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キャスタブル耐火物
説明

キャスタブル耐火物

【課題】マグネシア質原料の消化抑制効果が高いシリカ微粉質原料の物性を特定し、耐消化性の優れたキャスタブル耐火物を実現すること。
【解決手段】マグネシア質原料、シリカ質微粉原料、結合剤及び添加水を含むキャスタブル耐火物であって、前記シリカ質微粉原料は、15(m/g)以上50(m/g)以下の比表面積を有するとともに、当該シリカ質微粉原料、前記結合剤及び前記添加水を1:1:3の質量比で混練した混練物の粘度が1.2(Pa・s)以下となる分散性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として溶鋼鍋側壁を施工するためのキャスタブル耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、溶鋼鍋側壁用のキャスタブル耐火物は、耐火物施工の簡素化・省力化という理由から、その使用量が年々増加している。
【0003】
鋼品質向上のため、溶鋼鍋の使用中の操業は過酷化する一方である。このため、キャスタブル耐火物には、耐用性(耐溶損性、耐熱衝撃性)のニーズを満たすことが要求されている。さらに、キャスタブル耐火物は、炉材コストの低減・生産性の向上というニーズを満たすことも要求される。これらのニーズを満たすべく、キャスタブル耐火物は耐用性を向上させてきた。
【0004】
現在、溶鋼鍋側壁用のキャスタブル耐火物としては、アルミナ−マグネシアを用いたキャスタブル耐火物が広く使用されている。
【0005】
しかし、アルミナ−マグネシアを用いたキャスタブル耐火物は、乾燥工程時に施工体の粉化・組織の破壊が起こることがある。施工体が破壊するメカニズムとしては、一般には乾燥中に施工体内部の蒸気圧が高くなり、(1)式の体積膨張を伴うマグネシアの消化が進行するためであることが知られている。
MgO+HO→Mg(OH)・・・(1)
【0006】
マグネシアの消化抑制に関しては、アルミナ−マグネシアを用いたキャスタブル耐火物を使用する際の重要な課題とされ、様々な研究が行われてきた。例えば、非特許文献1には、シリカ質微粉原料を添加することにより、マグネシアの消化抑制効果があることが開示されている。具体的には、マグネシア表面に含水ケイ酸塩が生成されることでマグネシアの消化抑制効果があることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】寒川ら、「マグネシア含有キャスタブルの消化現象」耐火物、40 [5] 1988年 p300−302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、シリカ質微粉原料を添加することでマグネシア質原料の消化抑制効果があることは知られている。このため、マグネシア質原料の消化抑制効果にシリカ質微粉原料の物性がどのように影響するのか知見を得ることは、耐消化性の優れたキャスタブル耐火物を実現するためには重要である。
【0009】
しかしながら、上述の文献には、マグネシア質原料の消化抑制効果にシリカ質微粉原料の物性がどのように影響を及ぼすのかについては記載されていない。
【0010】
本発明の課題は、マグネシア質原料の消化抑制効果が高いシリカ質微粉原料の物性を特定し、耐消化性の優れたキャスタブル耐火物を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のキャスタブル耐火物は、マグネシア質原料、シリカ質微粉原料、結合剤及び添加水を含むキャスタブル耐火物であって、前記シリカ質微粉原料は、15(m/g)以上50(m/g)以下の比表面積を有するとともに、当該シリカ質微粉原料、前記結合剤及び前記添加水を1:1:3の質量比で混練した混練物の粘度が1.2(Pa・s)以下となる分散性を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、マグネシア質原料の消化抑制効果が高いシリカ質微粉原料の物性、具体的には比表面積及び分散性(粘度値)を特定したことで、耐消化性の優れたキャスタブル耐火物を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】X線回折の結果を示す図である。
【図2】TG測定の結果を示す図である。
