説明

キーボード装置およびバックライトユニット

【課題】安価な材料を用いて製造工程を複雑にすることなく、複数のキーを色分け照明することが可能なキーボード装置を提供する。
【解決手段】キーボード装置では、導光板15の下面側または上面側に、キーの位置に対応づけて反射パターン31を配置し、かつ、一部のキーに対応する反射パターン31の種類を他のキーの反射パターン31の種類と異なるものにする。これにより、一部のキーの照射色を他のキーとは変えることができ、暗がりの中でキーを識別しやすくなって、キーの押し間違いを軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーを背面方向から照明するバックライトユニット、およびこのバックライトユニットを備えたキーボード装置に関し、バックライトから照射される光を予め定めた色の光とすることで、キーの識別性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キーの設置面の下側に配置された導光板から、キーの設置面方向に面状に光を照射して、キーの間の隙間から漏れる光でキーを浮き立たせて、暗い所でもキー配置を識別できるようにたり、キートップの文字部分を透明とすることにより文字を光らせたりし、かつイルミネーション効果により高級感を演出するキーボード装置が知られている。この種のキーボード装置では、例えば、導光板の光出射面とは反対側の面に白色の顔料インクを塗布してバックライトからの光を上方に反射させて、キートップを光らせている。
【0003】
従来から、導光板等を用いて面発光させる技術が知られており、(特許文献1〜3参照)。この技術を利用すれば、キートップ面を光らせることは可能である。
【0004】
例えば、特許文献1では、導光板の光特性による色付き、より具体的には、導光板を光が進行するに従って青色成分が吸収されて黄味がかった光になる色つきを、導光板の発光領域に色補正材料を付着させて補償している。
【0005】
また、特許文献2では、導波路フィルムに蛍光体を含むドットパターンを形成して、多様な色で発光させている。
【0006】
一方、特許文献3では、特許文献1と同様に反射板の光特性による色付きを防止するために、反射板の場所によって、反射板内のドット領域の面積密度を変えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−177106号公報
【特許文献2】特開2008−071735号公報
【特許文献3】特開2005−347010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1と3は、キーボード中の複数のキーを異なる色で照明することを念頭に置いていない。特許文献2は、蛍光体の種類を変えることで種々の色で発光させることができるが、蛍光体は一般に値段が高いため、蛍光体をキーの発光に用いると、キーボード装置のコストアップになる。
【0009】
従来のバックライト付きキーボード装置は、蛍光体よりも安価な顔料を用いて白色で照明しているが、複数のキーをそれぞれ異なる色で照明することは想定していない。したがって、従来のバックライト付きキーボード装置は、複数のキーを機能別で色分けすることもできなかった。複数のキーを色分けすると、操作者のタイプミスも少なくなる他、操作者が暗がりの中でより操作しやすくなるという利点がある。また、複数色で照明した方がイルミネーション効果が大きくなり、デザイン性に優れたキーボード装置を提供できる。
【0010】
なお、キーボードのバックライトに色を付けることは、導光板の上に特定の波長領域の光のみを通す色フィルタシートを配置しても実現可能であるが、色フィルタシートという部材を新たに設けると、部品点数が増えて、製造コストと部品コストがともに上昇してしまう。また、発光色の異なる複数種類のLEDをバックライトの光源とすることも考えられるが、この方法では任意のキーをその周りの他のキーを区別して色分けして照射するのは難しい。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、安価な材料を用いて製造工程を複雑にすることなく、複数のキーを色分け照明することが可能なキーボード装置およびバックライトユニットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様では、キーに対して背面から光を照射するバックライトユニットを備えたキーボード装置において、
