説明

キレート交換樹脂

本発明は、カルボキシル基さらには−(CHNR基を含み改良された交換速度論的挙動および選択性を示す新規なイオン交換体と、その作製方法と、さらには金属(それに酸化鉄/オキシ水酸化鉄が追加的に担持されたときは、とくにヒ素)を吸着させるためのその使用と、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも含み改良された交換速度論的挙動および選択性を示す新規なイオン交換体(これ以降ではキレート交換樹脂と記す)と、その製造方法と、さらにはその使用と、に関する。ただし、mは、1〜4の整数であり、かつ
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0002】
【化1】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、かつ
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0003】
【化2】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、かつ
は、HまたはNaまたはKである。
【背景技術】
【0004】
産業で使用される多くの方法により、重金属または価値ある物質を含有する多量の水性物質ストリームが生成される。これらには、残留量の重金属を含有する電気メッキ廃水が包含される。これらにはまた、ニッケルのような重金属が硫酸水溶液中に存在してなる鉱山からの水性物質ストリームが包含される。
【0005】
銅の抽出では、プロセス工程において、アンチモン、ビスマス、またはヒ素のような物質を含有する硫酸銅溶液が電解される。これらの副次成分の量は、電解プロセスを妨害しないように少量に保持されなければならない。
【0006】
妨害性重金属を除去したりまたは価値ある物質を抽出したりするために、種々の方法が利用される。とくに、液/液抽出法によりまたはビーズ形態のイオン交換体を用いることにより(とくに、キレート形成性基を有するイオン交換体を用いて)、物質が除去される。
【0007】
これを行うには、溶液からビーズ内部へのイオンの迅速な拡散さらにはキレート形成性基への迅速な結合/錯化を可能にするイオン交換体が必要になる。
【0008】
改良された交換速度論的挙動を示すイオン交換体を製造しようとする努力が、これまでになされてきた。
【0009】
(特許文献1)には、改良された交換速度論的挙動を示す陰イオン交換体さらにはキレート交換樹脂が記載されている。
【0010】
この場合、陰イオン交換体は、ハロアルキル化架橋ビーズポリマーをアミンと二段階で反応させることにより製造される。最初に、ジメチルアミンのようなアミンとの反応により、容易に接近可能なビーズの外部領域に主に位置するハロアルキル化部位を弱塩基性基に転化させる。続いて、トリメチルアミンのようなアミンとの反応により、それほど容易に接近可能でないビーズ領域を強塩基性基に転化させる。交換体は、分離対象種の拡散経路が短縮されることによりさらにはビーズ内部に位置する強塩基性基に基づいて拡散が改良されることにより、改良された交換速度論的挙動を示すようになると記されている。(特許文献1)によれば、弱塩基性および強塩基性のピコリルアミン構造を有するキレート交換樹脂もまた、この方式で製造される。
【0011】
(特許文献1)に記載されている方法では、存在する公知のビーズポリマーを公知の方法でハロアルキル化してからこれらのハロアルキル化部位を異なる方式でさらに官能化することにより、交換過程の速度論的挙動を改良する。
【0012】
交換速度論的挙動を改良するためのこの手順には、さまざまな欠点がある。
【0013】
後続段階で官能化された状態でイオン交換体の大部分を構成する(したがって、かなり実質的に速度論的挙動に影響を及ぼす)ビーズポリマーは、モルホロジーが改良されない。ビーズの細孔構造は、最適化されない。
【0014】
交換速度論的挙動の改良は、もっぱらハロアルキル化ビーズポリマーの後続の官能化を介して進められる。この官能化は、公知の方法と比較して異なる形で構成され、単にビーズ直径が異なる分布を示すにすぎない公知の物質を用いて行われる。したがって、効果が非常に限られたものになる。二段階の(したがって複雑な)官能化が行われるので、実際問題として不利である。
【0015】
したがって、分離除去されるイオンに関して改良された交換速度論的挙動および選択性を呈し、さらには高い機械的および浸透圧的安定性を有し、カラム法において圧力低下が少なく、摩耗することがなく、しかも先行技術に基づくイオン交換体よりも圧力低下が有意に少ないビーズ形態の新規なイオン交換体が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5141965号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、液体(好ましくは水性媒体)またはガスから物質(好ましくは多価カチオン)を除去するための上記の要求特性を備えたイオン交換樹脂を提供することさらにはその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも含む新規なイオン交換体の製造方法に関する。この方法は、
a)モノビニル芳香族化合物と、ポリビニル芳香族化合物と、(メタ)アクリル系化合物と、開始剤または開始剤の組合せと、さらには適切であればポロゲンと、よりなる混合物のモノマードロップレットを反応させて、架橋ビーズポリマーを形成することと、
b)得られたビーズポリマーをキレート形成性基により官能化し、かつこの工程で共重合(メタ)アクリル系化合物を反応させて(メタ)アクリル酸基を形成することと、
mが、1〜4の整数であることと、
が、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0018】
【化3】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であることと、
が、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0019】
【化4】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であることと、
が、HまたはNaまたはKであることと、
を特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
重合後、ビーズポリマーを従来の方法により(たとえば濾過または傾瀉により)単離し、適切であれば1回以上洗浄した後で乾燥させ、そして所望により篩い分けることが可能である。
【0021】
