説明

キャビネット用ファン取付具

【課題】ファンを容易に後付けすることができ、キャビネットの汎用性の向上や低コスト化等を図ることができるキャビネット用ファン取付具を提供する。
【解決手段】スリット14に挿通可能で、且つ、左右方向で隣り合うスリット14、14同士の間隔と同じ間隔で設けられた一対の係止爪を有する取付爪2と、該取付爪2を上下縁に沿って固定可能で、且つ、ファン取付部8が設けられた取付板3とからなるファン取付具を用い、取付板3にネジ止めされた取付爪2の係止爪を、スリット14、14の後面側から前面側へ挿通させ、扉体2の表面に係止させることにより、取付板3をスリット14、14・・の後方位置で支持可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器等を収納するキャビネットに換気用のファンを取り付けるためのキャビネット用ファン取付具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器等の収納を目的として製造されるキャビネットには、キャビネット内を換気するために、たとえば扉体等に複数のスリットが形成されている。しかしながら、キャビネット内部へ収納する電気機器の種類や大きさ、数等により、スリットを設けただけでは十分に換気できないこともあるため、たとえば特許文献1に記載されているように、扉体等の内面側においてスリットを覆うようにファンを取り付けたキャビネットも考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−223874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、キャビネットの設置後に、キャビネット内へ収納する電気機器の種類や数に応じて使用者からファンの後付けを望まれる場合があった。しかしながら、従来では、ファンを取り付けるに際し、扉体にファンを取り付けるための取付孔等を設ける必要があることから、ファンの後付けが非常に困難であった。そのため、予めファンが取り付けられてなるキャビネットに交換しなければならない場合もあり、キャビネットの汎用性やコストの点で問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、ファンを容易に後付けすることができ、キャビネットの汎用性の向上や低コスト化等を図ることができるキャビネット用ファン取付具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、複数のスリットが並設されてなる換気部が設けられたキャビネットに対し、前記キャビネット内を換気するファンを取り付けるためのキャビネット用ファン取付具であって、板状の壁部、該壁部の一方縁から略直角に折り曲げ形成された係止爪、及び前記壁部の他方縁に前記係止爪とは逆方向へ略直角に折り曲げ形成された固定部とを備えた取付爪と、前記ファンを取り付けるためのファン取付部を有するとともに、前記取付爪の前記固定部を当接状態で固定可能な矩形状の取付板とからなり、前記取付板の対向する二辺に沿って、前記係止爪が前記二辺から夫々外方へ突出するような姿勢で複数の前記取付爪を固定するとともに、該取付爪の係止爪を、前記キャビネットの内部側から前記スリットに挿通させ、前記キャビネットの表面に係止させることにより、前記取付板を前記スリットの前記キャビネット内方側に支持可能としたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記取付板が、矩形板状体の四辺を全て前方へ折り曲げてなるカバー状に形成されており、折り曲げた側を前記キャビネットの内面に近接させた姿勢で前記取付爪により支持されることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明においてカバー状に形成された前記取付板の内部空間に、前記スリットを介しての塵埃の侵入を防止するためのフィルター部材を収納したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、係止爪を備えた取付爪とファン取付部を有する取付板とを用い、取付板の対向する二辺に沿って、係止爪が二辺から夫々外方へ突出するような姿勢で複数の取付爪を固定するとともに、該取付爪の係止爪を、キャビネットの内部側からスリットに挿通させ、キャビネットの表面に係止させることにより、取付板をスリットのキャビネット内方側に支持可能としている。