前記バックライトユニットは、
光源と、
前記光源からの光をキーの設置面方向に導く導光板と、
一部のキーが他のキーとは異なる色で照明されるように、前記導光板の下面側および上面側の少なくとも一方に、2以上のキーの設置場所のそれぞれに対応づけて配置される、前記光源からの光に対してそれぞれ異なる反射特性を持つ顔料を含む複数の反射パターンと、を有することを特徴とするキーボード装置を備える。
【0013】
また、本発明の一態様では、光源と、
前記光源からの光をキーの設置面方向に導く導光板と、
一部のキーが他のキーとは異なる色で照明されるように、前記導光板の下面側および上面側の少なくとも一方に、2以上のキーの設置場所のそれぞれに対応づけて配置される、前記光源からの光に対してそれぞれ異なる反射特性を持つ顔料を含む複数の反射パターンと、を備えることを特徴とするバックライトユニットを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蛍光体などの高価な材料を用いることなく、また、色フィルタシートのような製造工程を複雑化する材料も用いずに、安価な材料を用いて、かつ製造工程を複雑化せずに、複数のキーを色分け照明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】キーボード装置の構成部品を示す分解斜視図。
【図2】導光板15の内部を光が進行する様子を示す模式図。
【図3】キーボード装置の一部のキー配置の一例を示す図。
【図4】反射パターン31とキーとの位置関係の一例を示す図。
【図5】ファンクションキーを他のキーとは異なる色で照明すべく反射パターン31に含まれる顔料の種類を一部変更した例を示す図。
【図6】ファンクションキーとFnキーに対応する反射パターン31を他のキーに対応する反射パターン31とは異なるものにした例を示す図。
【図7】Fnキー周辺の反射パターン31の一例を示す図。
【図8】(a)(b)はファンクションキーとFnキーを青色で照射し、その他のキーを赤色で照射する場合の顔料の反射特性の一例を示す図。
【図9】(a)(b)はファンクションキーとFnキーを青色で照射し、その他のキーを白色で照射する場合の顔料の反射特性の一例を示す図。
【図10】文字キー部11とテンキー部12の照射色を互いに変えることが可能なキーボード装置の詳細構成の一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明のキーボード装置およびバックライトユニットの実施形態について説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態によるバックライトユニットを備えたキーボード装置の構造について説明する。図1はキーボード装置1の構成部品を示す分解斜視図である。図1において、一番上はトップカバー10であり、文字キー部11及びテンキー部12はそれぞれ、XY方向に配置された複数のキー(不図示)を有する。図1では詳細構造を省略しているが、各キーは、キートップとしてのキーキャップ、押圧に対して上下動する可動部、キーへの押圧に対して反発力を発生して押圧を止めると位置を復元する機能をもつラバースプリング等を有する。キーボードのメカニカルな構造は従来と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
キーの下方には、メンブレンスイッチ13があり、キーが押圧されると、同スイッチの中に埋め込まれた接点が閉じて、電気的に導通して、押圧されたキーの情報が図示せぬコンピュータに伝達される。
【0019】
メンブレンスイッチ13の下には、バックライトユニット14が配置されている。このユニット14は、LED17−1〜17−4と導光板15を有し、LED17−1〜17−4からの光を導光板15の上面から上方に反射させる。導光板15の長手方向(図1のX方向)の一側面に沿って、一定間隔でLED17−1〜17−4を固定支持するLED装着部材16が配置されている。LED17−1〜17−4に対向配置される導光板15の一側面が光の入射面となる。図1では、手前側が入射面である。
【0020】
複数のLED17−1〜17−4から導光板15に入射した光は、導光板15の中を短手方向(図1のY方向)に進むが、一部の光は上方に向かって上面から出射されてキーの照明に用いられる。
【0021】
本実施形態では、キーに対応した位置で下方から光を照射しており、キーが配置されている面全体に均一な光を供給することを目的としているわけではない。具体的には、本実施形態では、導光板15の下部側に配置される反射シート(不図示)と導光板15との間に、少なくとも一部のキーに対応づけて、光を散乱する顔料を含む反射パターンを配置している。この反射パターンで光が反射および散乱することにより、反射パターンに含まれる顔料の種類に応じた色でそのキーが照射される。
【0022】
反射シートの下部にはバックプレート18が配置される。このバックプレート18にはねじを通す孔(不図示)が設けられ、この孔を介して下方から、トップカバー10に設けたれたネジ穴に螺合されるねじにて、トップカバー10を初めとするすべての部材がバックプレート18に固定される。
【0023】
上述した反射パターンは、特定の波長領域の光をより多く反射し、他の波長領域の光を吸収するような顔料を含んでいる。これにより、特定の波長領域の光がより多く反射され、上方に位置するキーが特定の色で照明される。
【0024】
本実施形態は、種類の異なる顔料を含んだ複数の反射パターンを用いることにより、複数のキーを色分けするものである。後述するように、色分けの仕方については種々の手法が考えられる。また、導光板15を光が進行する距離によって、光の強度が変わるため、それを補償するために反射パターンの密度等を変えることも考えられる。さらに、キーの照明をキーボード装置1に接続されたホストコンピュータで制御することも考えられる。
【0025】
図2は導光板15の内部を光が進行する様子を示す模式図である。図2では、キー110の構造を簡略化して図示し(ここではキートップ111とパンタグラフ構造112をごく簡単に示している)、複数のLED17−1〜17−4のうちの一つを符号17で表している。LED17から放射された光は、導光板15の中を、例えば光線aのようにその上下の面で反射しながら進む。キー110の下方に位置する導光板15の下面には、上述した顔料を含む反射パターン31が配置されている。反射パターン31に入射した光は、光線bのように、反射パターン31内の顔料で散乱されて、色々な方向に進む。そのうちの一部の光は導光板15の上面から出てキーを照明し、他の一部の光は導光板15の中をさらに先に進む。光線cは、LED17に最も近い反射パターン31には入射されないが、2番目に近い反射パターン31に入射されて散乱され、その散乱光の一部は導光板15の上面から出てキーを照明する。
【0026】
導光板15の下面側には反射シート(不図示)が配置されており、導光板15の上面から上方に、より多くの光が出射されるような構造になっている。導光板15の上面から上方に出射された光は、キーを下側から照明することになる。
【0027】
上述したように、導光板15には、いくつかの特定のキーに対応づけて反射パターン31がそれぞれ配置されており、反射パターン31で散乱された光は、反射パターン31に含まれる顔料の種類に応じた特定の色となり、これにより、特定のキーを顔料の種類に応じた特定の照射色で照明することができる。
【0028】
図2では、導光板15の下面側に反射パターン31を配置しているが、上面側に反射パターン31を配置してもよい。反射パターン31は、例えば印刷技術を利用して、導光板15に直接印刷されるか、あるいは導光板15の上面または下面に密着配置される他の板状部材(例えば反射シート)に印刷される。
【0029】
図3はキーボード装置1の一部のキー配置の一例を示す図であり、左側のキー配置を示している。一番上の段にはEscキーや、ファンクションキー(F1〜F4)などの機能キーが配置され、上から2段目には主に数字キーが配置され、その下の計3段には主に文字キーが配置され、最下段にはFnキーやCtrlキーなどの機能キーが配置されている。
【0030】
以下では、ファンクションキーを他のキーとは異なる発光色で照明する例について説明する。
【0031】
図4は反射パターン31とキー110との位置関係の一例を示す図である。図4では、キー110を破線で示しており、破線内の実線枠が反射パターン31の配置領域である。この領域内の小さな丸(以下、ドットと呼ぶ)の集合体が反射パターン31である。なお、反射パターン31をドットの集合体とせずに、メッシュ状にして、メッシュの密度、すなわち格子間隔を調整してもよい。
【0032】
図4を見ればわかるように、反射パターン31のドットの密度と各ドットのサイズは、必ずしも一定ではない。図4の下辺に沿ってLEDが配置されるが、LEDに近い側ほどドットの密度とサイズが小さい。このようにする理由は、LEDからの距離が遠くなるほど、光の強度が弱くなることから、反射パターン31の密度を高くして、上方に反射される光量を増やし、導光板15から上方に照射される光の強度を均一にするためである。
【0033】
図4では、LEDに近い手前側のキー110に対応する反射パターン31のドットを非常に小さくしているが、小さいといっても、LEDからの光を上方に反射できるようなドットサイズに設定されている。なお、図4及び次の図5では、ドットの密度とサイズの両方についてLEDに近い側ほど小さくしているが、ドットの密度とサイズのいずれか一方のみを変化させてもよい(後に示す図6では、ドットのサイズは一定で密度のみを変化させている)。特に、顔料によってはドットのサイズが小さすぎると散乱光で所望の色が出ないことも考えられ、その場合にはサイズはある程度大きく保って密度を主に変えると良い。
【0034】
図3に示すように、ファンクションキーは、キーボード装置1の手前から一番奥に配置されており、各ファンクションキーには特別の機能が割り振られている。ファンクションキーの機能は、オペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトウェアにより切替えられる場合があり、文字キーや数字キーと異なり、キーの機能が必ずしも固定ではない。このように、ファンクションキーは、他のキーとは機能が異なることから、本実施形態では、ファンクションキーを他のキーとは異なる色で照射するようにした。
【0035】
図5はファンクションキーを他のキーとは異なる色で照射すべく反射パターン31に含まれる顔料の種類を一部変更した例を示す図である。図5では、一群のファンクションキー51に対応する反射パターン31を黒色で示し、他のキーに対応する反射パターン31を白色で示しているが、実際には、ファンクションキーに対応する反射パターン31は例えば青色をより反射するような反射特性の顔料を用い、他のキーに対応する反射パターン31は例えば赤色をより反射するような反射特性の顔料を用いる。
【0036】
図5のように色分けすることにより、ファンクションキーとそれ以外のキーが互いに異なる色で照明されることになり、暗がりの中であっても、キーの押し間違いが少なくなる。
【0037】
ところで、ファンクションキーは、LEDから最も遠い距離にあり、ファンクションキーの照射色が他のキーの照射色に影響を与えるおそれは少ない。これは、LEDで発光されて導光板15の内部を進行する光は、光の進行方向(キーボード装置1の短手方向)前方に位置するキーの照射色により影響されるためである。したがって、ファンクションキーのみの照射色を他のキーと異なるものにする場合には、他のキーの照射色に与える影響を考慮する必要はなく、ファンクションキーに対応する反射パターン31の顔料だけを変えればよい。
【0038】
図4では、すべてのキーに対応して反射パターン31を配置しているが、ファンクションキーを含む一部のキーのみについて反射パターン31を配置するようにしてもよい。すなわち、操作者が暗所で操作する可能性のあるキーを少なくとも照明すればよい。
【0039】
また、必ずしも、ファンクションキーのすべてを同一色で照明する必要もない。使用頻度の高いファンクションキーのみを、残りのファンクションキーを含む他のキーとは異なる色で照明してもよい。この場合、残りのファンクションキーをファンクションキー以外のキーと同じ色で照明してもよいし、どのキーの照明色とも異なる第3の色で照明してもよい。
【0040】
このように、第1の実施形態では、導光板15の下面側または上面側に、キーの位置に対応づけて反射パターン31を配置し、かつ、一部のキー(例えば、ファンクションキー)に対応する反射パターン31の種類を他のキーの反射パターン31の種類と異なるものにするため、一部のキーの照射色を他のキーとは変えることができ、暗がりの中でキーを識別しやすくなって、キーの押し間違いを軽減することができる。
【0041】
また、本実施形態では、蛍光体のような高価な材料を必要とせず、安価な顔料を用いてLEDからの光に色を付けるため、部品コストを抑制できる。しかも、色フィルタシートのような部材も不要であり、導光板15等に反射パターン31を印刷するだけでよいため、製造が容易であり、製造コストも削減できる。また、このようにLEDから最も遠い位置にあるキーを照射する色を、より手前にあるキーに対して変えることは、発光色の異なる複数種類のLEDを用いる方法では実現が困難である。
【0042】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、特定のキーの照射色を変えることにより、隣接するキーの照射色に影響が及ぶ場合に、その隣接するキーの照射色も調整するものである。
【0043】
第2の実施形態では、一例としてFnキーの照射色を他のキーとは異なるものにする場合について説明する。Fnキーは、ファンクションキーの機能を切替えるために用いられることが多い。すなわち、Fnキーを押しながらファンクションキーを押すと、そのファンクションキーの機能を切替えることができる。
【0044】
Fnキーを設けることにより、Fnキーを押したか否かで、各ファンクションキーに2つの機能を割り当てることができ、キーボード装置1で操作可能な機能の数を増やすことができる。
【0045】
第1の実施形態では、ファンクションキーだけの照射色を他のキーの照射色と異なるものにしたが、ファンクションキーとFnキーは組合わせて使用されることから、第2の実施形態では、ファンクションキーに加えてFnキーも、他のキーとは異なる照射色にするものである。
【0046】
図6は一群のファンクションキー51とFnキー52に対応する反射パターン31を他のキーに対応する反射パターン31とは異なるものにした例を示す図である。
【0047】
ファンクションキーは、LEDから最も遠い距離にあり、それより奥にはキーが存在しないため、ファンクションキーの照射色がその奥のキーの照射色に影響することはありえないが、FnキーはLEDに最も近い距離にあり、その奥には他のキーが配置されていることから、奥側の他のキーの照射色がFnキーの照射色の影響を受けるおそれがある。すなわち、図2に示すように、LEDからの光がFnキーに対応する反射パターン31で反射すると、この反射パターン31に応じた照射色の光になり、その光の一部は、導光板15の短手方向に進行して、Fnキーに隣接するキーに対応する反射パターン31にも入射される。このため、Fnキーに隣接するキーの照射色がFnキーの照射色に応じて変化してしまう。
【0048】
例えば、ファンクションキーとFnキーを青色で照射する場合を考える。ファンクションキーとFnキーに対応する反射パターン31は、青色光をより多く反射および散乱させるが、他の色の光は吸収する。実際にはすべてを吸収するわけではなく、青色光よりも他の色の光の吸収率の方が大きい。したがって、青色光の一部は反射パターン31で反射して導光板15の上方に放射されて、Fnキーを照明し、また、この反射パターン31で反射して導光板15を進行していく光も、青色光の割合が他の色の光よりも多い。このため、光の進行方向に位置する他のキーに対応する反射パターン31で反射してキーを照明したときに、青色の混じった照射色になってしまう。
【0049】
そこで、本実施形態では、Fnキーに対応する反射パターン31で反射および散乱した光が通過する経路上の隣接キーに対応する反射パターン31の少なくとも一部に、青色に対する吸収率の高い顔料を用いている。これにより、隣接キーに対応する反射パターン31では、青色光がより吸収されて、隣接キーの照射色に青色が混じらなくなる。
【0050】
図2に示すように、LEDからの光の進行方向(キーボード装置1の短手方向)に位置するFnキーの隣接キーはシフトキーである。シフトキーは、Fnキーよりも横長であり、Fnキーの照射色の影響を受ける可能性のある領域は、ほぼFnキーの横幅分だけである。そこで、本実施形態では、シフトキーに対応する反射パターン31の一部のみについて、青色の吸収率の大きい顔料を用いる。
【0051】
図7はFnキー周辺の反射パターン31の一例を示す図である。図示のように、シフトキーに対応する反射パターン31の一部領域53だけ、より具体的には、Fnキーに対応する反射パターン31で反射および散乱された光が進行する経路上の領域だけ、青色の吸収率の大きい顔料を使用している。これにより、Fnキーを青色で照射しても、その影響でシフトキーの照射色が青みがかることを防止できる。
【0052】
顔料は光を吸収する物質であるため、青色の吸収率の大きい顔料を使用すると、青色光の反射がより抑制され、その結果、青色の吸収率の大きい顔料を使用した領域では他の領域よりも、反射光の割合が減少し、このままではこの領域からの光量が少なくなり、暗く視認されてしまう。そこで、図7では、青色の吸収率の大きい顔料を使用した領域53のパターン密度を高く、すなわちドットパターンの数を大きくして、光量の減少を防止している。ドットパターンの数を大きくする代わりに、ドットパターンのサイズを大きくすることにより、ドットパターン密度を高くしてもよい。
【0053】
以下、Fnキーの照射色がシフトキーの照射色に与える影響について、より詳細に説明する。図8(a)はファンクションキーとFnキーに対応する反射パターン31に含まれる顔料の反射特性(第1の反射特性)の一例を示す図である。図8の横軸は光の波長、縦軸は反射率である。ここで、横軸において、括弧付きで記して各色に対応する波長領域を示している。以下の反射特性の図でも同様である。図8の波形C1は、反射パターン31の顔料が青色光をより多く反射することを示している。
【0054】
一方、図8(b)は、ファンクションキーとFnキー以外の他のキーに対応する反射パターンに含まれる顔料の反射特性の一例を示す図であり、他のキーを赤色で照明する例を示している。
【0055】
上述したように、シフトキーは、Fnキーの所の顔料で青色以外の色成分が吸収されてしまう影響を受けるため、青みがかった色で照明されるおそれがある。そこで、図8(b)の一点鎖線で示す波形C2のように、青色に対する反射率が非常に低い特性(第2の反射特性)を持つ顔料を含む反射パターンを用いる。これに対して、他のキーについては、波形C3のように、波形C2ほど青色の反射率は低くないが、波形C2と同様に赤色の反射率が高い特性(第3の反射特性)を持つ顔料を含む反射パターンを用いる。これにより、シフトキーが青みががった色で照明されることを防止しつつ、ファンクションキーを青色で、他のキーを赤色で、それぞれ照明することができる。
【0056】
一方、ファンクションキーとFnキーを青色で照明し、他のキーを白色で照明する場合の反射特性は例えば図9のようになる。図9(a)の波形C1はファンクションキーとFnキーに対応する反射パターンに含まれる顔料の反射特性である。また、図9(a)の波形C3は、ファンクションキー、Fnキーおよびシフトキー以外の他のキーに対応する反射パターンに含まれる顔料の反射特性である。図9(b)の波形C2は、シフトキーに対応する反射パターンに含まれる顔料の反射特性である。
【0057】
図9の場合も、シフトキーについては、他のキーよりも青色の吸収率がより低い顔料が用いられる。
【0058】
なお、キー配置は必ずしも図7のようになるとは限らないため、図7のシフトキーの代わりに、Fnキーと同じ横幅のキーが配置されている場合は、このキーに対応する反射パターン31の全体について、青色の吸収率の大きい顔料を使用してもよい。
【0059】
また、Fnキーの照射色の影響がシフトキーのさらに上の段のキーまで及ぶ可能性がある場合には、このキーについても、シフトキーと同様に、対応する反射パターン31の一部領域の顔料を変更してもよい。ただし、Fnキーからの距離が遠くなるほど、光量は弱くなるため、変更する反射パターン31の密度も、それに合わせて調整する必要がある。
【0060】
このように、第2の実施形態では、照射色を変えたキーに隣接するキーの照射色が、照射色を変えたキーの影響で変化してしまう場合には、この隣接キーに対応する反射パターン31の少なくとも一部の顔料を予め調整するようにしたため、照射色を変えたキーの照射色の影響で、隣接キーの照射色が変化してしまうおそれがなくなる。したがって、照射色を変えるべきキーがどこに配置されていても、隣接キーの照射色に悪影響を及ぼさなくなり、任意のキーだけ照射色を変えることが可能となる。
【0061】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態は、ファンクションキーやFnキーの照射色を他のキーの照射色とは異なるものにする例を説明したが、これは一例にすぎない。例えば、キーボード装置1の長手方向に沿って、複数の照射色に色分けしてもよい。テンキーを備えた通常のキーボード装置1では、文字キー部11とテンキー部12が長手方向に分けて配置されている。数値入力を目的としてキーボード装置1を操作する場合は、テンキー部12だけを使用することが多い。一方、文字入力を主に行う場合は、テンキー部12を使用しないことが多い。そこで、文字キー部11とテンキー部12を色分けすれば、暗がりの中でも、文字キー部11またはテンキー部12だけを操作することができ、利便性が高くなる。
【0062】
図10は文字キー部11とテンキー部12の照射色を互いに変えることが可能なキーボード装置1の詳細構成の一例を示すブロック図である。図10のキーボード装置1は、パーソナルコンピュータ(以下、PC)本体100と伝送路101を介して、電気信号を送受する。伝送路101はUSBなどのケーブルでもよく、無線でも良い。
【0063】
図10のキーボード装置1は、受信部103と、文字キー部11を照明するのに用いられるLED17−1〜17−3と、テンキー部12を照明するのに用いられるLED17−4と、これらLED17−1〜17−4を発光させるか否かを切替えるトランジスタQ1〜Q4と、これらトランジスタQ1〜Q4のオン・オフを制御する発光制御部104と、LED17−1〜17−4の発光電力を供給する電源部105と、を有する。
【0064】
発光制御部104は、PC本体100からの信号により、LED17−1〜17−3またはLED17−4のどちらを発光させるかを切替える。PC本体100は、操作者にテンキー部12だけを操作させたい場合は、LED17−4のみを発光するよう発光制御部104に指示する。また、PC本体100は、操作者に文字キー部11だけを操作させたい場合は、LED17−1〜17−3のみを発光するよう発光制御部104に指示する。
【0065】
発光制御部104は、発光させたいLEDに接続されたトランジスタのベースに制御信号を供給して、このトランジスタをオンさせて、LEDに発光電流を流す。
【0066】
図10のキーボード装置1の具体的な用途としては、例えば、暗証番号等の数字入力を操作者に求める場合は、他の無関係なキーを操作者が押さないように、PC本体100はテンキー部12のみを照射する。
【0067】
第1および第2の実施形態と同様に、図10のキーボード装置1では、LED17−1〜17−4が発光する色自体を直接変えるのではなく、LED17−1〜17−4から放射された光を反射および散乱する光の色を反射パターン31で変化させている。LED17−1〜17−4が発光する色自体を変化させない理由は、隣接するLED同士では、互いの発光色が混ざり合って、所望の色とは異なる色でキーが照明されるおそれがあるためである。
【0068】
本実施形態では、例えば、LED17−1〜17−4はすべて同じ色(例えば、白色)で発光させ、各キーに対応した反射パターン31で色を変えるため、隣接キーの照射色の影響を受けにくくなる。特に、第2の実施形態で説明した技術を併用することで、隣接キーの照射色の影響を極力排除できる。
【0069】
なお、図10では、文字キー部11に対応して3つのLED17−1〜17−3を配置し、テンキー部12に対応して1つのLED17−4を配置する例を説明したが、文字キー部11とテンキー部12の照明に利用されるLEDの数には特に制限はない。また、文字キー部11に属する一部のキーを他のキーと異なる色で照明してもよいし、テンキー部12に属する一部のキーを他のキーと異なる色で照明してもよい。この場合、反射パターン31の顔料を一部変更することで対応可能である。
【0070】
このように、第3の実施形態では、PC本体100からの指示により、文字キー部11とテンキー部12のいずれか一方のみを照明することができ、照明されたキーのみを操作すればよいことを操作者に知らせることができ、操作者はキー操作に迷わなくなる。
【0071】
本発明のキーボード装置1は上述した第1〜第3の実施形態に限らない。例えば、キーボード内において反射率が異なる複数の顔料をランダムに或いは所定の規則や絵柄に従って配置してもよい。あるいは、キーの照射色をキーボード内の位置に応じて徐々に変えていくグラジュエーションパターンとする等により、デザイン性およびイルミネーション効果を高める種々の工夫を施してもよい。色分けする数も、2色以上であれば、何色でもよい。
【0072】
上述した各実施形態では、キーボード装置1のバックライト光源としてLEDを用いる例を説明したが、本発明は、複数の発光色のLEDを用いるわけではないため、種々の光源が利用可能である。例えば、液晶表示装置のバックライトとして用いられる冷陰極管(CCFL)を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のバックライト付きキーボード装置1は、操作者がコンピュータ等への情報入力を行うための入力装置に適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 キーボード装置
10 トップカバー
11 文字キー部
12 テンキー部
13 メンブレンスイッチ
14 バックライトユニット
15 導光板
16 LED装着部材
17、17−1〜17−4 LED
18 バックプレート
31 反射パターン
100 PC本体
103 受信部
104 発光制御部
