同じ祖先型の可変セグメントは、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%アミノ酸配列同一性を共有し、100%であり得る。異なる祖先型の同じ可変セグメントのアミノ酸配列を比較した場合、アミノ酸配列同一性は少なくとも10%〜40%減少する。
【0043】
セグメントによる配列群内および配列群間のアミノ酸同一性について、実施例セクションにおける表4を参照されたい。
【0044】
各可変セグメントについての様々な対立遺伝子およびそれらの配列は、図2A〜2E(表8)に示されており、下記で詳細に記載されている。
【0045】
最もN末端側の可変セグメントは、本明細書では、N末端エレメント(Nte)と呼ばれる(図4)。分析されたfHbpに見出される様々なN末端エレメントは図1A〜1G(表7)、および図10A〜10I(表9)にも列挙されている。それらは、長さが1残基から6残基までのグリシンまたはグリシンとセリンの組合せの範囲である。
【0046】
可変セグメントVは、IのC末端側の残基7から始まり、IのN末端側の残基73で終わる。α祖先のV(Vα)は、図2A(表8)に示されているようなセグメントID A.α.1:VADIGAGLA DALLDHK DKLTLD QSVRKNKLK LAQGAEKY GNGD TGKLKNDK(配列番号15)と約89〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vαは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基QSVによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVα間で代替アミノ酸残基を有し得る特定の残基は、下線が引かれている。
【0047】
β祖先のV(Vβ)は、図2A(表8)に示されているようなセグメントID A.β.1:VAADIGGLA DALTAPLDHK DKGLKSLTLE DSIQNGTLT LSAQGAE KAGDKDNSLN TGKLKNDK(配列番号67)と約89〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vβは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基DSIおよび/またはKDNによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVβ間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0048】
可変セグメントVは、残基79から始まり、Iが位置している所のN末端側の残基93で終わる。α祖先のV(Vα)は、図2B(表8)に示されているようなセグメントID B.α.1:IQIEVDGOL ITLES(配列番号85)と約80〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vαは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基IRQによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVα間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0049】
β祖先のV(Vβ)は、図2B(表8)に示されているようなセグメントID B.β.1:VQKIEVDGQT ITLAS(配列番号95)と約100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vβは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基VQKによってさらに特徴づけられる。
【0050】
可変セグメントVは、IのC末端側の残基98から始まり、IのN末端側の残基158で終わる。α祖先のV(Vα)は、図2C(表8)に示されているようなセグメントID C.α.1:VYKQSSALT AQTEQQDGKMVAKR IGDIGE HTFDKLPEG GRATYRGTAF S(配列番号96)と約85〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vαは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基QDSによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVα間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0051】
β祖先のV(Vβ)は、図2C(表8)に示されているようなセグメントID C.β.1:IYKQHSAVV ALQIEKINNP DKDSLINQR SFLVSGLGGE HTAFNQLP KAEYHGKAF S(配列番号152)と約93〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vβは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基NNPによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVβ間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0052】
可変セグメントVは、IのC末端側の残基161から始まり、IのN末端側の残基179で終わる。α祖先のV(Vα)は、図2D(表8)に示されているようなセグメントID D.α.1:AGKLYTID FAKQGGK(配列番号174)と約89〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vαは、シグネチャアミノ酸残基AGまたはASによってさらに特徴づけられ、それらのうちAGは、配列において太字で示されている。異なるfHbpのVα間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0053】
β祖先のV(Vβ)は、図2D(表8)に示されているようなセグメントID D.β.1:PNGRLHYID FTKKQGYG(配列番号192)と約84〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vβは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基PNによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVβ間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0054】
可変セグメントVは、IのC末端側の残基185あたりから始まり、IのN末端側の残基253で終わる。α祖先のV(Vα)は、図2E(表8)に示されているようなセグメントID E.α.1:SPELNVLA AYIKPDHH AVISGSVLYN QEKGSYSLG IFGGKAQEVA GSAENG IHIGLAA(配列番号195)と約86〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vαは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基SLGIによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVα間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0055】
β祖先のV(Vβ)は、図2E(表8)に示されているようなセグメントID E.β.1:PENVLA AELKADEKSH AVILGDTRY EEKGTYHLA LFGDRAQEIA GSATVKI VHEIIAG(配列番号262)と約94〜100%同一であるアミノ酸配列を含む。Vβは、配列において太字で示されたシグネチャアミノ酸残基HLALによってさらに特徴づけられる。異なるfHbpのVβ間で代替アミノ酸残基を有し、またはアミノ酸残基が欠失している特定の残基は、下線が引かれている。
【0056】
上記で述べられているように、便宜上、かつ明確にするために、本開示を通して非天然のキメラfHbpに関して用いられる残基番号付けは、MC58のfHbp(ペプチドID 1)のアミノ酸配列番号付けに基づいている。加えて、各可変セグメントが始まり、および終わる上記に列挙された残基位置は、N末端エレメントの長さおよび可変セグメントのアミノ酸配列に依存して1残基から8残基までシフトする場合がある。
【0057】
fHbpモジュラー群
天然のfHbpアミノ酸配列は、図1A〜1G(表7)および図10A〜10I(表9)に示されているように、不変セグメントに隣接しているα祖先セグメントまたはβ祖先セグメントの組合せに基づいたモジュラー構造に従って記載することができる。下記の実施例に記載されているように、天然fHbpは、モジュラーセグメントの特定の組合せを示し、図8に示されているように、それに応じて、9つの型のモジュラー群に分類することができ、灰色の可変セグメントはα祖先配列に対応し、白色のセグメントはβ祖先配列に対応している。
【0058】
I型モジュラー群は、全ての可変セグメントがα祖先アミノ酸配列に由来している可変セグメントによって特徴づけられる。I型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vα−I−Vα−I−Vα−I−Vα−I−Vα−Iによって表すことができる。I型モジュラー群であるfHbpの例は、菌株MC58由来のペプチドID 1である。上記で述べられているように、ペプチドIDは、Neisseria.orgにおけるH因子結合タンパク質データベースからである。
【0059】
II型モジュラー群は、全部の可変セグメントがβ祖先に由来している可変セグメントによって特徴づけられる。II型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vβ−I−Vβ−I−Vβ−I−Vβ−I−Vβ−Iによって表すことができる。II型モジュラー群であるfHbpの例は、菌株M1239由来のペプチドID 28である。図1A〜1G(表7)におけるfHbpのほぼ60%は、I型かまたはII型のいずれかのモジュラー群に属する。
【0060】
しかしながら、いくつかのfHbpは、α祖先およびβ祖先の両方由来の可変セグメントを有する。両方の祖先由来の可変セグメントによって定義される1つのモジュラー群はIII型であり、それにおいて、可変セグメントVおよびVは、α祖先由来であり、残りの可変セグメントは、β祖先由来である。III型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−I−Vβ−I−Vβ−Iによって表すことができる。III型モジュラー群に属するfHbpの1つの例は、菌株RM1090由来のペプチドID 22である。
【0061】
両方の祖先に由来する可変セグメントによって定義される別のモジュラー群はIV型である。IV型は、β祖先由来の可変セグメントV、およびα祖先由来の残りの可変セグメントを有するモジュラー群である。IV型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vβ−I−Vα−I−Vα−I−Vα−I−Vα−Iによって表すことができる。IV型モジュラー群に属するfHbpの1つの例は、菌株NM452由来のペプチドID 15である。
【0062】
さらなるモジュラー群はV型であり、それにおいて、可変セグメントVはα祖先に由来し、残りの可変セグメントはβ祖先に由来する。V型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vβ−I−Vβ−I−Vβ−I−Vα−I−Vβ−Iによって表すことができる。V型モジュラー群に属するfHbpの1つの例は、菌株S3032由来のペプチドID 79である。
【0063】
図8に示された別のモジュラー群はVI型であり、それにおいて、可変セグメントVおよびVはβ祖先に由来し、残りの可変セグメントはα祖先に由来する。VI型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−I−Vα−I−Vβ−Iによって表すことができる。VI型モジュラー群に属するfHbpの1つの例は、菌株961−5945由来のペプチドID 16である。
【0064】
図8に示された別のモジュラー群はVII型であり、それにおいて、可変セグメントVはβ祖先に由来し、残りの可変セグメントはα祖先に由来する。VI型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vα−I−Vα−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−Iによって表すことができる。VI型モジュラー群を有することが見出された1つのfHbpは、菌株0167/03由来のペプチドID 207である。
【0065】
図8に示された別のモジュラー群はVIII型であり、それにおいて、可変セグメントVはα祖先に由来し、残りの可変セグメントはβ祖先に由来する。VI型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vβ−I−Vα−I−Vβ−I−Vβ−I−Vβ−Iによって表すことができる。VIII型モジュラー群を有することが見出された1つのfHbpは、菌株MA−5756由来のペプチドID 67である。
【0066】
図8に示された最後のモジュラー群はIX型であり、それにおいて、可変セグメントVおよびVはα祖先に由来し、残りの可変セグメントはβ祖先に由来する。VI型モジュラー群に属するとして分類されたfHbpは、以下の式:I−Nte−I−Vβ−I−Vα−I−Vβ−I−Vα−I−Vβ−Iによって表すことができる。IX型モジュラー群に属するfHbpの1つの例は、菌株19498由来のペプチドID 175である。
【0067】
本明細書で分析された固有のfHbpアミノ酸配列の98%より多くは、上記および図8に模式的に示された最初の6つの型のモジュラー群(I、II、III、IV、V、およびVI)の1つに属する。モジュラー群のそれぞれに属する固有のfHbpの数もまた、図8の概略図の右側に列挙されている。
【0068】
4つの天然のfHbpは、この命名法から少なくともわずかに異なり、図8のパネルAに示された最初の6つの型のモジュラー群へ正確には当てはまらない。これらの4つのfHbpは、上記のような基準可変セグメント内にある残基位置で、1つの祖先アミノ酸配列から別のものへ「切り替わっている」。結果として、それらはそれぞれ、異種性可変セグメントを含み、それらの接合点は、上記で定義されたI、I、I、またはIにあることが見出された残りのfHbpの接合点から逸脱している。矢印がそれぞれについての接合点を指し示している、これらの4つのfHbpのモジュラー構造について、図8のパネルBを参照されたい。しかしながら、これらの4つの天然のfHbpの接合点は、それでもなお、可変セグメント内に見出される(1つまたは複数の)保存残基に存在する。図8のパネルCにおける表を参照されたい。
【0069】
1つのそのようなfHbpは、VβがVαへ切り替わっている接合点がVの中央に存在する、菌株CDC−1573由来の天然fHbp(ペプチドID 55)である。ペプチドID 55の異種性Vは、V(β→α)と表すことができ、可変セグメントAが、N末端から始まるβ祖先アミノ酸配列を含み、C末端に向けてα祖先アミノ酸配列に切り替わっていることを示す。ペプチドID 55の接合点(J)は、残基位置50から始まる、全てのV配列間で保存されたAQGAE(配列番号278)の配列に存在する。I、I、I、またはIの残基位置にはない接合点を含む2つの他のfHbpは、菌株M08 240117および菌株6275、それぞれに由来するペプチドID 24およびペプチドID 25である。VαがVβに切り替わっている接合点(J)は、Vの中央(残基82)に存在し、そこには、全てのV間で保存されたIEVのアミノ酸配列がある。ペプチドID 24および25のVは、V(α→β)と表すことができる。最後に、菌株MD1475由来のペプチドID 82は、全てのV間で保存されている残基A196(J)でVαからVβへ切り替わっている。ペプチドID 82の可変セグメントEはV(α→β)と表すことができる。
【0070】
下記で詳細に論じられるように、キメラfHbpは、このモジュラー構造の不変セグメントおよび可変セグメントを用いて構築し、天然には見出されないアミノ酸配列を生じることができる。
【0071】
fHbpセグメントをコードする核酸
本開示のキメラfHbpのセグメントが由来し得るfHbpポリペプチドおよびコードする核酸は、任意の適切なN.メニンギティディス株からであり得る。当技術分野において知られているように、N.メニンギティディス株は、異なる表面抗原と相互作用するポリクローナル抗体(Frasch,C.E.およびChapman、1973、J.Infect.Dis. 127:149〜154)またはモノクローナル抗体との反応に基づいて、血清群(莢膜群)、血清型(PorB表現型)、および亜型(PorA表現型)へ分けられる。莢膜分類は、伝統的には、莢膜多糖における免疫学的に検出可能なバリエーションに基づいているが、構造的に異なる莢膜多糖の生合成に関与する特定の酵素をコードする遺伝子のPCRに取って代わられつつある。(A、B、C、X、Y、Z、29−E、およびW−135を含む)約12個の莢膜群が知られている。莢膜群A、B、C、Y、およびW−135の菌株が、ほとんど全ての髄膜炎菌性疾患の原因となっている。血清型分類は、伝統的に、ポリンB(PorB)と呼ばれる外膜タンパク質における、モノクローナル抗体によって定義される抗原性の差異に基づいている。約21個の血清型を定義する抗体が現在知られている(Sacchiら、1998、Clin.Diag.Lab.Immunol.5:348)。血清亜型分類は、ポリンA(PorA)と呼ばれる外膜タンパク質上における、抗体によって定義される抗原性の差異に基づいている。血清型分類および血清亜型分類の両方は、モノクローナル抗体反応性と関連している、PorBおよびPorA、それぞれの可変領域をコードする遺伝子の同定のためのPCRおよび/またはDNAシーケンシングに取って代わられつつある(例えば、Sacchi、Lemosら、前記;Urwinら、1998、Epidem.and Infect.120:257)。
【0072】
任意の莢膜群のN.メニンギティディスを用いてもよいが、莢膜群BのN.メニンギティディス株は、fHbpをコードする核酸およびそのドメインが由来する源として特に興味深い。
【0073】
本明細書は、キメラfHbpが由来し得るfHbpの例のアミノ酸配列を提供するが、これは限定することを意図するものではない。例えば、キメラfHbpは、天然fHbpと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み得る。
【0074】
本明細書に企図されたキメラfHbpの構築に用いるfHbpポリペプチドをコードする核酸は当技術分野において知られている。fHbpポリペプチドの例は、例えば、WO 2004/048404;Masignaniら、2003 J Exp Med 197:789〜799;Fletcherら、Infect Immun 2004 2088〜2100;Welschら、J Immunol 2004 172:5606〜5615;およびWO 99/57280に記載されている。fHbp変種および亜変種の核酸(およびアミノ酸配列)は、アクセッション番号:NC_003112、GeneID:904318(NCBI参照 NP_274866)、N.メニンギティディス株MC58由来のペプチドID 1;AY548371(AAT01290.1)(N.メニンギティディス株CU385由来);AY548370(AAT01289.1) (N.メニンギティディス株H44/76由来);AY548377(AAS56920.1)N.メニンギティディス株M4105由来のペプチドID 4;AY548376(AAS56919.1)(N.メニンギティディス株M1390由来);AY548375(AAS56918.1)(N.メニンギティディス株NZ98/254由来);AY548374(AAS56917.1)(N.メニンギティディス株M6190由来);AY548373(AAS56916.1)(N.メニンギティディス株4243由来);およびAY548372(AAS56915.1)(N.メニンギティディス株BZ83由来)としてGenBankに提供されている。
【0075】
本明細書に開示されたキメラfHbpに用いるために企図される関連アミノ酸配列を同定することを目的として、未熟fHbpタンパク質は、約19残基のリーダー配列を含むことは留意されるべきである。さらに、アミノ酸配列が提供される場合、当業者は、そのようなアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る核酸の配列を容易に構想し、ポリペプチドの発現を提供することができる。
【0076】
本明細書に提供された特定のアミノ酸配列および核酸配列に加えて、本開示はまた、そのアミノ酸および核酸と配列において少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%同一である配列を有するポリペプチドおよび核酸も企図する。2つ以上のポリヌクレオチド配列または2つ以上のアミノ酸配列との関連における用語「同一の」またはパーセント「同一性」は、指定された領域、例えばV、または少なくとも約40、45、50、55、60、65、もしくはそれ以上のアミノ酸長もしくはヌクレオチド長であり、かつ参照アミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列の完全長(例えば、完全長fHbp)までであり得る領域に対して比較して、最大限一致するように整列させた場合、同じである、または同じである特定のパーセンテージのアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する(例えば、特定化された領域に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一の)、2つ以上の配列または部分配列を指す。本開示は、具体的には、天然の多型と、合成的に作製されたアミノ酸配列およびそれらのコードする核酸との両方を企図する。
