説明

キラル化合物類

【課題】キラル化合物類を提供する。
【解決手段】本発明は、キラル化合物類、それらの調製方法、および光学的、電気光学的、電子、半導体または発光素子または装置、および装飾、セキュリティー、および化粧または診断用途(F)におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル化合物類、それらの調製方法、および光学的、電気光学的、電子、半導体または発光素子または装置、および装飾、セキュリティー、化粧または診断用途におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルな液晶(LC)材料は多くの用途にとって有益であり、例えば、捩れた構造を備えるLCディスプレイ(LCD)または高分子フィルムである。通常、それらは、所望の螺旋的な捩れを誘発する1種類以上のキラルドーパントを含むLCホスト材料よりなる。液晶ホスト材料中に螺旋的に捩れた分子構造を誘発するキラル化合物の能力は、それのいわゆる螺旋捩れ力(HTP)により記述される。HTPは、殆どの実用的な用途には十分である一次近似において、式(1)によって与えられる:
【0003】
【数1】

ただし、cはホスト材料中におけるキラル化合物の濃度、pは螺旋のピッチである。
【0004】
式(1)より分かる通り、キラル化合物を多量に使用するか、HTPの絶対値が高いキラル化合物を使用することにより、短いピッチを達成できる。よって、HTPの低いキラル化合物を使用する場合、短いピッチを誘発するには多量に必要となる。このことは、先行技術より既知のキラル化合物は、透明点、誘電異方性、粘度、駆動電圧またはスイッチ時間などのLCホスト混合物の特性に負に影響することが多く、キラル化合物は純粋な光学異性体としてのみ使用できるため従って高価であり合成が難しいので不都合である。
【0005】
先行技術のキラル化合物の他の不都合な点は、それらはLCホスト材料中において低溶解性を示すことが多く、低温において望ましくない結晶化へと至る。この不都合を克服するために、典型的には、2種類以上の異なるキラルドーパントをホスト混合物に添加しなければならない。このことはより高いコストを意味し、それらの捩れの温度係数を互いに補償するように異なるドーパントを選択しなければならず、通常、材料の温度を補償する付加的な労力も必要とされる。
【0006】
結果として、容易に合成され、少量で使用でき、例えば一定の反射波長を使用するために捩れ力が低い温度依存性を示し、LCホスト材料中で良好な溶解性を示し、LCホストの特性に対して負の影響を与えない、高いHTPのキラル化合物に対する多大な要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの特性を有し、先行技術のキラル化合物の上記不都合を有していないキラル化合物を提供することを目的とする。本発明のもう1つ目的は、専門家が利用可能なキラル化合物の貯えを広げることである。他の目的は、専門家には、以下の記述より直ちに明白となる。
【0008】
本発明の発明者らは、6,6’−ビスアルキニル−1,1’−ビ(2−ナフトール)基を含む、本発明で請求される通りのキラル化合物類を提供することで、これらの目的を達成できることを見出した。
【0009】
アルキニル基を有するキラルなビナフトール誘導体類は、JP2002−179668A、JP2002−179669A、J.Am.Chem.Soc.2001、123(11)、2683、Chem.Phys.Letters1996、253(1、2)、141、Mol.Cryst.Liq.Cryst.S&T、Section B 1995、9、181、およびJ.Chem.Soc、Chem.Commun.1994、3、249に記載されている。しかしながら、本発明で請求される通りの化合物は開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、式Iの化合物に関する。
【0011】
【化1】

ただし、
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF、または直鎖状、分岐状または環状で1〜30個のC原子を有するアルキル、アリールまたはヘテロアリールを表し(これらの基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい)、または、−(Z−A−RまたはP−Sp−を表し、
およびRは、それぞれ互いに独立に、Rの意味の1つを有し、
は、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF、または直鎖状または分岐状で1〜30個のC原子を有するアルキルであり(F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい)、または、P−Sp−を表し、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
は、複数存在する場合は互いに独立に、芳香族または脂環式基であり、N、OおよびSより選択されるヘテロ原子を1個以上含んでいてもよく、Rで一置換または多置換されていてもよく、
は、複数存在する場合は互いに独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−S−CO−、−CO−S−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−(CH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合を表し、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表し、
mは、0、1、2、3または4であり、
nは、2〜5の整数であり、
ただし、nが3で全てのRおよびRがHの場合、RおよびRは4−シアノフェニルではないことを条件とする。
【0012】
本発明は、更に、式Iの化合物を1種類以上含むLC材料に関する。
【0013】
本発明は、更に、好ましくはその配向状態で薄膜の形式である、上および下で記載される通りの式Iの化合物またはLC材料を重合して得られるキラル異方性高分子に関する。
【0014】
本発明は、更に、電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、補償子、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、有色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、化粧品、診断剤、非線形光学、光学的情報記憶装置、電子装置、有機半導体、電界効果トランジスター(FET)、集積回路(IC)の部品、薄膜トランジスター(TFT)、無線ID(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、照明装置、光起電装置、センサー装置、電極材料、光伝導体、電子写真記録、レーザー材料または装置中におけるか、またはキラルドーパントとしての上および下で記載される通りの化合物類、材料類および高分子類の使用に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<用語および定義>
用語「フィルム」は、剛直または柔軟であり、自己支持性または独立して立てる機械的に安定なフィルムを含み、支持基体上または2つの基体間の被膜または層も含む。
【0016】
用語「液晶またはメソゲン性材料」または「液晶またはメソゲン性化合物」は、1個以上の棒状、板形状(カラミティック)またはディスク形状(ディスコティック)のメソゲン性基、即ち、液晶(LC)相挙動を誘発できる基を含む材料または化合物を意味する。メソゲン性基を含む化合物または材料は、それ自身では必ずしもLC相を示す必要はない。他の化合物と混合することによってのみ、またはメソゲン性化合物または材料を、またはその混合物を重合したときにのみLC相挙動を示すことも可能である。
【0017】
簡単のため、以降では、用語「液晶材料」をメソゲン性およびLC材料の両者で使用する。
【0018】
また、1個の重合性基を有する重合性化合物を「一反応性」化合物、2個の重合性基を有する化合物を「二反応性」化合物、2個より多い重合性基を有する化合物を「多反応性」化合物と呼ぶ。また、重合性基を有さない化合物を「非反応性」化合物と呼ぶ。
【0019】
用語「反応性メソゲン」(RM)は、重合性メソゲンまたは液晶化合物を意味する。
【0020】
上および下の式中で示されるビナフチル基は、S,S−およびR,R−異性体の両者を含む。
【0021】
<発明の詳細な記述>
式Iの化合物は幾つかの利点を有する
・それらは容易に合成でき、また、文献より既知の標準的な方法を使用して広範囲の誘導体を数百グラムで大規模に合成でき、
・出発材料であるS,S−ビナフトールまたはR,R−ビナフトールは商業的に入手でき、
・それらは、異なる対称性(左手および右手)の化合物として鏡像異性的に純粋に調製でき、ネマチックホスト中に左および右手の螺旋を形成することが可能となり、
・それらは高いHTPを示し、
・それらはLC混合物中で良好な溶解性を示し、
・それらはメソゲン性であるか液晶でさえあり、
・LCホスト材料中でキラルドーパントとして使用される場合、それらはホストのLC相に負の影響を与えない。
【0022】
特に好ましい式Iの化合物は、
− RおよびRが、同一の基である;
− Rおよび/またはRがP−Sp−であり、ただし、Spが好ましくは−(CH−でzが1〜12の整数であり、好ましくは1〜6、最も好ましくは1である;
− RおよびRが、フッ素化されていてもよい1〜12個のC原子を有するアルキルである;
− 化合物が少なくとも1個の基P−Sp−を含んでいる;
− nが2、3、4または5で、全てのRおよびRがHを表す;
− nが2、3、4または5で、1個以上のRおよびRが1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを表す;
− nが2、3、4または5で、1個以上の基CRがCH−(Z−A−Rを表し、R、Z、Aおよびmが上で定義される通りである;
− Rが、P−Sp−である;
− Rが、フッ素化されていてもよい1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシである;
− nが、2、3、4、5または6である;
− mが、1、2または3である。
【0023】
好ましいシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基としては、限定することなく、フラン、ピロール、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イミダゾール、フェニレン、シクロヘキシレン、ビシクロオクチレン、シクロヘキセニレン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、アズレン、インダン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、アントラセンおよびフェナントレンが挙げられ、これら全ては、1個以上の基Lで置換されていてもよく、Lは式Iで与えられるRの意味の1つを有する。
【0024】
特に好ましいシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリール基は、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,5−ジイル、ビシクロオクチレンまたは1,4−シクロヘキシレンから選択され、ただし、1個または2個の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよく、また、これらの基は無置換であるか、上で定義される通りのLで一置換または多置換されている。
【0025】
好ましくは、Lは、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)R、−NR00、−OH、−SF、ただし、R、R00およびXは上で定義される通りであり、置換されていてもよいシリル、1〜12個、好ましくは1〜6個のC原子を有するアリール、および1〜12個、好ましくは1〜6個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ここで、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよい)から選択される。
【0026】
より好ましくは、Lは、F、Cl、CN、NOまたは1〜12個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシから選択され、ただし、これらのアルキル基はペルフルオロ化されていてもよい。
【0027】
最も好ましくは、Lは、F、Cl、CN、NO、CH、C、C(CH、CH(CH、CHCH(CH)C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHFまたはOCから選択され、特に、F、Cl、CN、CH、C、C(CH、CH(CH、OCH、COCHまたはOCF、最も好ましくは、F、Cl、CH、C(CH、OCHまたはCOCHである。
【0028】
幾つかの好ましい基−(Z−A−を下に列記する。簡単であるとの理由から、これらの基の中のPheは1,4−フェニレン、PheLは1〜4個の式Iで定義される通りの基Lで置換されている1,4−フェニレン、Cycは1,4−シクロヘキシレンであり、Zは式I中のZの意味の1つを有する。リストは次の補助式のみならずその鏡像も含む。
【0029】
【化2】

