クランプ用棒冶具
【課題】駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動できるクランプ用棒冶具を提供する。
【解決手段】回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、長尺物と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、を有する。
【解決手段】回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、長尺物と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ用棒冶具に関し、特に、回転安定性に優れた、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品の容器や携帯電話機の外装体等に対して均一な塗装を行うために、塗装手段の近傍を通過する移動手段上に回転可能なスピンドルを連設し、かかるスピンドルの上方にホルダーを装着し、さらに、かかるホルダーに対して被処理物を取り付け、スピンドルを回転させながら塗装処理を行う方法が用いられている。
例えば、特許文献1では、携帯電話機の外装体に対して多色塗装を行う方法として、スピンドルを回転させながら塗装処理を行う方法を開示している。
より具体的には、図21に示すように、第1色の塗料を塗装した後の携帯電話機の外装体310を、コンベアライン303上に連設されたスピンドル304の上方に固定されたホルダー305に対して取り付けている。次いで、携帯電話機の外装体310上に第2色塗装用のマスキング型311を載置した後、上述したスピンドル304を回転させながら、スプレーガン塗装装置の噴射ノズル302にて、第2色を携帯電話機310の表面に吹き付け塗装している。
このような塗装方法は、多数の被処理物を連続的かつ均一に塗装することができ、生産性が非常に高いことから、多方面で使用されている。
そして、移動手段によって水平方向に移動しているスピンドルを回転させる方法としては、かかる移動しているスピンドルに対して強制回転部材を接触させて回転させる方法や、スピンドル自体に回転モータを備えることで回転させる方法が行われている。これらの回転方法の中でも、構成が容易であるとともに被処理物を大量に処理することに好適であることから、移動しているスピンドルに対して強制回転部材を接触させて回転させる方法が、広く採用されている。
【0003】
しかしながら、移動しているスピンドルに対して強制回転部材を接触させて回転させる方法を用いた場合、処理後の被処理物を、一つずつスピンドルから外して、次工程へと移動させなければならないという問題が見られた。すなわち、かかる処理後の被処理物を次工程、例えば、蒸着工程等へと移動させる段階で、製品の製造効率が著しく低下してしまうという問題が見られた。
そこで、スピンドルの構造を簡略化及び軽量化するとともに、かかるスピンドルを複数個、長尺物に対して回転可能に連設配置した、いわゆる長尺物一体型スピンドルが使用されている。
すなわち、かかる形態のスピンドルであれば、処理を施された複数個の被処理物がスピンドル上に載置されたままの状態で、長尺物ごと移動手段から取り外すことにより、容易に複数の被処理物を次工程へと移動させることができるためである。
【特許文献1】特開2003−103251(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる長尺物一体型スピンドルを用いた場合、スピンドルの構造が簡略化及び軽量化されていることから、例えば、プラスチック製品等の軽量物しか処理対象とすることができないという問題が見られた。
つまり、一升瓶等の重量物を安定的に処理することは困難であるという問題が見られた。
したがって、回転安定性に優れたスピンドルからであっても、処理後の被処理物を複数個同時に取り外して、そのまま移動するための技術が求められていた。
【0005】
そこで、本発明者らは、従来の問題を鋭意検討した結果、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプを有する所定の冶具により、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルからであっても、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動できることを見出した。そして、かかる所定の冶具を用いることにより、製品の製造効率を著しく向上させることができることを見出した。
すなわち、本発明の目的は、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動できるクランプ用棒冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、長尺物と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、を有することを特徴とするクランプ用棒冶具が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、かかるクランプ用棒冶具であれば、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動することができる。
したがって、製品の製造効率を著しく向上させることができる。
【0007】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、複数のクランプが、長尺物の同一側に配置してあるとともに、長尺物の短手方向に突出していることが好ましい。
このように構成することにより、被処理物搬送装置の移動手段上に連設されている複数のスピンドルに対して、より容易かつ正確にクランプ用棒冶具を適用することができる。
【0008】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、複数のクランプが、長尺物に対するL字状固定具と、L字状板ばね材と、当該L字状板ばね材と協働してホルダーを含んだ状態の被処理物を、L字状固定具に対して圧接保持するための被処理物保持部と、を有するが好ましい。
このように構成することにより、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができる。また、このように構成することにより、クランプが塑性変形することを有効に防止することができる。
【0009】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、長尺物に対して、L字状固定具の端部と、L字状板ばね材の端部と、が同一固定具によって、固定されているとともに、当該L字状板ばね材に対して、被処理物保持部が固定されていることが好ましい。
このように構成することにより、クランプが塑性変形することを有効に防止することができるとともに、クランプの組み立てや、損傷等した場合の交換も容易となる。
