キレート樹脂を用いた分析方法
【課題】
アルカリ金属,アルカリ土類金属を効率良く除去できるキレート樹脂を用いた分析方法を提供する。
【解決手段】
水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸
(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を充填した固相抽出部を用いて、測定対象試料中の金属元素を抽出し分析を行うキレート樹脂を用いた分析方法であって、測定対象試料をpH3〜6の範囲となるように調整し、前記固相抽出部に対して、前記調整後の測定対象試料を通液し、前記固相抽出部を洗浄し、洗浄後の前記固相抽出部に酸水溶液を通液して捕捉された金属元素を溶出し、前記溶出した金属元素を元素分析装置によって分析することを特徴とする。
アルカリ金属,アルカリ土類金属を効率良く除去できるキレート樹脂を用いた分析方法を提供する。
【解決手段】
水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸
(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を充填した固相抽出部を用いて、測定対象試料中の金属元素を抽出し分析を行うキレート樹脂を用いた分析方法であって、測定対象試料をpH3〜6の範囲となるように調整し、前記固相抽出部に対して、前記調整後の測定対象試料を通液し、前記固相抽出部を洗浄し、洗浄後の前記固相抽出部に酸水溶液を通液して捕捉された金属元素を溶出し、前記溶出した金属元素を元素分析装置によって分析することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中に含まれる金属の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料中の金属類を分析する方法として、キレート樹脂を用いて分離・濃縮し、その後原子吸光光度計や質量分析装置で分析することが知られている。
【0003】
このような分析手法については、例えば、栗山 清治,欧陽 通,王 寧,古庄 義明:イミノ二酢酸キレート膜による水中重金属類の迅速抽出法,工業用水,第481号,
29−36(1998)(非特許文献1)に記載されている。
【0004】
従来、金属濃縮用のキレート樹脂は、イミノジ酢酸(IDA)を官能基としたものが一般的であり、固相抽出剤の市販品もある。IDA型キレート樹脂を用いて水道水中のウランを濃縮する手法は、上水試験法にも採用され公定法となっている。
【0005】
【非特許文献1】栗山 清治,欧陽 通,王 寧,古庄 義明:イミノ二酢酸キレー ト膜による水中重金属類の迅速抽出法,工業用水,第481号,29−36(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
測定対象である水道水,河川水,海水などは、試料中にアルカリ金属,アルカリ土類金属を多量に含んでいる。IDA型キレート樹脂では、アルカリ金属およびアルカリ土類金属も捕捉されるため、測定対象の金属を濃縮後、溶出した溶液中にアルカリ金属,アルカリ土類金属が含まれてしまうという欠点があった。さらに、試料中のアルカリ金属,アルカリ土類金属の濃度によっては測定対象とする金属の捕捉率が下がってしまうという問題も生じる。
【0007】
また、測定試料中にアルカリ金属,アルカリ土類金属が残存すると、電気加熱原子吸光光度計(AA),(プラズマイオン源質量分析装置(ICP/MS)においては感度低下を起こす。特に、ICP/MSにおいては、特定の元素(主に第4周期の遷移金属)においてCaの酸化物や水酸化物などによる分子イオンが生成し、正の誤差を与える。
【0008】
そのため、アルカリ金属,アルカリ土類金属を多量に含む試料をIDA型キレート樹脂で前処理する場合には、試料を樹脂に通水した後、捕捉しているアルカリ金属,アルカリ土類金属を洗い流すため、樹脂に洗浄水を数回通し、アルカリ金属,アルカリ土類を洗い流す作業が必要であった。しかし、海水のような多量にアルカリ金属,アルカリ土類金属を含む試料の場合では、この操作を行ってもCaが高度に残ってしまうため、例えば、海水中のNi測定ではCaの分子イオンの影響により正確な定量が困難であった。
【0009】
本発明の目的は、試料中のアルカリ金属,アルカリ土類金属を効率良く排除し、測定対象の金属のみを容易に溶出して分析用試料とすることのできる分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、固相抽出剤にPAPC型キレート樹脂を用い、試料をPAPC型キレート樹脂に最適なpH条件に調整することにより、試料中の金属或いはホウ素を抽出し、元素分析装置で分析することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、試料中のアルカリ金属,アルカリ土類金属を効率良く排除し、樹脂に捕捉された金属のみを溶出することで、アルカリ金属,アルカリ土類金属濃度の低い分析用試料を得ることができる。
【0012】
これにより、抽出後の溶出液(分析用試料)を原子吸光光度計やICP−MSなどの元素分析装置で測定しても、アルカリ金属,アルカリ土類金属が残存することによる感度低下が起きない。
【0013】
また、ICP−MSにおいては、アルカリ金属,アルカリ土類金属が残存しないため、Caの酸化物や水酸化物などによる分子イオンが生成することがなく、特定の元素における正の誤差が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を説明する。本発明は、水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を用いる点が、最も特徴的な構成である。
