説明

キャビネット

【課題】引出を引き出さずとも内引出内の収納物を容易に取り出すことができるキャビネットを提供すること。
【解決手段】前板8は、前後方向に揺動可能に前板8の下端部を収納箱6の正面側に枢支されており、収納箱6の上方には、前板収納部10の後方に近接配置され、収納物23を収納可能である内引出22を備え、前板8と内引出22との間には、引出1の前方側に向けて所定開度揺動される前板8に応じて、前板収納部10と内引出22との近接状態を維持しながら内引出22を前方に向けて引き出す連動手段15,16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方に向けて開口し収納物を収納可能な収納箱と、収納箱の正面側に配置され背面に収納物を収納可能な前板収納部を備える前板とから構成されるとともに、前方側に向けて開口するキャビネット本体内に収納される収納位置と、キャビネット本体外に引き出される引出位置と、の間で移動可能に案内される引出を備えたキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前端部に調理小物ホルダ(前板収納部)を背面に有する前板が設けられた引出と、この引出の上方に配置された網棚(内引出)と、を備えるキッチン(キャビネット)がある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−253321号公報(第6頁、第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のキッチン(キャビネット)にあっては、網棚(内引出)に収納されている収納物を取り出すには、一旦引出を引き出した後に網棚を引き出す必要があり、網棚内の収納物のみを取り出したい場合等には不便であるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、引出を引き出さずとも内引出内の収納物を容易に取り出すことができるキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明のキャビネットは、
上方に向けて開口し収納物を収納可能な収納箱と、該収納箱の正面側に配置され背面に収納物を収納可能な前板収納部を備える前板とから構成されるとともに、前方側に向けて開口するキャビネット本体内に収納される収納位置と、前記キャビネット本体外に引き出される引出位置と、の間で移動可能に案内される引出を備えたキャビネットであって、
前記前板は、前後方向に揺動可能に前記前板の下端部を前記収納箱の正面側に枢支されており、前記収納箱の上方には、前記前板収納部の後方に近接配置され、収納物を収納可能である内引出を備え、
前記前板と前記内引出との間には、前記収納箱の前方側に向けて所定開度揺動される前記前板に応じて、前記前板収納部と前記内引出との近接状態を維持しながら該内引出を前方に向けて引き出す連動手段が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、前板を収納箱の前方側に向けて所定開度揺動しただけで、内引出が前板収納部との近接状態を維持しながら前方に引き出されるので、前板収納部から収納物を取り出し易いばかりでなく、内引出の前方部分に収納されている収納物も取り出すことかでき、引出を引出位置に向けて引き出した後に内引出を引き出す2段アクションを必要とせず使い勝手がよい。
また、前板の前板収納部と内引出の前方部に使用頻度の高い物を収納しておけば、通常使用時には引出自体を収納位置から引出位置に向けて引き出さずとも、前板を収納箱の前方に向けて揺動させるだけですみ、使用者にとって利便性がよい。
【0007】
本発明のキャビネットは、
前記連動手段は、前記前板に連結されている第1リンク部材を備え、該第1リンク部材と前記内引出とには磁性体が設けられており、両該磁性体は、少なくとも前記引出が前記収納位置に収納配置されている際に磁着されていることを特徴としている。
この特徴によれば、引出を引出位置に向けて引き出した場合でも、内引出と第1リンク部材との両磁性体による連結をいつでも解除することで収納箱の上方を開放し、収納箱からの収納物の取り出しを容易に行うことができる。
【0008】
本発明のキャビネットは、
前記連動手段は、前記第1リンク部材の移動速度を前記キャビネット本体の背面側に向けて転換する伝達部と、該伝達部の出力によって前記キャビネット本体の背面側に向けて移動可能な第2リンク部材と、を備え、前記キャビネット本体には、前記第2リンク部材の前記キャビネット本体の背面側への移動を阻止する阻止部材が設けられており、前記内引出を前方に向けて一定量引き出した後に前記引出を前記引出位置に向けて引き出すことを特徴としている。