【0077】
配列比較について、典型的には、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列(例えば、天然のfHbpポリペプチド配列)としての役割を果たす。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列は、コンピュータプログラムへ入力され、必要ならば、配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。その後、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメータに基づいて、参照配列と比較した試験配列(複数可)についてパーセント配列同一性を計算する。
【0078】
パーセント配列同一性を決定するのに適しているアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、それらは、それぞれ、Altschulら、(1990)J.MoI.Biol.215:403〜410およびAltschulら、(1977)Nucleic Acids Res. 25:3389〜3402に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)を通して公表されている。さらに、例示的なアルゴリズムとして、www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.htmlで入手できるClustalW(Higgins D.ら、(1994)Nucleic Acids Res 22:4673〜4680)が挙げられる。
【0079】
一実施形態において、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンである;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸群は、セリンおよびスレオニンである;アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギンおよびグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンである;塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リシン、アルギニン、およびヒスチジンである;イオウ含有側鎖を有するアミノ酸群は、システインおよびメチオニンである。
【0080】
2つの核酸間の配列同一性はまた、ストリンジェントな条件下で2つの分子のお互いとのハイブリダイゼーションに関して記載することもできる。ハイブリダイゼーション条件は、当技術分野における標準方法に従って選択される(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(1989)Cold Spring Harbor,N.Y.参照)。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例は、50℃以上および0.1×SSC(15mMの塩化ナトリウム/1.5mMのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のもう1つの例は、溶液:50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%デキストラン硫酸、および20mg/mlの変性剪断化サケ精子DNAにおける42℃での一晩のインキュベーション、続いて、0.1×SSC中、約65℃でフィルターを洗浄することである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、少なくとも上記の代表的な条件と同じくらいストリンジェントであるハイブリダイゼーション条件であり、その場合、条件は、上記の特定のストリンジェントな条件の少なくとも約80%ストリンジェント、典型的には少なくとも90%ストリンジェントであるならば、少なくともストリンジェントであるとみなされる。
【0081】
本開示のキメラfHbpは、上記のモジュラー構造との関連において下記でより詳細に記載されている。
【0082】
キメラH因子結合タンパク質
本開示のキメラfHbpは、図8のパネルAおよびBに示されているようなモジュラー構造、ならびに図8のパネルAおよびBに示されていないモジュラー構造によって記載することができるfHbpを含む、非天然キメラfHbpを指す。用語「キメラH因子結合タンパク質」または「キメラfHbp」は、N末端からC末端へ、V、V、V、V、およびVによって表される5つの可変セグメントの群であって、その群におけるα/β祖先セグメントの組合せおよび/またはその対立遺伝子の組合せが天然で見出されない群を含むポリペプチドを指す。本開示のキメラfHbpの1つの例は、キメラfHbpにおける少なくとも1つの他の可変セグメントとは異なる祖先由来の少なくとも1つまたは複数の可変セグメントを含むことができる。言い換えれば、キメラfHbpは、α祖先アミノ酸配列の少なくとも1つの可変セグメントおよびβ祖先の少なくとも1つの可変セグメントを、その組合せが天然で見出されないように含む。別の例において、fHbpはまた、各セグメントが、対立遺伝子の組合せが天然で見出されないように対立遺伝子からなる、図8のパネルAに示されたモジュラー構造(例えば、全ての可変セグメントがそれぞれ、αまたはβであるモジュラーIまたはII)であり得る。
【0083】
可変セグメントは、可変セグメントについてのリンカーとしての役割を果たすことができる、不変セグメント(I、I、I、I、I、I)に隣接してもよい。したがって、本開示のキメラfHbpは、以下の式によって記載することができる:
−I−V−I−V−I−V−I−V
式中、各可変セグメント(V、V、V、V、およびV)はα祖先アミノ酸配列かβ祖先アミノ酸配列かのいずれかに由来し得る。
【0084】
キメラfHbpは、任意で、リーダー配列を、例えば、細菌宿主細胞の細胞表面上にキメラfHbpの発現を与えるために、含むことができる。キメラfHbpはまた、N末端エレメント(Nte)および/またはC末端エレメント(Cte)として約1個、5個、10個、またはそれ以上の残基を含んでもよい。例えば、Nteは、最もN末端の不変セグメント(I)の後に1個、2個、または6個のグリシン残基、または約6個の残基の、グリシンとセリンの混合物を含んでもよい。
【0085】
加えて、本開示のキメラfHbpは、任意で、N末端エレメント、N末端エレメントに隣接する一方もしくは両方の不変セグメント、および/または最もC末端の不変セグメント(I)を含むことができる。これらの任意の特徴の1つまたは複数を含むキメラfHbpは以下の式によって記載することができる:
−V−I−V−I−V−I−V−I−V
Nte−I−V−I−V−I−V−I−V−I−V
−Nte−I−V−I−V−I−V−I−V−I−V
−I−V−I−V−I−V−I−V−I
−V−I−V−I−V−I−V−I−V−I
Nte−I−V−I−V−I−V−I−V−I−V−I;および
−Nte−I−V−I−V−I−V−I−V−I−V−I
式中、各可変セグメント(V、V、V、V、およびV)はα祖先アミノ酸配列かβ祖先アミノ酸配列かのいずれかに由来し得る。
【0086】
それぞれがα祖先アミノ酸配列かβ祖先アミノ酸配列かのいずれかに由来する、可変セグメントの様々な組合せを有することに加えて、本開示のキメラfHbpはまた、α祖先アミノ酸配列およびβ祖先アミノ酸配列に対して異種性である1つまたは複数の可変セグメントを含んでもよい。異種性可変セグメントは、本明細書で「接合点」と呼ばれる、アミノ酸配列が他の祖先配列に「切り替わっている」点と共に、連続したα祖先アミノ酸配列および連続したβ祖先アミノ酸配列の両方を含む可変セグメントを指す。例えば、ペプチドID 55のV、ペプチドID 24およびID 25のV、ならびにペプチドID 82のVを参照されたい。特に、ペプチドID 55、24、25および82についての上記の可変セグメント内の接合点(J、J、またはJ)の1つまたは複数は、異種性可変セグメントを有するキメラfHbpを構築するために用いてもよい。接合点としての役割を果たす各可変セグメント内の保存残基について、図8のパネルCの表を参照されたい。
【0087】
本開示の非天然キメラfHbpの可変セグメントは、天然fHbpにおける対応するセグメントと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有してもよく、アミノ酸配列において100%同一であり得る。
【0088】
キメラfHbpの例として、以下の可変セグメントの1つまたは複数を含むものが挙げられる。各セグメントは、非依存的に、図2A〜2Eの表8に示された対応するセグメントにおける任意の対立遺伝子から選択することができる。可変セグメントは、例として特定の対立遺伝子を用いて、下記でより詳細に記載されている。
【0089】
は、セグメントAについて図2A(表8)に示されたアミノ酸配列の1つと少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一、例えば、図2A(表8)に示されたセグメントID A.α.1またはA.β.1(配列番号15または67)と少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である連続したアミノ酸配列を含む。
【0090】
は、セグメントBについて図2B(表8)に示されたアミノ酸配列の1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一、例えば、図2B(表8)に示されたセグメントID B.α.1またはB.β.1(配列番号85または95)と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である連続したアミノ酸配列を含む。
【0091】
は、セグメントCについて図2C(表8)に示されたアミノ酸配列の1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一、例えば、図2A(表8)に示されたセグメントID C.α.1またはC.β.1(配列番号96または152)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である連続したアミノ酸配列を含む。
【0092】
は、セグメントDについて図2D(表8)に示されたアミノ酸配列の1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一、例えば、図2A(表8)に示されたセグメントID D.α.1またはD.β.1(配列番号174または192)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である連続したアミノ酸配列を含む。
【0093】
は、セグメントEについて図2E(表8)に示されたアミノ酸配列の1つと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一、例えば、図2A(表8)に示されたセグメントID E.α.1またはE.β.1(配列番号195または262)と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である連続したアミノ酸配列を含む。
【0094】
本開示のキメラfHbpにおける可変セグメントはまた、図2A〜2E(表8)に列挙された対応するセグメントと類似した長さであってもよい。例えば、可変セグメントは、図2A〜2E(表8)に示された対応するアミノ酸配列の1つより約50個、30個、20個、10個、5個、または1個のアミノ酸残基だけ少なく、または多くあってもよい。
【0095】
本開示のキメラfHbpは、天然fHbpに見出されない完全長アミノ酸配列を有する。α祖先配列のみまたはβ祖先配列のみまたはその組合せを含む天然fHbpのほとんどは、以下のモジュラー群:I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、またはIXの1つに分類される(図8参照)。本開示の非天然fHbpはまた、I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、またはIX以外のモジュラー群であり得る。本開示の非天然fHbpは、本明細書に記載されたモジュラー構造に基づいて構築される非天然のアミノ酸配列を含む新しいモジュラー群によって記載することができる。本開示のキメラfHbpのいくつかの例は下記に示されている。
【0096】
キメラfHbpの例
本開示のキメラfHbpは、例えば、不変セグメントおよび可変セグメントならびにそれらの祖先型、モノクローナル抗体によって特異的に結合されるエピトープ(複数可)の存在もしくは非存在、またはキメラfHbpに存在する可能性があるそのような特徴の任意の組合せの1つまたは複数に関して記載され得るものを含む。
【0097】
多数の組合せは、異なる型のモジュラー群についてαセグメントまたはβセグメントを、様々なセグメントに出たり入ったり切り替えることによって作成することができる。αセグメントまたはβセグメントの任意の対立遺伝子もまた、非依存的に、図2A〜2E(表8)に示されたものから選択することができる。モジュラー群はまた、特定の抗体エピトープを維持し、または含むように設計することができる。特定の抗体は、N.メニンギティディスの特定の変種に対して殺菌性であるが、異なる変種に対しては殺菌性ではないことが見出されている。モジュラー群のキメラfHbpが複数のエピトープを提示する可変セグメントを含み、それぞれのエピトープが、異なる変種に対して殺菌性の抗体に特異的である場合には、キメラfHbpは、広域のN.メニンギティディスに対して効果的な抗体または免疫応答を誘発するのに有用であり得る。例えば、JAR4、JAR3、およびJAR32抗体についてのエピトープが知られており、fHbpに組み入れることが望ましい場合、キメラfHbpは、Vα、Vα、およびVβを含み、それぞれにJAR4、JAR3、およびJAR32のエピトープが存在するように作製してもよい。
【0098】
例えば、キメラfHbpは、β祖先配列に由来するVを有し、一方、残りの可変セグメントはα祖先配列からの由来物のままであり得る。そのようなキメラfHbpは、Vα、Vα、Vα、Vβ、およびVαとして表される可変セグメントを含み、その1番目および2番目の接合点は、それぞれ、IおよびIにある。異なる例において、非天然キメラfHbpを含む別のモジュラー群に属するfHbpは、Vα、Vα、Vα、Vβ、およびVβを含み得、その接合点はIに存在する。モジュラー群のさらなる例は、不変セグメントとしてVα、Vα、Vα、Vα、およびVβを含む非天然fHbpを含む。
【0099】
したがって、上記のものを含む非天然キメラfHbpの例は、以下の式によって表されるモジュラー群であり得るが、それらに限定されない:
α−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−I−Vα;
α−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−I−Vβ;
α−I−Vα−I−Vα−I−Vα−I−Vβ;
α−I−Vα−I−Vβ−I−V−I−Vα;
α−I−Vβ−I−V−I−V−I−V
β−I−Vα−I−Vα−I−Vα−I−Vβ;
β−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−I−Vα;
β−I−Vα−I−Vβ−I−V−I−V
β−I−Vβ−I−Vβ−I−Vα−I−Vα;または
β−I−Vβ−I−Vβ−I−Vβ−I−Vα;
【0100】
可変セグメント(V、V、V、V、またはV)の後にαまたはβが続いていない上記に示された任意の群(例えば、上から5番目のモジュラー群におけるV、V、およびV)は、α祖先アミノ酸配列またはβ祖先アミノ酸配列のいずれの由来でもあり得る可変セグメントを表す。式はまた、上記の式において省略された、可変N末端エレメント、その隣接する不変配列(IおよびI)、または最もC末端側の不変セグメント(I)を含み得る。本開示のfHbpについて上記で述べられているように、上記の式によって記載されるfHbpの各可変セグメントは、任意の対立遺伝子であり得る。
【0101】
別の例において、本開示のキメラfHbpはまた、全部αセグメントまたは全部βセグメントを含むものを包含し、各セグメントが、全部αまたは全部βの対立遺伝子セグメントの組合せが天然で見出されないような対立遺伝子である。
【0102】
異種性可変セグメントを含むキメラfHbp
特定の場合において、本開示の非天然fHbpは、1つまたは複数の異種性可変セグメントを含んでもよい。これらの異種性可変セグメント含有fHbpもまた、図8のパネルAに示されたもの以外のモジュラー構造によって記載することができる。したがって、例えば、本開示の非天然キメラfHbpは以下を有するものを含む:異種性V(β→α)、ただし、V、V、V、およびVの全てについてα祖先配列を有しない;異種性V(α→β)、ただし、β祖先配列のV、V、およびVと共に、α祖先配列のVを有しない;ならびに異種性V(α→β)、ただし、Vについてα祖先配列と共に、V、V、およびVの全てについてβ祖先配列を有しない。例示的な非天然fHbpは、下記のいくつかの例によって示され、それぞれが1つの異種性可変セグメントを含んでいる。しかしながら、非天然fHbpは、その例に限定されず、例えば、fHbpは1つより多い異種性可変セグメントを含んでもよい。
【0103】
例えば、異種性可変セグメント含有fHbpは、ペプチドID55によって例示されているようにV(β→α)などの異種性Vを含むものであってもよく、V、V、V、およびVの全てがα祖先アミノ酸配列であるとは限らない。非天然fHbpはまた、V(α→β)を含んでもよく、かつV、V、V、およびVが非依存的にαおよびβから選択される。別の例示的な非天然fHbpは、ペプチドID 24によって例示されているようにV(α→β)を含んでもよく、Vはα祖先であり、V、V、およびVの全てがβ祖先アミノ酸配列であるとは限らない。非天然fHbpはまたは、V(α→β)を含んでもよく、Vはβ祖先である。非天然fHbpは、V(β→α)を含んでもよく、V、V、V、およびVが非依存的にαおよびβから選択される。さらに、非天然fHbpは、Vαと共に、ペプチドID 82に見られるV(α→β)などの異種性Vを含んでもよく、V、V、Vの全てがβ祖先起源であるとは限らない。非天然fHbpは、Vβと共にV(α→β)を含んでもよく、V、V、およびVが非依存的にαおよびβから選択される。異種性可変セグメントを含む非天然fHbpの別の例は、V(β→α)を含むものであり、V、V、V、およびVが非依存的にαおよびβから選択される。
【0104】
改変エピトープ(複数可)を有するキメラfHbp
本開示のキメラfHbpは、1つまたは複数の残基が関心対象のエピトープを導入するために天然fHbpに見出されるアミノ酸配列に対して変異し得る、1つまたは複数の可変セグメントを含んでもよい。これらのエピトープは、それらが存在する可変セグメントに対して異種性であるため、本明細書では「異種性エピトープ」と呼ばれる。そのようなエピトープを天然では含まない可変セグメントへ関心対象の特定の抗体についての1つまたは複数の異種性エピトープを導入するために部位特異的突然変異誘発を用いることができる。したがって、1つまたは複数のアミノ酸残基を挿入、除去、または置換する突然変異を用いて、本開示のキメラfHbpを作製してもよい。ワクチンとして効果的であり、または殺菌抗体を誘発し得る免疫原性であり得るfHbpについて様々な突然変異をまたスクリーニングしてもよい。
【0105】
例えば、fHbpは、通常にはβ祖先配列のVに見出され、かつα祖先配列内には見出されない、抗体JAR13に結合するエピトープを含んでもよい。Vαを含み、同時にJAR13エピトープを含むfHbpを作製するために、そのエピトープをVα配列へ導入してもよい。選択的突然変異によって、Vのアミノ酸配列が、JAR13エピトープについての特定の部位を除いてα祖先型に由来することが可能になる。したがって、キメラfHbpの可変セグメントの配列を導き出すために用いられるアミノ酸配列にかかわらず、所望の抗原性の領域を含み、または維持するために、対応する可変セグメントへエピトープを導入することができる。
【0106】
キメラfHbpはまた、抗体を誘発する2つまたはそれ以上のエピトープを含むキメラfHbpであって、それらの抗体が、両方がそれらの個々のエピトープに結合している場合、いずれか一方が単独で結合している場合よりN.メニンギティディスに対して殺菌活性の増強を示す、キメラfHbpを含む。例えば、JAR4およびJAR5のモノクローナル抗体の組合せは、それぞれがヒト補体媒介性アッセイにおいて単独で用いられる場合より高いN.メニンギティディスに対する殺菌活性のレベルを示す。キメラfHbpは、そのようなエピトープが維持されることを保証するように、またはそのようなエピトープの組合せが導入されるように設計することができる。キメラfHbpはまた、fHbpに結合している場合、fH結合を阻害する抗体を誘発するエピトープ(複数可)を含むように設計することもできる。例えば、モノクローナル抗体JAR3、JAR5、JAR11、またはJAR32/35によって結合されるエピトープが抗体によって結合されている場合、fHbpのfHへの結合は阻害される。したがって、キメラfHbpポリペプチドにおけるそのようなfH結合性エピトープの存在は、この経路を通して保護を促進することができる抗体の産生を供給することができる。
【0107】
キメラfHbpのセグメントにおいて導入または維持される、関心対象であり得るエピトープを結合する抗体は、WO 09/114485に開示されており、その特許出願の開示は参照により全体として組み入れられている。対応するJARモノクローナル抗体に関する関心対象の特定のエピトープは、下記の表1に示されており、図9のパネルCに指摘されている。
【0108】

