クッション
【課題】着座者や患者等の支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び各エアーセルを支持する支持部材の上面によって形成される空間に汗等による湿気や液体が残留し難く、しかも空気を介して病気に感染する可能性が高くなることのないクッションを提供する。
【解決手段】着座者の臀部Hの下面、各エアーセル10の外表面10a及び支持部材20の上面20aによって形成される空間SPから吸引ポンプ30によって単位時間あたりの吸引量が所定量となるように空気が吸引されるので、空気の吸引とともに前記空間SPから汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。また、着座者の臀部Hに空気が吹き付けられることがないので、各エアーセル10によって支持される臀部Hに傷等が生じている場合でも、空気を介して病気に感染する可能性が高くなることがない。
【解決手段】着座者の臀部Hの下面、各エアーセル10の外表面10a及び支持部材20の上面20aによって形成される空間SPから吸引ポンプ30によって単位時間あたりの吸引量が所定量となるように空気が吸引されるので、空気の吸引とともに前記空間SPから汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。また、着座者の臀部Hに空気が吹き付けられることがないので、各エアーセル10によって支持される臀部Hに傷等が生じている場合でも、空気を介して病気に感染する可能性が高くなることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車椅子や病院のベッドに載置されて着座者や患者を軟らかく支持する褥瘡防止用のクッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のクッションとしては、車椅子の着座面に載置可能な平板状に形成された支持部材と、それぞれ支持部材の上面から上方に向かって延びるように形成され、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセルと、各エアーセル内を互いに連通させる空気通路と、空気通路を介して各エアーセル内に空気を供給可能なエアーポンプとを備え、各エアーセルによって着座者の臀部を支持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、他のクッションとしては、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセルと、各エアーセルの下端を支持する支持部材と、各エアーセル内に空気を供給可能なエアーポンプと、各エアーセルの上面に設けられた複数の通気孔とを備え、各エアーセルによって患者を支持する際に、各エアーセルに設けられた通気孔から空気が吐出されるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特表平6−510436号公報
【特許文献2】特開平9−024070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記各クッションでは、各エアーセルによって着座者や患者を軟らかく支持するために、各エアーセルは内部に空気を封入可能であるとともに可撓性を有する必要があり、各エアーセルが空気透過性の低いゴムやプラスチック等から形成されている。また、支持部材は、着座者や患者から生ずる汗等の湿気や液体が染み込むことがなく、汗等の湿気や液体によって強度低下を生ずることがないように、汗等の液体を透過し難いゴム、プラスチック、表面処理が施された布等から形成されている。
【0005】
このため、前者のクッションでは、各エアーセル上に着座者が着座すると、着座者の臀部の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間に汗等による湿気や液体が残留し易いという問題点があった。ここで、前記空間に汗等による湿気や液体が残留すると、着座者の臀部が湿気や液体によって褥瘡の発生し易い状態となり、また、着座者の臀部近傍を清潔な状態に維持する上で好ましくない。
【0006】
一方、後者のクッションでは、各エアーセルによって患者を支持する際に、各エアーセルに設けられた通気孔から空気が吐出され、前記空間に汗や湿気が残留し難くなっている。しかしながら、各エアーセル上の患者が動かない状態で、各エアーセルに設けられた通気孔から空気が吐出されると、通気孔から吐出される空気が患者の一部分に継続的に吹き付けられることになるので、例えばクッションが病院において使用され、通気孔からの吐出空気が吹き付けられる部分に傷等が生じている場合に、空気を介して病気に感染する可能性が高くなるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、着座者や患者等の支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び各エアーセルを支持する支持部材の上面によって形成される空間に汗等による湿気や液体が残留し難く、しかも空気を介して病気に感染する可能性が高くなることのないクッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、平板状の支持部材と、互いに略水平方向に並ぶように配置されるとともに、支持部材の上面よりも上方に突出するように支持部材によってそれぞれ支持された複数のエアーセルとを備え、各エアーセルによって任意の支持対象を支持するクッションにおいて、前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間から単位時間あたりの吸引量が所定量となるように空気を吸引する吸引手段を備えたている。
【0009】
これにより、支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間から所定の吸引速度で空気が吸引されるので、空気の吸引とともに前記空間から汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気の吸引とともに前記空間から汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引されるので、前記空間に汗等による湿気や液体が残留し難い。また、支持対象に空気が吹き付けられることがないので、各エアーセルによって支持される部分の近傍に傷等が生じている場合であっても、空気を介して病気に感染する可能性が高くなることがなく、支持対象を衛生的な状態に維持する上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すもので、図1はクッションの平面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は基準空間を示すクッションの断面図、図4はクッションのブロック図、図5は制御装置の動作を示すフローチャート、図6及び図7はクッションの動作説明図である。尚、以下の文章中における方向の説明は図1及び図2に示した前後方向、着座面幅方向及び上下方向に準ずる。また、前後方向と着座面の前後方向は一致している。
