キャッピングされた規則的な構造の有機膜組成物
【課題】巨視的なレベルで、共有結合による有機骨格が膜であるような、キャッピングされた規則的な構造の有機膜を提供する。
【解決手段】(a)それぞれ1個のセグメントと多くのFgとを含む複数の分子ビルディングブロックと、キャッピングユニット分子とを含む、液体を含有する反応混合物を調製することと;(b)前記反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;(c)前記濡れた膜の変化を促進し、SOF内に結合したキャッピングユニットを含む、乾燥したSOFを形成することとを含む、プロセスによりキャッピングされた規則的な構造の有機膜を調製する。
【解決手段】(a)それぞれ1個のセグメントと多くのFgとを含む複数の分子ビルディングブロックと、キャッピングユニット分子とを含む、液体を含有する反応混合物を調製することと;(b)前記反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;(c)前記濡れた膜の変化を促進し、SOF内に結合したキャッピングユニットを含む、乾燥したSOFを形成することとを含む、プロセスによりキャッピングされた規則的な構造の有機膜を調製する。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
キャッピングユニットと、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列したものを含む、キャッピングされた規則的な構造の有機膜であって、巨視的なレベルで、共有結合による有機骨格が膜であるような、キャッピングされた規則的な構造の有機膜が、本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】典型的なSOFと、キャッピングされたSOFとの違いを示す。左側は、典型的なSOFの網目をあらわし、右側は、キャッピングされたSOFをあらわし、この網目の中断点と、共有結合によって接続したキャッピング基(丸)とを示している。
【図2】SOFが組み込まれた感光体の側面図をあらわす。
【図3】SOFが組み込まれた感光体の側面図をあらわす。
【図4】SOFが組み込まれた感光体の側面図をあらわす。
【図5】SOFが組み込まれた薄膜トランジスタの側面図をあらわす。
【図6】コントロール実験の混合物の生成物のFT−IRスペクトルを比較したグラフであり、N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンのみを液体反応混合物に加えたもの(上)、ベンゼン−1,4−ジメタノールのみを液体反応混合物に加えたもの(中央)、SOFを形成するのに必要な成分を液体反応混合物に加えたもの(下)である。
【図7】SOFオーバーコート層の光伝導性を示す、光放電曲線(PIDC)をあらわすグラフである。
【図8】キャッピングされたSOFと、キャッピングされていないSOFのTGA曲線をあらわすグラフである。
【図9】キャッピングされたSOFと、キャッピングされていないSOFの種々の応力ひずみ曲線をあらわすグラフである。
【図10】種々のオーバーコート層の光伝導性を示す、光放電曲線(PIDC)をあらわすグラフである。
【図11】種々のオーバーコート層について得られた繰り返しデータをあらわすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0003】
「規則的な構造の有機膜」(SOF)は、巨視的なレベルで膜であるCOFを指す。SOFは、SOF配合物に添加されたキャッピングユニットまたはキャッピング基を有しており、このユニットまたは基は、(膜を形成した後に)最終的にはSOFに結合する。
【0004】
「SOF」は、巨視的なレベルで膜である、共有結合による有機骨格(COF)を指す。「巨視的なレベル」は、SOFの肉眼での見た目を指す。COFは、「微視的なレベル」または「分子レベル」では(強力な拡大装置の使用を必要とするか、または分散方法を用いて評価した場合)網目であるが、本発明のSOFは、この膜が、例えば、微視的なレベルのCOF網目よりも何桁も大きな範囲を覆っているため、基本的に「巨視的なレベル」では異なっている。本明細書に記載のSOFは、すでに合成されている典型的なCOFとはかなり異なる巨視的な形態を有している。
【0005】
さらに、キャッピングユニットがSOFに導入されると、SOFの骨格は、キャッピングユニットが存在する箇所で局所的に「中断される」。これらのSOF組成物は、外来分子が、キャッピングユニットが存在する箇所でSOF骨格に結合しているため、「共有結合によってドープされて」いる。キャッピングされたSOF組成物は、構成要素であるビルディングブロックを変えることなく、SOFの特性を変えることができる。
【0006】
SOFは、1ミリメートル〜数メートル、または数百メートルよりもかなり大きな長さにわたって延ばすことが可能な、連続的な共有結合による有機骨格を有する、実質的にピンホールを含まないSOFであってもよく、またはピンホールを含まないSOFであってもよい。SOFは、大きなアスペクト比を有する傾向があり、典型的には、SOFの2方向の寸法が、第3の寸法よりもかなり大きい。SOFは、COF粒子の集合体よりも、巨視的な縁や、不連続の外側表面が顕著に少ない。
【0007】
「実質的にピンホールを含まないSOF」または「ピンホールを含まないSOF」は、その下にある基板表面に堆積した反応混合物から生成する。「実質的にピンホールを含まないSOF」は、生成したSOFの下にある基板から取り外されてもよく、取り外されなくてもよいSOFを指し、1平方センチメートルあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを実質的に含んでいないか、または、1cm2あたり、直径が約250ナノメートルより大きなピンホール、孔またはギャップが10個未満であるか、または、1cm2あたり、直径約100ナノメートルよりも大きなピンホール、孔またはギャップが5個未満である。「ピンホールを含まないSOF」は、1平方マイクロメートルあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを含まないか、または、1平方マイクロメートルあたり、直径が約500Å、約250Åまたは約100Åよりも大きなピンホール、孔またはギャップを含まないSOFを指す。
【0008】
SOFは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個、または、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子を含んでいてもよい。SOFは、ボロキシン、ボラジン、ボロシリケート、ボロン酸エステルを含まないSOFであってもよい。SOFは、セグメント(S)と、官能基(Fg)とを有する分子ビルディングブロックを含んでいてもよい。分子ビルディングブロックには、少なくとも2個のFg(x≧2)が必要であり、1種類のFgを含んでいてもよいし、または2種類以上のFgを含んでいてもよい。Fgは、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中、セグメントを接続する化学反応に関与する。セグメントは、分子ビルディングブロックの一部分であり、Fgを支え、Fgとは関連しないすべての原子を含む。分子ビルディングブロックのセグメントの組成は、SOFを形成した後も変わらない。
【0009】
Fgは、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与してもよい。Fgは、1個の原子で構成されていてもよく、Fgは、2個以上の原子で構成されていてもよい。Fgの例としては、ハロゲン、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミン、アミド、イミン、尿素、アルデヒド、イソシアネート、トシレート、アルケン、アルキンが挙げられる。
【0010】
分子ビルディングブロックは、複数の化学部分を含有しているが、これらの化学部分の部分集合のみが、SOF形成プロセス中にFgであることを意図している。ある化学部分が、官能基とみなされるかどうかは、SOF形成プロセスで選ばれる反応条件によって変わる。Fgは、反応性部分(SOF形成プロセス中の官能基)である化学部分を示す。
【0011】
SOF形成プロセスにおいて、官能基の組成は、原子が失われるか、または原子が付け加えられるか、またはその両者によって変わる場合があり、または、官能基が完全に失われる場合もある。SOFにおいて、以前はFgに属していた原子が、セグメントを接続する化学部分であるリンカー基に属するようになる。分子ビルディングブロックの一部である原子または原子群が、SOFのリンカー基内にとどまっていてもよい。
【0012】
キャッピングユニットは、SOFに通常存在する共有結合したビルディングブロックの規則的な網目を「中断する」分子である。SOFと、キャッピングされたSOFとの違いを図1に示している。キャッピングされたSOF組成物は、導入されるキャッピングユニットの種類および量によって特性を変えることが可能な、調整可能な材料である。キャッピングユニットは、1種類または2種類以上のFgおよび/または化学部分を含んでいてもよい。
【0013】
キャッピングユニットは、SOFに加えられ、最終的にSOFとなるいずれかの分子ビルディングブロックの構造に無関係な構造を有していてもよい。
【0014】
キャッピングユニットは、分子ビルディングブロックの1つの構造に実質的に対応しているが、1つ以上のFgが失われているか、またはSOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応(最初に存在するビルディングブロックの官能基との反応)に関与しない異なる化学部分または官能基と置き換わっているような構造を有していてもよい。
【0015】
トリス−(4−ヒドロキシメチル)トリフェニルアミンの場合、適切なキャッピングユニットとしては、
【化1】
が挙げられる。分子ビルディングブロックに無関係の構造を有するキャッピング基は、水素原子のうち、1個が−OH基と置き換わったアルキル部分(一般式CnH2n+1を有し、n=1以上である、分岐しているか、または分岐していない飽和炭化水素基)であってもよい。このようなキャッピングユニットと分子ビルディングブロックとの反応(酸触媒によるアルコール基との反応)によって、エーテル基を介し、キャッピングユニットと分子ビルディングブロックとを接続してもよい。
【0016】
キャッピングユニット分子は、キャッピングユニットが、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与する適切な官能基または補助的な官能基をたった1個含むように、1箇所が官能基化されていてもよく、これにより、任意のさらなる隣接する分子ビルディングブロックが架橋する可能性はない(適切な官能基または補助的な官能基を有するビルディングブロックが加えられるまで、例えば、キャッピングされたSOFの基板層の上面にさらなるSOFが形成され、多層SOFが生成するときまで)。
【0017】
このようなキャッピングユニットがSOFコーティング配合物に導入され、硬化すると、SOF骨格の中断点が導入される。したがって、SOF骨格の中断点は、キャッピングユニットの1個の適切な官能基または補助的な官能基が、分子ビルディングブロックと反応し、SOF骨格の伸長を局所的に止め(またはキャッピングし)、通常存在する共有結合によって結合したビルディングブロックの規則的な網目を中断する部分である。SOF骨格に導入されるキャッピングユニットの種類を変えることによって、SOFの特性を調整することができる。
【0018】
キャッピングユニット分子は、2個以上の化学部分または官能基、または少なくとも2個以上の化学部分またはFg、または2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上の化学部分またはFgを含んでおり、このうち、Fgのたった1個が、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与する適切な官能基または補助的な官能基であってもよい。分子ビルディングブロック中に存在する種々の他の化学部分またはFgは、SOF形成プロセス中に、最初から存在するセグメントを接続する特定の化学反応に関与するのに適切な、または補助的な化学部分またはFgではない。しかし、SOFが生成した後、このような化学部分および/またはFgは、さらなる成分とのさらなる反応に利用可能であってもよく、これにより、生成するSOFまたは化学的に結合している他のSOF層(多層SOF)の種々の特性をさらに変更し、調整することができる。
【0019】
分子ビルディングブロックは、x個のFgを有していてもよい(xは、3以上)。xは、トリス−(4−ヒドロキシメチル)トリフェニルアミン(上述)の場合は3であり、xは、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンの場合には4である。
【化2】
【0020】
適切なFgまたは補助的なFgであり、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与するFgをx−1個有するキャッピングユニット分子は、適切な官能基または補助的な官能基であり、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与する2個のFgを有しており(トリス−(4−ヒドロキシメチル)トリフェニルアミンの場合)、3個のFgを有している(N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンの場合)。その他の官能基は、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する特異的な化学反応に関与するのに適しているか、または補助的な化学部分または官能基ではない。
【0021】
キャッピングユニットは、キャッピングユニット(例えば、第1、第2、第3、第4のキャッピングユニットなど)の混合物を含んでいてもよく、この場合、キャッピングユニットの構造はさまざまである。キャッピングユニットまたは複数のキャッピングユニットの組み合わせの構造は、SOFの化学的特性および物理的特性を高めるか、または弱めるように選択されてもよく、または、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与するのに適していないか、または補助的でもないような化学部分または官能基の属性を変え、キャッピングユニットの混合物を生成してもよい。このように、SOF骨格に導入されるキャッピングユニットの種類は、SOFに望ましい特性を導入するか、またはSOFの望ましい特性を調整するように選択されてもよい。
【0022】
SOFは、SOFの縁に位置していないセグメントを含有しており、このセグメントが、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。2型および3型のSOFは、SOFの縁に位置していないセグメントを少なくとも1個有しており、このセグメントが、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。SOFは、理想的な三角形のビルディングブロック、ひずみのある三角形のビルディングブロック、理想的な四面体のビルディングブロック、ひずみのある四面体のビルディングブロック、理想的な四角形のビルディングブロック、ひずみのある四角形のビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1つの対称形のビルディングブロックを含んでいてもよい。
【0023】
SOFは、すべてのセグメントが同一の構造を有している複数のセグメントと、同一の構造であってもよく、同一の構造でなくてもよい複数のリンカーとを含んでいてもよく、SOFの縁にないセグメントは、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。SOFは、構造が異なる少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数のセグメントを含んでいてもよく、第1のセグメントは、SOFの縁にない場合には、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。
【0024】
SOFは、構造が異なる少なくとも第1および第2のリンカーを含む複数のリンカーと、構造が異なる少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数のセグメントとを含んでいてもよく、第1のセグメントは、SOFの縁にない場合には、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続しており、この接続のうち、少なくとも1つは第1のリンカーを介しており、この接続のうち、少なくとも1つは第2のリンカーを介しているか、または、すべてのセグメントが同一の構造を有しているセグメントを含んでおり、SOFの縁にないセグメントは、リンカーによって少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続しており、この接続のうち、少なくとも1つは第1のリンカーを介しており、この接続のうち、少なくとも1つは第2のリンカーを介している。
【0025】
セグメントは、分子ビルディングブロックの一部分であり、Fgを支え、Fgとは関連しないすべての原子を含む。さらに、分子ビルディングブロックのセグメントの組成は、SOFを形成した後も変わらない。SOFは、第1のセグメントと、これと構造が同じであるか、または異なる第2のセグメントとを含んでいてもよい。第1のセグメントおよび/または第2のセグメントの構造は、第3のセグメント、第4のセグメント、第5のセグメントなどと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、セグメントは、ある特性に偏った特性を与えることが可能な分子ビルディングブロックの一部分でもある。
【0026】
SOFの例示的なセグメントは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個(水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子)を含む。
【0027】
リンカーは、分子ビルディングブロックおよび/またはキャッピングユニットに存在するFg間で化学反応が起こると、SOF中に出現する化学部分である。
【0028】
リンカーは、共有結合、1個の原子、または共有結合した原子群を含んでいてもよい。共有結合リンカーは、1個の共有結合であってもよく、2個の共有結合であってもよく、すべての関与するビルディングブロック上のFgが完全に失われると出現する。化学部分リンカーは、1個の共有結合、2個の共有結合またはこれら二者の組み合わせによって結合した1個以上の原子を有する。化学部分リンカーは、エステル、ケトン、アミド、イミン、エーテル、ウレタン、カーボネート、またはこれらの誘導体のような化学基であってもよい。
