説明

キートップフィルムの製造方法およびキートップフィルム製造機

【課題】0.1〜2mm程度の厚さのキートップ部を備えたキートップフィルムを簡単に製造することのできるキートップフィルムの製造方法を提案すること。
【解決手段】キートップフィルム製造機100では、凸状のキートップ部に対応する凹状部104aが形成された平坦な成形面104bを備えた成形金型104の凹状部104aに紫外線硬化樹脂を充填する。成形面104bの上に基材フィルム107をガラス板136で軽く押し付け密着させ、この状態でガラス板136の上から紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂を硬化させる。硬化後に、ガラス板136を外し、基材フィルム107の部分107Aを成形面104bから剥がす。基材フィルムの部分107Aの表面に硬化した紫外線硬化樹脂からなるキートップ部が一体形成されたキートップフィルムが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの移動体通信機器、その他の電子機器における操作パネルのトップフィルムとして用いられる凸状のキートップ部が基材フィルムの表面に形成された構成のキートップフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器、例えば、携帯電話の操作パネルとしては、合成樹脂の透明な基材フィルムの表面に凸状の透明なキートップ部が形成され、基材フィルムの裏面における各キートップ部に対応する部分に数字、文字、図形などが印刷された構成のキートップフィルムが用いられている。操作パネルにおけるキートップフィルムの裏面には、各キートップ部に対応する部位に接点スイッチなどが配列されており、キートップ部を押すと、対応する接点スイッチがオンして入力操作を行うことができるようになっている。
【0003】
基材フィルムの表面に凸状のキートップ部を形成する方法、すなわち、キートップフィルムの製造方法としては、エンボス加工法、ポッティング加工法、凹版成型法が知られている。特許文献1にはポッティング加工法によるパネルスイッチ板の製造方法が開示されている。ここでは、基材フィルム上のスイッチ押圧位置の中心に、中央部が盛り上がった形状になるように樹脂を滴下し、しかる後に、当該樹脂を硬化させて、凸円弧状のキートップ部を形成するようにしている。
【0004】
この方法では、液状樹脂を滴下してキートップ部を形成しているので、キートップ部の形状に制限があり、また、その高さにも限界がある。したがって、携帯電話などにおいて用いられている矩形のキートップ部を形成するには適していない。また、その高さに限界があるので、キー操作時に良好な操作感を得ることができない。
【0005】
特許文献2には凹版成型法が記載されている。ここでは、回転ドラム表面の凹部に紫外線硬化型樹脂を充填した後に、当該回転ドラム表面に基材フィルムを圧着させながら紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、基材フィルムの上に紫外線硬化型樹脂からなる凸状のキートップ部を転写するようにしている。
【0006】
この方法では、回転ドラム表面に凹部を形成する必要があるので、製造工程が複雑であり、手間やコストの点から、少量多種生産には適さない。また、キートップ部の突出高さに限界があり、0.3mm程度以上の高さ(厚さ)のキートップ部を形成することが困難である。このため、キートップ部の面外剛性が低く、キー操作時の操作感が悪いという問題点がある。
【特許文献1】特開平5−62558号公報
【特許文献2】特公平2−2403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、従来の問題点に鑑みて、操作感を改善するために0.3mmよりも厚いキートップ部を精度良く簡単に形成することのできるキートップフィルムの製造方法および製造装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のキートップフィルムの製造方法は、
合成樹脂製の基材フィルム、および、この基材フィルムの表面に形成されている複数の凸状のキートップ部を有するキートップフィルムの製造方法において、
前記キートップ部に対応する複数の凹状部が平坦な表面に形成された構成の成形面を備えた成形金型を、前記成形面が上を向いた状態で定まった位置に水平に保持する金型保持工程と、
