説明

キャリブレーションモジュール、プリンタ

【課題】キャリブレーションパターンを計測可能なキャリブレーション装置の使用態様の選択肢を広げ、汎用性を高める。
【解決手段】用紙搬入口11を有する搬入部1と、排出口21を有する排出部2と、用紙を搬入部1と排出部との間に形成される用紙搬送路に沿って搬送する用紙搬送機構3と、用紙搬送路上に配置され且つ用紙にプリントされたキャリブレーションパターンを計測可能なキャリブレーション装置4とを備えたキャリブレーションユニットをモジュール化し、用紙に対してプリント処理可能なプリンタ本体に装着した状態又はプリンタ本体に装着していない状態の何れにおいても、用紙にプリントされたキャリブレーションパターンをキャリブレーション装置4によって計測可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙にプリントされたキャリブレーションパターンを計測可能なキャリブレーション装置をモジュール化したキャリブレーションモジュール、及びこのようなキャリブレーションモジュールを備えたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙にプリントされる画像の濃度を所定の基準濃度に対応付けて調整可能なキャリブレーション処理(色味補正処理)を行うためのキャリブレーション装置が知られている。キャブレーション装置は、印刷部によって用紙にプリントされたキャリブレーションパターンを計測(測色)可能なセンサを主体として構成され、印刷部よりも用紙搬送方向の下流側の所定箇所においてキャリブレーションパターンを計測するように構成されている(例えば特許文献1)。なお、キャリブレーション処理自体は、センサによるキャリブレーションパターンの測定濃度と基準濃度との差分を自動で算出し、この差分算出結果に基づいてプリント部の濃度の較正を行うことによって完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−001049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャリブレーション処理を行うタイミングは、プリンタ(プリンタ本体)の出荷時、インクリボンの装填時、インクリボンの交換時、使用する環境条件や一定の使用期間が経過したことなどによって実際に出力するプリント結果の色味特性が変化した場合などに限られており、通常のプリント処理と比較すれば、そのキャリブレーション処理の頻度は極めて少ないのが実情である。そして、通常のプリント処理を行う場合には使用されることがないキャリブレーション装置をプリンタに内蔵しない限りキャリブレーション処理を行うことができない従来のプリンタは、キャリブレーション処理の頻度及びキャリブレーション装置のコストを考慮すれば過剰スペックであるとも言える。
【0005】
また、同種のプリンタであれば、キャリブレーション処理の内容に差異はなく、各プリンタに内蔵されるキャリブレーション装置も同じスペックであることから、キャリブレーション装置を同種のプリンタ同士で共用することができれば、ユーザにとっては経済的である。
【0006】
本発明者は、このような事情に着目し、キャリブレーション装置を備えたユニットをプリンタ本体とは別体のものとしてモジュール化したキャリブレーションモジュールを案出するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、用紙搬入口を有する搬入部と、排出口を有する排出部と、用紙を搬入部と排出部との間に形成される用紙搬送路に沿って搬送する用紙搬送機構と、用紙搬送路上に配置され且つ用紙にプリントされたキャリブレーションパターンを計測可能なキャリブレーション装置とを備えたキャリブレーションユニットをモジュール化したキャリブレーションモジュールであり、用紙に対してプリント処理可能なプリンタ本体に装着した状態又はプリンタ本体に装着していない状態の何れにおいても、用紙にプリントされたキャリブレーションパターンをキャリブレーション装置によって計測可能に構成したことを特徴としている。
【0008】
このように、本発明は、キャリブレーション装置を備えたキャリブレーションユニットをモジュール化するという斬新な技術的思想を採用したものであり、このようなでキャリブレーションモジュールをプリンタ本体に装着した状態でキャリブレーション装置によってキャリブレーションパターンを計測可能に構成しているため、キャリブレーション処理を行う場合にのみ、キャリブレーションモジュールをプリンタ本体に装着しさえすればよく、通常のプリント処理時にはプリンタ本体から取り外しておくことができる。このような使用態様が可能であるキャリブレーションモジュールであれば、例えば既存のプリンタをプリンタ本体と捉えた場合に、この既存のプリンタに対して後付けで装着して使用することも可能になったり、同種のプリンタ本体に対して同じキャリブレーションモジュールを共用することも可能になり、実用性及び汎用性に富む。
【0009】
さらには、本発明では、キャリブレーションモジュールをプリンタ本体に装着していない状態であっても、キャリブレーションモジュールのキャリブレーション装置によってキャリブレーションパターンを計測可能に構成しているため、例えばプリンタ本体におけるキャリブレーションパターンのプリント処理又は通常のプリント処理と、既に用紙にプリントされたキャリブレーションパターンをキャリブレーション装置で計測する処理とを同時に並行して行うことも可能になり、使用態様のバリエーションが増え、ユーザにとっては必要に応じて複数の使用態様から適宜の使用態様を選択することができ、好適である。
【0010】
特に、本発明のキャリブレーションモジュールが、排出口を有するプリンタ本体に対して用紙搬入口をプリンタ本体の排出口に連通させた状態で取付可能な取付部を備えたものであれば、取付部を利用してキャリブレーションモジュールをプリンタ本体に装着することができ、この装着状態でキャリブレーションモジュールの用紙搬入口がプリンタ本体の排出口に連通しているため、プリンタ本体でキャリブレーションパターンがプリントされた用紙を、プリンタ本体の排出口からキャリブレーションモジュールの用紙搬入口にスムーズに受け渡すことができ、そのままキャリブレーションモジュールのキャリブレーション装置によるキャリブレーションパターン処理に供することができる。なお、取付部の構成をプリンタの種別によって異なるものとし、取付部を交換可能とすれば、異種プリンタ間でのキャリブレーションモジュールの共用が可能となる。
【0011】
また、本発明に係るプリンタは、用紙に対してプリント処理可能なプリンタ本体に、上述した構成を有するキャリブレーションモジュールを着脱可能に取り付けていることを特徴としている。
【0012】