驚くべきことに、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも含む本発明に従って製造されるキレート交換樹脂は、先行技術と比較して、改良された交換速度論的挙動および選択性を呈する。
【0022】
本発明に係るイオン交換体は、単分散型だけでなく、不均一分散型、ゲル型、さらにはマクロポーラス型でありうる。
【0023】
方法工程a)において考慮に入れられる本発明の意味内の混合物は、たとえば、モノビニル芳香族化合物とポリビニル芳香族化合物とさらには(メタ)アクリル系化合物とよりなる混合物である。
【0024】
好ましくは、方法工程a)において、本発明の意味内のモノビニル芳香族化合物として、たとえば、スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレンのようなモノエチレン性不飽和化合物を使用する。
【0025】
とくに好ましくは、スチレンまたはスチレンと上述のモノマーとの混合物を使用する。
【0026】
方法工程a)に供される本発明の意味内の好ましいポリビニル芳香族化合物は、たとえば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルナフタレン、1,7−オクタジエン、1,5−ヘキサジエン、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、またはジエチレングリコールジビニルエーテルのような多官能性エチレン性不飽和化合物である。
【0027】
ポリビニル芳香族化合物は、全モノマーの合計量を基準にして、一般的には1〜20重量%、好ましくは2〜12重量%、とくに好ましくは4〜10重量%の量で使用される。ポリビニル芳香族化合物(架橋剤)のタイプは、ビーズ型ポリマーの後使用に基づいて選択されている。
【0028】
ジビニルベンゼンは、多くの場合に好適である。
【0029】
ジビニルベンゼンの異性体に加えてエチルビニルベンゼンをも含有する市販のジビニルベンゼンの品質グレードは、ほとんどの用途に好適である。
【0030】
本発明の意味内の(メタ)アクリル系化合物は、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸などのようなモノエチレン性不飽和化合物である。好ましいのは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、またはアクリロニトリルである。
【0031】
とくに、本発明では、好ましくはアクリロニトリルまたはメチルアクリレートを使用する。
【0032】
(メタ)アクリル系化合物は、全モノマーの合計量を基準にして、一般的には1〜30重量%、好ましくは1〜10重量%の量で使用される。
【0033】
適切であればマイクロカプセル化されたモノマードロップレットは、重合を開始するために開始剤または開始剤の混合物を含む。本発明の方法に好適な開始剤は、たとえば、ベンゾイルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ビス(p−クロロベンゾイルペルオキシド)、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオクトエート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジピバロイル−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(2−ネオデカノイルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ジ−tert−ブチルペルオキシアゼレート、ジ−tert−アミルペルオキシアゼレート、tert−ブチルペルオキシアセテート、またはtert−アミルペルオキシオクトエートのようなペルオキシ化合物、さらには2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)または2,2’−アゾビス(2−メチルイソブチロニトリル)のようなアゾ化合物である。
【0034】
開始剤は、全モノマーの合計量を基準にして、一般的には0.05〜2.5重量%、好ましくは0.1〜1.5重量%の量で使用される。
【0035】
適切であればマイクロカプセル化されたモノマードロップレット中のさらなる添加剤として、適切であればポロゲンを使用して、ビーズポリマー中にマクロポーラス構造を形成することが可能である。これに好適な物質は、得られるポリマーをわずかに溶解するかまたは膨潤させる有機溶媒である。例として挙げられうるのは、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、イソドデカン、メチルエチルケトン、ブタノール、またはオクタノール、およびそれらの異性体である。
【0036】
ポロゲンを使用するかに依存して、ビーズポリマーは、ゲル型またはマクロポーラス型の形態で製造可能である。
【0037】
マイクロポーラス型またはゲル型またはマクロポーラス型という用語については、専門家の文献(ザイドル(Seidl)ら著、高分子化学の進歩(Adv.Polym.Sci.)、第5号(1967年)、p.113−213を参照されたい)中に十分に記載されている。
【0038】
方法工程a)により調製される本発明に係る好ましいビーズポリマーは、マクロポーラス構造を有する。
【0039】
本発明に係るビーズポリマーは、不均一分散または単分散の形態をとりうる。後者の場合、単分散ビーズポリマーを製造するために、公知の方法(とくに、噴霧および篩分け分別)を使用することが可能である。
【0040】
本出願では、分布曲線の均一係数が1.2以下である物質は、単分散として記載される。均一係数は、サイズd60とサイズd10との商である。d60は、分布曲線においてそのサイズ未満の物質が60質量%でありかつそのサイズ以上の物質が40質量%であるときの直径を記述する。d10は、分布曲線においてそのサイズ未満の物質が10質量%でありかつそのサイズ以上の物質が90質量%であるときの直径を示す。
【0041】
方法工程a)に基づく単分散架橋ビニル芳香族ビーズポリマーは、モノビニル芳香族化合物とポリビニル芳香族化合物とさらには開始剤または開始剤混合物と適切であればポロゲンとよりなる単分散の適切であればカプセル化されたモノマードロップレットを使用することにより、製造可能である。好適な方法については、米国特許第4444961号明細書、EP−A−0046535号明細書、米国特許第4419245号明細書、国際公開第93/12167号パンフレットに記載されている。重合前、適切であればカプセル化されたモノマードロップレットは、(メタ)アクリル系化合物でドープされ、次に、重合される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、方法工程a)においてマイクロカプセル化モノマードロップレットを使用する。
