説明

クラッチ機構、画像読取装置及び画像形成装置

【課題】 コストアップすること無くレバーの当接音を低減させることができるクラッチ機構を提供する。
【解決手段】 カム82cを有すると共に、一部に欠歯部82bを有して有歯部82aで駆動ギア22と噛み合って回転可能な欠歯ギア82と、欠歯ギア82を駆動ギア22に噛み合わせるために欠歯ギア82に回転力を与える引張バネ87と、カム82cに設けられた係合部82dに係合して欠歯ギア82の回転を停止させるレバー81aと、レバー81aを係合部82dとの係合から退避させるソレノイド81と、レバー81aをカム82cに接触させる方向に復帰させる引張バネ81eと、を備え、レバー81aの動作範囲を制限する当接部82eが欠歯ギア82に設けられたクラッチ機構52を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムを有すると共に、一部に欠歯部を有して有歯部で駆動ギアと噛み合って回転可能な欠歯ギアと、欠歯ギアの回転を停止させる係止部材を有し、係止部材をカムに接離させて欠歯ギアへの動力の伝達方向を切替えるクラッチ機構に関する。また、これを備える画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートを給送する給送装置を備える画像形成装置であって、給送装置の内部の給送ローラの回転及び停止を切り替えるクラッチ機構に関する発明として、特許文献1に記載の発明が開示されている。特許文献1に記載の発明は、ギア部及びカムが一体となって回転可能な欠歯ギアと、カムに係合可能なレバーと、を備えるクラッチ機構に関するものである。そして、カムはカム解除面及びカム復帰面を有し、カム復帰面はカム解除面よりも高い面を有するように構成されている。こうした構成によって、レバーの先端とカムとの距離が小さく設定されるので、レバーがカム側へと移動する復帰動作時に、レバーは径が長いカム復帰面に接触するので、「カチッ」という騒音が抑制される。
【0003】
また、このようなレバー及びカムの「カチッ」という騒音が出る構成として、従来タイプのシート給送装置が有するクラッチ機構の構成について図8を参照しつつ説明する。図8(a)は、従来のクラッチ機構152の構成を示す側面図であり、レバー61aがカム62aに係合する様子を示している。図8(b)は、図8(a)の一部拡大側面図である。図8(c)は、従来のクラッチ機構152の構成を示す側面であり、レバー61aがカム62aから離間する様子を示している。図8(d)は、図8(c)の一部拡大側面図である。
【0004】
図8(a)(b)に示されるように、クラッチ機構152は、給送ローラ軸63に取付けられた欠歯ギア62、ソレノイド61で操作されるレバー61a、駆動ギア22等を有している。レバー61aは、欠歯ギア62の係合部62bに係合しており、欠歯ギア62の回転は停止している。
【0005】
図8(c)(d)に示されるように、給送動作信号によってソレノイド61に電圧が印加され励磁されると、発生した磁束でレバー61aがソレノイド61に吸引され、レバー61aは、欠歯ギア62の係合部62bから退避して、欠歯ギア62は回転を開始する。
【0006】
この図8(c)(d)のような場合には、レバー61aが退避する際にレバー61aがソレノイド61へ当接するときに当接音が発生する現象を低減させるため、特許文献1に記載の発明でも当接部にスポンジ、軟質ゴム等の弾性部材を設ける思想が開示されていた。
【0007】
ここで、レバー61a及び欠歯ギア62の間のクラッチ機構を構成するためには、ソレノイド61、ソレノイド61が取付けられる本体フレーム21、給送ローラを覆う給送フレーム64、給送ローラの軸受、給送ローラ軸63等の複数の部品が必要となる。これらの複数の部品の寸法精度や取付精度によっては、レバー61aがソレノイド61によって吸引されて弾性部材61cへと移動すると、カム62aと爪61bが接触し、欠歯ギア62の回転を妨げ、給送ローラ6が回転せず、給送不良を招く虞がある。
【0008】
このようなカム62aと爪61bとの接触による給送不良を防止するために、レバー61aが吸引されて弾性部材61cに当接した際に、上述の複数の部品の寸法精度、組立精度の誤差が積み重なった状態においても、以下のようにする必要があった。すなわち、爪61bを係合部62bから確実に退避させるため、レバー61aが吸引された際の爪61bの先端と係合部62bとの距離L1を大きくとる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−190410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、距離L1を大きく取るとレバー61a(係止部材)が退避する際の可動ストロークが大きくなるため、弾性部材61cに当接する際のレバー61a(係止部材)の回転速度が速くなって当接音が大きくなってしまう。
