説明

キャップ付き容器

【課題】容器本体内部の気密性を適切に保持することが可能なキャップ付き容器を提供する。
【解決手段】容器本体2と、筒状胴部3、筒状胴部に一体形成した頂板14、筒状胴部の切り欠き部16、切り欠き部を介して筒状胴部から露出するプッシュボタン19を有し、筒状胴部と容器本体の間に位置する弾性リング体4、及び弾性リング体と一体形成かつ筒状胴部に一体的に組み付けられ、頂板に被さる天板部5からなるキャップ6と、弾性リング体と容器本体の間に設けられキャップを上昇させる迫り上げ手段と、筒状胴部と容器本体の間に設けられキャップを容器本体に離脱自在に保持する環状突起21及び係合片23と、弾性リング体と容器本体の間に設けられ弾性リング体を容器本体に離脱自在に嵌合させる環状突起及び嵌合片24と、筒状胴部内に設けられ弾性リング体の下端面を下支えする支持部12とを備え、支持部を介して、筒状胴部と頂板が一体的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内部の気密性を適切に保持することが可能なキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
キャップ付き容器としては、特許文献1が知られている。特許文献1では、容器に対してキャップ本体を弾性嵌合により上下方向に着脱自在に装着し、該キャップ本体内に径方向に弾性変形するリング体を設け、該リング体外面に凸部を相対向して形成し、該凸部を該キャップ本体より露出させ、該リング体下端と該容器との当接面の少なくとも一方を傾斜面に形成し、該凸部を押圧して該リング体を径方向に撓めると該傾斜面によって該リング体に該キャップ本体を上昇させる力が作用するように構成したキャップ付き容器において、上記リング体と上記容器とが当接する上記傾斜面を挟んで、その内側に、内容物を抽出するための上記容器の開口筒部と、上記キャップ本体の天井部に設けられて上記開口筒部を封止する封止部材とを配設するとともに、その外側に、上記キャップ本体と上記容器との弾性嵌合部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−6101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は先に、特願2009−265588を出願している(以下、「先願」という)。先願のキャップ付き容器は、キャップ本体の天井部と容器の開口筒部の外周の間に設けられ、キャップの上昇で離脱可能な係合部と、キャップ本体に組みつけられた弾性リング体と容器開口筒部の外周の間に設けられ、該弾性リング体の径方向への弾性変形によって離脱可能な嵌合部とを備え、すなわち該嵌合部が、キャップを上昇させて係合部を離脱する上下方向の力に対して、垂直方向の力を加えなくては離脱しない仕組みになっているため、弾性リング体を弾性変形させることなくキャップだけを上昇させるような力を加えても、容器内部の気密性はある程度保持されるという特長をもっている。
【0005】
しかしながら、先願のキャップ付き容器において、キャップ本体と弾性リング体は、弾性リング体をキャップ本体胴部の内周に沿うように配し、弾性リング体外周の対向位置に設けられた2つの凸状プッシュボタンを、キャップ本体胴部に設けられた対向する2つの通孔から露出させることで組み付けられ、このとき上記嵌合部を構成する嵌合突起が、弾性リング体の該凸状プッシュボタンと直交する位置に形成される。これはプッシュボタンを径方向に押圧することで弾性リング体を変形させ、上記嵌合突起を径方向で外側に水平移動させるために必要な位置関係であるが、例えばキャップ本体だけを上方に強く引っ張ったり、容器の内圧が高まり内部からキャップを押し上げようとする力が強く働くと、キャップ本体に2つの通孔を介して組み付けられた上記プッシュボタンを支点に、弾性リング体が2つの対向する嵌合部にかけて下方に撓るように変形することがある。弾性リング体が上下方向に撓ると、係合部の解除強度は弱めに設定されているため、上記嵌合部を離脱しなくてもキャップ本体が上下移動可能となり、その結果、キャップ本体内部の天井部に設けられた封止部材と容器開口筒部との密着が弱まって、容器内部の気密性が失われるという現象が、例えば気圧変化の大きい空輸中に生じることが、種々の検討より明らかになった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、容器本体内部の気密性を強固に保持することが可能なキャップ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるキャップ付き容器