Zは、好ましくは、−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、−CHCH−または単結合である。
【0030】
非常に好ましくは、基−(Z−A−は、次の式およびその鏡像から選ばれる。
【0031】
【化3.1】

【0032】
【化3.2】

ただし、LおよびZは上で定義される通りで、rは0、1、2、3または4、好ましくは、0、1または2である。
【0033】
rが0とは異なる以下の基
【0034】
【化4.1】


は、好ましくは、
【0035】
【化4.2】

を表し、更に、
【0036】
【化4.3】

を表し、Lはそれぞれ独立に上で与えられる意味の1つを有する。
【0037】
式Iの特に好ましい化合物は、rが1である基:
【0038】
【化5.1】

を少なくとも2個か、または、rが2である基:
【0039】
【化5.2】

を少なくとも1個含む。
【0040】
アルキルまたはアルコキシ基、即ち、末端CH基が−O−で置き換えられているものは、直鎖状または分岐状でよい。それは、好ましくは、直鎖状で、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有しており、従って、好ましくは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、またはオクトキシで、更に、例えば、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。
【0041】
オキサアルキル、即ち、1個のCH基が−O−で置き換えられているものは、好ましくは、例えば、直鎖状の2−オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2−(即ち、エトキシメチル)または3−オキサブチル(即ち、2−メトキシエチル)、2−、3−、または4−オキサペンチル、2−、3−、4−、または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−、または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニルまたは2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0042】
1個以上のCH基が−CH=CH−で置き換えられているアルキル基は、直鎖状または分岐状でよい。それは、好ましくは、直鎖状で、2〜10個のC原子を有しており、従って、好ましくは、ビニル、プロパ−1−、またはプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−またはブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−またはペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−またはヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−またはヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−またはオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−またはノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−またはデカ−9−エニルである。
【0043】
特に好ましいアルケニル基は、C−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニル、C−C−4−アルケニル、C−C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特に、C−C−1E−アルケニル、C−C−3E−アルケニルおよびC−C−4−アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルおよびそのようなものである。5個までのC原子を有する基が一般に好ましい。
【0044】
1個のCH基が−O−によりおよび1個が−CO−により置き換えられているアルキル基において、これらの基は好ましくは隣り合っている。従って、これらの基は一緒となってカルボニルオキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−CO−を形成する。好ましくは、この基は直鎖状で、2〜6個のC原子を有している。それは、従って、好ましくは、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセチルオキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0045】
2個以上のCH基が−O−および/または−COO−で置き換えられているアルキル基は、直鎖状または分岐状でよい。それは、好ましくは、直鎖状で、3〜12個のC原子を有する。従って、それは、好ましくは、ビス−カルボキシ−メチル、2,2−ビス−カルボキシ−エチル、3,3−ビス−カルボキシ−プロピル、4,4−ビス−カルボキシ−ブチル、5,5−ビス−カルボキシ−ペンチル、6,6−ビス−カルボキシ−ヘキシル、7,7−ビス−カルボキシ−ヘプチル、8,8−ビス−カルボキシ−オクチル、9,9−ビス−カルボキシ−ノニル、10,10−ビス−カルボキシ−デシル、ビス−(メトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(メトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(メトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(メトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(メトキシカルボニル)−ペンチル、6,6−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘキシル、7,7−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘプチル、8,8−ビス−(メトキシカルボニル)−オクチル、ビス−(エトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(エトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(エトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(エトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(エトキシカルボニル)−ヘキシルである。
【0046】
CNまたはCFで一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは、直鎖状である。CNまたはCFによる置換は、任意の所望の位置とできる。
【0047】
ハロゲンによって少なくとも一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは、直鎖状である。ハロゲンは、好ましくは、FまたはClで、多置換の場合、好ましくは、Fである。得られる基は、ペルフルオロ化された基も含む。一置換の場合、FまたはCl置換は任意の所望の位置とできるが、好ましくはω位である。末端F置換を有する特に好ましい直鎖状の基の例は、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルである。しかしながら、Fの他の位置が除外されるものではない。
【0048】
ハロゲンは、好ましくは、FまたはClである。
【0049】
重合性基Pは、ラジカル性またはイオン性連鎖重合、重付加または重縮合のような重合反応に関与できるか、または、例えば縮合または付加により、高分子類似反応において高分子主鎖上へグラフトできる基である。特に好ましくは、ラジカル性、カチオン性またはアニオン性重合のような連鎖重合反応のための重合性基である。非常に好ましくは、C−C二重または三重結合を含む重合性基、およびオキセタンまたはエポキシドのような開環反応により重合できる重合性基である。
【0050】
非常に好ましくは、重合性基Pは、CH=CW−COO−、CH=CW−CO−、
【0051】
【化6】


CH=CW−(O)k1−、CH−CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH−CHCH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、(CH=CH−CHN−、(CH=CH−CHN−CO−、HO−CW−、HS−CW−、HWN−、HO−CW−NH−、CH=CW−CO−NH−、CH=CH−(COO)k1−Phe−(O)k2−、CH=CH−(CO)k1−Phe−(O)k2−、Phe−CH=CH−、HOOC−、OCN−、およびWSi−から選択され、WはH、F、Cl、CN、CF、フェニルまたは1〜5個のC原子のアルキルであり、特に、H、ClまたはCHであり、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子のアルキルであり、特にH、メチル、エチルまたはn−プロピルであり、W、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Cl、1〜5個のC原子のオキサアルキルまたはオキサカルボニルアルキルであり、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、H、Clまたは1〜5個のC原子のアルキルであり、Pheは、上で定義される1個以上の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレンであり、kおよびkは、それぞれ互いに独立に、0または1である。
【0052】
特に好ましい基Pは、CH=CH−COO−、CH=C(CH)−COO−、CH=CH−、CH=CH−O−、(CH=CH)CH−OCO−、(CH=CH)CH−O−、
【0053】
【化7】

である。
【0054】
特に好ましくは、Pgは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、オキセタン基またはエポキシ基であり、特に好ましくは、アクリレートまたはメタクリレート基である。
【0055】
非常に好ましくは、アクリレートおよびオキセタン基である。オキセタンは重合(架橋)時に収縮が少なく、結果としてフィルム中での応力の発生が少なく、配列が高度に保たれ欠陥が少なくなる。また、オキセタン架橋はカチオン性開始剤を必要とするため、フリーラジカル開始剤と異なり酸素に対して不活性である。
【0056】
スペーサー基としては、この目的のために当業者に既知の全ての基を使用できる。スペーサー基Spは、好ましくは、式Sp’−X’で、−Sp−C≡C−が−Sp’−X’−C≡C−、−Sp−A1/2−が−Sp’−X’−A1/2−およびP−SpがP−Sp’−X’−のようなものである。
【0057】
ただし、Sp’は、1〜20個のC原子、好ましくは1〜12個のC原子のアルキレンで、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないような方法で、1個以上の隣接していないCH基が、それぞれの場合で互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
X’は、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNである。
【0058】
X’は、好ましくは、−O−、−S−CO−、−COO−、−OCO−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−または単結合である。
【0059】
典型的なスペーサー基Sp’は、例えば、−(CH−、−(CHCHO)−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00−O)−であり、pは2〜12の整数、qは1〜3の整数、およびRおよびR00は上で与えられる意味を有する。
【0060】
好ましい基Sp’は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレン−チオエチレン、エチレン−N−メチル−イミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0061】
更に好ましくは、Spが単結合である1個または2個の基P−Sp−を有する化合物である。2個の基P−Spを有する化合物の場合、2個の重合性基Pおよび2個のスペーサー基Spは、それぞれ同一または異なっていてよい。
【0062】
式Iの特に好ましい化合物は、以下の式のものである。
【0063】
【化8.1】

