説明

キャパシタ

【課題】高温でも安全に使用することができるキャパシタを提供すること
【解決手段】集電体に活性炭を主体とした正極活物質を保持させた正極と、集電体に、ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料またはナトリウム金属箔を負極活物質として保持させた負極と、ナトリウム塩を含む溶融塩を主体とした電解質とを備えてなることを特徴とするキャパシタ。前記アルミニウム多孔体のアルミニウム含有量は95wt%以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解質として溶融塩を用いたキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは電気機器のメモリーバックアップ用として幅広く使われており、各種キャパシタの中でも電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解液との界面に形成される電気二重層に電荷を蓄積することを原理としており、電池より大電流による急速充放電ができるためエネルギー分野への応用が近年活発に検討され、電気機器のメモリーバックアップの用途の他にハイブリッド車、燃料自動車等の自動車用にも利用が期待されている。
【0003】
電気二重層キャパシタ(以下単に「キャパシタ」ともいう)には、ボタン型、円筒型、角型といった種類があり、各種キャパシタが知られている(特許文献1〜5)。ボタン型は、例えば、活性炭電極層を集電体上に設けた分極性電極を一対として、その電極間にセパレーターを配置して電気二重層キャパシタ素子を構成し、電解質とともに金属ケース内に収納し、封口板と両者を絶縁するガスケットで密封することにより製造される。円筒型は、この一対の分極性電極とセパレーターを重ね、捲回して電気二重層キャパシタ素子を構成し、この素子に電解液を含覆させてアルミニウムケース中に収納し、封口材を用いて密封することにより製造される。角型も、基本的構造はボタン型や円筒型と同様である。
【0004】
しかしながら、従来のキャパシタは、電解質として有機溶媒を用いており、有機溶媒は揮発性及び可燃性であるため、例えば80℃以上の高温では安全性の観点から使用することができないという問題がある。また、高温での使用ができないことから、例えば自動車のエンジンルーム内のように高温になる環境下では使用できずその設置場所も制限されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−274012号公報
【特許文献2】特開平09−232190号公報
【特許文献3】特開平11−150042号公報
【特許文献4】特許第3252868号公報
【特許文献5】特許第3689948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みて、高温でも安全に使用することができるキャパシタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電解質として有機溶媒を用いることに代えて、低温で電解質として動作する溶融塩を用いることによって上記課題を解決することができることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明に係るキャパシタは以下の構成を有する。
【0008】
(1)活性炭を主体とした活物質を用いた正極と、ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料あるいはナトリウム金属箔を主体とした負極と、ナトリウム塩を含む溶融塩を主体とした電解質とを備えたことを特徴とするキャパシタ。
(2)前記正極の集電体がアルミ箔であることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタ。
(3)前記正極の集電体がアルミニウム多孔体であることを特徴とする(1)に記載のキャパシタ。
(4)前記アルミニウム多孔体のアルミニウム含有量が、95質量%以上であることを特徴とする(3)に記載のキャパシタ。
(5)前記アルミニウム多孔体の金属目付け量が150g/m2以上、600g/m2以下であることを特徴とする(3)又は(4)に記載のキャパシタ。
(6)前記アルミニウム多孔体の平均孔径が、200μm以上、800μm以下であることを特徴とする(3)〜(5)のいずれかに記載のキャパシタ。
(7)前記アルミニウム多孔体の厚さが0.2mm以上、5mm以下であることを特徴とする(3)〜(6)のいずれかに記載のキャパシタ。
(8)前記ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料が、ハードカーボンであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のキャパシタ。
(9)前記負極の集電体が、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウムのいずれかの金属、あるいはこれらの金属の複合材料からなることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のキャパシタ。
(10)前記負極の集電体が、多孔体であることを特徴とする(9)に記載のキャパシタ。
(11)前記電解質が、下記式(1)で表される物質FSIをアニオンとし、カチオンとして、ナトリウムイオンか、又は、ナトリウムイオンと他のアルカリ金属のカチオン及びアルカリ土類金属のカチオンから選ばれる少なくとも一種とを含む溶融塩であることを特徴とする(1)〜(10)いずれかに記載のキャパシタ。
