説明

キャリア、二成分現像剤及びキャリアの製造方法

【課題】帯電性能に優れ、かつ繰り返し使用してもキャリア表面の凹凸の変動が小さく帯電付与性能が安定しており、画像品質の高い高精細の画像を長期に亘って安定して得ることの出来る高耐久性の二成分現像剤用キャリアを提供すること。
【解決手段】磁性芯材の表面に厚さが0.5μm以上の樹脂コート層を有するキャリアであって、該樹脂コート層はワックス粒子を含有するものであり、該キャリアの形状係数SF2が1.1以上2.5以下であることを特徴とするキャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式の画像形成方法に使用されるキャリア、二成分現像剤およびキャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の複写機やプリンターは、プリント速度の高速化が進んでおり、それらに使用される現像剤は、高速現像に有利な二成分現像剤が主流になっている。二成分現像剤は、キャリアと呼ばれる磁性粉体とトナーから構成されている。ここで使用されるキャリアは、トナーを帯電付与する役割を担っており、繰り返し使用しても長期間安定した帯電付与性能を有していることが求められている。安定したトナー帯電付与性能を達成するキャリアとして、例えば、磁性を有する芯材(以下、磁性芯材、あるいはコア材とも言う)の表面に樹脂コート層を設けた樹脂コートキャリアが知られている。
【0003】
磁性芯材の表面に樹脂コート層を形成する方法として、湿式コート法と乾式コート法が知られている。湿式コート法は製造工程で有機溶媒を用いるため環境汚染の問題があり、その対策が必要となる。一方、乾式コート法は機械的衝撃力を付与して樹脂を芯材表面に被覆するので、有機溶媒を使う必要が無く、環境負荷の少ないコート方法として近年注目を集めている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、複写機やプリンターはプリント速度の高速化により、従来のオフィス領域にとどまらずプロダクションプリント市場で使用される機会が増加している。プロダクションプリント市場においては、オフセット印刷並みの画像品質が求められ、写真画像形成にも対応可能な高精細の画像形成が求められている。
【0005】
また、プロダクションプリント分野では、高速で、かつ大量のプリント作成を行う機会も多く、現像剤に対して、大量にプリントしても画像品質が劣化せず、安定した性能を長期に亘り発現することが可能な高耐久性が求められている。
【0006】
この様な市場の要請に応えるために、磁性芯材表面をコートする樹脂にワックスを含有させて、帯電性、帯電維持性、環境安定性、転写性、耐久性の改善を目的とした樹脂コートキャリアの技術が検討されていた(例えば特許文献2参照)。
【0007】
しかし、前記特許文献2に開示されたキャリアの樹脂コート層は被覆率が60%であって、十分な耐久性を有しているものとは言い難いものであった。
【0008】
一方で高精細な画像を得る目的で小粒径かつ球形に近い形状のトナーが用いられる傾向にあるが、球形トナーと球形キャリアを組み合わせた現像剤では、不定形の粉砕トナーを用いた現像剤より、トナーとキャリアがその接触界面で滑りやすく、接触確率も低下する傾向が見られた。従って十分な摩擦帯電を短時間で行うことが困難で、高速のプリント作成に支障を来す問題を有していた。この問題に対して、トナーとキャリアの球形度と表面の平滑度を規定して流動性を確保することで摩擦帯電性を向上させる技術が検討されていた。また、キャリア表面に凹凸を設けて接触確率を高めて摩擦帯電性を向上させようとする技術も検討されていた(例えば特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−51565号公報
【特許文献2】特開2004−170714号公報
【特許文献3】特開2001−201893号公報
【特許文献4】特開2004−333798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した特許文献等に開示された技術をキャリアに展開することにより、プロダクションプリント分野で要求される高精細、高画質な画像品質の得られる二成分現像剤の開発が検討されてきた。しかしながら特許文献3,4等に開示された技術を適用したキャリアを用いて、長期に亘り画像形成を繰返し行うとキャリア表面の樹脂コート層が磨耗して平滑になってしまうため摩擦帯電性を一定レベルに維持することが出来なかった。例えば、キャリア表面に凹凸を設けても画像形成を繰り返すうちに凹凸も磨耗して平滑になり、トナーとキャリアの接触確率が低下して、帯電付与性能が次第に低下してしまうという問題があった。この傾向は、小粒径で球形に近い形状のトナーと球形度の高いキャリアを組み合わせた現像剤を用いた時に顕著に見られた。
【0011】
本発明は、以上の問題を解決するためになされたもので、高速のプロダクションプリント市場向けの複写機、プリンターに使用しても帯電性能に優れ、かつ繰り返し使用してもキャリア表面の凹凸の変動が小さく帯電付与性能が安定しており、画像品質の高い高精細の画像を長期に亘って安定して得ることの出来る高耐久性のキャリア、二成分現像剤及びキャリアの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は以下の構成により解決される。
1.磁性芯材の表面に樹脂コート層を有するキャリアであって、該樹脂コート層はワックス粒子を含有するものであり、該キャリアの形状係数SF2が1.1以上2.5以下であることを特徴とするキャリア。
2.前記ワックス粒子の粒径が80nm以上250nm以下のものであることを特徴とする前記1に記載のキャリア。