【0064】
【化8.2】

ただし、
R’およびR”は、式I中のRの意味の1つを有し、
R”’はP−Sp、好ましくはP−CH−であるか、式I中のRの意味の1つを有し、
R””はP−Spであるか、式I中のRの意味の1つを有し、
Zは、式I中のZの意味の1つを有し、
Aは、式I中のAの意味の1つを有する。
【0065】
特に好ましくは、以下の補助式の化合物である。
【0066】
【化9.1】

【0067】
【化9.2】

【0068】
【化9.3】

【0069】
【化9.4】

【0070】
【化9.5】

ただし、R’、PおよびSp’は上に定義される通りであり、「alkyl」は1〜12個のC原子のn−アルキルであり、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシルである。
【0071】
式Iの化合物は、文献および、例えば、Houben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie、Thieme−Verlag社、Stuttgart市のような有機化学の標準的な書物に記載されている、それ自身既知の方法に従うか類似して調製できる。好ましくは、化合物は、例中に示す方法に従うか類似して調製される。
【0072】
好ましい方法によれば、適切な有機溶媒、好ましくはジクロロメタン中で、低温、好ましくは−70℃で、ビナフトールを臭素と反応させる。中間体である6,6’−ジブロモ−[1,1’]ビナフタレニル−2,2’−ジオールをアルキルジトシレートおよび炭酸カリウムと、適切な有機溶媒、好ましくはNMP中で反応させる。得られる閉環中間体を芳香族アセチレン化合物と、塩基、好ましくはトリエチルアミン、および触媒量の銅塩、好ましくはヨウ化銅、およびパラジウム触媒、好ましくはビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリドの存在下で反応させ、高いHTPの所望の生成物を生成する。これも、例中に示されるスキーム中で説明される。式Iの化合物を調製する方法は、本発明のもう1つの態様である。
【0073】
式Iの化合物は、例えばマルチプレックスまたはアクティブマトリックスアドレスの捩れまたは超捩れネマチック(TN、STN)ディスプレイのような捩れ構造を示すLCD用のLC混合物中において、または、WO92/19695、WO93/23496、US5,453,863またはUS5,493,430中で記載されているような表面安定化または高分子安定化コレステリックテクスチャディスプレイ(SSCT、PSCT)のようなコレステリックディスプレイ中において、WO98/57223中で記載されているようなマルチ−ドメインLCDのようなピッチを変えることができるLCD用に、US5,668,614中で記載されているような多色性コレステリックディスプレイ、またはWO02/93244中で記載されているような等方またはブルー相中で動作するキラルLC媒体を含むディスプレイで使用できる。
【0074】
また、式Iの本発明の化合物は、温度変化または光の照射によりそれぞれ色を変えるサーモクロミックまたはホトクロミックLC媒体中での使用にも適している。
【0075】
よって、本発明のもう1つの態様は、式Iの少なくとも1種類のキラル化合物を含むLC混合物である。また、本発明のもう1つの態様は、式Iの少なくとも1種類のキラル化合物を含むコレステリックLC媒体を含むコレステリックLCDである。
【0076】
式Iの化合物はLCホスト混合物中で良好な溶解性を有しており、混合物の相挙動および電気光学的特性に著しく影響を与えることなく多量にLCホストに対してドーパントとして添加できる。よって、低温における望ましくない自発的な結晶化が低減され、混合物の動作温度範囲を広くすることができる。更に、混合物の特性に影響を与えることなく低い値のピッチ(即ち、大きい捩れ)を得るためにドーパントの濃度を増加できるため、仮に低いHTPを有している場合でも、大きく捩れたLC媒体を調製するために、式Iの化合物を使用できる。よって、結晶化を避けるために頻繁に添加される第2のドーパントの使用を、避けることができる。式Iのキラル化合物は高い値のHTPを示すため、これらの化合物を非常に少量添加することで、大きな螺旋捩れ、即ち低いピッチのLC混合物を調製できる。
【0077】
そのようなLC混合物は、好ましくは0.1〜30重量%、特には1〜25重量%、非常に特に好ましくは2〜15重量%の式Iのキラル化合物を含む。好ましくは、1〜3種類の式Iのキラル化合物を含む。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、LC混合物は2〜25種類、好ましくは3〜15種類の化合物より成り、そのうちの少なくとも1つは式Iのキラル化合物である。他の化合物は、好ましくは、ネマチックまたはネマトゲン性物質より選択される低分子量LC化合物であり、例えば、アゾキシベンゼン類、ベンジリデン−アニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、フェニルまたはシクロヘキシル安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシル安息香酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、シクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のフェニルまたはシクロヘキシルエステル類、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸またはシクロヘキシルシクロヘキサンカルボン酸のシクロヘキシルフェニルエステル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、フェニルシクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルシクロヘキセン類、シクロヘキシルシクロヘキシルシクロヘキセン類、1,4−ビス−シクロヘキシルベンゼン類、4’,4’−ビス−シクロヘキシルビフェニル類、フェニル−またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニル−またはシクロヘキシルピリジン類、フェニル−またはシクロヘキシルピリダジン類、フェニル−またはシクロヘキシルジオキサン類、フェニル−またはシクロヘキシル−1,3−ジチアン類、1,2−ジフェニル−エタン類、1,2−ジシクロヘキシルエタン類、1−フェニル−2−シクロヘキシルエタン類、1−シクロヘキシル−2−(4−フェニルシクロヘキシル)エタン類、1−シクロヘキシル−2−ビフェニルエタン類、1−フェニル−2−シクロヘキシルフェニルエタン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル、トラン類および置換桂皮酸類および更なる種類のネマチックまたはネマトゲニック物質の既知の種類より選ばれる。また、これらの合物中の1,4−フェニレン基は、側鎖として一フッ素化または多フッ素化されていてもよい。LC混合物は、好ましくは、この型のアキラルな化合物に基づく。
【0079】
LC混合物の成分として使用できる最も重要な化合物は、以下の式で特徴付けることができる。
【0080】
R’−L’−G’−E−R”
式中、L’およびEは同一でも異なっていてもよく、それぞれの場合で互いに独立に、−Phe−、−Cyc−、−Phe−Phe−、−Phe−Cyc−、−Cyc−Cyc−、−Pyr−、−Dio−、−B−Phe−および−B−Cyc−およびそれらの鏡像により形成される群より選ばれる2価の基であり、ただし、Pheは無置換またはフッ素置換された1,4−フェニレンであり、Cycはトランス−1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−シクロヘキセニレンであり、Pyrはピリミジン−2,5−ジイルまたはピリジン−2,5−ジイルであり、Dioは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、Bは2−(トランス−1,4−シクロヘキシル)エチル、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルである。
【0081】
これらの化合物中のG’は、以下の2価の基、−CH=CH−、−N(O)N−、−CH=CY−、−CH=N(O)−、−C≡C−、−CH−CH−、−CO−O−、−CH−O−、−CO−S−、−CH−S−、−CH=N−、−COO−Phe−COO−または単結合より選択され、Yはハロゲン、好ましくは塩素または−CNである。
【0082】
R’およびR”は、それぞれの場合で互いに独立に、1〜18個、好ましくは3〜12のC原子のアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシ、またはR’およびR”の1つは、F、CF、OCF、Cl、NCSまたはCNである。
【0083】
これらの化合物の殆どにおいて、R’およびR”は、それぞれの場合で互いに独立に、異なる鎖長のアルキル、アルケニルまたはアルコキシで、ただし、ネマチック媒体中のC原子の総和は一般に2および9の間、好ましくは2および7の間である。
【0084】
これらの化合物およびそれの混合物の多くは、商業的に入手できる。これらの化合物の全ては既知であるか、文献(例えば、Houben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Thieme−Verlag社、Stuttgart市のような標準的な書物)に記載されているようにそれ自身既知の方法で調製でき、既知で前記反応に適する反応条件下で正確にできる。それ自身既知であるがここでは述べない変法を、ここで行うこともできる。
【0085】
式Iの化合物の好ましい使用は、重合性LC混合物、異方性高分子ゲルおよび異方性高分子フィルム、特に、均一な平面配向で螺旋捩れ分子構造を示す、即ち、配向コレステリックフィルムのように螺旋軸がフィルム面に対して垂直に配向している高分子フィルムの調製においてである。
【0086】
それらを含む異方性高分子ゲルおよびディスプレイは、例えば、DE19504224およびGB2279659に開示されている。
【0087】
配向コレステリック高分子フィルムは、例えば、ブロードバンド反射偏光子、カラーフィルター、セキュリティーマークとして、またはLC顔料の調製のために使用できる。
【0088】
よって、本発明のもう1つの態様は、式Iの1種類以上の化合物と、それも重合できるおよび/またはLC化合物である更なる1種類以上の化合物とを含む重合性LC材料である。
【0089】
重合性LC材料は、好ましくは、2種類以上の化合物の混合物で、それらの少なくとも1つは重合性または架橋性化合物である。1個の重合性基を有する重合性化合物を、以降、「一反応性」とも呼ぶ。架橋性化合物、即ち、2個以上の重合性基を有するものを、以降、「二反応性または多反応性」とも呼ぶ。
【0090】
重合性のメソゲン性またはLC化合物は、好ましくは単量体で、非常に好ましくはカラミティック単量体である。これらの材料は、典型的には、色度が低減されていると言ったような良好な光学特性を有しており、所望の方向へ簡単および良好に配向させることができ、それは大規模な高分子フィルムの工業的生産にとって特に重要である。また、重合性材料は、1種類以上のディスコティック単量体を含むことも可能である。
【0091】
上および下で記載されるように、重合性材料は本発明のもう1つの態様である。
【0092】
本発明に適する重合性でメソゲン性の一反応性、二反応性および多反応性化合物は、例えば、Houben−Weyl著、Methoden der organischen Chemie、Thieme−Verlag社、Stuttgart市のような有機化学の標準的な書物に記載されている、それ自身既知の方法で調製できる。
【0093】
重合性LC混合物中の単量体または共単量体としての使用に適する重合性のメソゲン性またはLC化合物は、例えば、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、WO95/22586、WO97/00600、US5,518,652、US5,750,051、US5,770,107およびUS6,514,578に開示されている。
【0094】
適切で好ましい重合性のメソゲン性またはLC化合物(反応性メソゲン)の例を、以下のリストに示す。
【0095】
【化10.1】