【0043】
モノマードロップレットをマイクロカプセル化する場合、複合コアセルベートとして使用されることが公知である物質、とくに、ポリエステル、天然もしくは合成のポリアミド、ポリウレタン、ポリウレアが考慮に入れられる。
【0044】
天然ポリアミドとして、たとえば、ゼラチンは、とりわけ好適である。それは、とくに、コアセルベートまたは複合コアセルベートとして使用される。本発明の意味内のゼラチン含有複合コアセルベートは、とくに、ゼラチンと合成高分子電解質との組合せを意味するものとする。好適な合成高分子電解質は、たとえば、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、またはメタクリルアミドの単位を組み入れてなるコポリマーである。とくに好ましくは、アクリル酸またはアクリルアミドを使用する。ゼラチン含有カプセルは、たとえば、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドのような従来の硬化剤を用いて硬化させることが可能である。ゼラチン、ゼラチン含有コアセルベート、またはゼラチン含有複合コアセルベートを用いるモノマードロップレットのカプセル化については、EP−A0046535号明細書中に詳細に記載されている。合成ポリマーを用いるカプセル化の方法は、公知である。非常に好適な方法は、たとえば、界面縮合であり、その場合、モノマードロップレット中に溶解された反応性成分(たとえば、イソシアネートまたは酸クロリド)を、水性相中に溶解された第2の反応性成分(たとえば、アミン)と反応させる。
【0045】
a)に基づいて調製されたビーズポリマーは、方法工程b)に基づく官能化により反応させると、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも含むキレート交換樹脂を形成する。
【0046】
フタルイミド法によるビーズポリマーの官能化は、たとえば、米国特許第4952608号明細書、DAS2519244号明細書、またはEP−A1078690号明細書に準拠して実施可能である。
【0047】
他の方法により、ビーズポリマーを官能化させることも可能である。たとえば、クロロメチル化およびアミンとの後続反応により、アミノメチル化コポリマーを得ることが可能であり、これを好適なカルボキシル含有化合物(たとえば、クロロ酢酸)と反応させることにより、イミノ二酢酸タイプのキレート樹脂を形成することが可能である(米国特許第4444961号明細書、米国特許第5141965号明細書を参照されたい)。
【0048】
方法工程b)に記載されているようなフタルイミド法によるビーズポリマーの官能化では、ビーズポリマーとフタルイミド誘導体とを縮合させる。この場合の触媒としては、オレウム、硫酸、または三酸化硫黄が使用される。
【0049】
フタル酸基の脱離すなわち−(CHNH基の露出は、100〜250℃、好ましくは120〜190℃の温度で水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物の水性またはアルコール性の溶液でフタルイミドメチル化架橋ビーズポリマーを処理することにより、方法工程b)で行われる。水酸化ナトリウム溶液の濃度は、10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲内である。この方法により、1超の芳香核置換を有するアミノアルキル含有架橋ビーズポリマーを生成することが可能である。
【0050】
得られたアミノメチル化ビーズポリマーを最後に脱塩水で洗浄して、アルカリが含まれないようにする。
【0051】
使用される強酸性または強アルカリ性の反応条件では、フタルイミドメチル化に加えて、ポリマー中の(メタ)アクリル系化合物もまた、(メタ)アクリル酸単位に転化される。
【0052】
しかしながら、方法工程b)における官能化はまた、クロロメチル化法により行うことも可能であり、この場合には、懸濁状態のアミノメチル含有単分散架橋ビニル芳香族ベースポリマーを、最終的に機能性アミンとしてキレート形成性を呈する化合物と、反応させることにより、本発明に係るイオン交換体が生成される。
【0053】
その際、好ましい試薬として、クロロ酢酸もしくはその誘導体、P−H酸(改変マンニッヒ反応による)化合物(たとえば、亜リン酸、モノアルキル亜リン酸エステル、ジアルキル亜リン酸エステル)と組み合わされたホルマリン、S−H酸化合物(たとえば、チオグリコール酸、アルキルメルカプタン、L−システイン)と組み合わされたホルマリン、またはヒドロキシキノリンもしくはその誘導体と組み合わされたホルマリンを、方法工程b)で使用する。
【0054】
とくに好ましくは、クロロ酢酸、または亜リン酸のようなP−H酸化合物と組み合わされたホルマリンを使用する。
【0055】
懸濁媒質として、水または鉱酸水溶液、好ましくは、水、塩酸水溶液、または硫酸水溶液を、10〜40重量%、好ましくは20〜35重量%の濃度で使用する。
【0056】
本発明はさらに、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも含んで本発明の方法により製造されるキレート交換樹脂に関する。該キレート交換樹脂は、
a)モノビニル芳香族化合物と、ポリビニル芳香族化合物と、(メタ)アクリル系化合物と、開始剤または開始剤の組合せと、さらには適切であればポロゲンと、よりなる混合物のモノマードロップレットを反応させて、架橋ビーズポリマーを与えることと、
b)得られたビーズポリマーをキレート形成性基により官能化し、かつこの工程で共重合(メタ)アクリル系化合物を反応させて(メタ)アクリル酸基を形成することと、
により取得可能である。ただし、
mは、1〜4の整数であり、
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0057】
【化5】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0058】
【化6】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、そして
は、HまたはNaまたはKである。
【0059】
好ましくは、本発明の方法により、カルボキシル基と−(CHNR基とを有する一般式(I)で示されるイオン交換体が生成される。このイオン交換体は、方法工程b)の間に生成される。
【0060】
【化7】

〔式中、
x=0.01〜0.3、
y=0.7〜0.99、
z=0.01〜0.2、
Aは、HまたはC〜C−アルキル、好ましくはCHであり、
は、HまたはNaまたはKであり、
mは、1〜4の整数であり、
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0061】
