説明

キャップ

【課題】チャックとの嵌合を良好に行えるようにしながら、滑り止め機能の向上や手指への痛みの軽減をも図ることのできるキャップを提供すること。
【解決手段】キャップ本体1の筒状壁8の外周面の上部に設けられたセレーション部分9の下方に、該セレーション部分9とは異なる形状を呈する操作部10を設けてある。操作部10は、外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条12によって構成され、突条12の頂部は略鉛直に延び、一部または全部の突条12の麓部は下方ほど突条12の頂部に近づく部分を有する形状を呈するキャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、キャッパーのチャックに嵌合されて容器口部に螺合装着されるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キャップ本体の筒状壁の外周面の略全面にわたり、開栓操作(回動操作)の際に滑り止め機能を発揮するセレーション(ローレットあるいはナールとも呼ばれる)部分が設けられているが、このセレーション部分には、以下のような問題がある。
【0003】
すなわち、セレーション部分の溝が深すぎると、開栓操作のためにキャップ本体を掴んだ手指に対する摩擦が大となって操作者が痛みを感じる懸念があり、逆に、セレーション部分の溝が浅すぎると十分な滑り止め機能が発揮されない。
【0004】
そこで、滑り止め機能と操作者の手指への優しさとの両方をキャップに持たせるために、特許文献1には、セレーション部分(ナール)を構成する突条(凸条)を、キャップ本体の周方向に不均一な間隔で設ける技術が、また、特許文献2には、セレーション部分(ナール)を構成する突条(凸条)について、その周方向の間隔を0.95mm以上1.15mm以下とし、高さを0.2mm以上0.3mm以下とする技術が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−44629号公報
【特許文献2】特開2008−44630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された技術では、セレーション部分の各突条の周方向の間隔が不均一であることが、キャッパーのチャックのインナーセレーションとの嵌合(噛合)不足、さらには容器口部に対するキャップの装着不良の原因となり得る。また、このことは、一部の突条に対するチャックによる応力集中を招き、これによりセレーション部分の一部が削られてしまうと、キャップの美観が損なわれたり、削り屑が容器内に混入する事故が発生したりする虞もある。特許文献2に記載された技術でも、セレーション部分の各突条の低さが、チャックのつかみ不良の原因となる。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、チャックとの嵌合を良好に行えるようにしながら、滑り止め機能の向上や手指への痛みの軽減をも図ることのできるキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るキャップは、キャップ本体の筒状壁の外周面の上部に設けられたセレーション部分の下方に、該セレーション部分とは異なる形状を呈する操作部を設けてある(請求項1)。
【0009】
上記キャップにおいて、前記操作部は、前記外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条によって構成され、各前記突条の頂部は略鉛直に延び、一部または全部の前記突条の麓部は下方ほど該突条の頂部に近づく部分を有する形状を呈するものであってもよい(請求項2)。
【0010】
上記キャップにおいて、前記操作部は、前記外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条を、上下方向または前記周方向に断続させた形状を呈するものであってもよい(請求項3)。
【0011】
上記キャップにおいて、前記操作部は、前記外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条によって構成され、前記セレーション部分を構成する縦溝の数と前記突条の数とを異ならせてあってもよい(請求項4)。
【0012】
上記キャップにおいて、前記操作部は、上方のみに開放された溝を前記外周面の周方向に連ねた形状を呈するものであってもよい(請求項5)。
【0013】
上記キャップにおいて、前記操作部の最小外径を、前記セレーション部分の最小外径よりも大としてあってもよい(請求項6)。
【発明の効果】
【0014】