【0096】
【化10.2】

【0097】
【化10.3】

【0098】
【化10.4】

【0099】
【化10.5】

【0100】
ここで、
は、複数出現する場合、互いに独立に重合性基であり、好ましくは、アクリル、メタクリル、オキセタン、エポキシ、ビニル、ビニルオキシ、プロペニルエーテルまたはスチレン基であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
xおよびyは、それぞれ互いに独立に0または同一または異なって1〜12の整数であり、
zは0または1であり、ただし隣接するxまたはyが0の場合zは0であり、
は、複数出現する場合、互いに独立に、1、2、3または4個の基Lで置換されていてもよい1,4−フェニレン、またはトランス−1,4−シクロヘキシレンであり、
uおよびvは、それぞれ互いに独立に、0または1であり、
は、複数出現する場合、互いに独立に、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合であり、
は、1個以上、好ましくは1〜15個のC原子を有し、フッ素化されていてもよいアルキル、アルコキシ、チオアルキル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、または、YまたはP−(CH−(O)−であり、
は、F、Cl、CN、NO、OCH、OCN、SCN、SF、1〜4個のC原子を有し、フッ素化されていてもよいアルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、または、1〜4個のC原子を有し、一フッ素化、オリゴフッ素化またはポリフッ素化されたアルキルまたはアルコキシであり、
01、R02は、それぞれ互いに独立に、H、RまたはYであり、
は、2−メチルブチル、2−メチルオクチル、2−メチルブトキシまたは2−メチルオクトキシのように、4個以上、好ましくは4〜12個のC原子を有するキラルなアルキルまたはアルコキシ基であり、
Chは、メンチルまたはシトロネリルのような、コレステリル、エストラジオール、またはテルペノイド基より選択されるキラル基であり、
Lは、複数出現する場合、互いに独立に、H、F、Cl、CNまたは1〜5個のC原子を有し、ハロゲン化されていてもよいアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
ただし、ベンゼン環は、1個以上の同一または異なる基Lで付加的に置換されていてもよい。
【0101】
式Iの化合物に加え、重合性材料は1種類以上の重合性または非重合性キラル化合物を更に含んでもよい。
【0102】
適切な非重合性キラル化合物は、例えば、R−またはS−811、R−またはS−1011、R−またはS−2011、R−またはS−3011、R−またはS−4011、R−またはS−5011、またはCB15(全て、メルク社、Darmstadt市、ドイツ国より入手可)のような標準的なキラルドーパント、WO98/00428に記載されるようなソルビトール類、GB2,328,207に記載されるようなヒドロベンゾイン類、WO02/94805に記載されるようなキラルなビナフトール類、WO02/34739に記載されるようなキラルなビナフトールアセタール類、WO02/06265に記載されるようなキラルなTADDOL類、またはWO02/06196またはWO02/06195に記載されるようなフッ素化された架橋基を有するキラル化合物である。適切な重合性キラル化合物は、例えば、上にリストされるもの、または重合性キラル材料Paliocolor(登録商標)LC756(BASF社、Ludwigshafen市、ドイツ国製)である。
【0103】
本発明による高分子LCフィルムの一般的な調製は通常の専門家に既知であり、文献に記載されている。典型的には、重合性LC材料を基体上に塗工またはそうでなければ塗布し、そこで均一な方向に配向し、例えば、熱または化学線照射に曝露して、好ましくは光重合により、非常に好ましくはUV−光重合により、選択された温度においてLC相をその場で重合し、LC分子の配向を固定する。必要に応じて、LC材料をせん断またはアニールする、基体の表面処理、またはLC材料に界面活性剤を添加すると言った付加的な方法により均一な配向を促進できる。
【0104】
基体として、例えば、ガラスまたは石英シートまたはプラスチックフィルムを使用できる。重合前および/または重合中および/または重合後において、被覆された材料の最表面上に第2の基体を配置することも可能である。重合後、基体を取り除いても取り除かなくても構わない。2つの基体を使用して化学線照射により硬化する場合、少なくとも一方の基体は、重合のために使用される化学線照射に対して透過性を有していなければならない。等方性または複屈折性の基体を使用できる。重合後に重合されたフィルムから基体を取り除かない場合、好ましくは等方性基体を使用する。
【0105】
適切で好ましいプラスチック基体は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステルフィルム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカーボネート(PC)またはトリアセチルセルロース(TAC)、非常に好ましくはPETまたはTACフィルムである。複屈折性基体としては、例えば、一軸延伸プラスチックフィルムを使用できる。PETフィルムは、例えば、帝人デュポンフィルム株式会社より商標名Melinex(登録商標)で商業的に入手可能である。
【0106】
重合性材料は、スピンコートまたはブレードコートのような従来の塗工技術により、基体上に塗布できる。また、従来の印刷技術によっても基体上に塗布でき、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、リール−ツー−リール式印刷、レタープレス印刷、グラビア印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、インタリオ印刷、パッド印刷、熱シール印刷、インクジェット印刷またはスタンプまたは印刷板を利用する印刷のように専門家に既知である。
【0107】
重合性材料を適切な溶媒に溶解することも可能である。そして、この溶液を、例えば、スピンコートまたはプリントまたは他の既知の技術により、基体上に塗工または印刷し、重合前に溶媒を蒸発し除去する。多くの場合、溶媒の蒸発を促進するために、混合物を加熱することが適切である。溶媒としては、例えば、標準的な有機溶媒を使用できる。溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはシクロヘキサノンのようなケトン類;メチル、エチルまたはブチルアセテートまたはメチルアセトアセテートのような酢酸エステル類;メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールのようなアルコール類;トルエンまたはキシレンのような芳香族溶媒類;ジ−またはトリ−クロロメタンのようなハロゲン化炭化水素類;PGMEA(プロピルグリコールモノメチルエーテルアセテート)のようなグリコール類またはそれらのエステル類、γ-ブチロラクトン、およびそのようなものから選択できる。また、上の溶媒の2重または3重以上の混合物も使用できる。
【0108】
重合性LC材料の初期配向(例えば、平面配向)は、例えば、基体をラビング処理する、塗工中または後に材料をせん断する、重合前に材料をアニールする、配向層を塗布する、塗工された材料に磁場または電場を印加する、または材料に表面活性化合物を添加することで達成できる。配向技術の総説が、例えば、I.Sage、「Thermotropic Liquid Crystals」中、G.W.Gray編、John Wiley & Sons社、1987年刊、第75〜77頁;およびT.UchidaおよびH.Seki、「Liquid Crystals−Applications and Uses、第3巻」中、B.Bahadur編、World Scientific Publishing社、Singapore、1992年刊、第1〜63頁に与えられている。配向材料および技術の総説が、J.Cognard著、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、第78巻、補足1(1981年刊)、第1〜77頁に与えられている。
【0109】
特に好ましくは、LC分子の特定の表面配向を促進する1種類以上の界面活性剤を含む重合性材料である。適切な界面活性剤は、例えば、J.Cognard、Mol.Cryst.Liq.Cryst.、第78巻、補足1、第1〜77頁(1981年刊)に記載されている。平面配向のための好ましい配向剤は、例えば、非イオン性界面活性剤、好ましくは、商業的に入手可能なFluorad FC−171(登録商標)(3M社製)またはZonyl FSN(登録商標)(デュポン社製)のようなフッ化炭素界面活性剤、GB2383040に記載されるような多重ブロック界面活性剤またはEP1256617に記載されるような重合性界面活性剤である。
【0110】
また、基体上に配向層を塗布し、この配向層上に重合性材料を提供することも可能である。適切な配向層は、例えば、US5,602,661、US5,389,698またはUS6,717,644に記載されるようにラビングされたポリイミドまたは光配向で調製された配向層のように、技術的に既知である。
【0111】
また、好ましくは重合前に重合温度に昇温して、重合性LC材料をアニールすることで配向を導入または改良することも可能である。
【0112】