【0012】
このクッションは、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセル10と、例えば車椅子の着座面に沿って延びるように形成され、各エアーセル10の下端側をそれぞれ支持する可撓性の支持部材20と、周知の電動エアーポンプから成る吸引ポンプと30、周知の温度センサ40と、各エアーセル10上に着座者が着座したことを検知可能な着座検知センサ50と、吸引ポンプ30、温度センサ40及び着座検知センサ50に接続されている制御装置60とを備えている。
【0013】
各エアーセル10はゴムやプラスチック等の可撓性を有する材料から成る。また、各エアーセル10は、下端が開口するとともに内部に空気を封入可能な袋状に形成され、支持部材20の上面20aから上方に向かって延びるように形成されている。即ち、各エアーセル10は支持部材20の上面20aよりも上方に突出するように支持部材20によってそれぞれ支持されている。尚、本実施形態では、着座面前後方向の両端及び着座面幅方向の両端に配置されている各エアーセル10は他のエアーセル10よりも大きな高さ寸法を有するが、各エアーセル10の高さ寸法を全て同等にすることも可能である。
【0014】
支持部材20は上側シート状部材21及び下側シート状部材22から構成されている。各シート状部材21,22はゴムやプラスチック等の可撓性を有する材料から成り、各シート状部材21,22はそれぞれ平板状に形成されている。また、上側シート状部材21の下面は下側シート状部材22の上面に接着剤等によって貼り合わせられている。上側シート状部材21は各エアーセル10と一体に形成され、上側シート状部材21は各エアーセル10の下端側と連続している。これにより、各エアーセル10の下端側が支持部材20によってそれぞれ支持されている。
【0015】
支持部材20には複数の第1貫通孔20bが設けられ、各第1貫通孔20bは下側シート状部材22を上下方向に貫通し、各エアーセル10にそれぞれ1つずつ対応するように設けられている。各第1貫通孔20bには図示しない連通パイプが差込まれる。これにより、各エアーセル10が連通パイプを介して互いに連通するように、連通パイプが各エアーセル10内に連通する。また、連通パイプは図示しない周知の電動エアーポンプに接続され、その電動エアーポンプによって各エアーセル10内に空気が供給されるようになっている。
【0016】
支持部材20には複数の第2貫通孔20cが設けられ、各第2貫通孔20cは上側シート状部材21及び下側シート状部材22を上下方向に貫通し、支持部材20の上面20aにおける各エアーセル10の間に開口している。
【0017】
吸引ポンプ30は例えば周知の電動エアーポンプやコンプレッサーから成り、吸引パイプ30aを介して各第2貫通孔20cに連通している。吸引ポンプ30の空気吐出口にはフィルター31が取付けられ、吸引ポンプ30の吐出空気がフィルター31によって除菌及び/または脱臭されるようになっている。フィルター31は例えば脱臭カラムから成る。脱臭カラムとは、筒状部材内に例えば活性炭等の吸着剤を収容したものであり、筒状部材内を通過した空気が脱臭されるようになっている。また、前記筒状部材内に除菌作用を有する周知の充填材をさらに収容したり、前記脱臭カラムに除菌カラムを直列に接続することにより、除菌及び脱臭を行うことが可能である。さらに、脱臭カラムを設けずに除菌カラムのみを設けることも可能である。尚、フィルター31は特許請求の範囲に記載した吸引空気処理手段に相当する。
【0018】
着座検知センサ50は周知の圧力センサから成り、各エアーセル10上に着座者が着座すると、着座検知センサ50に加わる圧力が所定の大きさ以上になり、着座者の着座が検知されるようになっている。
【0019】
制御装置60はCPU、メモリー等を有する周知のマイクロコンピュータから成り、温度センサ40の検出温度に基づいて吸引ポンプ30を制御するようになっている。
【0020】
以上のように構成されたクッションは、例えば車椅子の着座面に載置されて使用される。また、着座者が着座する前段階で、各エアーセル10内に所定量の空気が封入される。
【0021】
ここで、着座者が着座した後の制御装置の動作について図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0022】
先ず、着座検知センサ50によって着座者の着座が検知され(S1)、温度センサ40の検出温度が所定温度よりも高くなると(S2)、吸引ポンプ30によって各第2貫通孔20cから空気を吸引する(S3)。ここで、温度センサ40は、着座者の臀部Hが各エアーセル10によって支持された際に、着座者の臀部Hの下面、各エアーセル10の外表面10a及び支持部材20の上面20aによって形成される空間SPの温度を検出するようになっている。これにより、前記空間SPから吸引ポンプ30によって空気が吸引される。また、空気の吸引とともに前記空間SPから汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。ここで、図6に示すように、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間に衣服CLが介在している場合は、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間に介在している衣服CL内を空気が流通し、衣服CL内に存在する汗等による湿気や液体も吸引ポンプ30によって吸引される。また、図7に示すように、各エアーセル10の上面が布製のカバー70によって覆われ、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間にカバー70及び衣服CLが介在している場合は、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間に介在しているカバー70内及び衣服CL内を空気が流通し、カバー70内及び衣服CL内に存在する汗等による湿気や液体も吸引ポンプ30によって吸引される。
【0023】
一方、着座検知センサ50によって着座者の着座が検知されなくなった場合や(S1)、温度センサ40の検出温度が所定温度以下になった場合は(S2)、吸引ポンプ30による空気の吸引を停止させる(S4)。
【0024】
ここで、吸引ポンプ30は1秒あたりの吸引量S2が800cm2であり、一定の吸引速度で空気を吸引するようになっている。一方、各エアーセル10が潰れていない状態において、各エアーセル10の外表面10a、支持部材20の上面20a、各エアーセル10から成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面F1及び各エアーセル10の上端に接触するように延びる第2仮想面F2によって形成された基準空間SS(図4の斜線部分)の体積S1は4000cm2である(図1及び図4参照)。この時、各エアーセル10内には前記所定量の空気が封入されている。即ち、基準空間SSの体積S1を吸引ポンプ30の1秒あたりの吸引量S2で除算した結果が5になるので、吸引ポンプ30は基準空間SSの体積と等しい量の空気を5秒に1回吸引するようになっている。
【0025】
このように、本実施形態によれば、着座者の臀部Hの下面、各エアーセル10の外表面10a及び支持部材20の上面20aによって形成される空間SPから単位時間(1秒)あたりの吸引量S2が所定量(800cm2)となるように空気が吸引されるので、空気の吸引とともに前記空間SPから汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。即ち、前記空間SPに汗等による湿気や液体が残留し難い。また、着座者の臀部Hに空気が吹き付けられることがないので、各エアーセル10によって支持される臀部Hに傷等が生じている場合でも、空気を介して病気に感染する可能性が高くなることがなく、臀部Hを衛生的な状態に維持する上で極めて有利である。
【0026】
また、各エアーセル10が潰れていない状態において、各エアーセル10の外表面10a、支持部材20の上面20a、各エアーセル10から成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面F1及び各エアーセル10の上端に接触するように延びる第2仮想面F2によって形成される基準空間SSの体積S1を4000cm2とし、吸引ポンプ30の1秒あたりの吸引量S2を800cm2とした。即ち、S1/S2が5になるようにしたので、前記空間SP内において空気が静かに移動する。従って、各エアーセル10によって支持される臀部Hに傷等が生じている場合でも、空気を介して病気に感染する可能性を極力低くすることができる。尚、S1/S2が1以上であれば、前記空間SP内を空気が静かに移動する。また、S1/S2が3以上である場合は、前記空間SP内を空気がより静かに移動するので、S1/S2は5以上であることが好ましい。一方、S1/S2が1よりも小さくなると、前記空間SP内の空気の速度が大きくなり、前記空間SP内における空気の流れやすい経路のみで空気が移動するとともに、空気の流れ難い場所において空気が移動しなくなり、汗等による湿気や液体を前記空間SP内の全ての場所から万遍なく吸引することができなくなる。また、S1/S2が7よりも大きくなると、前記空間SP内における空気の移動量が小さくなり始めるとともに、汗等による湿気や液体の吸引が少なくなり始め、S1/S2が10よりも大きくなると、湿気や液体の吸引を効果的に行うことができなくなる。即ち、S1/S2が1以上10以下であれば、S1/S2が5である場合と同等の作用効果を達成することができる。また、S1/S2は3以上7以下であることが好ましい。
【0027】
また、前記空間SP内の温度を検出可能な温度センサ40を設け、温度センサ40の検出温度に基づき吸引ポンプ30を制御するようにした。このため、前記空間SP内の温度によって変化する着座者の発汗量に応じて吸引ポンプ30による吸引を行うことができ、吸引ポンプ30による無用な吸引を防止することができる。
【0028】
また、吸引ポンプ30の吐出空気をフィルター31によって除菌及び/または脱臭するようにしたので、衛生面において極めて有利である。尚、吸引パイプ30aの途中にフィルター31を設けることも可能である。
【0029】
尚、本実施形態では、前記空間SP内の温度を検出する温度センサ40を設け、温度センサ40の検出温度に基づき吸引ポンプ30を制御するようにしているが、温度センサ40の代わりに前記空間SP内の湿度を検出するための周知の湿度センサを設け、湿度センサの検出湿度に基づき吸引ポンプ30を制御することも可能である。この場合でも、着座者の発汗量に応じて吸引ポンプ30による吸引を行うことができ、吸引ポンプ30による無用な吸引を防止することができる。
【0030】
また、温度センサ40や湿度センサを設けずに、制御装置60によって吸引ポンプ30を所定時間(例えば10分)おきに所定時間(例えば3分)ずつ作動させることも可能である。この場合でも、前記各所定時間の設定を適宜行うことにより、着座者の発汗量に応じて吸引ポンプ30による吸引を行うことができ、吸引ポンプ30による無用な吸引を防止することができる。
【0031】
尚、本実施形態では、支持部材20によって各エアーセル10の下端側をそれぞれ支持したクッションを示した。これに対し、平板状の支持部材100によって各エアーセル90の上下方向の中間部分を支持することも可能である(図8参照)。この場合でも、各エアーセル90は支持部材100の上面100aよりも上方に突出するように支持部材100によって支持されている。また、支持部材100に複数の貫通孔100bを設けるとともに、各貫通孔100bから吸引ポンプ30によって空気を吸引することにより、前述と同様の作用効果を達成することができる。
【0032】
また、本実施形態では、平板状の支持部材20と、支持部材20の上面から上方に向かって延びるように形成された複数のエアーセル10とを有するクッションを示した。これに対し、図9及び図10に示すように、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセル110と、各エアーセル110の下端をそれぞれ支持する平板状の支持部材120とを有するクッションにおいて、支持部材120に前述の各第2貫通孔20cと同様の複数の貫通孔120aを設け、吸引ポンプ30によって各貫通孔120aから空気を吸引することも可能である。この場合でも、空気の吸引とともに汗等による湿気や液体が吸引され、前述と同様の作用効果を達成することができる。ここで、各エアーセル110は着座面前後方向に延びる筒状に形成され、互いに着座面幅方向に並ぶように配置されている。また、各エアーセル110は支持部材120の上面120bから上方に突出するように支持部材120によってそれぞれ支持されている。さらに、前述の場合と同様に、各エアーセル110の外表面110a、支持部材120の上面120b、各エアーセル110から成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面F1及び各エアーセル10の上端に接触するように延びる第2仮想面F2によって形成された空間(図10の斜線部分)が基準空間SSとなる。
【0033】
尚、本実施形態では、着座面に載置されて使用されるクッションにおいて、前記空間SPから空気を吸引するようにしたものを示した。これに対し、図11に示すように、椅子の着座面に複数のエアーセル130を直接設けることも可能である。この場合、椅子は、支持部材としての平板状の着座面141と、着座面141を支持する複数の脚142と、着座面141における上面141aの一部から上方に向って延びるように形成された背凭れ143とを有する。また、各エアーセル130はその下端側を着座面141によってそれぞれ支持されている。即ち、各エアーセル130及び着座面141によってクッションが構成される。また、各エアーセル130上に着座者が着座した状態で、着座者の臀部の下面、各エアーセル130の外表面130a及び着座面141の上面141aによって形成される空間の空気が吸引ポンプ30によって吸引される。このため、着座面に載置されて使用される前述のクッションと同様の作用効果を達成することが可能である。同様に、車椅子の着座面に各エアーセル130を直接設けることも可能である。
【0034】
また、支持部材20をベッドの上面に沿って延びるように形成し、ベッドに載置されて使用されるクッションを構成することも可能である。この場合でも、着座面に載置されて使用される前述のクッションと同様の作用効果を達成することが可能である。さらに、ベッドの上面に複数のエアーセルを直接設けることも可能である。即ち、ベッドの上面部分及び各エアーセルによってクッションが構成される。この場合でも、着座面に載置されて使用される前述のクッションと同様の作用効果を達成することが可能である。
【0035】
尚、本実施形態では、支持部材20に複数の第2貫通孔20cを設け、各第2貫通孔20cを介して前記空間SPの空気を吸引するものを示した。これに対し、図12に示すように、各第2貫通孔20cを設けずに、吸引ポンプ30の吸引パイプ30aを支持部材20の上面20c側に配置し、吸引パイプ30aに複数の吸引孔30bを設けることにより、前記空間SPの空気を吸引することも可能である。
【0036】
また、本実施形態では、各エアーセル10が支持部材20における上側シート状部材31と一体に設けられたものを示した。これに対し、各エアーセル10を支持部材20に着脱自在に設けることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0037】
尚、本実施形態では、一定の吸引速度で空気を吸引する吸引ポンプ30を用いるものを示した。これに対し、吸引速度が温度、湿度、時間等によって変化する吸引ポンプを用いることも可能である。この場合でも、前記基準体積S1を所定時間あたりの吸引量S2で除算した値が1以上10以下であれば、前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0038】
また、本実施形態では、各エアーセル20内に空気を供給するための図示しない電動エアーポンプと吸引ポンプ30とを設けたものを示した。これに対し、各エアーセル20内に空気を供給するための前記電動エアーポンプの空気吸入口を吸引ポンプ30の代わりに用いることも可能であり、吸引ポンプ30によって空気を吸引する場合と同様の作用効果を達成することが可能である。この場合、通常は前記電動エアーポンプの空気吸入口に防塵フィルターを設ける必要があるところ、防塵フィルターの代わりにフィルター31を取付けることが可能であり、防塵フィルターを設ける必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明における一実施形態を示すクッションの平面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】基準空間を示すクッションの断面図
【図4】クッションのブロック図
【図5】制御装置の動作を示すフローチャート
【図6】クッションの動作説明図
【図7】クッションの動作説明図
【図8】本実施形態の第1変形例を示すクッションの断面図
【図9】本実施形態の第2変形例を示すクッションの平面図
【図10】図9におけるB−B線断面図
【図11】本実施形態の第3変形例を示す椅子の側面図
【図12】本実施形態の第4変形例を示すクッションの平面図
【符号の説明】
【0040】
10…エアーセル、10a…外表面、20…支持部材、20a…上面、20b…第1貫通孔、20c…第2貫通孔、30…吸引ポンプ、30a…吸引パイプ、30b…吸引孔、40…温度センサ、50…着座検知センサ、60…制御装置、70…カバー、90…エアーセル、100…支持部材、100a…上面、110…エアーセル、110a…外表面、120…支持部材、120a…貫通孔、120b…上面、130…エアーセル、130a…外表面、141…着座面、141a…上面、142…脚、143…背凭れ、SS…基準空間、SP…空間、H…臀部、F1…第1仮想面、F2…第2仮想面、CL…衣服。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車椅子や病院のベッドに載置されて着座者や患者を軟らかく支持する褥瘡防止用のクッションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のクッションとしては、車椅子の着座面に載置可能な平板状に形成された支持部材と、それぞれ支持部材の上面から上方に向かって延びるように形成され、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセルと、各エアーセル内を互いに連通させる空気通路と、空気通路を介して各エアーセル内に空気を供給可能なエアーポンプとを備え、各エアーセルによって着座者の臀部を支持するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、他のクッションとしては、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセルと、各エアーセルの下端を支持する支持部材と、各エアーセル内に空気を供給可能なエアーポンプと、各エアーセルの上面に設けられた複数の通気孔とを備え、各エアーセルによって患者を支持する際に、各エアーセルに設けられた通気孔から空気が吐出されるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特表平6−510436号公報
【特許文献2】特開平9−024070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記各クッションでは、各エアーセルによって着座者や患者を軟らかく支持するために、各エアーセルは内部に空気を封入可能であるとともに可撓性を有する必要があり、各エアーセルが空気透過性の低いゴムやプラスチック等から形成されている。また、支持部材は、着座者や患者から生ずる汗等の湿気や液体が染み込むことがなく、汗等の湿気や液体によって強度低下を生ずることがないように、汗等の液体を透過し難いゴム、プラスチック、表面処理が施された布等から形成されている。