したがって、ファンを後付けしたい場合に、キャビネット全体を交換したりすることなく、非常に容易に後付けすることができ、キャビネットの汎用性を向上することができるし、ひいてはコストの低減等をも図ることができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、取付板をカバー状に形成しており、折り曲げた側をキャビネットの内面に近接させた姿勢で取付爪により支持させている。したがって、折り曲げ部によって取付板の板状体とキャビネットの内面との間を被覆することができるため、ファンを取付板に取り付けるためのネジ等を使用者から隠すことができ、キャビネット用ファン取付具の設置後の見栄えを良くすることができる。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、カバー状に形成された取付板の内部空間にフィルター部材を収納しているため、スリットを介して塵埃がキャビネット内へ侵入することを防止することができるし、ファンの騒音抑制にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】キャビネットを正面側から示した説明図である。
【図2】ファンを取り付けるための取付爪を示した説明図であり、(a)は後方から示した説明図、(b)は側方から示した説明図である。
【図3】ファンが取り付けられる取付板を示した説明図であり、(a)は後方から示した説明図、(b)は側方から示した説明図である。
【図4】取付爪及び取付板を扉体の換気部に取り付けた状態を扉体の後面側から示した説明図である。
【図5】図4に示す状態の上下方向での断面を示した説明図である。
【図6】取付板へファンを取り付けた状態を示した説明図である。
【図7】図6に示す状態を上方から示した示した説明図である。
【図8】取付爪の変更例を示した説明図であり、(a)は後方から示した説明図、(b)は側方から示した説明図である。
【図9】変更例となる取付爪及び取付板を扉体の換気部に取り付けた状態を扉体の後面側から示した説明図である。
【図10】図9に示す状態の左右方向での断面を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となるキャビネット用ファン取付具(以下、単にファン取付具と称す)について、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、キャビネット1を正面側から示した説明図である。また、図2は、ファン40を取り付けるための取付爪2を示した説明図であり、(a)は後方から示した説明図、(b)は側方から示した説明図である。さらに、図3は、ファン40が取り付けられる取付板3を示した説明図であり、(a)は後方から示した説明図、(b)は側方から示した説明図である。
【0011】
キャビネット1は、前面に開口を有する箱体である本体11と、本体11の前面開口を開閉するための扉体12とからなる。扉体12は、その右側縁(前方から見て)を本体11に軸支されて片開き可能に取り付けられており、左側縁部の略中央には取っ手13が設けられている。また、該扉体12の上部及び下部には、多数の上下方向へ長いスリット14、14・・からなる換気部15が設けられている。各スリット14は、扉体12を閉じたままキャビネット1内の換気を図るために開設されたものであって、このスリット14、14・・が、上部及び下部の換気部15では上下方向へ4列、左右方向へ65行にわたって並設されている。
【0012】
そして、上記キャビネット1に対してファン40を後付けしたい場合には、以下に記載の取付爪2及び取付板3からなるファン取付具を用いればよい。
取付爪2は、取付板3を支持するための金属製の部材であって、前後方向に延びる板状の壁部2aと、壁部2aの前縁に設けられた一対の係止爪2b、2bと、壁部2aの後縁に設けられた板状の固定部2cとを一体的に備えている。そして、係止爪2b、2bと固定部2cとは、壁部2aから互いに逆方向へ略直角に折り曲げて形成されている。また、各係止爪2bは、スリット14内に挿通可能に形成されており、係止爪2b、2b同士の間隔は、左右方向で隣り合うスリット14、14同士の間隔と同じとされている。一方、固定部2cには、後述する取付板3にネジ止めするためのネジ孔4が設けられている。
【0013】
取付板3は、ファン40を取付可能な金属製の部材であって、左右方向へ長い板状体の四辺を全て前方に折り曲げたカバー状に形成されてなる。この取付板3は、上下の各換気部15を覆うことができる左右幅及び上下幅を有しており、板状体の上縁及び下縁に沿って、取付爪2の固定部2cを固定可能な複数のネジ孔5、5・・が設けられている。また、取付板3には、ファンを取り付けるためのファン取付孔6、6・・及び排気のためのファン孔7からなるファン取付部8が3箇所設けられている。尚、取付板3の折り曲げ部の折り曲げ長さは、取付爪2の壁部2aの前後方向長さ及び固定部2cの厚みと略同じとされている。そして、後述するように取付板3に取付爪2をネジ止めした場合、取付爪2の係止爪2b、2bが、取付板3の折り曲げ部の前縁を越えて上下外方へ突出可能となっている。
