説明

クラムシェルバケット

【課題】 浚渫中に左右のバケットから土砂などが溢れることがなく、しかも浚渫後には海底などに凹所ができることがないようにしたクラムシェルバケットを提供する。
【解決手段】 クラムシェルバケットにおいて、作業機械(11)に取付けられる取付けブラケット(26)と、流体の供給によってピストンロッド(21A)を伸長収縮させ得る流体シリンダ(21)と、取付けブラケットに上下動可能にかつ開閉可能に支持され、底部先端に刃先部が形成され、流体シリンダの伸縮によって上下に変位される左右のバケット(23)と、流体シリンダのピストンロッドの伸縮と左右のバケットの上下変位とによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開閉させる左右のリンク機構(24)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はクラムシェルバケットに関し、特に海底の土砂やヘドロなど(以下、単に土砂類ともいう)を浚渫するのに適したバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
クラムシェルバケットは左右のバケットを備え、左右のバケットの刃先部を土砂やヘドロに喰い込ませた後、左右のバケットを閉じることにより海底の土砂やヘドロを浚渫するのによく利用されている。
【0003】
この種のクラムシェルバケットには1本の油圧シリンダとリンクとによって左右のバケットを同期して開閉する方式(特許文献1)と、2本の油圧シリンダによって左右のバケットを別々に開閉できるようにした方式(特許文献2)とが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−247247号公報
【特許文献2】特開2001−254386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2記載のクラムシェルバケットでは左右のバケットの刃先部が円弧状の軌跡を描いて土砂やヘドロをすくい取るので、海底の土砂などを浚渫する場合には海底に多数の深い凹所ができてしまい、後で平坦にならす必要が生ずることがあり、煩わしい。
【0006】
また、浚渫した土砂やヘドロをプールに一時貯留しておき、この土砂やヘドロをクラムシェルバケットですくい出す場合にはプール底面を左右のバケットの刃先部で傷つけるおそれがあった。
【0007】
さらに、左右のバケットを閉じている最中には、左右のバケットの側壁面の隙間から水分を含んだ土砂やヘドロが溢れてしまい、作業効率が悪いという問題があった。特許文献1記載のクラムシェルバケットではカバー部材を設け、左右のバケットを閉じた後、左右のバケットの側壁面の合わせ縁を覆うことが提案されているが、土砂やヘドロを浚渫している最中の溢れについては対応できない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、浚渫中に左右のバケットから土砂などが溢れることがなく、しかも浚渫後には海底などに凹所ができることがないようにしたクラムシェルバケットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係るクラムシェルバケットは、左右のバケットを閉じて土砂類をすくい取るとともに開いて土砂類を放出するようにしたクラムシェルバケットにおいて、作業機械に取付けられる取付けブラケットと、流体の供給によってピストンロッドを伸長させ収縮させ得る流体シリンダと、上記取付けブラケットに上下動可能にかつ開閉可能に支持され、底部先端に刃先部が形成され、上記流体シリンダの伸縮によって上下に変位される左右のバケットと、上記流体シリンダのピストンロッドの伸縮と上記左右のバケットの上下変位とによって上記左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで上記左右のバケットを開閉させる左右のリンク機構と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つは流体シリンダのピストンロッドの伸縮によって左右のバケットを取付けブラケットに対して上下に変位させるとともに、リンク機構によって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開閉するようにした点にある。
【0011】
これにより、左右のバケットの刃先部を海底の土砂やヘドロに喰い込ませた後、左右のバケットを閉じると、刃先部が同一平面上を位置したままとなるので、左右のバケットの刃先部が円弧状の軌跡を描く特許文献1、2記載のクラムシェルバケットのように、海底に多数の深い凹所ができることはない。
