説明

キラルリン化合物

P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物を、P-キラル三配位リン化合物を含んでなる第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させることを含んでなる上記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体異性体的に濃縮されたリン含有化合物を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒による不斉合成用のキラル非ラセミリン化合物の使用はこの30年間に著しく伸びており、かかる化合物は多数の金属系触媒に対する最も有望な配位子を提供している(Ojima、2000;Brunner ら、1993)。
【0003】
金属触媒をキラルホスフィン配位子とともに使用する不斉反応としては、アルケン水素化、ヒドロホルミル化およびヒドロシリル化、アリルアミン異性化、アリル置換ならびにいくつかのクロスカップリング手法が挙げられる。これらの方法のいくつか、例えば、MonsantoのL-dopaプロセス(Knowles、1986);AnicおよびMonsantoのアスパルテームプロセス(Kagan、1988);Syntexナプロキセンプロセス(Noyori、1989)およびTakasagoのL-メントールプロセス(Kagan、1998)は工業的に重要になっている。キラルリン化合物はそれ自体、有用な非金属触媒であることが見出されている(Noyori、1989)
ほとんどのこれらの触媒はP-キラルよりもC-キラルのリン配位子を利用するが、その主な理由はC-キラル配位子がより容易に調製できることによる。しかし、P-キラル配位子は触媒による不斉合成に大きな価値を有しうるものであって、Knowlesによって開発されかつL-dopaおよびアスパルテーム合成に使われる最も成功した触媒であるロジウム/ジPAMP触媒がその例である。
【化1】

【0004】
不斉合成におけるP-キラルリン化合物の有益な特性を照らし合わせると、P-キラル非ラセミホスフィンおよび関係化合物、例えばホスフィンオキシドおよびホスフィンスルフィドを合成する効率的な方法の探求は非常に重要なものであり続ける(Pietrusiewiczら、1994)。
【0005】
いくつかの計画がキラルホスフィンの合成に採用されてきた。原理的に、光学活性ホスフィンへの最も直接的なルートはジアステレオマー遷移金属錯体を作ることによりラセミホスフィンを分割することである。しかし、錯体の分離、光学活性のある配位子の合成、および高価な金属のリサイクルに関連する問題がこの方法を一般に応用することの妨げになっている。リン化合物を分割するための他の方法はキラル対イオンを用いるホスホニウム塩の生成である(Hornerら、1964)。しかし、このルートはとりわけ、得られる非ラセミ塩の開裂反応にいくつかの制限があって、立体化学的成果を保証することができない(Valentine、1984)。
【0006】
ホスフィン酸エステルからのキラルホスフィンオキシドの作製は広く利用されている(Valentine、1984)が、この方法の成功はキラルホスフィン酸エステルの入手可能性に大きく依存し、そしてこのエステルを作製する方法の探求に多くの努力が払われてきたものの成功は限られている。同様に、キラル亜ホスホン酸塩の求電子置換によるキラルホスフィンの合成(Valentine、1984)は、亜ホスホン酸塩がホスフィンと比較して光学安定性が低いので、好適な亜ホスホン酸塩の入手可能性により妨げられている。
【0007】
ホスフィンオキシドなどのキラル四配位リン化合物の還元が恐らく最も通常のキラルホスフィンへのルートであり、水素化物、ボランおよびシランを含むいくつかの試薬により実施することができ、上記試薬の選択は還元に対する化合物の感受性および生成物ホスフィンに必要な立体化学により決定する。現在のところ、ホスフィンオキシドに対する好ましい還元剤はシランである。しかし、かかる還元方法の使用は単に立体選択性の問題を合成の初期段階に押し戻すだけである、すなわち、この場合、キラルホスフィンオキシドなどのキラル四配位リン化合物を必要とする。純粋なビス-ホスホリルまたはビス-チオホスホリルジスルフィドを用いる、P-キラル三配位リン化合物の動力学的分割に基づくエナンチオマー的に濃縮されたホスフィンオキシドおよびホスフィンスルフィドの合成はPerlikowskaら、2001に考察されている。
【0008】
P-キラル四配位リン化合物を調製する方法の必要性が残っているのは明白である。かかる化合物は還元により対応するP-キラル三配位リン化合物に変換することができ、従ってそれら自体で製薬および農芸化学における応用に重要な用途を有する。
【発明の開示】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物をP-キラル三配位リン化合物を含む第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させる工程を含んでなる上記方法を提供する。
【0010】
本発明の他の態様によれば、P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物をP-キラル三配位リン化合物を含む第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させる工程、および上記P-キラル四配位リン化合物を単離する工程を含んでなる上記方法を提供する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、P-キラル三配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、
(i)キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物をP-キラル三配位リン化合物を含有する第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させることを含んでなる、P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する工程;
(ii)任意にP-キラル四配位リン化合物を単離する工程;および
(iii)上記P-キラル四配位リン化合物をP-キラル三配位リン化合物へ還元する工程
を含んでなる上記方法を提供する。
【0012】
一実施形態においては、生成物P-キラル三配位リン化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を改善するために上記方法を2回以上繰り返す。すなわち、工程(iii)で得た生成物P-キラル三配位リン化合物を工程(i)で使用する。
【0013】
好ましくは、P-キラル三配位リン化合物を含有する第2反応物はラセミである。しかし、本発明の方法を用いて、等しくない濃度のエナンチオマーを含有するP-キラル三配位リン化合物から出発してP-キラル四配位リン化合物およびそれから誘導されるP-キラル三配位リン化合物を立体選択的に調製することができる。
【0014】
P-キラル三配位リン化合物からなる第2反応物はまた、等しいまたは等しくない濃度のジアステレオマーの混合物を含有してもよい。
【0015】
本発明により調製するP-キラル四配位リン化合物はホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィド、またはアミノホスホニウム塩であってもよい。ホスフィンスルフィド、ホスフィンオキシド、およびアミノホスホニウム塩の硫黄、酸素および窒素原子はそれぞれキラルチオール、キラルアルコールおよびキラルアミンにより供与される。
【0016】
好ましくは上記キラルアルコール、キラルチオール、およびキラルアミンは実質的にホモキラルであって、好ましくは90%を越えるee、より好ましくは95%を越えるee、より好ましくは99%を越えるeeを有する。
【0017】
ある好ましい実施形態においては、上記P-キラル四配位リン化合物はホスフィンオキシドでありそして上記第1反応物はキラルアルコールである。
【0018】
一実施形態においては、該キラルアルコールは式:
【化2】

【0019】
[式中、R'、R''およびR'''は同一でないという条件で、R'、R''およびR'''は独立して水素またはヒドロカルビルである]を有する。
【0020】
好ましい実施形態においては、R'、R''およびR'''のうちの2つがヒドロキシル基を保持する炭素原子と一緒に炭素環式またはヘテロシクロアルキル環系を形成する。
【0021】
一実施形態においてはアルコールはモノ-アルコールである、すなわち1つのOH基を含有する。
【0022】
好ましくは、キラルアルコールはヒドロキシ炭素上に存在するキラル中心を有する。
【0023】
好ましくは、アルコールは環式アルコールである。
【0024】
一実施形態においては、キラルアルコールは二級または三級アルコールである。
【0025】
一実施形態においては、キラルアルコールは一級アルコールである。
【0026】
一実施形態においては、キラルアルコールはジオールである。
【0027】
一実施形態においては、本発明に用いるキラルアルコールは(-)-メントール、(-)-8-フェニルメントール、(-)-trans-2-tert-ブチルシクロヘキサノール、(+)-ネオメントール、(+)-イソメントール、(S)-1-オクチン-3-オール、(R)-3-メチル-2-ブタノール、(S)-1-フェニル-1-ブタノール、(1R,2R)-2-ベンゾイルシクロヘキサノール、(-)-イソピノカンフェオール、コレステロール、(1S,2S,5R)-2-イソプロピル-1,5-ジメチルシクロヘキサノール、(-)-10-ジシクロヘキシルスルファモイル-D-イソボルネオール、(-)trans-2-フェニルシクロヘキサノール、(+)-フェンキルアルコール、(-)-ベンゼンスルホニル-N-(3,5-ジメチルフェニル)アミノ-2-ボルネオール、限定されるものでないが、1,2:4,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-フルクトピロノシドを含むフルクトース誘導体、シクロヘキサンジオール、(S)-(-)-2-アミノ-1,1-ジフェニルプロパノール、(S)-(-)-2-アミノ-1,1-ジフェニルプロパノール、(S)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1,1-ジフェニル-ブタン-1-オール、(R)-(+)-2-アミノ-(1,1,3)-トリフェニル-プロパン-1-オール、(S)-(-)-2-アミノ-4-メチル-1,1-ジフェニル-ペンタン-1-オール、(-)-trans-2-フェニルシクロヘキサノール、ジアセトン-D-グルコースおよび(-)-1,2-ジシクロヘキシル-1,2-エタンジオール、またはそれらの対応するエナンチオマーからなる群より選択される。
【0028】
一実施形態においては上記第1反応物はキラルアミンである。
【0029】
好ましくは、該キラルアミンは式:
【化3】