この成形金型の成形面に、紫外線を透過する基材フィルムを対峙させた状態で、この成形金型の成形面の各凹状部に、脱気装置によって脱気した後の紫外線硬化型樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記成形金型の成形面に前記基材フィルムを押し付けて密着させるフィルム押さえ工程と、
前記基材フィルムの上から紫外線を照射して、前記凹状部に充填した前記紫外線硬化型樹脂が前記基材フィルムに対して所定の密着強度で接着した状態を形成する樹脂硬化工程と、
前記紫外線硬化型樹脂からなるキートップ部が接着した前記基材フィルムを、前記成形面から剥がすフィルム剥離工程と、
剥離後の前記キートップ部に紫外線を照射して当該キートップ部を完全に硬化させる紫外線照射工程とを有することを特徴としている。
【0009】
この場合、紫外線を透過する長尺状の前記基材フィルムを、前記成形金型の前記成形面の真上の位置を経由する搬送経路に沿って一定量だけ送り出す基材フィルム送り出し工程と、
前記基材フィルムの送りを止めて、当該基材フィルムが送り方向に移動しないようにクランプするフィルムクランプ工程と、
前記基材フィルムのクランプを解除するフィルムクランプ解除工程とを有しており、
前記金型保持工程の後に、前記基材フィルム送り出し工程および前記フィルムクランプ工程を行い、しかる後に、前記樹脂充填工程を行い、
前記樹脂硬化工程の後に、前記フィルム剥離工程を行ない、しかる後に、前記フィルムクランプ解除工程を行なうことが望ましい。
【0010】
また、前記樹脂充填工程後に、スキージを前記基材フィルムの上から前記成形面に押し付けながら基材フィルムに沿って移動させて、これらの間の余分な前記紫外線硬化型樹脂を一方に押し出すと共に、前記成形面と前記基材フィルムの間を真空吸引することにより、スキージにより押し出された余分な前記紫外線硬化型樹脂を、これらの間から回収することが望ましい。
【0011】
さらに、前記成形金型の成形面の真上に位置している基材フィルムの部分を、当該基材フィルムの搬送方向の上流側および下流側の部位に配置したローラの間に引張り状態で架け渡しておき、
前記フィルムクランプ工程では、前記下流側に配置したローラの外周面に前記基材フィルムを固定し、
前記フィルム剥離工程では、前記下流側に配置したローラを前記上流側に配置したローラの側に向けて転動させることにより、当該下流側に配置したローラに、前記紫外線硬化型樹脂からなるキートップ部が接着した前記基材フィルムの部分を巻き取ることにより、当該基材フィルムの部分を前記成形面から剥がすことが望ましい。
【0012】
携帯電話などにおける操作パネル用のキートップフィルムの場合には、基材フィルムを厚さが0.05mm〜0.25mmの範囲内のものとし、凹状部の深さを、0.1mm〜2.0mmの範囲内とすることが望ましい。
【0013】
次に、本発明は、合成樹脂製の基材フィルム、および、この基材フィルムの表面に形成されている複数の凸状のキートップ部を有するキートップフィルムを製造するキートップフィルム製造機であって、
前記キートップ部に対応する複数の凹状部が平坦な表面に形成された構成の成形面を備えた成形金型と、
当該成形金型を上向き状態で水平に支持している型支持台と、
長尺状の前記基材フィルムを、前記成形金型の前記成形面に対峙する位置を経由する搬送経路に沿って一定量ずつ送り出すフィルム送り機構と、
前記基材フィルムが送り方向に移動しないようにクランプするフィルムクランプ機構と、
紫外線硬化型樹脂の混入気泡を除去する膜式脱気装置と、
前記膜式脱気装置によって脱気された紫外線硬化型樹脂を前記成形面と前記基材フィルムの間に供給する樹脂充填機構と、
前記成形面および前記基材フィルムの間の余分な前記紫外線硬化型樹脂を一方向に押し出すスキージ装置と、
前記スキージ装置により押し出される余分な前記紫外線硬化型樹脂を、これらの間から回収する樹脂回収機構と、
前記スキージ装置および前記樹脂回収機構によって余分な前記紫外線硬化型樹脂が回収された後の前記成形金型の成形面に、当該成形面に対峙している前記基材フィルムの部分を密着させるフィルム押さえ機構と、
前記基材フィルムを介して前記凹部に充填された紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して、当該紫外線硬化型樹脂が前記基材フィルムに対して所定の密着強度で接着した状態を形成する紫外線照射ランプと、
前記紫外線硬化型樹脂が接着した前記基材フィルムの部分を前記成形面から剥がすフィルム剥離機構とを有していることを特徴としている。
【0014】