【0015】
本実施例の操作手順を図1に示す。また図1の各手順を具体的に説明する図として図2を示す。
【0016】
ステップ1:固相抽出剤のコンディショニング
図2(1)に示したように、固相抽出剤に対して、アセトン(アセトニトリル)5ml,3M硝酸(HNO3)10ml,超純水20ml,0.1M酢酸アンモニウム10mlの順に通液させ、固相を活性化させる。コンディショニング時のpHは目的とする金属によっても異なるが、遷移金属を対象とする場合にはpH5〜7であることが好ましい。
【0017】
ここで、固相抽出剤の構成を図5に示す。(A)はシリンジ型の固相抽出剤であり、先端が細くなった円筒形状の容器に水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたPAPC型キレート樹脂1とそれを挟むようにフィルター2,3が形成される。通液時は、上部から溶液を投入する。(B)は、カラム型の固相抽出剤であり、液体クロマトグラフィーで用いられる分離カラムと同等の構成である。充填剤としてPAPC型キレート樹脂1を充填している。用手法的に分析を行う場合は、シリンジ形を用い、液体クロマトグラフィーを応用し、オンラインで分析する場合には、カラム形を用いる。
【0018】
またここで、本発明の固相抽出剤に用いられるPAPC型キレート樹脂の構造を図6に示す。PAPC型キレート樹脂にはキレート−A,キレート−Bの2種類がある。キレート−A,キレート−Bともに、官能基としてエチレンジアミン三酢酸,イミノジ酢酸の共存型で、かつ基材樹脂由来の水酸基を持っている。基材樹脂に官能基を化学修飾する際に、ポリアミノポリカルボン酸末端のアミノ基を利用して導入しているので、基材樹脂との結合部分にイミノ基が存在する。また、A型とB型の違いは、基材樹脂の違いであり、A型は親水性の多孔性メタクリレート系架橋ポリマー、B型は親水基を持つ疎水性の架橋ポリマーを基材樹脂としている。共に、水溶液の前処理に用いることが可能であるが、基材樹脂の性質により、金属の捕捉特性が微妙に異なる。
【0019】
また、PAPC型キレート樹脂の金属捕捉量は、基材樹脂につける官能基の量によって樹脂製造時に調整することができる。0.1 〜1meq/gが一般的であるが、本発明の分析で用いるには、実用的な面から、0.1 〜0.5meq/gであることが好ましい。金属捕捉量が0.1 meq/gより小さい場合には、目的とする金属を十分に捕捉することができないばかりでなく、共存するアルカリ金属,アルカリ土類金属の妨害を受けることがある。また、金属捕捉量が1meq/gより大きい場合には、溶出する酸水溶液の濃度が高くなって測定時に希釈が必要となる、あるいは溶出時に大量の酸水溶液を必要とするなど、結果として高度な濃縮ができないことになる。
【0020】
参考として、従来のIDA型キレート樹脂の構造を図7に示す。
【0021】
ステップ2:測定対象試料のpH調整
図2(2)に示すように、測定対象試料の溶液に、酢酸アンモニウムを0.1M になるように加え、pHを調整する。試料のpH調整は、本発明においては、キレート樹脂に、キレート−A,キレート−Bの何れを使用する場合であっても、pH3〜6の範囲で調整する。キレート−Bを用いる場合は、pH3〜7の範囲でも良い。
【0022】
ここで、pH調整の根拠について説明する。
【0023】
キレート−A,キレート−Bを用いた固相抽出剤の金属保持特性を図8に示す。上がキレート−A、下がキレート−Bである。ここでは、代表的な元素の標準液を用いて、固相抽出剤に通液する溶液のpHを変え、キレート樹脂のpH依存性を調べた。
【0024】
これによると、PAPC型キレート樹脂は、中性以下のpHでアルカリ土類金属を保持しないという特性を示した。具体的には、キレート−AではpH7未満で、キレート−BではpH8未満でアルカリ土類金属(Ca)は全く保持されなかった。これは、基材樹脂とPAPC型官能基の結合部分に存在するイミノ基のプロトネーションによって、アルカリ土類金属のイオン排除が生じているものと推定される。また、何れのタイプにおいてもアルカリ土類金属以外の金属の多くはpH3以上で捕捉される。
【0025】
従って、pH3〜6の範囲で試料を調整すれば、キレート−A,キレート−Bの何れの場合でもアルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属との分別が可能であることが分かる。
【0026】
上記と同様に、IDA型キレート樹脂固相抽出剤の金属保持特性を調べた結果を図9に示す。IDA型では、pH3を超えるとアルカリ土類元素(Ca)は90%以上捕捉された。この結果から、アルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属の分別を行うには、試料のpHを2以下にしなければならない。しかし、pH2では、Ni,Mnはほとんど保持されないため、アルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属を分別した上で一斉分析を行うことは不可能である。
【0027】
このことから、IDA型キレート樹脂を用いた従来の固相抽出剤では、試料のpHを調整してもアルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属を分別することはできず、PAPC型キレート樹脂を用いた従来の固相抽出剤であれば、試料のpHを調整することで、アルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属を分別することが可能であることが分かる。
