説明

キャブのマウント構造及びキャブマウントシステム

【課題】トーションバーの機能を損なうことなく、車体フレームからキャブへの振動の伝達を抑制する。
【解決手段】キャブ2のマウント構造であって、キャブ2の後端側を支持する第1支持状態と第2支持状態とに設定可能なリアキャブマウント6と、固定端部72と自由端部73とを有するトーションバー7と、自由端部73から車両後方へ延びるとともに、キャブ2の後端側によって押下される作用部84を有し、押下に応じて下方へ傾動するレバー8と、移動規制状態と移動許容状態とに選択的に設定される被係止部85とレバー係止部9と、を備える。上方への傾動が許容された状態のレバー8の作用部84は、キャブ2の後端側を下方から押し上げるようにトーションバー7のねじり反力をキャブ2へ伝達し、レバー8の上方への傾動が規制され、且つリアキャブマウント6が第1支持状態に設定された状態で、キャブ2の後端側は作用部84から離間する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブオーバー型車両のキャブのマウント構造及びキャブマウントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
キャブの下方にエンジンルームが位置するキャブオーバー型車両には、キャブの前端側を車体側のフレームに対して回転自在に支持し、キャブの後端側を下方から支持するキャブのマウント構造を備えたものがある。エンジンの点検や整備を行う作業者は、キャブの後端側を前上方へ回転して上昇させる(キャブをチルトアップさせる)ことによって、エンジンルームを開放して作業を行うことができる。
【0003】
また、特開2007−176407号公報には、チルトアップする際の作業者の操作力を補助するトーションバーが記載されている。キャブの前方下面には、キャブマウントブラケットを介してマウントチューブが固定され、マウントチューブの両端部近傍は、フレームに固定されたキャブヒンジブラケットに回動可能に軸支される。トーションバーは、マウントチューブに内挿される。トーションバーの一端部は、マウントチューブに固定され、トーションバーの他端部は、キャブヒンジブラケットに固定されたアンカーアームに嵌合固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−176407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2007−176407号公報の構造では、トーションバーの一端部は、マウントチューブ及びキャブマウントブラケットを介してキャブに固定され、トーションバーの他端部は、アンカーアーム及びキャブヒンジブラケットを介して車体フレームに固定される。すなわち、車体フレームとキャブとは、トーションバーを介して常時連結された状態に維持され、車体フレームの振動は、トーションバーを介してキャブへ常時伝達される。
【0006】
このような振動の伝達は、車体フレームからキャブへの振動伝達経路の途中に弾性体などの防振部材を介在させることによって抑制可能である。
【0007】
しかし、防振部材を介在させる場所は、トーションバーの両端部の近傍(トーションバーの一端部とマウントチューブとの接合部付近やトーションバーの他端部とアンカーアームとの接合部付近)に限定されるため、防振部材の配置スペースを確保することが難しい。また、トーションバーのねじり反力から受ける荷重はトーションバーに近づくほど増大するので、トーションバーの近傍に防振部材を配置する場合、その強度を高く(バネ定数を大きく)設定しなければならない。このため、所望の防振効果を発揮するように防振部材のバネ定数を任意に設定することができず、車体フレームからキャブへの振動の伝達を抑制することが難しい。
【0008】
そこで本発明は、トーションバーの機能を損なうことなく、車体フレームからキャブへの振動の伝達を抑制することが可能なキャブのマウント構造及びキャブマウントシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明のキャブのマウント構造は、車体フレームの前端部に対して回転自在に支持される前端下部を有し、車体フレームに対して後端側が上昇したチルト状態と下降した非チルト状態とに設定可能なキャブのマウント構造であって、支持手段と、トーションバーと、レバーと、レバー規制手段と、を備える。
【0010】
支持手段は、非チルト状態のキャブの後端側と車体フレームとの間に介在し、キャブの後端側を第1の非チルト位置で下方から支持する第1支持状態と、第1の非チルト位置よりも下降した第2の非チルト位置で下方から支持する第2支持状態とに設定可能である。
【0011】
トーションバーは、車体フレームとの相対回転が拘束された状態で車体フレームの前端部に支持される固定端部と、車体フレームとの相対回転が拘束されない自由端部とを有し、車幅方向に沿って延びる。
【0012】
レバーは、トーションバーとの相対回転が拘束された状態で自由端部から車両後方へ延びるとともに、チルト状態から非チルト状態へ移行するキャブの後端側によって押下される作用部を有し、作用部の押下に応じて自由端部を中心として下方へ傾動する。
【0013】
レバー規制手段は、キャブが第2の非チルト位置に下降した状態で、レバーの上方への傾動を規制する移動規制状態とレバーの上方への傾動を許容する移動許容状態とに選択的に設定される。
【0014】
上方への傾動が許容された状態のレバーの作用部は、キャブの後端側を下方から押し上げるようにトーションバーのねじり反力をキャブの後端側へ伝達する。キャブの後端側は、レバーの上方への傾動がレバー規制手段によって規制され、且つ支持手段が第1支持状態に設定された状態で、作用部から離間する。
【0015】