このようなプリンタであれば、キャリブレーションモジュールが奏する上記作用効果を得ることができ、汎用性に富み、キャリブレーションモジュールの使用態様を複数の選択肢から適宜選択することが可能になり、プリンタ全体からみても汎用性に富み、経済的である。なお、本発明のプリンタは、熱転写プリンタ、インクジェットプリンタ、レーザプリンタなどの各種プリンタを包含し、プリンタ本体におけるプリント処理方式が特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャリブレーション装置を備えたキャリブレーションユニットをモジュール化するという斬新な技術的思想を採用したことによって、キャリブレーション処理を行う場合にはキャリブレーションモジュールをプリンタ本体に装着する一方で、通常のプリント処理時にはプリンタ本体から取り外したり、同種のプリンタ本体に対して同じキャリブレーションモジュールを使い回すことも可能になり、キャリブレーション装置の汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャリブレーションモジュールを装着したプリンタの側面模式図。
【図2】同実施形態に係るプリンタ本体の側面模式図。
【図3】同実施形態に係るキャリブレーションモジュールの全体外観模式図。
【図4】同キャリブレーションモジュールの側面模式図。
【図5】同実施形態に係るプリンタにおける用紙パスラインを模式的に示す図。
【図6】同実施形態に係るキャリブレーションモジュールの正面図。
【図7】図6のa−a線断面模式図。
【図8】同実施形態におけるセンサユニットを計測位置に位置付けた状態の図7対応図。
【図9】同実施形態における光源及び受光素子を実装した基板を実装面側から見た図。
【図10】同実施形態におけるカバー体をカバーの開口端側から見た図。
【図11】同実施形態におけるセンサユニット本体をカバーの開口端側から見た図。
【図12】図11のa−a線断面模式図。
【図13】同実施形態においてキャリブレーションパターンをプリントした用紙を示す図。
【図14】同実施形態に係るキャリブレーションモジュールにおける計測処理のフローチャートを示す図。
【図15】同実施形態においてキャリブレーションモジュール単独で計測処理を行う際のプリンタ本体側の動作フローを示す図。
【図16】同実施形態においてキャリブレーションモジュール単独で計測処理を行う際のキャリブレーション装置の動作フローを示す図。
【図17】同実施形態においてキャリブレーションモジュール単独で計測処理を行った後の動作フローを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係るキャリブレーションモジュールUは、キャリブレーション装置4などを備えたキャリブレーションユニットをモジュール化したものであり、図1乃至図4に示すように、プリンタ本体Bに装着した場合にはプリンタPの一部として機能するとともに、プリンタ本体Bに装着しない場合であっても単体で使用可能なものであり、用紙SにプリントされたキャリブレーションパターンCPを計測可能なものである。
【0017】
本実施形態で適用するプリンタPは、図1に示すように、用紙Sに対してインクリボンのインクを熱転写によって昇華プリント処理を行う昇華型プリンタである。この昇華型プリンタPは、通常のプリント処理を行う場合は図2に示すように、プリンタ本体Bのみで使用可能なものである。プリンタ本体Bは、図5に示すように、給紙部B1と、給紙部B1から供給された用紙Sの表面に対して昇華プリント処理を施す印刷部B2と、排出口B31を有する排出部B3と、用紙Sを給紙部B1と排出部B3との間に形成される用紙搬送路L1(用紙パスライン)に沿って搬送する用紙搬送機構B4となお、このプリンタ本体Bは、少なくとも給紙部B1、印刷部B2、及び用紙搬送機構B4を共通の筐体B7内に設け、排出部B3を構成する排出口B31や図示しない排出トレイを筐体B7外へ露出可能に構成している。また、給紙部B1、印刷部B2、排出部B3、用紙搬送機構B4の作動は図示しないプリンタP内の適宜箇所に設けた制御部によって制御している。
【0018】
給紙部B1は、ロール状に巻回した用紙Sを収容し得るものである。図5では用紙Sを外部に露出させた状態を示しているが、図示しない適宜のカバー部材を筐体B7に装着することによって用紙Sの収容空間を外部空間から隔離した空間にすることができる。なお、図5は、本実施形態のプリンタPにおける用紙パスラインL1を説明する図であり、用紙パスラインL1沿いに配置した部品や機構のみを模式的に示し、他の部品や機構は省略している。
【0019】
給紙部B1と排出部B3との間で用紙Sを搬送する用紙搬送機構B4は、図5に示すように、例えば給紙部B1側から排出部B3側に向かって順に配置された給紙側送りローラB41と第1ピンチローラB42との組、フィードローラB43と第2ピンチローラB44との組、排出側送りローラB45と第3ピンチローラB47との組を用いて構成したものである。なお、ローラ自体の数、或いはローラとピンチローラとの組数や配置箇所は仕様等に応じて適宜設定することができる。
【0020】
印刷部B2は、サーマルヘッドB21と、このサーマルヘッドB21と対向する位置に配置され且つサーマルヘッドB21との間で用紙Sを挟み用紙搬送機構B4の機能の一部を担うプラテンローラB22とを備え、サーマルヘッドB21とプラテンローラB22との間に搬送された図示しないインクリボンのインクを用紙Sに熱転写プリント可能な周知のものである。
【0021】
排出部B3は、図5に示すように、印刷部B2により所望のプリント処理が施された用紙Sを所定サイズに切断したカット紙として排出口B31から筐体B7外に排出するものである。キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着せず、プリンタ本体B単体で使用する場合には、排出部B3は、図示しない排出トレイ上に積み重ねた状態で載置し得るものである。また、排出部B3は、排出口B31よりも印刷部B2側に、用紙Sを排出口B31に向かって搬送する排出ローラB32と排出用ピンチローラB33との組を配置している(図5参照)。なお、排出ローラB32及び排出用ピンチローラB33は、排出部B3の機能の一部を担うとともに、用紙搬送機構B4の機能の一部も担っている。
【0022】