【化1】

(前記式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立にフッ素原子またはフルオロアルキル基を示す。)
(12)負極容量が正極容量よりも大きく、ナトリウムイオンの吸蔵量が、正極容量と負極容量の差の90%以下であることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載のキャパシタ。
(13)アルミニウムを主成分とするアルミニウム多孔体を集電体として用い、該アルミニウム多孔体に、活性炭を主体とした正極活物質を充填して得た正極と、金属箔にナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料を主体とした負極活物質を塗布し、ナトリウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させて得た負極又は金属箔にナトリウム金属箔を圧着した負極とを、セパレーターを介して対向させ、ナトリウム塩を含む溶融塩を含浸させてキャパシタを得ることを特徴とするキャパシタの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のキャパシタは80℃を超える高温においても安全に使用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のキャパシタの構造例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のキャパシタについて説明する。
図1は本発明のキャパシタの基本構造を示す模式図である。キャパシタAは、セパレータ2で仕切られた溶融塩電解質3中に、集電体に電極活物質を担持した電極材料が分極性電極1として配置され、この分極性電極1はリード線4に接続されており、これら全体がケース5中に収納された構成となっている。
【0012】
本発明に係るキャパシタは、集電体に活性炭を主体とした正極活物質を保持させた正極と、集電体に、ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料またはナトリウム金属箔を負極活物質として保持させた負極と、ナトリウム塩を含む溶融塩を主体とした電解質とを備えている。
【0013】
集電体としてはアルミニウム、ステンレス、ニッケル、アルミニウム等の材料あるいはこれらの複合材料等を使用することができ、その材料の形状としては箔または多孔体の形状のものを用いることができる。
正極の集電体としてはアルミニウムを主成分とする多孔体を用いることが好ましく、これを正極集電体として使用することにより、充填可能な活物質の量を増やすことができる。更に、該多孔体がアルミニウムを主成分とすることにより、溶融塩に対する耐食性を高めることができる。なお、本発明におけるアルミニウムを主成分とする多孔体とはアルミニウムを95質量%以上含むものをいう(以下、アルミニウム多孔体とも記す)。
【0014】
また、ナトリウムイオンを負極に吸蔵させておくことにより負極の電位が下がり、セル電圧を上げることが可能となる。更に、キャパシタのエネルギーは電圧の二乗に比例するため、高いエネルギーを持ったキャパシタとなる。
しかしながら、本発明ではナトリウム塩を含む溶融塩電解液によりナトリウムイオンを電荷として使用するため、ナトリウムの析出によるデンドライトの成長といった危険が存在する。このため、負極へのナトリウムイオンの吸蔵量は、あらかじめ吸蔵した分と、充電される分の和が、負極の吸蔵可能量以下であることが必要である。
【0015】
したがって、本発明に係るキャパシタは、負極容量が正極容量よりも大きく、該負極容量と正極容量の差の90%まで、ナトリウムイオンを負極に吸蔵させておくことが好ましい。放電時におけるナトリウムイオンの吸蔵量を、負極容量と正極容量の差の90%以下としておくことにより、充電時の負極面内におけるナトリウムイオン吸蔵量のばらつきの程度を吸収することができる。
【0016】
前記アルミニウム多孔体はアルミニウムを主成分とする多孔体であるが、不純物が多くなると、高電圧での動作が安定しなかったり、基材の強度が不足したりする。このため、前記アルミニウム多孔体は、アルミニウム含有量が95質量%以上であることが好ましい。
また、アルミニウム多孔体の金属目付け量が少なすぎると、電気抵抗が高くなったり基材の強度が不足したりする。一方、金属目付量が多すぎるとめっきに要するコストが増えるため好ましくない。このため、前記アルミニウム多孔体の金属目付け量は150g/m2以上600g/m2以下であることが好ましい。
【0017】
なお、アルミニウム多孔体は後述するように、連通気孔を有する発泡樹脂発泡樹脂の表面に蒸着、スパッタリング、プラズマCVD等の気相法、アルミニウムペーストの塗布、めっき法等任意の方法でアルミニウム層を形成させたのち、発泡樹脂を分解除去することによって得ることができる。アルミニウム多孔体の孔径が小さすぎると活性炭の充填が困難になったりし、また、孔径が大きすぎると活性炭の保持性が低下して容量が低下したり、集電性が悪化して出力がさがったりするため、アルミニウム多孔体の平均孔径は、200μm以上800μm以下であることが好ましく、300μm以上600μm以下であることがより好ましい。また、アルミニウム多孔体の気孔率は80%以上98%以下であることが好ましい。
【0018】