各請求項に係る発明では、チャックとの嵌合を良好に行えるようにしながら、滑り止め機能の向上や手指への痛みの軽減をも図ることのできるキャップが得られる。
【0015】
すなわち、各請求項に係る発明のキャップでは、セレーション部分によってキャッパーのチャックとキャップ本体との嵌合不良が確実に回避されるのみならず、滑り止め機能の向上や手指への痛みの軽減を図れる形状を操作部に持たせることができる。
【0016】
しかも、請求項6に係る発明では、離型性(金型からの離型のし易さ)に優れたキャップが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係るキャップの構成を概略的に示す片側断面図である。
【図2】(A)は前記キャップの構成を概略的に示す正面図、(B)は(A)におけるX−X線断面図の一部とY−Y線断面図の一部とを重ねて示す説明図である。
【図3】(A)は上記実施の形態における操作部の第1の変形例の構成を概略的に示す正面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図4】(A)は前記操作部の第2の変形例の構成を概略的に示す正面図、(B)は(A)のB−B線断面図、(C)は(A)のC−C線断面図である。
【図5】(A)は前記操作部の第3の変形例の構成を概略的に示す片側断面図、(B)は(A)のD−D線断面図、(C)は(B)のE部拡大図である。
【図6】(A)は前記操作部の第4の変形例の構成を概略的に示す片側断面図、(B)は(A)のF−F線断面図である。
【図7】(A)は前記操作部の第5の変形例の構成を概略的に示す片側断面図、(B)は(A)のG−G線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
本発明の一実施の形態に係るキャップは、図1に示すように、図示しない容器口部に螺着されるキャップ本体1の下端に複数のブリッジ2を介して環状のバンド3が連結されたピルファープルーフキャップである。すなわち、容器口部からキャップ本体1を離脱(螺脱)させる開栓の際にバンド3が容器口部から離脱しないようにするために、バンド3の内側には容器口部の環状突起に係合するフラップ4が設けられている。従って、開栓の際に、容器口部から離脱するキャップ本体1と離脱しないバンド3とをつなぐブリッジ2は破断する。尚、図1において、5はスリットであり、キャップ本体1とバンド3との境界部分に対してブリッジ2を避けるようにして設けられている。
【0020】
また、本実施の形態に係るキャップは、合成樹脂製のキャップであって、キャップ本体1内に挿入されて容器口部を密封するパッキン6を備えた所謂2ピースキャップである。すなわち、キャップ本体1とバンド3は合成樹脂からなる一体成形品であり、パッキン6はこれとは別体として成形された合成樹脂製の部材である。
【0021】
そして、キャップ本体1は、平面視略円形状の天壁部7から垂下する略円筒状の筒状壁8を有し、この筒状壁8の外周面の上部にはセレーション部分9が、また、その下方にはセレーション部分9とは異なる形状を呈する操作部10が設けられている。
【0022】
セレーション部分9は、本実施形態のキャップを容器口部に螺合装着させるためのキャッパーのチャックとの嵌合に適した形状となるように、筒状壁8の外周面の上部において周方向に並び、各々が上下方向に延びる複数の縦溝11によって構成され、筒状壁8の外周面の全周にわたって設けられている。また、本実施形態のセレーション部分9は、筒状壁8の外周面において上端より5mm前後(好ましくは5mm強)下側までの領域に設けられている。
【0023】
操作部10は、図1並びに図2(A)及び(B)に示すように、筒状壁8の外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条12によって構成され、突条12の頂部(筒状壁8の径方向において最も外側に位置する部位)12aは略鉛直に延び、突条12の麓部(筒状壁8の径方向において最も内側に位置する部位)12bは下方ほど頂部12aに近づく(隣り合う二つの突条12間に形成される溝が浅くなる)形状を呈する。尚、図2(B)に示すように、突条12は断面視山型状をしているため、麓部12bが頂部12aに近づく下方ほど隣り合う二つの突条12の麓部12b間の距離は長くなる。
【0024】
また、筒状壁8の外周面において操作部10の下方には、下向きに広がるテーパ面13が形成されており、突条12の頂部12aはテーパ面13に繋がる位置まで鉛直に延びている。すなわち、突条12の下端とテーパ面13との間に隙間は形成されない。
【0025】