この特徴によれば、前板の収納箱の前方側への揺動を、第2リンク部材のキャビネット本体の背面側への移動に転換し、第2リンク部材が阻止部材を押圧する力によって引出を引出位置に向けて引き出すことができるとともに、引出と内引出とを時間差で引き出すことができるので、内引出または前板収納部からのみ収納物を取り出したい場合には、内引出とともに引出を引き出す必要がない。
【0009】
本発明のキャビネットは、
前記内引出には、前方を向く開口部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、前板が引出の前方側に向けて所定開度揺動された際に、使用者は、前方に引き出された内引出内から開口部を介して容易に収納物を取り出すことができる。
【0010】
本発明のキャビネットは、
前記開口部は、前記前板収納部の上端部よりも上方に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、前板が収納箱の前方側に向けて所定開度揺動された際に、使用者は、内引出内から開口部を介して取り出す収納物を前板収納部に引掛けることなく取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における引出を示す斜視図である。
【図2】引出の側板を示す一部拡大斜視図である。
【図3】引出の側板を示す横断平面図である。
【図4】収納位置に配置された引出の側板を示す縦断側面図である。
【図5】図4における引出の側板のA−A断面図である。
【図6】当接部が阻止部材を押圧するまで前板が正面側に揺動された状態を示す縦断側面図である。
【図7】引出位置に引き出された引出を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係るキャビネットを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
実施例に係るキャビネットにつき、図1から図7を参照して説明する。以下、図4、図6、図7の紙面左側と、図3の紙面下側及び図5の紙面手前側をキャビネットの正面側(前方側)として説明する。
【0014】
図1の符号1は、本発明の適用されたキャビネットにおいて、キャビネット本体2内に収納配置された引出である。この引出1は、図1に示すように、正面側に開口するキャビネット本体2内に上下2段が収納されている。この引出1は、前方と上方とに開口して内部に皿や鍋等の収納物5を収納可能な略方形状の収納箱6を有しており、収納箱6の正面側には、上端部に使用者が把持するための把手7が取り付けられた前板8が配置されている。
【0015】
また、それぞれの引出1の左右側方には側板2a,2aが設けられている。これら側板2a,2aは、キャビネット本体2の左右両側板を構成するほか、引出1同士の間に設けられる仕切板を構成している。
【0016】
また、側板2a,2aには、図示しないレールが設けられている。これらレールによって、引出1は、使用者によって使用者の手前方向(前方向)に向けて長さL1だけ引き出される引出位置(図7参照)と、この引出位置から使用者によりキャビネット本体2の背面側に向けて押し込まれることで前板8がキャビネット本体2の側板2aの前端部に当接して、引出1が閉鎖された状態の収納位置との間で前後方向に移動自在に支持されている。
【0017】
次に、引出1について詳述する。尚、本実施例の引出1は左右対称に構成されているため、本実施例では引出1の右方側のみを説明し、引出1の左方側については説明を省略する。
【0018】
前板8の背面には、収納箱6内の収納物5よりも使用頻度の高いまな板や包丁等の収納物9を収納するための本発明における前板収納部としての収納篭10が取り付けられている。
【0019】
更に、収納箱6を構成する側板6aは、図2及び図3に示すように、前端部をカバー体12によって被覆されている。前板8はこのカバー体12内の前端下部に設けられた左右方向を向く枢軸13によって下端部を枢支され、前後方向に揺動可能となっている。このため、前板8の前後方向への揺動によって収納箱6の正面側への開放及び閉塞がなされるようになっている。尚、図4に示すように、引出1が収納位置に収納配置されているときの前板8の重心Gは、前板8をカバー体12に枢支する枢軸13よりも収納箱6の背面側に配置されている。したがって、引出1が収納位置に収納配置され前板8が収納箱6の正面側を閉塞している際には、前板8が自重によって収納箱6の前方側に揺動することが無い。