3.前記樹脂コート層を形成する樹脂は、界面活性剤を含有させた水系媒体中にワックスを含有させた重合性単量体を分散させておき、該水系媒体中に分散させた該重合性単量体の粒子を重合させることにより形成されるものであることを特徴とする前記1または2に記載のキャリア。
4.前記1から3の何れかに記載のキャリアとトナーとから構成される二成分現像剤。
5.磁性芯材の表面にワックス粒子を含有する樹脂コート層を有するキャリアの製造方法であって、該キャリアの製造方法が、少なくとも、界面活性剤を含有させた水系媒体中にワックスを含有させた重合性単量体を分散させておき、この状態で該重合性単量体の粒子を重合させてワックス粒子を含有する樹脂粒子を作成する工程と、該工程で作成したワックス粒子を含有する樹脂粒子を機械的衝撃力により該磁性芯材の表面にコーティングする工程を有することを特徴とするキャリアの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の構成とすることにより、重合法トナーのような小粒径の球形トナーと球形キャリアとを組み合わせた現像剤においてもトナーとキャリアの接触確率が高く帯電性能が良好で、高精細、高画質の画像を得ることが出来る。また繰り返し使用してもキャリア表面の凹凸の変化が小さいために初期の帯電性能が維持され、特に高速のプロダクションプリント市場向けの複写機やプリンターで繰り返し使用しても高画質の画像を長期にわたって安定して得ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】撹拌羽根付き高速撹拌混合機の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、電子写真方式の画像形成方法に使用されるキャリア、二成分現像剤及びキャリアの製造方法に関する。
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
本発明に係わるキャリアは、磁性芯材の表面に、ワックス粒子を含有し厚さが0.5μm以上の樹脂コート層を有するものである。また、本発明に係わるキャリアは表面の平滑性を規定する形状係数SF2の値が1.1以上2.5以下のものである。
【0018】
即ち、本発明で言うキャリアは、平均粒径15〜100μmの磁性芯材の表面に樹脂粒子を層状に付着させて形成した樹脂コート層を有するものであるが、本発明では樹脂コート層にワックス粒子を含有させることを特徴としている。そして、ミニエマルション法によって作製したワックス含有樹脂粒子を機械的衝撃力によって磁性芯材表面にコーティングしたキャリアであって、この樹脂コート層を設けたキャリアは表面の形状係数SF2が1.1以上2.5以下であることを特徴としている。
【0019】
また、本発明では、磁性芯材表面に樹脂コート層を形成する時に、ワックスを含有した樹脂粒子に機械的衝撃力を加えて芯材粒子表面に樹脂を層状に付着させる乾式コート法で行うことが好ましい。この様に、乾式コート法により樹脂コート層を形成する方法では、有機溶媒を使用する必要が無いので、環境に配慮したキャリアの製造を行うことが出来る。
【0020】
また、機械的衝撃力を加えてコート層を形成したキャリアは、表面が完全には平滑にならず、微細な凹凸を有している。この微細な凹凸がキャリアの電荷付与性能の向上に寄与しているが、画像形成に繰り返し使用することで樹脂コート層は表面の凹凸が削られて磨耗し、次第に平滑になってしまう。従って、繰り返し使用することにより、トナーと混合した時の混合強度が変化して帯電付与性能が低下してしまう。その結果、帯電量が低下したトナーを用いて画像形成を行うことになり、カブリを発生させる原因になっていた。
【0021】
本発明に係わるキャリアは樹脂コート層中にワックス粒子を含有しているので、画像形成に繰り返し使用して樹脂コート層が削れても、表面の樹脂とワックスの硬度に差があるために表面に露出しているワックス粒子部分が先に磨耗していく。そのため樹脂コート層表面には微小な凹凸が新たに形成されて、キャリアの表面形状は変動が小さく帯電付与性能に変化を来さない。従って、繰り返し使用しても所定帯電量より帯電量の低いトナーによるカブリの発生が抑制され、所定画質のトナー画像を長期にわたって安定して作成することができる。
【0022】
この様に、本発明に係わるキャリアは、画像形成に繰り替えし使用しても、その表面状態は初期とほとんど変らない形状を有しているのでトナーに対して安定した帯電付与を行うことができる。従って、数百枚から数千枚の連続プリントを行う機会が多いとされるプロダクションプリント市場では、連続プリント中に安定したトナー帯電が行われ、オフセット印刷並みの画像品質のプリント物を安定して作成することが出来る。とりわけ、小径で球形に近いトナーに対しての接触確率も確保されるので、安定した摩擦帯電が行えるので、写真画像のような階調性の高い画像も安定して得ることが出来る。
【0023】
また、ワックス粒子を含有する樹脂コート層形成に使用される樹脂は、磁性芯材表面を均一の厚さでむらなくコートする観点と生産性の観点から粒径と形状の揃った粒子形状のものを用いることが好ましい。この様なワックス粒子を含有させた樹脂粒子は、例えば重合性単量体にワックスを溶解または分散させておき、ワックスを含有させた重合性単量体を水系媒体中に添加、分散させ、分散粒子形状になった重合性単量体を重合することにより作製することができる。
【0024】
以下、本発明の構成について具体的に説明する。
【0025】
〔樹脂コート層〕
最初に本発明に係わるキャリアを構成する樹脂コート層について説明する。本発明に係わるキャリアは、その表面にワックス粒子を含有する厚さが0.5μm以上の樹脂コート層を有するものである。
【0026】