重合は、例えば、重合性材料を熱または化学線照射に曝露することで達成される。化学線照射とは、UV光、IR光または可視光のような光の照射、X線またはガンマー線の照射またはイオンまたは電子のような高エネルギー粒子の照射を意味する。好ましい重合は、UV照射により行われる。化学線照射の線源としては、例えば、単一のUVランプまたはUVランプの組み合わせを使用できる。高いランプパワーを使用すれば、硬化時間を短縮できる。化学線照射のもう1つの可能な線源は、例えばUV、IRまたは可視光レーザーのようなレーザーである。
【0113】
重合は、好ましくは、化学線照射の波長で吸収のある開始剤の存在下で行われる。例えば、UV光を利用する重合の場合、UV照射下で分解し、重合反応を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用できる。アクリレートまたはメタクリレート基の重合には、好ましくは、ラジカル光開始剤が使用される。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基の重合には、好ましくは、カチオン性の光開始剤が使用される。加熱されると分解して重合を開始するフリーラジカルまたはイオンを生成する熱重合開始剤を使用することも可能である。典型的なラジカル性光開始剤は、例えば、商業的に入手可能なIrgacure(登録商標)またはDarocure(登録商標)(Ciba Geigy社、Basel市、スイス国)である。典型的なカチオン性光開始剤は、例えば、UVI6974(Union Carbide社)である。
【0114】
また、重合性材料は、望ましくない自発的な重合を予防するため、例えば、商業的に入手可能なIrganox(登録商標)(Ciba Geigy社、Basel市、スイス国)のような安定剤または阻害剤を1種類以上含んでよい。
【0115】
硬化時間は、重合性材料の反応性、塗工層の厚み、重合開始剤の型およびUVランプの出力にとりわけ依存する。硬化時間は、好ましくは5分以下、非常に好ましくは3分以下、最も好ましくは1分以下である。大量生産には、30秒以下の硬化時間が好ましい。
【0116】
好ましくは、重合は、窒素またはアルゴンのような不活性ガス雰囲気内で行う。
【0117】
また、重合性材料は、重合で使用される照射の波長で吸収が最大となるよう調整された染料、例えば、4,4”−アゾキシアニソールまたはTinuvin(登録商標)染料(Ciba Geigy社製、Basel市、スイス国)のような特にUV染料を1種類以上含んでもよい。
【0118】
もう1つの好ましい実施形態において、重合性材料は1種類以上の一反応性の重合性の非メソゲン性化合物を含み、好ましくは0〜50%の量、非常に好ましくは0〜20%の量である。典型的な例は、アルキルアクリレート類またはアルキルメタクリレート類である。
【0119】
もう1つの好ましい実施形態において、二反応性または多反応性の重合性のメソゲン性化合物に代えるか加えて、重合性材料は1種類以上の二反応性または多反応性の重合性の非メソゲン性化合物を含み、好ましくは0〜50%の量、非常に好ましくは0〜20%の量である。二反応性の非メソゲン性化合物の典型的な例は、1〜20個のC原子のアルキル基を有するアルキルジアクリレート類またはアルキルジメタクリレート類である。多反応性の非メソゲン性化合物の典型的な例は、トリメチルプロパントリメタクリレートまたはペンタエリトリトールテトラアクリレートである。
【0120】
また、高分子フィルムの物理的特性を修正するために、1種類以上の連鎖移動剤を重合性材料に加えることも可能である。特に好ましくはチオール化合物類で、例えば、ドデカンチオールのような一官能性チオール類またはトリメチルプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)のような多官能性チオール類である。非常に好ましくは、例えば、WO96/12209、WO96/25470またはUS6,420,001中に記載されるようなメソゲン性またはLCチオール類である。連鎖移動剤を使用することで、高分子フィルム中の自由な高分子鎖の長さおよび/または2つの架橋間の高分子鎖の長さを制御できる。連鎖移動剤の量を増加する場合、高分子フィルム中の高分子鎖長は減少する。
【0121】
また、重合性材料は、高分子バインダーまたは高分子バインダーを形成できる1種類以上の単量体および/または1種類以上の分散助剤を含むことができる。適切なバインダーおよび分散助剤は、例えば、WO96/02597に開示されている。好ましくは、しかしながら、重合性材料は、バインダーおよび分散助剤を含まない。
【0122】
重合性材料は、例えば、触媒、増感剤、安定剤、阻害剤、連鎖移動剤、共反応性単量体、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、疎水化剤、粘着性剤、流動性改良剤、消泡剤、脱気剤、希釈剤、反応性希釈剤、補助剤、着色剤、染料または顔料のような1種類以上の付加的な成分を付加的に含んで構わない。
【0123】
本発明による高分子フィルムの厚みは、好ましくは0.3〜5ミクロン、非常に好ましくは0.5〜3ミクロン、最も好ましくは0.7〜1.5ミクロンである。配向層としての使用には、0.05〜1、好ましくは0.1〜0.4ミクロンの厚みの薄膜が好ましい。
【0124】
本発明の高分子フィルムは、例えばLCD中において大きい視野角におけるコントラストおよび輝度を改良し色度を低減するために、位相差または補償フィルムとして使用できる。それはLCDのスイッチ可能なLCセルの外側または基体間で使用でき、基体は普通ガラス基体でスイッチ可能なLCセルを形成し、スイッチ可能なLC媒体を備えている(セル内での用途)。
【0125】
また、本発明の高分子フィルムは、LC材料用の配向層としても使用できる。例えば、スイッチ可能なLC媒体の配向を誘発または改良するため、または重合性LC材料の上に塗工される次の層を配向するために、LCD中で使用できる。この方法で、重合性LCフィルムの積層を調製できる。
【0126】
特に、本発明によるキラルな化合物、混合物、高分子および高分子フィルムは、GB2315072またはWO97/35219に開示されるような反射偏光子、WO01/20394またはWO2004/013666に開示されるような負のC位相差板、WO2003/054111に開示されるような2軸性の負のC位相差板、EP1376163に開示されるような配向層、GB2315760、WO02/85642、EP1295929またはEP1381022に開示されるような装飾またはセキュリティー用の使用のための複屈折性マークまたは画像において使用できる。
【0127】
本発明の高分子フィルムは従来のLCディスプレイ中で使用でき、例えば、DAP(deformation of aligned phases)、ECB(electrically controlled birefringence)、CSH(colour super homeotropic)、VA(vertically aligned)、VANまたはVAC(vertically aligned nematicまたはcholesteric)、MVA(multi−domain vertically aligned)またはPVA(patterned vertically aligned)モードのような垂直配向のディスプレイ;OCB(optically compensated bend cellまたはoptically compensated birefringence)、R−OCB(reflective OCB)、HAN(hybrid aligned nematic)またはパイ−セル(π−cell)モードのような曲げまたはハイブリッド配向のディスプレイ;TN(twisted nematic)、HTN(highly twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、AMD−TN(active matrix driven TN)モードのような捩れ配向ディスプレイ;IPS(in plane switching)モードのディスプレイ、または、例えば、WO02/93244に記載されるような光学的等方相またはブルー相中でスイッチするディスプレイである。
【0128】
特に好ましくは、TN、STN、VAおよびIPSディスプレイであり、特には、アクティブマトリックス型のものである。更に好ましくは、半透過型ディスプレイである。
【0129】
他に明記しない限り、以上および以下において全ての温度は摂氏で与えられ、全てのパーセントは重量である。以下の略号を、LC相の挙動を説明するために使用する:C、Kは結晶;Nはネマチック;Sはスメクチック;N、Chはキラルネマチックまたはコレステリック;Iは等方相。これらの記号の間の数字は、相転移温度を摂氏で示す。更に、mpは融点であり、cpは透明点(℃)である。
【0130】
他に明記しない限り、上および下で与えられるような重合性混合物の成分のパーセントは、混合重合性混合物中の固形分の総量によっており、即ち、溶媒を含まない。
【0131】
LCホスト材料中のキラルドーパントのHTPはHTP=(p・c)−1(μm−1)のように与えられ、ただし、pは分子螺旋のピッチ(μm)であり、cはホスト中のキラル化合物の濃度(重量%)である(例えば、1重量%の濃度は、c=0.01に対応する)。他に明記しない限り、上および下で与えられる特定のHTPの値は、20℃におけるLCホスト混合物MLC−6260(メルク社、Darmstadt市、ドイツ国)中の1%のドーパント濃度に関する。
【実施例】
【0132】
以下の例は、制限することなく、本発明を説明するものである。例中で示される全てのビナフチル化合物の対応するS,S−またはR,R−異性体も、記載される方法に従うか類似して調製できる。
【0133】
<例1>
下の反応スキーム1により、化合物(1)を調製する。
【0134】
【化11】