【0020】
また、図3、図4及び図5に示すように、側板6aは、内部が中空部14に形成されている。この中空部14の上端部には、前後方向を向く略直方体形状のスライド板15が前後方向に移動自在に配置されている。具体的には、中空部14の上端部の左右側部には、左右方向を向く溝部6dが側板6aの前後方向略全長に亘って形成されており、スライド板15の上端部には、これら溝部6d内に配置される摺接片15aが突設されている。
【0021】
このため、スライド板15は溝部6d内で両摺接片15a,15aによって吊持されている状態で、中空部14内を水平に前後方向に摺動する。尚、スライド板15の下面には、前後方向略全長に亘ってラック部15bが形成されている。
【0022】
そして、スライド板15の前端部には、棒状のステー16の一端が左右方向を向く枢軸によって揺動可能に枢支されている。このステー16の他端は、側板6aの正面に形成された貫通孔6eとカバー体12に形成された貫通孔12aとを介して前板8の背面の右端部に左右方向を向く枢軸によって揺動可能に枢着されている。つまり、スライド板15とステー16とで本発明における第1リンク部材を構成しており、スライド板15は前板8の前後方向への揺動に応じて前後方向に中空部14内を移動可能となっている。尚、このステー16の一端と他端及びスライド板15は、前板8が収納箱6の正面側を閉塞している状態では、上下位置が略同一となるように配置されている。
【0023】
尚、スライド板15は、摺接片15aが溝部6dの前端部に当接することでそれ以上の収納箱6の正面側への移動が規制されているため、スライド板にステー16を介して接続されている前板8も収納箱6の前方側への揺動が規制されている。
【0024】
図3、図4及び図5に示すように、中空部14内のスライド板15下方には、ラック部15bと噛み合うピニオンギア(歯車)17aが左右方向を向く枢軸によって枢支されている。このピニオンギア17aの同一の枢軸上には、ピニオンギア17aよりも小径に形成されたピニオンギア17bが枢支されている。
【0025】
更に、ピニオンギア17bの下方には、上面にピニオンギア17bに噛み合うラック部18aが形成された前後方向を向く直方体形状の本発明における第2リンク部材としてのスライド板18が、スライド板15の移動に従い中空部14内を前後方向に移動自在に配置されている。このため、スライド板15の前後方向への移動は、ピニオンギア17a、17bによって減速されてスライド板18に伝達されるようになっている。つまり、これらピニオンギア17a,17bによって本発明における伝達部が構成されている。
【0026】
図2、図4及び図5に示すように、側板6aの外側面には、中空部14に貫通する貫通長孔6fが側板6aの前後方向を向いて形成されており、この貫通長孔6f内には、スライド板18の右側部が挿入配置されている。また、貫通長孔6fの上下には、貫通長孔6fの前後方向略全長に亘って係止溝部6g,6gが形成されており、スライド板18の右側部の上下には、これら係止溝部6g,6g内に挿入配置される係止片18bが突設されている。このため、スライド板18は貫通長孔6f内で左右方向に脱落することなく前後方向に摺動するようになっている。
【0027】
更に、側板6aの上端部には、中空部14に貫通する貫通孔6hが側板6aの前後方向を向いて形成されている。そして、スライド板15には、側板6aの上方に向けてアーム部15cが貫通孔6hを介して突設されている。尚、このアーム部15cの上端後部には、後述する永久磁石20に磁着するための本発明における磁性体としての金属片21が取り付けられている。
【0028】
キャビネット本体2の側板2aの内側面には、平面視L字形状の阻止部材19が取り付けられており、スライド板18の前端部には、収納箱6の外側方に向けて当接部18cが貫通長孔6fを介して突設されている。これら阻止部材19と当接部18cとは、引出1がキャビネット本体2内の収納位置に収納配置されているときには前後方向に離間して配置されている。
【0029】
図1及び図4に示すように、前板8の背面側かつ収納箱6の上方には、前方及び上方に向けて開口する開口部22aを有し箸やナイフ、フォーク等の使用頻度の高い収納物23を収納するための内引出22が配置されている。この内引出22は、引出1が収納位置に収納配置されている際の内引出22の前端部と収納篭10の上端部とは、前後方向に所定の間隙24を保ちながら略同一の高さ位置に配置されている。