本発明では、樹脂コート層の膜厚は、0.5μm以上であるが、その中でも0.5μm以上2.5μm以下とすることが好ましい。
【0027】
また、ワックスの作用でキャリアに潤滑性が付与されることにより、繰返し使用時にワックスのみ磨耗し、樹脂は磨耗しにくい状態になり、樹脂の磨耗が抑制されることで、磁性芯材の露出が防止されていることも考えられる。
【0028】
(樹脂コート層の膜厚測定)
樹脂コート層の膜厚は、以下の方法により求めることが出来る。
【0029】
集束イオンビーム試料作成装置「SMI2050」(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)にてキャリアの中心を通る面でキャリアを切断して測定試料を作製し、その測定試料を透過型電子顕微鏡「JEM−2010F」(日本電子(株)製)にて5000倍の視野で観察し、その視野における最大膜厚となる部分と最小膜厚となる部分の平均値を樹脂コート層の膜厚とする。尚、測定数は50個とし、写真1視野で足りない場合には、測定数50になるまで視野数を増加させるものとする。
【0030】
(コート用樹脂)
本発明に係わるキャリアのコート樹脂は、ビニル系モノマーなどの重合性単量体を重合して得られた樹脂で、この様なビニル系モノマーとしては、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、アクリル酸アルキル系、メタクリル酸アルキル系などの重合性単量体が挙げられる。
【0031】
具体的には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレン或いはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸或いはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系重合性単量体は単独或いは組み合わせて使用することができる。
【0032】
コート用樹脂の重量平均分子量は50,000から1,000,000が好ましく、更に好ましくは400,000から600,000である。コート用樹脂のガラス転移点は、上記分子量の範囲であれば、特に制限されるものではないが、60℃から150℃の範囲が好ましい。ガラス転移点が前記範囲であれば、製膜性が良く緻密なコート層が形成できる。
【0033】
キャリアの樹脂コート層中にワックス粒子を均一に含有されるには、コート樹脂粒子中にワックスを含有したワックス含有樹脂粒子を用いることが好ましい。
【0034】
コート用樹脂粒子の作製方法は、特に限定されないが、ミニエマルション法で合成したものがワックス含有樹脂粒子の作製が容易であり、粒度、粒径分布の点で好ましい。
【0035】
コート用樹脂粒子の体積平均粒径は100nmから300nmが好ましく、また体積基準の粒度分布における変動係数が20%以下であることが好ましい。
【0036】
ここで、体積基準の粒度分布の変動係数とは、以下に定義される値である。
【0037】
体積平均粒径(Mv)は「MICROTRAC UPA−150(日機装社製)」を用い、下記測定条件下で測定したものである。
【0038】
サンプル屈折率 1.59
サンプル比重 1.05
溶媒屈折率 1.33
溶媒粘度 0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 測定セルにイオン交換水を投入し調製した
濃度調整 濃度0.9−1.1になるように調整した
体積基準の粒度分布の変動係数は、MICROTRAC UPA−150より測定される標準偏差(Sd)を用いて下記の式から算出した
変動係数=(Sd/Mv)×100
(ワックス)
本発明のキャリア樹脂コート層中に含有されるワックスとしては従来公知の各種のものが使用できる。このようなものとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワッックス、サゾールワックスなど長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート、ベヘン酸ベヘニルなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0039】
ワックスの融点は、50〜120℃が好ましく、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が50℃未満のワックスは現像剤の耐熱保存性に悪影響を与えるおそれがあり、120℃を超えるワックスは樹脂コート層中に均一に分散させることができないおそれがある。キャリアコート層中のワックスの含有量はコート樹脂に対して、5〜30質量%が好ましい。
【0040】
ワックス粒子の粒径は、80nmから250nmが好ましい。80nm以下では、繰り返し使用後のキャリア表面の凹凸の効果が小さくなり、250nm以上では、繰り返し使用後の帯電付与能力が低下してしまう。
【0041】
ワックス粒子径の測定は、以下の方法により測定することが出来る。
【0042】
キャリアの樹脂コート層中のワックス粒子径は、キャリア断面におけるワックス粒子の水平方向フェレ径の数平均値として算出されるものである。
【0043】
具体的には、集束イオンビーム試料作成装置「SMI2050」(エスアイアイナノテクノロジー(株)製)を用いてキャリア粒子の薄片を作製し、その後、その薄片の断面を透過型電子顕微鏡「JEM−2010F」(日本電子(株)製)にて30000倍で撮影した。撮影した写真画像を用いて、樹脂コート層中のワックス粒子100個について水平方向フェレ径を測定した。水平方向フェレ径とは、写真画像上のワックス粒子を2本の垂直線ではさみ、はさんだ2本の垂直線間の距離のことをいう。キャリア粒子1個で測定するワックスの数が足りないときは、観察するキャリア粒子を増やすものとする。また、写真画像をスキャナーにより取り込み、画像処理解析装置「LUZEX AP((株)ニレコ製)」を用いて、樹脂コート層中に分散しているワックス粒子100個について水平方向フェレ径「FERE H」を測定することもできる。
