説明

キートップ

【課題】斬新な外観をもたらすことのできる簡素な構成の照光式のキートップを提供する。
【解決手段】携帯用電子機器の押釦スイッチに用いる、複数のキーボタンが一体的に形成された透光性を有するキートップ10であって、表面26側からキーボタンに加えられた押圧力をキーボタンの裏面12側に設けられたキーベース22に伝達し、キーボタンの表裏方向とは略直交する横方向に光を搬送し、一部の光を表面26側に出射可能なキートップ10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
携帯電話機や携帯情報端末装置(PDA:Personal Digital Assistance)を始めとする携帯用電子機器の押釦スイッチに用いられるキートップに関し、特に、照光式のキートップに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や携帯情報端末装置(PDA)を始めとする携帯用電子機器の押釦スイッチに用いるキートップとして、照光式のキートップが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示される照光式キートップは、裏面に凹状の光反射溝と遮光部とが形成された透光性の硬質樹脂のキートップからなる。そして、キートップの裏面側の基板上に設けられたLED素子から放たれた光がキートップの側方からキートップ内部に入り、光反射溝によって表面へ反射されることにより、光反射溝による文字、数字などの表示要素が際立つように照光されるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−26837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の従来の照光式のキートップは、文字、数字などの表示要素と対応する形状の光反射溝をキートップの裏面に設ける必要があり、設計および製造コストが掛かるうえ、照光によってスイッチ操作者に与える印象形成には限界があった。このため、簡素な構造でかつ斬新な外観を呈する照光式キートップの開発が求められていた。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来とは異なる斬新な外観をもたらすことのできる簡素な照光式のキートップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るキートップの1つの実施態様は、携帯用電子機器の押釦スイッチに用いる、複数のキーボタンが一体的に形成された透光性を有するキートップであって、表面側から前記キーボタンに加えられた押圧力を前記キーボタンの裏面側に設けられたキーベースに伝達し、前記キーボタンの表裏方向とは略直交する横方向に光を搬送し、一部の光を前記表面側に出射可能なことを特徴とする。
【0007】
本実施態様によれば、キートップはキーベース側へ押圧力を伝達して押釦スイッチとして機能することができると同時に、キートップの側方向からキートップ内部に入り込んだ光を横方向に搬送し、その一部を表面側から出射することができる。つまり、本実施態様では、キートップが導光板としての機能も有する。この光の照明により、キートップ内からの表示が外部から認識され得る。
【0008】
本発明に係るキートップのその他の実施態様は、上記において、前記キートップが弾性材料からなることを特徴とする。
【0009】
本実施態様によれば、キートップが弾性材料から構成されることによって、より容易に表裏方向に変位可能にすることができる。
【0010】
本発明に係るキートップのその他の実施態様は、上記において、前記キートップの表面に、前記キートップの表面側から外部へ出射する光の方向を前記表面全体にわたり略同一方向にする屈折面が形成されることを特徴とする。
【0011】
本実施態様によれば、キートップ表面に形成された屈折面が、キートップの表面側から外部へ出射する光の方向を表面全体にわたり略同一方向にするので、キートップ内からの表示は歪んで認識される恐れを効果的に低減できる。
【0012】
本発明に係るキートップのその他の実施態様は、上記において、前記キートップの表面に、前記キートップを複数の前記キーボタンに分割する凹溝が設けられることを特徴とする。
【0013】
本実施態様によれば、凹溝によってキートップに複数のキーボタンが形成される。凹溝の断面は断面二次モーメントが小さく弾性変形し易いので、各キーボタンは個々独立して表裏方向に変位可能となる。また、凹溝の断面は薄いので視覚的に他の部分よりも明るく認識され得る。
【0014】
本発明に係るキートップのその他の実施態様は、上記において、前記凹溝の領域が着色されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、凹溝の領域に施された着色については、光が透過可能なような着色も含まれるし、基本的に光を透過させない遮光処理を施した場合も含まれる。