【0012】
また、浚渫した土砂やヘドロをプールに一時貯留しておき、この土砂やヘドロをクラムシェルバケットですくい出す場合にもプール底面を左右のバケットの刃先部で傷つけることはない。
【0013】
本発明に係るクラムシェルバケットは具体的には次のように構成されることができる。即ち、そのピストンロッドが上下に伸縮されるように流体シリンダを取付けブラケットに取付け、ピストンロッドの下端にはベースを取付け、左右のバケットの上端内方部をベースに回転自在に取付け、リンク機構は一対のリンクの先端部を相互に回転可能に連結して構成し、リンク対の一方のリンクの中間部分を取付けブラケットに回転可能に支持させ、一方のリンクの他端部を流体シリンダのピストンロッドに回転可能に連結し、リンク対の他方のリンクの他端部を左右のバケットの上端外方部に回転可能に連結し、流体シリンダのピストンロッドの収縮によってベースを上方に変位させるとともに、リンク機構によって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを閉鎖させる一方、流体シリンダのピストンロッドの伸長によってベースを下方に変位させるとともに、リンク機構によって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開放させるように構成することができる。
【0014】
また、左右のバケットの上端内方部をベースに回転自在に共連結し、ベースは取付けブラケットに対して上下スライド自在に設け、流体シリンダを横向きにして左右のバケットの上端中間部の間に取付け、リンク機構を1枚のリンクから構成し、リンクの内端部は取付けブラケットには回転自在に連結し、リンクの外端部は左右のバケットの上端外方部のリンク内端部の連結部位よりも高い箇所に回転自在に連結することにより、左右のバケットを取付けブラケットに吊下げ支持し、流体シリンダのピストンロッドの収縮によってベースを下方にスライドさせるとともに、リンクによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開放させる一方、流体シリンダのピストンロッドの伸長によってベースを上方に変位させるとともに、リンクによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを閉鎖させるように構成することができる。
【0015】
後者の方式の場合、ベースを取付けブラケットに固定可能に設け、リンクを取付けブラケット又はバケットに対して取外し可能に設け、ベースを取付けブラケットに固定し、リンクを取付けブラケット又はバケットから取外すようにすると、左右のバケットは流体シリンダのピストンロッドの伸縮によって刃先部が円弧状の軌跡を描くように開閉することができる。
【0016】
また、リンクの内端部を取付けブラケットのリンク外端部の連結部位よりも低い箇所と高い箇所とに取外し可能に設け、リンクの内端部を取付けブラケットのリンク外端部の連結部位よりも低い箇所に取付けることにより左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開閉させる一方、リンクの内端部を取付けブラケットのリンク外端部の連結部位よりも高い箇所に取付けることにより左右のバケットの刃先部に複合円弧状の軌跡を描かせながら左右のバケットを開閉させることができる。特に、この方式の場合には左右のバケットを閉じた時に深く喰い込むこととなるので、多量の土砂やヘドロを効率よくすくい取ることでできる。
【0017】
さらに、取付けブラケットにカバープレートを取付け、開閉時における左右のバケットの両側を覆うようにすると、浚渫の最中における左右のバケットの隙間からの土砂類の溢れを少なくでき、作業効率を向上できる。
【0018】
また、左右のバケットを相互に連結し、左右のバケットの上部をリンクによって取付けブラケットに連結する一方、取付けブラケットにはベースを上下スライド自在に設け、ベースと左右のバケットとをスライダリンクで連結するとともに、横方向に延びる流体シリンダの後端を左右のバケットの一方に連結し、ピストンロッドの先端を左右のバケットの他方に連結し、流体シリンダの収縮によってベースを下方にスライドさせて左右のバケットを下方に変位させるとともに、リンクによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開放させる一方、流体シリンダのピストンロッドの伸長によってベースを上方に変位させるとともに、リンクによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを閉鎖させるように構成することができる。