【0028】
ステップ3:固相抽出剤へ試料通液
図2(3)に示すように、固相抽出剤にステップ2で調整された試料を通液し、試料中の金属を固相に捕捉する。
【0029】
ステップ4:固相抽出剤の洗浄
このステップはオプションである。PAPC型キレート樹脂は、その性質上、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を殆ど捕捉しない為、洗浄工程は不要になるため、通常はステップ3からステップ5へ移行して構わない。
【0030】
ただし、固相の隙間に物理的にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を試料成分が上手く流れずに残ってしまっている場合も考えられる。この場合は、図2(4)に示すように、固相抽出剤に超純水10〜20mlを通液し、固相の間隙に残った試料成分を洗い流す。超純水の通液は1回で充分である。これにより、より確実にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を除去することができる。
【0031】
ステップ5:捕捉金属の溶出
図2(5)に示すように、酸水溶液を固相に通液し、固相に捕捉されている金属を溶出させ、回収する。捕捉された金属の溶出に使う酸水溶液の濃度は、測定機器の能力にも依存するが、一般に5mol/L以下であることが好ましい。酸の種類に関しては、測定に使用する機器によって適切なものを選択するが、一般には硝酸(HNO3)が多く用いられる。ここでは、1〜5M HNO32〜5mlを通液するものとする。
【0032】
ステップ6:溶出液の定容
図2(6)に示すように、ステップ5で回収された溶出液を純水で一定容量にし、定容する。
【0033】
ステップ7:分析
定容された溶出液をAA,ICP/MSなどの元素分析装置により分析する。元素分析装置では、溶出液中の金属濃度を定量し、前処理時濃縮係数を用いて元試料中の金属濃度を求める。
【0034】
以上が、本発明における分析のステップである。
【0035】
ここで、本発明の比較対照として、従来のIDA型キレート樹脂を用いた場合の操作手順を図3に示す。また、図4は、図3の各手順を具体的に説明するための図である。
【0036】
図1,図2に示す本実施例との最も大きな違いは、ステップ4の洗浄工程である。通常、固相抽出剤に通液する試料は、多くの金属が捕捉されるpH5〜6に調整する。アルカリ金属,アルカリ土類金属を多量に含んだ試料の場合、IDA型キレート樹脂は上述したように、pH5〜6ではアルカリ土類金属を捕捉してしまうため、図3,図4に示すように、試料を固相抽出剤に通液した後、0.1M 酢酸アンモニウム溶液10mL程度で数回洗浄し、捕捉されているアルカリ土類金属を洗い流す操作を行わなければならない。この操作を省略すると、試料溶出液中のアルカリ土類金属濃度が高くなり、十分な測定精度を確保することが難しくなる。
【0037】
一方、PAPC型キレート樹脂はpH3〜6で試料中の金属、特に陽イオン性遷移金属は樹脂に捕捉され、アルカリ金属,アルカリ土類金属は捕捉されないため、洗浄は行わなくても良い。また仮に洗浄する場合でも、試料を固相抽出剤に通液した後、超純水10
mL程度で固相抽出剤を洗浄するだけでよい。このように、PAPC型では、試料のアルカリ金属,アルカリ土類金属以外の金属を樹脂中に濃縮し溶出させることができるため、試料溶出液がアルカリ金属及びアルカリ土類金属の濃度が非常に低い分析用試料を作製することができ、満足いく測定精度を得ることができる。また、試料通液後の洗浄工程を省略、或いは大幅に簡略化することができる。
【0038】
また、ステップ1,3,4においては、従来のIDA型キレート樹脂を用いた場合では、液を通液させるときに注射器で注入したり、ポンプで入口方向から液を送り込む、或いは出口方向から液を引く、等して加圧通液を行わねばならない。これは、IDA型キレート樹脂が流路抵抗が大きく、液が通り難いためである。これに対して本発明のPAPC型キレート樹脂を用いた場合では、抵抗が少ないため、加圧通液は行わなくても良く、液を入れるだけで良い。従って、これらの各ステップにおける送液も簡略化することが可能となる。
【実施例1】
【0039】
上記本発明の分析方法を用いて、河川水の標準試料を分析した結果を図10に示す。
【0040】
図10は、分析装置にプラズマイオン源質量分析装置を用いて測定を行ったマススペクトルが示される。
【0041】
この結果、PAPC型で処理した抽出液では、23Na,24Mg,39K,40Ca付近に大きなピークが見られず、測定上妨害となる金属はPAPC型にほとんど保持されないことが分かった。このときの測定結果を数値化した結果を図11に示す。図11において、
“認証値”とは、標準試料に含まれている各元素の量(単位μg/L)である。“PAPC型”とは、本発明の分析方法で行って得られた図10のマススペクトルの定量結果(単位μg/L)である。“回収率”は、“認証値”と“PAPC型”の値を比較して得られる値である。
【0042】
図11から、Mn,Fe,Ni,Cu,Znの回収率は、85〜115%と良好であったことが分かる。また、V,Moに関しても、それぞれ114%および86%と良好な回収率が得られた。
【0043】