前者においては、様々な色の光をキートップ表面から出射させて意匠性を高めることができる。また、後者においては、遮光処理部分によって、キートップ内部を導かれて表面に達した光を遮断して、外部に漏れ出ないようにすることができるので、各キーボタンを明確に区分し、さらに斬新な印象を形成することにも役立つ。
【0016】
本発明に係るキートップのその他の実施形態は、上記において、前記キーベースの前記キートップ側の面に示された表示が前記キートップの表面側から視認可能であることを特徴とする。
【0017】
本実施態様においては、キートップに文字、数字、記号等を描かない場合であっても、このキーベース側の表示によって、押釦スイッチの機能を果たすための表示を行なうことができる。
【0018】
本発明に係るキートップのその他の実施形態は、上記において、前記キーベースの前記キートップ側の面の少なくとも一部がディスプレイ装置の表示面で構成され、該表示面の表示が前記キートップの表面側から視認可能であることを特徴とする。
【0019】
本実施態様によれば、ディスプレイ装置によりキーベースのキートップ側の面に示された表示は、キートップ内部に入り込んだ光により照らされて外部から認識され得る。よって、ディスプレイ装置の表示を変更することにより、押釦スイッチの表示を任意に変更することができる。
【0020】
本発明に係るキートップのその他の実施形態は、上記において、前記キートップの側方に少なくとも1個の光源が設けられ、前記光源から発光される光が前記キートップ内部に入ることを特徴とする。
【0021】
ここで、光源としては、LED(Light-Emitting Diode)、有機EL(Electroluminescenece)を始めとする任意の発光素子、発光装置を用いることができる。本実施態様によれば、キートップ側方に設けられた光源から発光される光が、キートップ内部に入り込んでキートップ表面側に導くことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来とは異なる斬新な外観をもたらすことのできる簡素な構成の照光式のキートップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るキートップの実施形態について携帯電話機に用いられる照光式のキートップを例にとり図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るキートップ10が操作パネル2に装着された携帯電話機100の一実施形態を示す概略斜視図である。図2は、本発明に係るキートップ10の一実施形態を示す概略断面図であり、図1のA−A線に沿った図である。また、図3はキートップ10の概略平面図である。
【0024】
本発明に係るキートップ10は、図1に示すような携帯電話機100の操作パネル2に設けられ、一体的な透明なシリコーン系樹脂、エラストマー系樹脂などの透光性を有する弾性材料からなる。また、キートップ10の厚さとして、1mmを例示することができるが、これに限られるものではない。
【0025】
図2に示すように、キートップ10の裏面12側(下面側)には、補強材としての透明フィルム14を介してディスプレイ16が設けられ、さらにその下面側には下側に突出した押し子18を備える押し子シート20が設けられる。この透明フィルム14とディスプレイ16と押し子シート20との積層構造によりキーベース22が構成される。なお、本実施形態では、ディスプレイ16として、電子ペーパー(例えば、電気泳動式ディスプレイ)16が用いられているが、これに限られるものではなく、その他の任意のディスプレイ装置を用いることができる。
【0026】
図3に示すように、キートップ10の側方34の3箇所(左右2箇所および後方1箇所)には、光源としてのLED24が配置される。このLED24は、透光性のキートップ10内部に向かって光を発する。
【0027】
キートップ10の表面26側(上面側)には、一体型のキートップ10を複数のキーボタン10aに区分するための格子状の凹溝28が形成されている。このように凹溝28を形成することにより、押圧操作の際、各キーボタン10aを独立して容易に表裏方向に変位可能にすると同時にクリック感(操作感)を損なわないようにしている。
【0028】
各キーボタン10aにはそれぞれ携帯電話機100を操作するための機能が割り当てられ、電子ペーパー16には、各キーボタン10aに応じてその機能を示す文字、図形、記号、数字、画像等の表示要素が表示されるようになっている。このように電子ペーパー16に表示要素を表示させるようにする場合には、キートップ10に、文字等を印刷する必要は無い。
【0029】
