説明

キースイッチ構造

【課題】キートップの端部が押下された場合でも確実にキー入力ができるキースイッチを提供する。
【解決手段】キートップ2の端部に突起部12、13を形成し、突起部12、13にそれぞれ対向する位置に接点部14、15を設ける。メンブレンシート6の中央には接点部8が形成されている。接点部14、15と接点部8のいずれが押下されてもキー入力が可能となるようにパターン部で互いに接続してある。キートップ2の端部が押下された場合、突起部12または13により接点部14または15が閉成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード装置に用いられるキースイッチの構造に関し、特にノート型のパーソナルコンピュータ等に用いられる薄型のキースイッチ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キーボード装置に用いられるキースイッチにおいては、1対のリンク部材を側面視X状に配置したリンク機構によりキートップを上下動可能に支持したものが知られている。この例として例えば特開平11−339587号公報に開示されるものが挙げられる。
上記公報に示される例は、リンク機構が1つだけ用いられているものであるが、大型キーにおいては、リンク機構が2箇所に設けられているものが開発されている。これについて、以下、図面を用いて説明する。
【0003】
図7は従来のキースイッチ構造を示す側面図である。図7において、従来のキースイッチ1は、キートップ2と、カップゴム3と、1対のリンク機構4、5と、メンブレンシート6と補強版7を備えている。リンク機構4は、支軸4cにより側面視X状に遥動可能に形成されたリンク部材4a、4bと、キートップ2の下面に形成されたホルダー4d、4eと、メンブレンシート6側に形成されたホルダー4fとから構成されている。
他方のリンク機構5も同様に、支軸5cにより側面視X状に遥動可能に形成されたリンク部材5a、5bと、キートップ2の下面に形成されたホルダー5d、5eと、メンブレンシート6側に形成されたホルダー5fとから構成されている。キートップ2が上方から押下されることにより、カップゴム3が座屈し、カップゴム3の下に形成された接点部8が閉成される。
【0004】
図8はメンブレンシートを示す分解図である。図8において、メンブレンシート6は、上部シート6a、下部シート6bおよびスペーサシート6cの3枚のPET(ポリエチレンテレフタレート)製シートから成り、上部シート6aと下部シート6bとの間にスペーサシート6cが挟まれる構成を有している。上部シート6aのスペーサシート6cに対向する面には、Agインキによるパターン部9aと接点8aとが配され、また下部シート6bのスペーサシート6cに対向する面には、同様にAgインキによるパターン部9bと接点8bとが配されている。
スペーサシート6cには、接点8aと接点8bとが互いに接触可能なようにスペーサ穴8cが形成されている。スペーサ穴8cの直径と厚さを任意に設定することにより、接点動作荷重を任意に得ることができる。なお図8にはキートップ2の位置が二点鎖線で示してある。
【0005】
次に動作を説明する。図7、図8において、キートップ2を上方から押下すると、リンク機構4、5の働きによりキートップ2は下降する。キートップ2に接しているカップゴム3は、これに伴って押しつぶされ、内部に設けられた突起3aがメンブレンシート6の上部シート6aの接点8aを押下する。押下された接点8aは下部シート6bの接点8bと接触し、これにより電気的なオン状態となる。
キートップ2に加えられていた力を除去すると、カップゴム3の復元力により、上部シート6aの接点8aを押下していた突起3aが元の位置に戻り、キートップ2も元の位置に戻る。これに伴って上部シート6aの接点8aと下部シート6bの接点8bが離れ、電気的なオフの状態となる。