【0044】
ワックスの粒径はミニエマルション作製工程の中で分散混合時間を調整することによって制御することができる。
【0045】
〔キャリアの表面性〕
キャリア表面の平滑性は、形状係数SF2で規定される。本発明のキャリアの形状係数は、走査型電子顕微鏡「JEM−7401F」(日本電子(株)製)を用いて、キャリアの拡大写真をランダムに100個撮影し、これを画像処理解析装置「LUZEX AP((株)ニレコ製)」を用いて解析し、次式によって導かれる形状係数の平均値として算出した。
【0046】
形状係数SF2=(PERI)/(AREA×4π)
上記式中 AREA:キャリアの投影面積
PERI:キャリアの周長 を表す
本発明のキャリアは、上記のようにして求めた形状係数SF2が1.1以上2.5以下の範囲であると好ましい結果が得られる。
【0047】
〔キャリア芯材〕
本発明で使用できるキャリア芯材としては、磁場によってその方向に強く磁化する物質、例えば鉄、式(a):MO・Feで示されるフェライト、式(b):MFeで示されるマグネタイトをはじめとする鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性を示す金属、またはこれらの金属を含む合金または化合物、強磁性元素を含まないが適当に熱処理することによって強磁性を示すようになる合金、例えばマンガン−銅−アルミニウムおよびマンガン−銅−錫などのホイスラー合金および二酸化クロムなどを挙げることができる。
【0048】
ただし、式(a)、(b)において、Mは、例えばMn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Liなど2価あるいは1価の金属であり、これらは単独でまたは複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0049】
これらのうちでは、その比重が鉄やニッケルなどの金属より小さく軽量化が図られることから現像器内における撹拌においてトナーに与えられる衝撃力を小さいものとすることができるために、各種のフェライトを用いることが好ましい。
【0050】
また、バインダー樹脂中に磁性粉を分散した樹脂分散型コアを用いることもできる。磁性粉としては、0.1〜3.0μm程度の鉄、フェライト、マグネタイトなどを挙げることができ、バインダー樹脂としては、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、アクリル系樹脂、フェノール系樹脂などを挙げることができる。
【0051】
キャリア芯材の体積平均粒径は、15μmから100μmが好ましく、更に好ましくは、20μmから70μmである。
【0052】
芯材の平均粒径は湿式分散器を備えて成るレーザー回折式粒度分布測定装置「HELOS」(シンパティック社製)により測定される。
【0053】
キャリア芯材の磁化特性は、飽和磁化で20〜80Am/kgが好ましい。
【0054】
飽和磁化は「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電機株式会社製)により測定される。
【0055】
〔機械的衝撃力による樹脂コート方法〕
機械的衝撃力による樹脂コート方法は以下の工程から成っている。即ち、
1.芯材とワックス含有樹脂粒子を室温で混合し、芯材の個々の粒子表面にワックス含有樹脂粒子を均一な層状に付着させる工程、
2.次いでこの樹脂粒子が付着した芯材をワックス含有樹脂のガラス転移点以上に加熱しながら機械的衝撃力を加え、芯材表面にワックス含有樹脂を延展して固着して被覆し樹脂コート層を形成する工程、
3.次いで室温まで冷却する工程から成っている。
【0056】
又、必要に応じて、1〜3の工程を複数回繰り返し、所望の厚さの樹脂コート層を形成することも可能である。
【0057】
ワックス含有樹脂粒子の添加部数は、キャリア芯材100質量部に対して、1質量部から7質量部が好ましい。
【0058】
機械的衝撃力を加える装置としては、例えば、ターボミル、ピンミル、クリプトロン等のローターとライナーを有する摩砕機、または撹拌羽根付き高速撹拌混合機を挙げることができる。これらの中では撹拌羽根付き高速撹拌混合機が良好に樹脂コート層を形成でき好ましい。
【0059】
機械的衝撃力を付与する時間は、装置によっても異なるが、通常、10〜60分である。機械的衝撃力の大きさは、通常、周速、3〜20m/secであり、好ましくは、4〜15m/secである。周速が3m/secより低い時は、ブロッキングが発生しやすい。また、周速が15m/secよりも高い時は、コート層の破壊を生じる場合がある。あるいは、キャリアを構成する磁性芯材自体の破壊が生じる場合がある。加熱温度はコート用樹脂のガラス転移点に対して5℃から20℃高い温度範囲が好ましい。
【0060】
本発明では、上述したようコート方法を採用することで、キャリア表面の形状係数SF2が1.1以上2.5以下であるキャリアを作製することが出来る。
【0061】
また、上記方法によれば、有機溶媒なども使用しないため樹脂コート層に溶媒の抜けた穴も存在せず緻密かつ強固であるばかりでなく、芯材との接着性も良好な樹脂コート層を形成することが出来る。
【0062】
以下図1に従って、乾式コート法について詳細に説明する。
【0063】