【化8】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、そして
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0062】
【化9】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基である〕
【0063】
式(I)中、
【0064】
【化10】

は、ポリマー主鎖を示し、たとえば、スチレン単位とジビニルベンゼン単位とから生成される。
【0065】
カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも有する本発明に係るキレート交換樹脂は、好ましくはマクロポーラス構造を呈する。
【0066】
本発明に従って製造されるキレート交換樹脂は、金属、とくに重金属および貴金属、ならびにそれらの化合物を、水溶液および有機液体から吸着させるのに好適である。カルボキシル基を有しさらにキレート形成性基をも有する本発明に従って製造されるイオン交換体は、水溶液からの重金属の除去、たとえば、汚染水の精製(地下水浄化)にとくに好適である。それらはまた、水溶液(酸性、中性、またはアルカリ性のpHを有する)から、とくに、アルカリ土類金属またはアルカリ金属の水溶液から、クロロアルカリ電解のブラインから、塩酸水溶液から、廃水もしくは排煙洗液から、あるいはそのほかに、液状もしくはガス状の炭化水素、カルボン酸(たとえば、アジピン酸、グルタル酸、もしくはコハク酸)、天然ガス、天然ガスコンデンセート、石油、またはハロゲン化炭化水素(たとえば、塩素化炭化水素もしくはフッ素化炭化水素またはクロロフルオロカーボン)から、貴金属を除去するためにも使用される。しかしながら、本発明に係るイオン交換体はまた、電解処理(たとえば、アクリロニトリルの二量化によるアジポニトリルの生成)時に反応させる物質から重金属(とくに、鉄、カドミウム、または鉛)を除去するうえでも好適である。
【0067】
本発明に従って製造されるイオン交換体は、水銀、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、カドミウム、マンガン、ウラン、バナジウム、白金族元素、さらには、金または銀を、以上に列挙された溶液、液体、またはガスから除去するのにとりわけ適している。
【0068】
本発明によれば、酸化状態+IIIで存在しうる金属を銅の硫酸溶液から除去することがとくに好ましい。この群に含まれる好ましい金属は、アンチモン、ビスマス、ヒ素、コバルト、ニッケル、モリブデン、または鉄であり、なかでもとくに好ましいのは、アンチモン、ビスマス、およびモリブデンである。
【0069】
しかしながら、とくに、本発明に係るイオン交換体はまた、ロジウムもしくは白金族元素、さらには金、銀、またはロジウム含有もしくは貴金属含有触媒残留物を、有機溶液または有機溶媒から除去するうえでも好適である。
【0070】
酸化鉄/オキシ水酸化鉄をドープまたは担持するプロセスに本発明に係るキレート交換樹脂を供すれば、これにより、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも有する酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体が製造される。したがって、本発明はまた、カルボキシル基と−(CHNR基とを保有する酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有イオン交換体の製造方法に関する。該方法は、
A’)カルボキシル基と−(CHNR基とを保有するビーズ型イオン交換体を水性懸濁状態で鉄(III)塩に接触させることと、
B’)アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を添加することにより、段階A’)から得られた懸濁液を3〜10の範囲内のpHに設定し、得られた酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持キレート交換樹脂を公知の方法により単離することと、
を特徴とする。
【0071】
したがって、本発明はまた、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも含む酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持イオン交換体に関する。該酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持イオン交換体は、
a)モノビニル芳香族化合物と、ポリビニル芳香族化合物と、(メタ)アクリル系化合物と、開始剤または開始剤の組合せと、さらには適切であればポロゲンと、よりなる混合物のモノマードロップレットを反応させて、架橋ビーズポリマーを与えることと、
b)得られたビーズポリマーをキレート形成性基により官能化させ、かつこの工程で共重合(メタ)アクリル系化合物を反応させて(メタ)アクリル酸基を形成することと、
A’)カルボキシル基と−(CHNR基とを保有するビーズ型イオン交換体を水性懸濁状態で鉄(III)塩に接触させることと、
B’)アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を添加することにより、段階A’)から得られた懸濁液を3〜10の範囲内のpHに設定し、得られた酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持キレート交換樹脂を公知の方法により単離することと、
により取得可能である。ただし、
mは、1〜4の整数であり、
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0072】
【化11】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【0073】
【化12】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、そして
は、HまたはNaまたはKである。
【0074】
本発明に係るキレート交換樹脂の場合、工程A’)およびB’)は、適切であれば、交互に反復して行うことが可能である。鉄(III)塩の代わりに鉄(II)塩を使用することも可能であり、その場合には、公知の酸化法により反応媒体中で完全にまたは部分的に酸化させて鉄III塩を形成するようにする。水酸化鉄/オキシ水酸化鉄を充填するために本発明に従って使用される方法については、たとえば、DE−A10327110号明細書(その内容は、本出願に援用されるものとする)に記載されている。
【0075】
カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも有し酸化鉄/オキシ水酸化鉄でドープされたキレート交換樹脂は褐色であり、重金属(好ましくはヒ素)の吸着にきわめて特異的な酸化鉄/オキシ水酸化鉄相の生成により先行技術と明確に区別される。
【0076】
本発明によれば、不均一分散または単分散の本発明に係るキレート交換樹脂を使用することが可能である。
【0077】
したがって、本発明はまた、ヒ素、コバルト、ニッケル、鉛、亜鉛、カドミウム、または銅を吸着させるための、カルボキシル基だけでなく−(CHNR基をも有する酸化鉄/オキシ水酸化鉄ドープイオン交換体の使用と、さらには本発明に係る酸化鉄/オキシ水酸化鉄ドープキレート交換樹脂を用いてこれらの金属を吸着させる方法と、に関する。
【0078】
[実施例]
試験方法
キレート形成性基の量すなわち樹脂の全容量(TC)の決定
100mlのイオン交換体をフィルターカラムに詰め込み、濃度3重量%の塩酸を用いて1.5時間で溶出させる。次に、流出物が中性になるまで、カラムを脱塩水で洗浄する。
【0079】
カラム中で50mlの再生イオン交換体に0.1n水酸化ナトリウム溶液(=0.1規定の水酸化ナトリウム溶液)を加える。いずれの場合にも、流出物を250mlメスフラスコ中に捕集し、メチルオレンジを指示薬として1n塩酸により全量を滴定する。
【0080】
250mlの流出物が24.5〜25mlの1n塩酸消費量を有するようになるまで、溶液を加える。試験終了後、Na形のイオン交換体の体積を決定する。
全容量(TC)=(X・25−ΣV)・2・10−2(mol/l(イオン交換体)単位)
X=流出物画分の数
ΣV=流出物滴定時の1n塩酸の全消費量(ml単位)。
【0081】
製造後の完全ビーズ数
100個のビーズを顕微鏡下で観察する。亀裂を有するかまたは破損を呈するビーズの数を決定する。100から損傷ビーズ数を引き算することにより、完全ビーズ数を求める。
【0082】
ローラー試験による樹脂安定性の決定
試験対象のビーズポリマーを2枚のプラスチッククロス間に均一な層厚さで分布させる。水平に取り付けられた固形支持体上にクロスを置いて、ローラー装置により20回の動作サイクルにかける。動作サイクルは、ローラー掛けを往復で行うことよりなる。ローラー掛けの後、100個のビーズよりなる代表サンプルを用いて顕微鏡下で計数することにより非損傷ビーズ数を決定する。
【0083】
膨潤安定性試験
25mlの塩化物形のキレート交換樹脂をカラムに詰め込む。順次、濃度4重量%の水酸化ナトリウム水溶液、脱塩水、濃度6重量%の塩酸、および再び脱塩水を、カラムに加える。ただし、水酸化ナトリウム溶液および塩酸は、上部から樹脂に通して貫流させ、脱塩水は、底部から樹脂にポンプ送液して貫流させる。処理は、コントローラーを介して時間制御下で進行する。1回の動作サイクルは、1時間継続する。20回の動作サイクルを行う。動作サイクルの終了後、樹脂サンプルの100個のビーズを計数する。亀裂または破損による損傷を受けていない完全ビーズの数を決定する。
【0084】
(EP−A−0355007号明細書に対応するバッチの比較例)
1)(メタ)アクリル系化合物が添加されていない不均一分散キレート樹脂の作製
1a)ビーズポリマーの作製
重合反応器中に、室温で、1112mlの脱塩水、150mlの濃度2重量%のメチルヒドロキシエチルセルロース水溶液、さらには7.5gのリン酸水素二ナトリウム・12HOを仕込む。全溶液を室温で1時間攪拌する。続いて、95.37gのジビニルベンゼン(濃度80.53重量%)と、864.63gのスチレンと、576gのイソドデカンと、7.70gのベンゾイルペルオキシド(濃度75重量%)と、よりなるモノマー混合物を添加する。最初に、バッチを室温で20分間放置し、次に、200rpm(毎分回転数)のスターラー速度で室温で30分間攪拌する。バッチを70℃まで加熱し、70℃でさらに7時間攪拌し、次に、95℃まで加熱し、そして95℃でさらに2時間攪拌する。冷却後、得られたビーズポリマーを濾別し、水で洗浄し、そして80℃で48時間乾燥させる。
【0085】
1b)アミドメチル化ビーズポリマーの作製
室温で、1117mlの1,2−ジクロロエタン、414.5gのフタルイミド、および292.5gの濃度30重量%のホルマリンを仕込む。水酸化ナトリウム溶液を用いて懸濁液のpHを5.5〜6に設定する。続いて、水を蒸留により除去する。次に、30.4gの硫酸を添加する。生成した水を蒸留により除去する。バッチを冷却する。30℃で、131.9gの濃度65重量%のオレウムを添加し、続いて、320.1gの不均一分散ビーズポリマー〔方法工程1a)で得られたもの〕を添加する。懸濁液を70℃まで加熱し、この温度でさらに6時間攪拌する。反応液を取り除き、脱塩水を添加し、残留量のジクロロエタンを蒸留により除去する。
アミドメチル化ビーズポリマーの収量:1310ml
元素分析による組成:炭素:78.1重量%;水素:5.2重量%;窒素:4.8重量%
【0086】
1c)アミノメチル化ビーズポリマーの作製
2176mlの濃度20重量%の水酸化ナトリウム溶液を1280mlのアミドメチル化ビーズポリマー〔実施例2b)で得られたもの〕に室温で添加する。懸濁液を180℃まで加熱し、この温度で8時間攪拌する。得られたビーズポリマーを脱塩水で洗浄する。
収量:990ml
元素分析による組成:炭素:81.9重量%;水素:7.7重量%;窒素:7.1重量%;
樹脂のアミノメチル基含有量:2.14mol/l
【0087】
1d)アミノメチル化樹脂からイミノ二酢酸基を有するキレート樹脂への転化
927mlの脱塩水を反応器に入れる。これに880mlのアミノメチル化ビーズポリマー〔実施例2c)で得られたもの〕を添加する。懸濁液を90℃まで加熱する。次に、90℃で400gの濃度80重量%のクロロ酢酸水溶液を4時間で添加する。この場合、pH9.2の濃度50重量%の水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、pHを保持する。続いて、懸濁液を95℃まで加熱する。濃度50重量%の水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、pHを10.5に設定する。溶液を95℃およびpH10.5でさらに6時間攪拌する。懸濁液を冷却させ、樹脂を篩に通して濾別する。続いて、脱塩水で洗浄する。
収量:1280ml
元素分析による組成:炭素:67.2重量%;水素:6.0重量%;窒素:4.6重量%
キレート形成性基の量:1.97mol/l
樹脂安定性および細孔体積に関する値を表1にまとめる。
ニッケルイオンの取込み容量に関する値を表2にまとめる。
【0088】
実施例2(本発明に係る)
2)アクリル酸基を追加的に有する不均一分散キレート樹脂の作製
2a)ビーズポリマーの作製