斯かるキャップでは、セレーション部分9によってキャッパーのチャックとキャップ本体1との嵌合不良が確実に回避されるのみならず、操作部10を構成する突条12の麓部12bが下方ほど頂部12aに近づき、結果として突条12の突出量が下方ほど小さくなっているので、開栓時または閉栓時にキャップ本体1を回動操作する者は、筒状壁8の外周面において、滑り止め機能が得られつつも手指への痛みが無いかあるいは少ない箇所を適宜選んで掴むことができ、従って、滑り止め機能の向上や手指への痛みの軽減をも図ることができる。
【0026】
しかも、斯かるキャップは、成形後に金型からの無理抜きが必要になる部分(下向きに窄まったり小さくなったりする部分)が形成されないので、離型性(金型からの離型のし易さ)に優れる。
【0027】
ここで、上記実施の形態の各突条12の麓部12bは、その上端から下端に至るまで下方ほど頂部12aに近づくように傾斜しているが、例えば、筒状壁8の外周面を一周するように複数並ぶ突条12のうちの一部または全部において、突条12の上端から中間位置(下端より上側の位置)までは麓部12bが下方ほど頂部12aに近づき、その中間位置から下端に至るまでは麓部12bが略鉛直に延びるようにしてもよく、麓部12bが、下方ほど頂部12aに近づく部分と略鉛直に延びる部分とを上下方向に交互に繰り返し並べて構成されるようにしてもよい。
【0028】
また、筒状壁8の外周面を一周するように並ぶ複数の突条12に、麓部12bが上端から下端まで略鉛直に延びる突条(図示していない)を適宜に(例えば周方向に一個あるいは数個おきに)混ぜてもよい。
【0029】
また、上記実施の形態では、セレーション部分9の上下幅よりも操作部10の上下幅を大としてあり、操作部10の上下幅は、セレーション部分9の上下幅以上であるのが好ましいが、操作部10の上下幅がセレーション部分9の上下幅よりも小となるようにしてもよい。
【0030】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0031】
上記実施形態のキャップはパッキン6を備えた所謂2ピースキャップであるが、本発明はこれに限られず、例えばパッキン6を備えず天壁部7の下面にインナーリングが設けられる1ピースキャップへの適用も可能である。
【0032】
また、上記実施形態のキャップは合成樹脂製であるが、本発明は金属製のキャップへの適用も可能である。
【0033】
操作部10やセレーション部分9の外面の全体あるいは一部に、微細凹凸を設けるようにしてもよい。
【0034】
操作部10は種々に変形可能であり、その典型的な変形例について図3〜図7を参照しながら以下に説明する。
【0035】
図3(A)及び(B)に示す操作部10は、筒状壁8の外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条14を上下方向に断続させた(間欠的に延ばした)形状を呈する。この場合、成形後に金型からの無理抜きが必要になるため、突条14の下面側には所謂Rをつけて離型性を向上させることが望ましい。
【0036】
尚、図3(A)及び(B)に示す例では、突条14が筒状壁8の外周面の周方向に並ぶ領域15を上下方向に三つ設けてあるが、領域15は二つ以下あるいは四つ以上であってもよい。また、領域15は上下方向に等間隔に設けられていても不均一な間隔をおいて設けられていてもよい。さらに、図示例の各領域15は筒状壁8の軸に対して直交する平面上に位置するように延びているが、複数の領域15の一部または全部が筒状壁8の軸に対して斜めとなる平面上に位置するように延びていてもよいし、ジグザグ状や正弦波状となるように延びていてもよく、領域15が筒状壁8の外周面に沿って螺旋状に周回するように延びていてもよい。さらに、図示例の突条14は全てが同一サイズ、同一形状であるが、サイズや形状を不揃いにしてあってもよい。
【0037】
図4(A)〜(C)に示す操作部10は、筒状壁8の外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条16によって構成され、セレーション部分9を構成する縦溝11(突条9a)の数と操作部10を構成する突条16の数とを異ならせたものである。すなわち、図示例では、筒状壁8の外周面の周方向に複数並ぶセレーション部分9の突条9aのうちの三つに一つが下方へと延びて突条16を構成するようにしてあり、従って、突条16の数は縦溝11(突条9a)の数の三分の一となる。尚、下方に突条16が設けられない突条9aの下面側には所謂Rをつけて離型性を向上させることが望ましい。
【0038】
図4(A)〜(C)に示す例では、突条16の数を縦溝11(突条9a)の数の三分の一としてあるが、これに限らず、二分の一や四分の一以下としてもよく、また、突条16を筒状壁8の外周面の周方向に等間隔に設けずに不均一な間隔をおいて設けてもよい。さらに、突条16の横幅が突条9aの横幅よりも大小してもよく、突条16の横幅が突条9aの横幅よりも小の場合、突条16の数を縦溝11(突条9a)の数よりも多くすることもできる。