【0019】
また、左右のバケットの上部を相互に連結し、左右のバケットの上部をリンクによって取付けブラケットに連結する一方、取付けブラケットには流体シリンダをそのピストンロッドが上下に伸縮されるように取付け、ピストンロッドの下端にはベースを取付け、ベースはスライダリンクによって左右のバケットを回転自在に取付け、流体シリンダのピストンロッドの収縮によってベースを上方に変位させるとともに、リンクによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開放させる一方、流体シリンダのピストンロッドの伸長によってベースを下方に変位させるとともに、リンクによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを閉鎖させるように構成することができる。
【0020】
取付けブラケットは作業機械に取付けることができればよく、例えば油圧ショベルのアーム先端に取付けられ、浚渫船のアーム先端から吊り下げられることができればよい。また、ベースは流体シリンダのピストンロッドに取付けられていれば、形態は特に限定されない。
【0021】
流体シリンダには流体、例えば油やエアーの供給によってピストンロッドを伸長収縮させることができればどのような形態でもよい。また、左右のバケットは底部先端に刃先部が形成され、上端内方部がベースに回転自在に取付けられて開口を合わせ得る状態にできればどのような形態でもよい。
【0022】
リンク機構は流体シリンダのピストンロッドの伸縮と左右のバケットの上下変位とによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開閉させることができれば特に方式は限定されない。
【0023】
例えば、中間部分を取付けブラケットに回転可能に支持し、両端を左右のバケットの上端外方部及び流体シリンダのピストンロッドに回転可能に連結し、流体シリンダのピストンロッドの収縮とベースの下方への変位とによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを閉鎖する一方、流体シリンダのピストンロッドの伸長とベースの上方への変位とによって左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで左右のバケットを開放することができればよく、例えば下記の実施形態に示されるリンク機構を採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係るクラムシェルバケットの好ましい実施形態を示す。図において、ショベル車輛(作業機械)10にはアーム11が設けられ、アーム11は車室内のレバーなどの操作によって上下左右に首振り操作できるように設けられ、又アーム11の先端には本例のクラムシェルバケット20が取付けられている。
【0025】
このクラムシェルバケット20には相互に対向配置した2枚の取付けブラケット26が設けられ、取付けブラケット26の左右上端部には取付け用穴26Aが形成され、この取付け用穴26Aにはアーム11の先端部の取付け用穴が位置合わせされ、取付けロッドが圧入されることによりアーム11の先端に取付けブラケット26が取付けられるようになっている。
【0026】
取付けブラケット26間には油圧シリンダ(流体シリンダ)21がピストンロッド21Aを上下に伸縮させるように取付けられ、油圧シリンダ21は油圧の供給によってピストンロッド21Aを伸長させ収縮させるようになっている。
【0027】
油圧シリンダ21のピストンロッド21Aにはベース22が取付けられ、ベース22には左右の取付け穴22Aが形成され、取付け穴22Aは左右のバケット23の取付けフランジ23Aの上端内方部の取付け穴と位置合わせされて取付けロッド22Bが挿入されることによってベース22には左右のバケット23の上端内方部が回転可能に取付けられている。
【0028】
また、取付けブラケット26と左右のバケット23の間には左右のリンク機構24が設けられている。このリンク機構24は一対のリンクの先端部を相互に回転可能に連結して構成され、一方のリンクは取付けブラケット26に回転自在に連結され、一方のリンクの他端部分は油圧シリンダ21のピストンロッド21Aの中間の取付けロッドに回転可能に取付けられている。
【0029】
さらに、左右のリンク機構24の他方のリンクの他端部分には取付け用穴が形成され、取付け用穴は左右のバケット23の取付けフランジ23Aの上端外方部の取付け用穴と位置合わせされ、取付けロッドが挿入されることによって他方のリンクの外端部分は左右のバケット23の取付けフランジ23Aの上端外方部に回転自在に取付けられており、こうして取付けブラケット26と左右のバケット23とが左右のリンク機構24によって連携されている。