【0029】
2個のヒドロキシルFgを用い、酸素原子を介してSOF中のセグメントを接続する場合、リンカーは、酸素原子である(エーテルリンカー)。SOFは、第1のリンカーと、これと構造が同じであるか、または異なる第2のリンカーとを含んでいてもよい。第1のリンカーおよび/または第2のリンカーの構造は、第3のリンカーなどと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
キャッピングユニットは、全体的なSOF骨格が十分に維持されるならば、任意の望ましい量でSOF中に結合していてもよい。キャッピングユニットは、すべてのリンカーのうち、少なくとも0.1%に結合していてもよいが、SOF中に存在するすべてのリンカーの約40%を超えるリンカーには結合しておらず、または、約0.5%〜約30%、または約2%〜約20%に結合していてもよい。実質的にすべてのセグメントが、少なくとも1つのキャッピングユニットに結合していてもよく、ここで、用語「実質的にすべての」は、SOFのセグメントのうち、約95%を超えるか、または約99%を超えることを指す。
【0031】
例示的なリンカーは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個(水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子)を含む。
【0032】
SOFは、任意の適切なアスペクト比を有しており、例えば、約30:1より大きいか、または約50:1より大きいか、または約70:1より大きいか、または約100:1より大きいか、または約1000:1である。SOFのアスペクト比は、平均厚み(最も短い寸法)に対する、SOFの平均幅または平均直径(厚みに対して二番目に大きな寸法)の比率であると定義される。SOFの最も長い寸法は長さであり、SOFのアスペクト比の計算には考慮されない。
【0033】
一般的に、SOFは、約500μm、または約10mm、または約30mmよりも大きな幅、長さまたは直径を有する。SOFは、以下の厚みを有する:セグメント1個分の厚みをもつ層の場合、約10Å〜約250Å、または約20Å〜約200Å、複数個のセグメントの厚みをもつ層の場合、約20nm〜約5mm、約50nm〜約10mm。
【0034】
SOFは、単一層であってもよく、複数の層を含んでいてもよい。複数の層で構成されるSOFは、物理的に接続されていてもよく(例えば、双極子による結合および水素結合)、化学的に接続されていてもよい。物理的に結合している層は、層間の相互作用または接着性が弱いという特徴があり、したがって、物理的に結合している層は、互いに剥離しやすい場合がある。化学的に結合している層は、化学結合(例えば、共有結合またはイオン結合)を有しているか、または隣接する層を強く接続する、多くの物理的なエンタングルメントまたは分子間(高分子)エンタングルメントを有していると予想される。
【0035】
SOFは、単一層であってもよく(セグメント1個分または複数個分の厚み)、または複数の層であってもよい(それぞれの層が、セグメント1個分または複数個分の厚みである)。「厚み」は、例えば、膜の最も小さな寸法を指す。また、膜の厚みは、膜の断面を観察する場合には、その膜の軸に沿って計測されるセグメントの数で定義されてもよい。「単一層」のSOFは、セグメント1個分の厚みをもつ膜である。この軸に沿って2個以上のセグメントが存在するSOFは、「複数個のセグメント」の厚みをもつSOFである。
【0036】
物理的に結合している複数層のSOFを調製する例示的な方法は、(1)第1の硬化サイクルで硬化してもよく、基板となるSOF層を作成することと、(2)この基板層に、第2の反応性の濡れた層を作成した後、第2の硬化サイクルを行い、望ましい場合、この第2の工程を繰り返し、第3の層、第4の層などを作成することを含む。物理的に積み重ねられた複数層のSOFは、約20Åを超える厚みを有していてもよく、または、約20Å〜約10cm、約1nm〜約10mm、または約0.1mm〜約5mmの厚みを有していてもよい。
【0037】
化学的に結合している複数層のSOFを調製する方法は、(1)第1の反応性の濡れた層から、表面にFgが存在する(ぶら下がっているFgを有する)基板となるSOF層を作成することと、(2)この基板層に、基板のSOF層の表面にぶら下がっているFgと反応することが可能なFgを有する分子ビルディングブロックを含む第2の反応性の濡れた層から、第2のSOF層を作成することとを含む。キャッピングされたSOFは、基板層の役目を果たしてもよく、基板層のSOF形成プロセス中にセグメントを接続する特定の化学反応に関与するのに適切でもなく、または補助的でもなかったFgを第2の層の分子ビルディングブロックと反応するのに利用し、化学的に結合した複数層のSOFを作成してもよい。第2のSOF層を作成するのに用いられる配合物は、基板層のFgと反応可能であり、また、第2の層に化学的に結合している第3の層に存在し得るさらなるFgとも反応可能な分子ビルディングブロックを含んでいるべきである。化学的に積み重ねられた複数層のSOFは、約20Åを超える厚みを有していてもよく、または、約20Å〜約10cm、約1nm〜約10mm、または約0.1mm〜約5mmの厚みを有していてもよい。原理的に、物理的または化学的に積み重ねることが可能な層の数に制限はない。
【0038】
SOFまたはキャッピングされたSOFの表面に存在する、ぶら下がっているFgまたは化学部分は、特定の種類の分子または個々の分子が、基板層または任意のさらなる基板層またはSOF層に共有結合する傾向が高まるように(または、共有結合しにくくなるように)改変されてもよい。反応性のぶら下がっているFgを含んでいてもよい基板層(例えば、SOF層)の表面は、キャッピング化学基で表面処理することによって反応性が抑えられてもよい。ぶら下がっているヒドロキシアルコール基を有するSOF層は、塩化トリメチルシリルで処理され、ヒドロキシル基が安定なトリメチルシリルエーテルとしてキャッピングされることによって反応性が抑えられてもよい。または、基板層の表面を非化学的な結合剤で処理し、ぶら下がっているFgが次の層と反応しないようにしてもよい。
【0039】
分子ビルディングブロックの対称性は、分子ビルディングブロックのセグメント周囲にある官能基(Fg)の位置に関連する。対象的な分子ビルディングブロックは、Fgの位置が、規則的な幾何学形状の棒状部分の端、頂点と関連するようなFgであってもよく、ひずみのある棒状部分またはひずみのある幾何学形状の頂点と関連するようなFgであってもよい。例えば、4個のFgを含む分子ビルディングブロックのうち、最も対象形の選択肢は、Fgが四角形の端点または四面体の頂点と重なるものである。
【0040】
対象形ビルディングブロックは、以下の2つの理由で用いられる。(1)分子ビルディングブロックのパターン化は、規則的な形状の接続が、網状物質の化学においてよりよく理解されたプロセスであるため、良好であると予想されると思われるため、(2)対称性の低いビルディングブロックのずれた構造/配向は、SOF内に多くの可能な接続欠陥が起こるように適合し得るため、分子ビルディングブロック間の完全な反応が起こりやすいため。
【0041】
化学物質の接続は、Fg間の反応によって、膜生成プロセス中、または膜生成プロセス後にSOFからほとんどを蒸発させるか、または取り去ることが可能な揮発性副生成物を生じるか、または複製生物が生成しないように行ってもよい。化学物質を接続する反応としては、エステル、イミン、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、アセタール、シリルエーテルを生成するような縮合反応、付加/脱離反応、付加反応が挙げられる。
【0042】
官能基間の反応によって、膜生成プロセスの後に、ほとんどがSOF内に組み込まれたままであるような、非揮発性の副生成物が生成してもよい。化学物質を接続する反応としては、炭素−炭素結合を生成するような置換反応、メタセシス反応、金属触媒によるカップリング反応が挙げられる。
【0043】
また、SOFは、高い熱安定性を有し(典型的には、大気条件で、400度よりも高い)、有機溶媒への溶解性が低く(化学薬品安定性)、多孔性であってもよい(可逆的にゲストを取り込むことができる)。
【0044】
加えられる機能性は、従来のCOFに固有ではない特性を示し、分子組成物が、得られたSOFに上述の加えられる機能性を与えるような分子ビルディングブロックを選択することによって行ってもよい。加えられる機能性によって、加えられる機能性に「偏った特性」を有する分子ビルディングブロックおよび/またはキャッピングユニットの集合体を生じてもよい。また、加えられる機能性によって、この加えられる機能性に「偏った特性」を有さない分子ビルディングブロックの集合体を生じるが、得られたSOFが、SOF内の接続セグメント(S)とリンカーとの結果として、この加えられる機能性を有していてもよい。また、加えられる機能性は、この加えられる機能性に「偏った特性」を有さない分子ビルディングブロックおよびキャッピングユニットを生じるが、得られたSOFが、SOF内の接続セグメントと、リンカーと、キャンピングユニットとの結果として、この加えられる機能性を有していてもよい。さらに、加えられる機能性の発生は、この加えられる機能性に「偏った特性」を有する分子ビルディングブロックを用いる効果と組み合わせることによって生じてもよく、この偏った特性は、セグメントおよびリンカーがSOFに接続すると、改変されるか、または高まる。
【0045】
分子ビルディングブロックの「偏った特性」との用語は、特定の分子組成物について存在することが知られている特性、またはセグメントの分子組成物を観察すれば、当業者ならば合理的に特定可能な特性を指す。用語「偏った特性」および「加えられる機能性」は、同じ一般的な特性(例えば、疎水性、電気活性など)を指すが、「偏った特性」は、分子ビルディングブロックの観点で用いられ、「加えられる機能性」は、SOFの観点で用いられる。
【0046】
SOFの疎水性(超疎水性)、親水性、疎油性(超疎油性)、脂溶性、光発色性および/または電気活性(導体、半導体、電荷移動材料)といった性質は、SOFの「加えられる機能性」をあらわし得る特性の例である。
【0047】
疎水性(超疎水性)は、水または他の極性種をはじく特性、(1)水を吸収し、および/またはその結果膨潤することができないこと、(2)水または他の水素結合種と強い水素結合を形成することができないことを指す。
【0048】
親水性は、水または他の極性種を引きよせ、吸着するか、または吸収する特性、またはこのような種に簡単に濡れる表面を指す。また、親水性とは、水または他の水素結合種と強い水素結合を形成するか、または多くの水素結合を形成することが可能なことを意味する。
【0049】
疎油性(油分をはじく性質)は、油または他の非極性種をはじく特性を指す。
【0050】
脂溶性(油分に溶ける性質)は、油または他の非極性種を引きつける特性を指す。
【0051】
光発色性は、電磁放射線に露光すると、可逆的な色変化を示す能力を指す。光発色性分子を含むSOF組成物を調製し、電磁放射線に露光し、可逆的な色変化を示してもよい。光発色性SOFを、消去可能な紙、窓の着色/遮光および眼鏡のための光応答性膜に用いてもよい。SOF組成物は、任意の適切な光発色性分子、例えば、SOF分子ビルディングブロックのような二官能光発色性分子(SOF内に化学的に結合している)、SOFキャッピングユニットのような一官能光発色性分子(SOF内に化学的に結合している)、またはSOFコンポジット中の官能基化していない光発色性分子(SOF内に化学的に結合していない)を含んでいてもよい。
【0052】
電気活性は、電荷(電子および/または正孔)を移動する特性を指す。電気活性材料としては、導体、半導体、電荷移動材料が挙げられる。
【0053】
導体は、電位差計を用い、約0.1〜約107S/cmのシグナルが得られる材料である。
【0054】
半導体は、さらに、刺激が加えられた状態で、電位差計を用い、約10−6〜約104S/cmのシグナルが得られる材料であると定義されてもよい。高度にフッ素化されたセグメント(加えられる機能として疎水性を有するSOFを生じてもよい)は、セグメント上に存在するフッ素原子の数を、セグメント上に存在する水素原子の数で割ると2より大きいセグメントである。
【0055】
このようなフッ素化されたセグメントとしては、テトラフルオロヒドロキノン、ペルフルオロアジピン酸水和物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールが挙げられる。
【0056】
極性置換基を有するセグメントは、偏った特性として親水性を有しており、加えられる機能として親水性を有するSOFを生じてもよい。極性置換基は、水と水素結合を生成することが可能な置換基を指し、ヒドロキシル、アミノ、アンモニウム、カルボニル(ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、カーボネート、尿素)が挙げられる。
【0057】
加えられる機能として電気活性を有するSOFは、偏った特性として電気活性を有する分子ビルディングブロックによって調製されてもよく、および/または、セグメントおよびリンカーを組み合わせた集合体から電気活性が生じてもよい。
【0058】
加えられる機能として正孔移動性を有するSOFは、トリアリールアミン、ヒドラゾンを含むセグメントコアを選択することによって得られてもよく(米国特許第7,202,002号)、エナミンを含むセグメントコアを選択することによって得られてもよい(米国特許第7,416,824号)。
【化3】
式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は、それぞれ独立して、置換されているか、または置換されていないアリール基をあらわし、または、Ar5は、独立して、置換されているか、または置換されていないアリーレン基をあらわし、kは、0または1をあらわし、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5のうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む。Ar5は、置換されたフェニル環、置換された/置換されていないフェニレン、置換された/置換されていない一価の結合した芳香族環(例えば、ビフェニル、ターフェニルなど)、または置換された/置換されていない縮合した芳香族環(ナフチル、アントラニル、フェナントリルなど)であってもよい。
【0059】
加えられる機能として正孔移動性を有する、アリールアミンを含むセグメントコアとしては、アリールアミン:トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[p−ターフェニル]−4,4’’−ジアミン;ヒドラゾン:N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン;オキサジアゾール:2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール、スチルベンなどが挙げられる。
【0060】
トリアリールアミンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる。
【化4】
【0061】
ヒドラゾンを含むセグメントコア:
【化5】
式中、Ar1、Ar2、Ar3は、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基またはアルキル基をあらわし、場合により置換基を含んでいてもよく;Ar1、Ar2、Ar3のうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む;および関連するオキサジアゾール:
【化6】
式中、Ar、Ar1は、それぞれ独立して、Fg(上に定義したもの)を含むアリール基をあらわす。
【0062】
ヒドラゾンコアおよびオキサジアゾールコアを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる。
【化7】
【0063】
エナミンを含むセグメントコア:
【化8】
式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基またはアルキル基をあらわし、場合により置換基を含んでいてもよく;Ar1、Ar2、Ar3、Ar4のうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む。
【0064】
エナミンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化9】
【0065】
加えられる機能として電子移動性を有するSOFは、以下の一般構造を有するニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンマロニトリル、ジフェノキノン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを含むセグメントコアを選択することによって得てもよい。
【化10】
なお、ジフェニルキノンのカルボニル基は、SOF形成プロセス中にFgとしても作用可能であることを注記しておく。
【0066】
加えられる機能として半導体性を有するSOFは、以下の一般構造を有するアセン、チオフェン/オリゴチオフェン/縮合チオフェン、ペリレンビスイミド、またはテトラチオフルバレン、およびこれらの誘導体を含むセグメントコアを選択することによって得てもよい。
【化11】
【0067】
電子供与性を有する分子ビルディングブロックとしては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基が挙げられる。電子吸引性を有する分子ビルディングブロックとしては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、フッ素化アルキル基、フッ素化アリール基が挙げられる。
【0068】
アセンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化12】
【0069】
チオフェン/オリゴチオフェン/縮合チオフェンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化13】
【0070】
ペリレンビスイミドコアセグメントを含む分子ビルディングブロックの例としては、以下のものが挙げられる:
【化14】
【0071】
テトラチオフルバレンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化15】
式中、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわす。
【0072】