【0010】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、被処理物保持部の、ホルダーを含んだ状態の被処理物との当接面の断面形状を、波打状とすることが好ましい。
このように構成することにより、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができる。
【0011】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、長尺物の端部に、駆動中のスピンドルにおけるホルダーを含んだ状態の被処理物に当接して、当該ホルダーを含んだ状態の被処理物を、クランプの所定場所に案内するための位置きめ部材を有することが好ましい。
このように構成することにより、スピンドルが駆動しているにもかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物と、クランプとの間の位置きめを容易かつ正確にすることができる。
【0012】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、スピンドルが、複数のベアリングとして、第1のベアリング及び第2のベアリングを有するとともに、移動手段に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドルであって、下記部材(a)〜(c)を備えることが好ましい。
(a)移動手段に固定された回転軸に対して、第1のベアリングを介して回転可能に装着される回転支持部材
(b)強制回転部材に接触する接触面を有するとともに、当該接触面の上方及び下方に第2のベアリングをそれぞれ備え、かつ、回転支持部材に固定される接触駆動部材
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材に固定される支持棒部材
このように構成することにより、スピンドルの回転性能、及び安定性を効果的に向上させることができる。
したがって、重量物であっても効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をより安定的に適用することができる。
【0013】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、第2のベアリングが当接するガイド部材を備えた被処理物搬送装置に対して、スピンドルが取り付けてあることが好ましい。
このように構成することにより、スピンドルの回転性能、及び安定性をより効果的に向上させることができる。
さらに、所定のベアリングが当接するガイド部材によって、クランプ用棒冶具を駆動中のスピンドルに対して押接した場合であっても、スピンドルのぶれを抑制することができる。
したがって、重量物であってもより効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をさらに安定的に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、長尺物と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、を有することを特徴とするクランプ用棒冶具である。
以下、各構成要件に分けて、具体的に説明する。
【0015】
1.基本的構成
図1に示すように、本発明のクランプ用棒冶具10は、基本的に長尺物30と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプ20と、から成っている。
かかるクランプ用棒冶具10であれば、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動することができる。
したがって、処理後の被処理物を次工程、例えば、蒸着工程等へと移動させる段階で、製品の製造効率が著しく低下してしまうというという従来の問題点を、効果的に解決することができる。
【0016】
2.使用態様
(1)駆動中のスピンドル
本発明のクランプ用棒冶具が適用される駆動中のスピンドルとは、図2(a)に示すように、図示しない被処理物搬送装置が有する移動手段150に対して、回転可能に固定され、かつ、水平方向(A)に移動中のスピンドル110を意味する。
かかるスピンドルは、その上方に固定された被処理物、例えば、化粧瓶等を回転させるための回転安定性に優れた冶具であって、被処理物を回転させることによって、当該被処理物に対する塗装処理及び乾燥処理等を、均一に実施するための冶具である。
なお、かかるスピンドル及び被処理物搬送装置については、第2の実施形態および第3の実施形態において、それぞれ詳細に説明する。
また、言うまでもなく、本発明のクランプ用棒冶具は、駆動していないスピンドル対しても適用することができる。
【0017】
(2)ホルダーを含んだ状態の被処理物
また、本発明のクランプ用棒冶具によって、上述した駆動中のスピンドルから取り外されることとなるホルダーを含んだ状態の被処理物とは、図2(a)に示すように、ホルダー156に対して載置された状態の被処理物157を意味する。
かかるホルダー156は、スピンドル110に対して取り外し可能に装着することができるように構成されており、ホルダー156のみを取り替えることによって、多様な被処理物157の処理に対応することができるとともに、スピンドル110に対して被処理物157を安定的に載置することができる。
また、ホルダーを含んだ状態の被処理物は、駆動中のスピンドルから取り外す際に、そのホルダー部分をスピンドルから取り外すこととなるため、被処理物に対して直接触れることなく、被処理物を次工程に移動することが可能となる。
なお、ホルダーを含んだ状態の被処理物としては、ホルダーを後で外したような状態の被処理物も、広い意味で、この範疇に入るものである。
【0018】
(3)クランプ用棒冶具の装着
本発明のクランプ用棒冶具の使用態様としては、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すために、まず、図2(b)に示すように、本発明のクランプ用棒冶具10を、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157に対して装着する。
すなわち、図3に示すように、クランプ用棒冶具10のクランプ20を、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157におけるホルダー156部分に対して、所定の力にて押接させることにより、クランプ20をホルダー156に対して装着させる。
【0019】
(4)スピンドルからの取り外し
次いで、図2(c)に示すように、本発明のクランプ用棒冶具10を、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157に対して装着した状態で、上方に力を加えて移動させることによって、駆動中のスピンドル110から、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157を複数個同時に取り外すことができる。