ここで比較対照として、河川水の標準試料を図3,図4の手順でIDA型キレート樹脂を持つ固相抽出剤にて行った結果を図12に示す。IDA型では、図10で示したように、小さなピークしか観察されなかった23Na,24Mg,39K,40Ca付近に、異常に大きなピークが観察され、PAPC型で残存しないアルカリ金属、アルカリ土類金属のNa,Mg,K,CaがIDA型では多量に残っていることが分かった。
【0044】
図11にIDA型での測定結果も示される。Mn,Ni,Cu,Znでは90〜102%と良好な回収率を示したが、V,Moの回収率はそれぞれ40%および34%とPAPC型に比べ低い回収率しか得られなかった。V,Moについては、各元素の標準液で分析を行った場合、IDA型の樹脂を用いても90%以上の回収率を得ることができた。河川水標準液では、上記のように低い回収率に止まってしまった理由として、河川水では共存元素の影響を受けるため、IDA型は捕捉効率が低下したものと考えられる。これらの結果から、PAPC型は共存元素の影響を受けにくく、実試料中の微量金属を高回収率で抽出することが可能で、分析精度を大幅に改善可能であることが明白である。
【実施例2】
【0045】
上記本発明の分析方法を用いて、海水の標準試料を分析した結果を図13に示す。
【0046】
本実施例においても、分析装置にプラズマイオン源質量分析装置を用いている。図13において、“認証値”とは、標準試料に含まれている各元素の量(単位μg/L)である。“PAPC型”とは、プラズマイオン源質量分析装置によって得られたマススペクトルの定量結果(単位μg/L)である。“回収率”は、“認証値”と“PAPC型”の値を比較して得られる値である。
【0047】
上記非特許文献1には、IDA型キレート固相抽出剤ではpH5.6 に調整した海水の場合、Mnの回収率が60%を下回るという報告があるが、図13から分かるように、
PAPC型キレート固相抽出剤では、Mnの回収率は96%と良好であった。
【0048】
このことから、海水においても、本発明の分析方法が有効であることが分かる。
【実施例3】
【0049】
図8の分析結果から、IDA型キレート官能基では捕捉されないホウ素(B)が、本発明によれば捕捉されることが分かった。ホウ素は金属元素ではないが、本発明を応用することで、ホウ素の抽出,分析を行うことができる。
【0050】
ホウ素の抽出・濃縮における最適pHは、図8の結果から、キレート−AではpH5.5〜7.5 、キレート−BではpH5〜7と、キレート−Aのほうが広い範囲で捕捉できた。ホウ素の捕捉は、親水性基材を用いたキレート−Aのほうが広範囲で捕捉できたことから、基材樹脂由来の水酸基との相互作用によるものと推測される。
【0051】
従って、本発明において、キレート−AではpH5.5〜7.5、キレート−BではpH5〜7の範囲で試料を調整することで、ホウ素を効率良く分析することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例の操作手順を示す図である。
【図2】図1の各ステップを説明する図である。
【図3】従来の操作手順を示す図である。
【図4】図3の各ステップを説明する図である。
【図5】固相抽出剤の構造を示す図である。
【図6】PAPC型キレート樹脂の官能基構造を示す図である。
【図7】IDA型キレート樹脂の官能基構造を示す図である。
【図8】PAPC型キレート樹脂の金属保持特性を説明する図である。
【図9】IDA型キレート樹脂の金属保持特性を説明する図である。
【図10】河川水標準水を本発明方法で分析したマススペクトルである。
【図11】河川水標準水を分析した定量結果を示す図である。
【図12】河川水標準水を従来の方法で分析したマススペクトルである。
【図13】海水標準水を分析した定量結果を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…キレート樹脂、2,3…フィルター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中に含まれる金属の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料中の金属類を分析する方法として、キレート樹脂を用いて分離・濃縮し、その後原子吸光光度計や質量分析装置で分析することが知られている。
【0003】
このような分析手法については、例えば、栗山 清治,欧陽 通,王 寧,古庄 義明:イミノ二酢酸キレート膜による水中重金属類の迅速抽出法,工業用水,第481号,
29−36(1998)(非特許文献1)に記載されている。
【0004】
従来、金属濃縮用のキレート樹脂は、イミノジ酢酸(IDA)を官能基としたものが一般的であり、固相抽出剤の市販品もある。IDA型キレート樹脂を用いて水道水中のウランを濃縮する手法は、上水試験法にも採用され公定法となっている。
【0005】
【非特許文献1】栗山 清治,欧陽 通,王 寧,古庄 義明:イミノ二酢酸キレー ト膜による水中重金属類の迅速抽出法,工業用水,第481号,29−36(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
測定対象である水道水,河川水,海水などは、試料中にアルカリ金属,アルカリ土類金属を多量に含んでいる。IDA型キレート樹脂では、アルカリ金属およびアルカリ土類金属も捕捉されるため、測定対象の金属を濃縮後、溶出した溶液中にアルカリ金属,アルカリ土類金属が含まれてしまうという欠点があった。さらに、試料中のアルカリ金属,アルカリ土類金属の濃度によっては測定対象とする金属の捕捉率が下がってしまうという問題も生じる。
【0007】
また、測定試料中にアルカリ金属,アルカリ土類金属が残存すると、電気加熱原子吸光光度計(AA),(プラズマイオン源質量分析装置(ICP/MS)においては感度低下を起こす。特に、ICP/MSにおいては、特定の元素(主に第4周期の遷移金属)においてCaの酸化物や水酸化物などによる分子イオンが生成し、正の誤差を与える。
【0008】
そのため、アルカリ金属,アルカリ土類金属を多量に含む試料をIDA型キレート樹脂で前処理する場合には、試料を樹脂に通水した後、捕捉しているアルカリ金属,アルカリ土類金属を洗い流すため、樹脂に洗浄水を数回通し、アルカリ金属,アルカリ土類を洗い流す作業が必要であった。しかし、海水のような多量にアルカリ金属,アルカリ土類金属を含む試料の場合では、この操作を行ってもCaが高度に残ってしまうため、例えば、海水中のNi測定ではCaの分子イオンの影響により正確な定量が困難であった。
【0009】
本発明の目的は、試料中のアルカリ金属,アルカリ土類金属を効率良く排除し、測定対象の金属のみを容易に溶出して分析用試料とすることのできる分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の特徴は、固相抽出剤にPAPC型キレート樹脂を用い、試料をPAPC型キレート樹脂に最適なpH条件に調整することにより、試料中の金属或いはホウ素を抽出し、元素分析装置で分析することである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、試料中のアルカリ金属,アルカリ土類金属を効率良く排除し、樹脂に捕捉された金属のみを溶出することで、アルカリ金属,アルカリ土類金属濃度の低い分析用試料を得ることができる。
【0012】
これにより、抽出後の溶出液(分析用試料)を原子吸光光度計やICP−MSなどの元素分析装置で測定しても、アルカリ金属,アルカリ土類金属が残存することによる感度低下が起きない。
【0013】
また、ICP−MSにおいては、アルカリ金属,アルカリ土類金属が残存しないため、Caの酸化物や水酸化物などによる分子イオンが生成することがなく、特定の元素における正の誤差が生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を説明する。本発明は、水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を用いる点が、最も特徴的な構成である。
【0015】
本実施例の操作手順を図1に示す。また図1の各手順を具体的に説明する図として図2を示す。
【0016】
ステップ1:固相抽出剤のコンディショニング
図2(1)に示したように、固相抽出剤に対して、アセトン(アセトニトリル)5ml,3M硝酸(HNO3)10ml,超純水20ml,0.1M酢酸アンモニウム10mlの順に通液させ、固相を活性化させる。コンディショニング時のpHは目的とする金属によっても異なるが、遷移金属を対象とする場合にはpH5〜7であることが好ましい。
【0017】
ここで、固相抽出剤の構成を図5に示す。(A)はシリンジ型の固相抽出剤であり、先端が細くなった円筒形状の容器に水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたPAPC型キレート樹脂1とそれを挟むようにフィルター2,3が形成される。通液時は、上部から溶液を投入する。(B)は、カラム型の固相抽出剤であり、液体クロマトグラフィーで用いられる分離カラムと同等の構成である。充填剤としてPAPC型キレート樹脂1を充填している。用手法的に分析を行う場合は、シリンジ形を用い、液体クロマトグラフィーを応用し、オンラインで分析する場合には、カラム形を用いる。
【0018】
またここで、本発明の固相抽出剤に用いられるPAPC型キレート樹脂の構造を図6に示す。PAPC型キレート樹脂にはキレート−A,キレート−Bの2種類がある。キレート−A,キレート−Bともに、官能基としてエチレンジアミン三酢酸,イミノジ酢酸の共存型で、かつ基材樹脂由来の水酸基を持っている。基材樹脂に官能基を化学修飾する際に、ポリアミノポリカルボン酸末端のアミノ基を利用して導入しているので、基材樹脂との結合部分にイミノ基が存在する。また、A型とB型の違いは、基材樹脂の違いであり、A型は親水性の多孔性メタクリレート系架橋ポリマー、B型は親水基を持つ疎水性の架橋ポリマーを基材樹脂としている。共に、水溶液の前処理に用いることが可能であるが、基材樹脂の性質により、金属の捕捉特性が微妙に異なる。
【0019】
また、PAPC型キレート樹脂の金属捕捉量は、基材樹脂につける官能基の量によって樹脂製造時に調整することができる。0.1 〜1meq/gが一般的であるが、本発明の分析で用いるには、実用的な面から、0.1 〜0.5meq/gであることが好ましい。金属捕捉量が0.1 meq/gより小さい場合には、目的とする金属を十分に捕捉することができないばかりでなく、共存するアルカリ金属,アルカリ土類金属の妨害を受けることがある。また、金属捕捉量が1meq/gより大きい場合には、溶出する酸水溶液の濃度が高くなって測定時に希釈が必要となる、あるいは溶出時に大量の酸水溶液を必要とするなど、結果として高度な濃縮ができないことになる。
【0020】
参考として、従来のIDA型キレート樹脂の構造を図7に示す。
【0021】
ステップ2:測定対象試料のpH調整
図2(2)に示すように、測定対象試料の溶液に、酢酸アンモニウムを0.1M になるように加え、pHを調整する。試料のpH調整は、本発明においては、キレート樹脂に、キレート−A,キレート−Bの何れを使用する場合であっても、pH3〜6の範囲で調整する。キレート−Bを用いる場合は、pH3〜7の範囲でも良い。
【0022】
ここで、pH調整の根拠について説明する。
【0023】
キレート−A,キレート−Bを用いた固相抽出剤の金属保持特性を図8に示す。上がキレート−A、下がキレート−Bである。ここでは、代表的な元素の標準液を用いて、固相抽出剤に通液する溶液のpHを変え、キレート樹脂のpH依存性を調べた。
【0024】
これによると、PAPC型キレート樹脂は、中性以下のpHでアルカリ土類金属を保持しないという特性を示した。具体的には、キレート−AではpH7未満で、キレート−BではpH8未満でアルカリ土類金属(Ca)は全く保持されなかった。これは、基材樹脂とPAPC型官能基の結合部分に存在するイミノ基のプロトネーションによって、アルカリ土類金属のイオン排除が生じているものと推定される。また、何れのタイプにおいてもアルカリ土類金属以外の金属の多くはpH3以上で捕捉される。
【0025】
従って、pH3〜6の範囲で試料を調整すれば、キレート−A,キレート−Bの何れの場合でもアルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属との分別が可能であることが分かる。
【0026】
上記と同様に、IDA型キレート樹脂固相抽出剤の金属保持特性を調べた結果を図9に示す。IDA型では、pH3を超えるとアルカリ土類元素(Ca)は90%以上捕捉された。この結果から、アルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属の分別を行うには、試料のpHを2以下にしなければならない。しかし、pH2では、Ni,Mnはほとんど保持されないため、アルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属を分別した上で一斉分析を行うことは不可能である。
【0027】
このことから、IDA型キレート樹脂を用いた従来の固相抽出剤では、試料のpHを調整してもアルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属を分別することはできず、PAPC型キレート樹脂を用いた従来の固相抽出剤であれば、試料のpHを調整することで、アルカリ金属およびアルカリ土類金属と、それ以外の金属を分別することが可能であることが分かる。
【0028】
ステップ3:固相抽出剤へ試料通液
図2(3)に示すように、固相抽出剤にステップ2で調整された試料を通液し、試料中の金属を固相に捕捉する。
【0029】
ステップ4:固相抽出剤の洗浄
このステップはオプションである。PAPC型キレート樹脂は、その性質上、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を殆ど捕捉しない為、洗浄工程は不要になるため、通常はステップ3からステップ5へ移行して構わない。
【0030】
ただし、固相の隙間に物理的にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を試料成分が上手く流れずに残ってしまっている場合も考えられる。この場合は、図2(4)に示すように、固相抽出剤に超純水10〜20mlを通液し、固相の間隙に残った試料成分を洗い流す。超純水の通液は1回で充分である。これにより、より確実にアルカリ金属およびアルカリ土類金属を除去することができる。
【0031】
ステップ5:捕捉金属の溶出
図2(5)に示すように、酸水溶液を固相に通液し、固相に捕捉されている金属を溶出させ、回収する。捕捉された金属の溶出に使う酸水溶液の濃度は、測定機器の能力にも依存するが、一般に5mol/L以下であることが好ましい。酸の種類に関しては、測定に使用する機器によって適切なものを選択するが、一般には硝酸(HNO3)が多く用いられる。ここでは、1〜5M HNO32〜5mlを通液するものとする。
【0032】
ステップ6:溶出液の定容
図2(6)に示すように、ステップ5で回収された溶出液を純水で一定容量にし、定容する。
【0033】
ステップ7:分析
定容された溶出液をAA,ICP/MSなどの元素分析装置により分析する。元素分析装置では、溶出液中の金属濃度を定量し、前処理時濃縮係数を用いて元試料中の金属濃度を求める。
【0034】
以上が、本発明における分析のステップである。
【0035】
ここで、本発明の比較対照として、従来のIDA型キレート樹脂を用いた場合の操作手順を図3に示す。また、図4は、図3の各手順を具体的に説明するための図である。
【0036】
図1,図2に示す本実施例との最も大きな違いは、ステップ4の洗浄工程である。通常、固相抽出剤に通液する試料は、多くの金属が捕捉されるpH5〜6に調整する。アルカリ金属,アルカリ土類金属を多量に含んだ試料の場合、IDA型キレート樹脂は上述したように、pH5〜6ではアルカリ土類金属を捕捉してしまうため、図3,図4に示すように、試料を固相抽出剤に通液した後、0.1M 酢酸アンモニウム溶液10mL程度で数回洗浄し、捕捉されているアルカリ土類金属を洗い流す操作を行わなければならない。この操作を省略すると、試料溶出液中のアルカリ土類金属濃度が高くなり、十分な測定精度を確保することが難しくなる。
【0037】
一方、PAPC型キレート樹脂はpH3〜6で試料中の金属、特に陽イオン性遷移金属は樹脂に捕捉され、アルカリ金属,アルカリ土類金属は捕捉されないため、洗浄は行わなくても良い。また仮に洗浄する場合でも、試料を固相抽出剤に通液した後、超純水10
mL程度で固相抽出剤を洗浄するだけでよい。このように、PAPC型では、試料のアルカリ金属,アルカリ土類金属以外の金属を樹脂中に濃縮し溶出させることができるため、試料溶出液がアルカリ金属及びアルカリ土類金属の濃度が非常に低い分析用試料を作製することができ、満足いく測定精度を得ることができる。また、試料通液後の洗浄工程を省略、或いは大幅に簡略化することができる。
【0038】
また、ステップ1,3,4においては、従来のIDA型キレート樹脂を用いた場合では、液を通液させるときに注射器で注入したり、ポンプで入口方向から液を送り込む、或いは出口方向から液を引く、等して加圧通液を行わねばならない。これは、IDA型キレート樹脂が流路抵抗が大きく、液が通り難いためである。これに対して本発明のPAPC型キレート樹脂を用いた場合では、抵抗が少ないため、加圧通液は行わなくても良く、液を入れるだけで良い。従って、これらの各ステップにおける送液も簡略化することが可能となる。
【実施例1】
【0039】
上記本発明の分析方法を用いて、河川水の標準試料を分析した結果を図10に示す。
【0040】
図10は、分析装置にプラズマイオン源質量分析装置を用いて測定を行ったマススペクトルが示される。
【0041】
この結果、PAPC型で処理した抽出液では、23Na,24Mg,39K,40Ca付近に大きなピークが見られず、測定上妨害となる金属はPAPC型にほとんど保持されないことが分かった。このときの測定結果を数値化した結果を図11に示す。図11において、
“認証値”とは、標準試料に含まれている各元素の量(単位μg/L)である。“PAPC型”とは、本発明の分析方法で行って得られた図10のマススペクトルの定量結果(単位μg/L)である。“回収率”は、“認証値”と“PAPC型”の値を比較して得られる値である。
【0042】
図11から、Mn,Fe,Ni,Cu,Znの回収率は、85〜115%と良好であったことが分かる。また、V,Moに関しても、それぞれ114%および86%と良好な回収率が得られた。
【0043】
ここで比較対照として、河川水の標準試料を図3,図4の手順でIDA型キレート樹脂を持つ固相抽出剤にて行った結果を図12に示す。IDA型では、図10で示したように、小さなピークしか観察されなかった23Na,24Mg,39K,40Ca付近に、異常に大きなピークが観察され、PAPC型で残存しないアルカリ金属、アルカリ土類金属のNa,Mg,K,CaがIDA型では多量に残っていることが分かった。
【0044】
図11にIDA型での測定結果も示される。Mn,Ni,Cu,Znでは90〜102%と良好な回収率を示したが、V,Moの回収率はそれぞれ40%および34%とPAPC型に比べ低い回収率しか得られなかった。V,Moについては、各元素の標準液で分析を行った場合、IDA型の樹脂を用いても90%以上の回収率を得ることができた。河川水標準液では、上記のように低い回収率に止まってしまった理由として、河川水では共存元素の影響を受けるため、IDA型は捕捉効率が低下したものと考えられる。これらの結果から、PAPC型は共存元素の影響を受けにくく、実試料中の微量金属を高回収率で抽出することが可能で、分析精度を大幅に改善可能であることが明白である。
【実施例2】
【0045】
上記本発明の分析方法を用いて、海水の標準試料を分析した結果を図13に示す。
【0046】
本実施例においても、分析装置にプラズマイオン源質量分析装置を用いている。図13において、“認証値”とは、標準試料に含まれている各元素の量(単位μg/L)である。“PAPC型”とは、プラズマイオン源質量分析装置によって得られたマススペクトルの定量結果(単位μg/L)である。“回収率”は、“認証値”と“PAPC型”の値を比較して得られる値である。
【0047】
上記非特許文献1には、IDA型キレート固相抽出剤ではpH5.6 に調整した海水の場合、Mnの回収率が60%を下回るという報告があるが、図13から分かるように、
PAPC型キレート固相抽出剤では、Mnの回収率は96%と良好であった。
【0048】
このことから、海水においても、本発明の分析方法が有効であることが分かる。
【実施例3】
【0049】
図8の分析結果から、IDA型キレート官能基では捕捉されないホウ素(B)が、本発明によれば捕捉されることが分かった。ホウ素は金属元素ではないが、本発明を応用することで、ホウ素の抽出,分析を行うことができる。
【0050】
ホウ素の抽出・濃縮における最適pHは、図8の結果から、キレート−AではpH5.5〜7.5 、キレート−BではpH5〜7と、キレート−Aのほうが広い範囲で捕捉できた。ホウ素の捕捉は、親水性基材を用いたキレート−Aのほうが広範囲で捕捉できたことから、基材樹脂由来の水酸基との相互作用によるものと推測される。
【0051】
従って、本発明において、キレート−AではpH5.5〜7.5、キレート−BではpH5〜7の範囲で試料を調整することで、ホウ素を効率良く分析することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施例の操作手順を示す図である。
【図2】図1の各ステップを説明する図である。
【図3】従来の操作手順を示す図である。
【図4】図3の各ステップを説明する図である。
【図5】固相抽出剤の構造を示す図である。
【図6】PAPC型キレート樹脂の官能基構造を示す図である。
【図7】IDA型キレート樹脂の官能基構造を示す図である。
【図8】PAPC型キレート樹脂の金属保持特性を説明する図である。
【図9】IDA型キレート樹脂の金属保持特性を説明する図である。
【図10】河川水標準水を本発明方法で分析したマススペクトルである。
【図11】河川水標準水を分析した定量結果を示す図である。
【図12】河川水標準水を従来の方法で分析したマススペクトルである。