キャッピングされたSOF(以下「SOF」と称してもよい)を製造するプロセスは、典型的には、キャッピングされていないSOFを製造するために用いられるのと同じ数の作業または工程を含む。得られるSOF中の望ましいキャッピングユニットの分布に依存して、工程a、bまたはc(以下)のいずれかの間にキャッピングユニットを加えてもよい。キャッピングユニットの分布が、得られたSOF全体に実質的に均一であることが望ましい場合、キャッピングユニットは、工程aの間に加えてもよい。キャッピングユニットの分布がもっと不均一であることが望ましい場合、工程bおよびcの間にキャッピングユニットを加えてもよい。
【0073】
作業または工程(以下に記載するもの)を、任意の適切な順序で行ってもよく、または、2つ以上の作業を同時に行ってもよく、非常に近い時間に行ってもよい。
【0074】
SOFを調製するプロセスは、
(a)それぞれ1個のセグメントと多くのFgとを含む複数の分子ビルディングブロックを含む、液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)この反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;
(c)分子ビルディングブロックを含む濡れた膜の変化を促進し、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列したSOFを含む乾燥した膜にし、この共有結合による有機骨格が、巨視的なレベルで膜であることと;
(d)場合により、コーティング基板からSOFを取り外し、自立型SOFを得ることと;
(e)場合により、この自立型SOFをロールへと加工することと;
(f)場合により、このSOFを切断し、ベルトになるように縫い合わせることと;
(g)場合により、SOF(上述のSOF形成プロセスによって調製してもよい)を基板として用い、次のSOF形成プロセスで上述のSOF形成プロセスを行うこととを含む。
【0075】
上述の作業または工程は、大気圧、大気圧を超える圧力、または大気圧より低い圧力で行ってもよい。約0.1atm〜約2atm、または約0.5atm〜約1.5atm、または約0.8atm〜約1.2atmの圧力を利用してもよい。
【0076】
反応混合物は、液体に溶解するか、懸濁するか、または混合するような複数の分子ビルディングブロックを含む。複数の分子ビルディングブロックは、1種類であってもよく、または2種類以上を含んでいてもよい。1種類以上の分子ビルディングブロックが液体である場合、さらなる液体の使用は任意である。場合により、反応混合物に触媒を加え、SOFの形成を可能にするか、または、上述の作業Cの間のSOF形成速度を変えてもよい。場合により、反応混合物に添加剤または第2の成分を加え、得られるSOFの物理的特性を変えてもよい。
【0077】
反応混合物の成分(分子ビルディングブロック、場合により、キャッピングユニット、液体、場合により、触媒、場合により、添加剤)を容器内で混合する。反応混合物の成分を加える順序は、さまざまであってもよいが、典型的には、触媒は最後に加える。分子ビルディングブロックを溶解しやすくするために、分子ビルディングブロックを、触媒が存在しない状態で、液体中で加熱してもよい。また、反応混合物を混合し、攪拌し、粉砕などを行い、反応混合物を濡れた膜として堆積させる前に、配合物成分を均一に分散させてもよい。
【0078】
反応混合物を濡れた膜として堆積させる前に加熱してもよい。これにより、1つ以上の分子ビルディングブロックが溶解しやすくしてもよく、および/または、濡れた層を堆積させる前に、反応混合物を部分的に反応させることによって、反応混合物の粘度を高くしてもよい。これにより、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保持量を増やしてもよい。
【0079】
反応混合物の粘度は、約10〜約50,000cps、約25〜約25,000cps、または約50〜約1000cpsの範囲である。
【0080】
分子ビルディングブロックおよびキャッピングユニットを保持すること、または反応混合物中の「保持量」は、分子ビルディングブロックと、場合により、キャッピングユニットおよび触媒との合計重量を、反応混合物の合計重量で割ったものであると定義される。ビルディングブロックの保持量は、約3〜100%、約5〜約50%、または約15〜約40%の範囲であってもよい。液体の分子ビルディングブロックが反応混合物の唯一の液体成分として用いられる場合、ビルディングブロックの保持量は、約100%であろう。キャッピングユニットが反応混合物にいつ加えられるかによって、キャッピングユニットの保持量は、約3〜約80%、約5〜約50%、または約15〜約40重量%の範囲であってもよい。
【0081】
キャッピングユニット保持量の理論的な上限値は、液体SOF配合物中、分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続基の数を2まで減らすキャッピングユニットのモル数である。このような保持量では、実質的に、分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続可能なFgの数を(それぞれのキャッピング基と反応させることによって)使いつくすことによって、SOFの形成が有効に抑えられるであろう。キャッピングユニットの保持量が、液体SOF配合物中の分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続基が2モルよりも過剰にならないようにするのに十分な量である場合、キャッピングユニットで完全にキャッピングされたオリゴマー、線形ポリマー、分子ビルディングブロックが、SOFの代わりに優先的に生成するだろう。
【0082】
反応混合物中で用いられる液体は、純粋な液体であってもよく、および/または溶媒混合物であってもよい。適切な液体は、沸点が約30〜約300℃、約65℃〜約250℃、または約100℃〜約180℃であってもよい。
【0083】
液体としては、アルカン;芳香族化合物;エーテル;エステル;ケトン;アミン;アミド;アルコール;ハロゲン化芳香族;水が挙げられる。また、第1の溶媒、第2の溶媒、第3の溶媒などを含む混合した液体を、反応混合物中で用いてもよい。第1の溶媒は、沸点が第2の溶媒より高くてもよい。「実質的に除去する」は、それぞれの溶媒を少なくとも90%、または約95%除去することを指す。「実質的に残っている」は、それぞれの溶媒が、2%を超えない量で除去されるか、または1%を超えない量で除去されることを指す。
【0084】
SOFの特性を操作するために、濡れた層がSOFに変換する速度を遅くするか、または速くするために、混合した液体を用いてもよい。縮合および付加/脱離によって化学物質を接続する場合、水、1級アルコール、2級アルコールまたは3級アルコールを含む液体を用いてもよい。
【0085】
場合により、濡れた層を乾燥したSOFにすることを促進するために、反応混合物中に触媒が存在していてもよい。触媒は、均一系であってもよく、不均一系であってもよく、ブレンステッド酸;ルイス酸;ブレンステッド塩基;ルイス塩基;金属塩;金属錯体であってもよい。典型的な触媒の保持量は、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保持量の約0.01%〜約25%、または約0.1%〜約5%の範囲である。触媒は、最終的なSOF組成物中に存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0086】
場合により、添加剤または第2の成分(例えば、ドーパント)が、反応混合物および濡れた層に存在していてもよい。また、このような添加剤または第2の成分を、乾燥SOFに組み込んでもよい。「添加剤」または「第2の成分」は、SOFに共有結合していないが、組成物にランダムに分布している原子または分子を指す。
【0087】
第2の成分は、標的とする性能を満たすようにするために、キャッピングされたSOFの目的とする特性を強めるか、または組み合わせるために、同様の特性または別個の特性(相乗効果、または改良した効果、キャッピングされたSOFの固有の特性または偏った特性を強める能力)を有していてもよい。
【0088】
多くの液体堆積技術を用い、種々の基板に、反応混合物を濡れた膜として塗布してもよい。基板としては、ポリマー、紙、金属、金属アロイ、周期律表のIII族〜VI族の元素がドープされた形態およびドープされていない形態、金属酸化物、金属カルコゲニド、あらかじめ調製しておいたSOFまたはキャッピングされたSOFが挙げられる。基板の厚みは、ほぼ10マイクロメートル〜10ミリメートルまでであってもよく、例示的な厚みは、約50〜約100マイクロメートルである。
【0089】
多くの液体堆積技術を用い(例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ウェブコーティング、浸漬コーティング、カップコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スタンピングなどを含む)、反応混合物を基板に塗布してもよい。濡れた層の厚みは、約10nm〜約5mm、約100nm〜約1mm、または約1μm〜約500μmの範囲であってもよい。
【0090】
上述のプロセスBの作業を終えた後に、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を導入してもよい。この様式でキャッピングユニットおよび/または第2の成分を組み込むことは、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を均一に、または不均一に、または濡れた膜の上に特定の模様として分散させる任意の手段によって達成してもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を導入した後、プロセスCの作業を再開しつつ、次のプロセスの作業を行ってもよい。
【0091】
反応混合物を基板に塗布した後、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を任意の適切な方法によって濡れた層に加えてもよい。生成した濡れた層にキャッピングユニットおよび/または第2の成分を、均一な様式または不均一な様式で(種々のパターンを含む)塗布してもよく、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の濃度または密度は、濡れた層の上に、所与の幅でキャッピングユニットおよび/または第2の成分の濃度が高い部分と低い部分が交互に並ぶ帯状のパターンを形成するように、特定の領域では小さい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を濡れた層の上面に塗布すると、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の一部分が濡れた層に拡散するか、沈み、それによって、SOFの厚み内でキャッピングユニットおよび/または第2の成分が不均一に分散し、その結果、濡れた層を乾燥SOFに変化するのを促進した後に得られるSOFに、線形または非線形の濃度勾配が得られてもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を、堆積した濡れた層の上側表面に加えてもよく、濡れた層の変化を促進すると、キャッピングユニットおよび/または第2の成分が乾燥SOFで不均一に分散したSOFが得られる。濡れた膜の密度、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の密度に依存して、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の大部分が、乾燥SOFの上側半分(基板と反対側)に残ってもよく、または、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の大部分が、乾燥SOFの下側半分(基板に隣接する側)に残ってもよい。
【0092】
「促進する」は、分子ビルディングブロックの反応を容易にする任意の適切な技術を指す。また、「促進する」は、乾燥膜を形成するために、任意の液体を除去することも指す。キャッピングユニット、分子ビルディングブロックの反応、液体の除去は、連続して行われてもよく、同時に行われてもよい。濡れた膜から乾燥SOFへの変化を促進させている間に、キャッピングユニットを加えてもよい。「乾燥SOF」は、液体の含有量がSOFの約5重量%未満、または約2重量%未満の、実質的に乾燥したSOFを指す。
【0093】
乾燥SOFまたは乾燥SOFの所与の領域(例えば、SOFの上側4分の1)のキャッピングユニットは、存在するキャッピングユニットおよびセグメントの合計モル数に対し、約0.5モル%以上、または約1モル%〜約40モル%、または約2モル%〜約25モル%の量で存在する。
【0094】
濡れた層から乾燥SOFを形成するのを促進することは、任意の適切な技術によって行われてもよい。濡れた層から乾燥SOFを形成するのを促進することは、典型的には、オーブンでの乾燥、赤外線(IR)などを用いた、温度が40〜350℃、60〜200℃、85〜160℃での熱処理を含む。合計加熱時間は、約4秒〜約24時間、または1分〜120分、または3分〜60分の範囲であってもよい。
【0095】
種々の種類のIRエミッタを用いてもよく、炭素IRエミッタまたは短波IRエミッタに関する例示的な情報を以下の表にまとめている。
【0096】
【表1】
【0097】
濡れた層の堆積物を支えるために、接着性の低い適切な基板を用いる場合、自立型のキャッピングされたSOFを得ることができる。
【0098】
SOF形成プロセス中、SOFを基板として用い、多層SOFを得てもよい。多層SOFの層は、化学的に結合していてもよく、物理的に接触していてもよい。化学的に結合した多層SOFは、基板SOF表面に存在するFgを、第2のSOF層を作成するのに使用される、堆積した濡れた層中に存在する分子ビルディングブロックと反応させることが可能な場合に、生成する。物理的に接触している多層SOFは、互いに化学的に結合していなくてもよい。
【0099】
場合により、SOF基板は、第2のSOF層が化学的に結合しないように、濡れた層を堆積する前に化学的に処理し(表面の反応性を抑え)、物理的に接触した多層SOFを作成してもよい。
【0100】
電子機器でSOFを用いてもよい。
【0101】
電子写真式画像形成体(例えば、感光体)の代表的な構造を図2〜4に示す。これらの画像形成体は、屈曲防止層1、支持基板2、導電性接地板3、電荷遮断層4、接着層5、電荷生成層6、電荷移動層7、オーバーコート層8、アース片9とを備えた状態で提供される。図4において、画像形成層10(電荷生成材料と電荷移動材料の両方を含む)は、別個の電荷生成層6および電荷移動層7の代わりに配置されている。
【0102】
電荷移動性を有するキャッピングされたSOFとしては、多環芳香族環(アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネン)、または窒素を含有するヘテロ環(インドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、トリアゾール、ヒドラゾン化合物)を含むセグメントが挙げられる。正孔移動性のSOFセグメントとしては、カルバゾール;N−エチルカルバゾール;N−イソプロピルカルバゾール;N−フェニルカルバゾール;テトラフェニルピレン;1−メチルピレン;ペリレン;クリセン;アントラセン;テトラフェン;2−フェニルナフタレン;アゾピレン;1−エチルピレン;アセチルピレン;2,3−ベンゾクリセン;2,4−ベンゾピレン;1,4−ブロモピレンが挙げられる。適切な電子移動性のSOFセグメントとしては、電子受容体(2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン;2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレノン;ジニトロアントラセン;ジニトロアクリデン;テトラシアノピレン;ジニトロアントラキノン;ブチルカルボニルフルオレンマロノニトリル)が挙げられる(米国特許第4,921,769号を参照)。他の正孔移動性のSOFセグメントとしては、アリールアミン(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミンが挙げられ、ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどからなる群から選択される(米国特許第4,265,990号を参照)。
【0103】
キャッピングされたSOFの電荷移動層は、
(a)1個のセグメントと、多くのFgとを含む、偏った電荷移動特性を有する複数の分子ビルディングブロックを含む液体を含有する反応混合物を調製し;次いで、
(b)の工程と、
(c)の工程(上述)とによって調製されてもよい。
【0104】
キャッピングユニットを加えることは、上述のように、工程a、b、cのいずれかの間に行ってもよい。キャッピングされたSOFを生成する反応混合物は、広範囲の分子ビルディングブロック保持量を用いてもよい。この保持量は、反応混合物の合計重量を基準として、約2〜約50重量%である。「保持量」は、電荷移動性を有するキャッピングされたSOF反応混合物の分子ビルディングブロック成分を指す。電荷移動性のSOF層の厚みは、約5μm〜約100μm、約10μm〜約70μm、または約10μm〜約40μmである。電荷生成層の厚みを基準とした、電荷移動層の厚みの比率は、約2:1〜200:1に維持されてもよく、400:1程度の大きさに維持されてもよい。
【0105】
本明細書に記載の材料および手順を用い、電荷生成材料および電荷移動性のキャッピングされたSOFを含む単一画像形成層を有する感光体を製造してもよい。単一画像形成層のための分散物の固体含有量は、分散物の重量を基準として、約2重量%〜約30重量%の範囲であってもよい。
【0106】
画像形成層が、電荷生成層と電荷移動層の機能を組み合わせた単一層である場合、この層に含まれる成分の具体的な量は、電荷生成材料(約2重量%から約40重量%まで)と、偏った加えられる機能として電荷移動性を有する分子ビルディングブロック(約20重量%〜約75重量%)である。
【0107】
1つ以上のオーバーコート層8を用いてもよく、この層を利用する場合、電荷生成層または電荷移動層の上に配置される。この層は、電気的に絶縁性であるか、またはわずかに半導体性を有するキャッピングされたSOFを含む。
【0108】
このような保護性のオーバーコート層は、キャッピングユニットと、電荷移動性セグメントを場合により含む複数の分子ビルディングブロックとを含む、キャッピングされたSOFを形成する反応混合物を含む。
【0109】
添加剤は、オーバーコート層中に、オーバーコート層の約0.5〜約40重量%の範囲で存在してもよい。添加剤としては、耐摩耗性をさらに高め、および/または電荷緩和特性を付与することが可能な有機粒子および無機粒子が挙げられる。有機粒子としては、テフロン(登録商標)粉末、カーボンブラック、グラファイト粒子が挙げられる。無機粒子としては、絶縁性および半導体性の金属酸化物粒子、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられる。別の半導体性添加剤は、酸化されたオリゴマー塩であってもよく(米国特許第5,853,906号を参照)、または、酸化されたN,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ビフェニルジアミン塩であってもよい。