ここで、前記フィルム送り機構は、前記成形金型の成形面の真上に位置している基材フィルムの部分を、当該基材フィルムの搬送方向の上流側および下流側の部位において引張り状態で支持している上流側ローラおよび下流側ローラを備えており、
前記樹脂剥離機構は、前記基材フィルムを前記下流側ローラの外周面に固定した状態で、当該下流側ローラを前記上流側ローラに向けて転動させて、当該下流側ローラに前記基材フィルムを巻き取るローラ移動機構を備えていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、凹状部が形成されている平坦な成形面を備えた成形金型を用いてキートップ部を基材フィルムの表面に一体形成している。回転ドラム表面に凹状部を形成してキートップ部を形成する場合に比べて、より高い(厚い)キートップ部を精度良く、しかも、簡単に形成できる。また、平板状の成形金型を用いればよいので金型製造コストも回転ドラム型の場合に比べて廉価である。さらに、各種の成形金型を搬送ラインに沿って搬送しながら各工程を行えば、小量多種生産にも対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したキートップフィルムの製造方法の実施の形態を説明する。
【0017】
図1および図2は、本発明の実施の形態に係るキートップフィルム製造機を示す正面図および側面図である。図3(a)〜(c)は、それぞれ、紫外線照射ランプユニットを示す部分断面図、成形金型および型支持台を示す部分平面図、および成形金型の成形面を示す平面図である。また、図4は紫外線硬化型樹脂(以下、単に「樹脂」と呼ぶこともある。)の供給回収系を示す説明図である。
【0018】
これらの図を参照して説明すると、キートップフィルム製造機100は装置架台102を備え、この装置架台102の上に型支持台103が取り付けられている。型支持台103の水平な上面には成形金型104が上向き状態で水平に固定されている。型支持台103の内部には温度調節器103aが内蔵されており、当該温度調節器103aによって成形金型104の温度を制御可能となっている。
【0019】
成形金型104は、図3(c)に示すように1個取り用の成形金型である。成形金型104の平坦な長方形の成形面104bには、図3(b)に示すように、キートップ部を形成するための成形用の凹状部104aが複数の箇所に形成されている。また、成形金型104の長辺方向の両端部の中央には、当該成形金型104の厚さ方向に貫通している樹脂注入穴104dおよび真空吸引穴104cがそれぞれ形成されている。樹脂注入穴104dの上端開口は成形面104bに露出しており、その下端開口には樹脂注入管106が接続されている。
【0020】
樹脂注入管106は、図1、図4に示すように、膜式脱気装置140を介してディスペンサ150に接続されている。ディスペンサ150は加圧タンク160に接続されており、紫外線硬化型樹脂が供給される。したがって、加圧タンク160には、脱気された後の紫外線硬化型樹脂が貯留される。樹脂注入時における膜式脱気装置140によって除去された気体は脱気用真空ポンプ141を介して排出される。また、樹脂注入時における膜式脱気装置140の残圧は、残圧抜きバルブ142を介して排出される。これにより、成形面104bにおける樹脂注入穴104d付近の樹脂の盛り上がり不良の発生を回避できる。
【0021】
一方、図3(b)に示すように、真空吸引穴104cの上端開口は成形面104bに露出しており、真空吸引穴104cの下端開口には真空吸引管105が接続されている。この真空吸引穴104cは、図1、図4に示すように、真空吸引管105を介して回収タンク170に接続されており、回収タンク170は真空吸引装置171に接続されている。
【0022】
次に、キートップフィルム製造機100は、成形金型104の真上を通る搬送経路に沿って、紫外線を透過する長尺状の基材フィルム107を間欠送りするためのフィルム送り機構110を備えている。図1から分かるように、フィルム送り機構110は、一定幅の長尺状の基材フィルム107がロール状に巻き取られている構成のフィルムロール111と、ここから繰り出される長尺状の基材フィルム107が架け渡されている上流側バッファローラ112、送りローラ113、剥がしローラ114、および、下流側バッファローラ115を備えている。下流側バッファローラ115から送り出される基材フィルム107の部分は、紫外線照射装置190を経由した後に、プレス機200まで送り出され、プレス機200においてキートップシートがプレス抜きされる。