【0030】
[式中、R'、R''およびR'''は同一でないという条件で、R'、R''およびR'''は独立して水素またはヒドロカルビルである]を有する。
【0031】
好ましい実施形態においては、R'、R''およびR'''のうちの2つがアミノ基を保持する炭素原子と一緒に炭素環式またはヘテロシクロアルキル環系を形成する。
【0032】
一実施形態においては、上記第1反応物はキラルチオールである。
【0033】
一実施形態においては、該キラルチオールは式:
【化4】

【0034】
[式中、R'、R''およびR'''は同一でないという条件で、R'、R''およびR'''は独立して水素またはヒドロカルビルである]を有する。
【0035】
好ましい実施形態においては、R'、R''およびR'''のうちの2つがチオール基を保持する炭素原子と一緒に炭素環式またはヘテロシクロアルキル環系を形成する。
【0036】
一実施形態においては、本発明に用いるキラルチオールは(+)-ネオメンタンチオールである。
【0037】
好ましくは、本発明に用いる第2反応物のP-キラル三配位リン化合物は式:
【化5】

【0038】
[式中、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して-NR5であるかまたは不在であり;そして
R1、R2、R3およびR5はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロカルビルまたは有機金属基である]を有する。
【0039】
一実施形態においては、X1、X2およびX3は不在である。
【0040】
他の実施形態においては、X1、X2は不在でありかつX3は存在する。
【0041】
好ましくはR1、R2、R3およびR5はそれぞれ独立してアリール、ヘテロアリール、アルキル、炭素環、ヘテロシクロアルキル、アラルキル(アリール-アルキル)またはアルケニル基である。
【0042】
好ましくは、R5はアルキル基である。
【0043】
一実施形態においては、本発明に用いるP-キラル三配位リン化合物は表9に定義される。
【0044】
好ましくはP-キラル四配位リン化合物の立体選択的な調製は、四級ホスホニウム塩の生成を可能にしかつ水素受容体として作用する求電子試薬の存在のもとで起こる。
【0045】
一実施形態においては、求電子試薬はハロアルカンである。
【0046】
好ましくは、求電子試薬はヘキサハロアセトン、ヘキサハロエタンおよびN-ハロスクシンイミドまたはCX4(式中、Xはハロゲンである)からなる群より選択される。好ましくはハロ成分は塩素または臭素原子である。より好ましくはハロ成分は塩素原子である。
【0047】
一実施形態においては、求電子試薬は四塩化炭素、ヘキサクロロアセトン、ヘキサクロロエタン、N-クロロスクシンイミド、2,3,4,5,6,6-ヘキサクロロ-2,4-シクロヘキサジエン-1-オンおよびトリクロロアセトニトリルからなる群より選択される。
【0048】
三級非アミノホスフィン(すなわち、X1、X2およびX3が不在のとき)に対する好ましい求電子試薬はヘキサクロロアセトンおよびN-クロロスクシンイミドである。特に好ましい溶媒はヘキサクロロアセトンである。
【0049】
アミノホスフィン(すなわち、X1、X2および/またはX3が存在するとき)に対する特に好ましい求電子試薬は四塩化炭素である。
【0050】
一実施形態においては、求電子試薬は過酸化物またはジスルフィド、好ましくはジエチルペルオキシドまたはビス(2-ピリジル)スルフィドである。
【0051】
他の実施形態においては、本発明の方法をAppel、CastroまたはEvansの条件またはそれらを改変した条件のもとで実施する。
【0052】
一実施形態においては、本発明の方法を溶媒中で実施することができる。
【0053】
溶媒は、好ましくは非プロトン性である。より好ましくは、溶媒は非極性溶媒である。
【0054】
好ましくは、溶媒は有機溶媒、例えばベンゼン、トルエン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、THF、ジクロロメタン、ヘキサン、クロロホルムおよび四塩化炭素である。
【0055】
好ましくは、溶媒はトルエン、ジクロロメタンおよびTHFから選択される。特に好ましい溶媒はトルエンである。
【0056】
本発明の方法は1以上の添加物を用いることができる。
【0057】
一実施形態においては、添加物は塩基性物質、例えば無機または有機塩基である。塩基は塩基性アルカリまたはアルカリ土類金属塩であってもよい。かかる塩基の例には、限定されるものでないが炭酸カリウムおよびピリジンが含まれる。
【0058】
一実施形態においては、添加物は金属塩、例えばルイス酸である。
【0059】
本発明により作られるキラルP-キラル四配位リン化合物を次いで二量体に転化してスケールミック(scalemic)およびメソ(meso)化合物の混合物を作ることができる。その際、スケールミック(scalemic)化合物は出発するモノ型より高いeeで生じ(二量化の統計的性質の結果である)、少ない方のエナンチオマーが欠乏している。次いでスケールミック(scalemic)化合物をメソ(meso)化合物から、例えば再結晶により分離する。
【0060】
好ましくは、二量化はリン原子と結合したアルキル基、好ましくはメチル基で起こる。
【0061】
好ましくは、スケールミック(scalemic)キラルP-キラル四配位リン化合物はo-トリルフェニルメチルホスフィンオキシド(PTMPO)でありそしてその対応する二量体は1,2-ビス(フェニルo-トリルホスフィノイル)エタン(diPTMPO)である。
【0062】
好ましくは、スケールミック(scalemic)キラルのP-キラル四配位リン化合物はo-アニシルメチルフェニルホスフィン(PAMPO)でありそしてその対応する二量体は1,2-ビス(フェニル(2-メトキシフェニル)ホスフィノイル)エタン(ジPAMPO;エタン-1,2-ジイルビス[(2-メトキシフェニル)フェニルホスファン],P,P'-ビスオキシドとしても知られる)である。
【0063】
他の実施形態においては、該二量体を還元して対応するビス-ホスフィンを作る。例えば、該二量体を還元して1,2-ビス(フェニル(2-メチルフェニル)ホスフィノ)エタン(またはエタン-1,2-ジイルビス[(2-メチルフェニル)フェニルホスファン])として知られるdiPTMPまたはdiPAMP(エタン-1,2-ジイルビス[(2-メトキシフェニル)フェニルホスファン]としても知られる)を作る。
【0064】
本発明の方法は開始期と反応期を有する。ある好ましい実施形態においては、低温開始を用いて、その場合、反応混合物を最初に室温より低く冷却する。好ましくは、反応混合物を0℃より低く、より好ましくは-30℃より低く、より好ましくは-50℃より低く、さらにより好ましくは-70℃より低く冷却する。ある好ましい実施形態においては、反応をほぼ-78℃に冷却する。この方法は特に三級、非アミノホスフィン(X1、X2および/またはX3が不在であるとき)に有利である。
【0065】
反応期は、例えば室温にてまたは還流にて行うことができる。
【0066】
開始しかつ室温に加温した後、温度を50〜60℃にある時間(30〜60分)上げるのが有利である。これによって反応が完了しかつ選択に影響を与えないからである。
【0067】
当業者は、開始および反応期の最適温度は使用するアルコール、アミンまたはチオールに依存することを理解しうる。
【0068】
好ましくは、アミノホスフィン(X1、X2および/またはX3が存在するとき)については室温開始を用いる。
【0069】
当業者は、本発明の方法が三および四配位リン化合物に加えて商業価値のある他の生成物を生成することを理解しうる。かかる生成物としては、第1反応物から誘導されるキラルハロゲン化アルキルおよび、例えば、キラルアルコールが1,2-ジオールであるときに生成するキラルエポキシドが挙げられる。
【0070】
本発明の方法の生成物のいくつかは、多数の他のP-キラル原性(chirogenic)リン化合物を合成するための理想的な分岐点である。このように、リンと結合したメチル基を有する上記生成物を、メチル基において好適な塩基を用いて脱プロトンし、次いで色々な種類の求電子試薬を用いて処理することができる。この方法で、有用なリン化合物のライブラリーを作製するモジュラー手法を計画することができる。
【0071】
詳細な説明
本発明は、キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールをP-キラル三配位リン化合物と求電子試薬の存在のもとで反応させることにより、P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製できるという知見に基づく。
【0072】
用語「立体選択的な調製」は主に1つのエナンチオマーまたはジアステレオマーを得る調製を意味する。好ましくは、そのeeは25%より大きく、より好ましくは30%より大きく、より好ましくは50%より大きく、より好ましくは60%より大きく、より好ましくは70%より大きく、より好ましくは80%より大きい。立体選択的な反応は2つのタイプ:選択が2種のエナンチオマー生成物間で行われるエナンチオ選択的;および選択が2種のジアステレオマー生成物間で行われるジアステレオ選択的であってもよい。
【0073】
用語「P-キラル」は、キラル中心がリン原子上に存在するリン含有化合物を意味する。
【0074】
一実施形態においては、本発明の方法はAppel、CastroまたはEvans型反応を利用する。当業者は、これらの周知の反応の改変も本発明の範囲内に包含されることを容易に理解しうる。
【0075】
Appel反応は、三配位ホスフィン化合物および四塩化炭素などのポリハロゲノアルカンを含んでなる反応系に基づく(Appelら、1979;Appel、1975)。アルコールのハロゲン化アルキルへの転化を行うためのトリフェニルホスフィンと四塩化炭素の混合物の使用の最初の報告(Appel系の最も一般的なバージョンの最もよく知られた用途の1つ)はDownie、HolmesおよびLeeによって1966年になされた(Downieら、1966)。
【0076】
PR + R'-OH + CCl → R'-Cl + O=PR + HCCl
Appel反応の例
求電子試薬のハロゲン基は求電子剤として作用し、ホスフィンと会合して四級ホスホニウム塩を形成し、これが次いで求核攻撃を受ける。トリス(ジメチルアミノ)ホスフィンに基づく特定の系が60年代末および70年代初期にCastroと共同研究者により研究され(Castroら、1969;Castroら、1971)、彼の名は時々このAppelの変法に付けられている。Evansは、とりわけ、ジオールの環状エーテル類への転化に関係する系を報じた(Barryら、1981;Robinsonら、1985)。これらの系は、その最も重要な転化、すなわちアルコールからのハロゲン化アルキル、アルキルエステルおよびアルキルアミド生成だけでなく、非常に広範囲の他の有機化学的変換に有用であり(Kolodiazhnyi、1998;Appel、1975;Cadogan、1979)、それらにはアルデヒド、ケトンおよびエポキシドからの1,1-ジクロロアルケン;親酸からの酸ハロゲン化物;カルボキサミドからのハロゲン化イミドイルおよびN,N'-二置換尿素からのカルボジイミドの調製が含まれる。
【0077】
Appel、CastroおよびEvansの条件により促進される全ての反応において、リン種の究極の機能は15または16族の原子(例えば、酸素、硫黄または窒素原子)を上記系から集めることにある。例えば、アルコールからのハロゲン化アルキルの生成においては、アルコールの酸素は最後にリン原子と結合する。
【0078】
これらの反応においては、例えば、ホスフィンオキシドまたはスルフィドの生成はそのプロセスの副産物と考えられる。実際、ある特定の事例では、所望の反応生成物から容易に除去できなければ、厄介でありうる。
【0079】
本研究において本発明者らは四配位リン「副産物」に焦点を合わせ、上記系がP-キラル四配位リン化合物の立体選択的な調製に有用であることを見出した。
【0080】
本発明の方法はP-キラルホスフィンオキシドならびに他のかかるP-キラル四配位リン化合物、およびそれから誘導される三配位P-キラルリン化合物を調製することを意図する。
【0081】
従って、本発明の態様によれば、P-キラル三配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、
(i)キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物をP-キラル三配位リン化合物を含有する第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させることを含んでなる、P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する工程;
(ii)任意にP-キラル四配位リン化合物を単離する工程;および
(iii)上記P-キラル四配位リン化合物を還元する工程
を含んでなる上記方法を提供する。
【0082】
P-キラル四配位リン化合物の還元は当技術分野で周知の水素化物、ボランおよびシランを含むいくつかの試薬により達成することができ、その選択は該オキシドの還元に対する感受性および生成物P-キラル三配位リン化合物に要求される立体化学により決定される。かかる還元方法の例は、例えば、Louis D Quin, A Guide to Organophosphorus Chemisrty, John Wiley & Sons, 2000に見出すことができる。
【0083】
本明細書に使用する用語「アルコール」は、炭素原子と結合した少なくとも1つのヒドロキシ基を含有するいずれかの有機分子を意味する。
【0084】
本発明のP-キラル化合物(三または四配位)は、さらに少なくとも1つの他の部位、例えば他のリン原子および/または他の炭素原子がキラルであってもよい。
【0085】
出発物質は、構造式:
【化6】