【図3】シリカ中のCaO濃度(質量%)と、粘度値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のキャスタブル耐火物は、マグネシア質原料、シリカ質微粉原料、結合剤には主としてアルミナセメントを使用している一般のセメントキャスタブル又は低セメントキャスタブルである。
【0015】
マグネシア質原料としては、電融マグネシアクリンカー、焼結マグネシアクリンカー、天然マグネシアクリンカーなどの既知のマグネシア質原料を単独で、あるいはこれら原料と合成したもの、又はマグネシア・アルミナスピネル等を使用でき、好ましくはマグネシア質原料を単独で使用できる。
【0016】
シリカ質微粉原料としては、非晶質シリカを使用できる。
【0017】
結合剤としては、アルミナセメントを主として使用し、アルミナセメントに水硬性アルミナ等を併用してもよい。
【0018】
本発明のキャスタブル耐火物は、上述のマグネシア質原料、シリカ質微粉原料及び結合剤のほか、カルシア質原料、ジルコニア質原料、爆裂防止剤を含むことができる。また、消化抑制剤を併用することも可能である。
【0019】
添加水は、上記混合物の合量100質量%に対して、外掛けで3〜20質量%程度で添加する。
【0020】
本発明のキャスタブル耐火物においては、マグネシア質原料の消化抑制効果が高いシリカ質微粉原料について、さらにマグネシア質原料の消化抑制効果を高めるために、その物性として比表面積及び分散性(粘度値)を特定する。詳細は後述する。
【0021】
以下、具体的な実施形態について説明する。
【0022】
表1は、キャスタブル耐火物に添加するシリカ質微粉原料としてのシリカの化学組成及び物性値を示した表である。物性値は比表面積及び分散性(粘度値)を示している。比表面積及び粘度値については後述する。A〜Jは化学組成(銘柄)の異なるシリカを示している。
【0023】
【表1】

【0024】
表2は、表1に示すシリカA〜Jを添加したキャスタブル耐火物の評価結果を示した表である。
【0025】
【表2】

【0026】
キャスタブル耐火物1A〜1Jのアルファベット文字「A」〜「J」は、添加されたシリカの符号「A」〜「J」と関連付けられている。例えば、シリカAが添加されたキャスタブル耐火物は1Aであることを示している。キャスタブル耐火物1Kは、シリカ添加なしのキャスタブル耐火物を示している。
【0027】
キャスタブル耐火物1A〜1Jは、焼結アルミナと結合剤としてのアルミナセメントとの合量を40質量%、マグネシア質原料としてマグネシアを60質量%含み、焼結アルミナ、アルミナセメント及びマグネシアの合量100質量%に対して、外掛けでシリカを6質量%添加した配合である。また、キャスタブル耐火物1Kは、焼結アルミナとアルミナセメントとの合量を40質量%、マグネシアを60質量%含む配合である。マグネシアは、純度が95%以上で平均粒径が10μm程度のものを使用した。
【0028】
次に、評価結果について説明する。
【0029】
表2に示す評価はオートクレーブ処理を施したキャスタブル耐火物1A〜1Kに対して行った。
【0030】
オートクレーブ処理は、上述の配合に対して水を添加(焼結アルミナ、アルミナセメント及びマグネシアの合量100質量%に対して外掛けで17質量%の水を添加)した後、混練し、その後枠に鋳込み、20℃×24時間で養生し、オートグレーブ内で温度(152℃)及び圧力(0.5MPa)を3時間付与することにより行った。
【0031】
線変化率は、マグネシアの消化反応による体積膨張量を測定するため評価した。具体的に、線変化率はオートクレーブ処理の前後のキャスタブル耐火物1A〜1Kの線変化率を評価した。
【0032】
亀裂は、オートグレーブ処理後のキャスタブル耐火物1A〜1Kの外観を目視で観察し、無、微亀裂、大亀裂の3段階で相対評価した。
【0033】
表2に示すように、線変化率が+2.0%以下の場合、外観上大きな変化はなく、亀裂は確認されなかった。このため、キャスタブル耐火物の線変化率は、+2.0%以下であることが好ましいと言える。
【0034】
粉末X線回折は、Mg(OH)(以下、ブルーサイトと記す)のピークの大きさを評価した。ピークの大きさは、無、小、中、大と4段階で相対評価した。
【0035】
図1は、オートクレーブ処理後のキャスタブル耐火物を粉末X線回折した結果の一例を示した図である。Bピークがマグネシアの消化反応により生成されたブルーサイトを示す。