【0023】
上流側バッファローラ112および下流側バッファローラ115は、回転自在および上下に移動可能な状態で支持されており、常に、ばね力によって上方に付勢されている。これにより、基材フィルム107には一定の張力が付与されており、基材フィルム107に過剰な張力が作用する場合には、これらのローラ112、115が下方に移動して張力が緩和されるようになっている。
【0024】
送りローラ113および剥がしローラ114は、成形金型104の両側において同一高さ位置に配置されている。これらの間には、基材フィルム107の部分107Aが水平に架け渡され、成形金型104の成形面104bに僅かの間隔で対峙している。基材フィルム107の送り方向の下流側に位置している剥がしローラ114は、装置架台102に取り付けたローラ移動ユニット120に搭載されている。ローラ移動ユニット120によって、剥がしローラ114は、図1において実線で示す初期位置114Aから想像線で示す剥離位置114Bまでの間を転動可能である。剥離位置114Bは、成形金型104の成形面104bよりも送りローラ113の側の位置である。剥がしローラ114およびローラ移動ユニット120によってフィルム剥離機構が構成されている。
【0025】
剥がしローラ114の直下には、ローラ移動ユニット120によって支持されているフィルムクランプ121が配置されている。フィルムクランプ121によって基材フィルム107を剥がしローラ114の外周面に押し付けてクランプすると、当該基材フィルム107を送り方向に沿って前進および後退させることが出来ないフィルムクランプ状態が形成される。フィルムクランプ121によるフィルムクランプを解除すると、基材フィルム107を送り出すことが可能な状態に戻る。フィルムクランプ状態で剥がしローラ114を送りローラ113の側に転動させることにより、当該剥がしローラ114の外周面に、基材フィルム107における成形金型104の真上に位置している部分107Aを巻き付けることができる。
【0026】
次に、成形金型104の成形面104bの上方には、装置架台102に取り付けたスキージ装置180が配置されている。スキージ装置180は、成形面104bに対して、基材フィルム107の搬送方向の下流側に位置しており、ここから、成形面104bよりも上流側の位置までの間を水平に往復移動可能である。スキージ装置180のスキージ181は昇降可能であり、降下位置においては、基材フィルム107を成形面104bに押し付け可能である。
【0027】
次に、型支持台103の後側には、装置架台102に搭載された上下スライドユニット130が配置されている。上下スライドユニット130の昇降腕131には紫外線照射ランプユニット132が取り付けられており、ここに内蔵されている紫外線照射ランプから下向きに紫外線が照射されるようになっている。照射が不要な場合にはシャッタ133により射出開口132aを封鎖可能となっている。
【0028】
紫外線照射ランプユニット132は、昇降腕131に対して、水平方向(基材フィルム107の搬送方向に直交する方向)にスライド可能な状態で支持されており、不図示のスライド機構によってスライド可能である。また、昇降腕131には、紫外線照射ランプユニット132の下端の射出開口132aの下側位置に、枠ユニット134が取り付けられている。枠ユニット134の下側には、図3(c)において想像線で示すように、成形金型104の成形面104bとほぼ同一の大きさの矩形のガラス板136が水平に取り付けられている。このガラス板136の下面における両側の端部の中央には紫外線遮蔽用のマスク板137a、137bが貼り付けられている。図3(c)に斜線で示すように、マスク板137a、137bは、それぞれ、成形金型104の真空吸引穴104c、樹脂注入穴104dを包含する大きさであり、これらの部分への紫外線照射を遮蔽するためのものである。
【0029】
次に、図5はキートップフィルム製造機100の動作を示す概略フローチャートであり、図6および図7は各動作状態を示す説明図である。これらの図を参照して、キートップフィルム製造機100の動作を説明する。
【0030】
まず、成形金型104は上向き状態で型支持台103にセットされ、長尺状の基材フィルム107は、フィルムロール111から引き出されてフィルム送り機構110の各ローラに架け渡された状態にセットされる。
【0031】