キャリブレーションモジュールUは、図3乃至図7に示すように、用紙搬入口11を有する搬入部1と、排出口21を有する排出部2と、用紙Sを搬入部1と排出部2との間に形成される用紙搬送路L2(用紙パスライン)に沿って搬送する用紙搬送機構3と、搬入部1と排出部2との間に配置され且つ用紙搬送路L2に沿って搬送される用紙にプリントされたキャリブレーションパターンを計測可能なキャリブレーション装置4と、プリンタ本体Bに対する取付部5とを備えている。このキャリブレーションモジュールUは、少なくとも、用紙搬送機構3及びキャリブレーション装置4を共通の筐体6内に設け、排出部2を構成する排出口21を筐体6外へ露出可能に構成している。また、本実施形態のキャリブレーションモジュールUは、搬入部1の用紙搬入口11を、キャリブレーションモジュールU単体で使用する場合には外部に露出させる一方で(図7参照)、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着した場合にはプリンタ本体Bの排出口B31に臨む位置に設定し、プリンタ本体Bの排出口B31からプリンタ本体B外へ排出した用紙SをキャリブレーションモジュールUの用紙搬入口11からキャリブレーションモジュールU内へ搬送可能に構成している(図5参照)。つまり、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着した場合には、キャリブレーションモジュールU側の用紙搬送路L2及びプリンタ本体B側の用紙搬送路L1は相互に連続するものになる。
【0023】
搬入部1、排出部2、用紙搬送機構3、キャリブレーション装置4の作動は図示しないキャリブレーションモジュールU内の適宜箇所に設けた制御部によって制御している。また、本実施形態に係るキャリブレーションモジュールUは、プリンタ本体Bの制御部との通信を可能にする通信部(図示省略)を備えている。
【0024】
搬入部1は、用紙Sのウラ面を用紙幅方向W全域に亘って線接触することによって用紙Sを支持可能な搬入支持部12を備えたものであり、この搬入支持部12を用紙搬入口11の開口下縁として機能させている。
【0025】
用紙搬送機構3は、図7に示すように、例えば用紙搬入口11側から排出部2側に向かって順に配置された搬入ローラ31と、フィードローラ32と、フィードローラ32との間に用紙Sを挟み得る位置に配置され用紙搬送路L2に沿って排出部2まで延出する搬送ガイドプレート33とを用いて構成ものである。なお、用紙搬送機構3は、ローラとの間で用紙Sを挟むピンチローラを用いたものであってもよく、ローラ自体の数、或いはローラとピンチローラとの組数や配置箇所は仕様等に応じて適宜設定することができる。
【0026】
排出部2は、キャリブレーションモジュールU内において用紙搬送路L2上を搬送されて後述するセンサユニット7の下方を通過した用紙Sを排出口21から筐体6外に排出するものである。また、排出部2は、排出口21よりもキャリブレーション装置4側に、用紙Sを排出口B31に向かって搬送する排出ローラ22と排出用ピンチローラ23との組を配置している。なお、排出ローラ22及び排出用ピンチローラ23は、排出部2の機能の一部を担うとともに、用紙搬送機構3の機能の一部も担っている。
【0027】
キャリブレーション装置4は、図7及び図8に示すように、センサユニット7と、センサユニット7を計測位置と退避位置との間で移動させる移動機構8とを備えたものである。
【0028】
センサユニット7は、図7乃至図12に示すように、所定の波長の光を用紙Sに向かって照射する光源71(投光手段)と、用紙Sからの反射光を検出する受光素子72(受光手段)と、これら光源71及び受光素子72を内部空間に収容可能な筒状のカバー73とを備えたものである。本実施形態のセンサユニット7は、図9、図11及び図12に示すように、光源71及び受光素子72を共通の基板74に実装し、カバー73もこの基板74に固定している。本実施形態では、光源71としてLEDを適用し、受光素子72としてカラーセンサ素子又はフォトセンサ素子を適用している。用紙Sにプリントされるキャリブレーションパターンがカラープリントである場合には、センサユニット7として、カラーセンサ素子を基板74に実装したものを適用することが好ましく、用紙Sにプリントされるキャリブレーションパターンがモノクロプリントである場合には、センサユニット7として、フォトセンサ素子を基板74に実装したものを適用することが好ましい。また、用紙Sにカラーでプリントされたキャリブレーションパターンを計測するセンサユニット7における光源71と受光素子72の組み合わせとしては、白色の光源71とカラーセンサ素子との組み合わせや、カラーフィルタを一体的に備えた白色の光源71とフォトセンサとの組み合わせ、或いは所定の色付き光源71とフォトセンサとの組み合わせ等を挙げることができる。なお、複数種類のセンサユニット7を備え、出力するプリント態様(カラープリントであるかモノクロプリントであるか)に応じて使用するセンサユニット7の種類を適宜の切替機構によって切替可能に構成することもできる。
【0029】
筒状のカバー73は、図10乃至図12に示すように、一端部(上端部)の外周面に基板74と重なり得るフランジ部75を設け、他端部(下端部)を開口縁73aに設定したものである。本実施形態では、フランジ部75として、基板74とほぼ同一か、若干大きい平面形状を有する板状のものを適用し、このフランジ部75をカバー73と一体に形成している。以下の説明では、カバー73及びフランジ部75を一体に形成したものを「カバー体77」と称する場合がある。また、カバー73の内向き面(内周面)には、反射光を防止する表面処理を施している。
【0030】
さらに、本実施形態のセンサユニット7は、光源71の光が受光素子72に直接入光することを防止・抑制するための仕切り板78を光源71と受光素子72との間に仕切り板78を配置している。仕切り板78は、カバー73の内部空間のうち反開口縁73a側(フランジ部75側)の領域を光源71の収容領域と受光素子72の収容領域とに仕切るものである。本実施形態では、仕切り板78をカバー73の内周面に一体に形成している。すなわち、本実形態では、カバー73及びフランジ部75を有するカバー体77に仕切り板78を一体に形成している。また、仕切り板78の一端部(上端部)を基板74に接触させた状態において、仕切り板78の他端部(下端部)が、光源71及び受光素子72よりもカバー73の開口縁73a側に近い位置となるように仕切り板78の高さ寸法を設定している。なお、仕切り板78の高さ寸法は、カバー73の高さ寸法よりも短く、仕切り板78の他端部(下端部)がカバー73の開口縁73aよりもフランジ部75側に位置付けられるように設定している。これにより、カバー73の内部空間のうち開口縁73a側の領域は、光源71の収容領域と受光素子72の収容領域とに仕切られず、光源71の収容領域及び受光素子72の収容領域は相互に連続した領域になる(図11参照)。
【0031】