【0030】
また、引出1が収納位置に収納配置されている際の内引出22の開口部22aは、収納篭10の上端部よりも上方に配置されていることが好ましく、収納箱6aの上端部と内引出22の前端部とは前後方向で間隙24を形成して近接配置されている。
【0031】
尚、内引出22の底部には、本発明における磁性体としての永久磁石20が配設されている。この永久磁石20は、引出1が収納位置に配置されている際にアーム部15cに取り付けられた金属片21に後方から磁着可能となっている。このため、引出1が収納位置に収納配置されている際の内引出22の引出位置に向けての移動は、永久磁石20が金属片21を介してアーム部15cに当接するため規制されている。
【0032】
次に、このように構成された引出1の収納位置から引出位置への引き出しに伴う動作について説明する。先ず、図4及び図6に示すように、引出1が収納位置に収納配置されている状態から、使用者が把手7を把持し、把手7を収納箱6の前方側に引くことで前板8を収納箱6の前方側に向けて揺動させる。このとき、前板8の収納箱6の前方側への揺動に応じて、スライド板15は、キャビネット本体2の前方側への移動がなされる。加えて、前板8の重心Gが前板8をカバー体12に枢支している枢軸13よりも収納箱6の前方側まで移動されると、前板8の荷重自体を前板8の正面側に揺動させる力として使用することができる。
【0033】
ステー16の一端と他端とは、前板8が収納箱6の正面側を閉塞している状態では略同一の高さ位置に配置されているため、前板8の揺動角度が小さい間はステー16の一端と他端とがともに略水平に移動するので、スライド板15の正面側への移動によって、アーム部15cに金属片21と永久磁石20を介して連結されている内引出22が収納篭10との近接状態を維持しながらキャビネット本体2の前方側に向けて移動されるとともに、ラック部15bがピニオンギア17aを図4における側面視反時計回りに回転させる。同時に、ピニオンギア17aと同一枢軸上に枢支されているピニオンギア17bも図4における側面視反時計回りに回転する。
【0034】
このとき、使用者が把手7を略水平に収納箱6の前方側に向けて引くことで、使用者が把手7を収納箱6の前方側に引く力が略同一高さ位置に配置されたステー16の一端と他端及びスライド板15に効率よく伝達される。
【0035】
ピニオンギア17bは、ピニオンギア17aの回転速度を減速することで、前板8が収納箱6の前方側に向けて揺動される際に前板8にかかる力よりも増強された力をラック部18aに伝達するようになっている。このため、スライド板18は、ピニオンギア17bの図4における側面視反時計回りの回転によって中空部14内をキャビネット本体2の背面側に向けて摺動する。
【0036】
図6に示すように、前板8が前方側に所定開度揺動することで、当接部18cが阻止部材19に正面側から当接する。このときの前板8の上端部は使用者の手を前板8の背面側に上方から挿通させる程度の前後幅に開放され、内引出22の前端部は側板2aの前端部よりも前方に配置される。このため、本実施例の引出1は、引出1を収納位置に収納配置した状態のまま、前板8を収納箱6の前方側に所定開度揺動させるのみで収納篭10内の収納物9お呼び内引出22の前端部の収納物23を取り出すことができるようになっている。
【0037】
そして、使用者は、この当接部18cが阻止部材19に正面側から当接している状態から更に前板8を正面側に向けて揺動させることで、ピニオンギア17a、17bを介して阻止部材19を当接部18cによって背面側に向けて押圧し、収納箱6に正面側に向けての反力を生じさせる。
【0038】
このため、図7に示すように、収納箱6はこの反力によってキャビネット本体2内から押圧されることで、キャビネット本体2内の収納位置から引出位置に向けて引き出され、スライド板18は当接部18cが阻止部材19を押圧する位置を維持した状態で貫通長孔6f内を相対移動する。この収納箱6の引出位置に向けての引き出しと同時に、アーム部15cに金属片21と永久磁石20を介して連結されている内引出22が更に前方に向けて引き出される。つまり、スライド板15、ステー16、ピニオンギア17a、17b及びスライド板18は、本発明における連動手段を構成している。
【0039】
そして、スライド板15が溝部6dの前端部に当接することによって前板8の正面側への揺動が終了し、引出1は収納箱6をキャビネット本体2内から正面側に距離L1だけ引き出された引出位置に配置される。