また、アルミニウム多孔体の厚さが薄すぎると、活性炭の充填量が減って容量が小さくなる。一方、厚すぎるとめっきのばらつきが大きくなったり電極作製工程で変形が大きくなって破損し、集電性が悪化して出力が下がったりするため好ましくない。このため、前記アルミニウム多孔体の厚さは0.2mm以上5mm以下であることが好ましく、0.2mm以上3mm以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明に係るキャパシタは、正極と負極とをセパレーターを介して対向させ、正極と負極間に電解質(溶融塩)を存在させることにより作製される。
かかる正極は、集電体に、活性炭を主体とした正極活物質を保持させることにより得られる。また、負極は、集電体にナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料を主体とした負極活性物質を保持させ、この活物質にナトリウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させるか、または集電体にナトリウム金属箔を負極活物質として保持させることにより得られる。
【0020】
以下に、本発明に係るキャパシタの各構成と、その製造方法の例についてより詳しく説明する。
−セパレーター−
上記セパレーターとしては、公知又は市販のものを使用できる。例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ガラス繊維等からなる絶縁性膜が好ましい。セパレーターの平均孔径は、通常0.01μm以上5μm以下程度であり、平均厚さは通常10μm以上100μm以下程度である。平均孔径が小さすぎるとイオンの移動経路が長くなって内部抵抗が高くなり、大きすぎると短絡の危険性が増すため、0.05μm以上3μm以下の範囲が好ましい。また、セパレーターの厚さが小さすぎると短絡の危険性が増し、大きすぎるとイオンの移動経路が長くなって内部抵抗が高くなるため、15μm以上70μm以下の範囲が好ましい。
【0021】
−正極−
上記正極は、正極集電体に活性炭を主体とした正極活物質を充填することにより作製する。
[正極集電体]
本発明に係るキャパシタは、前記正極集電体として、アルミニウム箔又はアルミニウム多孔体を使用することが好ましい。
【0022】
以下にアルミニウム多孔体の製造方法を説明する。
まず連通気孔を有する発泡樹脂を準備する。発泡樹脂の素材はアルミニウムの融点以下の温度で分解可能なものであれば任意の樹脂を選択できる。ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン等が発泡樹脂の素材として例示できる。なお発泡樹脂と表記したが、連通気孔を有するものであれば任意の形状の樹脂を選択できる。例えば繊維状の樹脂を絡めて不織布のような形状を有するものも発泡樹脂に代えて使用可能である。発泡樹脂の気孔率は80%以上98%以下、気孔径は200μm以上800μm以下とするのが好ましい。発泡ウレタンは気孔率が高く、また気孔の連通性、孔径の均一性があるとともに熱分解性にも優れているため発泡樹脂として好ましく使用できる。なお、下記工程を経て作製されるアルミニウム多孔体の気孔率(多孔度)は、発泡樹脂の気孔率とほぼ同じになる。
【0023】
発泡樹脂の表面にアルミニウム層を形成する。アルミニウム層の形成は蒸着、スパッタリング、プラズマCVD等の気相法、アルミニウムペーストの塗布、めっき法等任意の方法で行うことができる。水溶液中でのアルミニウムのめっきは実用上ほとんど不可能であるため、溶融塩中でアルミニウムをめっきする溶融塩電解めっきを行うことが好ましい。溶融塩電解めっきは、例えばAlCl3−XCl(X:アルカリ金属)の2成分系あるいは多成分系の塩を使用し、溶融させたもののなかに発泡樹脂を浸漬し、アルミニウム層に電位を印加して電解めっきをおこなう。電解めっきを行うために、発泡樹脂の表面をあらかじめ導電化処理する。導電化処理は、ニッケル等の導電性金属の無電解めっき、アルミニウム等の蒸着及びスパッタリング、又はカーボン等の導電性粒子を含有した導電性塗料の塗布等任意の方法を選択できる。
【0024】
アルミニウム層の形成は、アルミニウムペーストの塗布によって行うこともできる。アルミニウムペーストは、アルミニウム粉末と結着剤(バインダー樹脂)及び有機溶剤を混合したものである。またアルミニウムペーストの焼結は非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0025】
表面にアルミニウム層を形成した発泡樹脂を溶融塩に浸漬し、該アルミニウム層に負電位を印加しながら加熱して発泡樹脂を分解する。溶融塩に浸漬した状態で負電位を印加すると、アルミニウムの酸化反応を防止できる。このような状態で加熱することでアルミニウムを酸化させることなく発泡樹脂を分解することができる。加熱温度は発泡樹脂の種類に合わせて適宜選択できるが、アルミニウムを溶融させないためにはアルミニウムの融点(660℃)以下の温度で処理する必要がある。好ましい温度範囲は500℃以上600℃以下である。また印加する負電位の量は、アルミニウムの還元電位よりマイナス側で、かつ溶融塩中のカチオンの還元電位よりプラス側とする。このような方法によって、連通気孔を有し、表面の酸化層が薄く酸素量の少ないアルミニウム多孔体を得ることができる。
【0026】