本実施形態では、図11及び図12に示すように、基板74のうち光源71及び受光素子72を実装した実装面に、フランジ部75を厚さ方向に重ね合わせるようにしてカバー体77を基板74に組み付けることによって、カバー73の内部空間に光源71及び受光素子72を収容し、且つ光源71と受光素子72との間に仕切り板78を配置したセンサユニット本体70を得ることができる。本実施形態のセンサユニット7は、このセンサユニット本体70と、センサユニット本体70を支持するセンサユニット本体支持板79とを備え、ネジ7Nを用いてセンサユニット本体70及びセンサユニット本体支持板79を一体的に組み付けたセンサユニット7を得ることができる(図7及び図8参照)。センサユニット本体支持板79は、センサユニット本体70のうちフランジ部75を下方からあてがう位置に配置される板状のものである。このセンサユニット本体支持板79には、カバー73が挿通可能なカバー挿通孔を形成している。なお、基板74及びフランジ部75には、相互に重ね合わせた状態で厚さ方向(高さ方向)に連通するネジ挿通孔74a,75aをそれぞれ形成し(図11及び図12参照)、ネジ7Nの先端部を、センサユニット本体支持板79に形成したネジ孔に螺合している。また、基板74のうち実装面とは反対側の面(反実装面)には基板カバー体74Cを取り付けている(図7参照)。なお、センサユニット7は、センサユニット本体70単位で交換したり、光源71及び受光素子72を実装した基板74単位で交換することもでき、またセンサユニット7ごと交換することも可能である。
【0032】
移動機構8は、図6乃至図8に示すように、カム機構を用いたものであり、具体的には、キャリブレーションモジュールUの筐体6に固定した回転軸81を中心に回転し、外縁部に回転軸81からの半径が異なる複数の円弧部分を形成したカム本体82と、カム本体82の回転に従動して高さ方向に移動する昇降板83(カムフォロア)とを備え、昇降板83に直接または間接的に固定したセンサユニット7を、昇降板83の昇降動作に伴って昇降移動させるものである。
【0033】
カム本体82の外縁部には、相対的に径が大きい大径円弧部821と、相対的に径が小さい小径円弧部822とを回転軸81を挟んで対向する位置に連続させて形成している。このような大径円弧部821及び小径円弧部822を外縁部に形成したカム本体82の外縁形状は、扇形状又はシェル形状である。
【0034】
一方、昇降板83には、カム本体82の上方側に配置され、且つカム本体82の外縁部のうち大径円弧部821に添接しながらカム本体82の回転に連動して回転し得る従動ローラ84と、カム本体82の下方側に配置され、且つ従動ローラ84がカム本体82の小径円弧部822に接触し得るカム本体82の回転角度において従動ローラ84と小径円弧部822とが相互に接触するよりも優先して大径円弧部821に接触する優先接触部85とを設けている。また、昇降板83には、高さ方向に延びる長孔83aを形成しており、キャリブレーションモジュールUの筐体6に固定したピン6Pを長孔83aに挿入することにより、これら長孔83a及びピン6Pが、昇降板83の昇降移動をガイドするガイド機構として機能する。
【0035】
さらに、本実施形態では、昇降板83の上端部近傍に、センサユニット7の一部に下端部を支持させたバネ87の上端部が接触し、このバネ87を圧縮方向に押圧し得る押圧部88を設けている。コイルスプリングであるバネ87の中空部には、バネ87が傾斜したり、湾曲することを防止するポール87Pを挿入している。ポール87Pは、その上端部を押圧部88に貫通させた状態にあり、押圧部88に固定されていない。サンセユニット7の一部には、バネ87の下端部を収容した状態で保持可能なバネ保持部89を設けている。このような押圧部88とバネ保持部89との間に配置したバネ87は、センサユニット7と昇降板83との間に介在させたものであると捉えることができる。本実施形態では、1つのセンサユニット7に対して2本のバネ87を付帯させるように構成している(図6参照)。なお、センサユニット7のカバー73を用紙幅方向Wに挟む位置に一対のバネ87を配置している。具体的には、センサユニット本体支持板79の両サイド部分をセンサユニット本体70及び基板カバー体74Cよりも側方に延出させておき、このセンサユニット本体支持板79の両サイド部分にそれぞれバネ保持部89を設けている。
【0036】
本実施形態のキャリブレーション装置4は、複数(図示例では3つ)のセンサユニット7を備え、これら複数のセンサユニット7を共通の移動機構8によって一体に昇降動作するように設定している。
【0037】
また、本実施形態のキャリブレーション装置4は、センサユニット7よりも用紙搬送方向A上流側に配置され且つ少なくとも計測処理時において用紙Sを厚さ方向に押圧又は挟持してセンサユニット7に向かう用紙Sに張力を付与する張力付与部9を備えている(図5参照)。本実施形態では、フィードローラ32が用紙Sを上方から押さえる用紙押さえローラとして機能し、搬送ガイドプレート33がフィードローラ32との間で用紙Sを保持可能な用紙保持プレートとして機能し、これらフィードローラ32及び搬送ガイドプレート33を用いて張力付与部9を構成している。本実施形態のキャリブレーション装置4では、センサユニット7を計測位置に位置付けた場合に、カバー73の開口縁73aと搬送ガイドプレート33との間に用紙Sを挟持する構成であり、用紙Sのうちカバー73及び搬送ガイドプレート33に挟持される箇所よりも用紙搬送方向A上流側の箇所を張力付与部9によって用紙厚さ方向に押圧又は挟持することにより、用紙搬送路L2に沿ってセンサユニット7に向かう用紙Sを真っ直ぐに伸ばした姿勢に矯正することができる。
【0038】
また、キャリブレーションモジュールUには、図3及び図4等に示すように、プリンタ本体Bに対する取付部5を設けている。本実施形態のキャリブレーションモジュールUは、筐体6の両サイドを構成する各側壁61に、プリンタ本体Bの筐体B7のベースB71に載置可能な載置部62と、プリンタ本体Bの筐体B7の側壁B72に対して側方から添え当てる添接部63とを備え、これら載置部62及び添接部63を取付部5として機能させている(図1乃至図4参照)。具体的には、載置部62及び添接部63にそれぞれネジ挿通孔を形成し、これら各ネジ挿通孔に挿入したネジを、プリンタ本体Bの筐体B7のベースB71に形成したネジ孔や、プリンタ本体Bの筐体B7の側壁B72に形成したネジ孔に螺合することによって、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに着脱可能に取り付けている。
【0039】
次に、このような構成を有するキャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着した本実施形態のプリンタPの動作及び作用を通常プリント処理時とキャリブレーション処理時とに場合分けして説明する。以下では、通常のプリント処理から先に説明する。
【0040】
