説明

キャパシタの製造方法及びキャパシタ

【課題】自動車用等に用いるキャパシタの製造方法に関し、小型大容量化を図ることを目的とする。
【解決手段】繊維を溶解した溶液を噴射させるノズルと電極箔とに直流電圧を印加させ、上記電極箔の表面に繊維径が1μm以下からなる繊維を堆積させて絶縁繊維層10cを形成させ、この電極箔と対向する他方の電極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子を駆動用電解液とともに外装体で封止するようにしたキャパシタの製造方法とすることにより、絶縁繊維層10cの厚みを大幅に薄くすることが可能になるため、コンデンサ素子15の小型化を図り、長寿命で小型大容量化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、ハイブリッド自動車や燃料電池車のバックアップ電源用や回生用、あるいは電力貯蔵用等に使用されるキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、高耐電圧で大容量、しかも急速充放電の信頼性が高いということから電気二重層キャパシタが着目され、多くの分野で使用されている。このような電気二重層キャパシタは正極、負極共に活性炭を主体とする分極性電極を電極として用い、その間にセパレータを介して積層または巻回した構成のものであり、電気二重層キャパシタとしての耐電圧は、水系電解液を使用すると1.2V、有機系電解液を使用すると2.5〜3.3Vである。
【0003】
電気二重層キャパシタのエネルギーは耐電圧の2乗に比例するため、耐電圧の高い有機系電解液の方が水系電解液より高エネルギーであるが、有機系電解液を使用した電気二重層キャパシタでも、そのエネルギー密度は鉛蓄電池等の二次電池の1/10以下であり、更なるエネルギー密度の向上が必要とされている。
【0004】
さらに、このような電気二重層キャパシタの耐久性向上のために、ポリエチレンやポリプロピレン等のセパレータを用いることも知られている。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−185455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記従来の電気二重層キャパシタでは、正極と負極間に配置される絶縁のためのセパレータが独立したシート状の構成であるために、製造面や強度面等を考慮すると25μm程度の厚みが必要であり、これ以上の薄型化は難しいという問題があった。
【0008】
従って、正極と負極をその間にセパレータを介在させて積層、または巻回することによって構成した素子を小型化することが困難となり、小型大容量化を実現するのが難しいという課題があった。
【0009】
一方、ハイブリッド自動車や燃料電池車のバックアップ電源用や回生用、あるいは電力貯蔵用等に使用される電気二重層キャパシタは高エネルギー密度のものが要求されるが、セパレータが厚くなると、一つのケース内に入れることができる分極性電極の体積割合が減少するため、電気二重層キャパシタの静電容量が減少したり、分極性電極と集電体との接触面積も減少するため、所定の電流を流す場合には分極性電極の単位面積当たりにかかる電流密度が大きくなり、電気二重層キャパシタの内部抵抗が増大し、寿命等の信頼性に問題があった。
【0010】
さらに、積層型タイプは一対の分極性電極の間にセパレータを介し、分極性電極の外側に集電体を配置させ、その集電体を加圧することにより分極性電極と駆動用電解液との接触を良くして内部抵抗を低く抑えているが、ガス発生により加圧が弱まり、駆動用電解液を含浸したセパレータが分極性電極層と接触が悪くなり寿命特性に影響を与えるという課題を有している。
【0011】
本発明はこのような従来の課題を解決し、セパレータを薄型化することによって小型大容量化を図るとともに高信頼性のキャパシタを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、繊維を溶解した溶液を噴射させるノズルと電極箔とに直流電圧を印加させ、上記電極箔の表面に繊維径が1μm以下からなる繊維を堆積させて絶縁繊維層を形成させ、この電極箔と対向する他方の電極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子を駆動用電解液とともに外装体で封止するようにした製造方法とするものである。
【0013】
上記繊維は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ナイロン、変性PP、変性PE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)の樹脂及びセルロースから選択された少なくとも1種からなる。
【0014】