この状態において、フィルム送り機構110を駆動して、長尺状の基材フィルム107を、成形金型104の成形面104bの真上の位置を経由する搬送経路に沿って一定量だけ送り出して、基材フィルム107の所定の部分107Aを、成形面104bの真上に位置決めする(図5のステップST1)。次に、基材フィルム107の送りを止めて、当該基材フィルム104が送り方向に移動しないようにフィルムクランプ121によって基材フィルム107を剥がしローラ114の外周面にクランプする(図5のステップST2)。
【0032】
基材フィルム107をクランプした後は、スキージ装置180を駆動して、スキージ181を降下させ、成形金型104の成形面104bにおける樹脂注入穴104dに対して、基材フィルム搬送方向の上流側に位置決めする(図5のステップST3)。これにより、図6(a)に示すように、スキージ181によって、基材フィルム107の部分107Aの上流側の部位が成形面104bに押し付けられた状態が形成される。
【0033】
この後は、加圧タンク140から樹脂注入穴104dに紫外線硬化型樹脂を加圧状態で供給して、成形面104bと基材フィルム107の部分107Aとの間の僅かな隙間に、紫外線硬化型樹脂を所定量注入する(図5のステップST4)。図6(b)は樹脂充填状態を示してある。
【0034】
次に、スキージ装置180を駆動して、そのスキージ181を基材フィルム上流側に向けてスライドさせる。スキージ181によって、基材フィルム107の部分107Aを介して樹脂が下流側に押し出されながら、成形面104bの各凹状部104aに確実に充填された状態が形成される。図6(c)に示すように、スキージ181が成形面104bにおける基材フィルム搬送方向の中程の位置に至った後は、スキージ181のスライドと共に、真空吸引穴104cを介して真空引きを行なう(図5のステップST5)。真空引きによって、余分な樹脂が真空吸引穴104cを介して排出され、所定場所に回収される。スキージ181が成形面104bにおける真空吸引穴104cを超える位置まで移動すると、樹脂が各凹状部104aに充填された状態が形成される。図6(d)にはこの状態を示してある。スキージ181の加圧力を適切に設定しておくことにより、樹脂を各凹状部104aに確実に充填することができ、また、余分な樹脂を確実に真空吸引穴104cに向けて押し出すことができる。
【0035】
次に、スキージ装置180を更に上流側に退避させた後に、昇降腕131を降下させて、紫外線照射ランプユニット132および枠ユニット134を降下させる。これにより、ガラス板136の下面が基材フィルム107の成形面に対峙している部分107Aの全体に軽く押し付けられ、当該部分107Aが成形面2bに密着させられた状態が形成される(図5のステップST6)。図7(a)には、この状態を示してある。
【0036】
次に、シャッタ133を開き、上方から紫外線照射ランプユニット132によって紫外線を照射する。紫外線は、ガラス板136および基材フィルムの部分107Aを透過して成形金型104の凹状部104aに充填されている紫外線硬化型樹脂を照射し、当該紫外線硬化型樹脂が硬化する(図5のステップST7)。ここで、本例では、紫外線照射ランプユニット132を昇降腕131に沿って、基材フィルム107の搬送方向とは直交する方向に向けて、水平に往復移動させながら紫外線を照射している。固定した位置で紫外線を照射すると、成形面104aの全体に対して照射ムラが発生し、各凹状部104aの樹脂を均一に硬化させることができないことがある。本例では、このような弊害を確実に回避できる。紫外線照射ランプユニット132を、基材フィルムの搬送方向などに移動させながら紫外線を照射してもよい。
【0037】
また、本例では、紫外線照射量を、紫外線硬化樹脂が基材フィルムの部分107Aに接着して、所定の密着強度が確保される程度に制御している。紫外線照射量を制御して、紫外線硬化樹脂の硬化状態を調整することにより、次の工程において、成形面104aからの樹脂の剥離が容易になる。
【0038】
さらに、真空吸引穴104c、樹脂注入穴104dの部分はマスク板137a、137bによって紫外線が当たらないように遮蔽されている。したがって、真空吸引穴104c、樹脂注入穴104d内の紫外線硬化型樹脂が硬化してしまうことを防止できる。
【0039】
この後は、シャッタ133を閉じると共に、上下スライドユニット130の昇降腕131を上昇させて、基材フィルムの部分107Aの押さえを解除する(図5のステップST8)。この状態を図7(b)に示してある。
【0040】