【特許文献1】特開平11−339587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年において、ノート型パーソナルコンピュータの普及に伴い、従来よりキーボードの薄型化に対する強い要求がある。キーボードの薄型化はキーボードを構成する部品の薄型化を伴う。構成部品が薄型化されると、部品の強度、例えば、キートップやリンク機構の強度が低下する。また押下時のキーストロークも短くなる傾向になる。キー入力する際にキートップの端部が押された場合、キートップの強度が弱いと、あるいは短ストロークによるオンマージン(キー押下による接点部の導通開始位置からキー最押下位置までの距離)不足があると、カップゴムの下側の接点部を導通させるだけの押下力がカップゴムに伝わらないことがある。この場合は、キートップを強く押さないと、あるいはキートップの中央を押さないと、キー入力されない不具合が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、キートップを押下することにより、上部シートと下部シートから成るメンブレンシート上に形成された接点を閉合するキースイッチ構造において、前記キートップの下方のメンブレンシート上に複数の接点部を形成し、前記複数の接点部は前記上部シートおよび前記下部シートにおいてそれぞれパターンで互いに接続されるとともに前記接点に接続されており、前記複数の接点部に対向する前記キートップの位置にそれぞれ突起部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
上記構成の本発明によれば、キートップの端部が押下された場合でも、複数の突起部のいずれかが対向する接点部を閉合するので、確実にキー入力ができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図面に従って説明する。図1は本発明の第1の実施の形態のキースイッチを示す側面図である。図1において、第1の実施の形態のキースイッチ11は、キートップ2と、カップゴム3と、1対のリンク機構4、5と、メンブレンシート6と補強版7を備えている。リンク機構4は、支軸4cにより側面視X状に遥動可能に形成されたリンク部材4a、4bと、キートップ2の下面に形成されたホルダー4d、4eと、メンブレンシート6側に形成されたホルダー4fとから構成されている。リンク部材4aとリンク部材4bとはそれぞれ矩形の枠形状を有し、支軸4cで結合された状態で中央部に略円形の空間部を形成する。
【0010】
他方のリンク機構5も同様に、支軸5cにより側面視X状に遥動可能に形成されたリンク部材5a、5bと、キートップ2の下面に形成されたホルダー5d、5eと、メンブレンシート6側に形成されたホルダー5fとから構成されている。リンク部材5aとリンク部材5bとはそれぞれ矩形の枠形状を有し、支軸5cで結合された状態で中央部に略円形の空間部を形成する。キートップ2が上方から押下されることにより、カップゴム3が座屈し、カップゴム3の下に形成された接点部8が閉合される。
【0011】
キートップ2の下面には下方に伸びた突起部12、13が形成されている。突起部12、13は、それぞれリンク機構4、5の叙述した空間部に入り込むように形成されている。突起部12の下方のメンブレンシート6には、突起部12に対向した位置に接点部14が形成され、また突起部13に対向した位置に接点部15が形成されている。
【0012】
図2は第1の実施の形態のメンブレンシートを示す分解図である。図2において、メンブレンシート6は、上部シート6a、下部シート6bおよびスペーサシート6cの3枚のPET製シートから成り、上部シート6aと下部シート6bとの間にスペーサシート6cが挟まれる構成を有している。上部シート6aのスペーサシート6cに対向する面には、Agインキのような導電性インキによるパターン部16aが形成され、パターン部16aには3個の接点8a、14a、15aが形成されている。3個の接点8a、14a、15aはパターン部16aにより互いに接続されている。なお上部シート6aに重ねてキートップ2の位置が二点鎖線で示してある。
【0013】
下部シート6bのスペーサシート6cに対向する面には、同様にAgインキによるパターン部16bと3個の接点8b、14b、15bとが配されている。3個の接点8b、14b、15bはパターン部16bにより互いに接続されている。またスペーサシート6cには、3このスペーサ穴8c、14c、15cが形成されている。
【0014】
上部シート6aの接点8aと下部シート6bの接点8bとがスペーサ穴8cを介して接触可能であり、これらで接点部8を構成する。上部シート6aの接点14aと下部シート6bの接点14bとがスペーサ穴14cを介して接触可能であり、これらで接点部14を構成する。上部シート6aの接点15aと下部シート6bの接点15bとがスペーサ穴15cを介して接触可能であり、これらで接点部15を構成する。スペーサ穴8c、14c、15cの直径と厚さを任意に設定することにより、接点動作荷重を任意に得ることができる。