【0109】
対象とする他の特徴
本明細書に記載されたキメラポリペプチドは、例えば、細菌宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli))における発現の結果としてN末端メチオニンもしくはその誘導体(例えば、ピログルタメート)を提供するため、および/またはそのN末端もしくはC末端に融合パートナーを有するキメラポリペプチドを提供するために、追加の異種性アミノ酸配列を含むことができる。関心対象の融合パートナーには、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、Hisタグなど、および他のタンパク質、特にリポタンパク質由来のリーダーペプチドが挙げられる。融合パートナーは、キメラポリペプチドの単離および精製を促進するにおいてなどの追加の特徴を提供することができる。
【0110】
天然fHbpは、通常、脂質部分が共有結合性に付着することができるN末端システインを含む。このシステイン残基は、通常、天然タンパク質において脂質付加され、本明細書に開示されたキメラfHbpにおいて脂質付加することができる。したがって、(任意の配列リストに示されたものを含む)本明細書に記載されたアミノ酸配列において、この位置における「システイン」または「C」への言及は、具体的には、非修飾システインと、(例えば、翻訳後修飾により)脂質付加されているシステインの両方への言及を含む。したがって、キメラfHbpは、脂質付加されていてもよいし、脂質付加されてなくてもよい。脂質付加されたタンパク質のインビトロ(例えば、Anderssonら、2001 J.Immunological Methods 255(1−2):135〜48参照)またはインビボでの産生方法は、当技術分野において知られている。例えば、脂質付加されたfHbpは、以前には、界面活性剤抽出法(Fletcherら、2004 Infection and Immunity 72(4):2088〜100)によって大腸菌タンパク質の膜画分から精製されており、その方法は、脂質付加されたキメラfHbpの作製に適応することができる。脂質付加されたタンパク質は、可溶性タンパク質より免疫原性が高いため、関心対象であり得る(例えば、Fletcherら、2004 Infection and Immunity 72(4):2088〜100参照)。
【0111】
キメラfHBPをコードする核酸
キメラfHbpは、関心対象のキメラfHbpをコードする構築物を提供するために、当技術分野において知られた異なるfHbpの核酸を操作する組換え技術を用いて作製することができる。上記で述べられているように、N.メニンギティディスの様々の異なるv.1 fHbp、v.2 fHbp、およびv.3 fHbpをコードする核酸が当技術分野において入手でき、それらのヌクレオチド配列は知られている。
【0112】
天然fHbpのアミノ酸配列および核酸配列は、図2A〜2E(表5)に提供されており、当技術分野において入手できる。キメラfHbpをコードするヌクレオチド配列は、関心対象の宿主細胞(例えば、大腸菌、N.メニンギティディス、(DNAに基づいたワクチンの場合のように)ヒトなど)において発現を促進するためにコドン使用を最適化するように改変することができる。コドン最適化配列の作成方法は、当技術分野において知られている。
【0113】
スクリーニング方法
本開示はまた、キメラfHbpを含む免疫原性組成物、細菌病原体に対するワクチン、抗体、およびそれをコードする核酸についてスクリーニングする方法を特徴とする。方法は、特定のキメラfHbpの、殺菌抗体を誘発する能力および/または細菌病原体に対する広域免疫を提供する能力を評価することを含み得る。方法は、本開示のキメラfHbpでの免疫化によって誘発される抗体の、多様な変種群のN.メニンギティディスのfHbpへのfH結合を阻害する能力、および/または殺菌活性を誘発する能力を評価することを含み得る。抗体は、本開示のキメラfHbpを含む免疫原性組成物で免疫された宿主動物において誘発され得、または候補キメラfHbpへのその特異的親和性についてファージディスプレイライブラリーにおいてスクリーニングされ得る。とりわけ、方法は、殺菌活性および/または抗悪性腫瘍活性を有する抗体を同定および/または評価するのに特に用途を見出せる。
【0114】
一実施形態において、抗体の細菌細胞への結合を評価する方法が提供される。方法は、(a)本開示のキメラfHbpを含む組成物で宿主動物を免疫する段階、(b)キメラfHbpへの結合親和性を有する宿主動物から抗体を単離する段階、(c)細菌細胞を単離された抗体と接触させる段階、および(d)抗体の細菌細胞への結合を評価する段階を含む。追加の段階は、ヒトH因子との、抗体のfHbpへの競合的結合を評価する段階、インビトロで補体とインキュベートした場合の細菌病原体に対する殺菌活性を評価する段階、または動物に投与された抗体の、感染に対して受動的保護を与える能力を評価する段階を含み得る。いくつかの実施形態において、抗体は、抗体集団内であり、方法はさらに、(e)細菌細胞を結合する抗体集団の1つまたは複数の抗体を単離する段階を含む。特徴的な態様は、細菌細胞に対して殺菌性である単離された抗体であり、その殺菌性には、例えば、補体媒介性殺菌活性および/またはヒト血液における細菌の生存率を減少させることができるオプソニン作用活性が挙げられる。本方法はまた、キメラfHbpを含むワクチンを投与された宿主動物の細菌病原体に対する感受性を評価することを含み得る。
【0115】
特に関心対象となる細菌病原体は、N.メニンギティディス血清群B、N.メニンギティディス血清群C、N.メニンギティディス血清群X、N.メニンギティディス血清群Y、N.メニンギティディス血清群W−135などの多様な莢膜群の任意の、または全てのfHbp変種群のN.メニンギティディスである。
【0116】
作製方法
キメラfHbpは、組換え方法および非組換え方法(例えば、化学合成)を含む任意の適切な方法によって作製することができる。キメラfHbpが組換え技術を用いて作製される場合、方法は、任意の適切な構築物および任意の適切な宿主細胞を含み得、その宿主細胞は、原核細胞または真核細胞、通常には細菌宿主細胞または酵母宿主細胞、より通常には細菌細胞であり得る。遺伝物質の宿主細胞への導入方法には、例えば、形質転換、エレクトロポレーション、コンジュゲーション、リン酸カルシウム方法などが挙げられる。移入のための方法は、導入されるキメラfHbpコード核酸の安定な発現を提供するように選択され得る。キメラfHbpコード核酸は、遺伝性エピソームエレメント(例えば、プラスミド)として提供され得、またはゲノム的に組み込まれ得る。
【0117】
キメラfHbpコード核酸を移入するのに適したベクターは、組成によって異なり得る。組込みベクターは、条件的複製または自殺プラスミド、バクテリオファージなどであり得る。構築物は、様々なエレメントを含み得、そのエレメントには、例えば、プロモーター、選択遺伝子マーカー(例えば、抗生物質(例えば、カナマイシン、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、またはゲンタマイシン)耐性を与える遺伝子)、(宿主細胞、例えば、細菌宿主細胞において複製を促進するための)複製開始点などが挙げられる。ベクターの選択は、増殖が望まれる細胞の型および増殖の目的などの様々な因子に依存する。増幅して大量の所望のDNA配列を生じるのに特定のベクターが有用である。培養中の細胞における発現には他のベクターが適している。動物全体における細胞内での移入および発現にはさらに他のベクターが適している。適切なベクターの選択は十分、当技術分野の技術で対応できる範囲内である。多くのそのようなベクターは市販されている。
【0118】
ベクターは、選択薬物耐性マーカー、および異なる宿主細胞において(例えば、大腸菌およびN.メニンギティディスの両方において)自律複製を提供するエレメントを含むエピソームプラスミドに基づいた発現ベクターであり得る。そのような「シャトルベクター」の1つの例は、プラスミドpFP10(Pagottoら、Gene 2000 244:13〜19)である。
【0119】
構築物は、例えば、関心対象のポリヌクレオチドを構築物バックボーンへ、典型的には、ベクター内の切断された制限酵素部位へのDNAリガーゼ付着を用いて、挿入することによって、調製することができる。あるいは、所望のヌクレオチド配列は、相同組換えまたは部位特異的組換えによって挿入することができる。典型的には、相同組換えは、ベクターの所望のヌクレオチド配列の隣接部に相同の領域を付着させることによって達成され、一方、部位特異的組換えは、部位特異的組換えを促進する配列(例えば、cre−lox、att部位など)の使用を通して達成される。そのような配列を含む核酸は、例えば、オリゴヌクレオチドのライゲーションによって、または相同の領域と所望のヌクレオチド配列の一部の両方を含むプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によって、付加することができる。
【0120】
ベクターは、宿主細胞における染色体外維持を与えることができ、または宿主細胞ゲノムへの組込みを与えることができる。ベクターは、当業者によく知られた多数の刊行物に十分記載されており、その刊行物には、例えば、Short Protocols in Molecular Biology、(1999) F.Ausubelら編、Wiley&Sonsが挙げられる。ベクターは、キメラfHBPをコードする核酸の発現を与えることも、本核酸の増殖を与えることも、または両方を与えることもできる。
【0121】
用いることができるベクターの例として、組換えバクテリオファージDNA由来のもの、プラスミドDNA、またはコスミドDNAが挙げられるが、それらに限定されない。例えば、pBR322、pUC 19/18、pUC 118、119などのプラスミドベクターおよびM13 mpシリーズのベクターを用いることができる。pET21もまた、用いることができる発現ベクターである。バクテリオファージベクターには、λgt10、λgt11、λgt18−23、λZAP/R、およびEMBLシリーズのバクテリオファージベクターを挙げることができる。さらに利用することができるベクターには、pJB8、pCV 103、pCV 107、pCV 108、pTM、pMCS、pNNL、pHSG274、COS202、COS203、pWE15、pWE16、およびカロミド(charomid)9シリーズのベクターが挙げられるが、それらに限定されない。
【0122】
関心対象のキメラfHbpの発現のために、発現カセットを用いてもよい。したがって、本開示は、対象核酸を含む組換え発現ベクターを提供する。発現ベクターは、転写制御配列および翻訳制御配列を提供し、コード領域が転写開始領域の転写調節下で作動可能に連結されている場合の誘導性発現または構成的発現、ならびに転写終結領域および翻訳終結領域を提供することができる。これらの調節領域は、キメラfHbpが由来するfHbpにとって本来のものであってもよいし、外因的源由来であってもよい。一般的に、転写制御配列および翻訳制御配列には、プロモーター配列、リボソーム結合部位、転写開始配列および転写終止配列、翻訳開始配列および翻訳終止配列、ならびにエンハンサー配列またはアクチベーター配列が挙げられるが、それらに限定されない。プロモーターは、構成的かまたは誘導性かのいずれかであり得、強力な構成的プロモーター(例えば、T7など)であり得る。
【0123】
発現ベクターは、一般的に、関心対象のタンパク質をコードする核酸配列の挿入を与えるために、プロモーター配列の近くに位置する好都合な制限部位を有する。発現宿主において作動する選択マーカーは、ベクターを含む細胞の選択を容易にするために存在してもよい。加えて、発現構築物は、追加のエレメントを含んでもよい。例えば、発現ベクターは、1つまたは2つの複製系を有してもよく、それにしたがって、それが生物体内で、例えば、発現のための哺乳類細胞または昆虫細胞内で、ならびにクローニングおよび増幅のための原核生物宿主内で、維持されることが可能になる。加えて、発現構築物は、形質転換された宿主細胞の選択を可能にするために選択マーカー遺伝子を含んでもよい。選択遺伝子は、当技術分野においてよく知られており、用いられる宿主細胞で異なる。
【0124】
本開示のキメラfHbpは、検出可能な標識、例えば、放射標識、蛍光標識、ビオチン標識、免疫学的に検出可能な標識(例えば、HAタグ、ポリヒスチジンタグ)などの追加のエレメントを含んでもよい。キメラfHbpの追加のエレメントは、様々な方法(例えば、親和性捕獲など)を通して単離を促進するために(例えば、ビオチンタグ、免疫学的に検出可能なタグ)、提供することができる。キメラfHbpは、任意で、共有結合性または非共有結合性付着を通して支持体上に固定化することができる。
【0125】
キメラfHbpの単離および精製は、当技術分野において知られた方法に従って達成することができる。例えば、キメラfHbpは、キメラfHbpを発現するように遺伝子改変された細胞の可溶化液から、または合成反応混合物から、免疫親和性精製によって単離することができ、その免疫親和性精製は、一般的には、試料を抗キメラfHbp抗体(例えば、JAR5などの抗キメラfHBPモノクローナル抗体、または本明細書に記載された適切なJARモノクローナル抗体)と接触させる段階、特異的に結合していない材料を除去するために洗浄する段階、および特異的に結合したキメラfHbpを溶出する段階を含む。単離されたキメラfHbpは、透析、およびタンパク質精製方法に通常用いられる他の方法によってさらに精製することができる。一実施形態において、キメラfHbpは、金属キレートクロマトグラフィー方法を用いて単離することができる。
【0126】
宿主細胞
いくつかの適切な宿主細胞のいずれかを、キメラfHbpの産生に用いることができる。一般的に、本明細書に記載されたキメラfHbpは、従来の技術に従って、原核生物または真核生物、通常には細菌、より通常には大腸菌またはナイセリア(例えば、N.メニンギティディス)内で発現することができる。したがって、本開示はさらに、キメラfHBPをコードする核酸を含む、遺伝子改変された宿主細胞を提供する。キメラfHBPの(ラージスケール産生を含む)産生のための宿主細胞は、様々な利用可能な宿主細胞のいずれかから選択することができる。発現のための例示的な宿主細胞には、細菌(例えば、大腸菌株)、酵母(例えば、S.セレビシエ(cerevisiae)、ピキア(Pichia)種など)などの原核または真核単細胞生物のものが挙げられ、昆虫、脊椎動物、特に哺乳動物(例えば、CHO、HEKなど)などの高等生物にもともと由来した宿主細胞を挙げることができる。一般的に、細菌宿主細胞および酵母は、キメラfHBP産生にとって特に関心対象になる。
【0127】
キメラfHbpは、実質的に純粋な形または実質的に単離された形(すなわち、他のナイセリアまたは宿主細胞のポリペプチドを実施的に含まない)または実質的に単離された形で調製することができる。特定の実施形態において、キメラfHbpは、存在する可能性がある他の成分(例えば、他のポリペプチドまたは他の宿主細胞成分)に対してそのポリペプチドについて濃縮されている組成物中に存在する。精製されたキメラfHbpは、他の発現したポリペプチドを実質的に含まない、例えば、組成物の90%未満、通常には60%未満、より通常には50%未満が他の発現したポリペプチドで構成される組成物中に、そのポリペプチドが存在するように提供することができる。
【0128】
小胞産生のための宿主細胞
(下記でより詳細に論じられているように)キメラfHbpが膜小胞内に提供されることになっている場合、ナイセリア宿主細胞は、キメラfHbpを発現するように遺伝子改変される。様々なナイセリア種のいずれかを、キメラfHbpを産生するように改変することができ、任意で、それは、PorAなどの関心対象の他の抗原を産生し、または産生するように改変することができ、本明細書に開示された方法に用いることができる。
【0129】
ナイセリア株の遺伝子改変および所望のポリペプチドの発現を提供するための方法およびベクターは、当技術分野において知られている。ベクターおよび方法の例は、WO 02/09746およびO’Dwyerら、Infect Immun 2004;72:6511〜80に提供されている。強力なプロモーター、特に強力な構成的プロモーターは特に関心対象である。例示的なプロモーターとして、porA、porB、lbpB、tbpB、p110、hpuAB、lgtF、opa、p110、lst、hpuAB.、およびrmpが挙げられる。
【0130】
病原性ナイセリア種、または病原性ナイセリア種由来の菌株、特にヒトにとって病原性の菌株、またはヒトにとって病原性もしくは共生する菌株由来の菌株が、膜小胞産生に用いるための特に関心対象である。ナイセリア種の例には、N.メニンギティディス、N.フラベセンス(N.flavescens)、N.ゴノレア(N.gonorrhoeae)、N.ラクタミカ(N.lactamica)、N.ポリサッカレア(N.polysaccharea)、N.シネレア(N.cinerea)、N.ムコーサ(N.mucosa)、N.サブフラバ(N.subflava)、N.シッカ(N.sicca)、N.エロンガータ(N.elongata)などが挙げられる。
【0131】
N.メニンギティディス株は、キメラfHbpを発現するために遺伝子改変するのに、および小胞産生に用いるのに、特に関心対象である。小胞産生に用いる菌株は、望ましくあり得るいくつかの異なる特性に従って選択することができる。例えば、菌株は、所望のPorA型(上記のように、「血清亜型」)、莢膜群、血清型など;減少した莢膜多糖産生などに従って選択してもよい。例えば、産生株は、任意の所望のPorAポリペプチドを産生することができ、(自然にかまたは遺伝子操作によるかのいずれでも)1つまたは複数のPorAポリペプチドを発現してもよい。菌株の例として、Pl.7、16;Pl.19、15;Pl.7、1;Pl.5、2;Pl.22a、14;Pl.14;Pl.5、10;Pl.7、4;Pl.12、13の血清亜型を与えるPorAポリペプチドを産生するもの;および血清亜型分類に用いられる従来の血清学的試薬との反応性を保持することができ、または保持することができない、そのようなPorAポリペプチドの変種が挙げられる。PorA可変領域(VR)分類に従って特徴づけられたPorAポリペプチドもまた関心対象である(例えば、Russellら、Emerging Infect Dis 2004 10:674〜678;Sacchi CTら、Clin Diagn Lab Immunol 1998;5:845〜55;Sacchiら、J.Infect Dis 2000;182:1169〜1176参照)。相当な数の別々のVR型が同定されており、それらは、VR1およびVR2ファミリー「プロトタイプ」へ分類することができる。この命名法、および以前の分類スキームとのそれの関係を記載するウェブアクセス可能なデータベースは、neisseria.org/nm/typing/poraに見出される。例示的なPorA VR1型およびVR2型のアラインメントは、Russellら、Emerging Infect Dis 2004 10:674〜678に提供されている。
【0132】
代替として、または加えて、産生株は、莢膜欠損株であり得る。莢膜欠損株は、ワクチンが投与される対象において(例えば、宿主細胞表面上のシアル酸と交差反応する抗体の産生による)有意な自己抗体応答を誘発するリスクの低減を与える小胞に基づいたワクチンを提供することができる。本明細書に用いられる場合、「莢膜欠損」または「莢膜多糖の欠損」とは、天然株のより低い、または、その菌株が遺伝子改変されている場合、莢膜欠損株が由来する親株のより低い、細菌表面上の莢膜多糖のレベルを指す。莢膜欠損株には、表面莢膜多糖産生が少なくとも10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上減少している菌株が挙げられ、莢膜多糖が細菌表面上で(例えば、抗莢膜多糖抗体を用いる細胞全体のELISAにより)検出できない菌株が挙げられる。
【0133】
莢膜欠損株には、自然発生の、または組換え的に生じた遺伝子改変による莢膜欠損であるものが挙げられる。自然発生の莢膜欠損株(例えば、Dolan−Livengoodら、J.Infect.Dis.(2003) 187(10):1616〜28参照)、および莢膜欠損株を同定および/または作製する方法(例えば、Fissehaら、(2005) Infect.Immun. 73(7):4070〜4080;Stephensら、(1991) Infect Immun 59(11):4097〜102;Froschら、(1990) MoI Microbiol. 1990 4(7):1215〜1218参照)は、当技術分野において知られている。
【0134】
莢膜多糖の産生の減少をもたらすためのナイセリア宿主細胞の改変には、莢膜合成に関与する1つまたは複数の遺伝子の改変が挙げられ、その改変は、例えば、改変前の親細胞に対して莢膜多糖のレベルの減少をもたらす。そのような遺伝子改変には、(例えば、1つまたは複数の莢膜生合成遺伝子における1つまたは複数の挿入、欠失、置換などによる)菌株を莢膜欠損にする1つまたは複数の莢膜生合成遺伝子におけるヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の変化を挙げることができる。莢膜欠損株は、1つまたは複数の莢膜遺伝子を欠くことができ、またはそれについての機能を喪失し得る。
【0135】
特に関心対象であるのは、シアル酸生合成を欠く菌株である。そのような菌株は、ヒトシアル酸抗原と交差反応する抗シアル酸抗体を誘発するリスクを低減する小胞の産生を与えることができ、さらに、製造安全性の向上をもたらすことができる。(自然発生の改変または操作された改変のいずれかにより)シアル酸生合成に欠陥を有する菌株は、シアル酸生合成経路におけるいくつかの異なる遺伝子のいずれかが欠損し得る。特に関心対象であるのは、(synX AAF40537.1またはsiaA AAA20475として知られた)N−アセチルグルコサミン−6−リン酸2−エピメラーゼ遺伝子によってコードされる遺伝子産物を欠損する菌株であり、不活性化されたこの遺伝子を有する菌株がとりわけ関心対象である。例えば、一実施形態において、莢膜欠損株は、機能性synX遺伝子産物の産生の破壊によって生じる(例えば、Swartleyら、(1994)J Bacteriol 176(5):1530〜4参照)。
【0136】
莢膜欠損株はまた、非組換え技術を用いて、例えば、莢膜多糖が低下した菌株を選択するために殺菌性抗莢膜抗体の使用によって、天然の菌株から生み出すことができる。
【0137】
本開示が、(例えば、異なる菌株由来のキメラfHbp提示小胞を含む抗原性組成物を作製するために)2つ以上の菌株の使用を含む場合、菌株は、1つまたは複数の菌株特性の点で異なるように、例えば、用いられるキメラfHbp、PorAなどの点で異なる小胞を提供するために、選択することができる。
【0138】
小胞の調製
本開示によって企図される抗原性組成物は、一般的に、キメラfHbpを発現するナイセリア細胞から調製される小胞を含む。本明細書で言及される場合、「小胞」とは、外膜小胞および微小胞(ブレブとも呼ばれる)を含むことを意図される。
【0139】
抗原性組成物は、キメラfHbpを発現するように遺伝子改変されたナイセリア−メニンギティディス種の培養株の外膜から調製された外膜小胞(OMV)を含み得る。OMVは、ブロス培地または固形培地で成長したナイセリア−メニンギティディスから、好ましくは、培地から細菌細胞を(例えば、濾過により、または細胞をペレット状にする低速遠心分離によるなどで)分離し、細胞を(例えば、界面活性剤の添加、浸透圧ショック、超音波処理、キャビテーション、ホモジナイゼーションなどにより)溶解し、細胞質分子から外膜画分を(例えば、濾過により;または外膜および/もしくは外膜小胞の示差的沈殿または凝集により、または外膜分子を特異的に認識するリガンドを用いる親和性分離方法により、または外膜および/もしくは外膜小胞をペレット状にする高速遠心分離によるなどで)分離することにより、得ることができ、外膜画分はOMVを生じさせるために用いることができる。
【0140】
抗原性組成物は、キメラfHbpを含む微小胞(MV)(または「ブレブ」)を含むことができ、MVまたはブレブが、キメラfHbpを発現するように遺伝子改変されたナイセリア−メニンギティディス株の培養中に放出される。例えば、MVは、ブロス培地中でナイセリア−メニンギティディスの株を培養し、ブロス培地から細胞全体を(例えば、濾過により、または細胞のみをペレット状にし、より小さいブレブをペレット状にしない低速遠心分離によるなどで)分離し、その後、細胞を含まない培地中に存在するMVを(例えば、濾過、MVの示差的沈殿もしくは凝集により、またはブレブをペレット状にする高速遠心分離によるなどで)収集することによって得てもよい。MVの産生に用いる菌株は、一般的に、培養中に産生されるブレブの量に基づいて選択することができる(例えば、細菌は、本明細書に記載された方法における単離および投与に適したブレブの産生を提供するのに妥当な数で培養することができる)。高レベルのブレブを産生する菌株の例は、国際公開特許第01/34642号に記載されている。ブレブ産生に加えて、MV産生に用いる菌株はまた、NspA産生に基づいて選択してもよく、より高レベルのNspAを産生する菌株は特に関心対象である(例えば、異なるNspA産生レベルを生じるN.メニンギティディス株について、Moeら(1999)Infect.Immun.67:5664参照)。ブレブの産生に用いる関心対象の他の菌株には、細胞分離、膜構造、および病原性に必要とされるリポタンパク質をコードする不活性化GN33遺伝子を有する菌株が挙げられる(例えば、Adu−Bobieら、Infect Immun.2004;72:1914〜1919参照)。