上記構成では、キャブがチルト状態から非チルト状態へ移行すると、レバーの作用部がキャブの後端側によって押下されて作用位置へ下降する。レバーは、トーションバーとの相対回転が拘束された状態でトーションバーの自由端部から延び、トーションバーの固定端部は、車体フレームとの相対回転が拘束された状態で車体フレームに支持されているので、レバーの作用部が作用位置へ下降すると、トーションバーの自由端部が回転し、自由端部の回転によってトーションバーにねじり反力が発生する。また、上方への傾動が許容された状態のレバーの作用部は、キャブの後端側を下方から押し上げるようにトーションバーのねじり反力をキャブの後端側へ伝達する。したがって、作業者は、トーションバーのねじり反力がキャブの後端側に下方から作用した状態で、キャブを非チルト位置からチルトアップすることができる。すなわち、作業者の操作力をねじり反力によって補助するというトーションバーの機能が発揮され、作業者の操作負担が軽減する。
【0016】
また、車両の走行時などには、支持手段を第2支持状態に設定して非チルト状態のキャブを第2の非チルト位置に下降させ、レバー規制手段を移動規制状態に設定してレバーの上方への傾動を規制した後、支持手段を第2支持状態から第1支持状態に変更し、支持手段によってキャブの後端側を第2の非チルト位置から押し上げて第1の非チルト位置で支持する。これにより、レバーの作用部とキャブの後端側とが離間するので、これにより車両の走行時などにおけるトーションバーを介した車体フレームからキャブへの振動の伝達を完全に遮断することができる。
【0017】
また、キャブの前端下部は車体フレームの前端部に対して回転自在に支持されているので、車体フレームからキャブへの振動の伝達を抑制するためには、キャブの前端下部と車体フレームの前端部との間に防振部材を設けることが好ましい。ここで、非チルト位置のキャブの前端部から車体フレームに作用する荷重は、トーションバーからキャブへのねじり反力の伝達を遮断している状態の方が、ねじり反力の伝達を遮断していない状態(トーションバーからキャブにねじり反力が作用している状態)よりも小さくなる。したがって、レバーの作用部とキャブの後端側とを離間させ、トーションバーのねじり反力の伝達を遮断しておくことによって、防振部材に対して要求される強度上の制約を緩和することができ、所望の防振効果を発揮するように防振部材のバネ定数を任意に設定して、車体フレームからキャブへの振動の伝達をさらに抑制することができる。
【0018】
また、支持手段は、空気の給排によって上下方向に伸縮するエアマウントを有してもよい。
【0019】
上記構成では、支持手段は、エアマウントが空気の供給を受けて伸長することによって第1の支持状態に設定され、エアマウントから空気が排出されて縮小することによって第2の支持状態に設定される。車両の走行時などには、支持手段は空気の供給を受けたエアマウントの伸長によって第1の支持状態に設定されるので、エアマウントが防振部材としても機能し、支持手段を介した車体フレームからキャブへの振動の伝達を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の上記キャブのマウント構造を備えた車両のキャブマウントシステムは、下降検知手段と、制御手段と、を備える。
【0021】
下降検知手段は、キャブの後端側が第2の非チルト位置へ下降したか否かを検知する。制御手段は、キャブの後端側の第2の非チルト位置への下降を下降検知手段が検知したとき、レバー規制手段を移動規制状態に設定し、支持手段を第1支持状態に設定する。
【0022】
上記構成では、車両を走行させる際に、作業者が支持手段を第2支持状態に設定し、キャブを第2の非チルト位置に下降して、下降検知手段がこれを検知すると、制御手段は、レバー規制手段を移動規制状態に設定し、支持手段を第2支持状態から第1支持状態に変更する。したがって、作業者は、レバー規制手段を移動規制状態に設定する作業や、支持手段を第1支持状態に設定する作業を行う必要がなく、作業者の手間を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トーションバーの機能を損なうことなく、車体フレームからキャブへの振動の伝達を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態にかかるトラックを模式的に示す正面図であり、キャブが第2の非チルト位置で支持されている状態を示す。
【図2】図1のトラックの(a)は側面図、(b)は移動許容状態を示す背面図である。
【図3】図1のトラックの移動規制状態を示す背面図である。
【図4】図1のキャブが第1の非チルト位置で指示されている状態を示す(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図5】図1のキャブがチルトアップした状態を示す(a)は側面図、(b)は背面図である。
【図6】図1のトラックのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図中矢印FRは車両前方を、矢印UPは上方を、矢印INは車幅方向内側をそれぞれ示している。また、以下の説明において、前後とは車両の前後を意味し、左右とは車両前方を向いた状態での左右を意味する。また、図2の白抜き矢印R1,R2は、トーションバー7の回転方向をそれぞれ示す。なお、各部材を固定するボルトの図示は省略する。また、各側面図において、エアタンク10、弁12a,12b及び各配管の図示は省略する。
【0026】
図1乃至5に示すように、本実施形態のトラック(車両)1は、キャブ2の下方にエンジンルーム19が位置するキャブオーバー型である。キャブ2は、車体フレーム4の前端部に対して回転自在に支持される前端下部25を有し、車体フレーム4に対して後端側が上昇したチルト位置と下降した非チルト位置とに設定可能である。キャブ2は、トラック1の走行時などの通常時には非チルト位置に維持され、エンジンの点検時や整備時などにチルト位置に設定される。
【0027】
車体フレーム4は、車両前後方向に沿って並行に延びる左右のメインビーム41と、複数のクロスメンバ42とを有する。左右のメインビーム41は、直交する複数のクロスメンバ42によって相互に連結されている。
【0028】
左右のメインビーム41の前端部(車体フレーム4の前端部)43には、左右1対のフロントキャブマウント5がそれぞれ載置されボルトによって固定されている。また、左右のメインビーム41の車両前後方向の略中央部には、左右1対のリアキャブマウント6がそれぞれ載置されボルトによって固定されている。