【0015】
次に動作をさらに図3を用いて説明する。図3は第1の実施の形態における押下動作を示す側面図である。なおここではキートップの端部に押下力が加えられた場合の動作を説明する。図1において、キートップ2の端部に押下力Fが上方から加えられると、リンク機構4、5の働きによりキートップ2は、図3に示すように、左側に傾いた状態で下降する。キートップ2に接しているカップゴム3は、これに伴って押しつぶされる。またリンク機構4側の突起部12が下降して接点部14の上部シート6aを押下する。
【0016】
接点部14の上部シート6aが押下されることにより、上部シート6aの接点14aが下部シート6bの接点14bと接触し、これにより上部シート6aのパターン部16aと下部シート6bのパターン部16bとが導通状態となる。このとき、接点部8が導通していなくても、接点部8が導通したのと同じ状態になる。
【0017】
キートップ2に加えられていた力Fを除去すると、カップゴム3の復元力により、キートップ2が元の位置に戻る。これに伴って接点部14を押下していた突起部12が上昇し、上部シート6aの接点14aと下部シート6bの接点14bが離れ、電気的なオフの状態となる。
【0018】
キートップ2の反対側の端部(図1における右側端部)に押下力Fが加えられた場合には、突起部13が接点部15を押下することにより電気的導通状態が得られる。即ち、左右どちらの端部が押下されても電気的導通状態を得ることができる。
【0019】
以上のように第1の実施の形態によれば、メンブレンシート6に複数の接点部14、15を設け、これに対向するキートップ2の位置に突起部12、13を設けたので、キートップ2の端部が押下された場合でも確実にキー入力状態が得られる効果がある。
【0020】
次に第2の実施の形態を説明する。図4は第2の実施の形態の要部を示す側面図である。第2の実施の形態は、突起部の高さを所定の値に設定するようにしたものである。第2の実施の形態においては、キースイッチの両端部における押下ストロークがキースイッチの中央部における押下ストロークよりも若干長く設定されている。
【0021】
図4(a)はキートップ2が押下されていない状態を示し、図4(b)はキートップ2が押下されていない状態と中央部が最深部まで押下された状態を示す。図4において、突起部12の高さ、即ち、メンブレンシート6から突起部12の先端部12aまでの距離L1は、押下されていない状態のキートップ2とキートップ2の中央部が最深部まで押下された状態のキートップ2との距離L2、即ち、キートップ2の中央部におけるストローク以上に設定されている。即ち、L1≧L2である。
【0022】
しかしながら、メンブレンシート6から突起部12の先端部12aまでの距離L1は、キートップ2の端部におけるストロークよりは短く設定されている。したがって、キートップ2の突起部12側の端部が押下された場合には、キートップ2が最深部まで押下される状態になるまでには、上記第1の実施の形態で説明した接点部14がマージンを持って導通することができる。反対側の突起部13の高さについても同様に設定されている。
【0023】
以上のようにメンブレンシート6から突起部12までの距離L1を、キートップ2の中央部におけるストローク以上と設定することにより、キートップ2の端部を押下した場合でも、十分なストローク量を得ることができ、キートップ2の中央部を押下した場合と同等のストローク感を得ることができる。
【0024】
つぎに本発明の第3の実施の形態を説明する。図5は第3の実施の形態のキースイッチを示す側面図である。第3の実施の形態のキースイッチ21は、メンブレンシート6に設けられた複数の接点部上に、それぞれ弾性体を設けたものである。
【0025】
図5において、メンブレンシート6の接点部14の上部には、弾性体22が設けられている。弾性体22は接点部14を覆うように設けられ、メンブレンシート6に接着されている。キートップ2に形成されている突起部23は、弾性体22の高さの分だけ短くされている。反対側の接点部15の上部にも、弾性体24が接点部15を覆うように設けられている。そして弾性体24の高さの分だけ短くされた突起部25がキートップ2に形成されている。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。なお図5ではリンク機構4、5の一部を切り欠いて示してある。