本実施形態に係るプリンタPは、まず、ユーザの操作などによって入力された印刷データに基づいて、給紙部B1でロール状に巻回されている用紙Sを給紙側送りローラB41と第1ピンチローラB42との間、フィードローラB43と第2ピンチローラB44との間を順次通過させて印刷部B2まで搬送する(図5参照)。そして、印刷部B2によって用紙Sの印刷面(オモテ面)における印刷設定領域(プリント画面)に熱転写プリント処理を行う。本実施形態における印刷部B2は、サーマルヘッドB21の熱によりイエロー・マゼンタ・シアンの各色インク及びオーバープリント用のインク又は特色インクを昇華させることで用紙Sの印刷面にカラー画像を印刷する(形成する)。この際、制御部に入力された印刷データに従って、サーマルヘッドB21の温度を調整することにより印刷濃度のレベルを変化させた階調印刷を行うことができ、用紙Sの印刷面におけるプリント画面に高品質なカラー画像を印刷することが可能である。
【0041】
次いで、本実施形態に係るプリンタPは、印刷部B2による熱転写プリント処理を終えた用紙Sを排出部B3側へ順次搬送し、図示しない切断部によって用紙Sを用紙幅方向Wに切断する。本実施形態のプリンタPは、制御部の制御に従って、切断部よる用紙Sの分割数や分割ピッチを変更することにより、用紙搬送方向Aに沿ったプリント画面の大きさを適宜調整することができる。
【0042】
次いで、本実施形態のプリンタPは、所定のサイズに切断した用紙S(プリント処理済みカット紙)を用紙搬送路L1上において排出ローラB32及び排出用ピンチローラB33により排出口B31に向かって搬送し、引き続き、排出口B31からキャリブレーションモジュールUの用紙搬入口11を通過させて、キャリブレーションモジュールUの用紙搬送路L2上に搬送することができる。ここで、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着した状態(接続状態)では、キャリブレーションモジュールUの通信部がプリンタ本体Bの制御部との間で通信を行い、キャリブレーションモジュールUの用紙搬送機構3やキャリブレーション装置4の作動は、プリンタ本体Bの制御部で制御される。
【0043】
そして、本実施形態のキャリブレーションモジュールUは、用紙搬送路L2上に搬送された用紙Sを、フィードローラ32、排出ローラ22及び排出用ピンチローラ23の回転動作により排出口B31に向かって搬送し、排出口21からキャリブレーションモジュールU外へ排出する。この際、センサユニット7を退避位置に位置付けておくことにより、用紙Sがセンサユニット7の下端部(カバー73の開口縁73a)に接触することなく、スムーズに排出口21に向かって搬送される。
【0044】
なお、通常プリント処理時は、キャリブレーションモジュールUを接続していないプリンタ本体Bのみで行うことも可能であり、この場合、プリンタ本体Bの排出口B31から排出した用紙S(プリント処理済みカット紙)を図示しない排出トレイ上に積み重ねた状態で収容可能に構成することができる。
【0045】
次に、本実施形態のキャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに接続したプリンタPにおけるキャリブレーション処理について説明する。なお、インクリボンを使用して熱転写プリント処理を行う本実施形態のプリンタP(プリンタ本体B)において、キャリブレーション処理を行うタイミングとしては、プリンタP(プリンタ本体B)の出荷時、インクリボンの装填時、インクリボンの交換時、使用する環境条件や一定の使用期間が経過したことなどによって実際に出力するプリント結果の色味特性が変化した場合などを挙げることができる。
【0046】
本実施形態のプリンタPは、ユーザの操作又は一定期間毎に行う自動操作などによって入力されたキャリブレーション指令信号に基づいて、プリンタ本体Bの給紙部B1でロール状に巻回されている用紙Sを給紙側送りローラB41と第1ピンチローラB42との間、フィードローラB43と第2ピンチローラB44との間を順次通過させて印刷部B2まで搬送し、印刷部B2によって用紙Sの印刷面(オモテ面)にキャリブレーションパターンCPをプリントする。
【0047】
本実施形態のプリンタPでは、図13に示すように、イエロー・マゼンタ・シアンの各色インクを用紙幅方向Wに仕切られた3つの領域に印刷するとともに、用紙搬送方向Aに均等に仕切られた各パッチCPaの印刷濃度を搬送方向Aに沿って徐々に変化(例えば搬送方向A上流側に向かって段階的に濃度を薄く)させたカラー画像のキャリブレーションパターンCPを印刷する。なお、図13では各パッチCPaの枠を実線で示す一方でパッチCPa内における印刷濃度は特に示していない。本実施形態のキャリブレーションモジュールUは、センサユニット7を用紙幅方向Wに3つ配置し、キャリブレーションパターンCPの各色をそれぞれ個別のセンサユニット7で測色するように構成されている。
【0048】
ここで、用紙幅方向Wに並ぶパッチCPaの列を「パッチ列」とすると、キャリブレーションパターンCPは、それぞれ印刷濃度が異なる複数のパッチ列を用紙搬送方向Aに形成したものであるといえる。なお、パッチ列数や用紙搬送方向Aに沿った各パッチ列の寸法に関する情報(パッチ情報)はプリンタ本体Bの制御部(後述するキャリブレーションモジュールU単体で計測処理を行う場合にはキャリブレーションモジュールUの制御部)に予め入力されている。
【0049】
そして、本実施形態に係るプリンタPは、プリンタ本体Bの印刷部B2によるキャリブレーションパターンプリント処理を終えた用紙Sを排出部B3側へ順次搬送し、排出口B31からキャリブレーションモジュールUの用紙搬入口11を通過させて、キャリブレーションモジュールUの用紙搬送路L2上に搬送する。引き続いて、用紙SにプリントしたキャリブレーションパターンCPをキャリブレーション装置4のセンサユニット7で計測可能な位置まで用紙SをキャリブレーションモジュールUの用紙搬送機構3によって排出部2側へ搬送し、用紙搬送機構3による用紙S搬送処理を停止させた状態で、センサユニット7によるキャリブレーションパターンCPの計測処理を行う(計測処理)。
【0050】
具体的には、キャリブレーションパターンCPがプリントされた用紙Sを、キャリブレーションパターンCPにおけるパッチ列のうち最前列(用紙搬送方向Aにおける最下流のパッチ列)である1列目のパッチ列をセンサユニット7によって計測可能な位置(パッチ列計測位置)まで搬送する。ここで、計測対象のパッチ列を「N列目のパッチ列」とした場合、「N列目のパッチ列計測位置」は、N列目のパッチ列をセンサユニット7で計測可能な位置である。用紙SをN列目のパッチ列計測位置まで搬送している間(搬送処理中)は、センサユニット7を退避位置に位置付けておく。ここで、センサユニット7が退避位置にある場合、移動機構8のカム本体82のうち大径円弧部821が昇降板83のうちカム本体82の上方に配置した従動ローラ84に添接しており、センサユニット7の先端部であるカバー73の開口縁73aが用紙Sから離間した位置に位置付けられる(図8参照)。
【0051】