【0029】
フロントキャブマウント5は、マウントラバー51と、マウントラバー支持部52とを備えている。
【0030】
マウントラバー支持部52は、メインビーム41にボルトによって固定されている。マウントラバー支持部52の上部は、略円筒状に形成され、その内周面にマウントラバー51の外周面が固着されている。マウントラバー51は、略円板状のゴムからなる。マウントラバー51には、貫通孔53が形成されている。
【0031】
2つのフロントキャブマウント5の一方(本実施形態では左側)のマウントラバー支持部52の上部には、支持孔54が形成されている。支持孔54には、連結ブラケット55の一端部が挿通する。連結ブラケット55は、金属製の略円筒体であり、その他端部付近には、上下方向に延びる延出部56が設けられている。連結ブラケット55は、その一端部が支持孔54に挿入された状態で、マウントラバー支持部52にボルトによって固定されている。なお、ボルトを緩めて連結ブラケット55とマウントラバー支持部52との固定を解除すると、連結ブラケット55の一端部は、支持孔54によって回転自在に支持された状態になる。
【0032】
他方(本実施形態では右側)のフロントキャブマウント5のマウントラバー支持部52の上部には、挿通孔57が形成されている。
【0033】
リアキャブマウント6は、略U字状体であり、U字の開口部が相対向するように配置され、リアキャブマウント本体61と、エアマウント62とを備えている。リアキャブマウント本体61は、メインビーム41にボルトによって固定されている。エアマウント62は、ゴムなどの伸縮自在の弾性体からなる円柱体のエアマウントラバー63と、金属製の板状体でありエアマウントラバー63の上部及び下部に固着された上板部64及び下板部65と、給排管14bと、圧力センサ(図示省略)を有する。エアマウントラバー63の内部には、圧縮空気が貯留する中空部(図示省略)が形成されている。下板部65は、リアキャブマウント本体61の上部にボルトによって固定されている。上板部64の上面には、凹溝(図示省略)と、操作レバー(図示省略)と、係合部(図示省略)とからなるロック機構が設けられており、ロック機構は、非チルト位置に下降したキャブ2の後端側の上方への傾動を規制する。エアマウント62の下部には、下板部65とエアマウントラバー63の下部を貫通し、中空部に至る開通孔(図示省略)が形成されている。開通孔には、給排管14bが接続されており、給排管14bを介して、中空部へ圧縮空気が供給され、また、中空部から圧縮空気が排出される。圧縮空気が供給され中空部の空気圧が上昇するとエアマウントラバー63は伸長する。圧縮空気が排出され中空部の空気圧が下がるとエアマウントラバー63は収縮する。リアキャブマウント6は、エアマウントラバー63が伸長しているときは、第1の非チルト位置でキャブ2の後端側を支持する第1支持状態となる。一方、リアキャブマウント6のエアマウント62内の圧縮空気が排出され、エアマウントラバー63が収縮しているときは、第1の非チルト位置よりも下降した第2の非チルト位置でキャブ2の後端側を支持する第2支持状態となる。すなわち、リアキャブマウント6は、エアマウントラバー63を伸縮させることによって、第1の支持状態と第2の支持状態とに設定可能である。リアキャブマウント6は、トラック1の走行時などの通常時には第1の支持状態に設定される。以上のように、リアキャブマウント6は、非チルト状態のキャブ2の後端側と車体フレーム4との間に介在し、キャブ2の後端側を第1の非チルト位置で下方から支持する第1支持状態と、第1の非チルト位置よりも下降した第2の非チルト位置で下方から支持する第2支持状態との設定可能な支持手段を構成する。圧力センサは、中空部内の空気圧を検知し、所定圧の空気圧を検知したとき、所定圧検知信号を送信する。所定圧は、エアマウントラバー63が伸長し、リアキャブマウント6が第1の支持状態に設定されるときの中空部の適正な空気圧に設定されている。
【0034】
2つのリアキャブマウント6の一方(本実施形態では右側)には、金属製の円筒体からなるレバー係止部9が車幅方向内側の側壁にボルト又は溶接によって固定されている。レバー係止部9は、側壁から車幅方向内側へ延び、その内部に係止ピン91を有する。係止ピン91は、バネ92によってリアキャブマウント6の車幅方向内側の側壁に連結されている。バネ92は、係止ピン91を基端側へ付勢する。レバー係止部9の基端側の下部には、内部に至る開通孔93が形成されている。開通孔93には、給排管14aが接続され、給排管14aを介して、レバー係止部9の内部へ圧縮空気が供給され、また、レバー係止部9の内部から圧縮空気が排出される。レバー係止部9の先端側には、レバー係止部9を上下方向に貫通する貫通孔94が形成されている。レバー係止部9の先端部には、係止検知スイッチ部95が、貫通孔94の下縁付近には、下降検知スイッチ部96が配置されている。また、レバー係止部9の基端部には、係止検知スイッチ部95及び下降検知スイッチ部96の状態をON状態からOFF状態に切り換えるOFFスイッチ部(図示省略)が設けられている。OFFスイッチ部が操作されると係止検知スイッチ部95及び下降検知スイッチ部96の状態がON状態からOFF状態に切り換り、OFFスイッチ部は、OFF指示信号を送信する。
【0035】
左右のフロントキャブマウント5のマウントラバー51の貫通孔53には、軸受(図示省略)を介してキャブマウント支持パイプ3が回転自在に挿通されている。キャブマウント支持パイプ3は、略円筒状の金属管であり、車幅方向に延びる。
【0036】
キャブ2は、左右1対のキャブ取付ブラケット21と、左右1対のストライカ22と、レバー当接部23と、左右の把持部(図示省略)とを備えている。
【0037】
キャブ取付ブラケット21は、金属製の板状体であり、キャブ2の前端下部25の左右に所定間隔を空けて配置されている。キャブ取付ブラケット21の上部は、キャブ2の前端底面にボルトによって固定され、キャブ取付ブラケット21の下部には、嵌合孔24が形成されている。嵌合孔24の内周面は、キャブマウント支持パイプ3の外周面と嵌合し、キャブマウント支持パイプ3を相対回転不能に嵌合固定する。したがって、キャブ2の前端下部25は、キャブ取付ブラケット21、キャブマウント支持パイプ3、軸受、マウントラバー51及びマウントラバー支持部52を介して、車体フレーム4の前端部43に回転自在に支持されている。