【0030】
また、取付けブラケット26にはほぼ三角形状のカバープレート25が固定され、カバープレート25は土砂類の溢れる量が少なくなるように、左右のバケット23の両側方を覆って設けられ、又左右のバケット23の両側底部にはカバープレート25に抱き付く折り曲げ部分が形成されてバケット23の開閉が案内されるようになっている。なお、図1では図示の便宜上、カバープレート25は省略している。
【0031】
ヘドロをすくい取る場合、油圧シリンダ21のピストンロッド21Aを伸長させると、ベース22が下方に変位し、リンク機構24の内端部分が下方に押し下げられるので、左右のバケット23の取付けフランジ23Aの外方部分が引き上げられ、これによって左右のバケット23は開放される。
【0032】
そこで、アーム11を操作し、左右のバケット23の底部先端の刃先部をヘドロに喰い込ませ、油圧シリンダ21のピストンロッド21Aを収縮させると、ベース22が上方に変位し、同時にリンク機構24の内端部分が上方に引き挙げられるので、左右のバケット23の取付けフランジ23Aの外方部分が押し下げられ、これによって左右のバケット23は閉鎖され、ヘドロをすくい取ることができる。
【0033】
このとき、左右のバケット23の両側はカバープレート25で覆われているので、バケット23から溢れるヘドロの量は少なく、作業効率を向上できる。
【0034】
また、リンク機構24がベース22の上方への変位量に応じて左右のバケット23の取付けフランジ23Aの外方部分を押し下げるので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができ、海底のヘドロなどを深くすくい取ることはない。
【0035】
その結果、海底を平坦に均す必要がなくなる。また、プールにヘドロを貯留しておき、このヘドロを本例のクラムシェルバケットですくい取る場合にもプールの底面を傷つけるおそれはない。ヘドロを放出する場合には上記と逆の操作を行えばよい。
【0036】
図4ないし図6は第2の実施形態を示す。図において図1ないし図3と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例のクラムシェルバケット20’において、取付けブラケット26’の左右上端部には取付け用穴26A’が形成され、取付け用穴26A’によって取付けブラケット26’がショベル車輛や浚渫船などの作業用アーム先端に取付けられる。
【0037】
取付けブラケット26’にはリンク24’の内端部24B’が回転自在に連結され、リンク24’の外端部は左右のバケット23のリンク24’の内端部24B’の連結位置よりも高い位置の上端外方部24A’に回転自在に連結されており、こうして左右のバケット23は取付けブラケット26’に吊下げ支持されている。
【0038】
左右のバケット23の上端内方部は連結ピン29によって相互に回転可能に連結されるとともに、ベース22’の下端部に取付けられ、ベース22は取付けブラケット26内面のガイド部26B’内に上下スライド可能に収納され、ベース22の上端部にはロック穴22B’が形成され、ロック穴22B’を取付けベース26のロック穴と位置合わせしてロックピン22C’を差し込むことによってベース22’の上下スライドを規制できるようになっている。
【0039】
また,左右のバケット23の上端中間部23B’の間には油圧シリンダ(流体シリンダ)21’がピストンロッド21A’を横方向に伸縮させるように取付けられ、油圧シリンダ21’は油圧の供給によってピストンロッド21A’を伸長させ収縮させるようになっている。
【0040】
油圧シリンダ21のピストンロッド21Aにはベース22が取付けられ、ベース22には取付け穴が形成され、取付け穴は左右のバケット23の取付けフランジ23Aの上端内方部の取付け穴と位置合わせされて取付けロッド29が挿入されることによってベース22には左右のバケット23の上端内方部が回転自在に取付けられている。
【0041】
ヘドロをすくい取る場合、油圧シリンダ21’のピストンロッド21A’を収縮させると、図5の(c)に示されるように、ベース22が下方にスライドするとともに、リンク24’の外端部24A’が内端部24B’の廻りに内方に回動されるので、これによって左右のバケット23は開放される。
【0042】
そこで、アームを操作し、左右のバケット23の底部先端の刃先部をヘドロに喰い込ませ、油圧シリンダ21’のピストンロッド21A’を伸長させると、図5の(b)(a)に示されるように、ベース22’が上方にスライドするとともに、リンク24’の外端部24A’が内端部24B’の廻りに外方に回動されるので、これによって左右のバケット23は閉鎖され、ヘドロをすくい取ることができる。
【0043】
このとき、リンク24’がベース22’の上方へのスライドに対応して左右のバケット23を閉じるので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができ、海底のヘドロなどを深くすくい取ることはない。
【0044】
また、バケット23を開くときにはリンク24’がベース22’の下方へのスライドに対応して左右のバケット23を開くので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができる。
【0045】
また、図6の(a)に示されるように、リンク24’を取外し、ベース22’のロック穴22C’を取付けブラケット26のロック穴と位置合わせし、ロックピン22D’を差し込むと、ベース22’の上下スライドを規制できる。
【0046】
この状態で油圧シリンダ21’のピストンロッド21A’を伸長させ収縮させると、図6の(b)に示されるように、左右のバケット23は連結ピン29の廻りに開閉され、その底部先端が円弧状の軌跡を描くように開閉される。
【0047】
従って、バケット23の底部先端にブレード刃を取付けると、岩盤など硬い地盤を確実に掘削することができる。
【0048】
図7及び図8は第3の実施形態を示し、図において図4ないし図6と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例ではリンク24’の外端部24A’は左右のバケット23のリンク24’の内端部24B’の連結位置よりも高い位置の上端外方部に回転自在に連結され、こうして左右のバケット23は取付けブラケット26’に吊下げ支持されている一方、取付けブラケット26’の上端部位にはリンク24’の内端部24B’を取付け可能な取付け穴24C’が形成されている。
【0049】
ヘドロをすくい取る場合、油圧シリンダ21’のピストンロッド21A’を収縮させると、図7の(b)に示されるように、ベース22が下方にスライドするとともに、リンク24’の外端部24A’が内端部24B’の廻りに内方に回動されるので、これによって左右のバケット23は開放される。
【0050】
そこで、アームを操作し、左右のバケット23の底部先端の刃先部をヘドロに喰い込ませ、油圧シリンダ21’のピストンロッド21A’を伸長させると、図7の(a)に示されるように、ベース22’が上方にスライドするとともに、リンク24’の外端部24A’が内端部24B’の廻りに外方に回動されるので、これによって左右のバケット23は閉鎖され、ヘドロをすくい取ることができる。
【0051】
このとき、リンク24’がベース22’の上方へのスライドに対応して左右のバケット23を閉じるので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができ、海底のヘドロなどを深くすくい取ることはない。
【0052】
また、バケット23を開くときにはリンク24’がベース22’の下方へのスライドに対応して左右のバケット23を開くので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができる。
【0053】
また、図8の(a)に示されるように、リンク24’の内端部24B’を取外し、取付けブラケット26’の上端部の取付け穴26C’に位置合わせし、連結ピンを差し込むと、リンク24’の内端部24B’を外端部24A’よりも高い位置に回転可能に取付けることができる。
【0054】
この状態で油圧シリンダ21’のピストンロッド21A’を伸長させ収縮させると、図8の(b)に示されるように、左右のバケット23は上下変位しながら開閉され、その底部先端が複合円弧状の軌跡を描くように開閉され、図6に示される場合に比して深く喰い込ませることができるので、多量の土砂やヘドロを効率よくすくい取ることができる。
【0055】
図9は第4の実施形態を示す。図において図1ないし図8と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例のクラムシェルバケット20”において、取付けブラケット26”の左右上端部には取付け用穴26A”が形成され、取付け用穴26A”によって取付けブラケット26”がショベル車輛や浚渫船などの作業用アームの先端に取付けられる。
【0056】
取付けブラケット26”にはリンク24”の内端部24B”が回転自在に連結され、内端部24B”の連結ピンは左右のバケット23の取付けフランジ23A”に形成された長溝23D”に挿通されている。
【0057】