そして、キートップ10を表面側26から押すとキーベース22が撓んで押し子シート20の押し子18の下側に対向して設けられる不図示のメタルドームを押し込んでスイッチをオンし、押圧を解除することによりスイッチをオフするようになっている。
【0030】
キートップ10の表面26側には、表面26から外部へ出射する光の方向を表面26全体で一定方向に均一に揃えるための光学面30(屈折面30)が形成される。より具体的には、キートップ10の表面は、LED24から離れるに従い段階的に変化する複数の傾斜面で構成され、各面の境界線32はLED24を中心とした同心円状を描くようになっている。
【0031】
このようにLED24からの距離に応じてキートップ10の厚みと表面26の傾斜角度とを段階的に変えることにより、キートップ10内部から外部に出る光をキートップ10の表面26全体にわたってほぼ同一方向、例えば真上方向に揃えることができる。これにより、電子ペーパー16による表示が歪んだ状態で視認されないように補正している。
【0032】
上記構成の動作および作用を説明する。
LED24から出射した光は、キートップ10の側方34からキートップ10内部に入る。キートップ10内部に入り込んだ光はキートップ10内部を導かれて、一部は透明フィルム14を透過して電子ペーパー16の表示面16aで反射し、さらにキートップ10内部を通り抜けて表面26の屈折面30から外部に向かって出射する。またキートップ10内部に入り込んだ光の一部は、屈折面30で反射してキートップ10内部に導かれる。このように電子ペーパー16に表示される文字、数字、図形、画像等の表示要素がLED24からの光によって照光されてキートップ10の表面26に歪みなく浮かび上がるので、斬新な外観でもって外部の操作者によって視識され得る。
【0033】
上記の実施形態において、光源としてLED24をキートップ10の側方34の3箇所(左右2箇所および後方1箇所)に配置する場合について説明したが、光源としてLED24をキートップ10の両側(左右2箇所)にのみ設けてもよいし、キートップ10の側面34外周に沿うように設けてもよい。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0034】
上記の実施形態において、光源としてLED24を用いる代わりに、有機ELシートを用いてもよい。この場合、例えば図4に示すように、キートップ10の側面34にELシート36を貼り付けるようにしてもよい。このとき、貼付ける区間はキートップ10全周にわたってもよいし、部分的な区間としてもよく、このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0035】
上記の実施形態において、電子ペーパー16を設ける代わりに他の薄膜平面ディスプレイを配置してもよい。また、電子ペーパー16を設ける代わりに、キートップ10の裏面12に印刷等による加飾を施す構成を用いてもよい。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。また、キートップ10の裏面12に配置された加飾を交換可能にすることもできる。
【0036】
上記の実施形態において、屈折面30の形状は、LED24の位置、出力などの条件により異なる。また、屈折面30は、表示要素が歪んで認識されないものであれば単純な凸面としてもよいし、レンズ効果により若干大きく認識されることを企図したり、立体感のある表示として認識されるような形状の面に形成してもよい。このようにしても、本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0037】
上記の実施形態において、通常、凹溝28は他の部分よりも明るく光るため、これをそのまま意匠性を発揮するように用いてもよいし、凹溝28を塗料で着色することにより透過した着色光が意匠性をより高めるようにしてもよい。また、逆に、凹溝28に光が透過しにくい、または透過しない濃色の着色等により、遮光処理を施してもよい。このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0038】
上記の実施形態において、各キーボタン10aを区分するための凹溝28は、各キーボタン10aをそれぞれ独立して容易に操作でき、かつ、クリック感を損なわない材質および寸法のキートップ10であれば必ずしも設ける必要はなく、このようにしても本発明と同一の作用効果を奏することができる。
【0039】
上記の実施形態において、キートップ10の厚さは1mmの場合を例にとり説明したが、部材強度を考慮すればキートップ10が押圧操作等により損壊しない程度の厚み、例えば0.5mm以上の厚さを有することが好ましい。また、上記の実施形態において、キートップ10の表面26には、意匠的な装飾を施してもよいし、ハードコートを施して耐摩耗性を向上させてもよい。また、上記の実施形態において、キートップ10の表面26に着色した文字、数字等を予め設けつつ、電子ペーパー16に画像を表示させるようにしてもよい。また、凹溝28以外の領域においても、キートップ10の表面26に光抜けを防止するための遮光処理部を設けたり、塗装を施すようにしてもよい。