【0038】
レバー当接部23は、略矩形状に形成されたゴムなどの弾性体であり、キャブ2の後端底部に固定されている。ストライカ22は、金属製の略U字状体であり、キャブ2の後端底部の左右に配置されている。ストライカ22は、その上部がボルトによってキャブ2の後端底部に固定されてキャブ2の下方へ突出する。リアキャブマウント6のロック機構の凹溝は、ストライカ22が上方から進入可能な進入口を有し、ストライカ22の入出を許容する。凹溝に沿って下降して固定位置に達したストライカ22は、係合部と係合する。この係合によってキャブ2の後端側の上方への傾動は規制される。ストライカ22と係合部との係合状態は、ロック機構の操作レバーを操作することによって解除される。把持部は、金属製の略U字状体であり、キャブ2の車幅方向外側の側壁に固定されている。把持部は、キャブ2を手動でチルトアップ又はチルトダウンする際に作業者によって把持される。
【0039】
キャブマウント支持パイプ3の内部には、トーションバー7が挿通している。トーションバー7は、ばね鋼によって形成された棒状体であり、その両端部は、キャブマウント支持パイプ3の両端部から突出している。トーションバー7の一端部(固定端部)72には、円板状の金属板からなる固定部材71がボルト又は溶接によって固定されている。固定部材71は、連結ブラケット55の他端部に相対回転不能に嵌合固定されている。連結ブラケット55は、マウントラバー支持部52に固定されているので、トーションバー7の一端部72は、相対回転が拘束された状態で、連結ブラケット55及びフロントキャブマウント5を介して、車体フレーム4の前端部43に支持される。
【0040】
一方のフロントキャブマウント5のマウントラバー支持部52は、連結ブラケット55の延出部56の前方に、ねじり反力調整機構(図示省略)を備えている。ねじり反力調整機構は、延出部56の下部と当接する端部を有する調整ボルト(図示省略)を備えている。連結ブラケット55とマウントラバー支持部52とを固定するボルトが緩められ、連結ブラケット55の回転が許容された状態において、調整ボルトが締め付けられると、調整ボルトの端部が延出部56の下部を車両後方に押圧し、連結ブラケット55が回転する。この回転によって固定部材71を介して連結ブラケット55に固定されているトーションバー7の一端部72が図2中矢印R1方向に回転し、トーションバー7がねじれ変形する。このように、ねじり反力調整機構の調整ボルトの締め付けによって、トーションバー7のねじれ変形の量が増大する。したがって、連結ブラケット55とマウントラバー支持部52とを固定するボルトを緩め、調整ボルトを所定量締め付けた後に、緩めたボルトを再度締め付けることによって、トーションバー7に生じるねじり反力の大きさを調整することができる。
【0041】
トーションバー7の他端部(自由端部)73は、他方のフロントキャブマウント5の挿通孔57を挿通し、フロントキャブマウント5の車幅方向外側に突出する。
【0042】
レバー8は、金属製の棒状板体であり、その前端部には、嵌合孔87を有する円筒状の嵌合部81が一体的に形成されている。嵌合孔87の内周面には、他方のフロントキャブマウント5の車幅方向外側に突出するトーションバー7の他端部73の外周面が相対回転不能に嵌合固定されている。レバー8は、他方のフロントキャブマウント5の車幅方向外側で、且つ一方のリアキャブマウント6の車幅方向内側で、前後方向に延びる。すなわち、レバー8は、トーションバー7との相対回転が拘束された状態で他端部73から後方へ延びる。
【0043】
また、レバー8は、前端部付近から上方へ傾斜して延びる立上り部82と、立上り部82の上端から折曲して車両後方へ略水平に延びる水平部83と、水平部83の後端部付近に設けられた作用部84と、後端部の下面から下方へ突出する被係止部85を有する。レバー8の前後方向の長さは、レバー8の後端部がリアキャブマウント6よりも後方へ突出するように設定されている。キャブ2がキャブエアマウントラバー63が収縮している状態のリアキャブマウント6へ下降するのに伴って、すなわち、キャブ2の第2の非チルト位置への下降に伴って、キャブ2のレバー当接部23が作用部84に上方から当接して作用部84を押し下げ、レバー8がトーションバー7の他端部73(レバー8の前端部)を中心として下方へ傾動する。キャブ2が第2の非チルト位置まで下降すると、作用部84は所定の作用位置に達する。レバー8の下方への傾動によってトーションバー7の他端部73が図2中矢印R2方向に回転し、トーションバー7がねじれ変形する。トーションバー7のねじり反力は、レバー8の作用部84からキャブ2のレバー当接部23へ作用して、キャブ2の後端側を上方へ付勢する。すなわち、作用部84は、キャブ2を下方から押し上げるように、トーションバー7のねじり反力をキャブ2のレバー当接部23を介してキャブ2の後端側に伝達する。
【0044】
被係止部85は、金属製の円柱体の基端部と円錐体の先端部を有する。基端部は、上部がボルト又は溶解によってレバー8の後端部の下面に固定されている。基端部の略中央部には、車幅方向に貫通する貫通孔86が形成されている。被係止部85は、キャブ2の第2の非チルト位置への下降に伴って、レバー係止部9の貫通孔94に上方から進入する。進入後、キャブ2が更に下降すると被係止部85の先端部は、下降検知スイッチ部96を押圧し、下降検知スイッチ部96をOFF状態からON状態に設定する。ON状態になった下降検知スイッチ部96は、下降検知信号を送信する。
【0045】
以上のように、下降検知スイッチ部96は、キャブ2の後端側が第2の非チルト位置へ下降したか否かを検知する下降検知手段を構成する。
【0046】