【0110】
約2μm〜約15μm、または約3μm〜約8μmのオーバーコート層は、耐ひっかき性および耐摩耗性を付与することに加え、電荷移動による分子の浸出、結晶化、電荷移動層の割れを防ぐのに有効である。
【0111】
画像形成体は、キャッピングされたSOFを表面層(OCLまたはCTL)として含んでいてもよい。この画像形成体は、N,N,N’,N’−テトラ−(メチレンフェニレン)ビフェニル−4,4’−ジアミンと、セグメントとしてN,N,N’,N’−テトラフェニル−ターフェニル−4,4’−ジアミンセグメントとを含む、キャッピングされたSOFであってもよい。このようなキャッピングされたSOFは、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン分子ビルディングブロックから調製されてもよい。また、SOF画像形成体は、N,N,N’,N’−テトラ−(メチレンフェニレン)ビフェニル−4,4’−ジアミンと、セグメントとしてN,N,N’,N’−テトラフェニル−ビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントとを含んでいてもよい。画像形成体のSOFは、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン分子ビルディングブロックとから調製されてもよい。
【0112】
画像形成体は、SOF層を含んでいてもよく(キャッピングされたSOF層であってもよい)、SOF層の厚みは、1〜15マイクロメートルである。このような画像形成体のSOFは、単一層であってもよく、2つ以上の層であってもよい。
【0113】
図5は、基板36、ゲート電極38、ソース電極40、ドレイン電極42、絶縁層34、有機半導体層32で構成される薄膜トランジスタ(TFT)構造30を模式的に示す。
【0114】
半導体層は、キャッピングされたSOFを備えていてもよく、このSOFは、場合により、加えられる機能として半導体性を含んでいてもよい。RFIDタグの任意の成分は、キャッピングされたSOFを含んでいてもよく、例えば、RFIDタグの基板および/またはアンテナは、キャッピングされたSOFを含んでいてもよい。
【0115】
従来の有機発光ダイオード(OLED)構造の任意の成分(基板、アノード、正孔注入層、正孔移動層、電子移動層、カソード層を含む)は、SOFを含んでいてもよい(キャッピングされたSOFであってもよい)。典型的な有機発光デバイスは、1つ以上のSOF(1つ以上がキャッピングされたSOFであってもよい)と、構成要素として、通常は、正孔を注入するアノードとして作用する透明な第1の電極、1つ以上の電子発光性のSOF層を含み、通常は電子を注入するカソードとして作用する発光領域のうち、1つ以上の成分を含んでいてもよい。
【0116】
すべての比率は、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。
【0117】
図9は、数種類のキャッピングされたSOFの応力ひずみ曲線を示す。曲線の終点は、キャッピングされたSOFの破断点である。キャッピングされたSOFと、キャッピングされていないSOFとで、破断点が異なることは明らかであり、キャッピングユニットの保持量と、キャッピングユニットの種類とを変えると、破断点が異なることも明らかである。
【0118】
キャッピングされたSOF膜の破断点は(対応するキャッピングされていないSOF組成物に対し)、約1%〜約85%、または約5%から約25%に弱まっている場合がある。
【0119】
キャッピングされたSOF膜の破断点は(対応するキャッピングされていないSOF組成物に対し)、約1%〜約400%、約20%〜約200%、または約50%〜約100%まで高まっている場合がある。
【実施例】
【0120】
実施例1は、2個のビルディングブロック間をエーテル化によって接続する化学を促進するように成分を組み合わせた2型SOFの合成について記載している。酸触媒および加熱作用が存在する状態で、実施例1に記載した方法でSOFを得る。
【0121】
(実施例1)
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合した。ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.47g、3.4mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH3);(1.12g、1.7mmol)]、17.9gの1−メトキシ−2−プロパノール。混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.31gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。
【0122】
(作業B)反応混合物を濡れた膜として堆積。8milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に塗布した。
【0123】
(作業C)濡れた膜を乾燥SOFに変化させるのを促進すること。濡れた層を支えている金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約3〜6μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立型SOFとして剥離してもよい。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部分のフーリエ変換赤外スペクトルを図6に示している。
【0124】
実施例1で調製したSOFが、SOF内でパターン化された分子ビルディングブロックを用いて得られたセグメントを含むことを示すために、3種類のコントロール実験を行った。すなわち、実施例1の作業Aに記載したのと同じ手順を用いるが、それぞれの3種類の配合物を以下のように変更し、3種類の液体反応混合物を調製した。
・(コントロール反応混合物1;実施例2)ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノールを含まなかった。
・(コントロール反応混合物2;実施例3)ビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンを含まなかった。
・(コントロール反応混合物3;実施例4)触媒であるp−トルエンスルホン酸を含まなかった。
【0125】
それぞれの3種類のコントロール反応混合物について、実施例1に概略を説明した作業BおよびCを行った。しかし、すべての場合において、SOFは生成せず、単に、基板表面にビルディングブロックが析出した。これらの結果から、ビルディングブロックは、上に述べた処理条件ではビルディングブロック自体と反応することはできず、プロモーター(p−トルエンスルホン酸)が存在しない状態では、ビルディングブロックが反応することもできないという結果が得られた。したがって、実施例1に記載した活性は、ビルディングブロック(ベンゼン−1,4−ジメタノールおよびN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン)が、互いに反応するように促進された場合にのみ反応することが可能な活性である。パターン化されたSOFは、セグメントであるp−キシリルおよびN4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンが互いに接続した場合にのみ生じる。フーリエ変換赤外スペクトルを、コントロール実験の生成物と比較すると、出発物質のFgが存在しない(特に、ベンゼン−1,4−ジメタノールに由来するヒドロキシルバンドが存在しない)ことが示され、さらに、上述のように処理されたセグメント間の接続性をさらに支持するものである。また、SOFのスペクトルにヒドロキシルバンドがまったく存在しないことは、非常に高い割合でパターン化されていることを示している。
【0126】
(実施例6)
以下の表1からわかるように、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン)およびN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンの特定のSOFオーバーコート層組成物は、電荷をバイアスしたロール(BCR)によって帯電する感光体の性質を向上させた。さらに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン)およびN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンを用いると、正孔移動分子の保持量が90%より大きなSOFオーバーコート層を調製することができ、6マイクロメートルよりも大きな厚みのオーバーコート層で、優れた電気特性が得られた(低Vr)。この実験から、2個の分子ビルディングブロックの比率を変えることによって、耐摩耗性を調節することが可能なことが示された。
【0127】
【表2】
【0128】
この表は、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン)分子ビルディングブロックから調製されたSOF感光体オーバーコート層組成物が、BCRによる帯電系のための感光体オーバーコート層組成物として有望であることが示されていることを示している。このSOFオーバーコート層設計物は、関連する架橋したポリマー設計物よりもすぐれた電気的性能を有している(Vr=90V 対 209V)。さらに、このSOFオーバーコート層設計物の摩耗速度は、感光体デバイスの電気的性能に悪影響を与えることなく、単にHTM比を変えることによって調整することができる(64〜34nm/kサイクル)。
【0129】
N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン)分子ビルディングブロックから調製したSOF感光体オーバーコート層(OCL)組成物は、BCRによる帯電系のためのOCL候補物質として有望であることが示された。HTM保持率が90%を超えるSOF感光体層(CTLおよび/またはOCL)は、層が10μmより厚い場合に、優れた電気的特性を示した(低Vr、安定な周期)。
【0130】
(実施例14)
(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);表2に列挙した量]、表2に示したようなキャッピングユニット、試験10を除く(キャッピングユニットを含まず;添加剤はSilclean 3700、触媒は、Nacure XP−357およびDowanolであった。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、65℃で60分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)反応混合物をアルミニウム基板に塗布した。(作業C)濡れた層を支えているアルミニウム基板を、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが4〜10μmの範囲の膜を得た。
【0131】
【表3−1】
【0132】
【表3−2】
【0133】
【表3−3】
【0134】
上述の配合物はすべて、目で観察して、ピンホールを含まないSOFを製造していた。SOFのFT−IR分光法によって、膜で検出される−OHバンドが、かなり大きく弱まっているか、または完全になくなっているため、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンビルディングブロックとキャッピングユニットとの接続が、首尾よく、かつ効率的に起こっていることが示された。
【0135】
キャッピングされたSOFの熱安定性は、キャッピングユニットを含まないN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンSOFの熱安定性に匹敵している。図8は、400℃まで分解が起こらないことを示しており、これは、高度に結合した材料であることの指標である。
【0136】
膜の機械特性は、キャッピングユニットを導入することによって大きく影響を受けた。キャッピングされたSOF膜の機械特性を、上述のキャッピングされたSOF膜および他のキャッピングされたSOF膜の自立型の膜に関する応力ひずみデータを集めることによって評価した(図9)。一般的に、キャッピングユニットを含むSOF膜は、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンのみで構築された純粋なSOF膜と比較して、靱性が大きくなっており、応力ひずみ曲線が線形ではなくなっていた。上述の機械データから、キャッピングユニットをSOFに導入することによって、微視的なレベルでの変化が起こり、膜の巨視的な特性に直接影響を及ぼしていることは明らかである。
【0137】
(実施例15)
(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);表3〜6に列挙した量]、キャッピングユニット、添加剤であるSilclean 3700、触媒であるNacure XP−357およびDowanol(表3〜6で指定したように)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、65℃で60分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)カップコーティング機(Tsukiageコーティング)を用い、引っ張り速度485mm/分で、反応混合物を市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機にすばやく移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが6〜7μmの範囲の膜を得た。
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
上述の配合物はすべて、目で観察して、ピンホールを含まないSOFを製造していた。SOFのFT−IR分光法によって、膜で検出される−OHバンドが、かなり大きく弱まっているか、または完全になくなっているため、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンビルディングブロックとキャッピングユニットとの接続が、首尾よく、かつ効率的に起こっていることが示された。図10は、キャッピングされたSOFオーバーコート層の光伝導性を示す光放電曲線(PIDC)である(電圧は75ms(露光量 対 測定値))。このデバイスの電気特性は優れている(低Vr、サイクルアップなし)。それぞれ、図10および図11のPIDCおよび繰り返しデータを参照。
【0143】
キャッピングされたSOF OCL(両方の種類のキャッピングユニット)のBCR摩耗データは、キャッピングユニットの保持量が増えると摩耗速度が大きくなることを示している(表7、以下)。感光体が、電荷をバイアスしたロール(BCR)を用いて帯電する場合、従来の電荷移動層は、100キロサイクルあたり、8〜10μm以上のすばやく、ほぼ壊滅的な摩耗速度で摩耗を受ける。ACでバイアスした帯電ロールを用い、感光表面を帯電することは、低速(例えば、40ppmまでの速度)で、画像形成デバイス(例えば、複写機および印刷機)で画像を形成するために、当該技術分野で従来から行われている。しかし、AC流から発生したコロナをBCRに適用すると、感光体の上部層で分解が起こる。分解した材料は、クリーニングブレードによって簡単に除去することができる。印刷サイクル中にこのようなプロセスを繰り返すと、感光体の上部層がすばやく摩耗する。
【0144】
摩耗速度は、感光体の寿命を制限する顕著な特性であり、静電写真式デバイスにおける感光体の交換は、非常に高価である。したがって、特に、AC BCRを用いて帯電する低速の複写機および印刷機に典型的に使用される小さい直径を有する有機感光体ドラムに関して寿命の長い感光体を得るために、感光体の摩耗度を制御することは非常に重要である。このような直径の小さなドラムでは、100キロサイクルは、10,000回の印刷と言い換えられる。CTLの摩耗によって、デバイスの感度がかなり低下し、このことは、典型的に露光量を制御しない業務用複写機および印刷機では大きな問題である。それに加え、感光体の上部層がすばやく摩耗するには、トナーの転写品質および複写品質を良好に保つために、感光体表面に残る残骸を良好に洗浄することを必要とする。保持量の多い場合と少ない場合とで、摩耗度および摩耗の違いは小さく、このことは、キャッピングユニットの保持量をさらに増やすことによって摩耗速度が上げるのにかなりの自由度があることを示しており、これはまた、必要なHTMの量(および費用)を下げるであろう。
【0145】
【表8】
【0146】
印刷試験は、なんら印刷の品質に問題がなく、オーバーコーティングされていないP/Rデバイスと本質的に同一であることを示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0001】
キャッピングユニットと、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列したものを含む、キャッピングされた規則的な構造の有機膜であって、巨視的なレベルで、共有結合による有機骨格が膜であるような、キャッピングされた規則的な構造の有機膜が、本明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【図1】典型的なSOFと、キャッピングされたSOFとの違いを示す。左側は、典型的なSOFの網目をあらわし、右側は、キャッピングされたSOFをあらわし、この網目の中断点と、共有結合によって接続したキャッピング基(丸)とを示している。
【図2】SOFが組み込まれた感光体の側面図をあらわす。
【図3】SOFが組み込まれた感光体の側面図をあらわす。
【図4】SOFが組み込まれた感光体の側面図をあらわす。
【図5】SOFが組み込まれた薄膜トランジスタの側面図をあらわす。
【図6】コントロール実験の混合物の生成物のFT−IRスペクトルを比較したグラフであり、N4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンのみを液体反応混合物に加えたもの(上)、ベンゼン−1,4−ジメタノールのみを液体反応混合物に加えたもの(中央)、SOFを形成するのに必要な成分を液体反応混合物に加えたもの(下)である。
【図7】SOFオーバーコート層の光伝導性を示す、光放電曲線(PIDC)をあらわすグラフである。
【図8】キャッピングされたSOFと、キャッピングされていないSOFのTGA曲線をあらわすグラフである。
【図9】キャッピングされたSOFと、キャッピングされていないSOFの種々の応力ひずみ曲線をあらわすグラフである。
【図10】種々のオーバーコート層の光伝導性を示す、光放電曲線(PIDC)をあらわすグラフである。