【0005】
このため、前者のクッションでは、各エアーセル上に着座者が着座すると、着座者の臀部の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間に汗等による湿気や液体が残留し易いという問題点があった。ここで、前記空間に汗等による湿気や液体が残留すると、着座者の臀部が湿気や液体によって褥瘡の発生し易い状態となり、また、着座者の臀部近傍を清潔な状態に維持する上で好ましくない。
【0006】
一方、後者のクッションでは、各エアーセルによって患者を支持する際に、各エアーセルに設けられた通気孔から空気が吐出され、前記空間に汗や湿気が残留し難くなっている。しかしながら、各エアーセル上の患者が動かない状態で、各エアーセルに設けられた通気孔から空気が吐出されると、通気孔から吐出される空気が患者の一部分に継続的に吹き付けられることになるので、例えばクッションが病院において使用され、通気孔からの吐出空気が吹き付けられる部分に傷等が生じている場合に、空気を介して病気に感染する可能性が高くなるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、着座者や患者等の支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び各エアーセルを支持する支持部材の上面によって形成される空間に汗等による湿気や液体が残留し難く、しかも空気を介して病気に感染する可能性が高くなることのないクッションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、平板状の支持部材と、互いに略水平方向に並ぶように配置されるとともに、支持部材の上面よりも上方に突出するように支持部材によってそれぞれ支持された複数のエアーセルとを備え、各エアーセルによって任意の支持対象を支持するクッションにおいて、前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間から単位時間あたりの吸引量が所定量となるように空気を吸引する吸引手段を備えたている。
【0009】
これにより、支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間から所定の吸引速度で空気が吸引されるので、空気の吸引とともに前記空間から汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気の吸引とともに前記空間から汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引されるので、前記空間に汗等による湿気や液体が残留し難い。また、支持対象に空気が吹き付けられることがないので、各エアーセルによって支持される部分の近傍に傷等が生じている場合であっても、空気を介して病気に感染する可能性が高くなることがなく、支持対象を衛生的な状態に維持する上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すもので、図1はクッションの平面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は基準空間を示すクッションの断面図、図4はクッションのブロック図、図5は制御装置の動作を示すフローチャート、図6及び図7はクッションの動作説明図である。尚、以下の文章中における方向の説明は図1及び図2に示した前後方向、着座面幅方向及び上下方向に準ずる。また、前後方向と着座面の前後方向は一致している。
【0012】
このクッションは、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセル10と、例えば車椅子の着座面に沿って延びるように形成され、各エアーセル10の下端側をそれぞれ支持する可撓性の支持部材20と、周知の電動エアーポンプから成る吸引ポンプと30、周知の温度センサ40と、各エアーセル10上に着座者が着座したことを検知可能な着座検知センサ50と、吸引ポンプ30、温度センサ40及び着座検知センサ50に接続されている制御装置60とを備えている。
【0013】
各エアーセル10はゴムやプラスチック等の可撓性を有する材料から成る。また、各エアーセル10は、下端が開口するとともに内部に空気を封入可能な袋状に形成され、支持部材20の上面20aから上方に向かって延びるように形成されている。即ち、各エアーセル10は支持部材20の上面20aよりも上方に突出するように支持部材20によってそれぞれ支持されている。尚、本実施形態では、着座面前後方向の両端及び着座面幅方向の両端に配置されている各エアーセル10は他のエアーセル10よりも大きな高さ寸法を有するが、各エアーセル10の高さ寸法を全て同等にすることも可能である。
【0014】
支持部材20は上側シート状部材21及び下側シート状部材22から構成されている。各シート状部材21,22はゴムやプラスチック等の可撓性を有する材料から成り、各シート状部材21,22はそれぞれ平板状に形成されている。また、上側シート状部材21の下面は下側シート状部材22の上面に接着剤等によって貼り合わせられている。上側シート状部材21は各エアーセル10と一体に形成され、上側シート状部材21は各エアーセル10の下端側と連続している。これにより、各エアーセル10の下端側が支持部材20によってそれぞれ支持されている。
【0015】
支持部材20には複数の第1貫通孔20bが設けられ、各第1貫通孔20bは下側シート状部材22を上下方向に貫通し、各エアーセル10にそれぞれ1つずつ対応するように設けられている。各第1貫通孔20bには図示しない連通パイプが差込まれる。これにより、各エアーセル10が連通パイプを介して互いに連通するように、連通パイプが各エアーセル10内に連通する。また、連通パイプは図示しない周知の電動エアーポンプに接続され、その電動エアーポンプによって各エアーセル10内に空気が供給されるようになっている。
【0016】
支持部材20には複数の第2貫通孔20cが設けられ、各第2貫通孔20cは上側シート状部材21及び下側シート状部材22を上下方向に貫通し、支持部材20の上面20aにおける各エアーセル10の間に開口している。
【0017】