【0011】
また、レバー61a(係止部材)の当接音を低減させるための弾性部材61cを追加することで、コストアップを招く。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑み、コストアップすること無くレバーの当接音を低減させることができるクラッチ機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のクラッチ機構は、カムを有すると共に、一部に欠歯部を有して有歯部で駆動ギアと噛み合って回転可能な欠歯ギアと、前記欠歯ギアを前記駆動ギアに噛み合わせるために前記欠歯ギアに回転力を与える回転付勢手段と、前記カムに設けられた係合部に係合して前記欠歯ギアの回転を停止させる係止部材と、前記係止部材を前記係合部との係合位置から退避位置へと退避させる退避手段と、前記係止部材を前記カムに接触させる方向に復帰させる復帰手段と、を備え、前記係止部材の動作範囲を制限する制限部が前記欠歯ギアに設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コストアップすること無く係止部材の当接音が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1に係るクラッチ機構を備える画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】フレームを除いて、給送ローラ軸と直交する方向から見たクラッチ機構の平面図等である。
【図3】フレームを除いて、給送ローラ軸と直交する方向から見たクラッチ機構の平面図等である。
【図4】クラッチ機構の動作工程を示す側面図等である。
【図5】欠歯ギア、レバー、ソレノイドの構成を示す拡大側面図等である。
【図6】実施例2に係るクラッチ機構の構成を示す側面図等である。
【図7】実施例3に係るクラッチ機構が適用される画像読取装置の構成を示す断面図である。
【図8】従来のクラッチ機構の構成を示す側面図等である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態を実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1に係るクラッチ機構52を備える画像形成装置100の構成を示す断面図である。画像形成装置100は、電子写真画像形成プロセスを利用した画像形成装置である。図1に示されるように、画像形成装置100は画像形成装置本体(以下、単に『装置本体』という)100Aを有し、この装置本体100Aの内部には、画像を形成する画像形成部2が設けられる。画像形成部2は、『像担持体』である感光体ドラム10、『転写装置』である転写ローラ11等を含む。以下、詳述する。
【0018】
まず、記録材Sの流れに沿って概略的な構成を説明する。画像形成装置100は、電子写真方式によって画像を形成するものである。画像形成装置100は、給送搬送装置1(給送搬送手段)によって記録材Sを画像形成部2へ搬送してトナー像を転写し、その記録材Sを定着装置3(定着手段)へ搬送してトナー定着した後、排出部4へと排出するものである。具体的には、画像形成装置100の下部に記録材Sを積載収納するカセット5が装填されている。給送搬送装置1を構成するカセット5内に積載収納されている記録材Sが、反時計回り方向に回転する給送ローラ6によって最上位の記録材Sから順に送り出され、搬送ローラ対7、8により画像形成部2に送られる。
【0019】
レーザスキャナ9により画像情報に応じたレーザ光が時計回り方向に回転している感光体ドラム10上に照射され、感光体ドラム10上には静電潜像が形成される。この静電潜像はプロセスカートリッジ30内の現像部にてトナー現像される。感光体ドラム10上に形成されたトナー画像は、転写ローラ11により未定着画像として記録材Sに転写される。未定着画像を担持した記録材Sは、定着装置3に送られ、定着装置3における定着ユニットTにて定着処理がなされる。定着装置3を通過して定着処理を終えた記録材Sは搬送ローラ対12及び排出搬送ローラ対13により搬送され、装置上部の排出部4に排出される。
【0020】