また、繊維を溶解した溶液を噴射させるノズルと電極箔とに直流電圧を印加させ、上記電極箔の表面に繊維径が1μm以下からなる繊維を堆積させて絶縁繊維層を形成させ、この電極箔と対向する他方の電極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子を駆動用電解液とともに外装体で封止したキャパシタとするものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によるキャパシタは、電極箔と繊維を溶解した溶液を噴射させるノズルとに直流電圧を印加させることにより、繊維径が1μm以下、とりわけ0.2〜0.6μmの繊維径の整った繊維を堆積した電極箔を形成することができ、電極箔と絶縁繊維層が一体となった構成になり、絶縁繊維層に含浸した駆動用電解液が常に電極箔と接触しており、キャパシタ容量を最大限引き出し、内部抵抗を低く抑えることができることから、充放電特性、寿命特性を向上させることができる。
【0016】
また、従来の電極とセパレータを別々に構成したものに比べて、セパレータとしての厚みを大幅に薄くすることが可能になるため、素子の小型化を図り、小型大容量化を実現することができるという効果が得られるものである。
【0017】
また、電極箔とノズルとの間に直流電圧を印加して溶液を噴射させると、噴射された繊維の表面には繊維を溶解する溶媒が含有されており、電極箔の表面に堆積される際、繊維同士が結合しやすく、堆積された絶縁繊維層の強度が高められて絶縁繊維層の密度を均一にして薄く形成でき、さらに、上記絶縁繊維層の融点以上の温度で熱処理して繊維状の一部と電極箔を結合させることにより、キャパシタの内部抵抗を低減することができることから、長寿命化を図ることができ、高信頼性のキャパシタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1による電気二重層タイプのキャパシタの構成を示す断面図
【図2】同絶縁繊維層の形成方法を示す概略図
【図3】同絶縁繊維層の表面SEM写真
【図4】同他のコンデンサ素子の例を示す断面図
【図5】本発明の実施の形態2による電気二重層タイプのキャパシタの構成を示す断面図
【図6】本発明の実施の形態3における絶縁繊維層の形成方法を示す概略図
【図7】本発明の実施の形態4による巻回形のキャパシタの構成を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1〜6に記載の発明について説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による電気二重層タイプのキャパシタの構成を示す断面図である。図1において、15はコンデンサ素子であり、第1の電極箔10(正極)と第2の電極箔11(負極)から構成されている。第1の電極箔10は、アルミニウム箔の集電体10aの一端を除く上下面に活性炭を主体とした分極性電極層10bを形成し、さらに、この分極性電極層10bの表面に繊維状の絶縁繊維層10cを堆積して形成したものである。第2の電極箔11は、アルミニウム箔の集電体11aの片面に活性炭を主体とした分極性電極層11bを形成したものであり、上記第1の電極箔10の上下に配置される。
【0021】
そして、第1の電極箔10の集電体10aに外部端子13を接続し、同じくそれぞれの第2の電極箔11にも外部端子14を接続し、続いて、上記コンデンサ素子15に駆動用電解液を含浸させ、その後、外部端子13及び14の一部露出させるように外装体12で被覆した構成からなる。
【0022】
次に上記電気二重層タイプのキャパシタの製造方法について説明する。
【0023】
まず、第1の電極箔10として、厚さが22μmの高純度アルミニウム箔(Al:99.99%以上)を集電体10aとして用い、塩酸系のエッチング液中で電解エッチングして表面を粗面化する。
【0024】
続いて、平均粒径5μmのフェノール樹脂系活性炭粉末と、導電性付与剤として平均粒径0.05μmのアセチレンブラック、バインダとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)とポリテトラフロロエチレン(PTFE)を溶解した水溶性バインダ溶液を10:2:1の重量比に混合して混練機で十分に混練した後、メタノールと水の分散溶媒を少しずつ加え、更に混練して所定の粘度のペーストを作製し、このペーストを上記集電体10aの一端を除く上下面に塗布し、85℃の大気中で5分間乾燥することにより分極性電極層10bを形成した。
【0025】
次に、上記分極性電極層10bの表面に絶縁繊維層10cを堆積させる。本発明はこの絶縁繊維層10cを直接分極性電極層10bの表面に堆積させることを最大の特徴とする。
【0026】
上記絶縁繊維層10cの堆積は図2に示す方法により行う。すなわち、ポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる樹脂を有機溶媒に溶解し、この溶液(PBT濃度10%)を溶液槽17に注入し、この溶液槽17に接続したノズル16と分極性電極層10bを形成した集電体10aとの間に10〜50kVの直流電圧を印加して、ノズル16より上記溶液を噴射させる。
【0027】
