説明

クランクプレス

【課題】プレスを小型化でき、工場やクレーンの高さも低くでき、メンテナンス性を良くしたクランクプレスを提供する。
【解決手段】クランクプレスのスライドバランサが、油圧シリンダ13とアキュムレータ20とからなり、スライド4の下降時に油圧シリンダ13からアキュムレータ20への圧油が戻され蓄圧され、スライド4の上昇時にはアキュムレータ20から油圧シリンダ13へ圧油を供給して、油圧シリンダ13によってスライド4が押上げられる。スライドバランサが、液圧を高くできる油圧シリンダ13を用いているので、同じ重量のスライド4を吊り上げるのに、シリンダ14を小型化できる。このため、プレスの高さを低くでき、メンテナンス性も向上し作業者の事故も発生しにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクプレスに関する。さらに詳しくは、スライドバランサを改良したクランクプレスに関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、クランクプレスの機械的構造は、クラウン1、フレーム2、ベッド3、スライド4からなる。ベッド3の上にはボルスターと呼ばれる台が置かれ、下型M1はこれに固定され、スライド4の下面には上金型M2が取り付けられる。
モータからのエネルギーはフライホイールの回転運動エネルギーとして蓄積され、鍛造に必要なエネルギーはクラッチ、クランク軸6、コネクティングロッド7を経てスライド4に伝えられる(非特許文献1)。
【0003】
これらのエネルギー伝達系には、スライドバランサが設けられている。
スライド4とクランク6は、コネクティングロッド7で結合されるが、その間にはスライド調整部も含めて、数箇所の結合部がある。各結合部のクリアランスは、スライドの重量によって下側に寄せられているが、そこに鍛造荷重がかかると、クリアランスは上側に寄せられ、その間、スライド4は一時停止した状態になる。この現象を息つき現象というが、これを除かなければ円滑なスライド運動ができないので、スライドバランサによりスライド4を引上げるように構成されている。
【0004】
スライドバランサは、スライド4とその付属品と上型M2を吊り上げる能力を持っていなければならないが、現在ではごく小形のプレスを除いてスライドバランサにはエアバランサ100 が用いられている(非特許文献2)。図6に示すように、このエアバランサ100 は、大型のエアシリンダ101 (シリンダ径1000mm以上が前後にそれぞれ1個)を用いており、さらに図示しないエアタンク(2〜5m)や減圧弁で構成されている。
このようなエアバランサ100 では、数10トンもあるスライド4を吊り下げるために、エアシリンダ101 が大径となるのが必須である。
そして、シリンダ径が大きいため、スペースの関係からプレス最上部(クラウン10上部)に取り付けることになり、しかもスライド4を上方に引上げて重量バランスさせる必要から、取付高さが高くなる。このため、工場の屋根高さやクレーンの設置高さも高くなり、メンテナンス性が悪くなって作業者の事故も発生しやすくなる。
【0005】
【非特許文献1】「鍛造」 1995年8月30日初版発行 社団法人日本塑性加工学会編 株式会社コロナ社刊
【非特許文献2】「知りたいプレス機械改訂版」 70〜71頁 2001年10月1日2版発行 アイダ・プレス研究会著 ジャパンマシニスト社刊
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、プレスを小型化でき、工場やクレーンの高さも低くでき、メンテナンス性も良くなるクランクプレスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のクランクプレスは、クラウンとフレームとベッドを備え、フレームに回転自在に支持されたクランク軸にコネクティングロッドを介してスライドが連結され、該スライドの重量を均合わせるスライドバランサが設けられたクランクプレスであって、前記スライドバランサが、油圧シリンダとアキュムレータとからなり、前記スライドの下降時には、前記油圧シリンダから前記アキュムレータへ圧油が戻され、前記スライドの上昇時には、前記アキュムレータから前記油圧シリンダへ圧油を供給するようになっていることを特徴とする。
第2発明のクランクプレスは、第1発明において、前記油圧シリンダのシリンダと前記アキュムレータが前記フレームに固定されており、前記油圧シリンダのピストンロッドが、前記スライドに固定されたスライドギブに連結されており、前記アキュムレータと前記油圧シリンダのピストン側油室が連通管で接続されていることを特徴とする。