【0141】
本開示の抗原性組成物は、1つの菌株由来、または2つ、3つ、4つ、5つ、もしくはそれ以上の菌株由来の小胞を含むことができ、それらの菌株は、お互いに同種であってもよいし、異種であってもよく、通常、異種である。例えば、菌株は、PorAに関して同種でも異種でもよい。小胞はまた、異なる変種(v.1、v.2、またはv.3)または亜変種(例えば、v.1、v.2、またはv.3の亜変種)由来のfHbpアミノ酸配列で構成され得る1つより多いキメラfHbp(例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のキメラfHbp)を発現する菌株から調製することができる。
【0142】
抗原性組成物は、同じまたは異なるキメラfHbpを提示するOMVおよびMVの混合物を含むことができ、キメラfHbpは任意で、fHbp変種および/または亜変種の異なる組合せ由来のエピトープを提示してもよく、かつOMVおよび/またはMVは、同じ菌株由来でも異なる菌株由来でもよい。異なる菌株由来の小胞は、混合物として投与することができ、または連続的に投与することができる。抗原性組成物は、1つまたは複数の異なるキメラfHbpを含む小胞を含んでもよく、その組成物中、小胞およびfHbpは両方とも同じ宿主細胞に由来している。組成物はまた、異なる宿主細胞に由来している小胞およびfHbpから作製することができ、それゆえに、小胞およびfHbpはそれらの別個の精製後に混合される。
【0143】
望ましい場合(例えば、小胞を産生するために用いられる菌株が内毒素または特に高レベルの内毒素に関連している場合)、小胞は、任意で、内毒素を低減するために、例えば、投与後の毒性を低減するために、処理される。下記で論じられているようにあまり望ましくはないが、内毒素の低減は、適切な界面活性剤(例えば、BRIJ−96、デオキシコール酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、Empigen BB、Triton X−100、TWEEN 20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート)、TWEEN 80(それぞれ、0.1〜10%、好ましくは0.5〜2%の濃度において)、およびSDS)での抽出によって達成することができる。界面活性剤抽出物を用いる場合、デオキシコール酸塩以外の界面活性剤を用いることが好ましい。
【0144】
抗原性組成物の小胞は、界面活性剤なしに、例えば、デオキシコール酸塩の使用なしに、調製することができる。界面活性剤処理は内毒素活性を除去するのに有用であるが、小胞産生中の抽出によって天然fHbpリポタンパク質および/または(脂質付加されたキメラfHbpを含む)キメラfHbpを枯渇させる可能性がある。したがって、界面活性剤を必要としないテクノロジーを用いて内毒素活性を減少させることが特に望ましい。1つのアプローチにおいて、ヒトに使用する前に最終調製物から内毒素を除去する必要性を避けるために、比較的低い内毒素(リポ多糖、LPS)の産生株である菌株を用いる。例えば、小胞は、リポオリゴ糖、またはワクチンにおいて望ましくない可能性がある他の抗原(例えば、Rmp)が低下し、または除去されているナイセリア突然変異体から調製することができる。
【0145】
結果として、リピドAの毒性活性の減少、または検出不可能を生じる遺伝子改変を含むN.メニンギティディス株から小胞を調製することができる。例えば、そのような菌株は、リピドA生合成において遺伝子改変することができる(Steeghsら、Infect Immun 1999;67:4988〜93;van der Leyら、Infect Immun 2001;69:5981〜90;Steeghsら、J Endotoxin Res 2004;10:113〜9;Fisshaら、Infect Immun 73:4070,2005)。免疫原性組成物は、lpxL1またはlpsL2、それぞれによってコードされる酵素の下方制御および/または不活性化などのLPSの改変によって解毒することができる。lpxL1突然変異体において生成されるペンタアシル化リピドAの産生は、lpxL1によってコードされた酵素が、GlcN IIの2’位におけるN結合型3−OH C14にC12を付加することを示す。lpxL2突然変異体に見出される主なリピドA種はテトラアシル化されており、lpxL2によってコードされる酵素が他のC12を、つまり、GlcN Iの2位におけるN結合型3−OH C14に付加することを示す。これらの遺伝子の発現の減少(もしくは消失)(またはこれらの遺伝子の産物の活性の減少もしくは消失)を生じる突然変異は、結果として、リピドAの毒性活性の変化を生じる(van der Leyら、2001;69:5981〜90)。テトラアシル化(lpxL2突然変異体)リピドAおよびペンタアシル化(lpxL1突然変異体)リピドAは、野生型リピドAより毒性が低い。リピドA4’−キナーゼコード遺伝子(lpxK)における突然変異はまた、リピドAの毒性活性を減少させる。小胞(例えば、MVまたはOMV)の産生に用いるのに特に関心対象であるのは、機能性LpxL1コード化タンパク質の減少または検出不可能をもたらすように遺伝子改変されたN.メニンギティディス株である。そのような小胞は、キメラfHbpの免疫原性を保持しながら、LPS産生について野生型であるN.メニンギティディス株と比較して毒性の低下を提供する。
【0146】
LPS毒性活性はまた、ポリミキシンB耐性(そのような耐性はリピドAの4’ホスフェートへのアミノアラビノースの付加と関連づけられている)に関与する遺伝子/座位に突然変異を導入することによって変化させることができる。これらの遺伝子/座位は、UDP−グルコースデヒドロゲナーゼをコードするpmrE、またはアミノアラビノース合成および転移に関与し得る多くの腸内細菌科に共通した抗菌性ペプチド耐性遺伝子の領域であり得る。この領域に存在する遺伝子pmrFは、ドリコールリン酸マンノシルトランスフェラーゼをコードする(Gunn J.S.、Kheng,B.L.、Krueger J.、Kim K.、Guo L.、Hackett M.、Miller S.I.1998.MoI.Microbiol.27:1171〜1182)。
【0147】
リン中継の2つの成分制御系(例えば、PhoP構成性表現型、PhoPc)であるPhoP−PhoQ制御系における突然変異、または(PhoP−PhoQ制御系を活性化する)低Mg++環境条件もしくは培養条件は、4’−ホスフェートへのアミノアラビノースの付加およびミリステートと置き換わる2−ヒドロキシミリステート(ミリステートのヒドロキシル化)をもたらす。この改変されたリピドAは、ヒト内皮細胞によるE−セレクチン発現およびヒト単球からのTNF分泌を刺激する能力の低下を示す。
【0148】
ポリミキシンB耐性株もまた、そのような菌株はLPS毒性が低下していることが示されているため、使用に適している(例えば、van der Leyら、1994.Proceedings of the ninth international pathogenic Neisseria conference. The Guildhall、Winchester、England参照)。あるいは、ポリミキシンBの結合活性を模倣する合成ペプチドを、LPS毒性活性を低下させるために抗原性組成物に加えてもよい(例えば、Rusticiら、1993、Science 259:361〜365;Porroら、Prog Clin Biol Res.1998;397:315〜25参照)。
【0149】
内毒素はまた、培養条件の選択を通して低下させることができる。例えば、1リットルの培地あたり0.1mg〜100mgのアミノアラビノースを含む成長培地で菌株を培養することにより、脂質毒性の低下がもたらされる(例えば、WO02/097646参照)。
【0150】
製剤
本明細書では、「抗原組成物」、「抗原性組成物」、または「免疫原性組成物」は、便宜上、本明細書に開示されているようなキメラfHbpを含む組成物を総称的に指すために用いられ、そのキメラfHbpは任意で、免疫原性をさらに増強するためにコンジュゲートされていてもよい。抗体、特にナイセリア−メニンギティディスB群(NmB)に対する抗体をヒトにおいて誘発するのに有用な組成物は、本開示によって具体的に企図される。抗原性組成物は、2つ以上の異なるキメラfHbpを含むことができ、キメラfHbpは、fHbp変種および/または亜変種の異なる組合せ由来のエピトープを提示してもよい。
【0151】
抗原性組成物は、一般的に、免疫学的有効量のキメラfHbpを含み、必要に応じて、他の適合する成分をさらに含んでもよい。「免疫学的有効量」とは、単一用量か、または一連の同じもしくは異なる抗原性組成物の一部としてかのいずれかでのその量の個体への投与が、例えば、ナイセリア、具体的にはN.メニンギティディス、より具体的にはB群N.メニンギティディスによる感染の症状、または感染によって引き起こされる疾患の処置または予防に有効な抗体応答を誘発するのに有効であることを意味する。この量は、処置されるべき個体の健康状態および身体的状態、年齢、抗体を産生する個体の免疫系の能力、望まれる保護の程度、ワクチンの剤形、処置を行う医師による医学的状況の評価、および他の関連因子に依存して変化する。量は、日常的試行によって決定することができる比較的広い範囲に収まるだろうことが予想される。
【0152】
投与計画は、単一用量スケジュールでも、異なる時間における投与される抗原性組成物の単位剤形での複数回用量スケジュールでもよい。本明細書に用いられる場合、用語「単位剤形」は、ヒト対象および動物対象についての単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位が、所望の効果を生じるのに十分な量で所定量の本開示の抗原性組成物を含み、その組成物が薬学的に許容される賦形剤(例えば、薬学的に許容される希釈剤、担体、または媒体)と付随して提供される。抗原性組成物は、他の免疫制御剤と組み合わせて投与してもよい。
【0153】
抗原性組成物は、薬学的に許容される賦形剤中に提供することができ、その賦形剤は、滅菌水溶液などの溶液、多くの場合、食塩水であり得、または粉末の形で提供することができる。そのような賦形剤は、必要に応じて、実質的に不活性であり得る。
【0154】
抗原性組成物は、アジュバントをさらに含み得る。ヒトに用いることができる公知の適切なアジュバントの例には、ミョウバン、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、MF59(4.3% w/vのスクワレン、0.5% w/vのTween 80(商標)、0.5% w/vのSpan 85)、CpG含有核酸(シトシンが非メチル化されている)、QS21、MPL、3DMPL、Aquillaからの抽出物、ISCOMS、LT/CT突然変異体、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)微粒子、Quil A、インターロイキンなどが挙げられるが、必ずしもそれらに限定されない。実験動物については、フロイント、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDPと呼ばれるCGP 11637)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PEと呼ばれるCGP 19835A)、およびRIBI(細菌から抽出された3つの成分である、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレート、および細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクワレン/Tween 80乳濁液中に含む)を用いることができる。アジュバントの効果は、免疫原性抗原またはその抗原性エピトープに対して産生される抗体の量を測定することによって決定することができる。
【0155】
組成物の効果を増強するためのさらなる例示的なアジュバントとして、(1)水中油形乳剤(ムラミルペプチド(下記参照)または細菌細胞壁成分などの他の特定の免疫刺激剤とともにまたはなしで)、例えば、(a)マイクロ流動化装置を用いてサブミクロン粒子へ製剤化された、5%のスクワレン、0.5%のTween 80、および0.5%のSpan 85を含む(任意でMTP−PEを含む)MF59(商標)(WO90/14837;Vaccine design:the subunit and adjuvant approach、Powell & Newman編、Plenum Press 1995の10章)、(b)サブミクロン乳剤へマイクロ流動化されたかまたはより大きい粒子サイズの乳剤を生じるようにボルテックスされたかのいずれかの、10%のスクワレン、0.4%のTween 80、5%のプルロニックブロック化ポリマーL121、およびthr−MDPを含むSAF、および(c)2%のスクワレン、0.2%のTween 80、ならびにモノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))などの1つまたは複数の細菌細胞壁成分を含むRIBI(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem、Hamilton、Mont.);(2)QS21などのサポニンアジュバント、またはStimulon(商標)(Cambridge Bioscience、Worcester、Mass.)もしくはISCOM(免疫賦活性複合体)などのそれから作製された粒子を用いてもよい(ISCOMSは追加の界面活性剤を欠いていてもよい、例えば、WO 00/07621);(3)完全フロイントのアジュバント(CFA)および不完全フロイントのアジュバント(IFA);(4)インターロイキン(例えば、IL−I、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12(WO99/44636)など)、インターフェロン(例えば、γインターフェロン)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン;(5)任意で、肺炎球菌サッカライドと共に用いる場合、ミョウバンの実質的非存在下における(例えば、WO00/56358)、モノホスホリルリピドAまたは3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)、例えば、GB2220221、EP−A−0689454;(6)例えば、QS21および/または水中油乳剤と3dMPLの組合せ、例えば、EP−A−0835318、EP−A−0735898、EP−A−0761231;(7)CpGモチーフを含む、すなわち、シトシンが非メチル化されている場合、少なくとも1つのCGジヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド(Krieg Vaccine 2000、19、618〜622;Krieg Curr opin MoI Ther2001 3:15〜24;Romanら、Nat.Med、1997、3、849〜854;Weinerら、PNAS USA、1997、94、10833〜10837;Davisら、J.Immunol、1998、160、810−876;Chuら、J.Exp.Med、1997、186、1623〜1631;Lipfordら、Ear.J.Immunol.、1997、27、2340〜2344;Moldoveamiら、Vaccine、1988、16、1216〜1224、Kriegら、Nature、1995、374、546〜549;Klinmanら、PNAS USA、1996、93、2879〜2883;Ballasら、J.Immunol、1996、157、1840〜1845;Cowderyら、J.Immunol、1996、156、4570〜4575;Halpernら、Cell Immunol、1996、167、72〜78;Yamamotoら、Jpn.J.Cancer Res.、1988、79、866〜873;Staceyら、J.Immunol.、1996、157、2116〜2122;Messinaら、J.Immunol、1991、147、1759〜1764;Yiら、J.Immunol、1996、157、4918〜4925;Yiら、J.Immunol、1996、157、5394〜5402;Yiら、J.Immunol、1998、160、4755〜4761;およびYiら、J.Immunol、1998、160、5898〜5906;国際公開特許出願WO96/02555、WO98/16247、WO98/18810、WO98/40100、WO98/55495、WO98/37919、およびWO98/52581);(8)ポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステル、例えば、WO99/52549;(9)オクトキシノールと組み合わされたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(WO01/21207)、またはオクトキシノールなどの少なくとも1つの追加の非イオン性界面活性剤と組み合わされたポリオキシエチレンアルキルエーテルもしくはエステル界面活性剤(WO01/21152);(10)サポニンおよび免疫賦活性オリゴヌクレオチド(例えば、CpGオリゴヌクレオチド)(WO00/62800);(11)免疫賦活剤および金属塩の粒子、例えば、WO00/23105;(12)サポニンおよび水中油形乳剤、例えば、WO99/11241;(13)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IM2(任意で+ステロール)、例えば、WO98/57659;(14)組成物の効力を増強するための免疫賦活剤として働く他の物質が挙げられるが、それらに限定されない。ムラミルペプチドには、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−25アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(ノル−MDP)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)などが挙げられる。ヒトへの投与に適したアジュバントは特に関心対象である。
【0156】
抗原組成物は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、マグネシウム、炭酸塩などの他の成分を含んでもよい。組成物は、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤などなどの適切な生理的条件に必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムを含んでもよい。
【0157】
製剤中のキメラfHbpの濃度は、大きく異なり得(約0.1重量%未満から、通常、約2重量%または少なくとも約2重量%から、20重量%〜50重量%くらいまたはそれ以上まで)、通常には、主に、液体容量、粘度、および選択された特定の投与様式および患者の要求に応じた患者に基づく因子に基づいて、選択される。
【0158】
キメラfHBP含有製剤は、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、エアゾールなどの形で提供することができる。経口投与は、組成物の消化からの保護を必要とし得る。これは、典型的には、組成物を酸性および酵素的加水分解に対して抵抗性にする作用物質との組成物の会合によるか、または適切に抵抗性である担体中に組成物をパッケージングすることによるかのいずれかで達成される。消化から保護する手段は当技術分野においてよく知られている。
【0159】
キメラfHbp含有製剤はまた、投与後のキメラfHBPの血中半減期を向上させるように提供することができる。例えば、単離されたキメラfHbpが注射用に製剤化される場合、キメラfHbpは、リポソーム製剤中に提供され、コロイドとして調製され、または血中半減期を延ばすための他の従来技術を用いて調製することができる。リポソームを調製するために、例えば、Szokaら、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980)、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号、および第4,837,028号に記載されているような様々な方法が利用できる。調製物はまた、放出制御または持続放出の形で提供してもよい。
【0160】
免疫化
キメラfHbp含有抗原性組成物は、一般的に、ナイセリア疾患に罹るリスクがあるヒト対象に、疾患およびその合併症の発生を防ぎ、または少なくとも部分的に停止させるように投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療的有効量」として定義される。治療的使用に有効な量は、例えば、抗原性組成物、投与様式、患者の体重および全身的健康状態、および処方医師の判断に依存する。抗原性組成物の単一用量または複数回用量は、患者に必要とされ、かつ忍容される用量および頻度、ならびに投与経路に依存して投与され得る。
【0161】
キメラfHbp含有抗原性組成物は、一般的に、宿主において免疫応答、特に体液性免疫応答を誘発するのに有効な量で投与される。上記で述べられているように、免疫化のための量は、様々であり、一般的には、70kgの患者あたり約1μgから100μgまで、通常には、5μg〜50μg/70kgの範囲であり得る。実質的により高い用量(例えば、10mg〜100mgまたはそれ以上)は、経口、経鼻、または局所投与経路において適している場合がある。初回投与の後に、同じまたは異なるキメラfHbp含有抗原性組成物の追加免疫が続くことができる。通常には、ワクチン接種は、少なくとも1回の追加免疫、より通常には2回の追加免疫を含む。
【0162】
一般的に、免疫化は、任意の適切な経路による投与によって達成することができ、その投与には、経口で、経鼻で、経鼻咽頭で、非経口で、経腸で、経胃で、局所的に、経皮で、皮下に、筋肉内に、錠剤、固体、粉末化、液体、エアゾールの形で、局部的にまたは全身的に、賦形剤の添加有りまたはなしでの組成物の投与が挙げられる。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際的な方法は、当業者に知られているだろう、または明らかであろうし、Remington’s Pharmaceutical Science、第15版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(1980)のような刊行物内でより詳細に記載されている。
【0163】
抗キメラfHbp免疫応答は、公知の方法によって(例えば、初回免疫化の前および後に個体から血清を採取し、個体の免疫状態における変化を、例えば、免疫沈降アッセイ、またはELISA、または殺菌アッセイ、またはウェスタンブロット、またはフローサイトメトリーアッセイなどにより示すことによって)評価することができる。
【0164】
抗原性組成物は、ナイセリア−メニンギティディスに関して免疫学的にナイーブであるヒト対象に投与することができる。特定の実施形態において、対象は、約5歳以下、好ましくは約2歳以下のヒトの小児であり、抗原性組成物は以下の時間のうちの任意の1時点または複数時点に投与される:生後2週間目、1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目、5ヶ月目、6ヶ月目、7ヶ月目、8ヶ月目、9ヶ月目、10ヶ月目、もしくは11ヶ月目、もしくは1年目、もしくは15ヶ月目、18ヶ月目、21ヶ月目、または2歳、3歳、4歳、5歳時点。
【0165】
一般的には、疾患症状の最初の兆候前に、または(例えば、ナイセリアによる暴露または感染による)感染もしくは疾患への可能性のある、もしくは実際の暴露の最初の兆候時点で、免疫化を開始することが望ましい場合がある。
【0166】
ATCC寄託
JAR 4、JAR 5、JAR 11、およびJAR 32モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、ブダペスト条約に従ってAmerican Type Culture Collection、10801 University Blvd.、Manassas、Va.20110−2209、USA(ATCC)に、下記の表に示された日付に寄託し、下記の表に提示された呼称が割り当てられた。
【0167】