上記ノズル16から噴射された溶液は、電荷を帯びた繊維状となって溶液とともに吐出され、その繊維状は電荷と有機溶剤の作用により分極性電極層10bの表面に結合し、また、堆積される際にも繊維と繊維が結合して強固な繊維層を形成して有機溶剤は蒸散される。その形成された絶縁繊維層10cの状態を図3に示す。
【0028】
上記堆積される絶縁繊維層10cは、繊維径が1μm以下、好ましくは0.2〜0.6μmの繊維径が整った繊維を堆積することができ、絶縁繊維層10cの厚さは5〜20μmで、好ましくは5〜15μmの範囲が好ましい。
【0029】
また、上記絶縁繊維層10cは、上記ポリブチレンテレフタレート(PBT)の他に、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)の樹脂及びセルロースが使用可能であるが、これらは、分極性電極層10bと水素結合を起こして高い結合強度が得られることから、好ましい材料である。さらに耐熱性の観点から、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)がさらに好ましい。
【0030】
なお、樹脂を有機溶剤に溶解して溶液としているが、必ずしも溶剤に融けている必要はない。例えば微細化された樹脂が溶剤に分散されたもの、またはエマルジョンになっているものでも使用できる。
【0031】
次に、第2の電極箔11は、厚さが22μmの高純度アルミニウム箔(Al:99.99%以上)を集電体11aとして用い、塩酸系のエッチング液中で電解エッチングして表面を粗面化する。続いて、平均粒径5μmのフェノール樹脂系活性炭粉末と、導電性付与剤として平均粒径0.05μmのアセチレンブラック、バインダとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)とポリテトラフロロエチレン(PTFE)を溶解した水溶性バインダ溶液を10:2:1の重量比に混合して混練機で十分に混練した後、メタノールと水の分散溶媒を少しずつ加え、更に混練して所定の粘度のペーストを作製し、このペーストを上記集電体11aの表面に塗布し、85℃の大気中で5分間乾燥することにより分極性電極層10bを形成して得られる。
【0032】
次に、上記第1の電極箔10の集電体10aに外部端子13を接続し、同じくそれぞれの第2の電極箔11にも外部端子14を接続する。続いて、第1の電極箔10の上下それぞれに第2の電極箔11を配置するようにして重ね合わせてコンデンサ素子15を形成する。このコンデンサ素子15にプロピレンカーボネートに4エチルアンモニウム4フッ化ホウ素を溶解した駆動用電解液を含浸させ、その後、外部端子13及び14の一部露出させるように外装樹脂からなる外装体12で被覆することにより電気二重層タイプのキャパシタが得られる。
【0033】
このように本実施の形態1の電気二重層タイプのキャパシタは、絶縁繊維層10cの繊維径が1μm以下、とりわけ0.2〜0.5μmの繊維径の整った繊維層と分極性電極層10bとが一体となって形成することができるので、絶縁繊維層10cの密度を均一にして薄く形成でき、絶縁繊維層10cに含浸した駆動用電解液が常に分極性電極層10bと接触することから、キャパシタ容量を最大限引き出し、内部抵抗を低く抑えることができることから、充放電特性、寿命特性を向上させることができる。
【0034】
ここで、本実施の形態1の電気二重層タイプのキャパシタと比較例として従来のセパレータを用いた電気二重層タイプのキャパシタの初期特性と寿命特性の比較を(表1)に示す(コンデンサ素子の大きさ:10×20mm)。
【0035】
なお、絶縁繊維層10cの形成条件として、各種樹脂を溶解した溶液の濃度は10%として、ノズル16と集電体10aとの間に20kVの電圧を印加し、その距離を20cmにした。厚みは電圧を印加する時間で調整した。
【0036】
また、上記絶縁繊維層10cを形成した第1の電極箔10を、その構成する繊維の融点より50℃高い温度で熱処理したものも作製した。
【0037】
比較例は、溶剤紡糸再生セルロース(厚さ25μm)のセパレータを分極性電極層の上下に配置した以外は実施の形態1と同様にして作製したものである。
【0038】
【表1】

【0039】
(表1)から明らかなように、本実施の形態1の電気二重層タイプのキャパシタは静電容量を最大限引き出し、内部抵抗を低く抑えることができることから、寿命特性においても容量変化率が低減され、ESRの変化も少ない。
【0040】
本実施の形態1による電気二重層タイプのキャパシタは、金属箔からなる集電体10aの両面に分極性電極層10bを形成した表面に繊維径が1μm以下からなる絶縁繊維層10cを堆積した第1の電極箔10を形成することにより、分極性電極層10bと絶縁繊維層10cが一体となった構成により、絶縁繊維層10cに含浸した駆動用電解液が常に分極性電極層10bと接触しており、キャパシタ容量を最大限引き出し、内部抵抗を低く抑えることができることから、充放電特性、寿命特性を向上させることができる。
【0041】
また、従来の電極とセパレータを別々に構成したものに比べて、セパレータとしての厚みを大幅に薄くすることが可能になるため、素子の小型化を図り、小型大容量化を実現することができるという効果が得られるものである。