第3発明のクランクプレスは、第1発明において、前記スライドギブに、連結孔を有し、下面を押圧面に形成した取付ボスを設け、該取付ボスの下方に、前記油圧シリンダをロッド側を上方に向けて配置し、前記油圧シリンダのピストンロッドは、その先端部を、大径部の先端側に小径部を形成して、該大径部と該小径部の間に肩部を設けたものであり、前記取付ボスの前記連結孔に、前記油圧シリンダのピストンロッドの小径部を挿入して結合し、前記取付ボスの押圧面と、前記ピストンロッドの肩部とを当接させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、スライドバランサが、出力を高くできる油圧シリンダを用いているので、同じ重量のスライドを吊り上げるのに、シリンダを小型化できる。このため、プレスの高さを低くでき、メンテナンス性も向上し作業者の事故も発生しにくくなる。
第2発明によれば、油圧シリンダのシリンダがフレームに固定されて移動せず、ロッドがスライドギブに連結されているので、スライドの昇降に伴って油圧シリンダのロッドが伸縮する。そして、スライドが下降するときは、ロッドを油圧シリンダ内に押込むので、ピストン側油室の作動油をアキュムレータ内に連通管を介して送込んで蓄圧することができる。よって、スライドの上昇時には、アキュムレータ内の圧力油が油圧シリンダのピストン側油室に供給されるので、ロッドを押上げてスライドを押上げるバランサーとしての機能を果たすことができる。
第3発明によれば、スライドの上昇時も下降時も、スライドギブと油圧シリンダ間の力の伝達は、取付ボスの押圧面とロッドの肩部との間で面加圧によって行うので、力伝達部の面圧が低くなり、変形や損傷が生じにくく、油圧シリンダのロッドの押下げや、スライドの押上げを円滑に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係わるクランクプレスのスライドバランサまわりを示す、図2のI−I線矢視図である。図2は、同クランクプレスのスライドバランサまわりを示す平面図である。図3は、スライドバランサの一部断面拡大図である。図4は、スライドバランサの油圧回路図である。
【0010】
図1および図2において、1はクラウン、2はフレーム、4はスライドを示している。6はクランク軸で、このクランク軸6とスライド4に通したリストピン8とはコネクティングロッド7で連結されている。
スライド4の四隅には、4つのスライドギブ11がボルト等で、それぞれ固定されている。この4つのスライドギブ11の上端部には側方に突出した取付ボス12が、それぞれ形成されている。
一方、前記フレーム2には、4本の油圧シリンダ13のシリンダ14が適宜の手段で固定されている。また、4本のアキュムレータ20も取付バンド21等の適宜の手段で、フレーム2に取り付けられている。油圧シリンダ13とアキュムレータ20を接続する連通管22も適宜の取付金具23で、フレーム2に固定されている
【0011】
つぎに、図3に基づき取付ボス12と油圧シリンダ13の取合いの詳細を説明する。
油圧シリンダ13は、スライドギブ11に設けた取付ボス12の下方に配置されており、そのピストンロッド15は上方に向けられている。ピストンロッド15の先端部はシリンダ14内の部分と同径の大径部15a の先端側に小径部15bを形成しており、大径部15a と小径部15b の間には肩部15c が形成されている。一方、取付ボス12には、その下面を平坦な押圧面12a に形成し、ボス部を貫通する連結孔12b が穿孔されている。
油圧シリンダ13のピストンロッド15の小径部15b は、取付ボス12の連結孔12b に通され、小径部15b の先端部(ネジ部)にナット18を螺合して、抜け止めとしている。
図3では、取付けボスに押面12a とピストンロッド15の肩部15c は、取り合いを明示するため離して示しているが、実際には互いに当接した状態で取り付けられる。
【0012】
図4に基づき油圧シリンダ13とアキュムレータ20の油圧回路を説明する。油圧シリンダ13のピストン側油室13のピストン側油室13p とアキュムレータ20とは連通管22で接続されている。このセットが4個設けられており、各連通管22には作動油供給管23が接続され、初期設定時および補給時の作動油供給を行えるようになっている。また、作動油供給管23の適所には排出管24が接続され、保守管理時の作動油排出が行えるようになっている。
【0013】