また、装置本体100Aの内部には、画像形成装置100の電源部および画像形成装置100を制御する制御基板を有する電装部14が設けられている。
【0021】
記録材Sの表裏両面記録時について説明する。記録材Sの両面に記録を行う場合には、定着装置3を通過して表面側に画像記録された記録材Sを排出搬送ローラ対13の逆転駆動によりスイッチバック搬送する。更に記録材Sを搬送ローラ対15、16により再び画像形成部2に搬送する。そして前述と同様に記録材Sの裏面側に画像記録を行った後に排出される。
【0022】
手差し給送部17から給送を行う場合には、手差しトレイ18を開放し、手差しトレイ18上に記録材Sを積載する。この手差しトレイ18に積載された記録材Sが時計回り方向に回転する手差し給送ローラ19によって最上位の記録材Sから順に送り出され、搬送ローラ対8により『画像形成手段』である画像形成部2に送られる。画像形成部2に送られた後は前述と同様のため省略する。次に、本実施例における給送ローラ6の駆動を切り替えるクラッチ機構52における欠歯ギア82、及び、ソレノイド81に設けられたレバー81aの構成について、図2〜図5を用いてより詳しく説明する。
【0023】
図2は、給送動作を行う前の状態を示している。図2(a)は、フレームを除いて、給送ローラ軸83と直交する方向から見たクラッチ機構52の平面図である。図2(b)は、クラッチ機構52を図2(a)の下方から見た側面図である。図2(c)は、レバー81aの周辺の構成を示す図2(b)の一部拡大側面図である。
【0024】
図2(a)(b)に示されるように、駆動ギア22は、本体フレーム41に設けられる。図2(b)に示される駆動ギア22は、不図示の駆動モータ及びギア列によって、図2(b)中で反時計回り方向に回転する。
【0025】
給送ローラ軸83は、給送ローラ6と一体となって回転可能な軸である。給送ローラ軸83には、給送ローラ軸83と一体となって回転可能な欠歯ギア82が取り付けられている。欠歯ギア82はカム82cを有する。また、欠歯ギア82はギア部82xを有し、ギア部82xは、歯が有る有歯部82a、及び、その一部に歯が無い欠歯部82bを有する。そして、欠歯ギア82は、有歯部82aで駆動ギア22と噛み合って回転可能なギアとなっている。
【0026】
こうした欠歯ギア82には、カム82cのところに『回転付勢手段』である引張バネ87が設けられ、欠歯ギア82は図2(b)中で時計回り方向に付勢されている。そして、引張バネ87は、欠歯ギア82を駆動ギア22に噛み合わせるために欠歯ギア82に回転力を与えるようになっている。
【0027】
カム82cは、周方向にいくにつれて径が大きくなる周面を有しており、径が最小の部位と径が最大の部位との段差で係合部82dが形成されている。係合部82dは、後述するレバー81aの爪81bが係合する部位である。
【0028】
この一方で、ソレノイド81は、本体フレーム41に取り付けられる。ソレノイド81には、『係止部材』であるレバー81aが設けられる。このレバー81aは、カム82cに設けられた係合部82dに係合して欠歯ギア82の回転を停止させる部材である。レバー81aの構成を具体的に説明すると、以下のようになっている。すなわち、レバー81aの先端は屈曲されており、レバー81aは先端に爪81bを有する。また、レバー81aの基端は、レバー81aの先端が本体フレーム41の面に沿う方向に揺動する場合に、支点となるように支持されている。
【0029】
また、レバー81aの基端側には、『復帰手段』である引張バネ81eが取り付けられている。この引張バネ81eは、レバー81aをカム82cに接触させる方向に復帰させる部材である。引張バネ81eは、レバー81aが図2(b)中で時計回り方向に回転するように、レバー81aを付勢している。そして、レバー81aの先端が時計回り方向に揺動することで、レバー81aの爪81bがカム82cの係合部82dと係合する(図2(c)参照)。これによって、欠歯ギア82の回転が停止する。
【0030】
また、前述した『退避手段』であるソレノイド81は、レバー81aを係合部82dとの係合位置から退避位置へと退避させる部材である。そのために、図3(b)(c)に示されるように、レバー81aがソレノイド81に引き寄せられると、レバー81aの先端が反時計回り方向に揺動することで、レバー81aの爪81bがカム82cの係合部82dから外れる。これによって、欠歯ギア82は回転可能となる。
【0031】