重合反応器中に、室温で、1112mlの脱塩水、150mlの濃度2重量%のメチルヒドロキシエチルセルロース水溶液、さらには7.5gのリン酸水素二ナトリウム・12HOおよび0.2gのレゾルシノールを仕込む。全溶液を室温で1時間攪拌する。続いて、96.19gのジビニルベンゼン(濃度79.84重量%)と、806.2gのスチレンと、576gのイソドデカンと、58.18gのメチルアクリレートと、7.50gのジベンゾイルペルオキシド(濃度75重量%)と、よりなるモノマー混合物を添加する。最初に、バッチを室温で20分間放置し、次に、200rpmの攪拌速度で室温で30分間攪拌する。バッチを70℃まで加熱し、70℃でさらに7時間攪拌し、次に、95℃まで加熱し、そして95℃でさらに2時間攪拌する。冷却後、得られたビーズポリマーを濾別し、水で洗浄し、80℃で48時間乾燥させる。
収量:960.5gのビーズポリマー
【0089】
2b)アミドメチル化ビーズポリマーの作製
室温で、1117mlの1,2−ジクロロエタン、414.5gのフタルイミド、および297.6gの濃度29.0重量%のホルマリンを仕込む。水酸化ナトリウム溶液を用いて懸濁液のpHを5.5〜6に設定する。続いて、水を蒸留により除去する。次に、30.4gの硫酸を添加する。生成した水を蒸留により除去する。バッチを冷却する。30℃で、131.9gの濃度65%のオレウムを添加し、続いて、320.1gの不均一分散ビーズポリマー〔方法工程2a)で得られたもの〕を添加する。懸濁液を70℃まで加熱し、この温度でさらに6時間攪拌する。反応液を取り除き、脱塩水を添加し、ジクロロエタン残留物を蒸留により除去する。
アミドメチル化ビーズポリマーの収量:1570ml
元素分析による組成:炭素:76.7重量%;水素:5.2重量%;窒素:5.0重量%
【0090】
2c)アミノメチル化ビーズポリマーの作製
2618mlの濃度20重量%の水酸化ナトリウム溶液を1540mlのアミドメチル化ビーズポリマー〔実施例2b)で得られたもの〕に室温で添加する。懸濁液を180℃まで加熱し、この温度で8時間攪拌する。得られたビーズポリマーを脱塩水で洗浄する。
収量:1350ml
元素分析による組成:炭素:79.5重量%;水素:8.1重量%;窒素:8.8重量%;
樹脂のアミノメチル基含有量:1.71mol/l
【0091】
2d)アミノメチル化樹脂からイミノ二酢酸基と追加的にアクリル酸基とを有するキレート樹脂への転化
1327mlの脱塩水を反応器に仕込む。これに1260mlのアミノメチル化ビーズポリマー〔実施例2c)で得られたもの〕を添加する。懸濁液を90℃まで加熱する。次に、4時間かけて90℃で458.1gの濃度80重量%のクロロ酢酸水溶液を添加する。ここで、濃度50重量%の水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、pHをpH9.2に保持する。続いて、懸濁液を95℃まで加熱する。濃度50重量%の水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、pHを10.5に設定する。それを95℃およびpH10.5でさらに6時間攪拌する。懸濁液を冷却させ、樹脂を篩に通して濾別する。続いて、脱塩水で洗浄する。
収量:2000ml
元素分析による組成:炭素:61.0重量%;水素:5.8重量%;窒素:4.9重量%
キレート形成性基の量:1.98mol/l
樹脂安定性および細孔体積に関する値を表1にまとめる。
ニッケルイオンの取込み容量に関する値を表2にまとめる。
【0092】
実施例3 アクリル酸基を追加的に有する単分散キレート樹脂の作製
3a)単分散アクリロニトリル含有ビーズポリマーの作製
ゲート攪拌機、冷却器、温度検知器、さらにはサーモスタットおよび温度記録計を有する4Lフランジジョイント槽中で、440.4gの脱塩水と、1.443gのゼラチンと、0.107gの無水レゾルシノールと、0.721gのリン酸水素二ナトリウムと、よりなる水性仕込物を作製する。この仕込物に、150rpmで攪拌しながら、500gの水と380μmの均一な粒度を有する500gのマイクロカプセル化モノマードロップレットとの混合物を添加する。このマイクロカプセル化モノマードロップレットは、56.4重量%のスチレンと4.6重量%の80%ジビニルベンゼンと38.5重量%のイソドデカンと開始剤としての0.50重量%のtert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエートとよりなるカプセル内容物と、ゼラチンとアクリルアミド/アクリル酸コポリマーとよりなるホルムアルデヒド硬化複合コアセルベートのカプセル壁と、で構成される。この混合物に18.3gのアクリロニトリルを添加する。その後、硬化させるために、混合物を73℃で6時間、続いて、94℃で2時間加熱する。バッチを32μmの篩上で洗浄し、真空中、80℃で24時間乾燥させる。これにより、1.6%の窒素含有率およびそれから計算される6.1%のアクリロニトリル含有率を有する305gの単分散マクロポーラスポリマーが作製される。
【0093】
3b)アミドメチル化ビーズポリマーの作製
室温で、1370mlの1,2−ジクロロエタン、248.7gのフタルイミド、および174.9gの濃度29.6重量%のホルマリンを仕込む。水酸化ナトリウム溶液を用いて懸濁液のpHを5.5〜6に設定する。続いて、水を蒸留により除去する。次に、18.2gの硫酸を添加する。生成した水を蒸留により除去する。バッチを冷却する。30℃で、79.1gの濃度65%のオレウムを添加し、続いて、190.9gの単分散ビーズポリマー〔方法工程3a)で得られたもの〕を添加する。懸濁液を70℃まで加熱し、この温度でさらに6時間攪拌する。反応液を取り除き、脱塩水を添加し、ジクロロエタンの残留物を蒸留により除去する。
アミドメチル化ビーズポリマーの収量:1160ml
元素分析による組成:炭素:75.8重量%;水素:5.1重量%;窒素:5.5重量%
【0094】
3c)アミノメチル化ビーズポリマーの作製
1140mlのアミドメチル化ビーズポリマー〔実施例3b)で得られたもの〕に1938mlの濃度20重量%の水酸化ナトリウム溶液を室温で添加する。懸濁液を180℃に加熱し、この温度で8時間攪拌する。得られたビーズポリマーを脱塩水で洗浄する。
収量:930ml
元素分析による組成:炭素:78.9重量%;水素:7.9重量%;窒素:7.8重量%;
樹脂のアミノメチル基含有量:1.27mol/l
【0095】
3d)アミノメチル化樹脂からイミノ二酢酸基と追加的にアクリル酸基とを有するキレート樹脂への転化