【0086】
[式中、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して不在であるかまたは-NR5であり;そそして
R1、R2、R3およびR5はいずれかの無機または有機部分である]
などのP-キラル三配位リン化合物である。
【0087】
好ましくはR1、R2、R3およびR5はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロカルビルまたは有機金属基である。
【0088】
一実施形態においては、R1、R2、R3およびR5はそれぞれ独立してアリール、ヘテロアリール、アルキル、炭素環、ヘテロシクロアルキル、アラルキル、またはアルケニル基である。
【0089】
好ましくは、R5は水素、ハロゲンまたはアルキルである。
【0090】
本明細書に用いる用語「ヒドロカルビル」は少なくともCとHを含む基を意味する。もしヒドロカルビル基が2個以上のCを含む場合、これらの炭素は必ずしもお互いに連結している必要はない。例えば、炭素の少なくとも2個は好適な元素または基を経由して連結していてもよい。従って、ヒドロカルビル基はヘテロ原子を含有してもよい。好適なヘテロ原子は当業者には明白であり、例えば、硫黄、窒素、酸素、リンおよびケイ素が含まれる。好ましくは、ヒドロカルビル基はアリール、ヘテロアリール、アルキル、炭素環、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはアルケニル基である。
【0091】
本明細書に用いる用語「アルキル」には、飽和した直鎖および分枝鎖両方の(単または多置換、好ましくは1〜3置換基、より好ましくは1置換基により)置換されていてもまたは無置換であってもよいアルキル基が含まれる。一実施形態においてはアルキル基はC1〜20アルキル基である。他の実施形態においてはアルキル基はC1〜15である。他の実施形態においてはアルキル基はC1〜12アルキル基である。他の実施形態においてはアルキル基はC1〜6アルキル基である。好適な置換基としては、例えば、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、O(CH2)nORb[式中、nは1、2または3である]、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール[式中、上記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールはRmおよびCORnから選択される1以上の置換基により任意に置換されていてもよく;そしてRa〜nはそれぞれ独立してHまたはアルキルである]から選択される基が挙げられる。
【0092】
本明細書に用いる用語「炭素環」は(単または多置換、好ましくは1〜3置換基、より好ましくは1置換基により)置換されていてもまたは無置換であってもよい1つの単環または多環の炭素環式環系を意味する。好ましくは多環炭素環は二または三環である。好ましくは炭素環はC3〜20炭素環式基である。より好ましくは炭素環はC3〜12炭素環式基である。より好ましくは炭素環式基はC3〜7炭素環式基である。好適な置換基としては、例えば、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、O(CH2)nORb[式中、nは1、2または3である]、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール[式中、上記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールはRmおよびCORnから選択される1以上の置換基により任意に置換されていてもよく;そしてRa〜nはそれぞれ独立してHまたはアルキルである]から選択される基が挙げられる。好ましくは、置換基はハロゲノ、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、NRcRd、COORe、CONRfRg、CORhから選択される。好ましくは炭素環は1つの炭素環式環である。好ましくは、炭素環はシクロアルキルである。
【0093】
本明細書に用いる用語「シクロアルキル」は(単または多置換、好ましくは1〜3置換基、より好ましくは1置換基により)置換されていてもまたは無置換であってもよい単環または多環式環状アルキル基を意味する。好ましくは多環環状アルキル基は二環または三環である。好ましくはシクロアルキル基はC3〜20シクロアルキル基である。より好ましくはシクロアルキル基はC3〜12シクロアルキル基である。より好ましくはシクロアルキル基はC3〜7 シクロアルキル基である。好適な置換基には、例えば、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、O(CH2)nORb[式中、nは1、2または3である]、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール[式中、上記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールはRmおよびCORnから選択される1以上の置換基により任意に置換されていてもよく;そしてRa〜nはそれぞれ独立してHまたはアルキルである]から選択される基が挙げられる。好ましくは、置換基はハロゲノ、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、NRcRd、COORe、CONRfRg、CORhから選択される。
【0094】
本明細書に用いる用語「ヘテロシクロアルキル」は、O、NおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子を含有するシクロアルキル基を意味する。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル、ピロリジニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピラニル、チオピラニル、アジリジニル、オキシラニル、メチレンジオキシル、クロメニル、イソキサゾリジニル、1,3-オキサゾリジン-3-イル、イソチアゾリジニル、1,3-チアゾリジン-3-イル、1,2-ピラゾリジン-2-イル、1,3-ピラゾリジン-1-イル、チオモルホリニル、1,2-テトラヒドロチアジン-2-イル、1,3-テトラヒドロチアジン-3-イル、テトラヒドロチアジアジニル、1,2-テトラヒドロジアジン-2-イル、1,3-テトラヒドロジアジン-1-イル、テトラヒドロアゼピニル、ピペラジニル、クロマニルなどが挙げられる。さらにヘテロシクロアルキルについては、ヘテロ原子はヘテロ環が分子の残部と結合している位置を占有することができる。従って、当業者は上記ヘテロシクロアルキルの接続が炭素またはsp3混成窒素ヘテロ原子を介することを理解しうる。好ましいヘテロシクロアルキル基としてはピペラジン、モルホリン、ピペリジンおよびピロリジンが挙げられる。
【0095】
本明細書に用いる用語「アルケニル」は、1以上の炭素-炭素二重結合を含有しかつ分枝鎖または非分枝鎖の(単または多置換、好ましくは1〜3置換基、より好ましくは1置換基により)置換されていてもまたは無置換であってもよい基を意味する。一実施形態においてはアルケニル基はC2〜20アルケニル基である。他の実施形態においてはアルケニル基はC2〜15アルケニル基である。他の実施形態においてはアルケニル基はC2〜12アルケニル基である。他の実施形態においてはアルケニル基はC2〜6アルケニル基である。好適な置換基としては、例えば、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、O(CH2)nORb[式中、nは1、2または3である]、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール[式中、上記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールはRmおよびCORnから選択される1以上の置換基により任意に置換されていてもよく;そしてRa〜nはそれぞれ独立してHまたはアルキルである]から選択される基が挙げられる。好ましくは、置換基はハロゲノ、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、NRcRd、COORe、CONRfRg、CORhから選択される。
【0096】
本明細書に用いる用語「アリール」は(単または多置換、好ましくは1〜3置換基、より好ましくは1置換基により)置換されていてもまたは無置換であってもよい単環または多環式芳香族基を意味する。好ましくは多環式芳香族基は二環または三環である。好ましくは芳香族基はC5〜20アリール基である。より好ましくはアリール基はC6〜12芳香族基である。典型的な例としては、フェニルおよびナフチルなどが挙げられる。好適な置換基としては、例えば、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、O(CH2)nORb[式中、nは1、2または3である]、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール、[式中、上記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールはRmおよびCORnから選択される1以上の置換基により任意に置換されていてもよく;そしてRa〜nはそれぞれ独立してHまたはアルキルである]から選択される基が挙げられる。好ましくは置換基はハロゲノ、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、NRcRd、COORe、CONRfRg、CORhから選択される。
【0097】
本明細書に用いる用語「ヘテロアリール」はC4〜12芳香族の(単または多置換、好ましくは1〜3置換基、より好ましくは1置換基により)置換されていてもまたは無置換であってもよい基であって、N、OおよびSから独立して選択される1以上のヘテロ原子、好ましくは1〜3ヘテロ原子、より好ましくは1個のヘテロ原子を含んでなる上記の基を意味する。好ましくはヘテロ原子はNまたはSである。好ましいヘテロアリール基としては、ピロール、ピラゾール、ピリミジン、ピラジン、ピリジン、キノリン、トリアゾール、テトラゾール、チオフェン、フラン、イミダゾールおよびオキサゾリジンが挙げられる。好適な置換基としては、例えば、ハロゲノ、NO2、CN、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、O(CH2)nORb[式中、nは1、2または3である]、NRcRd、CF3、COORe、CONRfRg、CORh、SO3H、SO2Ri、SO2NRjRk、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール[式中、上記ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールはRmおよびCORnから選択される1以上の置換基により任意に置換されていてもよく;そしてRa〜nはそれぞれ独立してHまたはアルキルである]から選択される基が挙げられる。好ましくは、置換基はハロゲノ、(CH2)mORa[式中、mは0、1、2または3である]、NRcRd、COORe、CONRfRg、CORhから選択される。
【0098】
本明細書においてある基またはある基の一部分を規定するために用いる用語「環式アルコール」は、特に断らない限り、飽和または不飽和の単環または多環の環式基であって、3〜20個の炭素原子、好ましくは3〜12個の炭素原子、より好ましくは3〜7個の炭素原子を含有し、少なくとも1つのヒドロキシル基により置換されかつ任意に1以上の置換基により置換された上記環式基を意味する。好適な置換基としては、アリール、ヘテロアリール、アルキル、炭素環、ヘテロシクロアルキル、アラルキルおよびアルケニル基が挙げられる。好ましくは、環式アルコールは1〜3置換基、より好ましくは1または2の置換基により置換されている。好ましくは単環または多環式環状基は飽和している。好ましくは多環式基は三環または二環である。反応の立体選択性は、もしアルコールが-OHに対してα位置にかさ高い置換基を有すると一般的に改善される。一実施形態においては、かさ高い置換基は3〜20個の炭素原子、好ましくは3〜12個の炭素原子、より好ましくは3〜9個の炭素原子を有する。かかるかさ高い置換基の例としては、フェニルおよびイソプロピル、シクロヘキサノールおよびジメチルベンジルが挙げられる。
【0099】
好適な環式アルコールとしては、メントール、8-フェニルメントール、trans-2-tert-ブチルシクロヘキサノール、イソメントール、2-ベンゾイルシクロヘキサノールおよびtrans-2-フェニルシクロヘキサノールが挙げられる。
【0100】
好ましい有機金属基はフェロセニル、ルテナセニル、(ビスインデニル)チタニル、(ビスインデニル)ジルコニル、(ビスインデニル)ハフニル、(ビスインデニル)ニオビル、(ビスインデニル)タンタリル、(ビスインデニル)モリブデニル、および(ビスインデニル)タングステニルからなる群より選択される。
【0101】
R1、R2、R3またはR4がアラルキル基であると、リンまたは窒素は上記アラルキル基のアルキル成分またはアリール成分と直接結合することができる。
【0102】
こうして調製したP-キラルリン化合物は、ホスフィンオキシド、ホスフィンスルフィドおよびアミノホスホニウム塩などの四配位リン化合物である。これらの化合物は式:
【化7】