【0135】
【化12】

<工程1:S−(−)−6,6’−ジブロモ−[1,1’]ビナフタレニル−2,2’−ジオール>
臭素(10.2ml、200.0mmol)を、ジクロロメタン(400ml)中に溶解されたS−(−)−1,1’−ビ−2−ナフトール(30.0g、104.8mmol)に、−70℃で窒素雰囲気下において滴下により加える。混合物を室温まで温め、亜硫酸水素ナトリウムを添加して過剰の臭素を潰す。溶液を食塩水で洗浄し、除去し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させて乾燥する。生じる粗生成物をトルエンおよび石油エーテルの混合物より再結晶し、所望の生成物の白色結晶を得る。H NMRは、期待されるシグナルを示す。
【0136】
<工程2:S−(−)−6,6’−ジブロモ−[1,1’]ビナフタレニル−2,2’−ジオキシプロパン>
S−(−)−6,6’−ジブロモ−[1,1’]ビナフタレニル−2,2’−ジオール(10.0g、22.5mmol)、炭酸カリウム(8.7g、62.6mmol)およびプロパンジトシレート(8.7g、22.5mmol)を、80℃においてNMP中で攪拌する。16時間後、混合物をエーテル中に投入し、水洗する。エーテルを含む層を除去し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させて乾燥する。得られる粗固体を、溶離液として石油エーテル(petrol)/酢酸エチル(4/1)を使用し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物の白色結晶を得る。H NMRは、期待されるシグナルを示す。
【0137】
<工程3:S−(−)−6,6’−ビス[1−エチニル−4−ペンチルベンゼン]ビナフタレニル−2,2’−ジオキシプロパン>
S−(−)−6,6’−ジブロモ−[1,1’]ビナフタレニル−2,2’−ジオキシプロパン(1.0g、2.1mmol)、1−エチニル−4−ペンチルベンゼン(0.7g、4.1mmol)、トリエチルアミン(5mol)、テトラヒドロフラン(10ml)および触媒量のパラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリドおよびヨウ化銅(1)を、還流下で20時間攪拌する。混合物をジクロロメタン中に投入し、水洗し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させて乾燥すると、茶色の固体が残る。溶離液としてジルロロメタン/石油エーテルを使用し、フラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製を達成し、適切な画分を蒸発させて、所望の生成物の白色固体を得る。Hおよび13C NMRは、期待されるシグナルを示す。光学顕微鏡により、K−47−Iの転移が示される。
【0138】
5重量%の化合物をBL087(メルクケミカル社製、英国)中に溶解し、螺旋捩れ力(HTP)を外挿する。HTPは、右手方向の捩れ性で48である。
【0139】
<例2>
下の反応スキーム2により、化合物(2)を調製する。
【0140】
【化13】

【0141】
【化14】

<工程1>臭素(2当量)をジクロロメタン中のビナフトールに−70℃で加え、室温まで温める。亜硫酸水素ナトリウムおよび水で洗浄して過剰の臭素を除去し、そして乾燥する。トルエン/石油エーテルより再結晶する。
【0142】
<工程2>1,2−ジブロモエタン(2.9当量)、炭酸カリウム(6当量)および触媒量のヨウ化ナトリウムを、還流下、アセトン中で攪拌して、閉環を達成する。
【0143】
<工程3>塩基としてトリエチルアミン、触媒量のパラジウムテトラキストリフェニルホスフィンおよびヨウ化銅(1)を溶媒としてテトラヒドロフラン中で使用し、典型的な薗頭クロスカップリング条件下でアセチレン化合物とのクロスカップリングを達成する。
【0144】
<例3>
下の反応スキーム3により、化合物(3)を調製する。
【0145】
【化15】

【0146】
【化16.1】

【0147】
【化16.2】

<工程1>臭素(2当量)をジクロロメタン中のビナフトールに−70℃で加え、室温まで温める。亜硫酸水素ナトリウムおよび水で洗浄して過剰の臭素を除去し、そして乾燥する。トルエン/石油エーテルより再結晶する。
【0148】
<工程2>トリフェニルホスフィン(2.3当量)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(2.7当量)で、テトラヒドロフラン中、室温において、光延(Mitsunobu)条件により閉環を達成する。
【0149】
<工程3>塩基としてトリエチルアミン、触媒量のパラジウムテトラキストリフェニルホスフィンおよびヨウ化銅(1)を溶媒としてテトラヒドロフラン中で使用し、典型的な薗頭クロスカップリング条件下でアセチレン化合物とのクロスカップリングを達成する。
【0150】
<例4>
下の反応スキーム4により、化合物(4)を調製する。
【0151】
【化17】

【0152】
【化18】

<工程1>臭素(2当量)をジクロロメタン中のビナフトールに−70℃で加え、室温まで温める。亜硫酸水素ナトリウムおよび水で洗浄して過剰の臭素を除去し、そして乾燥する。トルエン/石油エーテルより再結晶する。
【0153】
<工程2>1,3−ジブロモ化合物と共に、炭酸カリウム、ジメチルホルムアミド(90℃)で、エーテル化条件により閉環を達成する。
【0154】
<工程3>塩基としてトリエチルアミン、触媒量のパラジウムテトラキストリフェニルホスフィンおよびヨウ化銅(1)を溶媒としてテトラヒドロフラン中で使用し、典型的な薗頭クロスカップリング条件下でアセチレン化合物とのクロスカップリングを達成する。
【0155】
<例5>
下に記載するように、化合物(5)を調製する。
【0156】
【化19】


<(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビナフタレニル−2,2’−ジオール>
【0157】
【化20】

(S)−1,1’−ビナフタレニル−2,2’−ジオール(40.00g、139.70mmol)をDCM(400ml)中に溶解し、窒素下、−70℃で攪拌する。臭素(13.6ml、265.4mmol)を、温度が−70℃に確実に保たれるように、非常にゆっくりと添加する。添加を完了し、一晩かけて反応物をゆっくりと室温に戻す。完了し、50mlの10%亜硫酸水素ナトリウム溶液を添加して過剰の臭素を潰す。2つの層が形成され、有機層を分離し、食塩水で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)し、過剰の溶媒を真空下で除去する。生じる固体をトルエン/石油エーテルより再結晶し、白色固体を得て、加熱することなく乾燥する(55.2g、124.3mmol、89%)。融点79℃。Hおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。GCMSは、(M/z)444[M]を示す。
【0158】
<(S)−9,14−ジブロモジナフト[2,1−d:1’,2’−f][1,3]ジオキセピン>
【0159】
【化21】

(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビナフタレニル−2,2’−ジオール(5.00g、11.26mmol)をアセトン(60ml)に溶解し、炭酸カリウム(9.80g、70.93mmol)およびヨウ化ナトリウム(0.10g、0.67mmol)を添加し、得られる溶液を70℃で攪拌する。アセトン(20ml)中のジブロモメタン(5.68ml、32.65mmol)をゆっくりと添加し、反応物を一晩攪拌する。完了し、反応物をジエチルエーテルで希釈し、水中に投入する。層を分離し、水相をジエチルエーテルで抽出する(2回)。合わせた有機層を水で洗浄し(2回)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、過剰の溶媒を真空中で除き、クリーム色の固体として生成物を得る。粗生成物をフラッシュマスターカラムクロマトグラフィー(SiO、10%酢酸エチル/石油エーテル)で精製し、先行する不純物を取り除く。熱石油エーテル中の最小量のDCMより再結晶して生成物を更に精製し、黄色味がかった白色結晶として生成物を得る(2.29g)。分取HPLC(100ml/分、アセトニトリル中30%水からアセトニトリル100%まで8分で行う)で生成物を更に精製し、白色の固体として生成物を得る(0.99g、2.17mmol、19%)。
【0160】
融点215℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。GCMSは、(M/z)456[M]を示す。
【0161】
HTP=49(BLO87中5%濃度で、右手方向の捩れを与える)。
【0162】
<(S)−10,15−ジブロモ−4,5−ジヒドロジナフト[2,1−e:1’,2’−g][1,4]ジオキソシン>
【0163】
【化22】