は、開口部が上端に形成され、内容物を内部に収容する容器本体と、筒状胴部、該筒状胴部に一体的に形成され、上記容器本体に上方から装着した際に、上記開口部を覆う頂板、該筒状胴部に互いに向かい合わせて一対形成される切り欠き部もしくは通孔、該切り欠き部もしくは通孔を介して該筒状胴部外方へ露出されるプッシュボタンを有し、該筒状胴部と上記容器本体との間に位置されて、該プッシュボタンの押圧操作で径方向に弾性変形される弾性リング体、並びに該弾性リング体と一体的に形成されかつ該筒状胴部に一体的に組み付けられ、該頂板に覆い被さる天板部から構成されるキャップと、上記天板部の上記弾性リング体と上記容器本体との間に設けられ、これら弾性リング体及び容器本体の少なくともいずれか一方に下方へ向かって拡張形成された錐体面を有して、該弾性リング体がその弾性変形に伴って当該錐体面に沿って迫り上がることにより、上記キャップを上昇させる迫り上げ手段と、上記キャップの上記筒状胴部と上記容器本体との間に設けられ、係合状態で該キャップを該容器本体に保持すると共に、当該キャップの上昇で該キャップを該容器本体から離脱させる係合部と、上記キャップの上記弾性リング体と上記容器本体との間に設けられ、該弾性リング体を該容器本体に嵌合させると共に、該弾性リング体をその弾性変形で該容器本体から離脱させる嵌合部と、上記キャップの上記筒状胴部内に設けられ、上記弾性リング体が常に水平に保たれるように、該弾性リング体の下端面を下支えする支持部とを備え、該支持部を介して、上記筒状胴部と上記頂板が一体的に形成されることを特徴とする。
【0008】
前記キャップは、前記支持部を有する前記筒状胴部を含む第1部品と、前記弾性リング体を有する前記天板部を含む第2部品の2部品から構成され、これら2部品は、上記弾性リング体の下端部が上記支持部上に位置するように、一体的に組み付けられることを特徴とする。
【0009】
前記キャップは、前記支持部を有する前記筒状胴部と、前記弾性リング体と、前記天板部の3部品から構成され、上記弾性リング体は、これが上記筒状胴部の上記支持部に接触した状態で、上記キャップに一体的に組み付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるキャップ付き容器にあっては、容器本体内部の気密性を適切に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるキャップ付き容器の好適な一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示したキャップ付き容器を下方から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示したキャップ付き容器を構成するキャップの天板部、筒状胴部、並びに容器本体を説明するための説明図である。
【図4】図1に示したキャップ付き容器のキャップの部分底面図である。
【図5】図1中、A−A線矢視断面図である。
【図6】図1中、B−B線矢視断面図である。
【図7】本発明にかかるキャップ付き容器の変形例を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるキャップ付き容器の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態にかかるキャップ付き容器の全体斜視図、図2はキャップ付き容器を下方から見た分解斜視図、図3(a)は弾性リング体を備えるキャップの天板部の側面図、(b)は天板部の側断面図、(c)はキャップの筒状胴部の側面図、(d)は筒状胴部の側断面図、(e)は容器本体の側面図、図4はキャップの部分底面図、図5は図1中、A−A線矢視断面図、図6は図1中、B−B線矢視断面図である。
【0013】
キャップ付き容器1は主に、内容物を内部に収容する容器本体2と、筒状胴部3及び弾性リング体4を有する天板部5から構成され、容器本体2に上方から装着されるキャップ6とから構成される。
【0014】
容器本体2は、合成樹脂、金属もしくはガラスを素材として、ジャー形態または中空筒形態で形成される。容器本体2は、上から下へ順に、小径の首部7と、下方へ向かって拡張形成された錐体面8と、大径の胴体部9とを備える。図示例にあっては、平面外形輪郭が円形状の容器本体2が示されているが、多角形状や楕円形状であってもよい。
【0015】
首部7の上端には、内容物を取り出すための開口部10が形成される。錐体面8は、開口部10下に位置するように、首部7の下方に形成される。錐体面8は、上方の外径が小さく、下方の外径が大きく形成されて、下方へ向かって外向きに傾斜するリング状のスロープを形成する。図示例では、錐体面8は、容器本体2の周方向全周に亘って形成されている。