トラック1は、キャブ2の下方に配置されるエアタンク10と、エアコンプレッサ(図示省略)と、供給管11と、弁12a,12bと、排出管13とを備える。エアコンプレッサは圧縮空気を生成し、生成した圧縮空気をエアタンク10に供給する。エアタンク10は、供給された圧縮空気を貯留し、供給管11に貯留した圧縮空気を供給する。供給管11は弁12a,12bに接続されている。弁12a,12bは、供給管11を接続する供給管接続口(図示省略)と、レバー係止部9の内部及びエアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の圧縮空気を車外に放出する排出管13を接続する排出管接続口(図示省略)と、給排管14a,14bを接続する給排管接続口(図示省略)とを有する。弁12a,12bの内部には、排出管接続口が封止され供給管11と給排管14a,14bとが連通する状態、供給管接続口が封止され給排管14a,14bと排出管13とが連通する状態、また、排出管接続口及び供給管接続口が封止され給排管14a,14bがいずれの配管とも連通しない状態に選択的に設定する切換バルブ(図示省略)が設けられている。この切換バルブは、後述するコントロールユニット15によって制御されて切換動作を行う。切換バルブによって排出管接続口が封止され供給管11と給排管14a,14bとが連通する状態に設定されると、レバー係止部9の内部及びエアマウント62のエアマウントラバー63の中空部に、エアタンク10からの圧縮空気が、供給管11、弁12a、12b及び給排管14a,14bを介して供給される。切換バルブによって供給管接続口が封止され給排管14a,14bと排出管13とが連通する状態に設定されると、レバー係止部9の内部及びエアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の圧縮空気が給排管14a,14b、弁12a,12b及び排出管13を介して車外へ排出される。また、切換バルブによって排出管接続口及び供給管接続口が封止され給排管14a,14bがいずれの配管とも連通しない状態に設定されると、設定時のレバー係止部9の内部及びエアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の空気圧が維持される。
【0047】
トラック1は、図6に示すようにコントロールユニット15を備える。コントロールユニット15は、CPU(Central Processing Unit)とROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)とを備える。ROM及びRAMは、コントロールユニットの記憶部16を構成し、ROMは、CPUによって読み出される種々のプログラム(レバー規制状態制御プログラム、支持状態制御プログラムを含む)を予め記憶している。
【0048】
CPUは、ROMに記憶されているプログラムをRAMに展開し、実行する。CPUは、レバー規制状態制御プログラムに従ってレバー規制状態制御処理を実行するレバー規制状態制御部17及び支持状態制御プログラムに従って支持状態制御処理を実行する支持状態制御部18として機能する。
【0049】
コントロールユニット15は、下降検知信号を受信することによって、ROMからレバー規制状態制御プログラムを読み出して実行する。
【0050】
下降検知信号を受信したコントロールユニット15のレバー規制状態制御部17は、弁12aの切換バルブを制御し、排出管接続口が封止され供給管11と給排管14aとが連通する状態に設定する。
【0051】
供給管11と給排管14aとが連通すると、給排管14aを介して、レバー係止部9に圧縮空気が供給される。圧縮空気の供給によってレバー係止部9の内部の空気圧が上昇すると、係止ピン91は、バネの付勢力に抗して先端側に移動し、被係止部85の貫通孔86に進入する。係止ピン91が更に先端側に移動すると、貫通孔86から係止ピン91の先端部及び後端部が突出した状態(係止状態)になる。レバー8の上方への傾動は、係止ピン91の貫通孔86から突出している先端部及び後端部がレバー係止部9の内周面と当接することによって規制される。すなわち、レバー係止部9と被係止部85は、レバー8の上方への傾動を許容する移動許容状態から傾動を規制する移動規制状態に変更される。また、係止ピン91の先端部は、レバー係止部9の先端部に設けられている係止検知スイッチ部95を押圧し、係止検知スイッチ部95をOFF状態からON状態に設定する。ON状態になった係止検知スイッチ部95は、係止検知信号をコントロールユニット15へ送信する。以上のように、レバー係止部9と被係止部85は、キャブ2が第2の非チルト位置に下降した状態で、レバー8の上方への傾動を規制する移動規制状態とレバー8の上方への傾動を許容する移動許容状態とに選択的に設定されるレバー規制手段を構成する。
【0052】
係止検知信号を受信したコントロールユニット15のレバー規制状態制御部17は、弁12aの切換バルブを制御し、排出管接続口及び供給管接続口が封止され給排管14aがいずれの配管とも連通しない状態に設定し、レバー係止部9の内部の空気圧を所定圧に維持する。すなわち、レバー規制状態制御部17は、レバー係止部9と被係止部85とを移動規制状態に維持する。
【0053】
また、コントロールユニット15は、係止検知信号を受信することによって、ROMから支持状態制御プログラムを読み出して実行する。
【0054】
支持状態制御部18は、弁12bの切換バルブを制御し、排出管接続口が封止され供給管11と給排管14bとが連通する状態に設定する。
【0055】
供給管11と給排管14bとが連通すると、給排管14bを介して、エアマウント62のエアマウントラバー63の中空部に圧縮空気が供給される。これによって、中空部の空気圧が上昇するとエアマウントラバー63が伸長し、リアキャブマウント6は、キャブ2の後端側を第2の非チルト位置から押し上げて、第1の非チルト位置で支持する。すなわち、リアキャブマウント6は、第1の支持状態に設定される。
【0056】
以上のように、レバー規制状態制御部17と支持状態制御部18は、キャブ2の後端側の第2の非チルト位置への下降を下降検知スイッチ部96が検知したとき、レバー規制手段を移動規制状態に設定し、支持手段を第1支持状態に設定する制御手段を構成する。
【0057】