105 電源部
110 キー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーに対して背面から光を照射するバックライトユニットを備えたキーボード装置において、
前記バックライトユニットは、
光源と、
前記光源からの光をキーの設置面方向に導く導光板と、
一部のキーが他のキーとは異なる色で照明されるように、前記導光板の下面側および上面側の少なくとも一方に、2以上のキーの設置場所のそれぞれに対応づけて配置される、前記光源からの光に対してそれぞれ異なる反射特性を持つ顔料を含む複数の反射パターンと、を有することを特徴とするキーボード装置。
【請求項2】
前記反射パターンは、それぞれが顔料を含む複数の微小パターンの集合体であり、
前記反射パターンにおける前記微小パターンの密度は、前記光源からの距離が遠くなるほど高いことを特徴とする請求項1に記載のキーボード装置。
【請求項3】
文字、数字または記号入力以外の特定の機能が割り振られたキーに対応する前記反射パターンの顔料の反射特性を、他のキーに対応する前記反射パターンの顔料の反射特性とは異ならせることを特徴とする請求項1または2に記載のキーボード装置。
【請求項4】
前記特定の機能が割り振られたキーは、前記光源から最も遠い距離に配置されるキーであることを特徴とする請求項3に記載のキーボード装置。
【請求項5】
前記特定の機能が割り振られたキーは、所定のキーの機能を切替えることを指示するキーであって、前記所定のキーと連動して操作されるキーを含むことを特徴とする請求項3に記載のキーボード装置。
【請求項6】
特定のキーに対応する前記反射パターンの顔料は、前記特定のキーが特定の色で照明されるように第1の反射特性に設定され、
前記光源からの距離が前記特定のキーの次に長い、前記特定のキーの隣接キーに対応する前記反射パターンの少なくとも一部の顔料は、前記特定の色の影響を補償するための第2の反射特性に設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のキーボード装置。
【請求項7】
前記隣接キーに対応する前記反射パターンは、前記隣接キーの照明強度が低下しないように前記少なくとも一部の顔料の密度が調整されることを特徴とする請求項6に記載のキーボード装置。
【請求項8】
前記第2の反射特性は、前記特定の色の波長に対する反射率が前記特定の色以外の色の波長に対する反射率よりも低い特性であることを特徴とする請求項7に記載のキーボード装置。
【請求項9】
前記特定のキーおよび前記隣接キー以外の他のキーが前記特定の色とは異なる色で照明されるように、前記他のキーに対応する前記反射パターンの顔料は第3の反射特性に設定され、
前記第2の反射特性は、前記隣接キーの全体が前記他のキーと同じ色で照明されるように設定されることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載のキーボード装置。
【請求項10】
長手方向に配置された複数のキーを、長手方向に沿って複数のキー群に分類し、各キー群ごとに互いに異なる反射率を持つ別個の前記反射パターンを配置することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のキーボード装置。
【請求項11】
前記光源は、前記複数のキーに対応づけて、長手方向に沿って配置された複数の光源部を有し、
外部からの制御信号により、前記複数の光源部のうち、特定の前記反射パターンが配置されたキーに対応する一部の光源部のみを点灯させる発光制御部を備えることを特徴とする請求項10に記載のキーボード装置。
【請求項12】
光源と、
前記光源からの光をキーの設置面方向に導く導光板と、
一部のキーが他のキーとは異なる色で照明されるように、前記導光板の下面側および上面側の少なくとも一方に、2以上のキーの設置場所のそれぞれに対応づけて配置される、前記光源からの光に対してそれぞれ異なる反射特性を持つ顔料を含む複数の反射パターンと、を備えることを特徴とするバックライトユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−170825(P2010−170825A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12057(P2009−12057)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】