溶融塩としては、金属層の電極電位が卑となるようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物の塩が使用できる。具体的には塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アルミニウム(AlCl3)からなる群より選択される1種以上を含むと好ましい。溶融塩の温度を金属の融点以下の温度とするため、2種以上を混合して融点を下げた共晶塩とすることが好ましい。具体的な加熱温度としては、500℃以上600℃以下が好ましい。特に表面が酸化しやすく還元処理が難しいアルミニウムを使用する場合、この方法は有効である。
【0027】
また、表面にアルミニウムを主成分とする金属層が形成された連通気孔を有する発泡樹脂を、超臨界水中に浸漬して前記発泡樹脂を分解することによっても前記アルミニウム多孔体を製造することができる。水の臨界点(臨界温度374℃、臨界圧力22.1MPa)を超え、高温高圧状態の超臨界水は有機物の分解性に優れており、金属を酸化させることなく発泡樹脂を分解することが可能である。このような製法により表面の酸化層が少ない(薄い)アルミニウムを主成分とする金属多孔体を得ることができる。
【0028】
アルミニウムを主成分とする多孔体をキャパシタ用の電極とするにはローラープレスにより調厚する必要があり、元の厚さが厚いとローラープレスによる変形で集電性が悪化するため、アルミニウム多孔体の厚さは3mm以下が好ましい。ただし、活物質を十分に充填するためには出来上がりの電極よりも厚い状態で充填することが必要なため、0.2mm以上が好ましい。より好ましくは、0.3mm以上1.4mm以下の範囲である。
【0029】
さらに、アルミニウムの目付は電気抵抗と基材の強度に大きく関係する。少なすぎると集電性能・基材強度ともに著しく低下し実用に耐えないため、150g/m2以上は必要である。しかし、アルミニウムを多くしすぎると基材の多孔度が下がってキャパシタの容量が低下するため、600g/m2以下が好ましい。より好ましくは、200g/m2以上420g/m2以下の範囲である。
【0030】
[正極活物質]
集電体に充填する電極材料は、活性炭の他に、導電助剤やバインダー等を混合し、溶媒と混合してペースト状にすることが好ましい。必要に応じて界面活性剤を加えることもできる。
キャパシタの容量を大きくするために、主成分である活性炭の量は多いほうがよく、乾燥後(溶媒除去後)の組成比で活性炭が90質量%以上あることが好ましい。また、導電助剤やバインダーは必要であるが容量低下の要因であり、バインダーはさらに内部抵抗を増大させる要因にもなるため、できる限り少ないほうが良い。導電助剤は10質量%以下、バインダーは10質量%以下が好ましい。
【0031】
活性炭は表面積が大きい方がキャパシタの容量が大きくなるため、比表面積が2000m2/g以上あることが好ましい。また、導電助剤としてはケッチェンブラックやアセチレンブラック、炭素繊維やこれらの複合材料が使用できる。また、バインダーとしてはポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムなどが使用できる。溶媒はバインダーの種類によって水や有機溶媒を適当に選択すればよい。有機溶媒ではNメチルピロリドンが使用される場合が多い。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
【0032】
上記活性炭を主成分とする電極材料を混合して攪拌することにより活性炭ペーストが得られる。かかる活性炭ペーストを上記集電体に充填して乾燥させ、必要に応じてローラープレス等により調厚することによりキャパシタ用電極が得られる。キャパシタ用電極とするためには、最終的に電極の厚さが100μm以上1500μm以下であることが好ましい。このため、上記集電体の厚さを200μm以上3000μm以下としておくことが好ましい。
【0033】
−負極−
負極は、金属箔からなる負極集電体に、ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料を主体とした負極活物質にナトリウムイオンを化学的又は電気化学的方法により炭素材料に吸蔵させたものを保持させることによって作製するか、金属箔からなる負極集電体にナトリウム金属箔を負極活物質として保持させることにより作製することができる。
【0034】
ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料を主体とした負極活物質を集電体に保持する方法としては、例えば、炭素材料をペースト状にし、該負極活物質ペーストをドクターブレード法等により塗布する方法が挙げられる。また、必要に応じて、乾燥後にローラープレス機等により加圧成形してもよい。
炭素材料にナトリウムイオンを吸蔵させるには、例えば、炭素材料を主体とする負極活物質にナトリウム箔を圧着させておき、製造後のセル(キャパシタ)を60℃の不活性ガスの恒温槽中で24時間保温する等の方法が挙げられる。他にも、炭素材料とナトリウム材料を混合してメカニカルアロイ法で混合する方法や、Na金属をキャパシタセルに組み込んで、負極とNa金属を短絡する方法が挙げられる。
また、あらかじめ溶融塩中にリード線を取り付けたナトリウム金属と負極を浸漬するか、あるいはセル中にナトリウム金属を組み込んでおき、両者を接続して一定電位に保つことでもナトリウムを負極に吸蔵させることができる。この方法はナトリウムの吸蔵量を精度良く管理することができるためより好ましい。
【0035】