【図13】海水標準水を分析した定量結果を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1…キレート樹脂、2,3…フィルター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸
(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を充填した固相抽出部を用いて、測定対象試料中の金属元素を抽出し分析を行うキレート樹脂を用いた分析方法であって、
測定対象試料をpH3〜6の範囲となるように調整し、
前記固相抽出部に対して、前記調整後の測定対象試料を通液し、
前記試料通液後の前記固相抽出部に酸水溶液を通液して捕捉された金属元素を溶出し、
前記溶出した金属元素を元素分析装置によって分析することを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記キレート樹脂の基材樹脂は、親水性の多孔性メタクリレート系架橋ポリマーであることを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記キレート樹脂の基材樹脂は、親水基を持つ疎水性の架橋ポリマーであり、前記測定対象試料の調整は、pH3〜7の範囲となるように行うことを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記試料通液と酸水溶液の通液の間に、超純水の通液を一回のみ行い、洗浄を行うことを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項5】
親水性の多孔性メタクリレート系架橋ポリマー(以下、Aタイプ)或いは親水基を持つ疎水性の架橋ポリマー(以下、Bタイプ)からなる基材樹脂に、イミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を充填した固相抽出部を用いて、測定対象試料中のホウ素を抽出し分析を行うキレート樹脂を用いた分析方法であって、
前記Aタイプの基材樹脂を持つキレート樹脂を用いる場合は、測定対象試料をpH5.5〜7.5 の範囲となるように調整し、前記Bタイプの基材樹脂を持つキレート樹脂を用いる場合は、測定対象試料をpH5〜7の範囲となるように調整し、
前記固相抽出部に対して、前記調整後の測定対象試料を通液し、
前記試料通液後の前記固相抽出部に酸水溶液を通液して捕捉されたホウ素を溶出し、
前記溶出したホウ素を元素分析装置によって分析することを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項1】
水酸基を有する基材樹脂にイミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸
(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を充填した固相抽出部を用いて、測定対象試料中の金属元素を抽出し分析を行うキレート樹脂を用いた分析方法であって、
測定対象試料をpH3〜6の範囲となるように調整し、
前記固相抽出部に対して、前記調整後の測定対象試料を通液し、
前記試料通液後の前記固相抽出部に酸水溶液を通液して捕捉された金属元素を溶出し、
前記溶出した金属元素を元素分析装置によって分析することを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記キレート樹脂の基材樹脂は、親水性の多孔性メタクリレート系架橋ポリマーであることを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記キレート樹脂の基材樹脂は、親水基を持つ疎水性の架橋ポリマーであり、前記測定対象試料の調整は、pH3〜7の範囲となるように行うことを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記試料通液と酸水溶液の通液の間に、超純水の通液を一回のみ行い、洗浄を行うことを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【請求項5】
親水性の多孔性メタクリレート系架橋ポリマー(以下、Aタイプ)或いは親水基を持つ疎水性の架橋ポリマー(以下、Bタイプ)からなる基材樹脂に、イミノ基を介して結合されたポリアミノポリカルボン酸(PAPC)型キレート官能基を持つキレート樹脂を充填した固相抽出部を用いて、測定対象試料中のホウ素を抽出し分析を行うキレート樹脂を用いた分析方法であって、
前記Aタイプの基材樹脂を持つキレート樹脂を用いる場合は、測定対象試料をpH5.5〜7.5 の範囲となるように調整し、前記Bタイプの基材樹脂を持つキレート樹脂を用いる場合は、測定対象試料をpH5〜7の範囲となるように調整し、
前記固相抽出部に対して、前記調整後の測定対象試料を通液し、
前記試料通液後の前記固相抽出部に酸水溶液を通液して捕捉されたホウ素を溶出し、
前記溶出したホウ素を元素分析装置によって分析することを特徴とするキレート樹脂を用いた分析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−53001(P2006−53001A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234006(P2004−234006)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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