【0040】
尚、前板8の前方側への揺動が終了した後は、引出1を引出位置から更に使用者が把手7を把持して引き出すことによって、前板8の揺動を維持したまま引出1を全開量引き出すことができる。更に尚、引出1を全開量引き出した状態から使用者が収納箱6内に収納されている収納物5を取り出すには、内引出22をキャビネット本体2の背面側に向けて押圧することによって永久磁石20と金属片21の磁着を解除させ、内引出22のみをキャビネット本体2の背面側に向けて押し戻す。このようにすることで、収納箱6の上方が完全に開放され、使用者は収納箱6内から収納物5を取り出すことができる。
【0041】
更に尚、永久磁石20と金属片21との磁着の解除は、引出1が全開量引き出される途上で自動的に行われるようにしてもよく、この場合は、引出1を全開量引き出した途上から使用者が収納箱6内から収納物5を取り出すことができる。
【0042】
引出1を引出位置から収納位置に収納配置させる場合は、使用者が前板8を背面側に向けて押し込むことで、引出1を引出位置から収納位置に移動させながら、前板8を前板8の重心Gが前板8をカバー体12に枢支している枢軸13よりも収納箱6の背面側に配置されるまでキャビネット本体2の背面側に向けて揺動させ、収納箱6の正面側を前板8によって閉塞する。
【0043】
尚、前述したように使用者が永久磁石20と金属片21の磁着が解除された状態で、キャビネット本体2の背面側に内引出22を押し戻した場合には、引出1が収納位置に向けて移動する途上で永久磁石20と金属片21が再び磁着される。このため、内引出22は、永久磁石20と金属片21が磁着した後は、引出1が収納位置に収納配置されるまで引出1とともに移動する。
【0044】
以上、本実施例におけるキャビネットにあっては、前板8は、前後方向に揺動可能に前板8の下端部を収納箱6の正面側に枢支されており、収納箱6の上方には、収納篭10の後方に近接配置され、収納物23を収納可能である内引出22を備え、前板8と内引出22との間には、収納箱6の前方側に向けて所定開度揺動される前板8に応じて、収納篭10と内引出22との近接状態を維持しながら内引出22を前方に向けて引き出す連動手段が設けられているので、収納篭10から収納物9を取り出し易いばかりでなく、内引出22の前方部分に収納されている収納物23も取り出すことかでき、引出1を引出位置に向けて引き出した後に内引出22を引き出す2段アクションを必要とせず使い勝手がよい。
【0045】
また、前板8の収納篭10と内引出22の前方部に使用頻度の高い物を収納しておけば、通常使用時には引出1自体を収納位置から引出位置に向けて引き出さずとも、前板8を収納箱6の前方に向けて揺動させるだけですみ、使用者にとって利便性がよい。
【0046】
また、連動手段は、前板8に連結されているスライド板15及びステー16を備え、スライド板15と内引出22とには永久磁石20及び金属片21が設けられており永久磁石20及び金属片21は、少なくとも引出1が収納位置に収納配置されている際に磁着されているので、引出1を引出位置に向けて引き出した場合でも、内引出22とスライド板15との永久磁石20及び金属片21による連結をいつでも解除することで収納箱6の上方を開放し、収納箱6からの収納物5の取り出しを容易に行うことができる。
【0047】
また、連動手段は、前記第1リンク部材の移動速度を前記キャビネット本体の背面側に向けて転換するピニオンギア17a,17bと、ピニオンギア17a,17bの出力によってキャビネット本体2の背面側に向けて移動可能なスライド板18と、を備え、キャビネット本体2には、スライド板18のキャビネット本体2の背面側への移動を阻止する阻止部材19が設けられており、内引出22を前方に向けて一定量引き出した後に引出1を引出位置に向けて引き出すので、前板8の収納箱6の前方側への揺動を、スライド板18のキャビネット本体2の背面側への移動に転換し、スライド板18が阻止部材19を押圧する力によって引出1を引出位置に向けて引き出すことができるとともに、引出1と内引出22とを時間差で引き出すことができるので、内引出22または収納篭10からのみ収納物9,23を取り出したい場合には、内引出22とともに引出1を引き出す必要がない。
【0048】
また、内引出22には、前方を向く開口部22aが形成されているので、前板8が収納箱6の前方側に向けて所定開度揺動された際に、使用者は、前方に引き出された内引出22内から開口部22aを介して容易に収納物23を取り出すことができる。