【0016】
キャップ6は、合成樹脂製もしくは金属製で形成され、開口部10を封止するために容器本体2に装着される。図示例にあっては、平面外形輪郭が円形状のキャップ6が示されているが、容器本体2に合わせて、多角形状や楕円形状に形成してもよい。
【0017】
筒状胴部3は、中空円筒体状の外筒体11と、外筒体11に支持部12を介して連結されて外筒体11内部に設けられ、容器本体2の首部7を取り囲む内筒体13と、内筒体13の上部開口を封鎖すると共に首部5の開口部10に面する頂板14とから構成される。
【0018】
頂板14下面には、開口部10に密着されるプレート状または開口部10の径に合わせた凹凸形状のパッキン15が設けられる。外筒体11には、その下端面の一部を直径方向に互いに向かい合わせて切り欠いた、一対の切り欠き部16が形成される。切り欠き部16については、これに代えて、図7に変形例として示すように、外筒体11に互いに向かい合わせた通孔50として形成しても構わない。天板部5の外周縁5aが外筒体11の上端周溝17に嵌合されることにより、天板部5が筒状胴部3にその頂板14を覆って一体的に組み付けられる。
【0019】
天板部5には、外筒体11の一対の切り欠き部16または通孔50位置に合致させて、一対の可撓片18が垂下形成され、これら可撓片18に掛け回すようにして弾性変形自在な弾性リング体4が形成され、これにより弾性リング体4は天板部5に一体的に形成される。弾性リング体4は、平面外形輪郭が円形状に形成される。この弾性リング体4も、円形状に限らず、多角形状や楕円形状に形成してもよい。弾性リング体4は、復原自在に多様に変形可能で、いずれかの直径方向から押圧されると、当該押圧方向とほぼ直交する直径方向へ弾性変形する。
【0020】
弾性リング体4は、内筒体13を挟んで容器本体2と外筒体11との間に位置される。弾性リング体4の外周面には、可撓片18と連続するようにして、一対のプッシュボタン19が外方に向いて一体的に形成される。ただし、弾性リング体4は必ずしも天板部5と一体的に形成されていなくてもよく、可撓片18がなく、天板部5と弾性リング体4が別体の場合は、先に弾性リング体4を筒状胴部3の外筒体11と内筒体13の間に配し、その後、天板部5を外筒体11の上端周溝17に嵌合したり、接着剤や超音波溶着などにより嵌着したりしてもよい。
【0021】
すなわち、キャップ6は、支持部12を有する筒状胴部3を含む第1部品と、弾性リング体4を有する天板部5を含む第2部品の2部品から構成され、これら2部品は、弾性リング体4の下端部が支持部12上に位置するように、一体的に組み付けられる場合や、支持部12を有する筒状胴部3と、弾性リング体4と、天板部5の3部品から構成され、弾性リング体4は、これが筒状胴部3の支持部12に接触した状態で、キャップ6に一体的に組み付けられる場合などがある。
【0022】
プッシュボタン19は、天板部5を筒状胴部3に組み付けた際、内筒体13に形成された逃がし孔20に挿通され、これにより切り欠き部16または通孔50を介して、キャップ6外方へ露出される。プッシュボタン19は、キャップ6外側からキャップ6内方へ向けて押圧操作され、これにより弾性リング体4を弾性変形させる。
【0023】
切り欠き部16は、上述したように、切り欠きではなく外筒体11に互いに向かい合わせた通孔50としても構わないが、通孔50とした場合は、例えばプッシュボタン19の大きさが、これを押圧する指より小さいとき、プッシュボタン19が外筒体11の外壁面と面一になった時点でさらに押し込むことができなくなる。しかし、切り欠き部16のように外筒体11の一部が欠如していれば、プッシュボタン19を外筒体11の壁面よりさらに内方へ押圧することが可能となり、押圧操作性を向上することができると共に、弾性リング体4の可動範囲を広げられるから、切り欠き部16とすることが好ましい。
【0024】
弾性リング体4に形成されたプッシュボタン6の下端は、錐体面8上に当接される。そして、弾性リング体4、具体的にはプッシュボタン6と容器本体2との間に位置させて、これら弾性リング体4と錐体面8とにより、キャップ6を上昇させる迫り上げ手段が設けられる。
【0025】
すなわち、プッシュボタン19で弾性リング体4を弾性変形させると、この弾性変形に伴って、弾性リング体4はプッシュボタン19と共に、錐体面8に沿って下方から上方へ向かって迫り上がり、これに伴って天板部5を介して弾性リング体4及びプッシュボタン19が組み付けられたキャップ6が上方へ迫り上がるようになっている。
【0026】
本実施形態にあっては、錐体面8は、容器本体2にのみ形成されているが、弾性リング体4のプッシュボタン19の内側にも互いに向かい合うようにして、錐体面を形成してもよい。また、プッシュボタン19にのみ錐体面を形成し、容器本体2にはこの錐体面に当接する角付けなどを施して迫り上げ手段を構成するようにしてもよい。
【0027】
キャップ6の内筒体13と容器本体2との間には、係合部が設けられる。係合部は、容器本体2の首部7にその全周に亘って形成された環状突起21と、内筒体13にスリット22を介して形成され、環状突起21に係脱自在に係合する弾性変形可能な係合片23とから構成される。係合片23は、プッシュボタン19位置と、後述する弾性リング体4の嵌合突起24位置を避けるなど、内筒体13の周方向に適宜間隔で複数形成される。
【0028】
係合部は、キャップ6を容器本体2に装着すると、係合片23が環状突起21に係合し、この係合状態でキャップ6を容器本体2の首部7に保持する。係合部は、キャップ6の上昇作用で係合片23が環状突起21から離脱し、これによりキャップ6を容器本体2から離脱させる。
【0029】
キャップ6の弾性リング体4と容器本体2との間には、嵌合部が設けられる。嵌合部は、係合片23が係合する環状突起21と、弾性リング体4の内周面にその径方向内方へ向けて形成され、内筒体13に形成された窓孔25を介して、環状突起21に嵌脱自在に嵌合する嵌合片24とから構成される。嵌合片24は、プッシュボタン19及び係合片23位置を避けて内筒体13に形成される窓孔25位置に合致させて設けられる。
【0030】
嵌合部は、キャップ6を容器本体2に装着すると、係合部の係合と共に、嵌合片24が環状突起21に嵌合し、この嵌合状態で弾性リング体4を容器本体2に嵌着させ、従ってキャップ6を容器本体2に嵌着させる。
【0031】
嵌合部は、弾性リング体4が弾性変形されると、嵌合片24が首部7の径方向外方へ移動して環状突起21から離脱し、これにより弾性リング体4は容器本体2から離脱する。従って、プッシュボタン19で弾性リング体4を弾性変形させて嵌合部を離脱させることにより、キャップ6が上昇されるようになっている。
【0032】
嵌合部の嵌合強度と係合部の係合強度について説明すると、嵌合部は、嵌合片24の弾性作用ではなく、弾性リング体4の弾性変形作用で離脱し、他方、係合部は、弾性変形可能な係合片23の弾性変形作用で離脱するようになっていて、キャップ6の浮き上がりに対して、嵌合部の解除強度は、係合部の解除強度よりも大きくなっている。係合部の解除強度は弾性リング体4に押圧を加えたときにキャップ6が容易に浮き上がりスムーズに離脱する強度がよい。ただし解除強度が弱すぎると、キャップ6と容器本体2の嵌合は、プッシュボタン19に形成した嵌合片24だけに依存することになる。嵌合片24はプッシュボタン19に直交する2箇所が好ましいが、それだけではキャップ6が容器本体2に対して傾き易く、容易に離脱しなくても安定的に気密性を保持することはできないため、それを踏まえて解除強度を調整する必要がある。
【0033】
嵌合部の解除強度はプッシュボタン19に押圧を掛けずにキャップ6のみを上方に引っ張っても、係合部の不意の離脱を防止するためにできる限り離脱せず、しかしプッシュボタン19に押圧を掛け弾性リング体4を変形させると容易に離脱する強度であることが好ましい。これらの強度調整は、係合片23と環状突起21、あるいは嵌合片24と環状突起21の掛かり量や接触傾斜角の調整によってなされる。
【0034】
より具体的には、係合部の解除強度は1N〜15N、嵌合部の解除強度は弾性リング体4を径方向に故意に弾性変形させない状態で10N以上であることが好ましい。
【0035】
係合部と嵌合部の解除強度をより明確に区別するために、容器本体2に2本の環状突起21を別々に形成し、それぞれの突起の長さや傾斜角を変えてもよい。
【0036】
筒状胴部3の外筒体11と内筒体13を繋ぐ支持部12は、これを介して頂板14と筒状胴部3を一体的に形成したキャップ6を、容器本体2に装着した状態で、弾性リング体4を下支えするように、弾性リング体4の下端面が接触する位置に設けられる。支持部12が弾性リング体4と適正に接触していないと、キャップ6を容器本体2に装着した状態で、プッシュボタン19を介さずにこれを離脱するような力が加わると、その力は筒状胴部3から天板部5に形成された2つの可撓片18を介して、弾性リング体4へ伝えられる。弾性リング体4上では、容器本体2との嵌合を保持する2つの嵌合片24が、可撓片18と互いに直交する位置に形成されているため、もともと弾性変形可能に形成された弾性リング体4は、これに作用する上記力によって上下方向に撓りを生じる。すると嵌合部は保持されたまま解除強度の弱い係合部のみが僅かに離れ、容器本体2内部の気密が低下することになる。支持部12が弾性リング体4と接触していれば、キャップ6を容器本体2からに離脱するような力が加わると、その力は筒状胴部3から可撓片18を介さず、支持部12を通して弾性リング体4全体へ伝えられる。そして、支持部12は弾性リング体4を下支えしているため、弾性リング体4が撓ることはなく、したがって容器本体2内部の気密性を高度に保持することができる。
【0037】
次に、本実施形態にかかるキャップ付き容器1の作用について説明する。まず、キャップ6を組み立てる際には、筒状胴部3の上方から天板部5を押し込み、天板部5の外周縁5aを外筒体11の上端周溝17に嵌合させ、これにより筒状胴部3に天板部5を一体的に組み付ける。
【0038】
押し込み操作の際、天板部5の弾性リング体4は、筒状胴部3の外筒体11と内筒体13との間に位置され、プッシュボタン19が内筒体13に形成された逃がし孔20を介して切り欠き部16または通孔50に嵌まり込むと共に、嵌合片24が内筒体13の窓孔25に面して位置することになる。天板部5と筒状胴部3を一体化したキャップ6内部には、首部7周りに、プッシュボタン19、係合片23及び嵌合片24が適宜に配列される。またこのとき、弾性リング体4の下端部は、筒状胴部3の外筒体11と内筒体13を繋ぐ支持部12に常に接触した状態で下支えされる。
【0039】
キャップ6を容器本体2に装着するときには、容器本体2上方からキャップ6を被せて押し下げる。キャップ6を押し下げると、係合部の係合片23が弾性変形して環状突起21の下側に係合すると共に、弾性リング体4が弾性変形して嵌合片24が環状突起21の下側に嵌合する。
【0040】
係合部の係合により、キャップ6は容器本体2に水平に保持され、嵌合部の嵌合により、弾性リング体4を介してキャップ6が容器本体2に嵌着される。そして、キャップ6に、弾性リング体4を介して設けられる嵌合片24により、キャップ6のパッキン15が首部7の開口部10に気密に密着保持されて、容器本体2内の気密性が保持される。
【0041】
容器本体2に装着したキャップ6を取り外す際には、片方の手指で一対のプッシュボタン19を両側から挟んで、キャップ6外側からキャップ6内方へ向けて押圧する。プッシュボタン19を押圧すると、弾性リング体4が内筒体13と外筒体11との間で弾性変形する。弾性変形された弾性リング体4は、その嵌合片24が容器本体2の環状突起21から後退して嵌合部が離脱し、この離脱と同時にプッシュボタン19と共に、錐体面8に沿って迫り上がり始める。
【0042】
迫り上がり始めると、キャップ6が上昇し始めて、キャップ6の係合片23が弾性変形しつつ容器本体2の環状突起21を乗り越えて係合部が離脱する。係合部が離脱するとその後も、キャップ6が上昇して、容器本体2から取り外される。キャップ6を取り外した後、プッシュボタン19から手指を離せば、弾性リング体4が弾性復原して、プッシュボタン19は押圧操作前の位置に復原する。
【0043】
本実施形態のキャップ付き容器1(実施例容器)と、比較例として実施例容器から支持部12だけを除去した比較容器1と、比較容器1からさらに弾性リング体4の嵌合片24を除去した比較容器2を用意し、それぞれの容器内部に30mLの水を入れ、キャップをして横に倒した状態で減圧チャンバーに静置し、減圧下での気密性を比較した。
【0044】
結果は表1に示す通り、比較容器2は−45mmHg以上ですべて水漏れし、比較容器1は−250mmHg以上でいずれも水漏れしたのに対し、実施例容器は−500mmHgを超えても水漏れしなかった。このように弾性リング体4に嵌合片24をもつ比較容器1は、係止部のみでキャッピングされる比較容器2に比べ明らかに気密性が優れているが、そこに支持部12を加えた実施例容器は、比較容器1よりも気密性がさらに向上した容器であることが実証された。
【0045】
【表1】

【0046】
以上説明した本実施形態にかかるキャップ付き容器1にあっては、弾性リング体4を下支えするように、弾性リング体4の下端面が接触する位置に設けられ、筒状胴部3の外筒体11と内筒体13を繋ぐ支持部12により、キャップ6において筒状胴部3と天板部5の弾性リング体4とを緊密に一体化することができ、弾性リング体4に不均一な力が加わっても撓りが生じることなく、キャップ6で開口部10を気密に封止することができて、容器本体2の気密性を向上することができる。
【0047】