【0036】
シリカ添加のキャスタブル耐火物(1A、1C、1F、1G、1H)は、シリカ添加なしのキャスタブル耐火物1Kよりもブルーサイトのピークが小さい。すなわち、シリカを添加すれば、マグネシアの消化抑制効果が働くことが確認された。また、シリカを添加したキャスタブル耐火物1A、1C、1F、1G、1Hは、ブルーサイトのピークが大きくなるほど、線変化率も高くなり、かつ、亀裂も大きくなる傾向が確認された。
【0037】
しかし、粉末X線回折では、ブルーサイトの生成量を明確に評価することができない。このため、オートクレーブ処理後のキャスタブル耐火物をTG測定(熱重量測定)し、ブルーサイトの生成量を評価した。そして、TG測定の結果に基づいて、ブルーサイトの生成量と、線変化率及び亀裂との関係を評価した。
【0038】
TG測定により得られるブルーサイトのピークは、大きいほどブルーサイトの生成量が大きい。ピークの大きさは、無、小、中、大と4段階で相対評価した。
【0039】
図2は、オートクレーブ処理後のキャスタブル耐火物をTG測定した結果の一例を示した図である。
【0040】
図2における400℃付近の重量減少のピークがブルーサイトの脱水(水の蒸発)によるものである。図2に示すように、ブルーサイトの生成量は、1K>1H>1G>1F>1C>1Aの順となる結果が得られた。
【0041】
この結果により、ブルーサイトの生成量が多いほど、線変化率も高くなり、かつ、亀裂も大きくなる傾向が確認された。なお、図2において、AHはAl・3HOを示し、CAHは3CaO・Al・6HOを示す。
【0042】
上述の粉末X線回折及びTG測定の結果により、キャスタブル耐火物にシリカを添加すると、キャスタブル耐火物の膨張が抑えられ、ブルーサイトの生成も抑えられることが確認された。また、ブルーサイトの生成量が多くなると、キャスタブル耐火物の膨張、すなわち線変化率も高くなり、亀裂も大きくなる傾向が確認された。この結果がマグネシアとシリカとの反応に起因するものであれば、シリカの反応性がマグネシアの消化抑制効果に大きく影響すると考えられる。シリカの反応性を確認するため、シリカA〜Jの比表面積を測定した。
【0043】
比表面積は、窒素吸着法により測定した。窒素吸着法により比表面積を測定する手法は公知の技術であるので、ここでは説明を省略する。
【0044】
表1に、シリカA〜Jの比表面積の測定結果を示す。
【0045】
比表面積、線変化率、亀裂の評価結果から、シリカの比表面積が15(m/g)未満の場合、当該シリカを添加したキャスタブル耐火物(例えば、キャスタブル耐火物1G、1H)の線変化率は+2.0%を超え、かつ、亀裂(微亀裂または大亀裂)が確認された。また、シリカA〜Cを使用したキャスタブル耐火物1A〜Cについては、使用したシリカの比表面積が大きくなると、線変化率の値が小さくなることが確認された。これは、シリカの比表面積が大きくなると、シリカとマグネシアとの反応性が高まるため、水と反応するマグネシアの割合が低下し、マグネシアの消化抑制効果が高まり、マグネシアの膨張反応が低下することによるものと考えられる。
【0046】
しかし、シリカFは、シリカB、Cよりも比表面積が大きいにもかかわらず、キャスタブル耐火物Fの線変化率の値はキャスタブル耐火物B、Cより大きく、微亀裂も確認された。これは、比表面積が大きい場合であっても、シリカが分散せずに凝集して存在していれば、見かけ上、シリカの反応性は低下する可能性があるからと考えられる。
【0047】
そこで、シリカの分散性を測定した。シリカの分散性の測定は、シリカ:結合剤:水=1:1:3の割合で混練したスラリー状の混練物を生成し、当該混練物の粘度をB型粘度計により測定することで行った。結合剤は、アルミナセメントを適用した。
【0048】
粘度測定において、例えば、シリカが混練物中に分散された状態の場合、混練物の粘性は低くなるので、粘度値は低い値となる。一方、シリカが混練物中に分散されていない状態の場合、混練物の粘性は高くなるので、粘度値は高い値となる。
【0049】
表1に、シリカA〜Jの粘度の測定結果を示す。
【0050】