上記実施形態によれば、油圧シリンダ13のシリンダ14がフレーム2に固定されて移動せず、ピストンロッド15がスライドギブ11に連結されているので、スライド4の昇降に伴って油圧シリンダ13のピストンロッド15が伸縮する。そして、スライド4が下降するときは、ピストンロッド15を油圧シリンダ13内に押込むので、ピストン側油室13pの作動油をアキュムレータ20内に連通管22を介して送込んで蓄圧することができる。よって、スライド4の上昇時には、アキュムレータ20内の圧力油が油圧シリンダ13のピストン側油室13pに供給されるので、ピストンロッド15を押上げてスライド4を押上げるスライドバランサとしての機能を果たすことができる。
しかも、スライド4の上昇時も下降時も、スライド4と油圧シリンダ13間の力の伝達は、取付ボス12の押圧面12aとピストンロッド15の広い肩部15cとの間で面加圧によって行うので、力伝達部の面圧が低くなり、変形や損傷が生じにくい。
【0014】
つぎに、図5に基づき本発明の他の実施形態を説明する。
本実施形態では、油圧シリンダ13をスライドギブ11に形成した取付ボス12の上方に配置している。油圧シリンダ13のピストンロッド15は下方に向けられ、その先端部は取付ボス12の連結孔12bを貫通してナット19で結合されている。アキュムレータ20に連通する連通管22は、油圧シリンダ13のロッド側油室13r に接続される。
この実施形態では、取付ボス12とナット19に力がかかるが、ナット19まわりの強度が充分であれば、使用可能である。なお、その他の構成は前記実施形態と変らないので、同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0015】
上記図5の実施形態によれば、スライド4が下降するときは、ピストンロッド15を油圧シリンダ13内に押込むので、ロッド側油室13rの作動油をアキュムレータ20内に連通管22を介して送込んで蓄圧することができる。よって、スライド4の上昇時には、アキュムレータ20内の圧力油が油圧シリンダ13のロッド側油室13rに供給されるので、ピストンロッド15を押下げてスライド4を押下げるスライドバランサとしての機能を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係わるクランクプレスのスライドバランサまわりを示す、図2のI−I線矢視図である。
【図2】同クランクプレスのスライドバランサまわりを示す平面図である。
【図3】スライドバランサの一部断面拡大図である。
【図4】スライドバランサの油圧回路図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係わるクランクプレスの一部断面拡大図である。
【図6】クランクプレスの従来のエア式スライドバランサの概略説明図である。
【符号の説明】
【0017】
4 スライド
11 スライドギブ
12 取付ボス
13 油圧シリンダ
14 シリンダ
15 ピストンロッド
20 アキュムレータ
22 連通管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウンとフレームとベッドを備え、フレームに回転自在に支持されたクランク軸にコネクティングロッドを介してスライドが連結され、該スライドの重量を均合わせるスライドバランサが設けられたクランクプレスであって、
前記スライドバランサが、
油圧シリンダとアキュムレータとからなり、
前記スライドの下降時には、前記油圧シリンダから前記アキュムレータへ圧油が戻され、
前記スライドの上昇時には、前記アキュムレータから前記油圧シリンダへ圧油を供給するようになっている
ことを特徴とするクランクプレス。
【請求項2】
前記油圧シリンダのシリンダと前記アキュムレータが前記フレームに固定されており、
前記油圧シリンダのピストンロッドが、前記スライドに固定されたスライドギブに連結されており、
前記アキュムレータと前記油圧シリンダのピストン側油室が連通管で接続されている
ことを特徴とする請求項1記載のクランクプレス。
【請求項3】
前記スライドギブに、連結孔を有し、下面を押圧面に形成した取付ボスを設け、
該取付ボスの下方に、前記油圧シリンダをロッド側を上方に向けて配置し、
前記油圧シリンダのピストンロッドは、その先端部を、大径部の先端側に小径部を形成して、該大径部と該小径部の間に肩部を設けたものであり、
前記取付ボスの前記連結孔に、前記油圧シリンダのピストンロッドの小径部を挿入して結合し、
前記取付ボスの押圧面と、前記ピストンロッドの肩部とを当接させている
ことを特徴とする請求項2記載のクランクプレス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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