しかる後に、ローラ移動ユニット120を駆動して、剥がしローラ114を初期位置114Aから送りローラ113の側の剥離位置114Bまで転動させる。この結果、図7(c)に示すように、成形金型104の成形面104bに密着していた基材フィルムの部分107Aが成形面104bから剥がされながら、転動する剥がしローラ114の外周面に巻き付けられる(図5のステップST9)。図7(c)は、紫外線硬化型樹脂からなるキートップ部が接合した基材フィルムの部分107Aが、剥がしローラ114の外周面に巻き付けられた状態を示してある。この後は、剥離位置114Bまで移動した剥がしローラ114は再び初期位置114Aまで戻され、しかる後に、フィルムクランプ121による基材フィルム107のクランプを解除する(図5のステップST10)。
【0041】
この後は、再びフィルム送り出し工程(図5のステップST1)に戻り、基材フィルム107を一定量だけ送り出して、新たな基材フィルム107の部分を成形金型104の成形面104bの真上に位置させ、以後の各工程を行う。
【0042】
なお、剥離後の基材フィルム107の部分には、後工程において、紫外線照射装置190(図1参照)による紫外線照射を行い、そこに一体化されている樹脂を完全に硬化させる。この後に、完全に硬化した紫外線硬化型樹脂からなるキートップ部が一体形成された長尺状の基材シート107は、プレス機200まで送り出され、プレス機200において基材フィルム107からキートップ部が一体形成された部分がプレス抜きされ、キートップフィルムが得られる。
【0043】
なお、理解を容易にするために1個取りのキートップフィルム製造機について説明したが、多数個取り用の成形金型を用いて、多数枚ずつキートップフィルムを製造することもできる。
【0044】
図8は、2個取り用の成形金型の例と、これにより得られるキートップフィルムの例を示す説明図である。キートップフィルム40は、2枚取り用のキートップフィルムであり、裁断することによって、2枚分のキートップフィルム40A、40Bが得られる。各キートップフィルム40A、40Bには、テンキー用、機能キー用の矩形凸状のキートップ部40aが複数形成されている。また、装飾用の凸部40bも形成されている。これらのキートップ部40a、装飾用の凸部40bに対応した形状および深さの凹状部2aが成形金型2の成形面2bに形成されている。なお、キートップフィルム40の裏面における各キートップ部、装飾用の凸部に対応する部位には、数字、記号、文字、模様などが印刷される。
【0045】
なお、液状の紫外線硬化型樹脂としては、光重合型プレポリマーとモノマーを含む主剤に光重合開始剤などを添加した市販のものを用いることができる。また、必要に応じて、充填剤、老化防止剤、反応促進剤、反応抑制剤、安定剤、着色剤などが配合される。主剤としては、アクリル系、メタクリル系、スチレン系、不飽和ポリエステル系、ポリエステルポリオール系、ポリエステルエーテル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系あるいはフェノール系等のモノマーおよび/またはオリゴマー、これらの誘導体のモノマーおよび/またはオリゴマー、若しくは、これらの複数種を混合したものを用いることができる。
【0046】
また、紫外線硬化樹脂としては、硬化収縮が小さく、透明で耐熱性、耐環境性、着色性、成形性等に優れたもの、具体的には、アクリル系、メタクリル系、アリル系、ウレタン系、不飽和ポリエステル系、シリコーン系の材料、またはその誘導体、混合物を用いることが望ましい。
【0047】
合成樹脂製の基材フィルムとしては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン系等の市販のものを用いることができる。また、印刷適性等の観点からポリエステル系、ポリイミド系の0.05mm〜0.25mm厚の透明なものを用いることが望ましい。
【0048】
また、基材フィルムの表面には、紫外線硬化樹脂との密着性を高めると共に、成形金型の成形面からの剥離性を改善するためのコーティング剤を塗布しておくことが望ましい。必要に応じて、紫外線硬化樹脂との密着性を改善するためにコロナ放電、プラズマ処理、UV(紫外線照射)処理、プライマー処理等を施しても良い。
【0049】
次に、成形金型は、種々の材質のもの、例えば、鉄、非鉄金属(合金)、樹脂、セラミックス(ガラス)等を用いることができる。また、成形金型の成形面に形成する凹状部の深さは、携帯電話の操作パネルに用いるキートップフィルムの場合には、約0.1mm〜約2.0mmの範囲内の寸法とすればよい。勿論、これ以外の深さ寸法の凹状部を形成することも可能である。