ナトリウム金属箔を集電体に保持する方法としては、集電体として銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル等の箔を用い、これにナトリウム金属箔をテフロン(登録商標)ローラーやテフロン(登録商標)板を用いてプレスして圧着して集電体にアルミニウム箔を保持することができる。
【0036】
[負極集電体]
負極集電体としては、金属箔を好ましく用いることができる。かかる金属は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、又はステンレスであることが好ましい。
【0037】
[負極活物質]
負極活物質は、ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料を溶媒にまぜ、混合機で攪拌することにより得られる。必要に応じて導電性助剤、バインダーを含んでもよい。
また、ナトリウム箔を負極活物質として用いることができる。
(炭素材料)
炭素材料としては、ナトリウムイオンを吸蔵脱離できるものであれば特に限定されないが、例えば、ハードカーボン、黒鉛系材料、易黒鉛化炭素材料等が挙げられるがハードカーボンを用いることが好ましい。また、理論容量が300mAh/g以上あるものが好ましい。ハードカーボンとしては備長炭を平均粒子径10μm程度に粉砕したものを使用することができる。
【0038】
(導電性助剤)
導電性助剤としては、前記正極活物質の場合と同様に、公知又は市販のものが使用できる。すなわち、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。
(バインダー)
バインダーも、前記正極活物質の場合と同様に、特に種類に制限はなく、公知又は市販のものが使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0039】
−電解質−
本発明においては電解質として、使用環境において融解してナトリウムイオンを生じて電解液として動作する溶融塩を用いる。
この様な溶融塩を形成する好適な電解質としては下記式(1)で表される物質FSIをアニオンとし、カチオンとして、ナトリウムイオンか、又は、ナトリウムイオンと他のアルカリ金属のカチオン及びアルカリ土類金属のカチオンから選ばれる少なくとも一種とを含むものを挙げることができる。
【0040】
【化1】

(前記式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立にフッ素原子またはフルオロアルキル基を示す。)
【0041】
ここで、キャパシタをより低温で動作させる観点からは、上記の式(1)で表されるアニオンとしては、RおよびRがそれぞれFを示すビスフルオロスルフォニルイミドイオン(FSI-; 以下、「FSI イオン」ということもある。)および/またはRおよびRがそれぞれCFを示すビストリフルオロメチルスルフォニルイミドイオン(TFSI-; 以下、「TFSI イオン」ということもある。)を用いることが好ましい。
【0042】
したがって、キャパシタをより低温で動作させる観点からは、電解質に用いられる溶融塩としては、FSIイオンおよび/ またはTFSIイオンをアニオンとして含むとともに、カチオンとして、ナトリウムイオンか、又は、ナトリウムイオンと他のアルカリ金属のカチオン及びアルカリ土類金属のカチオンから選ばれる少なくとも一種を含む溶融塩MFSIの単塩、溶融塩MTFSIの単塩、2種類以上の溶融塩MFSIの単塩の混合物、2種類以上の溶融塩MTFSIの単塩の混合物、または溶融塩MFSIの単塩の1種類以上と溶融塩MTFSIの単塩の1種類以上との混合物を用いることが好ましい。
【0043】
特に、溶融塩MFSIの単塩の混合物、溶融塩MTFSIの単塩の混合物、および溶融塩MFSIの単塩の1種類以上と溶融塩MTFSIの単塩の1種類以上との混合物は、溶融塩の単塩を2種類以上有する構成であるため、溶融塩の単塩の融点に比べて著しく融点を低下させることができ、ひいてはキャパシタの動作温度を著しく低下させることができる点でさらに好ましい。
【0044】
なお、イミノ基を有しないFSIイオンおよびTFSIイオンをイミドと呼ぶことは厳密には不適切であるが、今日既に広くこの呼称が広まっているので、本明細書においても慣用名として用いることにする。
【0045】
アルカリ金属としては、ナトリウム(Na)を用いるか、ナトリウム(Na)と、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)およびセシウム(Cs)からなる群から選択された少なくとも1種とを用いることができる。
また、アルカリ土類金属としては、ベリリウム(Be)、Mg(マグネシウム)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0046】
溶融塩MFSIの単塩としては、NaFSIを用いることができる。
また、溶融塩MTFSIの単塩としては、NaTFSIを用いることができる。
また、溶融塩MFSIの単塩の混合物としては、NaFSIと、LiFSI、KFSI、RbFSI、CsFSI、Be(FSI)、Mg(FSI)、Ca(FSI)、Sr(FSI)およびBa(FSI)からなる群から選択された1種以上の単塩の混合物を用いることができる。
【0047】
また、溶融塩MTFSIの単塩の混合物としては、NaTFSIと、LiTFSI、KTFSI、RbTFSI、CsTFSI、Be(TFSI)、Mg(TFSI)、Ca(TFSI)、Sr(TFSI)およびBa(TFSI)からなる群から選択された1種以上の単塩の混合物を用いることができる。
【0048】