(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビナフタレニル−2,2’−ジオール(27.18g、61.20mmol)をNMP(150ml)に溶解し、炭酸カリウム(10.15g、73.44mmol)を添加し、得られる溶液を80℃で攪拌する。NMP(100ml)中のエチレングリコールジ−p−トシレート(22.67g、61.20mmol)をゆっくりと添加し、反応物を一晩攪拌する。完了し、反応物をジエチルエーテルで希釈し、水中に投入する。層を分離し、ジエチルエーテルで1回抽出する。合わせた有機層を水で洗浄し(4回)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、過剰の溶媒を真空中で取り除き、茶色の固体として生成物を得る。固体をカラムクロマトグラフィー(SiO、100%石油エーテル、20%酢酸エチル/石油エーテルまで走らせる)で精製し、白色の結晶として化合物12を得る(25.00g、53.19mmol、87%)。融点116℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。GCMSは、(M/z)470[M]を示す。HTPは47(BLO87中5%濃度で、右手方向の捩れを与える)。
【0164】
<(S)−2,7−ジブロモ−13,14−ジヒドロ−12H−ジナフト[2,1−f:1’,2’−h][1,5]ジオキソニン>
【0165】
【化23】

(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビナフタレニル−2,2’−ジオール(含有量90%、53.27g、107.94mmol)をNMP(150ml)に溶解し、炭酸カリウム(49.80g、129.53mmol)を添加し、得られる溶液を80℃で攪拌する。NMP(400ml)中のプロパンジ−p−トシレート(41.50g、107.94mmol)をゆっくりと添加し、反応物を一晩攪拌する。完了し、反応物をジエチルエーテルで希釈し、水中に投入する。層を分離し、水層をジエチルエーテルで抽出する(2回)。合わせた有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸マグネシウム上で乾燥し、過剰の溶媒を真空中で取り除き、クリーム色の固体として生成物を得る。固体をカラムクロマトグラフィー(SiO、100%石油エーテル、20%酢酸エチル/石油エーテルまで走らせる)で精製し、白色の結晶を得る(32.64g、67.44mmol、63%)。融点179℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。GCMSは、(M/z)484[M]を示す。HTP=44(BLO87中5%濃度で、右手方向の捩れを与える)。
【0166】
<(S)−2,7−ジブロモ−12,13,14,15−テトラヒドロジナフト[2,1−b:1’,2’−d][1,6]ジオキセシン>
【0167】
【化24】


(S)−6,6’−ジブロモ−1,1’−ビナフタレニル−2,2’−ジオール(5.00g、11.26mmol)をNMP(40ml)に溶解し、炭酸カリウム(1.87g、13.51mmol)を添加し、得られた溶液を80℃で撹拌する。NMP(40ml)中の1,4−ブタンジオールジメタンスルホネート(2.77g、11.26mmol)をゆっくりと添加し、反応物を一晩撹拌する。その後、NMP(80ml)および炭酸カリウム(1.87g、13.51mmol)を添加し、生成していたゲルを溶解する。完了し、反応物をジエチルエーテルで希釈し、水中に投入する。層を分離し、水相をジエチルエーテルで抽出する(2回)。合わせた有機層を水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウム上で乾燥し、過剰の溶媒を真空中で取り除き、クリーム色の固体として生成物を得る。固体をカラムクロマトグラフィー(SiO、50%トルエン/石油エーテル)で精製し、黄色味がかった白色固体として化合物14を得る(3.20g、6.42mmol、57%)。
【0168】
融点109℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。GCMSは、(M/z)498[M]を示す。
【0169】
HTP=37(BLO87中7%濃度で、右手方向の捩れを与える)。
【0170】
<(S)−9,14−ビス((4−ペンチルフェニル)エチニル)ジナフト[2,1−d:1’,2’−f][1,3]ジオキセピン>
【0171】
【化25】

(S)−9,14−ジブロモジナフト[2,1−d:1’,2’−f][1,3]ジオキセピン(0.65g、1.43mmol)を、窒素下、トリエチルアミン(3ml)およびTHF(5ml)中で攪拌する。触媒量のPdCl(PPhおよびCuIを加え、反応物を80℃で攪拌する。THF(5ml)中の1−エチニル−4−ペンチルベンゼン(0.52g、2.99mmol)を3時間かけて非常にゆっくりと加え、反応物を72時間攪拌し、この間に、THF中の追加の1−エチニル−4−ペンチルベンゼン(1.00ml、5.81mmol)、トリエチルアミン、PdCl(PPhおよびCuIを加える。完了し、溶液をDCMで希釈し、水中に投入する。層を分離し、DCMで抽出し(2回);有機相を一緒に合わせ、食塩水で洗浄し(2回)、硫酸ナトリウム上で乾燥する。過剰の溶媒を真空中で取り除き、茶色の固体を得て、フラッシュマスターカラムクロマトグラフィー(SiO、20%DCM/石油エーテル)を使用して精製し、茶色を取り除く。生成物を、フラッシュマスターカラムクロマトグラフィー(C18逆相、100%アセトニトリル、10%DCM/アセトニトリルまで走らせる)を使用して更に精製し、白色の固体として化合物15を得る(0.41g、0.64mmol、45%)。
【0172】
融点167℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。
【0173】
HTP=57(BLO87中5%濃度で、右手方向の捩れを与える)。
【0174】
<例6>
下に記載するように、化合物(6)を調製する。
【0175】
<(S)−10,15−ビス((4−ペンチルフェニル)エチニル)−4,5−ジヒドロジナフト[2,1−e:1’,2’−g][1,4]ジオキソシン>
【0176】
【化26】

(S)−10,15−ジブロモ−4,5−ジヒドロジナフト[2,1−e:1’,2’−g][1,4]ジオキソシン(2.00g、4.25mmol)を、窒素下、トリエチルアミン(3ml)およびTHF(5ml)中で攪拌する。触媒量のPdCl(PPhおよびCuIを加え、反応物を80℃で攪拌する。THF(5ml)中の1−エチニル−4−ペンチルベンゼン(1.47g、8.51mmol)を3時間かけて非常にゆっくりと加え、反応物を72時間攪拌し、この間に、THF中の追加の1−エチニル−4−ペンチルベンゼン(0.50gを2回、5.81mmol)およびトリエチルアミンを加える。完了し、溶液をDCMで希釈し、水中に投入する。層を分離し、DCMで抽出し(2回);有機相を一緒に合わせ、水で洗浄し(2回)、硫酸ナトリウム上で乾燥する。過剰の溶媒を真空中で取り除き、茶色の固体を得て、SPフラッシュ精製システム(SiO、2%酢酸エチル/n−ヘキサン、20%酢酸エチル/n−ヘキサンまで走らせる)を使用して精製し、茶色を取り除く。生成物を、同一のシステム(C18逆相、50%アセトニトリル/水、100%アセトニトリルまで走らせる)を使用して更に精製し、黄色味がかった白色の固体を得る(0.07g、0.1mmol、3%)。
【0177】
融点161℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。
【0178】
HTP=52(BLO87中5%濃度で、右手方向の捩れを与える)。
【0179】
<例7>
下に記載するように、化合物(7)を調製する。
【0180】
<(S)−2,7−ビス((4−ペンチルフェニル)エチニル)−13,14−ジヒドロ−12H−ジナフト[2,1−f:1’,2’−h][1,5]ジオキソニン>
【0181】
【化27】

(S)−2,7−ジブロモ−13,14−ジヒドロ−12H−ジナフト[2,1−f:1’,2’−h][1,5]ジオキソニン(1.00g、2.07mmol)を、窒素下、トリエチルアミン(3ml)およびTHF(5ml)中で攪拌する。触媒量のPdCl(PPhおよびCuIを加え、反応物を80℃で攪拌する。THF(5ml)中の1−エチニル−4−ペンチルベンゼン(0.71ml、4.13mmol)を3時間かけて非常にゆっくりと加え、反応物を20時間攪拌する。完了し、溶液をDCMで希釈し、水中に投入する。層を分離し、DCMで抽出し(2回)、有機物を混合し、水で洗浄し(2回)、硫酸ナトリウム上で乾燥し、過剰の溶媒を真空中で取り除き、茶色の固体を得て、フラッシュマスターカラムクロマトグラフィー(SiO、10%DCM/石油エーテル、40%DCM/石油エーテルまで走らせる)により精製する。カラム処理した生成物はHPLCで12分に不純物を示し、分取HPLC(100ml/分、アセトニトリル中20%水、10分後アセトニトリル100%まで行う)で更に精製し、白色の固体として化合物17を得る(0.62g、0.93mmol、45%)。
【0182】
融点47℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。
【0183】
HTP=48(BLO87中5%濃度で、右手方向の捩れを与える)。
【0184】
<例8>
下に記載するように、化合物(8)を調製する。
【0185】
<(S)−5,5’−(4,5−ジヒドロジナフト[2,1−e:1’,2’−g][1,4]ジオキソシン−10,15−ジイル)ジペンタ−4−イン−1−オール>
【0186】
【化28】