【0103】
[式中、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して不在であるかまたは上記の-NR5であり;そしてR1、R2、R3およびR5は上記の無機または有機部分であってもよく;そしてR4はリン原子と直接結合した硫黄、酸素または窒素原子を含む]
の成分を含む。好ましくは、R4は酸素原子である。
【0104】
上記構造式において、電荷は記述されてない。R4が例えば、1個の酸素または硫黄原子を含む場合には、リンはそれに関連する正電荷を有しかつR4は負電荷をもつことを当業者はすぐ理解しうる。同じく、その場合、リンとR4の間の結合を二重結合で記述することができる。R4が例えば、窒素原子と結合した基を含む場合には、リンはそれに関連する正電荷を有しかつ好適な対イオンが存在することを当業者はすぐ理解しうる。
【0105】
2つの中間物が本発明の反応において生成する。数秒〜数分の間に、第1の中間物が速やかに形成され、速やかに第2の中間物へ崩壊する。第2の中間物は長寿命、1時間〜2週間であって、最終的に生成物ホスフィンオキシドへ完全に転化する。選択は最初の2工程、すなわち第1および第2の中間物へ導く工程のいずれにおいても起こりうる。
【0106】
第2の中間物が生成すると、選択は通常固定する。しかし、ある特定の場合、選択は時間とともに失われ、これはアミノホスフィンの場合に非常に顕著である。
【0107】
色々なホスフィンの反応速度には実質的な差が存在する。ホスフィンの消費速度は緩慢/迅速でありうるし、第2の中間物からのオキシドの生成速度は遅い/速いことがありうる。それ故に反応は数分間または数週間にわたって起こりうる。
【0108】
本発明のさらに好ましい特徴と実施形態を、これから非限定の実施例を用いて説明する。
【0109】
実施例1 材料と方法
エナンチオマー過剰率の分析
生成物の四配位リン化合物はキラル静止相上の高速液体クロマトグラフィにより分析した(CSP-HPLC)。典型的には、反応混合物のサンプル25μLをHPLCカラムに注入した。
【0110】
tert-ブチルメチル(ジフェニルアミノ)ホスフィンオキシド(tBuMePNPh2)はCHIRALPAK AS-Hカラム25cm x 0.46cm I.D.上で移動相としてペンタン/エタノール(98:2)を用いて流量0.7mL/min、UV検出器254nmにて分析した。この条件はラセミのホスフィンオキシドに対して20および37分間の保持時間を与える。
【0111】
tert-ブチルシクロヘキシルベンジルホスフィンオキシドはCHIRALPAK AS-Hカラム25cm x 0.46cm I.D.上でn-ヘプタン/2-プロパノール(99.5:0.5)を移動相として用いてかつ流量0.5mL/min、UV検出器235nmにて分析した。この条件はラセミのホスフィンオキシドに対して9および9.9分間の保持時間を与える。
【0112】
o-アニシルフェニルo-トリルホスフィンオキシドはCHIRALPAK ADカラム25cm x 0.46cm I.D.上でペンタン/エタノール(90:10)を移動相として用いてかつ流量0.5mL/min、UV検出器235nmにて分析した。この条件はラセミのホスフィンオキシドに対して28および32分間の保持時間を与える。
【0113】
tert-ブチルメチルフェニルホスフィンオキシドはCHIRALPAK ADカラム25cm x 0.46cm I.D.上でペンタン/エタノール(90:10)を移動相として用いてかつ流量0.5mL/min、UV検出器264nmにて分析した。この条件はラセミのホスフィンオキシドに対して15.4および17.4分間の保持時間を与える。
【0114】
フェニルメチル(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンオキシド(PhMePNiPr2)はCHIRALPAK ADカラム25cm x 0.46cm I.D.上でペンタン/エタノール(98:2)を移動相として用いてかつ流量0.8mL/min、UV検出器220nmにて分析した。この条件はラセミのホスフィンオキシドに対して33および50分間の保持時間を与える。
【0115】
フェニルメチル(ジイソブチルアミノ)ホスフィンオキシド(PhMePNiBu2)はCHIRALPAK AS-Hカラム25cm x 0.46cm I.D.上でペンタン/エタノール(99:1)を移動相として用いてかつ流量1.0mL/min、UV検出器220nmにて分析した。この条件はラセミのホスフィンオキシドに対して24および38分間の保持時間を与える。
【0116】
tert-ブチルメチル(ジベンジルアミノ)ホスフィンオキシド(tBuMePN(CH2Ph)2)はCHIRALPAK AS-Hカラム25cm x 0.46cm I.D.上でペンタン/エタノール(98:2)を移動相として用いてかつ流量0.6mL/min、UV検出器254nmにて分析した。この条件はラセミのホスフィンオキシドに対して26および35分間の保持時間を与える。
【0117】
o-アニシルメチルフェニルホスフィンオキシド(PAMPO)の分析はCHIRALPAK AD(登録商標)カラム25cm x 0.46cm I.D.上でヘキサン/2-プロパノール(96:4)を移動相として用いてかつ流量1.0mL/min、UV検出器235nmにて行った。この条件はラセミのPAMPOに対して42および58分間の保持時間を与える。PAMPOエナンチオマーの絶対的立体配置を公知の立体配置のサンプルと比較して割り当てた。(R)-PAMPOのサンプルをBrownと共同研究者の方法(Careyら、1993;Brownら、1990)に従って調製した。ラセミサンプルの保持時間を、この方法を経由して調製した(R)-PAMPOの保持時間と比較した。これによって42時間後に溶出した第1のPAMPOエナンチオマーピークがR立体配置であることを確認した。
【0118】
ナフチルメチルフェニルホスフィンオキシド(NMPPO)はCHIRALPAK ODカラム25cm x 0.46cm I.D.上でヘキサン/2-プロパノール(90/10)を移動相として用いてかつ流量0.7mL/min、UV検出器254nmにて分析した。この条件はラセミNMMPOに対して25および28分間の保持時間を与える。
【0119】
o-トリルフェニルメチルホスフィンオキシド(PTMPO)はCHIRALPAK ADカラム25cm x 0.46cm I.D.上でヘキサン/2-プロパノール(96:4)を移動相として用いてかつ流量1.0mL/min、UV検出器254nmにて分析した。この条件はラセミPTMPOに対して29および47分間の保持時間を与える。
【0120】
(o-クロロフェニル)フェニルメチルホスフィンオキシドはCHIRALPAK ADカラム 25cm x 0.46cm I.D.上でヘキサン/2-プロパノール (95:5)を移動相として用いてかつ流量1.0mL/min、UV検出器254nmにて分析した。この条件はラセミホスフィンオキシドに対して39および48分間の保持時間を与える。
【0121】
1,2-ビス(フェニルo-トリルホスフィノイル)エタン(diPTMPO)はCHIRALPAK AD 25cm x 0.46cm I.D.上でヘキサン/2-プロパノール(90:10)を移動相として用いてかつ流量1.0mL/min、UV検出器254nmにて分析した。この条件はメソ(meso)ジアステレオマーに対して43.9分間の保持時間を与え、ラセミ ジアステレオマーに対する47.0および54.6分間の保持時間と若干重複する。
【0122】
収率はo-アニシルメチルフェニルホスフィンスルフィド(PAMPS)またはトリフェニルホスフィンスルフィドを内部標準として用いて決定した。他の反応生成物は使用した特定のキラルアルコールに応じてAppel条件から予想される生成物、すなわちハロゲン化アルキルおよび/またはアルケン脱離生成物であった。
【0123】
実施例2 代表反応
代表手順A:四塩化炭素を溶媒として用いて還流にて
攪拌棒、還流コンデンサーおよび窒素入口/出口を取付けた5ml丸底フラスコに、PAMP(1当量、25mg、0.11mmol)、キラルアルコール(1.2当量、0.13mmol)および四塩化炭素(3mL)を装入した。反応は24時間還流して行った。次いでサンプルを取出して直接、HPLC分析を行った。
【0124】
代表手順B:溶媒中で1当量の四塩化炭素を用いて還流にて
攪拌棒、還流コンデンサーおよび窒素入口/出口を取付けた5ml丸底フラスコに、PAMP(1当量、25mg、0.11mmol)、キラルアルコール(1.2当量、0.13mmol)および所要の溶媒(3mL)を装入した。溶液を攪拌してこれに四塩化炭素(1当量、9.6μl、0.11mmol)を加えた。反応を還流して行い、完了するとサンプルを取出して直接、HPLC分析を行った。
【0125】
代表手順C:ベンゼン中でヘキサクロロアセトン(HCA)を用いて室温にて
窒素入口/出口を取付けた5ml丸底フラスコに、PAMP(1当量、25mg、0.11mmol)、キラルアルコール(1.2当量、20mg、0.13mmol)および溶媒(3mL)を装入した。溶液をゆっくり攪拌して溶解させ、それにヘキサクロロアセトン(1当量、16.7μl、0.11mmol)をマイクロシリンジ経由で加えた。反応液を室温にて1週間攪拌した。サンプルを反応溶液から取出して直接、HPLC分析を行った。
【0126】
代表手順D:トルエン中でヘキサクロロアセトン(HCA)を用いて-78℃にておよび次いで加温して
トルエン中のPAMP(0.109M)、HCA(0.109M)およびアルコール(0.131M)の乾燥ストック溶液を調製した。1セットの反応容器(20mL)を乾燥し、それぞれに乾燥トルエン(2mL)、続いて、乾燥PAMPストック溶液(1mL)および乾燥アルコールストック溶液(1mL)を加えた。溶液を-78℃に冷却して5分間攪拌した。それぞれに乾燥HCAストック溶液(1mL)を2分間にわたって加えた。容器を-78℃で1時間保持し、次いで室温に加温し、12時間攪拌した。サンプルを反応溶液から取出して直接、HPLC分析を行った。
【0127】
実施例3 手順Aを用いる色々なキラルアルコールの効果
メントールと構造的に関係する一連のキラル非ラセミテルピネオールを次に試験して、反応選択性に対するそれらの影響を確認した。全事例において、反応は四塩化炭素中で還流にて1:1 PAMP/アルコール化学量論で代表手順Aを用いて実施した。結果を表1に示す。
【表1】