【0168】
JAR 5モノクローナル抗体は、JAR 3モノクローナル抗体によって特異的に結合されるエピトープと少なくとも重複するエピトープに特異的に結合すること、およびJAR 32モノクローナル抗体は、JAR 35モノクローナル抗体によって特異的に結合されるエピトープと少なくとも重複するエピトープに特異的に結合することに留意されるべきである。
【0169】
これらの寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の条項およびブダペスト条約による規定下でなされた。これは、受託者によって受け取られた寄託物の試料の提供について寄託日から30年間、および最も近い依頼後少なくとも5年間、寄託物の生存可能な培養の維持を保証する。寄託物は、ブダペスト条約の条項によってATCCにより入手可能になり、受託者により寄託された物質の一般者の入手可能性に課せられた全ての制限が関連米国特許の認可で決定的に解除されるだろうことを保証するオークランドのChildren’s Hospital & Research CenterとATCCとの間の協定に従って、関連米国特許が発行され次第、または任意の米国特許出願もしくは外国特許出願が公衆へ公開され次第、どれが最初になろうとも、一般者への寄託物の培養物の子孫の永久的かつ無制限の入手可能性を保証し、かつ35 U.S.C §122およびそれに準ずる米国特許商標庁長官の規定(特に886 OG 638を参照する、37 C.F.R.§1.14を含む)に従って長官によりその権利があると決定された者への子孫の入手可能性を保証する。
【0170】
本出願の譲受人(複数可)は、もし万一、寄託された物質の培養物が、適切な条件下で培養された場合に、死滅または消失し、または破壊されたならば、その物質は、通知の上、速やかに同じ別のものと交換されるだろう。寄託物質の入手可能性は、任意の政府の権限下でその特許法に従って認可された権利に違反して本発明を実施する実施権として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0171】
本明細書に記載された実施例および実施形態は、例示を目的とするのみであること、およびそれを鑑みての様々な改変または変化が当業者に示唆されるであろうし、本出願の精神および権限内、ならびに添付された特許請求の範囲の範囲内に含まれ得ることは、理解されている。本明細書に引用された全ての刊行物、特許、および特許出願は、全ての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0172】
材料および方法
以下の方法および材料を下記の実施例に用いた。
【0173】
fHbpシークエンシング。fHbp遺伝子を、DNeasy Tissueキット(Qiagen、Valencia、CA)で調製されたゲノムDNAから、以前に記載されたプライマーA1およびB2ならびにサイクリングパラメータ(Masignaniら、J Exp Med 2003、197:789〜99)を用いるポリメラーゼ連鎖反応によって増幅した。PCR産物をQiaQuick PCR精製キット(Qiagen)を用いて精製し、30μlの滅菌脱イオンHO中に溶出した。fHbp DNA配列を以前に記載されたプライマーA1および22(Masignaniら、2003)を用いる市販のシークエンシング設備によって決定した。
【0174】
データの供給源。第1の研究において分析されたタンパク質配列については、米国(Beerninkら、J Infect Dis 2007、195:1472〜9)、ヨーロッパ(BeerninkおよびGranoff Infect Immun 2008,76:2568〜2575;Beerninkら、Infect Immun 2008、76:4232〜4240)、およびアフリカ(Beerninkら、J Infect Dis 2009、doi:10.1086/597806)からのナイセリア−メニンギティディス症例分離株由来の69 fHbp遺伝子によりコードした。このデータセットは、本発明者らの以前の研究の一部として決定された48個の配列および本研究について実施された21個の新しい配列を含んだ。95個の追加のfHbp遺伝子配列を、Genbank(www.ncbi.nlm.nih.gov)から、菌株MC58(変種1/サブファミリーB)およびM1239(変種3/サブファミリーA)由来のfHbpアミノ酸配列に関して翻訳BLAST(tblastn)検索を実行することによって得た。3つのゲノム配列(Parkhillら、Nature 2000、404:502〜506;Pengら、Genomics 2008,91:78〜87;Tettelinら、Science 2000、287:1809〜1815)を含む、本発明者らのコレクションおよびGenbankからのこれらの164個のヌクレオチド配列の中から、63個の固有のタンパク質配列をコードするfHbp遺伝子を同定した。Neisseria.org fHbpペプチドデータベース(neisseria.org)から得られたこれらの63個、プラス6個の追加の固有fHbpアミノ酸配列を、69個の固有fHbpペプチドの分析として用いた。個々のGenbankアクセッション番号および/またはペプチド識別番号ならびに供給源菌株の特性は、図1A〜1G(表7)に列挙されている。
【0175】
69個のペプチドのうちの38個(55%)は、Masignaniら、2003の変種1群に、15個(22%)は変種2群に、16個(23%)は変種3群に分類された。69株の供給源菌株のうち、1株は莢膜群Aであり、57株は群Bであり、7株は群Cであり、2株はW−135群であり、2株はX群であった。多座配列型(MLST)情報は、58株について入手でき、その菌株のうち、15株はST−269クローン複合体由来であり、12株それぞれはST−11由来であり、10株はST−41/44複合体由来であり、4株はST−162由来であり、5株はST−213複合体由来であり、3株それぞれはST−8複合体およびST−32複合体由来であった。6株は他のクローン複合体由来であり、配列型ST−4、ST−35、ST−751、ST−4821、ST−5403、およびST−6874を有した。MLST情報なしの11株は試験に利用できなかった。
【0176】
第2の研究において、データセットは、2009年11月現在のNeisseria.orgデータベース(http://neisseria.org/perl/agdbnet/agdbnet.pl?file=nm_fhbp.xml)にその後加えられた172個の追加の別個の配列をさらに含んだ。その242個の固有タンパク質を記載するにおいて(図10A〜10I、表9)、Neisseria.orgウェブサイトにおけるペプチドデータベースからのタンパク質識別(ID)番号を用いた。
【0177】
完全または部分的タンパク質配列の分析についてのアプローチの組合せを用いた。最高の精度のために設定されたMUSCLE(EBI、v3.7、ebi.ac.uk/Tools/muscle/index.html)(Edgar RC.(2004)Nucleic Acids Res.32:1792〜7;Edgar RC(2004)BMC Bioinform.5:113)を用いて配列を整列させた。アラインメントの精度を、目視検査により、およびプログラムJALVIEW(Water house AMら、(2009)Bioinformatics 25:1189〜91)を用いて確認した。個々のモジュラー可変セグメントについても不変残基ブロック間のアラインメントを行った。ネットワークを、デフォルトパラメータでのSplitsTree、バージョン4.0(Huson DHら、(2006)MoI Biol Evol 23:254〜67)を用いて作成した。ブランチのサポートについての統計学的検定を、ブートストラップ方法(1000回反復)を用いて行った。
【0178】
系統学的分析。完全または部分的タンパク質配列の分析を、www.phylogeny.fr(Dereeperら、Nucleic Acids Res 2008、36:W465〜469)でのプラットフォームで行い、それは以下の段階を含んだ。最高の精度のために設定されたMUSCLE(v3.7)(Edgar Nucleic Acids Res 2004、32:1792〜7)を用いて配列を整列させた。最高3つまでの挿入部位または欠失部位を含む個々のアラインメントを、隣接する不変配列により検査および検証した。系統樹を、PhyMLプログラム(v3.0 aLRT)において実行される最尤法を用いて再構築した。内部ブランチについての信頼性について、ブートストラップ法(100回のブートストラップ反復)を用いて評価した。系統樹を、MEGA 4.0(Tamuraら、Mol Biol Evol 2007、24:1596〜1599)で示した。整合性のためにペプチド1に系統樹をルーティングした。可変セグメント型の配列内および配列間のパーセント配列同定を、ClustalW(Larkinら、Bioinformatics 2007、23:2947〜2948)を用いて決定した。
【0179】
組換えタンパク質のクローニング、発現、および精製。発現プラスミドを、以前に記載されているように(Masignaniら、(2003)J Exp Med 197:789〜99)、ゲノムDNAからのfHbp遺伝子のPCR増幅によって構築した。遺伝子は、fHbp ID 1(モジュラー群I)、28(群II)、22(群III)、15(群IV)、79(群V)、および77(群VI)をコードした。C末端ヘキサヒスチジンタグ付き組換えfHbpを大腸菌BL21(DE3)(Novagen、Madison、WI、US)に発現させ、別の所で記載されているように(Beernink PTら、(2008)Infect Immun 76:2568〜75)、精製した。
【0180】
マウス抗血清。週齡5週間のCD−1雌マウスの群(群あたり10匹のマウス)をCharles River(Wilmington、MD、US)から入手した。マウスに、腹腔内経路(IP)を介してワクチンの3回の投与を3週間間隔で与え、免疫した。各100μl用量は、フロイントのアジュバント(FA)(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、US)(初回投与については完全FA、後の投与については不完全FA)と混合された20μgの組換えタンパク質を含んだ。最後の投与から3週間後に、末梢血試料を採取した。Children’s Hospital Oakland Research Instituteの施設内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)により承認されたプロトコール下で動物手順を実施した。
【0181】
細菌株。血清殺菌活性を測定するために用いるN.メニンギティディス株の特性は、表7および9に要約されている。2株の分離株それぞれを、モジュラー群I〜VIから選択した。5つのモジュラー群について、各ペアの一方の菌株は、下記に記載されているように測定した場合、fHbpの低発現株であり、他方はより高い発現株であった。モジュラー群Vについて、中間の量のfHbpを発現する株のみが同定され、したがって、それをアッセイに用いた。
【0182】
補体依存性血清殺菌抗体活性。殺菌アッセイを、別の所で記載されているように、0.25%のグルコース(w/v)および0.02mMのシチジン5’−モノホスホ−N−アセチルノイラミン酸(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO、US)を追加したミュラー−ヒントンブロス(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ、US)中で約2時間成長した初期対数期細菌を用いて行った[11]。補体の供給源は、正常な溶血性補体活性を有する非免疫の健康な成人由来の血清であった。血清を、タンパク質Gセファロースカラム(HiTrap Protein G HP、GE Healthcare、Piscataway、NJ、US)を通過させて、IgG抗体を除去した(Beernink PTら、(2009)J Infect Dis 199:1360〜8)。
【0183】
fHbpの定量的ウェスタンブロッティング。N.メニンギティディス細胞を、ブロス培養で初期対数期まで成長させ、加熱殺菌し(56℃で1時間)、遠心分離によって収集し、PBS中に0.6の最適密度に再懸濁した。加熱殺菌された細胞(1〜4×10CFU)におけるタンパク質を、4〜12%のNuPAGEゲル(Invitrogen、Carlsbad、CA、US)を用いるSDS−PAGEによって、製造会社により規定されているように、分離し、ウェスタンブロットモジュール(Invitrogen、Carlsbad、CA、US)を用いてPVDF膜(Immobilon−FL;Millipore、Billerica、MA、US)に移した。ブロッキング緩衝液(Li−Cor Biosciences、Lincoln、NE、US)中、4℃で一晩、ブロッキングした後、fHbpモジュラー群IおよびIV(変種1群)を抗fHbp JAR5で、またはモジュラー群II、III、V、もしくはVI(変種2群または3群)についてはJAR 31で検出した(Beernink PTら、(2008)Infect Immun 76:4243〜40)。二次抗体は、ヤギ抗マウスIgG−IRDye800CW(1:10,000、Rockland Immunochemicals、Gilbertsville、PA、US)であった。
【0184】
結合したタンパク質の量を決定するために、赤外線走査装置(Li−Cor Odyssey、Lincoln、NE、US)を用いて800nmの波長で膜を走査し、バンドの積分強度を、製造会社によって提供されているソフトウェア(バージョン3.0.21)を用いて計算した。6つのモジュラー群のそれぞれからの精製された組換えfHbpを試験した結果は、IRシグナル強度が、0.03〜2μgの範囲で負荷された量のlog10に比例することを示した(モジュラー群IおよびVIにおける対照タンパク質についての代表的なデータは図11に示されている)。代表的な発現データは、モジュラー群IにおけるfHbpに関する2つの菌株について、およびモジュラー群VIにおける2つの菌株について示されている(図11)。
【0185】
統計学的解析。統計学的計算を、Mac OSX、バージョン5.0a用のPrism 5(GraphPad Software、La Jolla、CA、US)を用いて行った。各国における異なるモジュラー群でのfHbpに関する分離株の割合は、二項分布から計算されたそれぞれ95パーセント信頼区間と共に計算した。それぞれのモジュラー群における分離株の割合に見出される差を、フィッシャー正確確率検定(両側)またはカイ二乗解析によって比較した。
【0186】
実施例の概要
成熟ペプチドの配列の以前の分析に基づいて、fHbpを2つのサブファミリー(Fletcherら、Infect Immun 2004、72:2088〜2100)または3つの変種群(Masignaniら、2003)に分類した(図3)。本明細書に示された分析は、髄膜炎菌性fHbpの全体構造が5つの可変セグメントの限られた数の特定のモジュラーの組合せを含み、各セグメントが、fHbpペプチド1(変種1群)またはペプチド28(変種3群)のそれぞれのセグメントとの配列類似性に基づいて、αまたはβと名付けられた2つの型の1つと対応している。下記の実施例セクションに記載され、かつ図4に示されているように、2つのN.ゴノレー相同分子種のアミノ酸配列がモジュラー群Vにおける天然キメラに対応する構造を有する(図8)。ナイセリアが遺伝子を水平伝播する性向(Hotoppら、Microbiology 2006、152:3733〜3749)は、本明細書に記載された髄膜炎菌性および淋菌性fHbpペプチドの類似したモジュラー構造と合わせると、進化の間、それぞれの祖先遺伝子が、接合の点であると仮定される不変の残基ブロックをコードする保存配列において組み換わったことを示唆する。
【0187】
69個の別個の髄膜炎菌性fHbpペプチドの中で、65個(94%)は、6つのモジュラー群のうちの1つに割り当てることができる(図8)。ペプチドのほぼ60%が、α型セグメントのみまたはβ型セグメントのみをそれぞれ含むモジュラー群IまたはIIにある。残りのペプチドは、αセグメントとβセグメントの天然キメラであった。モジュラーfHbp群III、IV、およびV(図8)は、それぞれ、単一の組換え事象によって2つの祖先型から生じている。モジュラーfHbp群VIは、2つの組換え事象によって生じている。同様に、実施例セクションに記載された4つの例外的な配列は、それぞれ、別の他の保存残基ブロックをコードする座位における組換えを通して生じている。それぞれが2つの型のうちの1つであり得る5つのセグメントを含むタンパク質について、2=32個の理論上の独立したモジュラーの組合せがある。本発明者らがたった6個のモジュラー群を同定したということは、流行性のfHbpモジュラー群に見出されるモジュールの特定の組合せについて選択する分子への機能的または構造的制約があることを示唆する。
【0188】
fHbp構造データは、2つの最近のNMR研究(Cantiniら、J Biol Chem 2009、doi:10.1074/jbc.C800214200;Mascioniら、J Biol Chem 2009、doi:10.1074/jbc.M808831200)および補体制御タンパク質との複合体におけるfHbpの結晶学的研究(Cantiniら、2009;Mascioniら、2009;Schneiderら、Nature 2009、doi:10.1038/nature07769)から入手できる。結晶構造において、Schneiderらは、fHの短い共通反復領域6(SCR 6)に位置する残基への結合が、fHに結合することが知られた糖分子の部分を模倣するfHbp構造における荷電アミノ酸残基によって媒介されることを報告した(Schneiderら、2009)。図9に示されているような分析は、これらのfH接触残基が、本研究において同定された5つの可変セグメントのうちの3つに位置することを示した。21個のfH接触残基のうち、5個が、本発明者らの研究において分析された69個の固有fHbpペプチドの間では不変であり、10個の他の接触残基が保存されていた。
【0189】
fH接触残基を含む全ての3つのfHbp可変セグメントはまた、殺菌性マウス抗fHbpモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに影響するアミノ酸を含んだ(図9)。アミノ末端ドメインまたはカルボキシル末端ドメインにおけるfH接触残基の中心位置は、エピトープ発現に影響する残基の末梢位置と異なるように思われた。この相互関係は、fHと接触するfHbp構造がまれにしか殺菌抗体を誘発しなかったことを示唆する。
【0190】
ワクチン候補としてのfHbpの1つの制限は、抗原多様性である(Beernink & Granoff、2009;Masignaniら、2003)。したがって、変種1群における組換えfHbpに対する血清抗体は、主に変種1タンパク質を含む菌株に対してのみ殺菌性であったが(Beerninkら、2007;Fletcherら、Infect Immun 2004、72;2088〜2100;Masignaniら、2003)、変種2群または3群におけるfHbpへの抗体は、主に同種の変種2または3タンパク質を含む菌株に対して活性を有するが、変種1群におけるfHbpを有する菌株に対して活性をもたなかった。これらの観察は、変種1タンパク質が変種2または3タンパク質のとは系統学的に分離される(図6および7)、fHbpのCおよびEセグメントにおけるエピトープが、殺菌抗体を誘発することについて、A、B、またはDセグメントにおけるものより、より重要であり、変種1タンパク質が変種2および/または3タンパク質と共にクラスター形成することを示唆する(図5および6)。しかしながら、セグメントBを例外として可変セグメントの全ては、マウス殺菌性抗fHbpモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに影響すると以前に同定された残基を含んだ(Beerninkら、2008;Beerninkら、Mol Immunol 2009b、doi:10.1016/j.molimm.2009.02.021;Guilianiら、Infect Immun 2005、73:1151〜1160)。さらに、fHの細菌表面への結合を阻害するモノクローナル抗体の一部(Madicoら、J Immunol 2006、177:501〜510)、および個々には殺菌性ではないモノクローナル抗体のいくつかの組合せは、協同的殺菌活性を誘発した(Beerninkら、2008;Beerninkら、2009b;Welschら、J Infect Dis 2008、197:1053〜1061)。後者には、モノクローナル抗体JAR 4が挙げられ、それは、可変セグメントA上のエピトープに特異的であり(Beerninkら、2009b)、可変セグメントC(例えば、JAR 3または5)または可変セグメントE(例えば、JAR 13またはモノクローナル抗体502)上のエピトープを有する第2のモノクローナル抗体との協同的殺菌活性を誘発した。
【0191】
fHbp逃避突然変異体の可能性を最小限にするために、理想的な髄膜炎菌ワクチンは、fHbp以外の抗原性標的を含むべきである(Giulianiら、2006)。しかしながら、必要とされる総タンパク質の用量が大量であること、低い忍容性、または個々の成分の免疫原性の損失のため、多成分性ワクチン内に組み合わせることができる組換えタンパク質の数への制限があり得る。個々のfHbp成分の数を減少させるために、本発明者らは、接合点としてG136を用いて、変種2タンパク質のカルボキシル末端ドメインと共に、変種1 fHbpのアミノ末端ドメインを含むキメラfHbp分子を設計した(Beernink & Granoff、2008)。生じたキメラタンパク質は、全ての3つの変種群由来のエピトープを発現し、キメラfHbpワクチンは、fHbp変種1、2、または3を発現する遺伝的に多様な菌株のパネルに対して殺菌活性を有する血清抗体を誘発した。組換えキメラワクチンの作製のために選択された接合点は、可変Cセグメントの中央の不変部分に位置し、それは、本研究において、本明細書に記載された天然fHbpキメラタンパク質のいずれの接合点としても同定されなかった。Cセグメントに隣接する天然の接合点を用いることにより、他のワクチンよりも広い殺菌抗体を誘発する組換えキメラfHbpワクチンの改善をもたらすことができる。異種性fHbp変種由来のエピトープを導入するために、可変セグメントの1つまたは複数にアミノ酸突然変異を導入することもまた可能であり得る(Beernink & Granoff 2008;Beerninkら、2009b)。したがって、キメラfHbpポリペプチドにおけるそのようなfH結合性エピトープの存在は、N.メニンギティディスに対する保護を促進することができる抗体の産生を提供することができる。
【0192】
結論として、本明細書における分析は、fHbpの全体構造が、不変配列に隣接した可変セグメントの限られた数の特定のモジュラー組合せによって定義することができる。まとめて考えると、データは、組換えが、N.メニンギティディス祖先配列とN.ゴノレー祖先配列との間に起こって、髄膜炎菌H因子結合タンパク質の抗原的に多様なファミリーを生じたことを示唆する。このように、実施例に示されたデータは、fHbp変種の進化への洞察を提供し、ペプチド変種の群の分類のための合理的根拠を提供する。集団ベースの調査研究は、保因および/または疾患を引き起こす菌株の間で異なるモジュラー群由来のfHbpの普及率、ならびにfHbpモジュラー群と、莢膜群、クローン複合体、およびPorA可変領域などの他の菌株特性との関係を定義するために必要とされるであろう。
【0193】
この発見をもたらした研究の詳細は下記に述べられている。
【0194】
(実施例1)
系統学的分析
69個の固有のfHbpアミノ酸配列を整列させて、図3に示された系統樹を作成した。各配列について、neisseria.orgにおけるfHbpペプチドデータベースにおいて割り当てられたペプチド識別番号が示されており、既知の場合には、多座配列型(MLST)クローン複合体が括弧に入れて示されている。下の方の左側のブランチは、Masignaniら、2003によって定義されているような変種群1を示す(Fletcherら、2004のサブファミリーB);サブファミリーAは、2つのブランチの変種群2および3を含んだ。変種群1、2、および3のそれぞれについての原型ペプチドは、矢印で示されており、それぞれの遺伝子の供給源菌株の名前を付けている。系統樹を、方法に記載されているように、複数の配列のアラインメントによって構築した。下端に示されたスケールバーは、100残基あたり5アミノ酸の変化を示す。
【0195】
分析により、サブファミリーAおよびBと以前に名付けられた2つの主要なブランチが示された(Fletcherら、2004)。サブファミリーAは、抗原性変種群2および3におけるfHbp配列を含み、サブファミリーBは、抗原性変種群1におけるfHbpに対応した(Masignaniら、2003)。いくつかのクローン複合体について、変種群のそれぞれにおけるfHbpを有する菌株の例があった(例えば、ST−11について、変種1群におけるペプチド2、3、6、9、10、11、および78、変種2群におけるペプチド17、22、23、および27、ならびに変種3群におけるペプチド59)。ST−32クローン複合体由来の菌株は、変種群のうちの2つにおけるfHbp(変種1群におけるペプチド1および89、ならびに変種3群におけるペプチド76)を有し、ST−8クローン複合体は、1つの変種群においてのみのfHbp(変種2群におけるペプチド16、50、および77)を有した。観察されたクローン複合体の全部におけるfHbp変種の分布は、下記の表2に示されている。列挙されたペプチドIDは、neisseria.orgでのfHbpペプチドデータベースによって割り当てられている。
【0196】