さらに、溶融塩MFSIの単塩の1種類以上と溶融塩MTFSIの単塩の1種類以上との混合物としてはNaFSI及び/又はNaTFSIと、LiFSI、KFSI、RbFSI、CsFSI、Be(FSI)、Mg(FSI)、Ca(FSI)、Sr(FSI)およびBa(FSI)からなる群から選択された1種以上の単塩と、LiTFSI、KTFSI、RbTFSI、CsTFSI、Be(TFSI)、Mg(TFSI)、Ca(TFSI)、Sr(TFSI)およびBa(TFSI)からなる群から選択された1 種以上の単塩との混合物を用いることができる。
【0049】
なかでも、キャパシタの動作温度を低下させる観点からは、電解質として、NaFSIとKFSIとの混合物からなる二元系の溶融塩(以下、「NaFSI−KFSI溶融塩」という。)を用いることが好ましい。
特に、NaFSI−KFSI溶融塩におけるNaカチオンとKカチオンとのモル比((Kカチオンのモル数)/(Naカチオンのモル数+Kカチオンのモル数))を0.4以上0.7以下とすることが好ましく、0.5以上0.6以下とすることがより好ましい。NaFSI−KFSI溶融塩におけるNaカチオンとKカチオンとのモル比((Kカチオンのモル数)/(Naカチオンのモル数+Kカチオンのモル数))が0.4以上0.7以下である場合、特に0.5以上0.6以下である場合には、電池の動作温度を90℃以下の低温とすることができる傾向にある。
【0050】
なお、上記の溶融塩の単塩の混合物からなる溶融塩をキャパシタの電解質として用いる場合には、電池の動作温度を低下させる観点からは、溶融塩の組成は、2種以上の溶融塩が共晶を示す組成(共晶組成)の近傍であることが好ましく、共晶組成であることが最も好ましい。
【0051】
また、上記の溶融塩からなる電解質に有機カチオンが含まれていてもよい。この場合には、電解質の導電率を高くすることができるとともに、電池の動作温度を低下することができる傾向にある。
ここで、有機カチオンとしては、たとえば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン等のアルキルイミダゾール系カチオン、N−エチル−N− メチルピロリジニウムカチオン等のアルキルピロリジニウム系カチオン、1−メチル−ピリジニウムカチオン等のアルキルピリジニウム系カチオン、トリメチルヘキシルアンモニウムカチオン等の4級アンモニウム系カチオンなどを用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は例示であって、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
[実施例1]
(正極用集電体の作製)
発泡樹脂として、気孔率97%、気孔径約300μmのポリウレタンフォームを準備し、20mm角に切断した。ポリウレタンフォームの表面にアルミニウムを蒸着し、厚み15μmのアルミニウム層を形成した。アルミニウム層を形成した発泡樹脂を温度500℃のLiCl−KCl共晶溶融塩に浸漬し、−1Vの負電位を30分間印加した。
続いて、アルミニウム層を形成した発泡樹脂を温度500℃のLiCl−KCl共晶溶融塩に浸漬し、−1Vの負電位を30分間印加した。溶融塩中に気泡が発生し、ポリウレタンの分解反応が起こっていると推定された。その後大気中で室温まで冷却した後、水洗して溶融塩を除去し、アルミニウム多孔体を得た。ICPによる測定の結果、アルミニウム多孔体のアルミニウム含有量は99wt%以上であった。
得られたアルミニウム多孔体は気孔径300μm、厚さ1.4mm、多孔度97%でありこれを集電体aとした。
【0054】
(正極の作製)
ローラープレスのスリットを700μmに調節し、上記で得られた正極集電体(アルミニウム多孔体)を通し、厚さ0.72mmの正極集電体を得た。
活性炭粉末(比表面積2500m2/g、平均粒径約5μm)21wt%に、導電助剤としてケッチェンブラック1wt%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン粉末2wt%、溶媒としてN−メチルピロリドン75wt%を添加し、混合機で攪拌することにより、活性炭ペーストを調製した。乾燥してNMPを除去した後の組成比は、活性炭粉末92wt%、ケッチェンブラック3wt%、ポリフッ化ビニリデン粉末5wt%となった。
この活性炭ペーストを上記正極集電体aに、活性炭の含有量が30mg/cm2となるように充填した。実際の充填量は31mg/cm2であった。次に、乾燥機で200℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した後、直径500ミリのローラープレス機(スリット:300μm)で加圧して実施例1の正極Aを得た。加圧後の厚さは473μmであった。
【0055】
(負極集電体の作製)
厚さ20μmの銅箔を用いた。
(負極の作製)
ナトリウムを吸蔵脱離できるハードカーボン粉末100重量部に、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)2重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン粉末4重量部、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)15重量部を添加し、混合機で攪拌することにより、ハードカーボンを含む負極ペーストを調製した。