【0050】
基材フィルムを押えるためのガラス板の代わりに、合成樹脂製などの押さえ板を用いることもできる。いずれの場合においても、紫外線透過性のある素材から形成する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明を適用したキートップフィルム製造機を示す正面図である。
【図2】図1のキートップフィルム製造機の側面図である。
【図3】(a)は紫外線照射ユニットを示す側面図であり、(b)および(c)は、それぞれ、成形金型および型支持台を示す部分平面図および部分断面図である。
【図4】樹脂の供給回収系を示す説明図である。
【図5】図1のキートップフィルム製造機の動作を示す概略フローチャートである。
【図6】キートップフィルム製造機の動作を示す説明図である。
【図7】キートップフィルム製造機の動作を示す説明図である。
【図8】キートップフィルムおよび成形金型の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
2 成形金型
2a 凹状部
2b 成形面
40、40A、40B キートップフィルム
40a キートップ部
40b 装飾用の凸部
100 キートップフィルム製造機
102 装置架台
103 型支持台
104 成形金型
104a 凹状部
104b 成形面
104c 真空吸引穴
104d 樹脂注入穴
105 真空吸引管
106 樹脂注入管
107 基材フィルム
107A 成形面に対峙している基材フィルムの部分
110 フィルム送り機構
111 フィルムロール
112 上流側バッファローラ
113 送りローラ
114 剥がしローラ
114A 初期位置
114B 剥がし位置
115 下流側バッファローラ
120 ローラ移動ユニット
121 フィルムクランプ
130 上下スライドユニット
131 昇降腕
132 紫外線照射ユニット
133 シャッタ
134 枠ユニット
136 ガラス板
137a、137b マスク板
140 膜式脱気装置
141 脱気用真空ポンプ
142 残圧抜きバルブ
150 ディスペンサ
160 加圧タンク
170 回収タンク
171 真空吸引装置
180 スキージ装置
181 スキージ
190 紫外線照射装置
200 プレス機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の基材フィルム、および、この基材フィルムの表面に形成されている複数の凸状のキートップ部を有するキートップフィルムの製造方法において、
前記キートップ部に対応する複数の凹状部が平坦な表面に形成された構成の成形面を備えた成形金型を、前記成形面が上を向いた状態で定まった位置に水平に保持する金型保持工程と、
この成形金型の成形面に、紫外線を透過する基材フィルムを対峙させた状態で、この成形金型の成形面の各凹状部に、脱気装置によって脱気した後の紫外線硬化型樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記成形金型の成形面に前記基材フィルムを押し付けて密着させるフィルム押さえ工程と、
前記基材フィルムの上から紫外線を照射して、前記凹状部に充填した前記紫外線硬化型樹脂が前記基材フィルムに対して所定の密着強度で接着した状態を形成する樹脂硬化工程と、
前記紫外線硬化型樹脂からなるキートップ部が接着した前記基材フィルムを、前記成形面から剥がすフィルム剥離工程と、
剥離後の前記キートップ部に紫外線を照射して当該キートップ部を完全に硬化させる紫外線照射工程とを有することを特徴とするキートップフィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のキートップフィルムの製造方法において、
紫外線を透過する長尺状の前記基材フィルムを、前記成形金型の前記成形面の真上の位置を経由する搬送経路に沿って一定量だけ送り出す基材フィルム送り出し工程と、
前記基材フィルムの送りを止めて、当該基材フィルムが送り方向に移動しないようにクランプするフィルムクランプ工程と、
前記基材フィルムのクランプを解除するフィルムクランプ解除工程とを有しており、
前記金型保持工程の後に、前記基材フィルム送り出し工程および前記フィルムクランプ工程を行い、しかる後に、前記樹脂充填工程を行い、
前記樹脂硬化工程の後に、前記フィルム剥離工程を行ない、しかる後に、前記フィルムクランプ解除工程を行なうことを特徴とするキートップフィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のキートップフィルムの製造方法において、