【0049】
また、開口部22aは、収納篭10の上端部よりも上方に配置されているので、前板8が収納箱6の前方側に向けて所定開度揺動された際に、使用者は、内引出22内から開口部22aを介して取り出す収納物23を収納篭10に引掛けることなく取り出すことができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0051】
例えば、前記実施例では、磁性体として内引出22に永久磁石20を取り付けるとともにアーム部15cに金属片21を取り付けたが、内引出22を磁性を有する金属材によって構成すると共にアーム部15cに永久磁石を取り付けてもよく、また、内引出22とアーム部15cに極性の異なる永久磁石を取り付けるようにしてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、前板8を収納箱6の前方に向けて所定開度揺動させて内引出22の前端部を側板2aの前端部よりも前方に配置した後、更に前板8を収納箱6の前方に向けて揺動させることで引出1を引出位置に向けて引き出したが、前板8の収納箱6の前方に向けての揺動範囲を内引出22の前端部を側板2aの前端部よりも前方に配置するまでの範囲に限定し、引出1の引出位置に向けての引き出しは、使用者が把手7を収納箱6の前方側に向けて引張ることで行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 引出
1a 側板
2 キャビネット本体
5 収納物
6 収納箱
6a 側板
8 前板
9 収納物
10 収納篭(前板収納部)
15 スライド板(連動手段,第1リンク部材)
16 ステー(連動手段,第1リンク部材)
17a,17b ピニオンギア(連動手段,減速手段)
18 スライド板(連動手段,第2リンク部材)
19 阻止部材
20 永久磁石(磁性体)
21 金属片(磁性体)
22 内引出
22a 開口部
23 収納物
24 間隙
G 重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に向けて開口し収納物を収納可能な収納箱と、該収納箱の正面側に配置され背面に収納物を収納可能な前板収納部を備える前板とから構成されるとともに、前方側に向けて開口するキャビネット本体内に収納される収納位置と、前記キャビネット本体外に引き出される引出位置と、の間で移動可能に案内される引出を備えたキャビネットであって、
前記前板は、前後方向に揺動可能に前記前板の下端部を前記収納箱の正面側に枢支されており、前記収納箱の上方には、前記前板収納部の後方に近接配置され、収納物を収納可能である内引出を備え、
前記前板と前記内引出との間には、前記収納箱の前方側に向けて所定開度揺動される前記前板に応じて、前記前板収納部と前記内引出との近接状態を維持しながら該内引出を前方に向けて引き出す連動手段が設けられていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記連動手段は、前記前板に連結されている第1リンク部材を備え、該第1リンク部材と前記内引出とには磁性体が設けられており、両該磁性体は、少なくとも前記引出が前記収納位置に収納配置されている際に磁着されていることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記連動手段は、前記第1リンク部材の移動速度を前記キャビネット本体の背面側に向けて転換する伝達部と、該伝達部の出力によって前記キャビネット本体の背面側に向けて移動可能な第2リンク部材と、を備え、前記キャビネット本体には、前記第2リンク部材の前記キャビネット本体の背面側への移動を阻止する阻止部材が設けられており、前記内引出を前方に向けて一定量引き出した後に前記引出を前記引出位置に向けて引き出すことを特徴とする請求項1または2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記内引出には、前方を向く開口部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のキャビネット。
【請求項5】
前記開口部は、前記前板収納部の上端部よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のキャビネット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate