説明

キーフレームおよび押釦スイッチ用カバー部材

【課題】 製品に容易に嵌め込むことができ、嵌め込む際の変形を防止する。
【解決手段】 ハードベース41の下辺および側辺には、外側に弾性的に突出する弾性突出部41pが設けられている。この弾性突出部41pは、押釦スイッチ用カバー部材を製品の筐体に嵌め込んだときの固定部材となる。弾性突出部41pの内側には、空間部Sが設けられている。このような空間部Sを設けることによって、弾性突出部41pが外側から押圧された場合に、内側方向に弾性変形した弾性突出部41pを空間部Sに進入させることができる。これにより、ハードベース41の外周ラインから突き出ている弾性突出部41pを、ハードベース41の内側方向に引っ込めるように弾性変形させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯端末に用いるキーフレームおよび押釦スイッチ用カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やPDA等の携帯端末は、今や世界各国で使用されている。したがって、携帯端末のキーに表示される文字は、各国で使用されている言語で印刷する必要がある。従来は、キーに印刷される言語ごとに押釦スイッチ用カバー部材を用意し、製品筐体の裏側から押釦スイッチ用カバー部材を組み込んで固定していた。下記特許文献1には、製品筐体の裏側から組み込まれて固定されるキーシートに関する技術が開示されている。特許文献1の図5には、筐体(101a)の裏側から組み込まれて固定されたキーシート(11)が示されている。このキーシート(11)では、硬質樹脂板(14)の周縁部が、いわゆる爪の役割を果たすことによって筐体(101a)に固定されている。
【0003】
また、従来は、押釦スイッチ用カバー部材の外周上の一部に爪を設けることによって、カバー部材を筐体の表側から嵌め込んで固定することも行われている。図10は、外周上の一部に周知の爪(突出部)が設けられたキーフレームを示したものである。このキーフレームは、押釦スイッチ用カバー部材の底部を支持する部材である。このような薄板状の突出部91pを有するキーフレーム91を用いることによって、予め組み立てられた製品に、言語ごとに用意された押釦スイッチ用カバー部材を後から嵌め込むことが可能となり、製造工程の自由度を増大させることができるようになった。
【特許文献1】特開2004−362891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、外周上の一部に突出部が設けられた押釦スイッチ用カバー部材は、突出部をその極めて低い弾性の範囲内で変形させることによって、筐体に嵌め込まれる。したがって、嵌め込むのに困難を要し、嵌め込む際にキーフレームが変形し易いという問題がある。この問題を解決するために、製品の筐体側に設けられた嵌め込み部分の大きさに余裕を持たせることが考えられる。しかしながら、嵌め込み部分の大きさに余裕を持たせた場合には、カバー部材が位置ずれやガタつきを生じ、キーの操作感が劣化してしまう。また、カバー部材が位置ずれ等を起こすことにより、カバー部材を固定する力が低減してしまい、組み立て後に行われる製品落下試験においてカバー部材が脱落してしまう要因にもなり得る。
【0005】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するために、製品に容易に嵌め込むことができ、嵌め込む際の変形を防止することができるキーフレームおよび押釦スイッチ用カバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のキーフレームは、押釦スイッチ用カバー部材の底部を支持するキーフレームであって、キーフレームの外周の少なくとも一部に形成され、外側に弾性的に突出可能な突出部を備え、この突出部は、内側方向に弾性変形可能であることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、キーフレームの外周の一部に、外側に弾性的に突出可能であって内側方向に弾性変形可能な突出部を設けることができる。キーフレームをこのように構成することによって、突出部を外側から押圧することで容易に内側方向に弾性変形させることができる。したがって、このキーフレームを有する押釦スイッチ用カバー部材を、製品に容易に嵌め込むことが可能となる。また、突出部以外を変形させることなく嵌め込むことが可能となるため、嵌め込む際に部材が変形してしまう事態を防止することができる。
【0008】
本発明のキーフレームにおいて、上記突出部は、キーフレームの外周ラインよりも外側に突出していることが好ましい。
【0009】
このようにすれば、このキーフレームを有する押釦スイッチ用カバー部材を製品に嵌め込んだときに、突出部が外側に突出しながら弾性的に復元されるため、製品側に設けられた嵌め込み部に突出部が当接した状態で組み込むことが可能となる。これにより、このキーフレームを有する押釦スイッチ用カバー部材を製品にしっかりと固定することが可能となり、組み立て後のカバー部材の位置ずれやガタつきの発生を防止することができる。
【0010】
本発明のキーフレームにおいて、上記突出部の内側に空間部を設けることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、突出部を外側から押圧すると、突出部が弾性変形して容易にキーフレームの内側方向に可動する。これにより、押釦スイッチ用カバー部材を、より容易に嵌め込むことが可能となる。
【0012】
本発明の押釦スイッチ用カバー部材は、複数のキートップを有する押釦スイッチ用カバー部材であって、上述したキーフレームを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るキーフレームおよび押釦スイッチ用カバー部材によれば、製品に容易に嵌め込むことができ、嵌め込む際の変形を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るキーフレームおよび押釦スイッチ用カバー部材の実施形態を図面に基づき説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0015】
まず、図1および図2を参照して、実施形態における押釦スイッチ用カバー部材およびキーフレームの構成について説明する。図1に示すように、押釦スイッチ用カバー部材1は、複数の硬質樹脂製キートップ3と、押釦スイッチ用カバー部材1の底部を支持するキーフレーム4とを有する。また、図2に示すように、キーフレーム4は、ハードベース41とキーパッド42とを有する。
【0016】
図1に示すキートップ3は、キーフレーム4のキーパッド42の表面に接着される。このキートップ3は、ハードベース41に設けられた貫通孔内に陥没することがないように、貫通孔の内周よりやや大きめに形成されている。また、キートップ3は、突き出し寸法をストローク長とし、キーフレーム4のキーパッド42を弾力的に押圧する。キートップ3を硬質樹脂製にすることで、操作時に指に触れるキートップの感触を、しっかりとした感触にすることができ、誤操作を低減させることができる。
【0017】
図2に示すハードベース41の下辺および側辺にある外周には、外側に弾性的に突出する弾性突出部41pが設けられている。この弾性突出部41pは、ハードベース41の外周ラインよりも突出して形成されており、押釦スイッチ用カバー部材1を携帯電話機の筐体に嵌め込んだときの固定部材となる。ここで、ハードベース41の外周ラインとは、ハードベース41の各辺において形成される周縁ラインのうち、弾性突出部41pが設けられている辺において、この弾性突出部41p以外のハードベース本体により形成される周縁ラインのことをいう(以下、同様)。
【0018】
弾性突出部41pの内側(貫通孔側)には、空間部Sが設けられている。このような空間部Sを設けることによって、弾性突出部41pが外側から押圧された場合に、内側方向に弾性変形した弾性突出部41pを空間部Sに進入させることができる。これにより、ハードベース41の外周ラインから突き出ている弾性突出部41pを、ハードベース41の内側方向に引っ込めるように弾性変形させることが可能となる。
【0019】
ここで、図3〜図6を参照して、弾性突出部41pについてより具体的に説明する。図3は、押釦スイッチ用カバー部材1と、この押釦スイッチ用カバー部材1が嵌め込まれる携帯電話機の前面側の筐体10を示した図である。図4は、押釦スイッチ用カバー部材1が筐体10に嵌め込まれた後の状態を真上から見た図である。図5は、図4のV−V矢視図である。図6は、図5に示す断面図の一部を拡大して示した図である。
【0020】
図3に示すように、弾性突出部41pは、ハードベース41の外周ラインから外側方向に突き出して形成されている。弾性突出部41pの内側には空間部Sが設けられているため、弾性突出部41pが外側から押圧されると、弾性突出部41pは弾性変形して容易にハードベース41の内側方向に可動する。これにより、押釦スイッチ用カバー部材1を、筐体10に容易に嵌め込むことが可能となり、作業効率が向上する。また、弾性突出部41pを容易に変形させることができるため、キーフレーム4本体を変形させずにカバー部材1を筐体10に嵌め込むことが可能となる。これにより、キーフレーム4およびカバー部材1の変形を防止することができる。
【0021】
図5および図6に示すように、弾性突出部41pは、筐体10側に設けられた嵌め込み部11に当接した状態で筐体10に組み込まれる。すなわち、嵌め込み部11に嵌め込まれた弾性突出部41pは、外側に弾性的に復元している途中の状態で嵌め込み部11の形状に合わせて固定される。これにより、押釦スイッチ用カバー部材1を筐体10内でしっかりと固定することが可能となり、組み立て後のカバー部材1の位置ずれやガタつきの発生を防止することができる。また、組み立て後に行われる製品落下試験でのカバー部材1の脱落を防止することができる。
【0022】
図2に示すキーパッド42は、厚みが薄い半透明なシリコーンゴム膜で形成されている。キーパッド42は、ハードベース41の裏面に形成され、ハードベース41の裏面全体を薄く被覆する。ハードベース41の裏面に形成されたキーパッド42は、ハードベース41の貫通孔の内周縁を通って、ハードベース41の表面側に至る。キーパッド42は、ハードベース41の貫通孔の内側の領域付近において、接点部を押圧するための押圧突起を形成する。この押圧突起の上側にあたるキーパッド42の表面には、キートップ3の台座が形成される。台座は、貫通孔の内周縁よりやや内側の範囲で肉厚に盛り上がり、ハードベース41の表面よりも僅かに突き出している。
【0023】
なお、上述した実施形態における弾性突出部41pは、図2に示す形状には限られない。例えば、図7に示すように、片持ち梁のような形状であってもよい。すなわち、弾性突出部41pは、外側に弾性的に突出可能な形状に形成されていればよい。
【0024】
また、上述した実施形態においては、弾性突出部41pの内側に空間部Sを設けているが、必ずしも空間部Sを設けることを要しない。例えば、空間部Sに相当する部分に、弾性材料を充填して弾性部を設けることとしてもよい。また、空間部Sを設けずに弾性突出部自体を弾性材料で成形することとしてもよい。要するに、弾性突出部41pが外側から押圧されたときに、外側に突出した部分を内側方向に可動させて引っ込めるように弾性変形させることができればよい。ここで、弾性材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー等のように、材料自体が圧縮可能なものを用いることができる。具体的には、例えば、シリコーンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等の熱硬化性エラストマー、または、スチレン系、エステル系、ウレタン系、オレフィン系、アミド系、ブタジエン系、エチレン−酢酸ビニル系、フッ素ゴム系、イソプレン系、塩素化ポリエチレン系等の熱可塑性エラストマーを用いることができる。これらの弾性材料のうち、シリコーンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマーまたはエステル系熱可塑性エラストマーであれば、反発弾性がよく、かつ圧縮永久ひずみが小さいため、より好ましい。
【0025】
また、上述した実施形態においては、弾性突出部41pがハードベース41の下辺および側辺に設けられているが、弾性突出部41pの設置場所および設置数はこれに限られない。少なくとも、ハードベースのいずれか一辺に、一の弾性突出部が設けられていればよい。ただし、本実施形態におけるハードベース41のように四辺からなる場合には、いずれか三辺にある外周上にそれぞれ弾性突出部を設けることによって、押釦スイッチ用カバー部材1をより容易に嵌め込むことが可能になるとともに、押釦スイッチ用カバー部材1をよりしっかりと固定させることが可能になる。
【0026】
なお、上述した実施形態における弾性突出部41pは、ハードベース41の外周ラインよりも突出して形成されているが、弾性突出部41pが、外周ラインよりも突出していることには限定されない。例えば、図8に示すように、弾性突出部41pが、ハードベース41の外周ライン上に形成されていてもよいし、図9に示すように、弾性突出部41pが、ハードベース41の外周ラインよりも内側に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態における押釦スイッチ用カバー部材の斜視図である。
【図2】図1に示すキーフレームの斜視図である。
【図3】図1に示す押釦スイッチ用カバー部材とこの押釦スイッチ用カバー部材が嵌め込まれる携帯電話機の前面側の筐体とを示す斜視図である。
【図4】図1に示す押釦スイッチ用カバー部材が筐体に嵌め込まれた後の状態を真上から見た図である。
【図5】図4のV−V矢視図である。
【図6】図5に示す断面図の一部を拡大して示した図である。
【図7】変形例におけるキーフレームの斜視図である。
【図8】変形例におけるキーフレームの弾性突出部を示す図である。
【図9】変形例におけるキーフレームの弾性突出部を示す図である。
【図10】従来のキーフレームの斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1・・・押釦スイッチ用カバー部材、3・・・キートップ、4・・・キーフレーム、10・・・筐体、11・・・嵌め込み部、41・・・ハードベース、41p・・・弾性突出部、42・・・キーパッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押釦スイッチ用カバー部材の底部を支持するキーフレームであって、
外周の少なくとも一部に形成され、外側に弾性的に突出可能な突出部を備え、
前記突出部は、内側方向に弾性変形可能であることを特徴とするキーフレーム。
【請求項2】
前記突出部は、前記外周のラインよりも外側に突出していることを特徴とする請求項1記載のキーフレーム。
【請求項3】
前記突出部の内側に空間部を設けることを特徴とする請求項1または2記載のキーフレーム。
【請求項4】
複数のキートップを有する押釦スイッチ用カバー部材であって、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のキーフレームを備えることを特徴とする押釦スイッチ用カバー部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−42547(P2007−42547A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228004(P2005−228004)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】