吸引ポンプ30は例えば周知の電動エアーポンプやコンプレッサーから成り、吸引パイプ30aを介して各第2貫通孔20cに連通している。吸引ポンプ30の空気吐出口にはフィルター31が取付けられ、吸引ポンプ30の吐出空気がフィルター31によって除菌及び/または脱臭されるようになっている。フィルター31は例えば脱臭カラムから成る。脱臭カラムとは、筒状部材内に例えば活性炭等の吸着剤を収容したものであり、筒状部材内を通過した空気が脱臭されるようになっている。また、前記筒状部材内に除菌作用を有する周知の充填材をさらに収容したり、前記脱臭カラムに除菌カラムを直列に接続することにより、除菌及び脱臭を行うことが可能である。さらに、脱臭カラムを設けずに除菌カラムのみを設けることも可能である。尚、フィルター31は特許請求の範囲に記載した吸引空気処理手段に相当する。
【0018】
着座検知センサ50は周知の圧力センサから成り、各エアーセル10上に着座者が着座すると、着座検知センサ50に加わる圧力が所定の大きさ以上になり、着座者の着座が検知されるようになっている。
【0019】
制御装置60はCPU、メモリー等を有する周知のマイクロコンピュータから成り、温度センサ40の検出温度に基づいて吸引ポンプ30を制御するようになっている。
【0020】
以上のように構成されたクッションは、例えば車椅子の着座面に載置されて使用される。また、着座者が着座する前段階で、各エアーセル10内に所定量の空気が封入される。
【0021】
ここで、着座者が着座した後の制御装置の動作について図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0022】
先ず、着座検知センサ50によって着座者の着座が検知され(S1)、温度センサ40の検出温度が所定温度よりも高くなると(S2)、吸引ポンプ30によって各第2貫通孔20cから空気を吸引する(S3)。ここで、温度センサ40は、着座者の臀部Hが各エアーセル10によって支持された際に、着座者の臀部Hの下面、各エアーセル10の外表面10a及び支持部材20の上面20aによって形成される空間SPの温度を検出するようになっている。これにより、前記空間SPから吸引ポンプ30によって空気が吸引される。また、空気の吸引とともに前記空間SPから汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。ここで、図6に示すように、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間に衣服CLが介在している場合は、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間に介在している衣服CL内を空気が流通し、衣服CL内に存在する汗等による湿気や液体も吸引ポンプ30によって吸引される。また、図7に示すように、各エアーセル10の上面が布製のカバー70によって覆われ、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間にカバー70及び衣服CLが介在している場合は、着座者の臀部Hと各エアーセル10との間に介在しているカバー70内及び衣服CL内を空気が流通し、カバー70内及び衣服CL内に存在する汗等による湿気や液体も吸引ポンプ30によって吸引される。
【0023】
一方、着座検知センサ50によって着座者の着座が検知されなくなった場合や(S1)、温度センサ40の検出温度が所定温度以下になった場合は(S2)、吸引ポンプ30による空気の吸引を停止させる(S4)。
【0024】
ここで、吸引ポンプ30は1秒あたりの吸引量S2が800cm2であり、一定の吸引速度で空気を吸引するようになっている。一方、各エアーセル10が潰れていない状態において、各エアーセル10の外表面10a、支持部材20の上面20a、各エアーセル10から成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面F1及び各エアーセル10の上端に接触するように延びる第2仮想面F2によって形成された基準空間SS(図4の斜線部分)の体積S1は4000cm2である(図1及び図4参照)。この時、各エアーセル10内には前記所定量の空気が封入されている。即ち、基準空間SSの体積S1を吸引ポンプ30の1秒あたりの吸引量S2で除算した結果が5になるので、吸引ポンプ30は基準空間SSの体積と等しい量の空気を5秒に1回吸引するようになっている。
【0025】
このように、本実施形態によれば、着座者の臀部Hの下面、各エアーセル10の外表面10a及び支持部材20の上面20aによって形成される空間SPから単位時間(1秒)あたりの吸引量S2が所定量(800cm2)となるように空気が吸引されるので、空気の吸引とともに前記空間SPから汗等による湿気が吸引され、汗等による液体も徐々に蒸発して吸引される。即ち、前記空間SPに汗等による湿気や液体が残留し難い。また、着座者の臀部Hに空気が吹き付けられることがないので、各エアーセル10によって支持される臀部Hに傷等が生じている場合でも、空気を介して病気に感染する可能性が高くなることがなく、臀部Hを衛生的な状態に維持する上で極めて有利である。
【0026】
また、各エアーセル10が潰れていない状態において、各エアーセル10の外表面10a、支持部材20の上面20a、各エアーセル10から成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面F1及び各エアーセル10の上端に接触するように延びる第2仮想面F2によって形成される基準空間SSの体積S1を4000cm2とし、吸引ポンプ30の1秒あたりの吸引量S2を800cm2とした。即ち、S1/S2が5になるようにしたので、前記空間SP内において空気が静かに移動する。従って、各エアーセル10によって支持される臀部Hに傷等が生じている場合でも、空気を介して病気に感染する可能性を極力低くすることができる。尚、S1/S2が1以上であれば、前記空間SP内を空気が静かに移動する。また、S1/S2が3以上である場合は、前記空間SP内を空気がより静かに移動するので、S1/S2は5以上であることが好ましい。一方、S1/S2が1よりも小さくなると、前記空間SP内の空気の速度が大きくなり、前記空間SP内における空気の流れやすい経路のみで空気が移動するとともに、空気の流れ難い場所において空気が移動しなくなり、汗等による湿気や液体を前記空間SP内の全ての場所から万遍なく吸引することができなくなる。また、S1/S2が7よりも大きくなると、前記空間SP内における空気の移動量が小さくなり始めるとともに、汗等による湿気や液体の吸引が少なくなり始め、S1/S2が10よりも大きくなると、湿気や液体の吸引を効果的に行うことができなくなる。即ち、S1/S2が1以上10以下であれば、S1/S2が5である場合と同等の作用効果を達成することができる。また、S1/S2は3以上7以下であることが好ましい。
【0027】
また、前記空間SP内の温度を検出可能な温度センサ40を設け、温度センサ40の検出温度に基づき吸引ポンプ30を制御するようにした。このため、前記空間SP内の温度によって変化する着座者の発汗量に応じて吸引ポンプ30による吸引を行うことができ、吸引ポンプ30による無用な吸引を防止することができる。