(S)−10,15−ジブロモ−4,5−ジヒドロジナフト[2,1−e:1’,2’−g][1,4]ジオキソシン(2.00g、4.25mmol)を、窒素下、トリエチルアミン(6ml)およびTHF(10ml)中で攪拌する。触媒量のPdCl(PPhおよびCuIを加え、反応物を80℃で攪拌する。THF(10ml)中の4−ペンチン−1−オール(0.75g、8.93mmol)を3時間かけて非常にゆっくりと加え、確実に反応が完結するよう追加として蒸発した溶媒のTHFおよびトリエチルアミンおよび4−ペンチン−1−オール(1.00ml、11.89mmol)、PdCl(PPhおよびCuIを加えて、反応物を48時間攪拌する。時間が経過すると、溶液の色が茶色に濃くなる。完了し、溶液をDCMで希釈し、水中に投入する。層を分離し、DCMで抽出し(2回)、有機物を混合し、食塩水で洗浄し(2回)、硫酸ナトリウム上で乾燥し、過剰の溶媒を真空中で取り除き、黄色/茶色のオイルを得て、フラッシュマスターカラムクロマトグラフィー(SiO、100%DCM、60%DCM/酢酸エチルまで走らせる)により精製し、一置換および二置換生成物の両者を得る。生成物をフラッシュマスターカラムクロマトグラフィー(SiO、石油エーテル中40%酢酸エチル、プロパノールを通す前に100%酢酸エチルまで走らせる)により精製し、クリーム色のオイルを得る(0.77g、1.62mmol、38%)。
【0187】
<3−クロロ−プロピオン酸3−(4−クロロカルボニル−フェノキシ)−プロピルエステル>
【0188】
【化29】

HPBA−3−クロロプロピオネート(5.00g、17.44mmol)を、DCM(160ml)中に溶解する。NMP(0.5ml、5.04mmol)を加え、完全に溶解するまで窒素下で材料を攪拌する。塩化チオニル(2.49g、20.93mmol)を加え、反応物を窒素下で一晩35℃で攪拌する。完了し、反応物は透明な黄色となり、過剰な溶媒を真空で取り除き、濃黄色なオイルを得る(6.02g、19.73mmol、113%(NMPを含む))。
【0189】
H NMRおよびFT−IRは、期待されるシグナルを与える。
【0190】
<例9>
下に記載するように、化合物(9)を調製する。
【0191】
<(S)−6,6’−(4,5−ジヒドロジナフト[2,1−e:1’,2’−g][1,4]ジオキソシン−10,15−ジイル)ビス(ペンタ−4−イン−5,1−ジイル)ビス(4−(3−(アクリロイルオキシ)プロポキシ)ベンゾエート)>
【0192】
【化30】

(S)−5,5’−(4,5−ジヒドロジナフト[2,1−e:1’,2’−g][1,4]ジオキソシン−10,15−ジイル)ジペンタ−4−イン−1−オール(0.77g、1.62mmol)および3−クロロ−プロピオン酸3−(4−クロロカルボニル−フェノキシ)−プロピルエステル(1.18g、3.39mmol(含有量88%))をDCM(60ml)中に溶解し、窒素下で攪拌する。白いHClガスを蒸発させながらトリエチルアミン(1.96ml、19.39mmol)をゆっくりと加え、反応物を35℃に加熱し、一晩攪拌する。完了し、反応混合物を室温まで冷却し、DCMで希釈し、水中に投入する。層を分離し、有機相を一緒に合わせる前にDCMで抽出し(2回)、食塩水で洗浄し(3回)、硫酸ナトリウム上で乾燥する。過剰の溶媒を真空中で取り除き、茶色のオイル(1.36g)として生成物を得て、HPLCによれば純度28%である。粗生成物をフラッシュマスターカラムクロマトグラフィー(SiO、20%酢酸エチル/石油エーテル)により精製するが、しかしながら全ての材料が一緒に溶出し、しかし茶色い色は取り除かれるので画分を再び混合する。分取HPLC(80ml/分、アセトニトリル中50%水で5分間、アセトニトリル100%まで15分で行う)で生成物を再び精製し、黄色味がかった白色の固体を得る(0.29g、0.31mmol、19%)。
【0193】
融点33℃。H NMRおよび13C NMRは、期待されるシグナルを与える。
【0194】
HTP=15(BLO87中10%濃度で、右手方向の捩れを与える)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、
およびRは、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF、または直鎖状、分岐状または環状で1〜30個のC原子を有するアルキル、アリールまたはヘテロアリールを表し(ただしこれらの基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい)、または、−(Z−A−RまたはP−Sp−を表し、
およびRは、それぞれ互いに独立に、Rの意味の1つを有し、
は、H、F、Cl、Br、I、CN、NCS、SF、または直鎖状または分岐状で1〜30個のC原子を有するアルキル(F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。)であり、または、P−Sp−を表し、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサー基または単結合であり、
は、複数存在する場合は互いに独立に、芳香族または脂環式基であり、N、OおよびSより選択されるヘテロ原子を1個以上含んでいてもよく、Rで一置換または多置換されていてもよく、
は、複数存在する場合は互いに独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−S−CO−、−CO−S−、−O−COO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−(CH−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−CY=CY−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−または単結合を表し、
およびR00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルを表し、
およびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNを表し、
mは、0、1、2、3または4であり、
nは、2〜5の整数であり、
ただし、nが3で全てのRおよびRがHの場合、RおよびRは4−シアノフェニルではないことを条件とする。)
【請求項2】
P−SpであるR、RまたはRを少なくとも1個含むことを特徴とする請求項1記載の化合物。
【請求項3】
nは2、3、4または5であり、RおよびRは1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシであるか、または、1個以上の基CRはCH−(Z−A−Rを表し、R、Z、Aおよびmは請求項1に定義される通りであることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
−(Z−A−が、以下の式およびそれらの鏡像より選ばれることを特徴とする請求項1ないし3の一項以上に記載の化合物。
【化2.1】

【化2.2】

(ただし、Lは請求項1中のRの意味の1つを有し、Zは請求項1中のZの意味の1つを有し、rは0、1、2、3または4である。)
【請求項5】
以下の式より選ばれることを特徴とする請求項1ないし4の一項以上に記載の化合物。
【化3.1】

【化3.2】

(ただし、
R’およびR”は、請求項1で与えられるRの意味の1つを有し、
R”’はP−Sp−であるか、請求項1で与えられるRの意味の1つを有し、
R””はP−Sp−であるか、請求項1で与えられるRの意味の1つを有し、
Zは、請求項1で与えられるZの意味の1つを有し、
Aは、請求項1で与えられるAの意味の1つを有する。)
【請求項6】
以下の式より選ばれることを特徴とする請求項1ないし5の一項以上に記載の化合物。
【化4.1】

【化4.2】

【化4.3】

【化4.4】

【化4.5】

(ただし、R’およびPは、前記請求項で定義される通りであり、
Sp’は1〜20個のC原子を有するアルキレンであり、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ここで1個以上の隣接していないCH基は、Oおよび/またはS原子が互いに直接結合しないようにして、それぞれの場合に互いに独立に、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、
alkylは、1〜12個のC原子を有するn−アルキルである。)
【請求項7】
請求項1ないし6の一項以上に記載の化合物を少なくとも1種類含むことを特徴とする液晶混合物。
【請求項8】
液晶相および/または配向状態で、請求項1ないし7の一項以上に記載の化合物または混合物を重合して得られる高分子または異方性高分子フィルム。
【請求項9】
電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、補償子、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、有色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、化粧品、診断剤、非線形光学、光学的情報記憶装置、電子装置、有機半導体、電界効果トランジスター(FET)、集積回路(IC)の部品、薄膜トランジスター(TFT)、無線ID(RFID)タグ、有機発光ダイオード(OLED)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、照明装置、光起電装置、センサー装置、電極材料、光伝導体、電子写真記録、レーザー材料または装置中におけるか、またはキラルドーパントとしての請求項1ないし8の一項以上に記載の化合物、混合物、高分子または高分子フィルムの使用。
【請求項10】
請求項1ないし8の一項以上に記載の化合物、混合物、高分子または高分子フィルムを含有する液晶ディスプレイ、カラーフィルター、偏光子、位相差フィルム、配向層、認証、検証またはセキュリティーマーク、有色画像、有価物または証券。
【請求項11】
a)ビナフトールを臭素と反応させ、
b)中間体6,6’−ジブロモ−[1,1’]ビナフタレニル−2,2’−ジオールをアルキルジトシレートおよび炭酸カリウムと反応させ、
c)得られる閉環中間体を芳香族アセチレン化合物と、塩基、および触媒量の銅塩およびパラジウム触媒の存在下で反応させ、所望の生成物を形成する
ことによる請求項1ないし6の一項以上に記載の化合物を調製する方法。

【公表番号】特表2009−514799(P2009−514799A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532638(P2008−532638)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009134
【国際公開番号】WO2007/039105
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】