図1において、11は本体上蓋で、該上蓋11には原料投入口12、投入弁13、フィルター14、点検口15が設けられている。原料投入口12より所定量の芯材及び被覆用樹脂粒子が投入され、投入された前記原料はモーター22により駆動される水平方向回転体18により撹拌される。該回転体18はその中心部18dに互いに120°の角度間隔で配置された撹拌羽根18a、18b及び18cが結合されていて、これらの羽根は底部10aの面に対して約35°傾けて取り付けられている。このため前記撹拌羽根18a、18b及び18cを高速回転させると、前記原料は上方へ掻き上げられ、本体容器10の上部内壁に衝突して落下するが途中、水平方向回転体19に衝突し、原料の撹拌の促進及び凝集の解砕が行われる。尚17は調温用ジャケット、16は温度計、20は製品取出口、21及び24は排出弁、23は容器内排気口である。
【0064】
〔トナー〕
本発明の2成分現像剤に用いられるトナーは、トナー母体粒子に外添剤を混合して得られたものが好ましい。
【0065】
(トナー母体粒子)
トナー母体粒子は、樹脂と着色剤と離型剤を含有するものが好ましい。
【0066】
トナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法などが挙げられ、特に、微粉の形成が抑制され、また、小粒径のものを容易に得ることができるため、乳化重合凝集法によって得られたトナー母体粒子を用いることが好ましい。
【0067】
(トナー樹脂)
トナー母体粒子が粉砕法、乳化分散法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂として、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
一方、トナー母体粒子が懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸エステル誘導体、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0069】
また、重合性単量体として例えばカルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。
【0070】
さらに、重合性単量体として、多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0071】
(着色剤)
トナー母体粒子が含有する着色剤としては特に限定されず、公知の種々のものを用いることができる。
【0072】
着色剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.5〜20質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0073】
(離型剤)
トナー母体粒子が含有する離型剤としては特に限定されず、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0074】
本発明で使用される離型剤としては従来公知の各種のものが使用できる。このようなものとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、パラフィンワッックス、サゾールワックスなど長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0075】
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすく低温定着性に適さない。
【0076】
このようにトナー母体粒子が離型剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの定着性が向上される。
【0077】
離型剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.1〜30質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0078】
(外添剤)
外添剤としては、特に限定されず、公知の種々の外添剤を用いることができる。例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸カルシウムなどよりなる無機酸化物や、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛などの脂肪酸金属塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
これら無機化合物はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0080】
外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部とされる。
【0081】
(トナー粒子の粒径)
トナー粒子の粒径は、体積基準のメディアン径(D50)で2.5〜7.5μmであることが好ましい。体積基準のメディアン径が2.5〜7.5μmと小径であることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できて高画質の印画物が得られる。
【0082】
トナーの体積基準のメディアン径(D50)は「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5〜10%になるまでピペットにて注入する。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメディアン径とされる。
【0083】
〔二成分現像剤の作製〕
次に、二成分現像剤の作製について説明する。
【0084】