【0028】
また、吸引ポンプ30の吐出空気をフィルター31によって除菌及び/または脱臭するようにしたので、衛生面において極めて有利である。尚、吸引パイプ30aの途中にフィルター31を設けることも可能である。
【0029】
尚、本実施形態では、前記空間SP内の温度を検出する温度センサ40を設け、温度センサ40の検出温度に基づき吸引ポンプ30を制御するようにしているが、温度センサ40の代わりに前記空間SP内の湿度を検出するための周知の湿度センサを設け、湿度センサの検出湿度に基づき吸引ポンプ30を制御することも可能である。この場合でも、着座者の発汗量に応じて吸引ポンプ30による吸引を行うことができ、吸引ポンプ30による無用な吸引を防止することができる。
【0030】
また、温度センサ40や湿度センサを設けずに、制御装置60によって吸引ポンプ30を所定時間(例えば10分)おきに所定時間(例えば3分)ずつ作動させることも可能である。この場合でも、前記各所定時間の設定を適宜行うことにより、着座者の発汗量に応じて吸引ポンプ30による吸引を行うことができ、吸引ポンプ30による無用な吸引を防止することができる。
【0031】
尚、本実施形態では、支持部材20によって各エアーセル10の下端側をそれぞれ支持したクッションを示した。これに対し、平板状の支持部材100によって各エアーセル90の上下方向の中間部分を支持することも可能である(図8参照)。この場合でも、各エアーセル90は支持部材100の上面100aよりも上方に突出するように支持部材100によって支持されている。また、支持部材100に複数の貫通孔100bを設けるとともに、各貫通孔100bから吸引ポンプ30によって空気を吸引することにより、前述と同様の作用効果を達成することができる。
【0032】
また、本実施形態では、平板状の支持部材20と、支持部材20の上面から上方に向かって延びるように形成された複数のエアーセル10とを有するクッションを示した。これに対し、図9及び図10に示すように、互いに略水平方向に並ぶように配置された複数のエアーセル110と、各エアーセル110の下端をそれぞれ支持する平板状の支持部材120とを有するクッションにおいて、支持部材120に前述の各第2貫通孔20cと同様の複数の貫通孔120aを設け、吸引ポンプ30によって各貫通孔120aから空気を吸引することも可能である。この場合でも、空気の吸引とともに汗等による湿気や液体が吸引され、前述と同様の作用効果を達成することができる。ここで、各エアーセル110は着座面前後方向に延びる筒状に形成され、互いに着座面幅方向に並ぶように配置されている。また、各エアーセル110は支持部材120の上面120bから上方に突出するように支持部材120によってそれぞれ支持されている。さらに、前述の場合と同様に、各エアーセル110の外表面110a、支持部材120の上面120b、各エアーセル110から成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面F1及び各エアーセル10の上端に接触するように延びる第2仮想面F2によって形成された空間(図10の斜線部分)が基準空間SSとなる。
【0033】
尚、本実施形態では、着座面に載置されて使用されるクッションにおいて、前記空間SPから空気を吸引するようにしたものを示した。これに対し、図11に示すように、椅子の着座面に複数のエアーセル130を直接設けることも可能である。この場合、椅子は、支持部材としての平板状の着座面141と、着座面141を支持する複数の脚142と、着座面141における上面141aの一部から上方に向って延びるように形成された背凭れ143とを有する。また、各エアーセル130はその下端側を着座面141によってそれぞれ支持されている。即ち、各エアーセル130及び着座面141によってクッションが構成される。また、各エアーセル130上に着座者が着座した状態で、着座者の臀部の下面、各エアーセル130の外表面130a及び着座面141の上面141aによって形成される空間の空気が吸引ポンプ30によって吸引される。このため、着座面に載置されて使用される前述のクッションと同様の作用効果を達成することが可能である。同様に、車椅子の着座面に各エアーセル130を直接設けることも可能である。
【0034】
また、支持部材20をベッドの上面に沿って延びるように形成し、ベッドに載置されて使用されるクッションを構成することも可能である。この場合でも、着座面に載置されて使用される前述のクッションと同様の作用効果を達成することが可能である。さらに、ベッドの上面に複数のエアーセルを直接設けることも可能である。即ち、ベッドの上面部分及び各エアーセルによってクッションが構成される。この場合でも、着座面に載置されて使用される前述のクッションと同様の作用効果を達成することが可能である。
【0035】
尚、本実施形態では、支持部材20に複数の第2貫通孔20cを設け、各第2貫通孔20cを介して前記空間SPの空気を吸引するものを示した。これに対し、図12に示すように、各第2貫通孔20cを設けずに、吸引ポンプ30の吸引パイプ30aを支持部材20の上面20c側に配置し、吸引パイプ30aに複数の吸引孔30bを設けることにより、前記空間SPの空気を吸引することも可能である。
【0036】
また、本実施形態では、各エアーセル10が支持部材20における上側シート状部材31と一体に設けられたものを示した。これに対し、各エアーセル10を支持部材20に着脱自在に設けることも可能であり、この場合でも前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0037】
尚、本実施形態では、一定の吸引速度で空気を吸引する吸引ポンプ30を用いるものを示した。これに対し、吸引速度が温度、湿度、時間等によって変化する吸引ポンプを用いることも可能である。この場合でも、前記基準体積S1を所定時間あたりの吸引量S2で除算した値が1以上10以下であれば、前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0038】
また、本実施形態では、各エアーセル20内に空気を供給するための図示しない電動エアーポンプと吸引ポンプ30とを設けたものを示した。これに対し、各エアーセル20内に空気を供給するための前記電動エアーポンプの空気吸入口を吸引ポンプ30の代わりに用いることも可能であり、吸引ポンプ30によって空気を吸引する場合と同様の作用効果を達成することが可能である。この場合、通常は前記電動エアーポンプの空気吸入口に防塵フィルターを設ける必要があるところ、防塵フィルターの代わりにフィルター31を取付けることが可能であり、防塵フィルターを設ける必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明における一実施形態を示すクッションの平面図