【0040】
上記の実施形態において、押し子18の形状は上記に限られるものではなく、キートップ10の押圧力をスイッチのオンオフ操作に変換するものであればどのような形状でもよい。また、上記において、押し子18は押し子シート20に設けられる場合について説明しているが、このような態様に限定されず、例えば、不図示の基板上のメタルドームの上面に凸状の押し子を設け、対向するキートップ10からの押圧を伝達するようにしてもよい。
【0041】
なお、上記の実施形態における携帯電話機100の使い方としては、例えば、携帯電話機100を使用する場合に光源LED24が点灯し、電話をかけるときには、電子ペーパー16から数字が表示されたり、またはキーボタン10に予め印刷されている数字が認識されるような使い方が考えられる。また、文字入力を行うときには、電子ペーパー16から入力用の文字表示がなされるような使い方が考えられる。このように、本発明に係るキートップ10は、搭載される機器の使用環境に合わせて適用することが可能である。
【0042】
以上のように、本発明に係るキートップでは、従来とは異なる斬新な外観をもたらすことのできる簡素な構成の照光式のキートップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るキートップが操作パネルに装着された携帯電話機の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係るキートップの一実施形態を示す概略断面図であり、図1のA−A線に沿った図である。
【図3】本発明に係るキートップの概略平面図である。
【図4】本発明に係る他のキートップの概略平面図である。
【符号の説明】
【0044】
2 操作パネル
10 キートップ
10a キーボタン
12 裏面
14 透明フィルム
16 電子ペーパー
18 押し子
20 押し子シート
22 キーベース
24 LED
26 表面
28 凹溝
30 屈折面
32 境界線
34 側方、側面
36 有機ELシート
100 携帯電話機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用電子機器の押釦スイッチに用いる、複数のキーボタンが一体的に形成された透光性を有するキートップであって、
表面側から前記キーボタンに加えられた押圧力を前記キーボタンの裏面側に設けられたキーベースに伝達し、
前記キーボタンの表裏方向とは略直交する横方向に光を搬送し、一部の光を前記表面側に出射可能なことを特徴とするキートップ。
【請求項2】
前記キートップが弾性材料からなることを特徴とする請求項1に記載のキートップ。
【請求項3】
前記キートップの表面に、前記キートップの表面側から外部へ出射する光の方向を前記表面全体にわたり略同一方向にする屈折面が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のキートップ。
【請求項4】
前記キートップの表面に、前記キートップを複数の前記キーボタンに分割する凹溝が設けられることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のキートップ。
【請求項5】
前記凹溝の領域が着色されていることを特徴とする請求項4に記載のキートップ。
【請求項6】
前記キーベースの前記キートップ側の面に示された表示が前記キートップの表面側から視認可能であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のキートップ。
【請求項7】
前記キーベースの前記キートップ側の面の少なくとも一部がディスプレイ装置の表示面で構成され、該表示面の表示が前記キートップの表面側から視認可能であることを特徴とする請求項6に記載のキートップ。
【請求項8】
前記キートップの側方に少なくとも1個の光源が設けられ、前記光源から発光される光が前記キートップ内部に入ることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のキートップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−123479(P2009−123479A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295387(P2007−295387)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(390001487)サンアロー株式会社 (58)
【Fターム(参考)】