また、エアマウントラバー63の中空部に圧縮空気が供給され中空部の空気圧が高まって所定圧に達すると、圧力センサから所定圧検知信号が送信される。所定圧検知信号を受信したコントロールユニット15の支持状態制御部18は、弁12bの切換バルブを制御し、排出管接続口及び供給管接続口が封止され給排管14bがいずれの配管とも連通しない状態に設定し、エアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の空気圧を所定圧に維持する。すなわち、支持状態制御部18は、リアキャブマウント6を第1支持状態に維持する。
【0058】
作業者がOFFスイッチ部を操作することによって、OFFスイッチ部からOFF指示信号をコントロールユニット15が受信すると、レバー規制状態制御部17と支持状態制御部18は、弁12a,12bの切換バルブを制御して、供給管接続口が封止され給排管14a,14bと排出管13とが連通する状態に設定する。
【0059】
給排管14a,14bと排出管13とが連通すると、レバー係止部9の内部及びエアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の圧縮空気が給排管14a,14b、弁12a,12b及び排出管13を介して車外へ排出される。レバー係止部9の内部の空気圧が下がると、係止ピン91は、バネの付勢力によって基端側に移動し、係止状態から解除される。すなわち、レバー係止部9と被係止部85は、移動規制状態から移動許容状態に変更される。また、エアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の空気圧が下がると、エアマウントラバー63が収縮し、リアキャブマウント6は、キャブ2の後端側を第1の非チルト位置よりも下降した第2の非チルト位置で支持する。すなわち、キャブマウント6は、第2の支持状態に設定される。
【0060】
次に、作業者が行うキャブ2のチルトアップ操作及びチルトダウン操作について説明する。
【0061】
まず、キャブ2のチルトダウン操作について説明する。作業者は、図5(a),(b)のように、キャブ2の後端側とエアマウントラバー63が収縮しているリアキャブマウント6とが離間し、キャブ2が車両前方に傾斜している状態(チルトアップしている状態)において、キャブ2の車幅方向外側の側壁に設けられている把持部(図示省略)を把持し、キャブ2を第2の非チルト位置へ回転させる(キャブ2の後端側を非チルト位置に下降させる)。キャブ2の後端側が下降すると、キャブ2のレバー当接部23にレバー8の作用部84が当接し、キャブ2の下降に応じて作用部84は下方に押し下げられる。作用部84が押し下げられてレバー8が下方へ傾動すると、レバー8の前端部が嵌合固定されているトーションバー7の他端部73が回転し、トーションバー7がねじれ変形し、ねじり反力を発生させる。作用部84は、ねじり反力により上方に付勢され、キャブ2を下方から押し上げるように、ねじり反力をキャブ2のレバー当接部23を介して、キャブ2の後端側に伝達する。
【0062】
作業者は、ねじり反力に抗って、キャブ2の後端側を、エアマウントラバー63が収縮しているリアキャブマウント6の上板部64に当接させるまで下降させ、リアキャブマウント6によってキャブ2の後端側を支持させる。これによって、リアキャブマウント6はキャブ2の後端側を第2の非チルト位置で支持する。すなわちリアキャブマウント6は第2の支持状態に設定される。また、作業者は、キャブ2のストライカ22を、リアキャブマウント6のロック機構の凹溝に進入口を介して固定位置まで進入させ、係合部と係合させる。
【0063】
キャブ2の第2の非チルト位置への下降に伴って、被係止部85がレバー係止部9の貫通孔94に上方から進入する。被係止部85の先端部は、下降検知スイッチ部96を押圧し、下降検知スイッチ部96をOFF状態からON状態に設定する。ON状態になった下降検知スイッチ部96は、下降検知信号をコントロールユニット15に送信する(図1及び図2(a),(b)参照)。
【0064】
コントロールユニット15が下降検知信号を受信すると、レバー規制状態制御部17は、弁12aの切換バルブを制御し、排出管接続口が封止され供給管11と給排管14aとが連通する状態に設定する。圧縮空気が給排管14aを介して、レバー係止部9に供給されると、レバー係止部9の内部の空気圧が高まり、係止ピン91はバネの付勢力に抗して先端側に移動し、被係止部85の貫通孔86に進入し、レバー8の上方への傾動を規制する。すなわち、レバー係止部9と被係止部85は、移動許容状態から移動規制状態に変更される。また、係止ピン91の先端部は、レバー係止部9の先端部に設けられている係止検知スイッチ部95を押圧し、係止検知スイッチ部95をOFF状態からON状態に設定する。ON状態になった係止検知スイッチ部95は、係止検知信号をコントロールユニット15へ送信する(図3参照)。
【0065】
コントロールユニット15が係止検知信号を受信すると、支持状態制御部18は、弁12bの切換バルブを制御し、排出管接続口が封止され供給管11と給排管14bとが連通する状態に設定する。給排管14bを介して、エアマウント62のエアマウントラバー63の中空部に圧縮空気が供給されると、中空部の空気圧が高まり、エアマウントラバー63が伸長し、リアキャブマウント6は、キャブ2の後端側を第2の非チルト位置から押し上げて、第1の非チルト位置で支持する。すなわち、リアキャブマウント6は第1の支持状態に設定される。これによって、レバー8の作用部84とレバー当接部23とが離間して、作用部84からレバー当接部23へのねじり反力の伝達が遮断される(図4(a),(b)参照)。
【0066】
次に、キャブ2のチルトアップ操作について説明する。図4(a),(b)に示すようにキャブ2が第1のチルト位置で支持されているとき、作業者は、まず、OFFスイッチ部を操作し、係止検知スイッチ部95と下降検知スイッチ部96とをOFF状態に設定する。OFFスイッチ部は、OFF指示信号をコントロールユニット15へ送信する。
【0067】