【0014】
ここで、上記取付爪2及び取付板3を用いて、キャビネット1へファン40を後付けする方法について説明する。図4は、取付爪2、2・・及び取付板3を扉体2の換気部15に取り付けた状態を扉体2の後面側から示した説明図であり、図5は、同状態の上下方向での断面を示した説明図である。図6は、取付板3へファン40、40・・を取り付けた状態を示した説明図であり、図7は、同状態を上方から示した説明図である。尚、図4及び図5では、取付板3に取付爪2を取り付けるためのネジについて、その図示を省略している。
【0015】
まず、取付板3の板状体に対し、各ネジ孔5毎に1つの取付爪2をネジ41(図6に示す)により仮ネジ止めする。この仮ネジ止め作業に際しては、各取付爪2の固定部2cの表面を板状体の前面側(すなわちカバーの内部空間側)から当接させた状態でネジ止めする。また、取付板3の上縁側のネジ孔5、5・・に取り付ける取付爪2、2・・は、係止爪2b、2bが取付板3の前縁を越えて上方へ突出する姿勢とし、取付板3の下縁側のネジ孔5、5・・に取り付ける取付爪2、2・・は、係止爪2b、2bが下方へ突出する姿勢とする。さらに、どの取付爪2、2・・もガタ付き可能な程度にネジ止めする。
【0016】
次に、各取付爪2の係止爪2b、2bを、各換気部15において扉体2の後面側から隣り合うスリット14、14に挿通させて扉体2の前面側へ突出させ、扉体2の表面(スリット14、14の上下外側の周縁部)に係止させる。この係止作業に際しては、取付板3の上縁又は下縁の何れか一方の取付爪2、2・・の係止爪2b、2bをまずスリット14、14・・の周縁部に係止させた後、他方の取付爪2、2・・をガタ付きの範囲内で傾倒させ、その係止爪2b、2bをスリット14、14へ挿通・係止させればよい。また、各係止爪2b、2bをどのスリット14、14に挿通させるか、すなわち取付爪2の係止位置については、取付板3によって換気部15のスリット14、14・・が全て覆われる位置であればよい。
【0017】
そして、最後に、仮止めしていたネジ41を締め上げて、取付板3と取付爪2、2・・とを強固に連結すれば取付板3が換気部15の後方位置(スリット14、14・・のキャビネット1内方側)で支持される。そこで、取付板3のファン取付部8、8・・に一般的に使用されているファン40、40・・をネジ止め等により取り付ければ、キャビネット1へのファン40の後付けは完了となる。尚、ファン40を取り付けたものの、ファン40の必要がなくなった場合等には、上記方法とは逆の手順により、ファン40を取り外すことも可能である。
【0018】
上述したようなファン取付具によれば、スリット14に挿通可能で、且つ、左右方向で隣り合うスリット14、14同士の間隔と同じ間隔で設けられた一対の係止爪2b、2bを有する取付爪2と、該取付爪2を上下縁に沿って固定可能で、且つ、ファン取付部8が設けられた取付板3とからなり、取付板3にネジ止めされた取付爪2の係止爪2b、2bを、スリット14、14の後面側から前面側へ挿通させ、扉体2の表面に係止させることにより、取付板3をスリット14、14・・の後方位置で支持可能としている。したがって、ファン40を後付けしたい場合に、キャビネット全体を交換したりすることなく、ファン40の後付けを非常に容易に行うことができ、キャビネット1の汎用性を向上することができるし、ひいてはコストの低減等をも図ることができる。
【0019】
なお、本発明に係るファン取付具は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、取付爪や取付板に係る構成、キャビネットへの取付位置に係る構成等を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0020】
たとえば、上記取付爪2及び取付板3に代えて、図8〜図10に示す取付爪22及び取付板23を採用することも可能である。取付爪22は、上下方向に長い板状体を前後方向に立設させてなる壁部22aを備えているとともに、該壁部22aの前縁に一対の係止爪22b、22bを、後縁に2つのネジ孔24、24を有する固定部22cを、夫々逆方向へ略直角に折り曲げ形成してなる。また、各係止爪22bは、スリット14内に挿通可能に形成されており、係止爪22b、22b同士の間隔は、各換気部15の最上段のスリット14と最下段のスリット14との間隔と同じとされている。一方、取付板23は、取付板3同様のカバー状に形成されており、ファン取付部8も同様に設けられているものの、取付爪22をネジ止めするためのネジ孔25については板状体の四隅にのみ設けられている。
【0021】
以上のような取付爪22及び取付板23を用いる際にも、上記実施形態同様に、まず取付爪22、22を、取付板23の左右両側に前面側から仮ネジ止めする。このとき、取付爪22、22の係止爪22b、22b・・は、取付板23の左右両側の折り曲げ部前縁を越えて夫々外方へ突出する。そして、この係止爪22b、22bを、各換気部15の左右の最上段のスリット14及び最下段のスリット14に扉体2の後面側から挿通させ、扉体22の表面(スリット14、14の左右外側の周縁部)に係止させた後、ネジを締め付けて取付爪22と取付板23とを強固に連結するだけで良い。したがって、上記実施形態同様、ファン40の後付けを容易に行うことができ、キャビネット1の汎用性の向上等を図ることができる。
【0022】
また、上記実施形態や変更例のファン取付具において、取付板3、23の前面と扉体2の後面との間の空間、すなわちカバーの内部空間に、スリット14、14・・を介して塵埃が侵入する事態を防止するためのフィルター部材を収納してもよい。尚、フィルター部材を収納することにより、ファン40を駆動させた際に生じる騒音の抑制にもなる。
さらに、取付爪2、22に設ける係止爪2b、22b同士の間隔も適宜変更可能であって、上記実施形態や変更例の間隔に何ら限定されることはないし、係止爪を1つしか有さない取付爪を採用することも可能である。
【0023】
さらにまた、取付板2、23を必ずしもカバー状に形成する必要はなく、ただの板状体として構成することも可能である。ただ、取付板3、23をカバー状に形成することにより、たとえば取付爪2、22の壁部2a、22aやファン40をファン取付部8に取り付ける際のネジ等を被覆することができ、見栄えが良くなるといった効果がある。
加えて、キャビネットの扉体以外に換気部が形成されている場合には、その換気部にファン取付具を用いてファンを取り付けることは当然可能である。また、スリットが上下方向や左右方向へ十分に長いような場合には、1つのスリットに2つの取付爪の係止爪を挿通させることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・キャビネット、2、22・・取付爪、2a、22a・・壁部、2b、22b・・係止爪、2c、22c・・固定部、3、23・・取付板、4、24・・ネジ孔、5、25・・ネジ孔、6・・ファン取付孔、7・・ファン孔、8・・ファン取付部、12・・扉体、14・・スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスリットが並設されてなる換気部が設けられたキャビネットに対し、前記キャビネット内を換気するファンを取り付けるためのキャビネット用ファン取付具であって、
板状の壁部、該壁部の一方縁から略直角に折り曲げ形成された係止爪、及び前記壁部の他方縁に前記係止爪とは逆方向へ略直角に折り曲げ形成された固定部とを備えた取付爪と、
前記ファンを取り付けるためのファン取付部を有するとともに、前記取付爪の前記固定部を当接状態で固定可能な矩形状の取付板とからなり、
前記取付板の対向する二辺に沿って、前記係止爪が前記二辺から夫々外方へ突出するような姿勢で複数の前記取付爪を固定するとともに、該取付爪の係止爪を、前記キャビネットの内部側から前記スリットに挿通させ、前記キャビネットの表面に係止させることにより、前記取付板を前記スリットの前記キャビネット内方側に支持可能としたことを特徴とするキャビネット用ファン取付具。
【請求項2】
前記取付板が、矩形板状体の四辺を全て前方へ折り曲げてなるカバー状に形成されており、折り曲げた側を前記キャビネットの内面に近接させた姿勢で前記取付爪により支持されることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット用ファン取付具。
【請求項3】
カバー状に形成された前記取付板の内部空間に、前記スリットを介しての塵埃の侵入を防止するためのフィルター部材を収納したことを特徴とする請求項2に記載のキャビネット用ファン取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−187834(P2011−187834A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53607(P2010−53607)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000124591)河村電器産業株式会社 (857)
【Fターム(参考)】