【0128】
実施例4 手順Bを用いるアミノアルコールの効果
(S)-(-)-2-アミノ-1,1-ジフェニルプロパノールに関係する一連のアルコールを試験した。これらは、三級アルコール部位とキラル炭素周り両方の周りの置換基のバリエーションを含む。結果を表2に示す。使用した溶媒はアセトニトリルである。
【表2】

【0129】
実施例5 ヘキサクロロアセトンの求電子試薬としての使用
いくつかの求電子試薬が使用されている。その1つはヘキサクロロアセトンであって、1979年にMagidおよび共同研究者が報じている(Magidら、1979)。彼らは、この試薬に必要な条件は四塩化炭素より温和であり、その結果、反応を室温で行うことができかつより速やかに完了すると報じた。この系は後にVilleneuveおよびChan(Villeneuve ら、1997)がカルボン酸の酸クロリドへの転化に応用して-78℃の低温で実施した。彼らはまた、半当量のHCAの添加によって高収率で同じ生成物を得ることも見出した。これらの観察を心に留めて、本発明者らはPAMP/HCA/アルコール系を用いて不斉ホスフィン酸化を行うことを試みた。
【0130】
開発した手順(代表手順C)は、溶媒中のPAMP(1当量)および(-)-メントール(1.2当量)の攪拌溶液への室温におけるHCA(1当量)の添加を含んでなる。反応液を1週間攪拌した。粗反応物のHPLCは非常に明確なトレースを与え、(R)-PAMPOが26%eeおよび94%収率(内部標準により確認して)で生成したことを示した。反応を(+)-メントールを用いて繰り返し、(S)-PAMPOとしてのエナンチオ選択性が26%eeでかつ同じ収率にて生成したことを確認した。
【0131】
反応溶媒の選択は選択性決定に重要な役割を果たす。表3は溶媒と温度を変えることにより達成される選択性を示す。
【表3】

【0132】
キラルアルコールの選択は選択性の決定に重要な役割を果たす。表4はアルコールを変えることにより達成される選択性を示す。
【表4】

【0133】
実施例6 1-ナフチルメチルフェニルホスフィンの使用
本発明の方法の一般性を1-ナフチルメチルフェニルホスフィン(NMPP)およびメチルフェニルo-トリルホスフィン(MPTP)基質について、求電子試薬としてHCAを用いて試験した。表5は結果を示す。
【表5】