クラッチ機構52の欠歯ギア82には、レバー81aの動作範囲を制限する『制限部』である当接部82eが設けられている。当接部82eは、欠歯ギア82と一体で構成されている。欠歯ギア82には、給送ローラ軸83と直交する方向かつ給送ローラ軸83から離間する方向に延びる延設部82f(図2(c)参照)が設けられており、この延設部82fを座面として当接部82eが設けられている。当接部82eは、給送ローラ軸83の延びる方向に所定の高さを有する。そして、レバー81aがカム82cから離間する方向に揺動すると、レバー81aが当接部82eに接触して揺動が制限されるようになっている。
【0032】
図3は、給送動作を行うときの状態を示している。図3(a)は、フレームを除いて、給送ローラ軸83と直交する方向から見たクラッチ機構52の平面図である。図3(b)は、クラッチ機構52を図3(a)の下方から見た側面図である。図3(c)は、レバー81aの周辺の構成を示す図3(b)の一部拡大側面図である。
【0033】
図3(b)(c)に示すように、クラッチ動作信号によってソレノイド81に電圧が印加されて励磁されると、発生した磁束により、レバー81aがソレノイド81に吸引され、レバー81aの先端は反時計回り方向に揺動する。そうすると、レバー81aの爪81bは、カム82cの係合部82dから退避して係合が解かれると共に、レバー81aは、当接部82eに当接して停止する。これによって、欠歯ギア82は、引張バネ87の付勢力により時計回り方向に回転を始める。次に、欠歯ギア82の有歯部82aが駆動ギア22と噛み合い、駆動ギア22の回転が伝達されて、欠歯ギア82は図3(b)中で時計回り方向へと回転し続ける。
【0034】
そして、欠歯ギア82と一体となって回転する給送ローラ軸83が回転し、給送ローラ軸83と一体となって回転する給送ローラ6が回転する。このことで記録材Sは給送され、前述したプロセスで画像形成が行われる。
【0035】
なお、これから所定時間後、ソレノイド81は電圧印加が停止され、レバー81aは、図2(b)(c)に示されるように再び引張バネ81eの付勢力により時計回り方向へと回転し、爪81bはカム82cと接触する。
【0036】
図4は、クラッチ機構52の動作工程を示す側面図である。図4(a)は、レバー81aの爪81bがカム82cの係合部82dに係合している状態を示す側面図である。図4(a)に示されるように、レバー81aの爪81bがカム82cの係合部82dに係合しているときは、ギア部82xの欠歯部82bが駆動ギア22に対向しており、駆動ギア22の駆動力が欠歯ギア82へと伝達されないようになっている。
【0037】
図4(b)は、レバー81aの爪81bがカム82cの係合部82dから退避している状態を示す側面図である。図4(b)に示されるように、レバー81aの爪81bがカム82cの係合部82dから退避すると、引張バネ87が縮み、カム82cが時計回り方向に回転する。そうすると、ギア部82xの有歯部82aが駆動ギア22の歯と噛み合わせられる。そして、駆動ギア22の駆動力が欠歯ギア82に伝達される。
【0038】
図4(c)は、図4(b)の状態から更に欠歯ギア82が回転した状態を示す側面図である。図4(c)に示されるように、欠歯ギア82が回転して、有歯部82aが駆動ギア22に対向する状態から、欠歯部82bが駆動ギア22に対向する状態へと移行していく。引張バネ87は、図4(b)の状態よりも次第に伸びてきている。
【0039】
図4(d)は、図4(c)の状態から更に欠歯ギア82が回転した状態を示す側面図である。図4(d)に示されるように、欠歯ギア82が1回転して、レバー81aの爪81bが再びカム82cの係合部82dに係合する。すなわち、これは、図4(a)の状態に戻ったことにもなる。こうなることで、欠歯ギア82の回転が停止し、給送動作が終了する。
【0040】
図4(e)は、図4(c)の図を、別の角度から見た一部拡大斜視図である。この図4(e)に示されるように、レバー81aには切欠部81cが設けられる。切欠部81cは、欠歯ギア82が回転する際の当接部82eの回転を妨げないように設けるものである。当接部82eが切欠部81cを通過することで、欠歯ギア82は回転可能となっている。
【0041】
図5(a)は、欠歯ギア82、レバー81a、ソレノイド81の構成を示す拡大側面図である。図5(b)は、欠歯ギア82、及び、レバー81aの構成を示す拡大分解図である。図5(a)のようにレバー81aの爪81bがカム82cの係合部82dから確実に退避するためには、図5(b)に示す「爪81bの長さLA」と、「欠歯ギア82の係合部82dから当接部82eまでの距離LB」との関係がLA<LBとなっていれば良い。本実施例のように、当接部82eを欠歯ギア82に設けることで、複数の部品を介さず、欠歯ギア82とレバー81aの2部品の寸法精度のみを考慮すれば良いわけである。