この負極ペーストを上記の銅箔(負極集電体)上に、ドクターブレード(ギャップ400μm)を用いて塗布した。実際の塗布量は10mg/cmであった。次に、乾燥機で100℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した後、直径500ミリのローラープレス機(スリット:200μm)で加圧して実施例1の負極A’を得た。加圧後の厚さは220μmであった。
【0056】
(溶融塩の作製)
(1)電解質の作製
まず、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、KFSI(第一工業製薬(株)製)と、NaClO(Aldrich社製: 純度98%)とがそれぞれ同モルとなるように秤量した後、KFSIとNaClOとをそれぞれアセトニトリルに溶解して30分間攪拌することにより混合して、以下の化学反応式(I)により反応させた。
KFSI+NaClO → NaFSI+KClO … (I)
次に、上記の反応後の溶液中に沈殿したKClOを減圧濾過により除去した後、KClOの除去後の溶液をパイレックス(登録商標)製の真空容器に入れ、真空ポンプによって333Kで2日間真空引きを行なうことによって、アセトニトリルを除去した。
【0057】
次に、アセトニトリル除去後の物質に塩化チオニルを加えて3時間攪拌することによって、以下の化学反応式(II)により反応させて水分を除去した。
O+SOCl → 2HCl+SO … (II)
その後、ジクロロメタンによる洗浄を3回行なって塩化チオニルを除去した後、塩化チオニルの除去後の物質をPFAチューブに入れ、真空ポンプによって323Kで2日間真空引きを行なうことによってジクロロメタンを除去した。これにより、白色の粉末状のNaFSIを得た。
【0058】
そして、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、上記のようにして得たNaFSIの粉末と、KFSI(第一工業製薬(株)製)の粉末とをNaFSIとKFSIとのモル比がNaFSI:KFSI=0.45:0.55となるように秤量して混合して混合粉末を
作製した後、その混合粉末の融点である57℃以上にその混合粉末を加熱して溶融させることによって、NaFSI−KFSIの溶融塩を作製した。
【0059】
(セルの作製)
正極A及び負極A’をドライルーム中(露点−65℃)に移し、さらに180℃で12時間、減圧環境で乾燥した。得られた正極A及び負極A’を直径14mmに打ち抜き、その後、負極A’に厚さ15μmのナトリウム金属箔を圧着した。
正極と負極のナトリウムを圧着した面の間にポリプロピレン製のセパレーターを挟んで対向させて単セル素子とし、ステンレススチール製スペーサを用いてR2032サイズのコインセルケースに収納し、上記で作製したNaSFI−KFSI電解質の溶融液を注入して電極及びセパレーターに含浸した。
さらに、プロピレン製の絶縁ガスケットを介してケース蓋を締めて封口して、コイン形の試験用キャパシタAA’を作製した。その後、60℃の恒温槽中で24時間放置して負極に圧着したナトリウムをイオン化して負極の黒鉛に吸蔵させた。
【0060】
[実施例2]
実施例1において、「負極の作製」及び「セルの作製」を以下のようにしたことを除いては実施例1と同様にしてキャパシタAA”を作製した。
(負極の作製)
ドライルーム中で上記の銅箔(負極集電体)上に、金属ナトリウムからなる箔を圧着して実施例2の負極A”を得た。
(セルの作製)
正極Aをドライルーム中(露点−65℃)に移し、さらに180℃で12時間、減圧環境で乾燥した。得られた正極Aを直径14mmに打ち抜いた。
正極と負極のナトリウム面の間にポリプロピレン製のセパレーターを挟んで対向させて単セル素子とし、ステンレススチール製スペーサを用いてR2032サイズのコインセルケースに収納し、上記で作製したNaSFI−KFSI電解質の溶融液を注入して電極及びセパレーターに含浸した。
さらに、プロピレン製の絶縁ガスケットを介してケース蓋を締めて封口して、コイン形の試験用キャパシタAA”を作製した。
【0061】
[比較例1]
実施例1において、「負極の作製」及び「セルの作製」を以下のようにしたことを除いては実施例1と同様にしてキャパシタBB’を作製した。
(負極の作製)
リチウムを吸蔵脱離できる天然黒鉛粉末100重量部に、導電助剤としてケッチェンブラック(KB)2重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン粉末4重量部、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)15重量部を添加し、混合機で攪拌することにより、黒鉛系負極ペーストを調製した。
この黒鉛系負極ペーストを厚さ20μmの銅箔(負極集電体)上に、ドクターブレード(ギャップ400μm)を用いて塗布した。実際の塗布量は10mg/cmであった。次に、乾燥機で100℃、1時間乾燥させて溶媒を除去した後、直径500ミリのローラープレス機(スリット:200μm)で加圧して実施例1の負極B’を得た。加圧後の厚さは220μmであった。
【0062】
(セルの作製)
正極A及び負極B’をドライルーム中(露点−65℃)に移し、さらに180℃で12時間、減圧環境で乾燥した。得られた正極A及び負極B’を直径14mmに打ち抜き、その後、負極A’に厚さ15μmのリチウム金属箔を圧着した。
正極と負極のリチウムを圧着した面の間にポリプロピレン製のセパレーターを挟んで対向させて単セル素子とし、ステンレススチール製スペーサを用いてR2032サイズのコインセルケースに収納し、1mol/LのLiPF6を溶かした、エチレンカーボネイト(EC)とジエチルカーボネイト(DEC)を体積比1:1で混合した電解液を注入して電極及びセパレーターに含浸した。