本実施形態のプリンタPでは、キャリブレーションモジュールUの用紙搬送機構3によって用紙SをN列目のパッチ列計測位置まで搬送し、その位置で搬送処理を停止した状態で、移動機構8によってセンサユニット7を退避位置から計測位置に移動(下降移動)させる(図6及び図7参照)。センサユニット7の退避位置から計測位置への移動は、移動機構8のカム本体82を回転軸81を中心に回転させることによって行う。カム本体82を所定角度回転させた時点で、カム本体82の大径円弧部821が従動ローラ84に添接しつつ昇降板83のうちカム本体82の下方に配置した優先接触部85に接触し(図示省略)、さらにカム本体82を同一方向へ所定角度(図示例ではほぼ180度)回転させると、カム本体82の大径円弧部821が優先接触部85にのみ接触し、カム本体82の小径円弧部822は従動ローラ84に接触しない状態になる(図7参照)。このような移動機構8の作動により、センサユニット7は、先端部であるカバー73の開口縁73aが用紙Sに接触した計測位置に位置付けられる。
【0052】
ここで、昇降板83は、カム本体82のカム面(本実施形態であれば大径円弧部821及び小径円弧部822)と昇降板83に相対変位不能に設けた部材(本実施形態であれば従動ローラ84及び優先接触部85)との接触箇所が変化することによって、センサユニット7を一体的に保持した状態で昇降移動するものである。そして、カム面に接触する部材が従動ローラ84のみだけであっても、カム本体82を回転させて、従動ローラ84に接触させる対象をカム本体82の大径円弧部821から小径円弧部822に変化させれば、昇降板83を下方へ移動させることができ、その時点でセンサユニット7の先端部(カバー73の開口縁73a)を用紙Sに接触させるように設定することも可能である。しかしながら、本実施形態では、カム本体82を所定角度回転させた状態において、従動ローラ84とカム本体82の小径円弧部822との接触よりも優先してカム本体82の大径円弧部821を優先接触部85に接触させるように設定することによって、カム本体82の小径円弧部822と従動ローラ84とを接触させた場合と比較して昇降板83の下方への移動量を大きくしている。これにより、昇降板83に保持されたセンサユニット7の下方への移動量も、カム本体82の小径円弧部822と従動ローラ84とを接触させた場合と比較して大きくなり、センサユニット7の先端部(カバー73の開口縁73a)を用紙Sに確実に接触させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態のキャリブレーション装置4は、センサユニット7と昇降板83との間にバネ87を圧縮させた状態で介在させており、センサユニット7に対して下方へ(用紙Sに近付ける方向へ)押圧する力を作用させている。そして、本実施形態のキャリブレーション装置4は、退避位置に位置付けたセンサユニット7と、昇降板83の上端部に設けた押圧部88との距離が、計測位置に位置付けたセンサユニット7と押圧部88との距離よりも短くなるように設定して、計測位置に位置付けたセンサユニット7に作用する下方への押圧力が、退避位置に位置付けたセンサユニット7に作用する下方への押圧力よりも大きくなるように設定している。その結果、センサユニット7の先端部であるカバー73の開口縁73aを用紙Sにより一層確実に接触させることができる。特に、本実施形態のキャリブレーション装置4は、用紙幅方向Wにカバー73を挟む位置に一対のバネ87を配置しているため、カバー73の開口縁73a全体を用紙Sにバランスよく接触させることができる。また、本実施形態では、計測位置に位置付けたセンサユニット7の先端部(カバー73の開口縁73a)との間で用紙Sを挟持可能な搬送ガイドプレート33を設けているため、計測処理時には、用紙Sを厚さ方向に挟持して用紙Sの安定した状態を確保することができる。
【0054】
そして、本実施形態のキャリブレーション装置4は、センサユニット7を計測位置に位置付けて、開口縁73aを用紙Sに接触させたカバー73の内部空間に光源71及び受光素子72を収容しているため、これら光源71及び受光素子72と用紙S(具体的には側色面)との距離は近く、しかもカバー73によって外乱光の入射を防止した状態で光源71及び受光素子72によるキャリブレーションパターンCPの計測処理を高精度で行うことができる。また、光源71と受光素子72との間に配置した仕切り板78によって、光源71からの光が直接受光素子72に入射される事態を防止・抑制することができるとともに、カバー73の内向き面(内周面)に反射光を防止する表面処理を施しているため、さらに高精度の計測処理結果を得ることができる。
【0055】
特に、本実施形態では、計測処理時に、センサユニット7と搬送ガイドプレート33とによって用紙Sを挟持する位置の近傍に配置した張力付与部9(フィードローラ32及び搬送ガイドプレート33)で用紙Sを厚さ方向に押圧して張力を付与しているため、用紙Sが幅方向Wや搬送方向Aにずれたり、不意に皺が生じることを防止して、計測処理中のセンサユニット7と用紙SのうちキャリブレーションパターンCPをプリントした面である側色面との相対距離を一定に保つことができ、高精度の計測処理結果を得ることができる。しかも、光源71及び受光素子72と用紙Sの測色面との距離を短くすることによって、例えばレンズなどの専用の集光手段を受光素子72近傍に配置する必要もなく、構造の簡略化及び集光手段の導入に伴うコストアップの回避を実現することができる。
【0056】
本実施形態のプリンタPは、用紙Sに印刷したキャリブレーションパターンCPのパッチ列数に応じて、移動機構8によりセンサユニット7を昇降移動させるセンサユニット昇降移動処理及びセンサユニット7による計測処理を繰り返す。具体的には、プリンタ本体Bの制御部が図14に示す動作フローに基づいて各部の作動を制御する。すなわち、本実施形態に係るプリンタPは、まず計測対象のパッチ列を意味する「N」に1を代入する工程(図14におけるS1)を経て、N列目のパッチ列計測位置まで用紙Sを搬送して一旦停止させる(同図におけるS2)。次いで、移動機構8によってセンサユニット7を退避位置から計測位置へ移動(下降)させる(同図におけるS3)。この状態で、N列目のパッチ列をセンサユニット7で計測する(同図におけるS4)。引き続いて、移動機構8によってセンサユニット7を計測位置から退避位置へ移動(上昇)させて(同図におけるS5)、プリンタ本体Bの制御部において、さきほどNに代入した値、つまり計測対象のパッチ列が、予めプリンタ本体Bの制御部に入力されているキャリブレーションパターンCPのパッチ列数(パッチ列の総数)を越えているか否かを判定する(同図におけるS6)。そして、その判定が「NO」の場合は、その時点におけるNに1を足した値を新たな「N」とし(同図におけるS7)、同図に示すS2乃至S7を、「N」がプリンタ本体Bの制御部に入力されているキャリブレーションパターンCPのパッチ列数を越えるまで繰り返し、同図に示すS6で「N」がプリンタ本体Bの制御部に入力されているキャリブレーションパターンCPのパッチ列数を越えたと判定した場合(同図におけるS6:YES)に、計測処理を終了する。