コントロールユニット15がOFF指示信号を受信すると、レバー規制状態制御部17と支持状態制御部18は、弁12a,12bの切換バルブを制御して、供給管接続口が封止され給排管14a,14bと排出管13とが連通する状態に設定し、レバー係止部9の内部及びエアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の圧縮空気を排出管13を介して車外へ排出させる。
【0068】
これによって、レバー係止部9の内部の空気圧が下がり、係止ピン91はバネ92の付勢力によって、基端側へ移動し、係止ピン91は係止状態から解除され、レバー8は上方への傾動が可能となる。すなわち、レバー係止部9及び被係止部85は移動規制状態から移動許容状態に変更される。また、エアマウント62のエアマウントラバー63の中空部の空気圧が下がり、エアマウントラバー63が収縮し、リアキャブマウント6は、キャブ2の後端側を第1の非チルト位置よりも下降した第2の非チルト位置で支持する。すなわち、リアキャブマウント6は第2の支持状態に設定される。これによって、レバー8の作用部84がレバー当接部23に当接し、トーションバー7のねじり反力を、レバー当接部23を介してキャブ2の後端側に伝達する(図1及び図2(a),(b)参照)。
【0069】
次に、作業者は、リアキャブマウント6のロック機構の操作レバーを操作することによって、ストライカ22と係合部との係合を解除する。
【0070】
次に、キャブ2の車幅方向外側の側壁に設けられた把持部を把持し、キャブ2の後端側を車体フレーム4から離れるように上昇させて、キャブ2を前方に回転させる(図5(a),(b)参照)。このとき、トーションバー7のねじり反力がキャブ2の後端側を下方から押し上げるようにキャブ2の後端側に伝達されているため、作業者は小さな操作力でキャブ2をチルトアップすることができる。
【0071】
本実施形態のトラック1では、キャブ2がチルト位置から第2の非チルト位置へ下降すると、レバー8の作用部84がキャブ2の後端側によって押下されて作用位置へ下降する。レバー8は、トーションバー7との相対回転が拘束された状態でトーションバー7の他端部73に嵌合固定され、トーションバー7の一端部72は、連結ブラケット55を介して車体フレーム4に固定されているので、レバーの作用部が作用位置へ下降すると、トーションバー7の他端部73が回転し、この回転によってトーションバー7がねじれ変形し、ねじり反力が発生する。したがって、作業者は、トーションバー7のねじり反力がキャブ2の後端側に下方から作用した状態で、キャブ2を非チルト位置からチルトアップすることができる。すなわち、作業者の操作力をねじり反力によって補助するというトーションバー7の機能が発揮され、作業者の操作負担が軽減する。
【0072】
また、走行中などの通常時には、リアキャブマウント6を第2支持状態に設定して、非チルト状態のキャブ2を第2の非チルト位置に下降させ、レバー係止部9と被係止部85を移動規制状態に設定してレバー8の上方への移動を規制した後、リアキャブマウント6を第2支持状態から第1支持状態に変更し、キャブ2の後端側を第2の非チルト位置から押し上げて第1の非チルト位置で支持する。これによって、レバー8の作用部84とレバー当接部23とが離間するので、トラック1の走行時にトーションバー7を介した車体フレーム4からキャブ2への振動の伝達を完全に遮断することができる。
【0073】
また、キャブ2の後端側が第1の非チルト位置でリアキャブマウント6に支持されているとき、トーションバー7のねじり反力のキャブ2への伝達が遮断され、キャブ2を下方から押し上げる力がキャブ2の後端側へ入力しない。このため、キャブ2が第1の非チルト位置に設定された通常時において、キャブ2の前端部からフロントキャブマウント5に作用する荷重が、トーションバー7からキャブ2にねじり反力が伝達されているときに比べて小さくなり、キャブ2の前端部を支持するフロントキャブマウント5のマウントラバー51に対して要求される強度上の制約が緩和される。したがって、所望の防振効果を発揮するようにマウントラバー51のバネ定数を任意に設定することができ、フロントキャブマウント5を介した車体フレーム4からキャブ2への振動の伝達を抑制することができる。
【0074】
また、車両の走行時などには、リアキャブマウント6のエアマウント62が圧縮空気の供給を受けて伸長し、リアキャブマウント6が第1支持状態に設定されるので、エアマウント62が防振部材としても機能し、リアキャブマウント6を介した車体フレーム4からキャブ2への振動の伝達を抑制することができる。
【0075】
また、トラック1を走行させる際に、作業者がリアキャブマウント6を第2支持状態に設定し、キャブ2を第2の非チルト位置に下降して、下降検知スイッチ部96がこれを検知すると、レバー規制制御部17は、レバー係止部9と被係止部85を移動規制状態に設定し、リアキャブマウント6を第2支持状態から第1支持状態に変更する。したがって、作業者は、レバー係止部9と被係止部85を移動規制状態に設定する作業や、リアキャブマウント6を第1支持状態に設定する作業を行う必要がなく、作業者の手間を軽減させることができる。
【0076】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。
【0077】
例えば、本実施形態では、作業者がキャブ2の把持部を把持し手動で行うキャブ2のチルトアップ及びチルトダウン操作を説明したが、車両に電動油圧式のシリンダを有するキャブチルト装置を設け、作業者は、この装置を操作することによって、チルトアップ及びチルトダウンを行ってもよい。
【0078】
また、レバー規制状態制御部17及び支持状態制御部18を省略してもよい。この場合、作業者は、手動で弁12a,12bを操作し、レバー係止部9及び被係止部85を移動許容状態又は移動規制状態に設定し、また、リアキャブマウント6を第1支持状態又は第2支持状態に設定する。
【0079】
また、本実施形態では、エアマウント62を用いてリアキャブマウント6を第1の支持状態と第2の支持状態との間で変更したが、電動油圧式のシリンダなどの他の可動機構を用いてリアキャブマウント6の状態を変更してもよい。
【0080】