【0039】
図5(A)〜(C)に示す操作部10は、筒状壁8の外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条17を、前記周方向に断続させた(間欠的に延ばした)形状を呈する。すなわち、図示例では、複数の突条17の集合からなる領域18を前記周方向に等間隔に配置して操作部10を構成してあり、図5(C)に示すように、各領域18では、中央にある突条17の突出量(筒状壁8の径方向外側への突出量)が最も大きく、中央から離れた突条17ほどその突出量は小さくなっている。さらに、図示例では、筒状壁8の外周面において、操作部10の最小外径を、セレーション部分9の最小外径よりも大として、離型性の向上を図っている。
【0040】
尚、各突条17及び各領域18の形状や大きさ、筒状壁8の周方向に隣り合う領域18間の間隔等は適宜変更可能である。
【0041】
図6(A)及び(B)に示す操作部10は、上方のみに開放された溝(図示例ではU字型の溝)19を筒状壁8の外周面の周方向に連ねた形状を呈する。また、この図示例でも、筒状壁8の外周面において、操作部10の最小外径を、セレーション部分9の最小外径よりも大として、離型性の向上を図っている。尚、溝19の形状は適宜変更可能であり、例えば、図示例では溝19を筒状壁8の周方向に等間隔に配置してあるが、間隔にばらつきを設けてもよい。
【0042】
図7(A)及び(B)に示す操作部10は、筒状壁8の外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条20によって構成され、突条20の数をセレーション部分9を構成する縦溝11(突条9a)の数より少なくしたものであり、セレーション部分9の突条9aの数と異なる数の突条を設けたという点では図4(A)〜(C)に示す操作部10と同様のものである。図7(A)及び(B)に示す操作部10の突条20は、筒状壁8の外周面の周方向に波打ち(うねり)形状となるように複数並び、各突条20の横幅は突条9aよりも大となっている。また、図7(A)及び(B)に示す例でも、筒状壁8の外周面において、操作部10の最小外径を、セレーション部分9の最小外径よりも大として、離型性の向上を図っている。
【0043】
尚、本実施形態の説明中や説明後に述べた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0044】
1 キャップ本体
8 筒状壁
9 セレーション部分
10 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャップ本体の筒状壁の外周面の上部に設けられたセレーション部分の下方に、該セレーション部分とは異なる形状を呈する操作部を設けたキャップ。
【請求項2】
前記操作部は、前記外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条によって構成され、各前記突条の頂部は略鉛直に延び、一部または全部の前記突条の麓部は下方ほど該突条の頂部に近づく部分を有する形状を呈する請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記操作部は、前記外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条を、上下方向または前記周方向に断続させた形状を呈する請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記操作部は、前記外周面の周方向に並び各々が上下方向に延びる複数の突条によって構成され、前記セレーション部分を構成する縦溝の数と前記突条の数とを異ならせてある請求項1〜3の何れか一項に記載のキャップ。
【請求項5】
前記操作部は、上方のみに開放された溝を前記外周面の周方向に連ねた形状を呈する請求項1に記載のキャップ。
【請求項6】
前記操作部の最小外径を、前記セレーション部分の最小外径よりも大としてある請求項1〜5の何れか一項に記載のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−206761(P2012−206761A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74898(P2011−74898)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】