また、リンク24”の外端部24A”は左右のバケット23の取付けフランジ23A”のリンク24”の内端部24B”の連結位置よりも高い位置の上端外方部に回転自在に連結されており、こうして左右のバケット23は取付けブラケット26”に吊下げ支持されている。
【0058】
左右のバケット23の取付けフランジ23”の内方部は連結プレート210と連結ピン211によって相互に回転可能に連結され、又左右のバケット23の取付けフランジ23A”の中間部の間には油圧シリンダ(流体シリンダ)21”がピストンロッド21A”を横方向に伸縮させるように取付けられている。
【0059】
一対の取付けブラケット26”の間にはスライダブラケット212が上下に延びて取付けられ、スライダブラケット212内にはベース213が上下スライド自在に内蔵され、ベース213はスライダリンク214によって左右のバケット23の取付けフランジ23A”に連結されている。
【0060】
ヘドロをすくい取る場合、油圧シリンダ21”のピストンロッド21A”を収縮させると、ベース213及び左右のバケット23の全体が下方にスライドしながら、リンク24”の外端部24A”が内端部24B”の廻りに内方に回動され、左右のバケット23は開放される。
【0061】
そこで、アームを操作し、左右のバケット23の底部先端の刃先部をヘドロに喰い込ませ、油圧シリンダ21”のピストンロッド21A”を伸長させると、ベース213及び左右のバケット23の全体が上方にスライドしながら、リンク24”の外端部24A”が内端部24B”の廻りに外方に回動され、左右のバケット23は閉鎖され、ヘドロをすくい取ることができる。
【0062】
このとき、リンク24”がベース213の上方スライドに対応して左右のバケット23を閉じるので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができ、海底のヘドロなどを深くすくい取ることはない。
【0063】
また、バケット23を開くときにはリンク24”がベース213の下方スライドに対応して左右のバケット23を開くので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができる。
【0064】
ところで、ヘドロを浚渫する場合、バケット23の先端を川底や海底に押しつけ、アームを操作して浚渫船などを移動させることがある。かかる場合に第1ないし第3の実施形態の構造では左右のバケット23が取付けブラケット26、26’に対して取付け姿勢が変動し、浚渫船などを移動できないことがある。
【0065】
これに対し、本例ではリンク24”とスライダリンク214とによって取付けブラケット26”と左右のバケット23とを連結しているので、左右のバケット23側からの荷重によってベース213がスライドし難く、左右のバケット23の取付けブラケット26”に対する姿勢が変化することはなく、左右のバケット23とアームとを使用して浚渫船などを確実に移動させることができる。
【0066】
図10及び図11は第5の実施形態を示し、図において図1ないし図9と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では本例のクラムシェルバケット20''' において、取付けブラケット26''' の左右上端部には取付け用穴26A”が形成され、取付け用穴26A''' によって取付けブラケット26''' がショベル車輛や浚渫船などの作業用アームの先端に取付けられる。
【0067】
取付けブラケット26''' にはリンク24''' の内端部24B''' が回転自在に連結され、リンク24''' の外端部24A''' は左右のバケット23の取付けフランジ23A''' のリンク24''' の内端部24B''' の連結位置よりも高い位置の上端外方部に回転自在に連結されており、こうして左右のバケット23は取付けブラケット26''' に吊下げ支持され、又左右のバケット23の取付けフランジ23''' の内方部は連結プレート210''' と連結ピン211''' によって相互に回転可能に連結されている。
【0068】
一対の取付けブラケット26''' の間にはスライダブラケット212''' が上下に延びて取付けられ、スライダブラケット212''' 内には油圧シリンダ21''' がピストンロッド21A''' を上下に伸縮させるように取付けられ、ピストンロッド21A''' にはベース213''' が上下スライド自在に内蔵され、ベース213''' はスライダリンク214''' によって左右のバケット23の取付けフランジ23A''' に連結されている。
【0069】
ヘドロをすくい取る場合、油圧シリンダ21''' のピストンロッド21A''' を収縮させると、図11の(c)に示されるように、ベース213''' 及び左右のバケット23の全体が上方にスライドしながら、リンク24''' の外端部24A''' が内端部24B''' の廻りに内方に回動され、左右のバケット23は開放される。