【0026】
次に第3の実施の形態の動作を図6をさらに用いて説明する。図6は第3の実施の形態における押下動作を示す側面図である。この場合もキートップ2の端部が押下された場合の動作を説明する。図5において、キートップ2の端部に押下力Fが上方から加えられると、リンク機構4、5の働きによりキートップ2は、図6に示すように、左側に傾いた状態で下降する。キートップ2に接しているカップゴム3は、これに伴って押しつぶされる。またリンク機構4側の突起部23が下降して弾性体22を押しつぶす。
【0027】
弾性体22が押しつぶされることにより、接点部14の上部シート6aが押下される。これにより、上部シート6aの接点14aが下部シート6bの接点14bと接触し、これにより上部シート6aのパターン部16aと下部シート6bのパターン部16bとが導通状態となる。このとき、接点部8が導通していなくても、接点部8が導通したのと同じ状態になる。
【0028】
キートップ2に加えられていた力Fを除去すると、カップゴム3および弾性体22、24の復元力により、キートップ2が元の位置に戻る。これに伴って接点部14を押下していた突起部23が上昇し、接点部14が電気的なオフの状態となる。
【0029】
以上のように第3の実施の形態では、第1の実施の形態の有する効果に加えて、接点部14、15の上部に弾性体22、24を設けたので、これら接点部14、15の上部が突起部の押下により傷つけられるのを防止することができる効果を有する。
【0030】
上記第3の実施の形態では、弾性体22、24をメンブレンシート6に接着しているが、これに限らず、例えば、リンク機構4、5の中央の空間部内に弾性体を接着すること無く配置するようにしてもよい。この場合は、弾性体をリンク機構4、5の中央の空間部の形状に合わせた形状とし、ずれないように配置することが望ましい。
【0031】
なお上記各実施の形態では、リンク機構を有するキースイッチに接点部およびそれに対向する突起部を設けた例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、リンク機構を持たないキースイッチにも適用可能である。
【0032】
また本発明は、ノート型パーソナルコンピュータに使用されるキースイッチに限らず、各種入力装置のスイッチに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施の形態のキースイッチを示す側面図である。
【図2】第1の実施の形態のメンブレンシートを示す分解図である。
【図3】第1の実施の形態における押下動作を示す側面図である。
【図4】第2の実施の形態の要部を示す側面図である。
【図5】第3の実施の形態のキースイッチを示す側面図である。
【図6】第3の実施の形態における押下動作を示す側面図である。
【図7】従来のキースイッチ構造を示す側面図である。
【図8】メンブレンシートを示す分解図である。
【符号の説明】
【0034】
2 キースイッチ
4、5 リンク機構
6 メンブレンシート
11、21 キースイッチ
12、13 突起部
14、15 接点部
22、24 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップを押下することにより、上部シートと下部シートから成るメンブレンシート上に形成された接点を閉合するキースイッチ構造において、
前記キートップの下方のメンブレンシート上に複数の接点部を形成し、前記複数の接点部は前記上部シートおよび前記下部シートにおいてそれぞれパターン部で互いに接続されるとともに前記接点に接続されており、
前記複数の接点部に対向する前記キートップの位置にそれぞれ突起部を設けたことを特徴とするキースイッチ構造。
【請求項2】
前記突起部と前記メンブレンシートとの距離は前記キートップの中央が押下されたときのストローク量以上に設定される請求項1記載のキースイッチ構造。
【請求項3】
前記複数の接点部に対向して弾性体が設けられる請求項1記載のキースイッチ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−40699(P2006−40699A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218716(P2004−218716)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】