【図11】種々のオーバーコート層について得られた繰り返しデータをあらわすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0003】
「規則的な構造の有機膜」(SOF)は、巨視的なレベルで膜であるCOFを指す。SOFは、SOF配合物に添加されたキャッピングユニットまたはキャッピング基を有しており、このユニットまたは基は、(膜を形成した後に)最終的にはSOFに結合する。
【0004】
「SOF」は、巨視的なレベルで膜である、共有結合による有機骨格(COF)を指す。「巨視的なレベル」は、SOFの肉眼での見た目を指す。COFは、「微視的なレベル」または「分子レベル」では(強力な拡大装置の使用を必要とするか、または分散方法を用いて評価した場合)網目であるが、本発明のSOFは、この膜が、例えば、微視的なレベルのCOF網目よりも何桁も大きな範囲を覆っているため、基本的に「巨視的なレベル」では異なっている。本明細書に記載のSOFは、すでに合成されている典型的なCOFとはかなり異なる巨視的な形態を有している。
【0005】
さらに、キャッピングユニットがSOFに導入されると、SOFの骨格は、キャッピングユニットが存在する箇所で局所的に「中断される」。これらのSOF組成物は、外来分子が、キャッピングユニットが存在する箇所でSOF骨格に結合しているため、「共有結合によってドープされて」いる。キャッピングされたSOF組成物は、構成要素であるビルディングブロックを変えることなく、SOFの特性を変えることができる。
【0006】
SOFは、1ミリメートル〜数メートル、または数百メートルよりもかなり大きな長さにわたって延ばすことが可能な、連続的な共有結合による有機骨格を有する、実質的にピンホールを含まないSOFであってもよく、またはピンホールを含まないSOFであってもよい。SOFは、大きなアスペクト比を有する傾向があり、典型的には、SOFの2方向の寸法が、第3の寸法よりもかなり大きい。SOFは、COF粒子の集合体よりも、巨視的な縁や、不連続の外側表面が顕著に少ない。
【0007】
「実質的にピンホールを含まないSOF」または「ピンホールを含まないSOF」は、その下にある基板表面に堆積した反応混合物から生成する。「実質的にピンホールを含まないSOF」は、生成したSOFの下にある基板から取り外されてもよく、取り外されなくてもよいSOFを指し、1平方センチメートルあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを実質的に含んでいないか、または、1cm2あたり、直径が約250ナノメートルより大きなピンホール、孔またはギャップが10個未満であるか、または、1cm2あたり、直径約100ナノメートルよりも大きなピンホール、孔またはギャップが5個未満である。「ピンホールを含まないSOF」は、1平方マイクロメートルあたり、2個の隣接するセグメントのコア間の距離よりも大きなピンホール、孔またはギャップを含まないか、または、1平方マイクロメートルあたり、直径が約500Å、約250Åまたは約100Åよりも大きなピンホール、孔またはギャップを含まないSOFを指す。
【0008】
SOFは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個、または、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子を含んでいてもよい。SOFは、ボロキシン、ボラジン、ボロシリケート、ボロン酸エステルを含まないSOFであってもよい。SOFは、セグメント(S)と、官能基(Fg)とを有する分子ビルディングブロックを含んでいてもよい。分子ビルディングブロックには、少なくとも2個のFg(x≧2)が必要であり、1種類のFgを含んでいてもよいし、または2種類以上のFgを含んでいてもよい。Fgは、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中、セグメントを接続する化学反応に関与する。セグメントは、分子ビルディングブロックの一部分であり、Fgを支え、Fgとは関連しないすべての原子を含む。分子ビルディングブロックのセグメントの組成は、SOFを形成した後も変わらない。
【0009】
Fgは、分子ビルディングブロックの反応性化学部分であり、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与してもよい。Fgは、1個の原子で構成されていてもよく、Fgは、2個以上の原子で構成されていてもよい。Fgの例としては、ハロゲン、アルコール、エーテル、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミン、アミド、イミン、尿素、アルデヒド、イソシアネート、トシレート、アルケン、アルキンが挙げられる。
【0010】
分子ビルディングブロックは、複数の化学部分を含有しているが、これらの化学部分の部分集合のみが、SOF形成プロセス中にFgであることを意図している。ある化学部分が、官能基とみなされるかどうかは、SOF形成プロセスで選ばれる反応条件によって変わる。Fgは、反応性部分(SOF形成プロセス中の官能基)である化学部分を示す。
【0011】
SOF形成プロセスにおいて、官能基の組成は、原子が失われるか、または原子が付け加えられるか、またはその両者によって変わる場合があり、または、官能基が完全に失われる場合もある。SOFにおいて、以前はFgに属していた原子が、セグメントを接続する化学部分であるリンカー基に属するようになる。分子ビルディングブロックの一部である原子または原子群が、SOFのリンカー基内にとどまっていてもよい。
【0012】
キャッピングユニットは、SOFに通常存在する共有結合したビルディングブロックの規則的な網目を「中断する」分子である。SOFと、キャッピングされたSOFとの違いを図1に示している。キャッピングされたSOF組成物は、導入されるキャッピングユニットの種類および量によって特性を変えることが可能な、調整可能な材料である。キャッピングユニットは、1種類または2種類以上のFgおよび/または化学部分を含んでいてもよい。
【0013】
キャッピングユニットは、SOFに加えられ、最終的にSOFとなるいずれかの分子ビルディングブロックの構造に無関係な構造を有していてもよい。
【0014】
キャッピングユニットは、分子ビルディングブロックの1つの構造に実質的に対応しているが、1つ以上のFgが失われているか、またはSOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応(最初に存在するビルディングブロックの官能基との反応)に関与しない異なる化学部分または官能基と置き換わっているような構造を有していてもよい。
【0015】
トリス−(4−ヒドロキシメチル)トリフェニルアミンの場合、適切なキャッピングユニットとしては、
【化1】
が挙げられる。分子ビルディングブロックに無関係の構造を有するキャッピング基は、水素原子のうち、1個が−OH基と置き換わったアルキル部分(一般式CnH2n+1を有し、n=1以上である、分岐しているか、または分岐していない飽和炭化水素基)であってもよい。このようなキャッピングユニットと分子ビルディングブロックとの反応(酸触媒によるアルコール基との反応)によって、エーテル基を介し、キャッピングユニットと分子ビルディングブロックとを接続してもよい。
【0016】
キャッピングユニット分子は、キャッピングユニットが、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与する適切な官能基または補助的な官能基をたった1個含むように、1箇所が官能基化されていてもよく、これにより、任意のさらなる隣接する分子ビルディングブロックが架橋する可能性はない(適切な官能基または補助的な官能基を有するビルディングブロックが加えられるまで、例えば、キャッピングされたSOFの基板層の上面にさらなるSOFが形成され、多層SOFが生成するときまで)。
【0017】
このようなキャッピングユニットがSOFコーティング配合物に導入され、硬化すると、SOF骨格の中断点が導入される。したがって、SOF骨格の中断点は、キャッピングユニットの1個の適切な官能基または補助的な官能基が、分子ビルディングブロックと反応し、SOF骨格の伸長を局所的に止め(またはキャッピングし)、通常存在する共有結合によって結合したビルディングブロックの規則的な網目を中断する部分である。SOF骨格に導入されるキャッピングユニットの種類を変えることによって、SOFの特性を調整することができる。
【0018】
キャッピングユニット分子は、2個以上の化学部分または官能基、または少なくとも2個以上の化学部分またはFg、または2個、3個、4個、5個、6個、またはそれ以上の化学部分またはFgを含んでおり、このうち、Fgのたった1個が、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与する適切な官能基または補助的な官能基であってもよい。分子ビルディングブロック中に存在する種々の他の化学部分またはFgは、SOF形成プロセス中に、最初から存在するセグメントを接続する特定の化学反応に関与するのに適切な、または補助的な化学部分またはFgではない。しかし、SOFが生成した後、このような化学部分および/またはFgは、さらなる成分とのさらなる反応に利用可能であってもよく、これにより、生成するSOFまたは化学的に結合している他のSOF層(多層SOF)の種々の特性をさらに変更し、調整することができる。
【0019】
分子ビルディングブロックは、x個のFgを有していてもよい(xは、3以上)。xは、トリス−(4−ヒドロキシメチル)トリフェニルアミン(上述)の場合は3であり、xは、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンの場合には4である。
【化2】
【0020】
適切なFgまたは補助的なFgであり、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与するFgをx−1個有するキャッピングユニット分子は、適切な官能基または補助的な官能基であり、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与する2個のFgを有しており(トリス−(4−ヒドロキシメチル)トリフェニルアミンの場合)、3個のFgを有している(N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンの場合)。その他の官能基は、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する特異的な化学反応に関与するのに適しているか、または補助的な化学部分または官能基ではない。
【0021】
キャッピングユニットは、キャッピングユニット(例えば、第1、第2、第3、第4のキャッピングユニットなど)の混合物を含んでいてもよく、この場合、キャッピングユニットの構造はさまざまである。キャッピングユニットまたは複数のキャッピングユニットの組み合わせの構造は、SOFの化学的特性および物理的特性を高めるか、または弱めるように選択されてもよく、または、SOF形成プロセス中にセグメントを接続する化学反応に関与するのに適していないか、または補助的でもないような化学部分または官能基の属性を変え、キャッピングユニットの混合物を生成してもよい。このように、SOF骨格に導入されるキャッピングユニットの種類は、SOFに望ましい特性を導入するか、またはSOFの望ましい特性を調整するように選択されてもよい。
【0022】
SOFは、SOFの縁に位置していないセグメントを含有しており、このセグメントが、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。2型および3型のSOFは、SOFの縁に位置していないセグメントを少なくとも1個有しており、このセグメントが、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。SOFは、理想的な三角形のビルディングブロック、ひずみのある三角形のビルディングブロック、理想的な四面体のビルディングブロック、ひずみのある四面体のビルディングブロック、理想的な四角形のビルディングブロック、ひずみのある四角形のビルディングブロックからなる群から選択される少なくとも1つの対称形のビルディングブロックを含んでいてもよい。
【0023】
SOFは、すべてのセグメントが同一の構造を有している複数のセグメントと、同一の構造であってもよく、同一の構造でなくてもよい複数のリンカーとを含んでいてもよく、SOFの縁にないセグメントは、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。SOFは、構造が異なる少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数のセグメントを含んでいてもよく、第1のセグメントは、SOFの縁にない場合には、リンカーによって、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続している。
【0024】
SOFは、構造が異なる少なくとも第1および第2のリンカーを含む複数のリンカーと、構造が異なる少なくとも第1および第2のセグメントを含む複数のセグメントとを含んでいてもよく、第1のセグメントは、SOFの縁にない場合には、少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続しており、この接続のうち、少なくとも1つは第1のリンカーを介しており、この接続のうち、少なくとも1つは第2のリンカーを介しているか、または、すべてのセグメントが同一の構造を有しているセグメントを含んでおり、SOFの縁にないセグメントは、リンカーによって少なくとも3個の他のセグメントおよび/またはキャッピング基と接続しており、この接続のうち、少なくとも1つは第1のリンカーを介しており、この接続のうち、少なくとも1つは第2のリンカーを介している。
【0025】
セグメントは、分子ビルディングブロックの一部分であり、Fgを支え、Fgとは関連しないすべての原子を含む。さらに、分子ビルディングブロックのセグメントの組成は、SOFを形成した後も変わらない。SOFは、第1のセグメントと、これと構造が同じであるか、または異なる第2のセグメントとを含んでいてもよい。第1のセグメントおよび/または第2のセグメントの構造は、第3のセグメント、第4のセグメント、第5のセグメントなどと同じであってもよく、異なっていてもよい。また、セグメントは、ある特性に偏った特性を与えることが可能な分子ビルディングブロックの一部分でもある。
【0026】
SOFの例示的なセグメントは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個(水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子)を含む。
【0027】
リンカーは、分子ビルディングブロックおよび/またはキャッピングユニットに存在するFg間で化学反応が起こると、SOF中に出現する化学部分である。
【0028】
リンカーは、共有結合、1個の原子、または共有結合した原子群を含んでいてもよい。共有結合リンカーは、1個の共有結合であってもよく、2個の共有結合であってもよく、すべての関与するビルディングブロック上のFgが完全に失われると出現する。化学部分リンカーは、1個の共有結合、2個の共有結合またはこれら二者の組み合わせによって結合した1個以上の原子を有する。化学部分リンカーは、エステル、ケトン、アミド、イミン、エーテル、ウレタン、カーボネート、またはこれらの誘導体のような化学基であってもよい。
【0029】
2個のヒドロキシルFgを用い、酸素原子を介してSOF中のセグメントを接続する場合、リンカーは、酸素原子である(エーテルリンカー)。SOFは、第1のリンカーと、これと構造が同じであるか、または異なる第2のリンカーとを含んでいてもよい。第1のリンカーおよび/または第2のリンカーの構造は、第3のリンカーなどと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
キャッピングユニットは、全体的なSOF骨格が十分に維持されるならば、任意の望ましい量でSOF中に結合していてもよい。キャッピングユニットは、すべてのリンカーのうち、少なくとも0.1%に結合していてもよいが、SOF中に存在するすべてのリンカーの約40%を超えるリンカーには結合しておらず、または、約0.5%〜約30%、または約2%〜約20%に結合していてもよい。実質的にすべてのセグメントが、少なくとも1つのキャッピングユニットに結合していてもよく、ここで、用語「実質的にすべての」は、SOFのセグメントのうち、約95%を超えるか、または約99%を超えることを指す。
【0031】
例示的なリンカーは、炭素以外の元素の原子のうち、少なくとも1個(水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素および硫黄からなる群から選択される少なくとも1個の原子)を含む。
【0032】
SOFは、任意の適切なアスペクト比を有しており、例えば、約30:1より大きいか、または約50:1より大きいか、または約70:1より大きいか、または約100:1より大きいか、または約1000:1である。SOFのアスペクト比は、平均厚み(最も短い寸法)に対する、SOFの平均幅または平均直径(厚みに対して二番目に大きな寸法)の比率であると定義される。SOFの最も長い寸法は長さであり、SOFのアスペクト比の計算には考慮されない。
【0033】
一般的に、SOFは、約500μm、または約10mm、または約30mmよりも大きな幅、長さまたは直径を有する。SOFは、以下の厚みを有する:セグメント1個分の厚みをもつ層の場合、約10Å〜約250Å、または約20Å〜約200Å、複数個のセグメントの厚みをもつ層の場合、約20nm〜約5mm、約50nm〜約10mm。
【0034】
SOFは、単一層であってもよく、複数の層を含んでいてもよい。複数の層で構成されるSOFは、物理的に接続されていてもよく(例えば、双極子による結合および水素結合)、化学的に接続されていてもよい。物理的に結合している層は、層間の相互作用または接着性が弱いという特徴があり、したがって、物理的に結合している層は、互いに剥離しやすい場合がある。化学的に結合している層は、化学結合(例えば、共有結合またはイオン結合)を有しているか、または隣接する層を強く接続する、多くの物理的なエンタングルメントまたは分子間(高分子)エンタングルメントを有していると予想される。
【0035】
SOFは、単一層であってもよく(セグメント1個分または複数個分の厚み)、または複数の層であってもよい(それぞれの層が、セグメント1個分または複数個分の厚みである)。「厚み」は、例えば、膜の最も小さな寸法を指す。また、膜の厚みは、膜の断面を観察する場合には、その膜の軸に沿って計測されるセグメントの数で定義されてもよい。「単一層」のSOFは、セグメント1個分の厚みをもつ膜である。この軸に沿って2個以上のセグメントが存在するSOFは、「複数個のセグメント」の厚みをもつSOFである。
【0036】
物理的に結合している複数層のSOFを調製する例示的な方法は、(1)第1の硬化サイクルで硬化してもよく、基板となるSOF層を作成することと、(2)この基板層に、第2の反応性の濡れた層を作成した後、第2の硬化サイクルを行い、望ましい場合、この第2の工程を繰り返し、第3の層、第4の層などを作成することを含む。物理的に積み重ねられた複数層のSOFは、約20Åを超える厚みを有していてもよく、または、約20Å〜約10cm、約1nm〜約10mm、または約0.1mm〜約5mmの厚みを有していてもよい。
【0037】
化学的に結合している複数層のSOFを調製する方法は、(1)第1の反応性の濡れた層から、表面にFgが存在する(ぶら下がっているFgを有する)基板となるSOF層を作成することと、(2)この基板層に、基板のSOF層の表面にぶら下がっているFgと反応することが可能なFgを有する分子ビルディングブロックを含む第2の反応性の濡れた層から、第2のSOF層を作成することとを含む。キャッピングされたSOFは、基板層の役目を果たしてもよく、基板層のSOF形成プロセス中にセグメントを接続する特定の化学反応に関与するのに適切でもなく、または補助的でもなかったFgを第2の層の分子ビルディングブロックと反応するのに利用し、化学的に結合した複数層のSOFを作成してもよい。第2のSOF層を作成するのに用いられる配合物は、基板層のFgと反応可能であり、また、第2の層に化学的に結合している第3の層に存在し得るさらなるFgとも反応可能な分子ビルディングブロックを含んでいるべきである。化学的に積み重ねられた複数層のSOFは、約20Åを超える厚みを有していてもよく、または、約20Å〜約10cm、約1nm〜約10mm、または約0.1mm〜約5mmの厚みを有していてもよい。原理的に、物理的または化学的に積み重ねることが可能な層の数に制限はない。
【0038】
SOFまたはキャッピングされたSOFの表面に存在する、ぶら下がっているFgまたは化学部分は、特定の種類の分子または個々の分子が、基板層または任意のさらなる基板層またはSOF層に共有結合する傾向が高まるように(または、共有結合しにくくなるように)改変されてもよい。反応性のぶら下がっているFgを含んでいてもよい基板層(例えば、SOF層)の表面は、キャッピング化学基で表面処理することによって反応性が抑えられてもよい。ぶら下がっているヒドロキシアルコール基を有するSOF層は、塩化トリメチルシリルで処理され、ヒドロキシル基が安定なトリメチルシリルエーテルとしてキャッピングされることによって反応性が抑えられてもよい。または、基板層の表面を非化学的な結合剤で処理し、ぶら下がっているFgが次の層と反応しないようにしてもよい。
【0039】
分子ビルディングブロックの対称性は、分子ビルディングブロックのセグメント周囲にある官能基(Fg)の位置に関連する。対象的な分子ビルディングブロックは、Fgの位置が、規則的な幾何学形状の棒状部分の端、頂点と関連するようなFgであってもよく、ひずみのある棒状部分またはひずみのある幾何学形状の頂点と関連するようなFgであってもよい。例えば、4個のFgを含む分子ビルディングブロックのうち、最も対象形の選択肢は、Fgが四角形の端点または四面体の頂点と重なるものである。
【0040】
対象形ビルディングブロックは、以下の2つの理由で用いられる。(1)分子ビルディングブロックのパターン化は、規則的な形状の接続が、網状物質の化学においてよりよく理解されたプロセスであるため、良好であると予想されると思われるため、(2)対称性の低いビルディングブロックのずれた構造/配向は、SOF内に多くの可能な接続欠陥が起こるように適合し得るため、分子ビルディングブロック間の完全な反応が起こりやすいため。
【0041】
化学物質の接続は、Fg間の反応によって、膜生成プロセス中、または膜生成プロセス後にSOFからほとんどを蒸発させるか、または取り去ることが可能な揮発性副生成物を生じるか、または複製生物が生成しないように行ってもよい。化学物質を接続する反応としては、エステル、イミン、エーテル、カーボネート、ウレタン、アミド、アセタール、シリルエーテルを生成するような縮合反応、付加/脱離反応、付加反応が挙げられる。
【0042】
官能基間の反応によって、膜生成プロセスの後に、ほとんどがSOF内に組み込まれたままであるような、非揮発性の副生成物が生成してもよい。化学物質を接続する反応としては、炭素−炭素結合を生成するような置換反応、メタセシス反応、金属触媒によるカップリング反応が挙げられる。
【0043】
また、SOFは、高い熱安定性を有し(典型的には、大気条件で、400度よりも高い)、有機溶媒への溶解性が低く(化学薬品安定性)、多孔性であってもよい(可逆的にゲストを取り込むことができる)。
【0044】
加えられる機能性は、従来のCOFに固有ではない特性を示し、分子組成物が、得られたSOFに上述の加えられる機能性を与えるような分子ビルディングブロックを選択することによって行ってもよい。加えられる機能性によって、加えられる機能性に「偏った特性」を有する分子ビルディングブロックおよび/またはキャッピングユニットの集合体を生じてもよい。また、加えられる機能性によって、この加えられる機能性に「偏った特性」を有さない分子ビルディングブロックの集合体を生じるが、得られたSOFが、SOF内の接続セグメント(S)とリンカーとの結果として、この加えられる機能性を有していてもよい。また、加えられる機能性は、この加えられる機能性に「偏った特性」を有さない分子ビルディングブロックおよびキャッピングユニットを生じるが、得られたSOFが、SOF内の接続セグメントと、リンカーと、キャンピングユニットとの結果として、この加えられる機能性を有していてもよい。さらに、加えられる機能性の発生は、この加えられる機能性に「偏った特性」を有する分子ビルディングブロックを用いる効果と組み合わせることによって生じてもよく、この偏った特性は、セグメントおよびリンカーがSOFに接続すると、改変されるか、または高まる。
【0045】
分子ビルディングブロックの「偏った特性」との用語は、特定の分子組成物について存在することが知られている特性、またはセグメントの分子組成物を観察すれば、当業者ならば合理的に特定可能な特性を指す。用語「偏った特性」および「加えられる機能性」は、同じ一般的な特性(例えば、疎水性、電気活性など)を指すが、「偏った特性」は、分子ビルディングブロックの観点で用いられ、「加えられる機能性」は、SOFの観点で用いられる。
【0046】
SOFの疎水性(超疎水性)、親水性、疎油性(超疎油性)、脂溶性、光発色性および/または電気活性(導体、半導体、電荷移動材料)といった性質は、SOFの「加えられる機能性」をあらわし得る特性の例である。
【0047】
疎水性(超疎水性)は、水または他の極性種をはじく特性、(1)水を吸収し、および/またはその結果膨潤することができないこと、(2)水または他の水素結合種と強い水素結合を形成することができないことを指す。
【0048】
親水性は、水または他の極性種を引きよせ、吸着するか、または吸収する特性、またはこのような種に簡単に濡れる表面を指す。また、親水性とは、水または他の水素結合種と強い水素結合を形成するか、または多くの水素結合を形成することが可能なことを意味する。
【0049】
疎油性(油分をはじく性質)は、油または他の非極性種をはじく特性を指す。
【0050】
脂溶性(油分に溶ける性質)は、油または他の非極性種を引きつける特性を指す。
【0051】
光発色性は、電磁放射線に露光すると、可逆的な色変化を示す能力を指す。光発色性分子を含むSOF組成物を調製し、電磁放射線に露光し、可逆的な色変化を示してもよい。光発色性SOFを、消去可能な紙、窓の着色/遮光および眼鏡のための光応答性膜に用いてもよい。SOF組成物は、任意の適切な光発色性分子、例えば、SOF分子ビルディングブロックのような二官能光発色性分子(SOF内に化学的に結合している)、SOFキャッピングユニットのような一官能光発色性分子(SOF内に化学的に結合している)、またはSOFコンポジット中の官能基化していない光発色性分子(SOF内に化学的に結合していない)を含んでいてもよい。
【0052】
電気活性は、電荷(電子および/または正孔)を移動する特性を指す。電気活性材料としては、導体、半導体、電荷移動材料が挙げられる。
【0053】
導体は、電位差計を用い、約0.1〜約107S/cmのシグナルが得られる材料である。
【0054】
半導体は、さらに、刺激が加えられた状態で、電位差計を用い、約10−6〜約104S/cmのシグナルが得られる材料であると定義されてもよい。高度にフッ素化されたセグメント(加えられる機能として疎水性を有するSOFを生じてもよい)は、セグメント上に存在するフッ素原子の数を、セグメント上に存在する水素原子の数で割ると2より大きいセグメントである。
【0055】
このようなフッ素化されたセグメントとしては、テトラフルオロヒドロキノン、ペルフルオロアジピン酸水和物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノールが挙げられる。
【0056】
極性置換基を有するセグメントは、偏った特性として親水性を有しており、加えられる機能として親水性を有するSOFを生じてもよい。極性置換基は、水と水素結合を生成することが可能な置換基を指し、ヒドロキシル、アミノ、アンモニウム、カルボニル(ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、カーボネート、尿素)が挙げられる。
【0057】
加えられる機能として電気活性を有するSOFは、偏った特性として電気活性を有する分子ビルディングブロックによって調製されてもよく、および/または、セグメントおよびリンカーを組み合わせた集合体から電気活性が生じてもよい。
【0058】
加えられる機能として正孔移動性を有するSOFは、トリアリールアミン、ヒドラゾンを含むセグメントコアを選択することによって得られてもよく(米国特許第7,202,002号)、エナミンを含むセグメントコアを選択することによって得られてもよい(米国特許第7,416,824号)。
【化3】
式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5は、それぞれ独立して、置換されているか、または置換されていないアリール基をあらわし、または、Ar5は、独立して、置換されているか、または置換されていないアリーレン基をあらわし、kは、0または1をあらわし、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5のうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む。Ar5は、置換されたフェニル環、置換された/置換されていないフェニレン、置換された/置換されていない一価の結合した芳香族環(例えば、ビフェニル、ターフェニルなど)、または置換された/置換されていない縮合した芳香族環(ナフチル、アントラニル、フェナントリルなど)であってもよい。
【0059】
加えられる機能として正孔移動性を有する、アリールアミンを含むセグメントコアとしては、アリールアミン:トリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[p−ターフェニル]−4,4’’−ジアミン;ヒドラゾン:N−フェニル−N−メチル−3−(9−エチル)カルバジルヒドラゾン、4−ジエチルアミノベンズアルデヒド−1,2−ジフェニルヒドラゾン;オキサジアゾール:2,5−ビス(4−N,N’−ジエチルアミノフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール、スチルベンなどが挙げられる。
【0060】
トリアリールアミンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる。
【化4】
【0061】
ヒドラゾンを含むセグメントコア:
【化5】
式中、Ar1、Ar2、Ar3は、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基またはアルキル基をあらわし、場合により置換基を含んでいてもよく;Ar1、Ar2、Ar3のうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む;および関連するオキサジアゾール:
【化6】
式中、Ar、Ar1は、それぞれ独立して、Fg(上に定義したもの)を含むアリール基をあらわす。
【0062】
ヒドラゾンコアおよびオキサジアゾールコアを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる。
【化7】
【0063】
エナミンを含むセグメントコア:
【化8】
式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4は、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわし、Rは、水素原子、アリール基またはアルキル基をあらわし、場合により置換基を含んでいてもよく;Ar1、Ar2、Ar3、Ar4のうち、少なくとも2つは、Fg(上に定義したもの)を含む。
【0064】
エナミンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化9】
【0065】
加えられる機能として電子移動性を有するSOFは、以下の一般構造を有するニトロフルオレノン、9−フルオレニリデンマロニトリル、ジフェノキノン、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドを含むセグメントコアを選択することによって得てもよい。
【化10】
なお、ジフェニルキノンのカルボニル基は、SOF形成プロセス中にFgとしても作用可能であることを注記しておく。
【0066】
加えられる機能として半導体性を有するSOFは、以下の一般構造を有するアセン、チオフェン/オリゴチオフェン/縮合チオフェン、ペリレンビスイミド、またはテトラチオフルバレン、およびこれらの誘導体を含むセグメントコアを選択することによって得てもよい。
【化11】
【0067】
電子供与性を有する分子ビルディングブロックとしては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アミノ基が挙げられる。電子吸引性を有する分子ビルディングブロックとしては、シアノ基、ニトロ基、フルオロ基、フッ素化アルキル基、フッ素化アリール基が挙げられる。
【0068】
アセンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化12】
【0069】
チオフェン/オリゴチオフェン/縮合チオフェンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化13】
【0070】
ペリレンビスイミドコアセグメントを含む分子ビルディングブロックの例としては、以下のものが挙げられる:
【化14】
【0071】
テトラチオフルバレンコアセグメントを含む分子ビルディングブロックとしては、以下のものが挙げられる:
【化15】
式中、Arは、それぞれ独立して、場合により1個以上の置換基を含むアリール基、または場合により1個以上の置換基を含むヘテロ環基をあらわす。
【0072】
キャッピングされたSOF(以下「SOF」と称してもよい)を製造するプロセスは、典型的には、キャッピングされていないSOFを製造するために用いられるのと同じ数の作業または工程を含む。得られるSOF中の望ましいキャッピングユニットの分布に依存して、工程a、bまたはc(以下)のいずれかの間にキャッピングユニットを加えてもよい。キャッピングユニットの分布が、得られたSOF全体に実質的に均一であることが望ましい場合、キャッピングユニットは、工程aの間に加えてもよい。キャッピングユニットの分布がもっと不均一であることが望ましい場合、工程bおよびcの間にキャッピングユニットを加えてもよい。
【0073】
作業または工程(以下に記載するもの)を、任意の適切な順序で行ってもよく、または、2つ以上の作業を同時に行ってもよく、非常に近い時間に行ってもよい。
【0074】
SOFを調製するプロセスは、
(a)それぞれ1個のセグメントと多くのFgとを含む複数の分子ビルディングブロックを含む、液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)この反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;
(c)分子ビルディングブロックを含む濡れた膜の変化を促進し、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格として整列したSOFを含む乾燥した膜にし、この共有結合による有機骨格が、巨視的なレベルで膜であることと;
(d)場合により、コーティング基板からSOFを取り外し、自立型SOFを得ることと;
(e)場合により、この自立型SOFをロールへと加工することと;
(f)場合により、このSOFを切断し、ベルトになるように縫い合わせることと;
(g)場合により、SOF(上述のSOF形成プロセスによって調製してもよい)を基板として用い、次のSOF形成プロセスで上述のSOF形成プロセスを行うこととを含む。
【0075】
上述の作業または工程は、大気圧、大気圧を超える圧力、または大気圧より低い圧力で行ってもよい。約0.1atm〜約2atm、または約0.5atm〜約1.5atm、または約0.8atm〜約1.2atmの圧力を利用してもよい。
【0076】
反応混合物は、液体に溶解するか、懸濁するか、または混合するような複数の分子ビルディングブロックを含む。複数の分子ビルディングブロックは、1種類であってもよく、または2種類以上を含んでいてもよい。1種類以上の分子ビルディングブロックが液体である場合、さらなる液体の使用は任意である。場合により、反応混合物に触媒を加え、SOFの形成を可能にするか、または、上述の作業Cの間のSOF形成速度を変えてもよい。場合により、反応混合物に添加剤または第2の成分を加え、得られるSOFの物理的特性を変えてもよい。
【0077】
反応混合物の成分(分子ビルディングブロック、場合により、キャッピングユニット、液体、場合により、触媒、場合により、添加剤)を容器内で混合する。反応混合物の成分を加える順序は、さまざまであってもよいが、典型的には、触媒は最後に加える。分子ビルディングブロックを溶解しやすくするために、分子ビルディングブロックを、触媒が存在しない状態で、液体中で加熱してもよい。また、反応混合物を混合し、攪拌し、粉砕などを行い、反応混合物を濡れた膜として堆積させる前に、配合物成分を均一に分散させてもよい。
【0078】
反応混合物を濡れた膜として堆積させる前に加熱してもよい。これにより、1つ以上の分子ビルディングブロックが溶解しやすくしてもよく、および/または、濡れた層を堆積させる前に、反応混合物を部分的に反応させることによって、反応混合物の粘度を高くしてもよい。これにより、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保持量を増やしてもよい。
【0079】
反応混合物の粘度は、約10〜約50,000cps、約25〜約25,000cps、または約50〜約1000cpsの範囲である。
【0080】
分子ビルディングブロックおよびキャッピングユニットを保持すること、または反応混合物中の「保持量」は、分子ビルディングブロックと、場合により、キャッピングユニットおよび触媒との合計重量を、反応混合物の合計重量で割ったものであると定義される。ビルディングブロックの保持量は、約3〜100%、約5〜約50%、または約15〜約40%の範囲であってもよい。液体の分子ビルディングブロックが反応混合物の唯一の液体成分として用いられる場合、ビルディングブロックの保持量は、約100%であろう。キャッピングユニットが反応混合物にいつ加えられるかによって、キャッピングユニットの保持量は、約3〜約80%、約5〜約50%、または約15〜約40重量%の範囲であってもよい。
【0081】
キャッピングユニット保持量の理論的な上限値は、液体SOF配合物中、分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続基の数を2まで減らすキャッピングユニットのモル数である。このような保持量では、実質的に、分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続可能なFgの数を(それぞれのキャッピング基と反応させることによって)使いつくすことによって、SOFの形成が有効に抑えられるであろう。キャッピングユニットの保持量が、液体SOF配合物中の分子ビルディングブロックあたり、利用可能な接続基が2モルよりも過剰にならないようにするのに十分な量である場合、キャッピングユニットで完全にキャッピングされたオリゴマー、線形ポリマー、分子ビルディングブロックが、SOFの代わりに優先的に生成するだろう。
【0082】
反応混合物中で用いられる液体は、純粋な液体であってもよく、および/または溶媒混合物であってもよい。適切な液体は、沸点が約30〜約300℃、約65℃〜約250℃、または約100℃〜約180℃であってもよい。
【0083】
液体としては、アルカン;芳香族化合物;エーテル;エステル;ケトン;アミン;アミド;アルコール;ハロゲン化芳香族;水が挙げられる。また、第1の溶媒、第2の溶媒、第3の溶媒などを含む混合した液体を、反応混合物中で用いてもよい。第1の溶媒は、沸点が第2の溶媒より高くてもよい。「実質的に除去する」は、それぞれの溶媒を少なくとも90%、または約95%除去することを指す。「実質的に残っている」は、それぞれの溶媒が、2%を超えない量で除去されるか、または1%を超えない量で除去されることを指す。
【0084】
SOFの特性を操作するために、濡れた層がSOFに変換する速度を遅くするか、または速くするために、混合した液体を用いてもよい。縮合および付加/脱離によって化学物質を接続する場合、水、1級アルコール、2級アルコールまたは3級アルコールを含む液体を用いてもよい。
【0085】
場合により、濡れた層を乾燥したSOFにすることを促進するために、反応混合物中に触媒が存在していてもよい。触媒は、均一系であってもよく、不均一系であってもよく、ブレンステッド酸;ルイス酸;ブレンステッド塩基;ルイス塩基;金属塩;金属錯体であってもよい。典型的な触媒の保持量は、反応混合物中の分子ビルディングブロックの保持量の約0.01%〜約25%、または約0.1%〜約5%の範囲である。触媒は、最終的なSOF組成物中に存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0086】
場合により、添加剤または第2の成分(例えば、ドーパント)が、反応混合物および濡れた層に存在していてもよい。また、このような添加剤または第2の成分を、乾燥SOFに組み込んでもよい。「添加剤」または「第2の成分」は、SOFに共有結合していないが、組成物にランダムに分布している原子または分子を指す。
【0087】
第2の成分は、標的とする性能を満たすようにするために、キャッピングされたSOFの目的とする特性を強めるか、または組み合わせるために、同様の特性または別個の特性(相乗効果、または改良した効果、キャッピングされたSOFの固有の特性または偏った特性を強める能力)を有していてもよい。
【0088】
多くの液体堆積技術を用い、種々の基板に、反応混合物を濡れた膜として塗布してもよい。基板としては、ポリマー、紙、金属、金属アロイ、周期律表のIII族〜VI族の元素がドープされた形態およびドープされていない形態、金属酸化物、金属カルコゲニド、あらかじめ調製しておいたSOFまたはキャッピングされたSOFが挙げられる。基板の厚みは、ほぼ10マイクロメートル〜10ミリメートルまでであってもよく、例示的な厚みは、約50〜約100マイクロメートルである。
【0089】
多くの液体堆積技術を用い(例えば、スピンコーティング、ブレードコーティング、ウェブコーティング、浸漬コーティング、カップコーティング、ロッドコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、スタンピングなどを含む)、反応混合物を基板に塗布してもよい。濡れた層の厚みは、約10nm〜約5mm、約100nm〜約1mm、または約1μm〜約500μmの範囲であってもよい。
【0090】
上述のプロセスBの作業を終えた後に、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を導入してもよい。この様式でキャッピングユニットおよび/または第2の成分を組み込むことは、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を均一に、または不均一に、または濡れた膜の上に特定の模様として分散させる任意の手段によって達成してもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を導入した後、プロセスCの作業を再開しつつ、次のプロセスの作業を行ってもよい。
【0091】
反応混合物を基板に塗布した後、キャッピングユニットおよび/または第2の成分を任意の適切な方法によって濡れた層に加えてもよい。生成した濡れた層にキャッピングユニットおよび/または第2の成分を、均一な様式または不均一な様式で(種々のパターンを含む)塗布してもよく、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の濃度または密度は、濡れた層の上に、所与の幅でキャッピングユニットおよび/または第2の成分の濃度が高い部分と低い部分が交互に並ぶ帯状のパターンを形成するように、特定の領域では小さい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を濡れた層の上面に塗布すると、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の一部分が濡れた層に拡散するか、沈み、それによって、SOFの厚み内でキャッピングユニットおよび/または第2の成分が不均一に分散し、その結果、濡れた層を乾燥SOFに変化するのを促進した後に得られるSOFに、線形または非線形の濃度勾配が得られてもよい。キャッピングユニットおよび/または第2の成分を、堆積した濡れた層の上側表面に加えてもよく、濡れた層の変化を促進すると、キャッピングユニットおよび/または第2の成分が乾燥SOFで不均一に分散したSOFが得られる。濡れた膜の密度、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の密度に依存して、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の大部分が、乾燥SOFの上側半分(基板と反対側)に残ってもよく、または、キャッピングユニットおよび/または第2の成分の大部分が、乾燥SOFの下側半分(基板に隣接する側)に残ってもよい。
【0092】
「促進する」は、分子ビルディングブロックの反応を容易にする任意の適切な技術を指す。また、「促進する」は、乾燥膜を形成するために、任意の液体を除去することも指す。キャッピングユニット、分子ビルディングブロックの反応、液体の除去は、連続して行われてもよく、同時に行われてもよい。濡れた膜から乾燥SOFへの変化を促進させている間に、キャッピングユニットを加えてもよい。「乾燥SOF」は、液体の含有量がSOFの約5重量%未満、または約2重量%未満の、実質的に乾燥したSOFを指す。
【0093】
乾燥SOFまたは乾燥SOFの所与の領域(例えば、SOFの上側4分の1)のキャッピングユニットは、存在するキャッピングユニットおよびセグメントの合計モル数に対し、約0.5モル%以上、または約1モル%〜約40モル%、または約2モル%〜約25モル%の量で存在する。
【0094】
濡れた層から乾燥SOFを形成するのを促進することは、任意の適切な技術によって行われてもよい。濡れた層から乾燥SOFを形成するのを促進することは、典型的には、オーブンでの乾燥、赤外線(IR)などを用いた、温度が40〜350℃、60〜200℃、85〜160℃での熱処理を含む。合計加熱時間は、約4秒〜約24時間、または1分〜120分、または3分〜60分の範囲であってもよい。
【0095】
種々の種類のIRエミッタを用いてもよく、炭素IRエミッタまたは短波IRエミッタに関する例示的な情報を以下の表にまとめている。
【0096】
【表1】
【0097】
濡れた層の堆積物を支えるために、接着性の低い適切な基板を用いる場合、自立型のキャッピングされたSOFを得ることができる。
【0098】
SOF形成プロセス中、SOFを基板として用い、多層SOFを得てもよい。多層SOFの層は、化学的に結合していてもよく、物理的に接触していてもよい。化学的に結合した多層SOFは、基板SOF表面に存在するFgを、第2のSOF層を作成するのに使用される、堆積した濡れた層中に存在する分子ビルディングブロックと反応させることが可能な場合に、生成する。物理的に接触している多層SOFは、互いに化学的に結合していなくてもよい。
【0099】
場合により、SOF基板は、第2のSOF層が化学的に結合しないように、濡れた層を堆積する前に化学的に処理し(表面の反応性を抑え)、物理的に接触した多層SOFを作成してもよい。
【0100】
電子機器でSOFを用いてもよい。
【0101】
電子写真式画像形成体(例えば、感光体)の代表的な構造を図2〜4に示す。これらの画像形成体は、屈曲防止層1、支持基板2、導電性接地板3、電荷遮断層4、接着層5、電荷生成層6、電荷移動層7、オーバーコート層8、アース片9とを備えた状態で提供される。図4において、画像形成層10(電荷生成材料と電荷移動材料の両方を含む)は、別個の電荷生成層6および電荷移動層7の代わりに配置されている。
【0102】
電荷移動性を有するキャッピングされたSOFとしては、多環芳香族環(アントラセン、ピレン、フェナントレン、コロネン)、または窒素を含有するヘテロ環(インドール、カルバゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール、トリアゾール、ヒドラゾン化合物)を含むセグメントが挙げられる。正孔移動性のSOFセグメントとしては、カルバゾール;N−エチルカルバゾール;N−イソプロピルカルバゾール;N−フェニルカルバゾール;テトラフェニルピレン;1−メチルピレン;ペリレン;クリセン;アントラセン;テトラフェン;2−フェニルナフタレン;アゾピレン;1−エチルピレン;アセチルピレン;2,3−ベンゾクリセン;2,4−ベンゾピレン;1,4−ブロモピレンが挙げられる。適切な電子移動性のSOFセグメントとしては、電子受容体(2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン;2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレノン;ジニトロアントラセン;ジニトロアクリデン;テトラシアノピレン;ジニトロアントラキノン;ブチルカルボニルフルオレンマロノニトリル)が挙げられる(米国特許第4,921,769号を参照)。他の正孔移動性のSOFセグメントとしては、アリールアミン(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(アルキルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミンが挙げられ、ここで、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルなどからなる群から選択される(米国特許第4,265,990号を参照)。
【0103】
キャッピングされたSOFの電荷移動層は、
(a)1個のセグメントと、多くのFgとを含む、偏った電荷移動特性を有する複数の分子ビルディングブロックを含む液体を含有する反応混合物を調製し;次いで、
(b)の工程と、
(c)の工程(上述)とによって調製されてもよい。
【0104】
キャッピングユニットを加えることは、上述のように、工程a、b、cのいずれかの間に行ってもよい。キャッピングされたSOFを生成する反応混合物は、広範囲の分子ビルディングブロック保持量を用いてもよい。この保持量は、反応混合物の合計重量を基準として、約2〜約50重量%である。「保持量」は、電荷移動性を有するキャッピングされたSOF反応混合物の分子ビルディングブロック成分を指す。電荷移動性のSOF層の厚みは、約5μm〜約100μm、約10μm〜約70μm、または約10μm〜約40μmである。電荷生成層の厚みを基準とした、電荷移動層の厚みの比率は、約2:1〜200:1に維持されてもよく、400:1程度の大きさに維持されてもよい。
【0105】
本明細書に記載の材料および手順を用い、電荷生成材料および電荷移動性のキャッピングされたSOFを含む単一画像形成層を有する感光体を製造してもよい。単一画像形成層のための分散物の固体含有量は、分散物の重量を基準として、約2重量%〜約30重量%の範囲であってもよい。
【0106】
画像形成層が、電荷生成層と電荷移動層の機能を組み合わせた単一層である場合、この層に含まれる成分の具体的な量は、電荷生成材料(約2重量%から約40重量%まで)と、偏った加えられる機能として電荷移動性を有する分子ビルディングブロック(約20重量%〜約75重量%)である。
【0107】
1つ以上のオーバーコート層8を用いてもよく、この層を利用する場合、電荷生成層または電荷移動層の上に配置される。この層は、電気的に絶縁性であるか、またはわずかに半導体性を有するキャッピングされたSOFを含む。
【0108】
このような保護性のオーバーコート層は、キャッピングユニットと、電荷移動性セグメントを場合により含む複数の分子ビルディングブロックとを含む、キャッピングされたSOFを形成する反応混合物を含む。
【0109】
添加剤は、オーバーコート層中に、オーバーコート層の約0.5〜約40重量%の範囲で存在してもよい。添加剤としては、耐摩耗性をさらに高め、および/または電荷緩和特性を付与することが可能な有機粒子および無機粒子が挙げられる。有機粒子としては、テフロン(登録商標)粉末、カーボンブラック、グラファイト粒子が挙げられる。無機粒子としては、絶縁性および半導体性の金属酸化物粒子、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化スズなどが挙げられる。別の半導体性添加剤は、酸化されたオリゴマー塩であってもよく(米国特許第5,853,906号を参照)、または、酸化されたN,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ビフェニルジアミン塩であってもよい。
【0110】
約2μm〜約15μm、または約3μm〜約8μmのオーバーコート層は、耐ひっかき性および耐摩耗性を付与することに加え、電荷移動による分子の浸出、結晶化、電荷移動層の割れを防ぐのに有効である。
【0111】
画像形成体は、キャッピングされたSOFを表面層(OCLまたはCTL)として含んでいてもよい。この画像形成体は、N,N,N’,N’−テトラ−(メチレンフェニレン)ビフェニル−4,4’−ジアミンと、セグメントとしてN,N,N’,N’−テトラフェニル−ターフェニル−4,4’−ジアミンセグメントとを含む、キャッピングされたSOFであってもよい。このようなキャッピングされたSOFは、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン分子ビルディングブロックから調製されてもよい。また、SOF画像形成体は、N,N,N’,N’−テトラ−(メチレンフェニレン)ビフェニル−4,4’−ジアミンと、セグメントとしてN,N,N’,N’−テトラフェニル−ビフェニル−4,4’−ジアミンセグメントとを含んでいてもよい。画像形成体のSOFは、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンと、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン分子ビルディングブロックとから調製されてもよい。
【0112】
画像形成体は、SOF層を含んでいてもよく(キャッピングされたSOF層であってもよい)、SOF層の厚みは、1〜15マイクロメートルである。このような画像形成体のSOFは、単一層であってもよく、2つ以上の層であってもよい。
【0113】
図5は、基板36、ゲート電極38、ソース電極40、ドレイン電極42、絶縁層34、有機半導体層32で構成される薄膜トランジスタ(TFT)構造30を模式的に示す。
【0114】
半導体層は、キャッピングされたSOFを備えていてもよく、このSOFは、場合により、加えられる機能として半導体性を含んでいてもよい。RFIDタグの任意の成分は、キャッピングされたSOFを含んでいてもよく、例えば、RFIDタグの基板および/またはアンテナは、キャッピングされたSOFを含んでいてもよい。
【0115】
従来の有機発光ダイオード(OLED)構造の任意の成分(基板、アノード、正孔注入層、正孔移動層、電子移動層、カソード層を含む)は、SOFを含んでいてもよい(キャッピングされたSOFであってもよい)。典型的な有機発光デバイスは、1つ以上のSOF(1つ以上がキャッピングされたSOFであってもよい)と、構成要素として、通常は、正孔を注入するアノードとして作用する透明な第1の電極、1つ以上の電子発光性のSOF層を含み、通常は電子を注入するカソードとして作用する発光領域のうち、1つ以上の成分を含んでいてもよい。
【0116】
すべての比率は、他の意味であると示されていない限り、重量基準である。
【0117】
図9は、数種類のキャッピングされたSOFの応力ひずみ曲線を示す。曲線の終点は、キャッピングされたSOFの破断点である。キャッピングされたSOFと、キャッピングされていないSOFとで、破断点が異なることは明らかであり、キャッピングユニットの保持量と、キャッピングユニットの種類とを変えると、破断点が異なることも明らかである。
【0118】
キャッピングされたSOF膜の破断点は(対応するキャッピングされていないSOF組成物に対し)、約1%〜約85%、または約5%から約25%に弱まっている場合がある。
【0119】
キャッピングされたSOF膜の破断点は(対応するキャッピングされていないSOF組成物に対し)、約1%〜約400%、約20%〜約200%、または約50%〜約100%まで高まっている場合がある。