【0197】
(実施例2)
fHbpの構造はモジュラーである
タンパク質を可変残基のセグメントへ分離する2〜5個の不変残基のブロックを同定した。詳細については図4を参照されたい。不変残基は、縦に長い長方形として示されている。上部の3つのパネルは、群1、2、および3における3つのN.メニンギティディスfHbp変種(それぞれ、ペプチドID 1、16、および28)の代表的な構造を示す。3つの変種のそれぞれが、反復性アミノ末端エレメント(N−term)、および可変セグメントA〜Eを有し、その可変セグメントは、場合によっては、変種間で長さが異なった。各可変セグメントにおける最後の残基のアミノ酸の位置が示されている。
【0198】
アミノ末端エレメントを除いて、2つのN.ゴノレー相同分子種(Genbankアクセッション番号AE004969およびCP001050)において同一の個々の不変アミノ酸配列および同種の可変セグメントがあり、全体としては、髄膜炎菌のfHbpペプチド79(変種3髄膜炎菌タンパク質)と96%のアミノ酸配列同一性を有した。第1の研究において、全ての69個のfHbp配列変種は、5つのモジュラー可変セグメントに隣接する2〜5個の不変残基のブロックを有した(図4)。これらの不変残基はまた、研究2において分析された172個の追加のfHbp変種のうちの170個にも保存されていた。1つの例外であるタンパク質ID 33は、AセグメントとBセグメントの間にSRFDFの代わりにSHFDFを有し、他の例外であるタンパク質ID 150は、DセグメントとAセグメントの間にIEHLKの代わりにIEHLEを有した(図4)。
【0199】
不変残基のブロックは、髄膜炎菌タンパク質および淋菌タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子の組換えのための天然の接合点を表すように思われた。これらの接合点によって定義される可変セグメントそれぞれの系統発生を分析した。下記の69個の別個の髄膜炎菌fHbpペプチド変種の分析において、アミノ酸残基の番号付けは、変種1群におけるMC58由来の遺伝子によってコードされる成熟fHbpペプチド1に基づいている(Masignaniら、2003)。それぞれの変種2タンパク質および変種3タンパク質についての番号付けは、変種1タンパク質のそれとそれぞれ、−1および+7、異なる(図4)。
【0200】
(実施例3)
アミノ末端反復性エレメント
全ての69個の配列について、成熟fHbpは、シグナルペプチダーゼIIによって脂質付加されるシステイン残基で始まり、その後、3個の不変アミノ酸残基SSGが続いた。この不変配列の後に、1〜6個のグリシンおよび/またはセリン残基からなる反復性可変配列、その後、2個の不変グリシン残基が続いた(図4)。アミノ末端エレメントの可変部分は、69個のペプチドのうち34個(ほぼ全部、変種1群内、下記に示された表3)について単一のグリシン残基からなり、またはペプチドのうちの12個(全部、変種2群内)についてはCG残基からなった。他の共通の可変配列は、GGGSGGであった(変種1群において8個、変種3群において7個)。
【0201】