【0134】
実施例7 求電子試薬としてのヘキサクロロエタン(HCE)
HCEの使用は1977年にAppelおよびScholerが報じた(Appelら、1977)。これは、比較的無害なHCEのより簡単な手順と容易な取扱いおよび副産物、テトラクロロエチレンの容易な除去の利点を有する。(-)-メントールとの結合にHCAをHCEにより置換えた一般手順Cを用いて、メチルフェニル-o-トリルホスフィン(MPTP)を酸化してMPTPOを32%eeおよび84%収率で得た。このeeはADカラムを溶出した第2異性体のものである。
【0135】
実施例8 求電子試薬としてのN-クロロスクシンイミド(NCS)
(-)-メントールとの結合にHCAをNCSにより置換えた一般手順Cを用いて、メチルフェニル-o-トリルホスフィン(MPTP)を酸化してMPTPOを37%eeおよび70%収率で得た。PAMPの酸化に、8-フェニルメントールをキラルアルコールとして用いてPAMPOを53%eeで得た。このeeはADカラムを溶出した第2異性体のものである。
【0136】
実施例9 酸化剤としてキラルチオールの使用
窒素入口/出口および活性化した4Åモレキュラーシーブを取付けた乾燥10ml丸底フラスコにPAMP(1当量、25mg、0.11mmol)、(+)-ネオメンタンチオール(1.2当量、22.8mg、0.132mmol)およびベンゼン(5ml)を装入した。この溶液を攪拌し、それにヘキサクロロアセトン(1当量、16.7μl、0.11mmol)をマイクロリットルシリンジ経由で加えた。反応液を室温にて3日間攪拌した。サンプルを取出して直接HPLC分析を行った。生成したPAMPOについて12%のエナンチオ過剰率(ee)を得た。eeはADカラムの第1異性体のものである。
【0137】
実施例10 キラルジオールを用いて、エポキシドに転化
窒素入口/出口および活性化した4Åモレキュラーシーブを取付けた乾燥10ml丸底フラスコにPTMP(1当量、21mg、0.098mmol)、(1R,2R)-(-)-1,2-ジシクロヘキシル-1,2-エタンジオール(1.2当量、27mg、0.119mmol)、微粉砕した炭酸カリウム(1当量、13.5mg、0.098mmol)およびベンゼン(5ml)を装入した。溶液を攪拌し、それにヘキサクロロアセトン(1当量、14.9μl、0.098mmol)をマイクロリットルシリンジ経由で加えた。反応液を室温にて3日間攪拌した。サンプルを取出して直接HPLC分析を行った。生成したPAMPOについて18%のエナンチオマー過剰率を得た。(R)-PAMPOが過剰であった。
【0138】
実施例11 アルコールとしてジアセトン-D-グルコースの使用
攪拌棒と窒素入口/出口を取付けた予め乾燥した10ml丸底フラスコにPAMP(1当量、19.5mg、0.085mmol)を装入し、ジアセトン-D-グルコース(1.2当量、26.5mg、0.102mmol)および5mLの乾燥ベンゼンを加えた。予め乾燥した4Åモレキュラーシーブを装入し、その混合物を5分間攪拌し、次いでHCA(1当量、13μL、0.086mmol)を加えた。反応液に栓をして一晩室温にて攪拌した。トリフェニルホスフィンスルフィドを標準として加え、その溶液を5分間攪拌した。サンプルを採取してHPLC分析を行った。生成したPAMPOについて2%のエナンチオマー過剰率を得てかつ47%の収率を得た。(R)-PAMPOが過剰であった。
【0139】
実施例12 アルコールとしてジアセトン-D-グルコースおよび添加物としてピリジンの使用
予め乾燥した10ml丸底フラスコに攪拌棒と窒素入口/出口を取付け、PAMP(1当量、21.5mg、0.093mmol)、ジアセトン-D-グルコース(1.2当量、29.0mg、0.112mmol)および5mLの乾燥ベンゼンを装入した。予め乾燥した4Åモレキュラーシーブを装入し、混合物を5分間攪拌し、次いでピリジン(1当量、7.5μL、0.093mmol)およびHCA(1当量、14.5μL、0.095mmol)を加えた。反応液に栓をして一晩室温にて攪拌した。トリフェニルホスフィンスルフィドを標準として加え、その溶液を5分間攪拌した。サンプルを採取してHPLC分析を行った。生成したPAMPOについて20%のエナンチオマー過剰率を得てかつ64%の収率を得た。(S)-PAMPOが過剰であった。
【0140】
実施例13 反応Cの変法
メチルフェニル-o-トリルホスフィンを、代表手順Cに従い、求電子試薬としてHCAとそしてアルコールとして(-)-メントールと反応させたが、但し次の点を変えた:(i)溶媒はトルエンとした;(ii)全ての試薬の濃度を5倍超とした;(iii)反応を-78℃にてHCAを加えることにより開始し、そして室温に加温して一晩置いた。この方法によってワックス状固体を得た。次いで乾燥トルエン(2mL)を加え、その混合物を50℃に加熱して透明な溶液を得てこれを先のように分析した。結果は68%eeおよび70%収率であった。eeはADカラムで溶出した第2エナンチオマーのものであった。
【0141】
実施例14 手順DでPAMPを用いたときの色々なキラルアルコールの効果
PAMPの反応により代表手順Dのもとで生成したPAMPOのエナンチオ選択性を色々なアルコールに対して記録した。結果を表6に示す。
【表6】

【0142】
実施例15 手順DでPAMPを用いたときの色々な開始温度の効果
手順DでPAMPを用いたときの色々な開始温度の効果を研究した。結果を表7に示す。
【表7】

【0143】
実施例16 手順DでPAMPを用いるときの色々な溶媒の効果
反応手順Dを色々な溶媒で実施した。結果を表8に示す。
【表8】

【0144】
実施例17 手順DでPAMPを用いるときの色々な濃度の効果
反応手順Dを応用したが溶媒の量を減少してPAMPの全濃度が0.109Mになるよにすると、得られるPAMPは34%eeであった。これは50%eeを与える正常な濃度(0.022M)と比較することができる。
【0145】
実施例18 手順Dにおける色々なホスフィンとアルコールの使用
反応手順Dを色々なホスフィンを用いて行った。結果を表9に示す。
【表9】

【0146】
実施例19 手順DでPAMPを用いたときのキラル非ラセミアミンの使用
手順DをPAMPに利用したが、アルコールを(-)-α-メチルベンジルアミンにより置換えた。得られるPAMPOは12%のエナンチオマー過剰率を示した。
【0147】
実施例20 アミノホスフィンの使用
様々なアミノホスフィンから様々なアルコールを用いて生成するホスフィンオキシドのエナンチオ選択性を測定した。
【0148】
標準反応手順は次の通りである。ホスフィン(25mg/mL、ほぼ0.1M)、アルコール(0.118M)および四塩化炭素(0.099)のストック溶液を調製して、4Åモレキュラーシーブを含有する予め乾燥した容器中で一晩貯蔵した。乾燥した反応容器をN2雰囲気で満たし、乾燥トルエンをそれに加えた。次いでこれにアミノ-ホスフィン溶液(1mL)、アルコール溶液(1mL)および四塩化炭素溶液(1ml)を加えた。反応液を全体で6〜8日間、室温にて攪拌した。様々な時間間隔に、サンプルを取出してHPLCにより分析し、その結果を表10に示した。
【表10】

【0149】
未挿入の4実施例
実施例21 色々な塩素源の使用
PAMPから色々な塩素源を用いて生成したPAMPOのエナンチオ選択性を測定した。結果を表11に示した。
【表11】