また、本実施形態では、圧縮空気の給排に応じて移動許容状態又は移動規制状態に設定されるレバー係止部9と被係止部85とを設けたが、係止ピン91を手動で移動させるレバーを設け、このレバーを操作することでレバー係止部9と被係止部85とを移動許容状態又は移動規制状態に設定してもよい。
【0081】
また、本実施形態では、作業者は第2の非チルトアップ位置で支持されているキャブ2をチルトアップしたが、チルトアップ操作の際に、リアキャブマウント6を第1支持状態に設定し、第1の非チルトアップ位置で支持されているキャブ2をチルトアップさせてもよい。この場合、レバー8の作用部84が第1の非チルト位置で支持されているキャブ2のレバー当接部23と当接し、トーションバー7のねじり反力をキャブ2の後端側に伝達する。そのため、作業者は、トーションバーのねじり反力の補助を受けながらキャブ2を第1の非チルト位置からチルトアップできるので、第1の非チルト位置よりも下降した第2の非チルト位置からチルトアップするよりも容易にキャブ2のチルトアップ操作を行うことができる。
【0082】
また、本実施形態では、トーションバー7の一端部72の固定部材71をボルトによって連結ブラケット55の他端部に固定しているが、固定部材71に代えて、トーションバー7の一端部72と連結ブラケット55の内周面とに、相互に係合する雄セレーションと雌セレーションとをそれぞれ設け、トーションバー7と連結ブラケット55とをセレーション同士の係合によって連結してもよい。
【0083】
また、本実施形態では、エアマウント62に圧力センサを設け、コントロールユニット15が、圧力センサから送信される所定圧検知信号に応じて弁12bの切換バルブを制御し、エアマウントラバー63の中空部の空気圧を所定圧に維持することで、リアキャブマウント6の第1支持状態を維持したが、圧力センサに代えて、エアマウント62が所定の高さに伸長したとき所定高検知信号を送信する高さセンサを設け、コントロールユニット15が、所定高検知信号に応じて弁12bの切換バルブをエアマウント62が所定の高さに伸長している状態を維持するように制御し、リアキャブマウント6の第1支持状態を維持してもよい。
【0084】
すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、キャブオーバー型車両のキャブのマウント構造に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1:トラック
2:キャブ
23:レバー当接部
25:前端下部
3:キャブマウント支持パイプ
4:車体フレーム
43:前端部
5:フロントキャブマウント
6:リアキャブマウント(支持手段)
62:エアマウント
63:エアマウントラバー
7:トーションバー
72:一端部(固定端部)
73:他端部(自由端部)
8:レバー
81:嵌合部
84:作用部
85:被係止部(レバー規制手段)
9:レバー係止部(レバー規制手段)
91:係止ピン
95:係止検知スイッチ部
96:下降検知スイッチ部(下降検知手段)
10:エアタンク
12:弁
14:給排管
15:コントロールユニット
17:レバー規制状態制御部(制御手段)
18:支持状態制御部(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームの前端部に対して回転自在に支持される前端下部を有し、該車体フレームに対して後端側が上昇したチルト状態と下降した非チルト状態とに設定可能なキャブのマウント構造であって、
前記非チルト状態のキャブの後端側と前記車体フレームとの間に介在し、前記キャブの後端側を第1の非チルト位置で下方から支持する第1支持状態と、前記第1の非チルト位置よりも下降した第2の非チルト位置で下方から支持する第2支持状態とに設定可能な支持手段と、
前記車体フレームとの相対回転が拘束された状態で前記車体フレームの前端部に支持される固定端部と、前記車体フレームとの相対回転が拘束されない自由端部とを有し、車幅方向に沿って延びるトーションバーと、
前記トーションバーとの相対回転が拘束された状態で前記自由端部から車両後方へ延びるとともに、前記チルト状態から前記非チルト状態へ移行するキャブの後端側によって押下される作用部を有し、前記作用部の押下に応じて前記自由端部を中心として下方へ傾動するレバーと、
前記キャブが前記第2の非チルト位置に下降した状態で、前記レバーの上方への傾動を規制する移動規制状態と前記レバーの上方への傾動を許容する移動許容状態とに選択的に設定されるレバー規制手段と、を備え、
上方への傾動が許容された状態の前記レバーの作用部は、前記キャブの後端側を下方から押し上げるように前記トーションバーのねじり反力を該キャブの後端側へ伝達し、
前記レバーの上方への傾動が前記レバー規制手段によって規制され、且つ前記支持手段が前記第1支持状態に設定された状態で、前記キャブの後端側は前記作用部から離間する
ことを特徴とするキャブのマウント構造。
【請求項2】
請求項1のキャブのマウント構造であって、
前記支持手段は、空気の給排によって上下方向に伸縮するエアマウントを有する
ことを特徴とするキャブのマウント構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のマウント構造を備えた車両のキャブマウントシステムであって、
前記キャブの後端側が前記第2の非チルト位置へ下降したか否かを検知する下降検知手段と、
前記キャブの後端側の前記第2の非チルト位置への下降を前記下降検知手段が検知したとき、前記レバー規制手段を前記移動規制状態に設定し、前記支持手段を前記第1支持状態に設定する制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両のキャブマウントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111260(P2012−111260A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259341(P2010−259341)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】