【0202】
(実施例4)
下流可変セグメント
本発明者らがA、B、C、D、またはEと名付けた5つの可変セグメントがあった(図4)。特定のシグネチャアミノ酸残基の存在および配列類似性に基づいて(表4)、5つのセグメントのそれぞれが、2つの型のうちの1つへ分離することができた。その型の一方は、シグネチャアミノ酸残基、および抗原性変種1群におけるペプチドとの配列類似性を有した。他方の型は、シグネチャアミノ酸残基、および抗原性変種3群におけるペプチドとの配列類似性を有し、それはまた淋菌相同分子種のそれらと類似していた(図4参照)。下記に示された表4も参照されたい。
【0203】

【0204】
分類を目的として、セグメントの第1群はα型と、第2群をβ型と名付けられている。α型またはβ型内でのそれぞれのセグメントのアミノ酸同一性は80%から100%までの範囲である(表4)。対照的に、型の間でのセグメントの同一性は、分子のN末端部分の保存領域に位置しているセグメントAについての69〜78%から、そのタンパク質の非常に少ない保存領域における残基98〜159を含むCセグメントにおける32〜45%までの範囲であった(表4)。各セグメントについて、別個の配列変種は、可変セグメントを表すための文字、A〜Eで始まり、続いて、上記のそれぞれの型を有する残基の存在を示すためのαまたはβ、その後に各別個の配列についての番号が続く、固有の識別名が割り当てられた(図2A〜2E(表8)に列挙)。
【0205】
セグメントAは、不変GG配列のすぐ後のアミノ酸残基8から始まり、位置73にわたる(表4)。69個のfHbp変種の間において、セグメントAは、16個の別個のα配列変種および9個の別個のβ配列変種を含んだ(図5)。複数のペプチドがセグメント内に同一の配列を有する場合、ペプチドの数が括弧に入れて示されている。スケールバーは、100残基あたり5アミノ酸の変化を示す。系統樹に基づいて、(図5に示された)変種1群におけるfHbpの大部分のAセグメントは、変種2群におけるそれとクラスターを形成するが、変種3群におけるfHbpのAセグメントは別々のクラスター内であった。最も一般的なα変種(N=14)をA.α.1と名付け、それは、変種1群において4個のfHbpペプチドに、および変種2群においては10個に存在した。最も一般的なβ変種をA.β.1と名付け、それは変種3群の全てにおいて6個のペプチドに存在した。
【0206】
セグメントBは、不変SRFDF配列のすぐ後の位置79から始まり、位置93にわたる(表4)。69個のfHbpペプチドの間において、セグメントBは、7個の異なるα変種配列および単一のβ配列を含んだ(図5)。系統学的分析により、変種1群および2群におけるfHbpペプチドのBセグメントが一緒にクラスターを形成し(図5)、それは変種3群におけるそれとは異なることが示された。最も一般的なBセグメントであるB.α.1は、40個のfHbpペプチドに存在した(変種1群において28個、変種2群において12個)。
【0207】
AセグメントおよびBセグメントとは対照的に、変種2群および3群におけるfHbpのそれぞれのCセグメント(残基98〜159)およびEセグメント(残基186〜253)は一緒にクラスターを形成し、変種1群におけるfHbpのそれとは分離していた(図6)。変種群1におけるfHbpに関して菌株のDセグメント(残基162〜180)の全部がα型であったが、変種2群または3群におけるfHbpペプチドのそれはαまたはβであった(図7)。最も一般的なDセグメントであるD.α.1(N=39)は、21個のfHbp v.1ペプチド、9個のv.2ペプチド、および9個のv.3ペプチドに存在した。
【0208】
(実施例5)
モジュラー群によるfHbp変種の分類
上記のfHbpの可変セグメントの系統学的分析に基づいて、研究されたこれらの異なるfHbp変種の大部分は、6つの別個のfHbpモジュラー群(I〜VI)に分類された(図8)。69個のfHbpペプチドのうちの40個(58%)は、α型セグメントのみ(N=33)、またはβ型セグメントのみ(N=7)を含み、それらは、それぞれ、fHbpモジュラー群IおよびIIと名付けられた(図8)。αセグメントは灰色で示され、βセグメントは白色で示されている。残りの29個のペプチド(42%)は、異なるαセグメントまたはβセグメントの組換えに由来する4つのキメラのうちの1つに分類することができ(fHbpモジュラー群III、IV、V、またはVIと名付けられた;N=25)、または下記のように、5つのセグメントのうちの1つが、他の保存された配列ブロックにおける例外的な接合位置を用いる他のキメラであった(N=4)。図6において見られるように、各モジュラー群における代表的なペプチドは、neisseria.orgにおけるfHbpデータベースからのペプチド識別番号によって示されている。各fHbpモジュラー群内で観察される固有の配列の数は右に示されている。この分析は、それらのセグメントの1つにおいて例外的な接合点を有する4つのペプチド配列を除外した。
【0209】
上記のアミノ末端反復性エレメントを、モジュラーfHbp群を定義するために用いなかったが、モジュラー群I,III、およびVIペプチド配列の大部分(88〜100%)は、1個または2個のグリシン残基のアミノ末端反復性エレメントを有した(表3)。対照的に、モジュラー群II、IV、およびVにおけるペプチドの大部分(75〜100%)は、3〜6個のグリシン残基およびセリン残基のアミノ末端エレメントを有した。このアミノ末端エレメントの長さは、細菌膜からのそのタンパク質の距離、および特定のエピトープの表面到達性に影響する可能性がある。
【0210】
第2の研究において、172個の新しいfHbp変種のうち3個を除く全ては、6つのモジュラー群の1つに分類することができた(I〜VI、図4、パネルA)。3個の例外(タンパク質ID 207、67、および175)は、α型系統またはβ型系統由来のモジュラーセグメントの別個の組合せを有し、3つの新しいモジュラー群の1つに割り当てられた(それぞれ、VII、VIII、およびIX)。
【0211】
拡大されたデータベースにおける242個の別個のfHbp変種のうち、125個のタンパク質が、αセグメントのみを含むモジュラー群I内であり、20個のタンパク質がモジュラー群II(もっぱらβセグメント)内であった。残りの97個のfHbp配列変種は、αセグメントおよびβセグメントの天然のキメラであり、モジュラー群III〜IXに割り当てられた(合わせて、全変種の40パーセント)。図4は、モジュラー群のそれぞれについてMasignaniら、(2003)J Exp Med 1997:789〜99によって記載されているようなfHbp変種群を示す。変種群は、それぞれのタンパク質の全体的なアミノ酸配列の関連性に基づいて割り当てられた。
【0212】
(実施例6)
可変セグメント内に接合点を含むキメラfHbpペプチド
4個のfHbp配列は、セグメントの2つの間の接合点の1つが別の不変配列を利用することを除いて、上記のものと類似したモジュラー構造を有した。例えば、fHbpペプチド55は、Aセグメントがβ型配列からα型配列へ、残基74から始まるSRFDFよりむしろ、残基50から始まる不変AQGAEで切り替わることを除いて、モジュラー群IVにおけるペプチドと類似した(図8)。このAセグメントは、A.β.9と名付けられた(他のβ型Aセグメントに対して、α型Aセグメントに対してより高い配列同一性という理由でβ;図5)。2つの他のfHbpペプチド、24および25(図2A〜2E(表8))は、モジュラー群IIIにおけるペプチドと類似したモジュラー構造を有したが(図8)、位置94におけるGEFQの代わりに残基82から始まる不変IEVにおいてα型からβ型配列へ切り替わるBセグメントを有した。B.α.3と名付けられたこの例外的Bセグメントは、他のα型Bセグメントに対して、β型Bセグメントに対してより高い配列同一性という理由でα型として分類された(図5)。4つ目の例外的fHbpモジュラー構造、ペプチド82(図2A〜2E(表8))は、E.β.10と名付けられたそれのEセグメントが、位置181から始まるIEHLKの代わりに残基A196でα型配列からβ型へ切り替わることを除いて、V型と類似した(図6)。
【0213】
(実施例7)
可変および不変fHbpセグメントの構造的特徴
fHbpのそれぞれの可変セグメントおよび不変セグメントを、fHbp結晶構造からの公開された座標に基づいて分子モデルへマッピングした(図9)(Schneiderら、2009)。パネルAにおいてそれぞれ、NおよびCとラベルされたアミノ末端およびカルボキシル末端は、パネルBおよびCにおいて同一の位置にある。PyMol(pymol.org)を用いて図を構築した。パネルA、B、およびCの中央にあるモデルは、左端の対応するモデルからY軸を中心に180度回転しており、右端のモデルは、真ん中のモデルと比較してX軸を中心に90度回転している。
【0214】
パネルAのリボンモデルは、2つの以前記載されたfHbpの主要なドメインを示し(Cantiniら、2009;Mascioniら、2009;Schneiderら、2009)、それぞれが、非依存的に折り畳まれたβ構造を含み、それらのβ構造は、可変セグメントCに位置する構造化された4つのアミノ酸残基リンカーによって一緒に連結されている。残基8から始まり残基136に及ぶアミノ末端ドメインは、可変セグメントA、および可変セグメントB、および可変セグメントCの一部を含む(成熟タンパク質の最初の14個の残基は結晶構造に存在しないことに留意されたい)。残基141から255に及ぶカルボキシル末端ドメインは、C可変セグメントのカルボキシル末端部分、ならびにD可変セグメントおよびE可変セグメントの全体を含む。
【0215】
パネルBは、対応する空間充填モデルを示す。fHbp−fH複合体の構造に基づいてfHと接触することが以前に報告されたアミノ酸残基は、黒色で描かれている。これらの残基は、可変セグメントA、C、およびE上でクラスターを形成し、パネルBの真ん中および右端に示されたモデルにおいて目に見える。fHは、生きている細菌上のfHbpに結合することがわかっているので(Madicoら、2006;Schneiderら、2006)、この結合部位は表面に露出していなければならない。5つの可変セグメントのそれぞれに隣接する不変の残基ブロックは、そのタンパク質の反対面に位置し、パネルBおよびCにおいて白色で示されている(左端モデル)。シグナルアンカーを含むアミノ末端は、そのタンパク質のこの面から伸びるので(パネルBにおける右端のモデルの底表面)、不変残基は、細胞壁に繋ぎ止められた分子の表面上全体に位置すると予想される。膜結合表面におけるこれらの不変配列の存在は、おそらく細菌細胞膜上にfHbpを繋ぎ止め、および/または方向付けるためのパートナータンパク質の必要性を示す、構造的制約があることを示唆する。
【0216】
以前の研究では、11個の殺菌性抗fHbpモノクローナル抗体のエピトープがマッピングされた(Beerninkら、2008;Beerninkら、2009b;Giulianiら、2005;Scarselliら、J MoI Biol 2009、386:97〜108)。パネルC(図9)において、これらのエピトープのそれぞれの発現に影響するアミノ酸は黒色で描かれており、前に定義されたfH接触残基(パネルBにおいてのように黒色で示されている)。セグメントBを除いて、可変セグメントの全部は、殺菌性モノクローナル抗体によって認識されるエピトープを含んだ。エピトープに影響するアミノ酸は、一般的に、fHbpのアミノ末端ドメインおよびカルボキシル末端ドメインの末梢に位置したが、fHと接触する残基は、その2つのドメインのそれぞれの中央部分にクラスターとなって位置した。fHのfHbpへの結合を阻害することが以前に報告されたJAR3、JAR5、またはJAR13などの特定のモノクローナル抗体のエピトープ(Beerninkら、2008;Beerninkら、2009b)は、fH接触残基の一部に近接して位置するアミノ酸を含んだ。しかしながら、2つのセットの残基間に重複の例はなかった。
【0217】
(実施例8)
異なる国における疾患を引き起こす分離株の間でのfHbpモジュラー群の頻度
上記の分析により、fHbpモジュラー群多様性の程度に関する情報が提供された。この以下の分析について、Murphyら、(2009)J Infect Dis 200:379〜89によって報告された米国およびヨーロッパにおける系統的に収集されたB群からのfHbp配列データを用いた。分離株は、2001年から2005年の間の米国における症例(N=432)由来、ならびに2001年〜2006年の間の英国(N=536)、フランス(N=244)、ノルウェー(N=23)、およびチェコ共和国(N=27)における症例由来であった。米国データに、別の研究の一部として米国における複数の場所で系統的に収集されている143株の追加の分離株のfHbp配列を補充した(Beernink PTら、(2007) J Infect Dis 195:1472〜9)。
【0218】
合計1405個の系統的に収集されたB群分離株の中で、モジュラー群Iが59.7%、群IIが1.7%、群IIIが8.1%、群IVが10.6%、群Vが6.1%、および群VIが13.6%に見出された。新しいモジュラー群、VII、VIII、およびIXは、それぞれ、≦0.1%に見出された。Masignaniら、(2003)J Exp Med 197:789〜99の変種群分類によって層別化した場合の異なる国におけるfHbpモジュラー群のそれぞれの分布は図12に示されている。この分析について、ノルウェーおよびチェコ共和国からのデータは、これらの収集物のそれぞれにおける分離株の数がモジュラー群のそれぞれの頻度の正確な推定には小さすぎるため、除外された。2つの米国収集物におけるモジュラー群のそれぞれのパーセンテージは、別々に示されている。
【0219】
Masignaniの変種1群における分離株は、モジュラー群I、IV、およびVIIからなった。もっぱらα型セグメントを有するモジュラー群I菌株は、全ての3つの国において優勢であった(全分離株の54〜64パーセント)。しかしながら、英国において、全分離株の23%は、2つの米国収集物における<1%、およびフランス由来の分離株の3パーセントと比較して、α型セグメントおよびβ型セグメントの天然キメラであるモジュラー群IVであった(カイ二乗によりP<0.001)。モジュラー群VIIにおいてたった1個の分離株だけがあったため(フランス)、このモジュラー群の頻度は図12に示されていない。
【0220】
変種2群における分離株は、全てがα型セグメントおよびβ型セグメントの天然キメラであるモジュラー群IIIおよびVIを含んだ。モジュラー群IIIまたはVIは、2つの米国収集物においておよそ等しい割合の分離株に存在したが、モジュラー群VIは、英国およびフランス由来の変種2群分離株の間で優勢であった。
【0221】
変種3群に関する分離株は、モジュラー群II(もっぱらβ型セグメント)、およびキメラであるモジュラー群V、VIII、およびIXを含んだ。フランスおよび英国において、モジュラー群Vは、変種3fHbpに関する分離株の大部分を占めたが、2つの米国収集物においては、ほぼ等しい数のモジュラー群IIまたはVタンパク質があった。モジュラー群VIIIおよびIXは、単離物の<0.1%を占めた。低いパーセンテージのため、これらの群は図12に示されていない。
【0222】
(実施例9)
モジュラー群およびfHbp発現に関する抗fHbp血清殺菌活性への菌株の感受性
図13は、モジュラー群I〜VIを代表する組換えfHbpワクチンで免疫されたマウス由来の血清プールのヒト補体殺菌力価を示す。バーの高さは、特定の試験菌株に対して試験した場合の6つの抗血清(モジュラー群あたり3〜4つのプール)のそれぞれの代表的な中央値力価を表す。例えば、上部左パネルは、モジュラー群IにおけるfHbpの高発現株である(相対的発現は+++によって表されている;実際の値は下記の表5に示されている)、菌株H44/76についてのデータを示す。同種の抗fHbpモジュラー群I抗血清(黒色バー)の中央値殺菌力価は約1:6000であった。菌株H44/76に対する5つの異種性抗fHbpモジュラー群抗血清(白色バー)のそれぞれの力価は、1〜2log10分の1であり、<1:10(抗血清対モジュラー群II)〜約1:200(抗血清対モジュラー群IV)の範囲であった。同種のfHbpモジュラー群II(変種3パネル内の菌株SK104)またはIV(変種1パネル内のNM452)を有する対照菌株に対して試験した場合の抗モジュラー群IIおよびIV抗血清の対応する中央値力価は>1:2000であった。このように、これらおよび他の異種性抗血清は、それぞれの同種fHbpモジュラー群を有する対照菌株に対して測定した場合、高抗体活性を有した。
【0223】
低fHbp発現株に対する殺菌力価は、高発現株に対してより低かった([+/−と表された]低発現株についてのデータを示す図13の右側のそれぞれのグラフを、より高い発現株を示す左側のグラフと比較)。例えば、抗モジュラー群I抗血清は、高fHbpモジュラー群I発現株のH44/76に対して1:6000の力価を有するが、低fHbpモジュラー群I発現株の菌株03S−0408に対して約1:100の力価を有した。(モジュラー群Vについて両方の試験株は、高fHbp発現株および低fHbp発現株のペアを入手できなかったため、中間の発現株であった。)
【0224】
異種性モジュラー群からのfHbp低発現の菌株に対して、高発現株についてより、抗fHbp殺菌活性の交差反応性がより低い傾向があった(例えば、低発現株について03S−0408(モジュラー群I)、M01573(モジュラー群IV)、およびRM1090(モジュラー群III)についてのデータを参照。それらは、それぞれのより高いfHbp発現株(H44/76、NM452、および03S−0673;図13)に対するより広い殺菌活性と比較して、それらそれぞれの同種モジュラー群によってのみ殺滅された)。菌株NMB(fHbpモジュラー群VI)は、抗fHbp殺菌活性に対して完全に耐性であり(力価<1:10)、それは、明らかに低fHbp発現の結果であった(表5)。ワクチンのアミノ酸配列を用いて、NMBによって発現したfHbpと単一のアミノ酸だけ異なる抗モジュラー群VI抗血清を調製し、その結果生じた抗血清は、fHbpモジュラー群VIに関するより高い発現株(961−5945)に対して殺菌性であった。さらに、耐性株のNMBは、0.15μg/mlの濃度での対照抗PorAモノクローナル抗体によって殺滅され、それは、抗fHbp感受性961−5945株の殺滅に必要とされる抗PorAモノクローナル抗体のそれと一致した。
【0225】