【実施例】
【0120】
実施例1は、2個のビルディングブロック間をエーテル化によって接続する化学を促進するように成分を組み合わせた2型SOFの合成について記載している。酸触媒および加熱作用が存在する状態で、実施例1に記載した方法でSOFを得る。
【0121】
(実施例1)
(作業A)液体を含む反応混合物の調製。以下のものを混合した。ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノール[セグメント=p−キシリル;Fg=ヒドロキシル(−OH);(0.47g、3.4mmol)]、第2のビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=メトキシエーテル(−OCH3);(1.12g、1.7mmol)]、17.9gの1−メトキシ−2−プロパノール。混合物を振り混ぜ、均一溶液が得られるまで、60℃まで加熱した。室温まで冷却したら、溶液を0.45μm PTFE膜で濾過した。濾過した溶液に、酸触媒をp−トルエンスルホン酸の10wt%1−メトキシ−2−プロパノール溶液0.31gとして加え、液体を含む反応混合物を得た。
【0122】
(作業B)反応混合物を濡れた膜として堆積。8milのギャップを有するバードバーを取り付けた等速ドローダウン式コーティング機を用い、反応混合物を、金属化した(TiZr)MYLAR(商標)基板の反射側に塗布した。
【0123】
(作業C)濡れた膜を乾燥SOFに変化させるのを促進すること。濡れた層を支えている金属化したMYLAR(商標)基板を、あらかじめ130℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業によって、厚みが約3〜6μmの範囲のSOFを得て、これを基板から1個の自立型SOFとして剥離してもよい。SOFの色は緑色であった。このSOFの一部分のフーリエ変換赤外スペクトルを図6に示している。
【0124】
実施例1で調製したSOFが、SOF内でパターン化された分子ビルディングブロックを用いて得られたセグメントを含むことを示すために、3種類のコントロール実験を行った。すなわち、実施例1の作業Aに記載したのと同じ手順を用いるが、それぞれの3種類の配合物を以下のように変更し、3種類の液体反応混合物を調製した。
・(コントロール反応混合物1;実施例2)ビルディングブロックであるベンゼン−1,4−ジメタノールを含まなかった。
・(コントロール反応混合物2;実施例3)ビルディングブロックであるN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミンを含まなかった。
・(コントロール反応混合物3;実施例4)触媒であるp−トルエンスルホン酸を含まなかった。
【0125】
それぞれの3種類のコントロール反応混合物について、実施例1に概略を説明した作業BおよびCを行った。しかし、すべての場合において、SOFは生成せず、単に、基板表面にビルディングブロックが析出した。これらの結果から、ビルディングブロックは、上に述べた処理条件ではビルディングブロック自体と反応することはできず、プロモーター(p−トルエンスルホン酸)が存在しない状態では、ビルディングブロックが反応することもできないという結果が得られた。したがって、実施例1に記載した活性は、ビルディングブロック(ベンゼン−1,4−ジメタノールおよびN4,N4,N4’,N4’−テトラキス(4−(メトキシメチル)フェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン)が、互いに反応するように促進された場合にのみ反応することが可能な活性である。パターン化されたSOFは、セグメントであるp−キシリルおよびN4,N4,N4’,N4’−テトラ−p−トリルビフェニル−4,4’−ジアミンが互いに接続した場合にのみ生じる。フーリエ変換赤外スペクトルを、コントロール実験の生成物と比較すると、出発物質のFgが存在しない(特に、ベンゼン−1,4−ジメタノールに由来するヒドロキシルバンドが存在しない)ことが示され、さらに、上述のように処理されたセグメント間の接続性をさらに支持するものである。また、SOFのスペクトルにヒドロキシルバンドがまったく存在しないことは、非常に高い割合でパターン化されていることを示している。
【0126】
(実施例6)
以下の表1からわかるように、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン)およびN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンの特定のSOFオーバーコート層組成物は、電荷をバイアスしたロール(BCR)によって帯電する感光体の性質を向上させた。さらに、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン)およびN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンを用いると、正孔移動分子の保持量が90%より大きなSOFオーバーコート層を調製することができ、6マイクロメートルよりも大きな厚みのオーバーコート層で、優れた電気特性が得られた(低Vr)。この実験から、2個の分子ビルディングブロックの比率を変えることによって、耐摩耗性を調節することが可能なことが示された。
【0127】
【表2】
【0128】
この表は、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン)分子ビルディングブロックから調製されたSOF感光体オーバーコート層組成物が、BCRによる帯電系のための感光体オーバーコート層組成物として有望であることが示されていることを示している。このSOFオーバーコート層設計物は、関連する架橋したポリマー設計物よりもすぐれた電気的性能を有している(Vr=90V 対 209V)。さらに、このSOFオーバーコート層設計物の摩耗速度は、感光体デバイスの電気的性能に悪影響を与えることなく、単にHTM比を変えることによって調整することができる(64〜34nm/kサイクル)。
【0129】
N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンおよびN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ターフェニル−4,4’−ジアミン(またはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(3−ヒドロキシフェニル)−ビフェニル−4,4’−ジアミン)分子ビルディングブロックから調製したSOF感光体オーバーコート層(OCL)組成物は、BCRによる帯電系のためのOCL候補物質として有望であることが示された。HTM保持率が90%を超えるSOF感光体層(CTLおよび/またはOCL)は、層が10μmより厚い場合に、優れた電気的特性を示した(低Vr、安定な周期)。
【0130】
(実施例14)
(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);表2に列挙した量]、表2に示したようなキャッピングユニット、試験10を除く(キャッピングユニットを含まず;添加剤はSilclean 3700、触媒は、Nacure XP−357およびDowanolであった。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、65℃で60分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)反応混合物をアルミニウム基板に塗布した。(作業C)濡れた層を支えているアルミニウム基板を、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機に移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが4〜10μmの範囲の膜を得た。
【0131】
【表3−1】
【0132】
【表3−2】
【0133】
【表3−3】
【0134】
上述の配合物はすべて、目で観察して、ピンホールを含まないSOFを製造していた。SOFのFT−IR分光法によって、膜で検出される−OHバンドが、かなり大きく弱まっているか、または完全になくなっているため、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンビルディングブロックとキャッピングユニットとの接続が、首尾よく、かつ効率的に起こっていることが示された。
【0135】
キャッピングされたSOFの熱安定性は、キャッピングユニットを含まないN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンSOFの熱安定性に匹敵している。図8は、400℃まで分解が起こらないことを示しており、これは、高度に結合した材料であることの指標である。
【0136】
膜の機械特性は、キャッピングユニットを導入することによって大きく影響を受けた。キャッピングされたSOF膜の機械特性を、上述のキャッピングされたSOF膜および他のキャッピングされたSOF膜の自立型の膜に関する応力ひずみデータを集めることによって評価した(図9)。一般的に、キャッピングユニットを含むSOF膜は、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンのみで構築された純粋なSOF膜と比較して、靱性が大きくなっており、応力ひずみ曲線が線形ではなくなっていた。上述の機械データから、キャッピングユニットをSOFに導入することによって、微視的なレベルでの変化が起こり、膜の巨視的な特性に直接影響を及ぼしていることは明らかである。
【0137】
(実施例15)
(作業A)以下のものを混合した。ビルディングブロックであるN,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン[セグメント=N,N,N’,N’−テトラ−(p−トリル)ビフェニル−4,4’−ジアミン;Fg=ヒドロキシ(−OH);表3〜6に列挙した量]、キャッピングユニット、添加剤であるSilclean 3700、触媒であるNacure XP−357およびDowanol(表3〜6で指定したように)。この混合物をローリングウェーブ式回転機で10分間混合し、次いで、均一溶液が得られるまで、65℃で60分間加熱した。この混合物を回転機にいれておき、室温まで冷却した。溶液を1μm PTFE膜で濾過した。(作業B)カップコーティング機(Tsukiageコーティング)を用い、引っ張り速度485mm/分で、反応混合物を市販の30mmドラム感光体に塗布した。(作業C)濡れた層を支えている感光体ドラムを、あらかじめ140℃まで加熱しておいた能動的に排気する乾燥機にすばやく移し、40分間放置して加熱した。これらの作業から、厚みが6〜7μmの範囲の膜を得た。
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
上述の配合物はすべて、目で観察して、ピンホールを含まないSOFを製造していた。SOFのFT−IR分光法によって、膜で検出される−OHバンドが、かなり大きく弱まっているか、または完全になくなっているため、N,N,N’,N’−テトラキス−[(4−ヒドロキシメチル)フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミンビルディングブロックとキャッピングユニットとの接続が、首尾よく、かつ効率的に起こっていることが示された。図10は、キャッピングされたSOFオーバーコート層の光伝導性を示す光放電曲線(PIDC)である(電圧は75ms(露光量 対 測定値))。このデバイスの電気特性は優れている(低Vr、サイクルアップなし)。それぞれ、図10および図11のPIDCおよび繰り返しデータを参照。
【0143】
キャッピングされたSOF OCL(両方の種類のキャッピングユニット)のBCR摩耗データは、キャッピングユニットの保持量が増えると摩耗速度が大きくなることを示している(表7、以下)。感光体が、電荷をバイアスしたロール(BCR)を用いて帯電する場合、従来の電荷移動層は、100キロサイクルあたり、8〜10μm以上のすばやく、ほぼ壊滅的な摩耗速度で摩耗を受ける。ACでバイアスした帯電ロールを用い、感光表面を帯電することは、低速(例えば、40ppmまでの速度)で、画像形成デバイス(例えば、複写機および印刷機)で画像を形成するために、当該技術分野で従来から行われている。しかし、AC流から発生したコロナをBCRに適用すると、感光体の上部層で分解が起こる。分解した材料は、クリーニングブレードによって簡単に除去することができる。印刷サイクル中にこのようなプロセスを繰り返すと、感光体の上部層がすばやく摩耗する。
【0144】
摩耗速度は、感光体の寿命を制限する顕著な特性であり、静電写真式デバイスにおける感光体の交換は、非常に高価である。したがって、特に、AC BCRを用いて帯電する低速の複写機および印刷機に典型的に使用される小さい直径を有する有機感光体ドラムに関して寿命の長い感光体を得るために、感光体の摩耗度を制御することは非常に重要である。このような直径の小さなドラムでは、100キロサイクルは、10,000回の印刷と言い換えられる。CTLの摩耗によって、デバイスの感度がかなり低下し、このことは、典型的に露光量を制御しない業務用複写機および印刷機では大きな問題である。それに加え、感光体の上部層がすばやく摩耗するには、トナーの転写品質および複写品質を良好に保つために、感光体表面に残る残骸を良好に洗浄することを必要とする。保持量の多い場合と少ない場合とで、摩耗度および摩耗の違いは小さく、このことは、キャッピングユニットの保持量をさらに増やすことによって摩耗速度が上げるのにかなりの自由度があることを示しており、これはまた、必要なHTMの量(および費用)を下げるであろう。
【0145】
【表8】
【0146】
印刷試験は、なんら印刷の品質に問題がなく、オーバーコーティングされていないP/Rデバイスと本質的に同一であることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則的な構造の有機膜(SOF)であって、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格(COF)として整列したものを含み、このSOFの骨格が、リンカー基を介してSOFの骨格に結合したキャッピングユニットを含む、SOF。
【請求項2】
前記キャッピングユニットが、前記SOFの前記セグメントの少なくとも1%に結合している、請求項1に記載のSOF。
【請求項3】
前記キャッピングユニットが、どのセグメントにも結合していない化学部分またはFgを含む、請求項1に記載のSOF。
【請求項4】
前記キャッピングユニットが、前記SOFのある特性に偏った特性または固有の特性を高める、請求項1に記載のSOF。
【請求項5】
前記SOFが、実質的にピンホールを含まない膜である、請求項1に記載のSOF。
【請求項6】
前記SOFがコンポジットSOFである、請求項1に記載のSOF。
【請求項7】
前記SOFの破断点が、約80%〜約200%高まっている、請求項1に記載のSOF。
【請求項8】
キャッピングされた規則的な構造の有機膜を調製するプロセスであって、
(a)
それぞれ1個のセグメントと多くのFgとを含む複数の分子ビルディングブロックと、
キャッピングユニット分子とを含む、
液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)前記反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;
(c)前記濡れた膜の変化を促進し、SOF内に結合したキャッピングユニットを含む、乾燥したSOFを形成することとを含む、プロセス。
【請求項9】
前記キャッピングユニット分子が、前記濡れた膜の変化を促進して乾燥したSOFを形成する間に、リンカーを介して前記キャッピングユニット分子を前記セグメントに接続する化学反応に関与するような1個の官能基を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記キャッピングユニット分子が、前記濡れた膜の変化を促進して乾燥したSOFを形成する間に、前記キャッピングユニット分子を前記セグメントに接続する化学反応に関与しない1個以上の化学部分またはFgを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項1】
規則的な構造の有機膜(SOF)であって、複数のセグメントと、複数のリンカーとが共有結合による有機骨格(COF)として整列したものを含み、このSOFの骨格が、リンカー基を介してSOFの骨格に結合したキャッピングユニットを含む、SOF。
【請求項2】
前記キャッピングユニットが、前記SOFの前記セグメントの少なくとも1%に結合している、請求項1に記載のSOF。
【請求項3】
前記キャッピングユニットが、どのセグメントにも結合していない化学部分またはFgを含む、請求項1に記載のSOF。
【請求項4】
前記キャッピングユニットが、前記SOFのある特性に偏った特性または固有の特性を高める、請求項1に記載のSOF。
【請求項5】
前記SOFが、実質的にピンホールを含まない膜である、請求項1に記載のSOF。
【請求項6】
前記SOFがコンポジットSOFである、請求項1に記載のSOF。
【請求項7】
前記SOFの破断点が、約80%〜約200%高まっている、請求項1に記載のSOF。
【請求項8】
キャッピングされた規則的な構造の有機膜を調製するプロセスであって、
(a)
それぞれ1個のセグメントと多くのFgとを含む複数の分子ビルディングブロックと、
キャッピングユニット分子とを含む、
液体を含有する反応混合物を調製することと;
(b)前記反応混合物を濡れた膜として堆積させることと;
(c)前記濡れた膜の変化を促進し、SOF内に結合したキャッピングユニットを含む、乾燥したSOFを形成することとを含む、プロセス。
【請求項9】
前記キャッピングユニット分子が、前記濡れた膜の変化を促進して乾燥したSOFを形成する間に、リンカーを介して前記キャッピングユニット分子を前記セグメントに接続する化学反応に関与するような1個の官能基を含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記キャッピングユニット分子が、前記濡れた膜の変化を促進して乾燥したSOFを形成する間に、前記キャッピングユニット分子を前記セグメントに接続する化学反応に関与しない1個以上の化学部分またはFgを含む、請求項8に記載のプロセス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−31406(P2012−31406A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153212(P2011−153212)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】
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