二成分現像剤は、キャリアとトナーを混合することで作製することができる。キャリアとトナーの混合比は、キャリア100質量部に対してトナー2〜15質量部が好ましい。キャリアとトナーの混合は、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
【0085】
〔画像形成方法〕
本発明のキャリアからなる二成分現像剤は、像担持体上に均一な帯電電位を付与する帯電工程、均一な帯電電位が付与された像担持体上に静電潜像を形成する露光工程、静電潜像をトナーにより現像してトナー像に顕像化する現像工程、トナー像を転写材上に転写する転写工程、転写材上のトナー像を定着する定着工程を少なくとも有する、一般的な電子写真方式のモノクロおよびフルカラーの画像形成方法に用いることが出来る。
【実施例】
【0086】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施の態様はこれらに限定されるものではない。
【0087】
〔ワックス含有樹脂粒子の作製〕
(ワックス含有樹脂粒子〔1〕の作製)
反応容器にシクロヘキシルメタクリレート40質量部とメチルメタクリレート40質量部から成る混合液を投入し、70℃に昇温させた後、撹拌しながら脂肪酸エステル系化合物であるベヘン酸ベヘニル20質量部を少しずつ添加することにより、ワックス含有モノマー溶液(W)を調整した。
【0088】
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にドデシル硫酸ナトリウム1.4質量部をイオン交換水500質量部に溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、次いで、上記ワックス含有モノマー溶液(W)を添加し、クレアミックスを用いて15000rpm、30分間撹拌することで、均一な分散粒子径を有するワックス含有乳化粒子(油滴)が分散された乳化液を調整した。
【0089】
次いで、この乳化液に重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)0.4質量部をイオン交換水40質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を80℃にて3時間加熱・撹拌することにより重合反応を行い、この系を40℃まで冷却することにより、ワックスを含有する樹脂粒子の分散液(以下「ワックス含有ラテックス」ともいう)を調整した。
【0090】
得られたワックス含有ラテックスをマイクロトラックUPA−150にて測定したところ、体積平均粒径230nmであった。
【0091】
作製したワックス含有ラテックスを、限外濾過装置を用いて水洗し、その後スプレードライヤーで乾燥させることでキャリアコートするためのワックス含有樹脂粒子〔1〕を得た。
【0092】
(ワックス含有樹脂粒子〔2〕〜〔8〕の作製)
ワックス含有樹脂粒子〔1〕の作製において、コート樹脂粒子を構成する重合性単量体とワックスの添加量及びコート樹脂粒径を表1のように変更した以外は同様にして、ワックス含有樹脂粒子〔2〕〜〔8〕を作製した。
【0093】
〔キャリアの作製〕
(キャリア1の作製)
体積平均粒径30μmのフェライト粒子3000質量部と上記ワックス含有樹脂粒子〔1〕110質量部を水平回転翼型混合機に投入し、水平回転翼の周速が8m/secとなる条件で、22℃15分間混合撹拌した後、120℃に加熱し40分間撹拌してキャリア1を作製した。
【0094】
(キャリア2〜8)
キャリア1の作製において、ワックス含有樹脂粒子〔1〕を表1のように変更した以外は同様にして、キャリア2〜8を作製した。
【0095】
上記で作製したキャリアの樹脂コート層の膜厚、形状係数SF2、樹脂コート層中のワックス粒子径を前述の方法でそれぞれ測定した。測定結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
《トナー1の作製》
トナーは以下のようにして作製した。
【0098】
〈コア粒子用ラテックスの作製〉
撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3,000質量部、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部を投入し、75℃に昇温させて界面活性剤溶液を調製した。次いで、この界面活性剤溶液に5%過硫酸カリウム水溶液60質量部を添加した後、さらに
スチレン 560質量部
n−ブチルアクリレート 160質量部
メタクリル酸 85質量部
からなる混合液を3時間かけて滴下し、その後、窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行うことにより、ラテックス〔1〕を調製した。
【0099】
次に、反応容器中に、純水1,000質量部にポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部と上記のラテックス〔1〕180質量部を投入し、混合することにより、ラテックス〔1A〕を調製した。
【0100】
一方、別の反応容器に、
スチレン 168質量部
n−ブチルアクリレート 78質量部
メタクリル酸 26質量部
n−オクチルメルカプタン 4質量部
からなる混合液を投入し、70℃に昇温させた後、撹拌しながら脂肪酸エステル系化合物であるベヘン酸ベヘニル118質量部を少量ずつ添加することにより、ワックス含有モノマー溶液〔W〕を調製した。
【0101】