【0226】
fHbpの定量的測定に用いられた抗体および各抗体に対する様々なモジュラー群タンパク質の反応性は、下記の表に示されている。
【0227】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図2A−1】

【図2A−2】

【図2A−3】

【図2B】

【図2C−1】

【図2C−2】

【図2C−3】

【図2D−1】

【図2D−2】

【図2E−1】

【図2E−2】

【図2E−3】

【図2E−4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端へ、以下:
−I−V−I−V−I−V−I−V
を含む、請求項1に記載の非天然fHbpであって、V、V、V、V、およびV可変セグメントのそれぞれについての対立遺伝子の組合せが天然では見出されない、非天然fHbp。
【請求項2】
前記可変セグメントのそれぞれがα祖先配列である、請求項1に記載の非天然fHbp。
【請求項3】
前記可変セグメントのそれぞれがβ祖先配列である、請求項1に記載の非天然fHbp。
【請求項4】
、V、V、V、およびVの少なくとも1つがα祖先fHbpアミノ酸配列であり、かつV、V、V、V、およびVの少なくとも1つがβ祖先fHbpアミノ酸配列である、請求項1に記載の非天然fHbp。
【請求項5】
図8に示されたモジュラー群の型ではない、請求項4に記載の非天然fHbp。
【請求項6】
N末端からC末端へ、以下:
−Nte−I−V−I−V−I−Vc−I−V−I−V−I
を含む、請求項1に記載の非天然fHbp。
【請求項7】
N末端からC末端へ、以下:
α−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−I−Vα、または
α−I−Vα−I−Vα−I−Vβ−I−Vβ
を含む、請求項1に記載の非天然fHbp。
【請求項8】
表1に示されたモノクローナル抗体によって結合されるエピトープを含む、請求項1に記載の非天然fHbp。
【請求項9】
請求項1に記載の第1の非天然fHbpを含む組成物を哺乳動物に投与する段階を含む、哺乳動物において抗体応答を誘発する方法。
【請求項10】
哺乳動物がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与段階が、2つ以上の型のfHbpに結合する抗体の産生を提供する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記非天然fHbpが、外膜小胞(OMV)、微小胞(MV)、またはOMVおよびMVの混合物を含む調製物内にある、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
それぞれがその他のものとは遺伝的に異なる2つ以上のN.メニンギティディス株から前記小胞が調製される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記投与段階が、第2のfHbpを投与することを含み、前記第2のfHbpが前記第1の非天然fHbpとは異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
請求項1に記載の第1の非天然fHbpおよび薬学的に許容される賦形剤を含む、免疫原性組成物。
【請求項16】
第2のfHbpをさらに含み、前記第2のfHbpが前記第1の非天然fHbpとは異なる、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記非天然fHbpが小胞調製物内にあり、小胞がナイセリア細菌から調製される、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記ナイセリア細菌が、内因性fHbpポリペプチドの産生を破壊するように遺伝子改変されている、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記非天然fHbpが、前記fHbpを産生するように遺伝子改変されているナイセリア細菌によって産生される、請求項15に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記小胞調製物が、前記非天然fHbpを産生する菌株と同じナイセリア−メニンギティディス由来である、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記ナイセリア細菌が莢膜多糖合成を欠いている、請求項18に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の非天然fHbpをコードする核酸。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸を含む宿主細胞。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図10G】
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【図10H】
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【図10I】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−525151(P2012−525151A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508750(P2012−508750)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/033048
【国際公開番号】WO2010/127172
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(505307563)チルドレンズ ホスピタル アンド リサーチ センター アット オークランド (12)
【出願人】(592243793)ノバルティス ヴァクシンズ アンド ダイアグノスティクス エスアールエル (107)
【Fターム(参考)】