【0042】
従来では複数の部品の寸法精度、取り付け精度を考慮するため、LB−LA=1mm程度と設定していたものを、本実施例ではLB−LA=0.3mmと設定した。LB−LA=0.3mmとすることで、レバー81aがソレノイド81に吸引された際の可動ストロークを小さくでき、レバー81aが当接部82eに当接する際の回転速度を遅くできる。そのために、レバー81aが当接部82eに当接する際の当接音を低減することが可能となる。
【0043】
表1に、弾性部材有り、弾性部材無し、実施例1の形態でのレバーの当接音の測定結果を示す。それぞれ10回測定し、測定値をdBで示す。弾性部材無しでのレバーのストロークは弾性部材有りでの可動ストロークと同じストロークで測定している。
【表1】

【0044】
表1に示すように、弾性部材を追加することで、10回の平均値で6.31dB低減し、実施例1の形態では、弾性部材有りと比較し、10回の平均値で8.3dBの低減をすることが可能となった。
【0045】
以上示したように、本実施例の形態によって、レバー81aの可動ストロークを小さくでき、レバー81aが当接部82eに当接する際の回転速度を遅くできるので、コストアップすること無く、レバー81aの当接音を低減することが可能となった。
【0046】
尚、音の測定は、株式会社小野測器社製の広帯域精密騒音計のLA−5111を使用し、コンデンサマイクロホンの位置をソレノイド81から水平方向に50cm離れた位置で測定している。また、測定時の温湿度、気圧は、20.7℃、58%のときに972hpaである。
【実施例2】
【0047】
図6(a)は、実施例2に係るクラッチ機構252の構成を示す側面図である。図6(b)は、図6(a)の一部拡大側面図である。実施例2のクラッチ機構252の構成のうち実施例1のクラッチ機構52と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例2においても、実施例1と同様の画像形成装置に適用することができるため、画像形成装置の説明は省略する。図6(a)、図6(b)を参照しつつ、クラッチ機構252に関し、特に、欠歯ギア282とレバー81aの構成に関して説明する。なお、図6(a)、図6(b)は、クラッチ動作信号により、ソレノイド81に電圧が印加されて励磁され、発生した磁束でレバー81aがソレノイド81に吸引された状態を示している。
【0048】
実施例2では、欠歯ギア82に替えて欠歯ギア282が用いられている。また、当接部82eに替えて、『制限部』である『緩衝部材』としての弾性部材で構成される当接部282eが用いられている点が、実施例1の構成と異なっている。当接部282eは、弾性部材で形成されており、その材質としては、スポンジ、軟質ゴム等が用いられる。このように、レバー81aがソレノイド81に吸引された際のレバー81aの動作範囲を制限する『制限部』である当接部282eは、欠歯ギア282に設けられている。
【0049】
前述していた従来例では、ソレノイド81に弾性部材を設けた場合、複数の部品の寸法精度、組立精度を考慮して、レバー81aがソレノイド81に吸引された際に、爪81bが係合部82dから確実に退避する構成にする必要性から以下のことが言えた。すなわち、図8(d)に示すように、レバー61aの爪81bと欠歯ギア82の係合部82dとの距離L1を大きくとる必要があった。距離L1を大きくとることにより、レバー81aがカム62aから退避する際の可動ストロークが大きくなるため、弾性部材61cに当接する際のレバー81aの回転速度が速くなってしまい、当接音が大きくなってしまう問題があった。
【0050】
実施例2のように、欠歯ギア282に弾性部材の当接部282eを設けることで、レバー81a、欠歯ギア82、弾性部材61cの3つの寸法精度のみを考慮し、図5と同様にLA<LB(LBは、係合部82dから当接部282eまでの距離)とすれば良い。そのために、レバー81aが吸引された際の可動ストロークを小さくでき、レバー81aが当接部282eに当接する際の回転速度を遅くできるので、レバー81aが当接部282eに当接する際の当接音を低減することが可能となる。
【実施例3】
【0051】
図7は、実施例3に係るクラッチ機構が適用される画像読取装置60の構成を示す断面図である。実施例3のクラッチ機構の構成のうち実施例1のクラッチ機構52と同一の構成及び効果に関しては、同一の符号を用いて説明を適宜省略する。実施例3においても、実施例1と同様の画像形成装置に適用することができるため、画像形成装置の説明は省略する。