前記樹脂充填工程後に、スキージを前記基材フィルムの上から前記成形面に押し付けながら基材フィルムに沿って移動させて、これらの間の余分な前記紫外線硬化型樹脂を一方に押し出すと共に、前記成形面と前記基材フィルムの間を真空吸引することにより、スキージにより押し出された余分な前記紫外線硬化型樹脂を、これらの間から回収することを特徴とするキートップフィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項2に記載のキートップフィルムの製造方法において、
前記成形金型の成形面の真上に位置している基材フィルムの部分を、当該基材フィルムの搬送方向の上流側および下流側の部位に配置したローラの間に引張り状態で架け渡しておき、
前記フィルムクランプ工程では、前記下流側に配置したローラの外周面に前記基材フィルムを固定し、
前記フィルム剥離工程では、前記下流側に配置したローラを前記上流側に配置したローラの側に向けて転動させることにより、当該下流側に配置したローラに、前記紫外線硬化型樹脂からなるキートップ部が接着した前記基材フィルムの部分を巻き付けることにより、当該基材フィルムの部分を前記成形面から剥がすことを特徴とするキートップフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載のキートップフィルムの製造方法において、
前記基材フィルムは、厚さが0.05mm〜0.25mmの範囲内であり、
前記凹状部の深さは、0.1mm〜2.0mmの範囲内であることを特徴とするキートップフィルムの製造方法。
【請求項6】
合成樹脂製の基材フィルム、および、この基材フィルムの表面に形成されている複数の凸状のキートップ部を有するキートップフィルムを製造するキートップフィルム製造機であって、
前記キートップ部に対応する複数の凹状部が平坦な表面に形成された構成の成形面を備えた成形金型と、
当該成形金型を上向き状態で水平に支持している型支持台と、
長尺状の前記基材フィルムを、前記成形金型の前記成形面に対峙する位置を経由する搬送経路に沿って一定量ずつ送り出すフィルム送り機構と、
前記基材フィルムが送り方向に移動しないようにクランプするフィルムクランプ機構と、
紫外線硬化型樹脂の混入気泡を除去する膜式脱気装置と、
前記膜式脱気装置によって脱気された紫外線硬化型樹脂を前記成形面と前記基材フィルムの間に供給する樹脂充填機構と、
前記成形面および前記基材フィルムの間の余分な前記紫外線硬化型樹脂を一方向に押し出すスキージ装置と、
前記スキージ装置により押し出される余分な前記紫外線硬化型樹脂を、これらの間から回収する樹脂回収機構と、
前記スキージ装置および前記樹脂回収機構によって余分な前記紫外線硬化型樹脂が回収された後の前記成形金型の成形面に、当該成形面に対峙している前記基材フィルムの部分を密着させるフィルム押さえ機構と、
前記基材フィルムを介して前記凹部に充填された紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して、当該紫外線硬化型樹脂が前記基材フィルムに対して所定の密着強度で接着した状態を形成する紫外線照射ランプと、
前記紫外線硬化型樹脂が接着した前記基材フィルムの部分を前記成形面から剥がすフィルム剥離機構とを有していることを特徴とするキートップフィルム製造機。
【請求項7】
請求項6に記載のキートップフィルム製造機において、
前記フィルム送り機構は、前記成形金型の成形面の真上に位置している基材フィルムの部分を、当該基材フィルムの搬送方向の上流側および下流側の部位において引張り状態で支持している上流側ローラおよび下流側ローラを備えており、
前記樹脂剥離機構は、前記基材フィルムを前記下流側ローラの外周面に固定した状態で、当該下流側ローラを前記上流側ローラに向けて転動させて、当該下流側ローラに前記基材フィルムを巻き取るローラ移動機構を備えていることを特徴とするキートップフィルム製造機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−135083(P2009−135083A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211129(P2008−211129)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(507289438)株式会社山口特殊印刷 (3)
【Fターム(参考)】