【0150】
実施例22 ジアステレオマーP-キラル原性ホスフィン混合物への本方法の応用
【化8】

【0151】
乾燥反応容器(25mL)中に乾燥脱ガスしたトルエン(1mL)を入れた。これに(R,R)-と(R,S)-2-(メチルフェニルホスフィノ)-2'-メトキシ-1,1'-ビナフチル(トルエン中の0.10M溶液0.5mL、0.05mmol)の等部(50:50)混合物の溶液および(-)-メントール(トルエン中の0.12M溶液0.5mL、0.06mmol)の溶液を加えた。次いで容器を-78℃に冷却し、5分後、ヘキサクロロアセトン(トルエン中の0.1M溶液0.5mL、0.05mmol)の溶液を用いて処理した。攪拌をこの温度でさらに1時間続行した後、室温に加温した。次いで反応液を2週間、31P NMRスペクトル中にホスフィンオキシドシグナルだけが存在するようになるまで攪拌した。次いで溶媒を減圧下で除去し、そして粗混合物の1Hおよび31P NMRスペクトルを得た。1Hスペクトル中に診断メトキシシグナルをδ3.27およびδ3.73ppmにおいて観察した。これらは(R,R)ジアステレオマーに対応するδ3.27ppmのピークが88:12の比で過剰に存在した。31Pスペクトルも分析し、オキシドピークをδ30.81およびδ31.11ppmにおいて観察し、これもδ31.11ppmのピークが88:12の比で過剰に存在した。31Pスペクトル中に他のピークは観察されなかった。(出発物質のピークはδ-34.74および-35.13ppmの化学シフトを有する)。
【0152】
実施例23 PTMPOのdiPTMPOへの転化による選択性の改善
o-トリルフェニルメチルホスフィンオキシド(PTMPO)を1,2-ビス(フェニルo-トリルホスフィノイル)エタンに転化した。その後、反応混合物を再結晶してエナンチオマーとして純粋なdiPTMPOを得た。
【0153】
スケールミック(scalemic) o-トリルフェニルメチルホスフィンオキシド(81%ee、111mg、0.482mmol)をTHF(0.3mL)に溶解し、0℃にてリチウムジイソプロピルアミド溶液(ヘプタン/THF/エチルベンゼン中の2.0M溶液、0.31mL、0.62mmol)を用いて処理し、そして混合物を1時間攪拌した。次いで塩化第二銅(78mg、0.58mmol)を加え、さらに1時間0℃にて攪拌を続けた。室温に加温後、反応を濃HCl(0.2mL)を用いてクエンチし、クロロホルムを用いて抽出した。抽出物をアンモニア水を用いておよび水を用いて洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒の蒸発後、混合物のHPLC分析は少ない方のエナンチオマーが検出限界未満(ee>98%)でありかつ少量のメソ(meso)化合物(<10%)が存在することを示した。ベンゼンからの1回の再結晶により純粋な物質を得た(>99.9% ee、70mg、63%収率)。
【0154】
実施例24 スケールミック(scalemic)ホスフィンを本方法で処理してそれにより選択を改善する効果
スケールミック(scalemic) PAMP(45%ee、R異性体過剰)を、アルコールとして(-)-メントールを用いて代表手順Dで処理し、PAMPO(60% ee、定量収率)を得た。
【0155】
実施例25 P-キラル原性ホスフィンオキシドの様々なP-キラル原性誘導体への転化
本発明の方法の生成物のいくつかは多数の他のP-キラル原性リン化合物を合成するための理想的な分岐点である。従って、例えば、リンと結合したメチル基を持つ上記生成物を、好適な塩基を用いてメチル基において脱プロトンし、次いで多様な求電子試薬を用いて処理することができる。この方法で、有用なリン化合物のライブラリーを作製するためのモジュラー手法を思い描くことができる。例として、o-トリルフェニルメチルホスフィンオキシド(PTMPO)およびo-アニシルフェニルメチルホスフィンオキシド(PAMPO)をケトンおよびイミンを用いてこのように処理し、そしてβ-ヒドロキシおよびβ-アミノホスフィンオキシドをそれぞれ作製することができる。
【0156】
厳密に乾燥したエナンチオマーとして純粋な(S)-o-アニシルフェニルメチルホスフィンオキシド((S)-PAMPO、0.137g、0.56mmol)を乾燥THF(3mL)に溶解し、0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下でリチウムジイソプロピルアミド溶液(ヘプタン/THF/エチルベンゼン中の2.0M、0.36mL、0.72mmol)を用いて処理し、その混合物を30分間、0℃にて攪拌した。次いでこの混合物を0℃にてトルエン(1.5mL)中のフルオレノンのN-フェニルイミン(0.143g、0.56mmol)の溶液を用いて処理した。混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。次いで反応を飽和塩化アンモニウム(1mL)を用いてクエンチし、有機物をDCM中に抽出し、乾燥し(MgSO4)、そしてシリカ上のカラムクロマトグラフィで処理し、酢酸エチル/ペンタン(1:3)により溶出して(S)-1-(o-アニシルフェニルホスフィノイル)-2-(N-フェニルアミノ)-2,2-フルオレニリデンエタン(0.227g、80%)を得た;1H-nmr (300 MHz、CDCl3):δ ppm 8.17- 8.10 (m、1H)、7.69-6.39 (多重項シリーズ, 14H)、6.04-6.01 (m、2H)、3.27 (s 3H)、3.04-2.87 (m 2H);31P-nmr (121.4 MHz、CDCl3):δ ppm 30.54; [α]D (DCM、c 5.65 x 10-3 g/mL) +9.91°。
【0157】
厳密に乾燥したエナンチオマーとして純粋な(S)-o-アニシルフェニルメチルホスフィンオキシド(PAMPO、0.106g、0.43mmol)を乾燥THF(3mL)に溶解し、0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下でリチウムジイソプロピルアミド溶液(ヘプタン/THF/エチルベンゼン中の2.0M、0.28mL、0.56mmol)を用いて処理し、その混合物を30分間、0℃にて攪拌した。次いでこの混合物を0℃にてトルエン(1.5mL)中のベンゾフェノン(0.078g、0.43mmol)の溶液を用いて処理した。混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。次いで反応を飽和塩化アンモニウム(1mL)を用いてクエンチし、有機物をDCM中に抽出し、乾燥し(MgSO4)、そしてシリカ上のカラムクロマトグラフィで処理し、酢酸エチル/ペンタン(1:3)により溶出して(S)-2-(o-アニシルフェニルホスフィノイル)-1,1-ジフェニルエタノール(0.156g、85%)を得た;1H-nmr (300 MHz、CDCl3):δ 32.66 ppm; 31P-nmr (121.4 MHz、CDCl3):δ ppm 8.01-7.95 9m、1H)、7.61-6.90 (m 15H)、6.64-6.59 (m、1H)、6.30 (br s、1H)、3.38 (s、3H)、3.01 (d、J = 10 Hz、2H); [α]D (DCM、c 7.3 x 10-3 g/mL) +5.2°。
【0158】
厳密に乾燥したエナンチオマーとして純粋な(Chiralpak AS-H上でエタノールを用いて溶出した最初の異性体)o-トリルフェニルメチルホスフィンオキシド(PTMPO、0.110g、0.48mmol)を乾燥THF(3mL)に溶解し、0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下でリチウムジイソプロピルアミド溶液(ヘプタン/THF/エチルベンゼン中の2.0M、0.33mL、0.66mmol)を用いて処理し、その混合物を30分間、0℃にて攪拌した。次いでこの混合物を0℃にてトルエン(1.5mL)中のベンゾフェノン(0.088g、0.48mmol)の溶液を用いて処理した。混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。次いで反応を飽和塩化アンモニウム(1mL)を用いてクエンチし、有機物をDCM中に抽出し、乾燥し(MgSO4)、そしてシリカ上のカラムクロマトグラフィで処理し、酢酸エチル/ペンタン(1:3)により溶出して2-(o-トリルフェニルホスフィノイル)-1,1-ジフェニルエタノール(0.168g、85%)を得た;1H-nmr (300 MHz, CDCl3):δ ppm 7.56-7.00 (多重項のシリーズ, 19H), 3.53-3.37 (m 2H), ;31P-nmr (121.4 MHz, CDCl3):δ ppm 35.53。
【0159】
厳密に乾燥したエナンチオマーとして純粋な(Chiralpak AS-H上でエタノールを用いて溶出した最初の異性体)o-トリルフェニルメチルホスフィンオキシド(PTMPO、0.125g、0.54mmol)を乾燥THF(3mL)に溶解し、0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下でリチウムジイソプロピルアミド溶液(ヘプタン/THF/エチルベンゼン中の2.0M、0.38mL、0.76mmol)を用いて処理し、その混合物を30分間、0℃にて攪拌した。次いでこの混合物を0℃にてトルエン(1.5mL)中のベンゾフェノンのN-フェニルイミン(0.139g、0.54mmol)の溶液を用いて処理した。混合物を室温まで加温し、一晩攪拌した。次いで反応を飽和塩化アンモニウム(1mL)を用いてクエンチし、有機物をDCM中に抽出し、乾燥し(MgSO4)、そしてシリカ上のカラムクロマトグラフィで処理し、酢酸エチル/ペンタン(1:3)により溶出して1-(o-トリルフェニルホスフィノイル)-2-(N-フェニルアミノ)-2,2-ジフェニルエタン(0.201g、76%)を得た;1H-nmr (300 MHz, CDCl3):δ ppm 7.58-6.81 (多重項シリーズ, 16H), 6.60-6.55 (m, 1H), 6.40-6.35 (m, 2H), 3.61-3.40 (m, 2H), 2.22 (s, 3H); 31P-nmr (121.4 MHz, CDCl3):δ ppm 31.45。
【0160】
上記刊行物は全て本明細書に参照により組み入れられる。記載した本発明の方法と系の様々な修飾と改変が、本発明の範囲と精神を逸脱することなく、当業者には明白でありうる。本発明は具体的な好ましい実施形態に関連して記載されているが、請求の範囲に記載の本発明がかかる具体的な実施形態に不当に限定されるものでないことを理解しなければならない。実際、本発明を行うための記載した方式の、生化学およびバイオ技術または関連分野の関係者に明らかである様々な改変は、以下の請求の範囲内に包含されると意図している。
【0161】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物をP-キラル三配位リン化合物を含む第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させる工程を含んでなる上記方法。
【請求項2】
P-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物をP-キラル三配位リン化合物を含む第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させる工程、および上記P-キラル四配位リン化合物を単離する工程を含んでなる上記方法。
【請求項3】
生成物P-キラル三配位リン化合物のエナンチオマー過剰率(ee)を改善するために2回以上繰り返す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
P-キラル三配位リン化合物を立体選択的に調製する方法であって、(i) キラルアルコール、キラルアミンまたはキラルチオールからなる群より選択される第1反応物をP-キラル三配位リン化合物を含有する第2反応物と求電子試薬の存在のもとで反応させることを含んでなるP-キラル四配位リン化合物を立体選択的に調製する工程;(ii) 任意にP-キラル四配位リン化合物を単離する工程;および(iii) 上記P-キラル四配位リン化合物を還元する工程を含んでなる上記方法
【請求項5】
上記P-キラル四配位リン化合物がホスフィンオキシドであり、かつ上記第1反応物がキラルアルコールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
キラル中心が上記キラルアルコールのヒドロキシ炭素上に存在する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
キラルアルコールが式:
【化1】