従って、本実施形態にかかるキャップ付き容器1は、容器本体2に収容した揮発性内容物による内圧上昇や、キャップ6だけを持ってキャップ付き容器1を持ち上げる動作などによって、キャップ6が容器本体2に対し浮き上がることを阻止することができ、これによりシール切れを防いで、容器本体2内部の気密性を常時適切に保つことができる。 また、天板部5を筒状胴部3に上方から組み付けるだけでキャップ6を完成することができるので、簡単に組み立てることができ、生産性を向上することができる。
【0048】
さらに、弾性リング体4は可撓片18を介して天板部5に固定され、支持部12によっても下支えされているため、先願のキャップ付き容器のように、プッシュボタンをキャップ胴部に設けた通孔に通すことで、弾性リング体とキャップとを組み付けたり、該プッシュボタンを、最低でも弾性リング体を弾性変形させるためのストローク分、キャップ胴部よりも出っ張らせる必要はなく、プッシュボタン19の周辺は、切り欠き状にしたり逃がしを形成するなど、指で押圧を掛け易い自由な形状にすることができる。
【0049】
上記実施形態では、迫り上げ手段を構成する錐体面8を首部7下に形成する場合を例示して説明したが、錐体面8を開口部10周りに形成し、係合部や嵌合部を構成する環状突起21が形成される首部相当の筒体面を錐体面8下に形成するようにしてもよい。
【0050】
本実施形態にかかるキャップ付き容器1はいずれも、上下方向にキャップ6の脱着が可能であって、容器本体2の開閉操作をきわめて簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1 キャップ付き容器
2 容器本体
3 筒状胴部
4 弾性リング体
5 天板部
6 キャップ
8 錐体面
10 開口部
12 支持部
16 切り欠き部
19 プッシュボタン
21 環状突起
23 係合片
24 嵌合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が上端に形成され、内容物を内部に収容する容器本体と、
筒状胴部、該筒状胴部に一体的に形成され、上記容器本体に上方から装着した際に、上記開口部を覆う頂板、該筒状胴部に互いに向かい合わせて一対形成される切り欠き部もしくは通孔、該切り欠き部もしくは通孔を介して該筒状胴部外方へ露出されるプッシュボタンを有し、該筒状胴部と上記容器本体との間に位置されて、該プッシュボタンの押圧操作で径方向に弾性変形される弾性リング体、並びに該弾性リング体と一体的に形成されかつ該筒状胴部に一体的に組み付けられ、該頂板に覆い被さる天板部から構成されるキャップと、
上記天板部の上記弾性リング体と上記容器本体との間に設けられ、これら弾性リング体及び容器本体の少なくともいずれか一方に下方へ向かって拡張形成された錐体面を有して、該弾性リング体がその弾性変形に伴って当該錐体面に沿って迫り上がることにより、上記キャップを上昇させる迫り上げ手段と、
上記キャップの上記筒状胴部と上記容器本体との間に設けられ、係合状態で該キャップを該容器本体に保持すると共に、当該キャップの上昇で該キャップを該容器本体から離脱させる係合部と、
上記キャップの上記弾性リング体と上記容器本体との間に設けられ、該弾性リング体を該容器本体に嵌合させると共に、該弾性リング体をその弾性変形で該容器本体から離脱させる嵌合部と、
上記キャップの上記筒状胴部内に設けられ、上記弾性リング体が常に水平に保たれるように、該弾性リング体の下端面を下支えする支持部とを備え、
該支持部を介して、上記筒状胴部と上記頂板が一体的に形成されることを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項2】
前記キャップは、前記支持部を有する前記筒状胴部を含む第1部品と、前記弾性リング体を有する前記天板部を含む第2部品の2部品から構成され、
これら2部品は、上記弾性リング体の下端部が上記支持部上に位置するように、一体的に組み付けられることを特徴とする請求項1に記載のキャップ付き容器。
【請求項3】
前記キャップは、前記支持部を有する前記筒状胴部と、前記弾性リング体と、前記天板部の3部品から構成され、
上記弾性リング体は、これが上記筒状胴部の上記支持部に接触した状態で、上記キャップに一体的に組み付けられることを特徴とする請求項1に記載のキャップ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86862(P2012−86862A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234261(P2010−234261)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】