上記のラテックス〔1A〕を窒素雰囲気下で撹拌しながら73℃に昇温させた後、上記のワックス含有モノマー溶液〔W〕を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)によって10分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を得た。この乳化分散液を投入した反応容器に、撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着し、窒素雰囲気下で撹拌しながら78℃に昇温させた。さらに5%過硫酸カリウム水溶液80質量部を投入し、その10分間後にn−オクチルメルカプタン4質量部を投入した後、1時間かけて重合反応を行うことにより、ラテックス〔2〕を調製した(第1段(NP)重合)。
【0102】
さらに、この反応系を35分間かけて80℃まで昇温させ、その後、5%過硫酸カリウム水溶液125質量部を添加し、さらに、
スチレン 270質量部
n−ブチルアクリレート 125質量部
メタクリル酸 43質量部
n−オクチルメルカプタン 7質量部
からなる混合液を1時間かけて滴下し、85℃まで昇温させた後、1時間半かけて重合反応を行うことにより、コア粒子用ラテックス〔3〕を調製した(第2段(SP)重合)。
【0103】
〈シェル層用ラテックスの作製〉
撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3,000質量部、ドデシル硫酸ナトリウム7質量部を投入し、80℃に昇温させて界面活性剤溶液を調製した。次いで、この界面活性剤溶液に5%過硫酸カリウム水溶液200質量部を添加した後、さらに
スチレン 500質量部
n−ブチルアクリレート 185質量部
メタクリル酸 175質量部
n−オクチルメルカプタン 14質量部
からなる混合液を3時間かけて滴下し、さらに、90℃に昇温した後、窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行い、その後、冷却処理を行うことにより、シェル層用ラテックス〔4〕を調製した。
【0104】
〈着色剤微粒子分散液の調製〉
ドデシル硫酸ナトリウムの10質量%水溶液900質量部を撹拌しながら、着色剤「C.I.ピグメントブルー15;3」210質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「SCミル」(三井鉱山社製)を用いて分散処理することにより、着色剤分散液〔1〕を調製した。この着色剤分散液〔1〕中の着色剤微粒子の体積平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、200nmであった。
【0105】
〈トナー母体粒子の作製〉
(コア粒子の形成)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア粒子用ラテックス〔3〕 425質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤分散液〔1〕 25質量部(固形分換算)
を投入して撹拌し、内温を30℃に調整した後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0106】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて反応系に添加し、3分間放置した後に昇温を開始して、この系を60分間かけて75℃まで昇温させて会合を開始した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、会合粒子の粒径が体積基準のメディアン径(D50)で5.0μmとなった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させることにより、コア粒子〔1〕を得た。
【0107】
(シェル層の形成)
次に、上記のコア粒子〔1〕を作製した反応容器を80℃に調整し、これにシェル層用ラテックス〔4〕75質量部(固形分換算)を添加した。さらに、塩化マグネシウム・6水和物8質量部をイオン交換水8質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、85℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたって撹拌を継続してコア粒子の表面にシェル層用ラテックス〔4〕中の微粒子を凝集・融着させ、その後、90℃で2時間熟成処理を行った。
【0108】
熟成処理後、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加し、30℃まで冷却することにより、コア−シェル粒子〔1〕が分散された分散液を得た。
【0109】
(洗浄、および、乾燥)
凝集・融着工程にて生成した粒子を、バスケット型遠心分離機により固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、前記バスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5×10−4S/mになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥してトナー母体粒子〔1〕を作製した。このトナー母体粒子〔1〕は、体積基準のメディアン径(D50)が5.5μmであり、コア−シェル構造を有するものであった。
(トナー1の作製)
トナー母体粒子〔1〕100質量部に、外添剤として疎水性シリカ(数平均一次粒子径=10nm)1.3質量部、疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.6質量部、ステアリン酸亜鉛(体積基準のメディアン径=10μm)0.15質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井鉱山社製)を用い、周速40m/secで25分間混合して「トナー1」を作製した。