【0042】
さらに、第1の電極箔10に堆積した絶縁繊維層10cは、第1の電極箔10と繊維を溶媒に溶解した溶液を噴射するノズル16との間に電圧を印加して形成することにより、繊維径が1μm以下、とりわけ0.2〜0.6μmの繊維径の整った繊維層を形成することができるので、絶縁繊維層10cの密度を均一にして薄く形成でき、キャパシタの内部抵抗を低減することができることから、長寿命化を図ることができ、高信頼性のキャパシタを得ることができる。
【0043】
また、上記絶縁繊維層10cを形成した第1の電極箔10を、その構成する繊維の融点以上の温度で熱処理することにより、繊維状の一部が分極性電極層10bの表面から内部に入り込むようになり、絶縁繊維層10cと分極性電極層10bの結合強度をより高めることができ、さらなる寿命特性が良くなる。
【0044】
なお、本実施の形態1において、コンデンサ素子15の第1の電極箔10を1個用いた構成のものを説明したが、図4に示すように第1の電極箔10を2個用いるコンデンサ素子18の構成にすることにより、さらに静電容量の大きいキャパシタを得ることができる。
【0045】
また、本実施の形態1において、第2の電極箔の分極性電極11bの表面にも絶縁繊維層を形成することにより、第1の電極箔と第2の電極箔との接触抵抗を高めることができ、高温度での寿命を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態1において、外装体12に外装樹脂を用いたが、ラミネート樹脂フィルムを用いてコンデンサ素子15を封口することもできる。
【0047】
(実施の形態2)
上記実施の形態1において、絶縁繊維層を形成した第1の電極箔(正極)及び第2の電極箔(負極)を第1の電極箔(負極)及び第2の電極箔(正極)にした以外は上記実施の形態1と同様にキャパシタを作製した。
【0048】
図5は本発明の実施の形態2による電気二重層タイプのキャパシタの構成を示す断面図である。図5において、25はコンデンサ素子であり、第1の電極箔20(負極)と第2の電極箔21(正極)から構成されている。第1の電極箔20は、アルミニウム箔の集電体20aの片面に活性炭を主体とした分極性電極層20bを形成し、さらに、この分極性電極層20bの表面に繊維状の絶縁繊維層20cを堆積して形成したものである。第2の電極箔21は、アルミニウム箔の集電体21aの両面に活性炭を主体とした分極性電極層21bを形成したものである。
【0049】
そして、第1の電極箔20の集電体20aに外部端子24を接続し、同じくそれぞれの第2の電極箔21にも外部端子23を接続し、第2の電極箔21の上下それぞれに第1の電極箔20を配置するようにして重ね合わせる。
【0050】
その後、上記コンデンサ素子25に駆動用電解液を含浸させ、外部端子23及び24の一部露出させるように外装体22で被覆することにより電気二重層タイプのキャパシタが構成されるものである。
【0051】
上記絶縁繊維層20cは、上記実施の形態1の図2の形成方法と同じようにポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる繊維を有機溶媒に溶解し、この溶液(PVDF濃度10%)を溶液槽17に注入後、この溶液槽17に接続したノズル16と分極性電極層21bを形成した集電体21aとの間に20kVの高電圧を印加して、ノズル16より上記溶液を噴射させることにより、繊維径が1μm以下の繊維が堆積される。
【0052】
この電気二重層タイプのキャパシタの初期特性と寿命特性の比較を(表1)に示す。
【0053】
本実施の形態2の電気二重層タイプのキャパシタは、上記実施の形態1と同様に、分極性電極層20bと絶縁繊維層20cが一体となった構成により、絶縁繊維層20cの密度を均一にして薄く形成でき、キャパシタの内部抵抗を低減することができることから、長寿命化を図ることができ、高信頼性のキャパシタを得ることができる。
【0054】
(実施の形態3)
上記本実施の形態1において、絶縁繊維層の形成方法を図6に示す方法で形成した以外は上記実施の形態1と同様にして電気二重層タイプのキャパシタを作製した。
【0055】
すなわち、溶液槽28にポリフッ化ビニリデン(PVDF)の濃度10%の溶液を注入し、溶液槽29にポリフッ化ビニリデン(PVDF)の濃度20%の溶液を注入し、ノズル26、27と集電体10aとの間に電圧(20kV)を印加して分極性電極層10bの表面に繊維を堆積させた。
【0056】
この電気二重層タイプのキャパシタの初期特性と寿命特性の比較を(表1)に示す。
【0057】
本実施の形態3の電気二重層タイプのキャパシタは、繊維径の異なった繊維が互いに絡み合って堆積させることができ、繊維層の空隙率を高め、電解液の含浸量が多くなり、静電容量、ESR特性をさらに向上させることができる。
【0058】
なお、本実施の形態3では溶液として濃度の異なるものを用いたが、同じ濃度の溶液を用いることにより、堆積される繊維がより絡み合って堆積され、同じ厚みに対する密度を高めることができるので、寿命特性の向上を図ることができる。