【0057】
以上の手順を経て用紙Sに対するキャリブレーションパターンCPの計測処理を終了し、引き続いて、本実施形態のプリンタPは、キャリブレーション装置4で計測した各パッチ列の情報(各パッチ列の測色データ)を、キャリブレーションモジュールUの通信部からプリンタ本体Bの制御部に送信し、プリンタ本体Bの制御部において、キャリブレーションモジュールUの通信部から受信した各パッチ列の測色データに基づいてキャリブレーションパターンCPの測定濃度と予めプリンタ本体Bの制御部に入力されている基準濃度との差分を自動で算出し、この差分算出結果に基づいて印刷部B2の濃度の較正を行い、キャリブレーション処理を終了する。
【0058】
また、本実施形態に係るキャリブレーションモジュールUは、用紙SにプリントされたキャリブレーションパターンCPをキャリブレーションモジュールU単体で計測することができる。この場合、キャリブレーションモジュールUは、プリンタ本体Bに接続された状態であってもよいし、プリンタ本体Bには接続されていない状態であってもよい。キャリブレーションモジュールU単体でキャリブレーションパターンCPの計測を行う場合、キャリブレーションモジュールUの制御部によって、計測処理及びセンサユニット7の昇降移動処理が制御される。すなわち、上述した態様は、キャリブレーションモジュールUの動作をプリンタ本体Bの制御部によって制御する態様であったが、キャリブレーションモジュールU単体でキャリブレーションパターンCPの計測を行う場合には、キャリブレーションモジュールUの制御部によって、キャリブレーションモジュールUの動作を制御する。具体的には、図14に示す各工程(S1乃至S7)の制御主体がキャリブレーションモジュールUの制御部になり、キャリブレーションパターンCPのパッチ列に関する情報はキャリブレーションモジュールUの制御部に入力されることになる。なお、用紙SにプリントされたキャリブレーションパターンCPをキャリブレーションモジュールU単体で計測する場合には、キャリブレーションモジュールUが内蔵する電源装置又は外部電源(例えばUSBポート/ケーブルを利用したバッテリなど)によって、キャリブレーションモジュールU内に設けたモータを駆動させて、キャリブレーションモジュールUの各部(搬入部1、排出部2、用紙搬送機構3、キャリブレーション装置4、通信部など)を作動させるように構成している。
【0059】
ここで、キャリブレーション処理の動作フローは、図15乃至図17に示すように、プリンタ本体BにおいてキャリブレーションパターンCPを用紙Sにプリントする第1動作フローと、キャリブレーションモジュールUにおいてキャリブレーションパターンCPを計測して、その計測した情報に基づいてキャリブレーションパターンCPの測定濃度と予めキャリブレーションモジュールUの制御部に入力されている基準濃度との差分を自動で算出する第2動作フローと、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに接続した状態において、第2動作フローで得たキャリブレーション結果(差分算出結果)をキャリブレーションモジュールUの通信部からプリンタ本体Bの制御部に対して送信し、差分算出結果に基づいて印刷部の濃度の較正を行う第3動作フローとに大別することができる。
【0060】
そして、プリンタ本体BにキャリブレーションモジュールUを接続した状態で、キャリブレーションモジュールUの制御部でキャリブレーションパターンCPの計測処理及びセンサユニット7の昇降移動処理を制御する場合は、第1動作フロー、第2動作フロー及び第3動作フローを連続して行うようにすればよい。
【0061】
一方、プリンタ本体BにキャリブレーションモジュールUを接続していない状態で、キャリブレーションモジュールUの制御部でキャリブレーションパターンCPの計測処理及びセンサユニット7の昇降移動処理を制御する場合には、第1動作フローと第2動作フローが連続して行われることはなく、また第2動作フローと第3動作フローが連続して行われることもなく、各動作フロー(第1動作フロー、第2動作フロー、第3動作フロー)はそれぞれの動作主体(第1動作フローであればプリンタ本体Bであり、第2動作フローであればキャリブレーションモジュールUであり、第3動作フローであればプリンタ本体BにキャリブレーションモジュールUを接続したもの)によって個別に行われる。なお、プリンタ本体BとキャリブレーションモジュールUとの接続態様は、キャリブレーションモジュールUに設けた取付部5によってプリンタ本体Bに物理的に接続した態様、またはケーブルなどの電気線で接続した有線接続態様、或いは無線通信可能に接続した無線接続態様の何れであってもよい。
【0062】
そして、キャリブレーションモジュールUの制御部によってキャリブレーションパターンCPの計測処理を制御する場合であっても、キャリブレーション装置4が、共通の基板74に実装した光源71及び受光素子72をカバー73の内部空間に収容したセンサユニット7を構成したものである点は、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着した前記プリンタPにおけるキャリブレーション装置4と同じであるため、上述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
このように、本実施形態では、搬入部1、排出部2、用紙搬送機構3及びキャリブレーション装置4を備えたユニットをモジュール化したキャリブレーションモジュールUを、プリンタ本体Bに装着した状態でキャリブレーション装置4によってキャリブレーションパターンCPを計測可能に構成しているため、キャリブレーション処理を行う場合にのみ、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着しさえすればよく、通常のプリント処理時にはキャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bから取り外しておくことができる。このような使用態様が可能であるキャリブレーションモジュールUであれば、例えば既存のプリンタをプリンタ本体に相当するものと捉えた場合に、この既存のプリンタに対して後付けで装着して使用することも可能になったり、同種のプリンタ本体に対して同じキャリブレーションモジュールUを使い回すことも可能になり、実用性及び汎用性に富む。
【0064】
さらには、キャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに装着していない状態であっても、キャリブレーションモジュールUのキャリブレーション装置4によってキャリブレーションパターンCPを計測可能に構成しているため、例えばプリンタ本体BにおけるキャリブレーションパターンCPのプリント処理又は通常のプリント処理と、既に用紙SにプリントされたキャリブレーションパターンCPをキャリブレーション装置4で計測する処理とを同時に並行して行うことも可能になり、使用態様のバリエーションが増え、ユーザにとっては必要に応じて複数の使用態様から適宜の使用態様を選択することができ、好適である。