463mlの脱塩水を反応器に仕込む。これに440mlのアミノメチル化ビーズポリマー〔実施例3c)で得られたもの〕を添加する。懸濁液を90℃まで加熱する。次に、4時間かけて90℃で132gの濃度80重量%のクロロ酢酸水溶液を添加する。この間、濃度50重量%の水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、pHをpH9.2に保持する。続いて、懸濁液を95℃まで加熱する。濃度50重量%の水酸化ナトリウム溶液を添加することにより、pHを10.5に設定する。それを95℃およびpH10.5でさらに6時間攪拌する。
【0096】
懸濁液を冷却させ、樹脂を篩上で濾別する。続いて、脱塩水で洗浄する。
収量:710ml
元素分析による組成:炭素:63.9重量%;水素:5.9重量%;窒素:5.1重量%
キレート形成性基の量:1.62mol/l
樹脂安定性および細孔体積に関する値を表1にまとめる。
ニッケルイオンの取込み容量に関する値を表2にまとめる。
【0097】
実施例4
水溶液からのニッケルイオンの取込みの定量
樹脂のコンディショニング
50mlのキレート樹脂〔実施例1〜4で得られたもの〕をガラスカラムに詰め込む。2時間かけて、5床体積の濃度7重量%の塩酸およびそれに続いて1000mlの脱塩水をフィルターに通す。その後、2時間かけて、最初に6床体積の濃度4重量%の水酸化ナトリウム溶液および続いて10床体積の脱塩水をフィルターに通す。
【0098】
ニッケル取込み容量の試験
溶液1リットルあたり14gのMgClおよび溶液1リットルあたり0.773gのNiClを含む500mlの溶液をガラスビーカー中に仕込む。溶液のpHを4.5に設定する。25mlのコンディショニングされた樹脂を取り出して、溶液に添加し、そして攪拌する。
【0099】
5、10、30、60、および240分後、10mlの溶液を採取し、それらのニッケル含有率を分析する。元の含有率c(o)と比較して、溶液中のニッケル含有率の減少を決定する。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
実施例1は、アクリル系モノマーが添加されていないイミノ二酢酸タイプの不均一分散キレート樹脂の作製を含む。
【0103】
実施例2は、官能化の過程でアクリル酸単位になるメチルアクリレートが添加されたイミノ二酢酸タイプの不均一分散キレート樹脂の作製を含む。
【0104】
実施例3は、官能化の過程でアクリル酸単位になるアクリロニトリルが添加されたイミノ二酢酸タイプの単分散キレート樹脂の作製を含む。
【0105】
アクリル酸基をキレート樹脂に組み込むと、これらの樹脂のモルホロジー(気孔率)および性質(全容量、安定性、樹脂収率)が影響を受ける。
【0106】
最終生成物の収率さらには全気孔率は、実施例1と比較して実施例2および3では有意に増大する。
【0107】
全容量は減少する。なぜなら、最終生成物の収率がより高いことから、官能基量は、より大きい容積にわたり分布していると推定され、しかも全容量は、体積に特有な性質であるからである。
【0108】
アクリル酸基を組み込むと、最初の状態の安定性、ローラー安定性、および膨潤安定性が改良される。
【0109】
表2は、実施例1〜3で作製されたキレート樹脂のニッケル取込み容量を示している。C/C(o)は、初期濃度C(o)と比較したときの特定の時間点(x分)におけるニッケル濃度cの減少率である。
【0110】
3つのすべての実験において、同一量(25ml)のキレート樹脂を使用する。3つの樹脂は顕著に異なる全容量値を呈するので、3つの25ml樹脂量はまた、異なる量のキレート基を含む。
【0111】
25mlの実施例2および3のキレート樹脂は、25mlの実施例1のキレート樹脂よりも全容量が少ないので、より少量のキレート基を含むことになるが、それにもかかわらず、アクリル酸基を追加的に有する実施例2および3で作製されたキレート樹脂は、追加のアクリル酸基を含まない実施例1の樹脂よりもかなり迅速にニッケルイオンを取り込む。
【0112】
実施例5
本発明に係る追加的にアクリル酸を有するイミノ二酢酸タイプの酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持単分散キレート樹脂の作製
400mlのキレート樹脂〔イミノ二酢酸基を有しアクリル酸基を追加的に有する実施例3に従って作製されたもの〕を、1リットルあたり103.5gの塩化鉄(III)と750mlの脱イオン水とを含む750mlの塩化鉄(III)水溶液と混合し、そして室温で2.5時間攪拌する。続いて、濃度10重量%の水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを6に設定し、2時間保持する。
【0113】
その後、イオン交換体を篩上で濾別して、流出物が透明になるまで脱イオン水で洗浄する。
樹脂収量:380ml
担持イオン交換体スフェアのFe含有率を滴定により求めたところ、14.4%であった。
結晶相として、α−FeOOHが粉末回折図から同定されうる。
【0114】
13.1gのイオン交換体(そのうちの約3.0gはFeOOHであった)をNaHAsOの水溶液に接触させ、経時に伴うAs(V)濃度の減少を記録した。
【0115】
【表3】

【0116】
表3は、追加のアクリル酸基を有するイミノ二酢酸タイプの酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持単分散キレート樹脂で処理したときのヒ素(V)濃度の顕著な減少を時間の関数として示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基だけでなく−(CHNR
(式中、
mは、1〜4の整数であり、
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化1】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化2】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、HまたはNaまたはKである)
を含むイオン交換体の製造方法であって、
a)モノビニル芳香族化合物、ポリビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル系化合物、開始剤または開始剤の組合せ、さらには適切であればポロゲンの混合物のモノマードロップレットを反応させて、架橋ビーズポリマーを形成する工程と、
b)得られたビーズポリマーをキレート形成性基により官能化し、かつこの工程において共重合(メタ)アクリル系化合物を反応させて(メタ)アクリル酸基を形成する工程
を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
カルボキシル基だけでなく−(CHNR
(式中、
mは、1〜4の整数であり、
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化3】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化4】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、HまたはNaまたはKである)