結合剤にアルミナセメント又は水硬性アルミナを用いたそれぞれの場合において、シリカFを含む混練物は、シリカB又はシリカCを含む混練物の粘度値よりも高い粘度値(1.30Pa・s)を示した。すなわち、シリカFを含む混練物は、シリカB又はシリカCを含む混練物よりもシリカが混練物中に分散せず凝集して存在している結果が得られた。この結果は、シリカFはマグネシアと効率的に反応することができずに、マグネシアの消化抑制効果が効率的に働かなかったことを示している。このため、キャスタブル耐火物1Fの線変化率は、キャスタブル耐火物1B又は1Cよりも高い値(+2.1%)となり、かつ、微亀裂を生じる結果になったと考えられる。
【0051】
また、混練物の粘度値、キャスタブル耐火物の線変化率及び亀裂の評価結果から、混練物の粘度値が1.2(Pa・s)以下の場合、キャスタブル耐火物の線変化率は+2.0%以下であって、かつ、亀裂は確認されなかった。
【0052】
ここで、シリカJは、その比表面積が60(m/g)であり、この点からは反応性の向上が期待されるが、混練物の粘度値が2.10Pa・sと高く、キャスタブルJの線変化率は+5.5%と高くなり大亀裂を生じた。これは、比表面積が大きすぎて分散性が低下したためと考えられる。このように、比表面積が大きくなるとシリカの分散性が低下するが、シリカEの結果から分かるように比表面積が50(m/g)までは所定の分散性を確保することができる。
【0053】
以上の比表面積及び分散性(粘度値)の評価結果より、シリカの比表面積は15(m/g)以上50(m/g)以下であり、かつ、混練物の粘度値は1.2(Pa・s)以下であることが必要である。
【0054】
また、図3に、シリカ中のCaO濃度(質量%)と、粘度値との関係を示す。図3中の「A」〜「F」は、表1のシリカ「A」〜「F」にそれぞれ対応する。
【0055】
CaOの濃度は、シリカA〜Eにおいては0.27質量%以下となり、シリカFにおいては0.28質量%となった。シリカA〜Eは15(m/g)以上50(m/g)以下であり、シリカA〜Eのそれぞれの混練物の粘度値は1.2(Pa・s)以下であり、さらに、キャスタブル1A〜1Eは、亀裂を生じないので、シリカ中のCaO濃度は0.27質量%以下であることが好ましい。また、CaO濃度が0.28質量%以上の場合に粘度値が1.2(Pa・s)を超えるのは、Ca2+(カルシウムイオン)の働きによりシリカの凝集性が増し、シリカの分散性が低下するからと考えられる。
【0056】
なお、上述の実施の形態では、焼結アルミナ、アルミナセメント及びマグネシアの合量100質量%に対して、外掛けでシリカを6質量%添加した配合、すなわちシリカの添加量をマグネシアの添加量に対して質量比で0.1としたが、これに限定されるものではない。例えば、シリカの添加量は、マグネシアの添加量に対して質量比で0.01以上1.0以下となるように添加してもよい。この範囲のシリカの添加量であれば、マグネシアの消化抑制効果を得ることができる。キャスタブル耐火物中のマグネシアの添加量が増えるにつれ、マグネシアの消化がキャスタブル耐火物に与える影響が大きくなるため、シリカの添加量はマグネシアの添加量に応じて決定するのが好ましい。また、マグネシアの添加量に対するシリカの添加量が質量比で0.03以上であるとより高いマグネシアの消化抑制効果が得られるため、シリカの添加量がマグネシアの添加量に対して質量比で0.03以上1.0以下であればより好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシア質原料、シリカ質微粉原料、結合剤及び添加水を含むキャスタブル耐火物であって、
前記シリカ質微粉原料は、15(m/g)以上50(m/g)以下の比表面積を有するとともに、当該シリカ質微粉原料、前記結合剤及び前記添加水を1:1:3の質量比で混練した混練物の粘度が1.2(Pa・s)以下となる分散性を有するキャスタブル耐火物。
【請求項2】
前記シリカ質微粉原料は、
CaO含有量が0.27質量%以下である請求項1に記載のキャスタブル耐火物。
【請求項3】
オートクレーブ処理前後の線変化率が+2.0%以下である請求項1又は2に記載のキャスタブル耐火物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−53052(P2013−53052A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193995(P2011−193995)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】