【0065】
特に、本実施形態に係るキャリブレーションモジュールUは、排出口B31を有するプリンタ本体Bに対して用紙搬入口11をプリンタ本体Bの排出口B31に連通させた状態で取付可能な取付部5を備えているため、取付部5を利用してキャリブレーションモジュールUをプリンタ本体Bに簡単に装着することができ、この装着状態でキャリブレーションモジュールUの用紙搬入口11がプリンタ本体Bの排出口B31に連通しているため、プリンタ本体BでキャリブレーションパターンCPがプリントされた用紙Sを、プリンタ本体Bの排出口B31からキャリブレーションモジュールUの用紙搬入口11にスムーズに受け渡すことができ、そのままキャリブレーションモジュールUのキャリブレーション装置4によるキャリブレーションパターン処理に供することができる。
【0066】
また、本実施形態に係るプリンタPは、用紙Sに対してプリント処理可能なプリンタ本体Bに、キャリブレーションモジュールUを着脱可能に取り付けているため、キャリブレーションモジュールUが奏する上記作用効果を得ることができ、汎用性に富み、キャリブレーションモジュールUの使用態様を複数の選択肢から適宜選択することが可能になり、プリンタP全体からみても汎用性に富み、経済的である。
【0067】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明に係るキャリブレーションモジュールが装着可能なプリンタ本体は、その印刷部のプリント方式によって限定されるものではない。したがって、印刷部のプリント方式が、インクを昇華させるタイプの熱転写型プリント方式の他、インクを溶融させるタイプのサーマルプリント方式や、インクジェットプリント方式やレーザプリント方式、或いは同じ印刷対象物に対して繰り返し書き換え可能なリライタブルプリント方式を採用しているプリンタ本体にもキャリブレーションモジュールを装着可能に設定することが可能である。
【0068】
また、キャリブレーションモジュールをプリンタ本体に取り付けるための取付部として、ネジ締めを不要とする係合機構を用いたものや、ワンタッチでプリンタ本体に取付可能なもの(係合機構を用いたものであるかは問わず)を適用してもよい。さらには、取付部の構成をプリンタの種別によって変更できるように構成し、取付部を交換可能又は切替可能とすれば、異種のプリンタ間でのキャリブレーションモジュールの共用が可能になる。
【0069】
また、キャリブレーションモジュールのキャリブレーション装置が有するセンサユニットの数を「1」や「3以外の複数」に設定したり、予め複数のセンサユニットをキャリブレーションモジュールに設けておき、キャリブレーションパターンの種類(インクの色数など)に応じて実際に測定処理時に使用するセンサユニットの数や計測箇所を適宜選択できるように構成することもできる。
【0070】
また、キャリブレーションモジュールが有するキャリブレーション装置は、キャリブレーションパターンを計測するセンシング機能を発揮するものであればよく、上述した実施形態で示した構造を有するセンサユニットとセンサユニットを移動させる移動機構とを備えたものに限定されることはない。したがって、例えば、センサユニットまたは単体のセンサが、用紙に接触することなく用紙から所定距離離れた位置に配置された状態でキャリブレーションパターンを計測するものであっても構わない。
【0071】
また、上述の実施形態に準じたキャリブレーション装置を適用する場合であっても、センサユニットとして、内部空間に光源及び受光素子を収容可能なカバーが、円筒状ではなく、角筒状や楕円筒状のものであったり、仕切り板がカバーに一体に形成したものではなく、カバーとは別体に形成して仕切り板単体として扱うことが可能なものであったり、フランジ部を設けずにカバーのみを基板に適宜の手段で直接取り付けたものを適用することができる。なお、光源から受光素子に直接入射される光量が計測処理に悪影響を及ぼさない程度であれば、光源と受光素子との間に配置する仕切り板自体を省略することもできる。
【0072】
また、張力付与部を、用紙を厚さ方向に挟む一対のローラによって構成したり、用紙を厚さ方向に挟む一対のプレートによって構成することもできる。また、張力付与部は、用紙の幅方向全域において用紙に接触するものや、用紙の幅方向における所定箇所(1箇所であってもよいし複数箇所でもよい)に部分的に接触するものであっても構わない。
【0073】
また、本発明における「用紙」は、狭義の「紙」に限定されるものではなく、プリンタ本体の印刷部のプリント方式に応じた各種印刷媒体を包含するものである。
【0074】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1…搬入部
11…用紙搬入口
2…排出部
21…排出口
3…用紙搬送機構
4…キャリブレーション装置
B…プリンタ本体
B31…排出口
L2…用紙搬送路
P…プリンタ
S…用紙
U…キャリブレーションモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬入口を有する搬入部と、排出口を有する排出部と、用紙を前記搬入部と前記排出部との間に形成される用紙搬送路に沿って搬送する用紙搬送機構と、前記用紙搬送路上に配置され且つ用紙にプリントされたキャリブレーションパターンを計測可能なキャリブレーション装置とを備えたキャリブレーションユニットをモジュール化し、且つ用紙に対してプリント処理可能なプリンタ本体に装着した状態又は前記プリンタ本体に装着していない状態の何れにおいても、用紙にプリントされたキャリブレーションパターンを前記キャリブレーション装置によって計測可能に構成したことを特徴としているキャリブレーションモジュール。
【請求項2】
前記プリンタ本体が排出口を有するものであり、
前記用紙搬入口を前記排出口に連通させた状態で前記プリンタ本体に取付可能な取付部を備えている請求項1に記載のキャリブレーションモジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキャリブレーションモジュールを、用紙に対してプリント処理可能なプリンタ本体に着脱可能に取り付けていることを特徴とするプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−82115(P2013−82115A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223153(P2011−223153)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】