【0070】
そこで、アームを操作し、左右のバケット23の底部先端の刃先部をヘドロに喰い込ませ、油圧シリンダ21''' のピストンロッド21A''' を伸長させると、図11の(b)(a)に示されるように、ベース213''' 及び左右のバケット23の全体が下方にスライドしながら、リンク24''' の外端部24A''' が内端部24B''' の廻りに外方に回動され、左右のバケット23は閉鎖され、ヘドロをすくい取ることができる。
【0071】
このとき、リンク24''' がベース213''' の下方スライドに対応して左右のバケット23を閉じるので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができ、海底のヘドロなどを深くすくい取ることはない。
【0072】
また、バケット23を開くときにはリンク24''' がベース213''' の上方スライドに対応して左右のバケット23を開くので、左右のバケット23の刃先部は同一平面上を移動することができる。
【0073】
さらに、リンク24''' とスライダリンク214''' とによって取付けブラケット26''' と左右のバケット23とを連結しているので、左右のバケット23側からの荷重によって左右のバケット23の取付けブラケット26''' に対する姿勢が変化することはなく、左右のバケット23とアームとを使用して浚渫船などを移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係るクラムシェルバケットの好ましい実施形態を備えたショベル車輛を示す図である。
【図2】上記実施形態におけるバケットの閉じた状態及び開いた状態を示す図である。
【図3】上記実施形態を示す背面図である。
【図4】第2の実施形態を示す図である。
【図5】上記実施形態におけるバケットの閉じた状態、開いた状態及びその中間の状態を示す図である。
【図6】上記実施形態においてバケットに通常の開閉動作をさせる場合の閉じた状態及び開いた状態を示す図である。
【図7】第3の実施形態におけるバケットの閉じた状態、開いた状態及びその中間の状態を示す図である。
【図8】上記実施形態においてバケットに通常の開閉動作をさせる場合の閉じた状態及び開いた状態を示す図である。
【図9】第4の実施形態の構成を示す図である。
【図10】第5の実施形態の構成を示す図である。
【図11】上記実施形態の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0075】
10 ショベル車輛(作業機械) 11 アーム
20、20' 、20" 、20''' クラムシェルバケット
21、21' 、20" 、21''' 油圧シリンダ(流体シリンダ)
21A、21A’、21A" 、21A''' ピストンロッド
22、22’、213、213''' ベース
23 バケット 23A 、23A' 、23A''' 取付けフランジ
24 リンク機構 24’、24" : 24''' リンク
25 カバープレート
26、26' 、26" 、26''' 取付けブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のバケットを閉じて土砂類をすくい取るとともに開いて土砂類を放出するようにしたクラムシェルバケットにおいて、
作業機械に取付けられる取付けブラケットと、
流体の供給によってピストンロッドを伸長させ収縮させ得る流体シリンダと、
上記取付けブラケットに上下動可能にかつ開閉可能に支持され、底部先端に刃先部が形成され、上記流体シリンダの伸縮によって上下に変位される左右のバケットと、
上記流体シリンダのピストンロッドの伸縮と上記左右のバケットの上下変位とによって上記左右のバケットの刃先部を同一平面上に位置させたままで上記左右のバケットを開閉させる左右のリンク機構と、
を備えたことを特徴とするクラムシェルバケット。
【請求項2】
上記取付けブラケットに取付けられ、開閉時における上記左右のバケットの両側を覆うカバープレートを更に備えた請求項1記載のクラムシェルバケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−75441(P2008−75441A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110448(P2007−110448)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(503267261)
【Fターム(参考)】