【図2】図1におけるA−A線断面図
【図3】基準空間を示すクッションの断面図
【図4】クッションのブロック図
【図5】制御装置の動作を示すフローチャート
【図6】クッションの動作説明図
【図7】クッションの動作説明図
【図8】本実施形態の第1変形例を示すクッションの断面図
【図9】本実施形態の第2変形例を示すクッションの平面図
【図10】図9におけるB−B線断面図
【図11】本実施形態の第3変形例を示す椅子の側面図
【図12】本実施形態の第4変形例を示すクッションの平面図
【符号の説明】
【0040】
10…エアーセル、10a…外表面、20…支持部材、20a…上面、20b…第1貫通孔、20c…第2貫通孔、30…吸引ポンプ、30a…吸引パイプ、30b…吸引孔、40…温度センサ、50…着座検知センサ、60…制御装置、70…カバー、90…エアーセル、100…支持部材、100a…上面、110…エアーセル、110a…外表面、120…支持部材、120a…貫通孔、120b…上面、130…エアーセル、130a…外表面、141…着座面、141a…上面、142…脚、143…背凭れ、SS…基準空間、SP…空間、H…臀部、F1…第1仮想面、F2…第2仮想面、CL…衣服。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の支持部材と、互いに略水平方向に並ぶように配置されるとともに、支持部材の上面よりも上方に突出するように支持部材によってそれぞれ支持された複数のエアーセルとを備え、各エアーセルによって任意の支持対象を支持するクッションにおいて、
前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間から単位時間あたりの吸引量が所定量となるように空気を吸引する吸引手段を備えた
ことを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記各エアーセルが潰れていない状態で、各エアーセルの外表面、支持部材の上面、各エアーセルから成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面及び各エアーセルの上端に接触するように延びる第2仮想面によって形成される基準空間の体積をS1とし、前記吸引手段の1秒あたりの吸引量をS2とした場合に、S1/S2が1以上となるように構成した
ことを特徴とする請求項1記載のクッション。
【請求項3】
前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間の気温を検出可能な温度センサと、
温度センサの検出温度に基づき吸引手段を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項4】
前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間の湿度を検出可能な湿度センサと、
湿度センサの検出湿度に基づき吸引手段を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項5】
所定時間おきに所定時間ずつ吸引手段によって空気を吸引させる制御手段を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項6】
前記吸引手段によって吸引した空気を除菌及び/または脱臭する吸引空気処理手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のクッション。
【請求項7】
前記各エアーセル内に空気を供給するエアーポンプを備え、
前記吸引手段をエアーポンプの空気吸入口によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のクッション。
【請求項1】
平板状の支持部材と、互いに略水平方向に並ぶように配置されるとともに、支持部材の上面よりも上方に突出するように支持部材によってそれぞれ支持された複数のエアーセルとを備え、各エアーセルによって任意の支持対象を支持するクッションにおいて、
前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間から単位時間あたりの吸引量が所定量となるように空気を吸引する吸引手段を備えた
ことを特徴とするクッション。
【請求項2】
前記各エアーセルが潰れていない状態で、各エアーセルの外表面、支持部材の上面、各エアーセルから成るエアーセル群の外周面に沿って延びる第1仮想面及び各エアーセルの上端に接触するように延びる第2仮想面によって形成される基準空間の体積をS1とし、前記吸引手段の1秒あたりの吸引量をS2とした場合に、S1/S2が1以上となるように構成した
ことを特徴とする請求項1記載のクッション。
【請求項3】
前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間の気温を検出可能な温度センサと、
温度センサの検出温度に基づき吸引手段を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項4】
前記支持対象を各エアーセルによって支持した際に支持対象の下面、各エアーセルの外表面及び支持部材の上面によって形成される空間の湿度を検出可能な湿度センサと、
湿度センサの検出湿度に基づき吸引手段を制御する制御手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項5】
所定時間おきに所定時間ずつ吸引手段によって空気を吸引させる制御手段を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のクッション。
【請求項6】
前記吸引手段によって吸引した空気を除菌及び/または脱臭する吸引空気処理手段を備えた
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載のクッション。
【請求項7】
前記各エアーセル内に空気を供給するエアーポンプを備え、
前記吸引手段をエアーポンプの空気吸入口によって構成した
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載のクッション。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−112464(P2009−112464A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287742(P2007−287742)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】
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