[式中、R'、R''およびR'''は同一でないという条件で、R'、R''、およびR'''がそれぞれ独立して水素またはヒドロカルビルである]
を有する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
アルコールは環式アルコールである、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
R'、R''、およびR'''のうちの2つがヒドロキシル基を保持する炭素原子と一緒に炭素環式またはヘテロシクロアルキル環系を形成する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
アルコールがモノ-アルコールである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アルコールがジオールである、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
上記キラルアルコールが(-)-メントール、(-)-8-フェニルメントール、(-)-trans-2-tert-ブチルシクロヘキサノール、(+)-ネオメントール、(+)-イソメントール、(S)-1-オクチン-3-オール、(R)-3-メチル-2-ブタノール、(S)-1-フェニル-1-ブタノール、(1R,2R)-2-ベンゾイルシクロヘキサノール、(-)-イソピノカンフェオール、コレステロール、(1S,2S,5R)-2-イソプロピル-1,5-ジメチルシクロヘキサノール、(-)-10-ジシクロヘキシルスルファモイル-D-イソボルネオール、(-)-trans-2-フェニルシクロヘキサノール、(+)-フェンキルアルコール、(-)-ベンゼンスルホニル-N-(3,5-ジメチルフェニル)アミノ-2-ボルネオール、フルクトース誘導体、限定されるものでないが、1,2:4,5-ジ-O-イソプロピリデン-D-フルクトピラノシド、シクロヘキサンジオール、(S)-(-)-2-アミノ-1,1-ジフェニルプロパノール、(S)-(-)-2-アミノ-1,1-ジフェニルプロパノール、(S)-(-)-2-アミノ-3-メチル-1,1-ジフェニル-ブタン-1-オール、(R)-(+)-2-アミノ-(1,1,3)-トリフェニル-プロパン-1-オール、(S)-(-)-2-アミノ-4-メチル-1,1-ジフェニル-ペンタン-1-オール、(-)-trans-2-フェニルシクロヘキサノール、ジアセトン-D-グルコースおよび(-)-1,2-ジシクロヘキシル-1,2-エタンジオール、またはそれらの対応するエナンチオマーを含む群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
上記P-キラル四配位リン化合物がアミノホスホニウム塩でありかつ上記第1反応物がキラルアミンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。.
【請求項14】
キラルアミンが式:
【化2】

[式中、R'、R''およびR'''は同一でないという条件で、R'、R''、およびR'''がそれぞれ独立して水素またはヒドロカルビルである]を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
R'、R''、およびR'''のうちの2つがアミン基を保持する炭素原子と一緒に炭素環式またはヘテロシクロアルキル環系を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
上記P-キラル四配位リン化合物がホスフィンスルフィドであり、かつ上記第1反応物がキラルチオールである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
キラルチオールが式:
【化3】

[式中、R'、R''およびR'''は同一でないという条件で、R'、R''、およびR'''がそれぞれ独立して水素またはヒドロカルビルである]
を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
R'、R''、およびR'''のうちの2つがチオール基を保持する炭素原子と一緒に炭素環式またはヘテロシクロアルキル環系を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
P-キラル三配位リン化合物が式:
【化4】

[式中、X1、X2およびX3はそれぞれ独立して-NR5であるかまたは不在であり;かつR1、R2、R3およびR5はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ヒドロカルビルまたは有機金属基である]
を有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
X1、X2およびX3が不在である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
X1およびX2が不在でありかつX3が存在する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
R1、R2、R3およびR5がそれぞれ独立してアリール、ヘテロアリール、アルキル、炭素環、ヘテロシクロアルキル、アラルキルまたはアルケニル基である、請求項19〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
R5がアルキル基である、請求項19、21および22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
上記P-キラル四配位リン化合物の立体選択的な調製を、四級ホスホニウム塩の形成を可能にしかつ水素受容体として作用する求電子試薬の存在のもとで行う、請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
上記求電子試薬がハロゲノアルカンである、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
上記求電子試薬がCX4(式中、Xはハロゲンである)、ヘキサハロアセトン、ヘキサハロエタン、N-ハロスクシンイミドおよびトリハロアセトニトリルを含んでなる群から選択される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
ハロゲンが臭素または塩素である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ハロゲンが塩素である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
上記求電子試薬が四塩化炭素、ヘキサクロロアセトン、ヘキサクロロエタンおよびN-クロロスクシンイミド、2,3,4,5,6,6-ヘキサクロロ-2,4-シクロヘキサジエン-1-オンならびにトリクロロアセトニトリルを含んでなる群より選択される、請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
上記求電子試薬がヘキサクロロアセトンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
上記求電子試薬がN-クロロスクシンイミドである、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
上記求電子試薬が四塩化炭素でありかつP-キラル四配位リン化合物が請求項21または22に規定した通りである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
上記求電子試薬がヘキサクロロアセトンでありかつP-キラル四配位リン化合物が請求項20、22および23のいずれか1項に規定した通りである、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
Appel、CastroまたはEvans反応条件またはその変法のもとで実施する、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
P-キラル三配位リン化合物を含む第2反応物がラセミである、請求項1〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
P-キラル三配位リン化合物がジアステレオマー混合物である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
溶媒中で行う、いずれかの先行する請求項に記載の方法。
【請求項38】
溶媒が非プロトン性である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
溶媒が非極性である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
溶媒がトルエン、THF、ジクロロメタン、エーテルおよびアセトニトリルから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
溶媒がトルエンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
溶媒がジクロロメタンである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
溶媒がTHFである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
有機または無機塩基の付加を含んでなる、請求項1〜43に記載の方法。
【請求項45】
金属塩の付加を含んでなる、請求項1〜44に記載の方法。
【請求項46】
反応混合物を最初に室温より低く冷却する開始期、および反応混合物を開始期に用いる温度より高く加熱する反応期を含んでなる、請求項1〜45に記載の方法。
【請求項47】
開始期が0℃より低い、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
開始期が-30℃より低い、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
開始期が-50℃より低い、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
開始期が-70℃より低い、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
開始期がほぼ-78℃である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
P-キラル四配位リン化合物が請求項20または22に記載の通りである、請求項46〜51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
キラルP-キラル四配位リン化合物を次いで二量体型に転化してスケールミック(scalemic)およびメソ(meso) 化合物の混合物を作製し、そしてscalmic化合物をメソ(meso)化合物から分離する
、請求項1〜52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
リン原子と結合したアルキル基において二量化が起こる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
アルキル基がメチル基である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
分離を再結晶によって実施する、請求項53〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
スケールミック(scalemic)キラルP-キラル四配位リン化合物がo-トリルフェニルメチルホスフィンオキシドでありかつ二量体が1,2-ビス(フェニルo-トリルホスフィノイル)エタンである、請求項53に記載の方法。
【請求項58】
スケールミック(scalemic)キラルP-キラル四配位リン化合物がo-アニシルメチルフェニルホスフィンオキシドでありかつ二量体が1,2-ビス(フェニル(2-メトキシフェニル)ホスフィノイル)エタンである、請求項53に記載の方法。
【請求項59】
二量体を対応するビス-ホスフィンに還元する、請求項53〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
二量体を還元して1,2-ビス(フェニル(2-メチルフェニル)ホスフィノ)エタンを得る、請求項57および59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
二量体を還元してエタン-1,2-ジイルビス[(2-メトキシフェニル)フェニルホスファン]を得る、請求項58および59のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−501010(P2008−501010A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514213(P2007−514213)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002079
【国際公開番号】WO2005/118603
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(506397833)ユニバーシティ カレッジ ダブリン (1)
【Fターム(参考)】