【0110】
《現像剤の作製》
上記で作製した各「キャリア1〜8」93質量部と、「トナー1」7質量部を順次V型混合機で5分間混合し、実施例1〜5及び比較例1〜3の2成分現像剤1〜8を調製した。
【0111】
〔評価〕
評価装置としてデジタルカラー複合機bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を65ppmから80ppmに改造したマシンを準備し、シアンの現像装置に「2成分現像剤1〜8」を順次装填し、常温常湿(23℃、55%RH)の環境で評価を行なった。
【0112】
まず、初期画像として、ベタ白画像、シアンのハーフトーン画像(印字率25%)をA4の上質紙(64g/m)にプリントした。
【0113】
その後、シアンの印字率5%の文字画像をA4の上質紙(64g/m)に30万枚プリントを行ない、プリント30万枚終了後に、ベタ白画像、シアンのハーフトーン画像(印字率25%)を上記の上質紙にプリントした。
【0114】
〔評価方法〕
(帯電量の測定方法)
帯電量は、初期と30万枚プリント終了後にそれぞれ2成分現像剤をサンプリングし、下記の平行平板法により測定した。
【0115】
具体的には、80mm×40mm×1mmの2枚のアルミニウム板電極を電極間距離0.5mmで上下に配置した平行平板方式の帯電量測定器の下側のアルミニウム板電極上に現像剤50mgを均一に平らにして乗せ、DCバイアスが1.0kV、ACバイアスが4.0kV、2.0kHzの条件で、トナーを反対側(上側)の電極に現像(付着)させた。現像されたトナーの電荷量と質量を測定し、単位質量当たりの電荷量Q/m(μC/g)を帯電量とした。
【0116】
初期と30万枚プリント終了後で帯電量差が、8μC/g以下であれば問題ないレベルである。
【0117】
(カブリ評価)
カブリ濃度測定は、まず印字されていない白紙について、マクベス反射濃度計「RD−918」を用いて20ケ所の絶対画像濃度を測定して平均し、白紙濃度とする。次に上記でプリントしたベタ白画像について同様に20ヶ所の絶対画像濃度を測定して平均し、この平均濃度から白紙濃度を引いた値をカブリ濃度として評価した。
【0118】
◎:カブリ濃度0.003未満
○:カブリ濃度0.003以上0.005未満
△:カブリ濃度0.005以上0.010未満
×:カブリ濃度0.010以上
カブリ濃度が0.010未満であれば、カブリは実用的に問題ないと言える。
【0119】
(ハーフトーンムラ評価)
ハーフトーン画像の濃度ムラ評価は、上記でプリントしたハーフトーン画像の画質を目視にて評価した。
【0120】
評価基準
◎:ハーフトーン画像に濃度ムラが見られない
○:ハーフトーン画像に濃度ムラがやや見られるが画質は問題ない
×:ハーフトーン画像に濃度ムラが見られ画質に問題有り
画像濃度の測定は、bizhub PRO C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を65ppmから80ppmに改造したマシンで実写評価を行い、1万及び30万枚プリントの後、ベタ画像を出力し、マクベス反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を使用し紙をゼロとした相対反射濃度で測定した。
【0121】
◎:ベタ画像部の濃度が1.2以上で良好
○:ベタ画像部の濃度が0.8以上で実用上問題なし
×:ベタ画像部の濃度が0.8未満で濃度に問題有り
以上の結果を表2に示した。
【0122】
【表2】

【0123】
表2の結果から明らかなように本発明のキャリアは比較用キャリアに比べて帯電量、カブリ、ハーフトーンムラについて、初期及び30万枚プリント後とも極めて良好な性能であることが分かる。
【符号の説明】
【0124】
10 本体容器
11 本体上蓋
12 原料投入口
16 温度計
17 調温用ジャケット
18a、18b、18c 撹拌装置
19 水平方向回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性芯材の表面に樹脂コート層を有するキャリアであって、該樹脂コート層はワックス粒子を含有するものであり、該キャリアの形状係数SF2が1.1以上2.5以下であることを特徴とするキャリア。
【請求項2】
前記ワックス粒子の粒径が80nm以上250nm以下のものであることを特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
前記樹脂コート層を形成する樹脂は、界面活性剤を含有させた水系媒体中にワックスを含有させた重合性単量体を分散させておき、該水系媒体中に分散させた該重合性単量体の粒子を重合させることにより形成されるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のキャリア。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のキャリアとトナーとから構成される二成分現像剤。
【請求項5】
磁性芯材の表面にワックス粒子を含有する樹脂コート層を有するキャリアの製造方法であって、該キャリアの製造方法が、少なくとも、界面活性剤を含有させた水系媒体中にワックスを含有させた重合性単量体を分散させておき、この状態で該重合性単量体の粒子を重合させてワックス粒子を含有する樹脂粒子を作成する工程と、該工程で作成したワックス粒子を含有する樹脂粒子を機械的衝撃力により該磁性芯材の表面にコーティングする工程を有することを特徴とするキャリアの製造方法。

【図1】
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