を含むイオン交換体であって、
a)モノビニル芳香族化合物、ポリビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル系化合物、開始剤または開始剤の組合せ、さらには適切であればポロゲンの混合物のモノマードロップレットを反応させて、架橋ビーズポリマーを得る工程と、
b)得られたビーズポリマーをキレート形成性基により官能化し、かつこの工程において共重合(メタ)アクリル系化合物を反応させて(メタ)アクリル酸基を形成する工程
により得ることができる、イオン交換体。
【請求項3】
請求項2に記載される得ることのできるカルボキシル基含有さらには−(CHNR基含有のイオン交換体であって、一般式(I):
【化5】

(式中、
x=0.01〜0.3、
y=0.7〜0.99、
z=0.01〜0.2、
mは、1〜4の整数であり、
Aは、HまたはC〜C−アルキル、好ましくはCHであり、
は、HまたはNaまたはKであり、
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化6】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、そして
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化7】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基である)
で示される組成を有することを特徴とする、イオン交換体。
【請求項4】
水溶液および有機液体から金属(とくに、重金属および貴金属)ならびにそれらの化合物を吸着させるための、水溶液から、とくに、アルカリ土類金属もしくはアルカリ金属の水溶液から、クロロアルカリ電解のブラインから、塩酸水溶液から、廃水もしくは排煙洗液から、またはそのほかに、液状もしくはガス状の炭化水素、カルボン酸、天然ガス、天然ガスコンデンセート、石油、またはハロゲン化炭化水素から、重金属もしくは貴金属を除去するための、あるいはクロロアルカリ電解で慣用されるようなブラインからアルカリ土類金属を除去するための、さらには電解処理時に反応させる物質から重金属(とくに、鉄、カドミウム、もしくは鉛)を除去するための、請求項2または3に記載のカルボキシル基含有かつ−(CHNR基含有のイオン交換体の使用。
【請求項5】
吸着させる前記重金属または貴金属が、水銀、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、カドミウム、マンガン、ウラン、バナジウム、白金族元素、さらには金または銀であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
酸化状態+IIIで存在しうる金属が、銅の硫酸溶液から除去されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
ロジウムもしくは白金族元素、さらには金、銀、またはロジウム含有もしくは貴金属含有の触媒残留物が、有機溶液または有機溶媒から除去されることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
カルボキシル基だけでなく−(CHNR基を有する酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持イオン交換体の製造方法であって、
A’)請求項2または3に記載の、カルボキシル基と−(CHNR基とを有するビーズ型キレート交換樹脂を、水性懸濁液中で鉄(III)塩と接触させる工程と、
B’)アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を添加することにより、段階A’)から得られた懸濁液を3〜10の範囲内のpHに設定し、得られた酸化鉄/オキシ水酸化鉄含有キレート交換樹脂を公知の方法により単離する工程
を有することを特徴とする、方法。
【請求項9】
カルボキシル基だけでなく−(CHNR
(式中、
mは、1〜4の整数であり、
は、水素またはCH−COOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化8】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、CHCOOR基またはCHP(O)(OR基または−CH−S−CHCOOR基または−CH−S−C〜C−アルキル基または−CH−S−CHCH(NH)COOR基または
【化9】

もしくはその誘導体またはC=S(NH)基であり、
は、HまたはNaまたはKである)
を含む酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持イオン交換体であって、
a)モノビニル芳香族化合物、ポリビニル芳香族化合物、(メタ)アクリル系化合物、開始剤または開始剤の組合せ、さらには適切であればポロゲンの混合物のモノマードロップレットを反応させて、架橋ビーズポリマーを得る工程と、
b)得られたビーズポリマーをキレート形成性基により官能化させ、かつこの工程において共重合(メタ)アクリル系化合物を反応させて(メタ)アクリル酸基を形成する工程と、
A’)カルボキシル基と−(CHNR基とを有するビーズ型イオン交換体を水性懸濁液中で鉄(III)塩と接触させる工程と、
B’)アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を添加することにより、段階A’)から得られた懸濁液を3〜10の範囲内のpHに設定し、得られた酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持キレート交換樹脂を公知の方法により単離する工程
により得ることができる、イオン交換体。
【請求項10】
重金属、好ましくは、ヒ素、コバルト、ニッケル、鉛、亜鉛、カドミウム、銅を吸着させるための、請求項9に記載されたように製造された酸化鉄/オキシ水酸化鉄担持キレート交換樹脂の使用。

【公表番号】特表2007−533789(P2007−533789A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538756(P2006−538756)
【出願日】平成16年11月6日(2004.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012586
【国際公開番号】WO2005/049190
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】