【0059】
(実施の形態4)
図7は本実施の形態1の巻回形のキャパシタの構成を示す斜視図である。図7において、31は第1の電極箔で、分極性電極(図示せず)の表面に絶縁繊維層(図示せず)が形成されている。32は第2の電極箔であり、第1の電極箔31と第2の電極箔32とを巻回してコンデンサ素子33が形成されている。34は第1の電極箔31に接続されたリード線(正)であり、35は第2の電極箔32に接続されたリード線(負)である。なお、上記第1の電極箔31と第2の電極箔32は、上記実施の形態1と同じ要領で作製した。
【0060】
上記コンデンサ素子33は、駆動用電解液36とともに金属ケース37に収納され、金属ケース37の開放端を封口体38により封止された構成からなる。
【0061】
上記巻回形のキャパシタは、上記実施の形態1と同様に、キャパシタ容量を最大限引き出し、内部抵抗を低く抑えることができることから、充放電特性、寿命特性を向上させることができる。また、従来の電極とセパレータを別々に構成したものに比べて、セパレータとしての厚みを大幅に薄くすることが可能になるため、素子の小型化を図り、小型大容量化を実現することができるという効果が得られるものである。
【0062】
なお、上記キャパシタは、電極箔は分極性電極を形成したものであるが、正極の電極箔として、弁金属箔をエッチング処理し、その表面に誘電体酸化皮膜を形成し、さらにその表面に、上記実施の形態1と同様にして繊維状の絶縁繊維層を堆積して形成したものを用い、負極の電極箔は、弁金属箔をエッチング処理したものを用い、この各電極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子を駆動用電解液とともに金属ケースに収納して、金属ケースの開放端を封口体で封止した構成の電解コンデンサとすることにより、小型で低ESRの電解コンデンサを得ることもできる。
【0063】
さらに、上記電解コンデンサにおいて、正極の電極箔に絶縁繊維層を形成する代わりに、負極の電極箔に絶縁繊維層を形成する、または正負の電極箔に絶縁繊維層を形成しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によるキャパシタは、絶縁繊維層を薄型化してコンデンサ素子の小型化を図り、小型大容量化を実現することができるという効果を有し、特に、ハイブリッド自動車や燃料電池車のバックアップ電源や回生用等として有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 第1の電極箔
10a 集電体
10b 分極性電極層
10c 絶縁繊維層
11 第2の電極箔
11a 集電体
11b 分極性電極層
12 外装体
13、14 外部端子
15 コンデンサ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を溶解した溶液を噴射させるノズルと電極箔とに直流電圧を印加させ、上記電極箔の表面に繊維径が1μm以下からなる繊維を堆積させて絶縁繊維層を形成させ、この電極箔と対向する他方の電極箔を巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子を駆動用電解液とともに外装体で封止するようにしたキャパシタの製造方法。
【請求項2】
上記繊維は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ナイロン、変性PP、変性PE、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)の樹脂及びセルロースから選択された少なくとも1種からなる請求項1に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項3】
上記電極箔は分極性電極層を形成したものである請求項1に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項4】
上記絶縁繊維層は、上記絶縁繊維層の融点以上の温度で熱処理して繊維状の一部が分極性電極層と結合するようにした請求項3に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項5】
上記溶液を噴射させるノズルを少なくとも2本用いるようにした請求項1に記載のキャパシタの製造方法。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれかの製造方法により形成されたキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−192885(P2010−192885A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9776(P2010−9776)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】