【0052】
図7に示されるように、用紙Pは給送ローラ67により矢印X方向に給送され、画像を読み取る画像読取部68により画像の読み取りが行われ、矢印Y方向へと排紙することで画像の読み取りが終了するものである。上述した構成と同様に、給送ローラ67には一体となって回転する欠歯ギア82が取り付けられており、ソレノイド81に取り付けられたレバー81aの爪が係合部82dにて係合するものである。クラッチ動作信号により給送ローラ67が回転し、用紙Pを給送し、画像の読み取りを行うものである。なお、給送ローラ67には欠歯ギア82に替えて欠歯ギア282が取付けられても良い。
【0053】
本実施例においても、レバーの当接部を欠歯ギアに設けることでコストアップすることなく、レバーの可動ストロークを小さくすることが可能となり、レバーが当接部に当接する際の回転速度を遅くできるので、レバーの当接音を低減することが可能となる。
【0054】
また、緩衝材を介して欠歯ギアにレバーを当接させることで、レバーの可動ストロークを小さくすることが可能となり、レバーが緩衝材に当接する際のレバーの回転速度を遅くできるので、レバーの当接音を低減することが可能となる。
【0055】
以上説明した実施例1〜3の構成によれば、当接部82e(282e)が欠歯ギア82(282)に設けられる。当接部82eは、レバー81aがソレノイド81によって係合位置から退避位置へと退避させられる際に、レバー81aが動作する動作範囲を制限する。そのために、レバー81aの可動ストロークが小さくなり、レバー81aが当接部82e(282e)に当接する際のレバー81aの回転速度が遅くなる。その結果、コストアップすること無くレバー81aの当接音が低減する。
【0056】
実施例2の構成によれば、レバー81aがソレノイド81の作用によって当接部282eに当接するときに、レバー81aが当接部282eに当接する当接力が当接部282eによって吸収される。その結果、レバー81aの当接音が更に低減する。
【符号の説明】
【0057】
22 駆動ギア
52、252・・・クラッチ機構
81 ソレノイド(退避手段)
81a レバー(係止部材)
81e 引張バネ(復帰手段)
82、282・・・欠歯ギア
82b 欠歯部
82c カム
82d 係合部
82e、282e・・・当接部(制限部)
87 引張バネ(回転付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムを有すると共に、一部に欠歯部を有して有歯部で駆動ギアと噛み合って回転可能な欠歯ギアと、
前記欠歯ギアを前記駆動ギアに噛み合わせるために前記欠歯ギアに回転力を与える回転付勢手段と、
前記カムに設けられた係合部に係合して前記欠歯ギアの回転を停止させる係止部材と、
前記係止部材を前記係合部との係合位置から退避位置へと退避させる退避手段と、
前記係止部材を前記カムに接触させる方向に復帰させる復帰手段と、を備え、
前記係止部材の動作範囲を制限する制限部が前記欠歯ギアに設けられたことを特徴とするクラッチ機構。
【請求項2】
前記退避手段はソレノイドであり、前記回転付勢手段及び前記復帰手段はバネであることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ機構。
【請求項3】
前記制限部は、前記欠歯ギアと一体で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクラッチ機構。
【請求項4】
前記制限部は、緩衝部材であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクラッチ機構。
【請求項5】
画像を読み取る画像読取部と、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクラッチ機構と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
画像を形成する画像形成部と、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクラッチ機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−201505(P2012−201505A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70988(P2011−70988)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】