さらに、プロピレン製の絶縁ガスケットを介してケース蓋を締めて封口して、コイン形の試験用キャパシタAB’を作製した。その後、60℃の恒温槽中で24時間放置して負極に圧着したリチウムをイオン化して負極の黒鉛に吸蔵させた。
【0063】
<静電容量の評価>
実施例1、比較例1のキャパシタをそれぞれ10個作製し、80℃の恒温槽に6時間放置したのち、充電を2mA/cm2で2時間、放電を1mA/cm2で行い、初期静電容量及び充電電圧・作動電圧範囲を調べた。また、比較例に関しては室温(25℃)中でも同様の評価を行った。それらの平均値を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
上記のように、本発明のキャパシタは作動電圧範囲が比較例に比べて若干低いものの、80℃における性能は比較例1の室温動作時の特性と同等程度であるが、比較例1のキャパシタは80℃における性能は、80℃での充電中にすべてのコインセルが破裂してしまい、評価できなかった。有機電解液の気化と、充電時の分解が加速されたことによるガス発生が起こったと考えられる。
【符号の説明】
【0066】
A キャパシタ
1 分極性電極
2 セパレータ
3 溶融塩電解質
4 リード線
5 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭を主体とした活物質を用いた正極と、ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料あるいはナトリウム金属箔を主体とした負極と、ナトリウム塩を含む溶融塩を主体とした電解質とを備えたことを特徴とするキャパシタ。
【請求項2】
前記正極の集電体がアルミ箔であることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記正極の集電体がアルミニウム多孔体であることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項4】
前記アルミニウム多孔体のアルミニウム含有量が、95質量%以上であることを特徴とする請求項3に記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記アルミニウム多孔体の金属目付け量が150g/m2以上、600g/m2以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記アルミニウム多孔体の平均孔径が、200μm以上、800μm以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項7】
前記アルミニウム多孔体の厚さが0.2mm以上、5mm以下であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項8】
前記ナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料が、ハードカーボンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記負極の集電体が、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウムのいずれかの金属、あるいはこれらの金属の複合材料からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項10】
前記負極の集電体が、多孔体であることを特徴とする請求項9に記載のキャパシタ。
【請求項11】
前記電解質が、下記式(1)で表される物質FSIをアニオンとし、カチオンとして、ナトリウムイオンか、又は、ナトリウムイオンと他のアルカリ金属のカチオン及びアルカリ土類金属のカチオンから選ばれる少なくとも一種とを含む溶融塩であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のキャパシタ。
【化1】

(前記式(1)において、R1およびR2はそれぞれ独立にフッ素原子またはフルオロアルキル基を示す。)
【請求項12】
負極容量が正極容量よりも大きく、ナトリウムイオンの吸蔵量が、正極容量と負極容量の差の90%以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項13】
アルミニウムを主成分とするアルミニウム多孔体を集電体として用い、該アルミニウム多孔体に、活性炭を主体とした正極活物質を充填して得た正極と、金属箔にナトリウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料を主体とした負極活物質を塗布し、ナトリウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させて得た負極又は金属箔にナトリウム金属箔を圧着した負極とを、セパレーターを介して対向させ、ナトリウム塩を含む溶融塩を含浸させてキャパシタを得ることを特徴とするキャパシタの製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2012−243924(P2012−243924A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112064(P2011−112064)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】