したがって、このようにホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外した後は、そのままの状態で複数個の被処理物を、例えば、蒸着工程等の次工程へと効率的に移動させることができる。
【0020】
3.長尺物
(1)形状
図1に示すように、長尺物30の形状は、棒状であることを特徴とする。
この理由は、長尺物の形状を棒状とすることによって、クランプ用棒冶具の取り扱い性を向上させることができるためである。
すなわち、長尺物の形状が棒状であれば、クランプ用棒冶具が手で持ちやすくなることから、上述したホルダーを含んだ状態の被処理物への装着と、その後のスピンドルからの取り外しといった作業を、迅速かつ正確に行うことができるためである。
また、かかる簡易な形状であれば、クランプ用棒冶具を容易かつ安価に製造することに資することができる。
なお、長尺物の断面形状は、特に制限されるものではなく、例えば、正方形、長方形及び円形等、種々の形状を適宜選択することができる。
【0021】
(2)大きさ
また、長尺物の長さを、20〜200cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる長尺物の長さが20cm未満の値となると、駆動中のスピンドルから同時に取り外すことができる被処理物の数が過度に少なくなって、製品の製造効率を低下させてしまう場合があるためである。一方、かかる長尺物の長さが200cmを超えた値となると、クランプ用棒冶具の取り扱い性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、長尺物の長さを、50〜150cmの範囲内の値とすることがより好ましく、80〜120cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、長尺物の断面における直径は、十分な強度を保持でき、かつ、取り扱い性に支障がでない範囲であれば、特に制限されるものではないが、5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、10〜30mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0022】
(3)材質
また、長尺物の材質としては、所定の強度を有するものであれば、特に制限されるものではないが、次工程として、例えば、蒸着工程等の加熱をともなう工程が含まれている場合には、所定の耐熱性も要求される。
したがって、好適に用いられる材質としては、アルミニウム、鋼、ステンレス、真鍮、銅等の金属が挙げられる。中でも、アルミニウムは、クランプ用棒冶具の軽量化にも資することができるばかりか、加工性にも優れることから、特に好ましい材質である。
【0023】
4.クランプ
(1)基本的構成
本発明におけるクランプは、ホルダーを含んだ状態の被処理物のホルダー部分に対して、所定の力で押接ことにより確実に装着させることができ、かつ、繰り返し使用した場合であっても、組成変形しにくいといった特性を有している限り、特に制限されるものではない。
このようなクランプとしては、図4(a)〜(d)に示すように、長尺物に対するL字状固定具21と、L字状板ばね材22と、当該板ばね材と協働してホルダーを含んだ状態の被処理物を、L字状固定具21に対して圧接保持するための被処理物保持部23と、を有するクランプ20であることが好ましい。
また、図4(d)に示すように、長尺物に対して、L字状固定具21の端部と、L字状板ばね材22の端部と、が同一固定具40a及び40bによって、固定されているとともに、当該L字状板ばね材22に対して、被処理物保持部23が固定されていることが好ましい。
この理由は、クランプを、このような3つの部材によって構成することにより、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができるためである。また、このように構成することにより、クランプが塑性変形することを有効に防止することができるためである。
すなわち、クランプを、ホルダーを含んだ状態の被処理物のホルダー部分に装着する際に、当該ホルダー部分を直接的に挟み込む部材であるL字状固定具及び被処理物保持部と、挟み込むための弾性力を付与するためのL字状板ばね材とを、それぞれ別個に準備するとともに、所定の構成となるように長尺物に対して固定することによって、それぞれの部材が有する特性をそれぞれ有効に発揮させることができるためである。
さらに、クランプの組み立てや、損傷等した場合の交換も容易に行うことができる。
なお、L字状固定具の端部と、L字状板ばね材の端部と、を長尺物に対して固定するための固定具としては、例えば、ねじ及びナットを用いることが好ましい。
また、L字状板ばね材に対して、被処理物保持部を固定する方法としては、例えば、スポット溶接を実施することが好ましい。
【0024】
(2)L字状固定具
(2)−1 形状
図4(a)に示すように、L字状固定具21の形状は、板状の部材を概ねL字状に屈曲させた形状となっていればよい。
この理由は、かかるL字状の形状であれば、L字状ばね部材22に固定された被処理物保持部23と、効果的に協働して、確実かつ容易にホルダー部分を挟み込むことができるためである。
また、かかる簡易な形状であれば、クランプ用棒冶具を容易かつ安価に製造することに資することができる。
なお、図4(a)に示すように、L字状固定具21の上端部を、外側に屈曲させることによって、より確実かつ容易にホルダー部分を挟み込むことができる。
【0025】
(2)−2 大きさ
また、L字状固定具における高さ(m1)を、例えば、10〜150mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状固定具における横の長さ(m2)を、例えば、10〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、L字状固定具の幅を5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状固定具における厚さ(m3)を0.5〜3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、L字状固定具の大きさをかかる範囲とすることにより、クランプ用棒冶具全体としての取り扱い性を保持しつつも、確実かつ容易にホルダー部分を挟み込むことができるばかりか、L字部材、ひいてはクランプ全体を、長尺物に対して安定的に固定することができるためである。
【0026】
(2)−3 材質
また、L字状固定具の材質としては、所定の強度を有するものであれば、特に制限されるものではないが、次工程として、例えば、蒸着工程等の加熱をともなう工程が含まれている場合には、所定の耐熱性も要求される。
したがって、好適に用いられる材質としては、S鋼、ステンレス、アルミニウム、真鍮及び銅等の金属や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリエステル等の熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。一方、L字状固定具及び後述する被処理物保持部は、直接的にホルダー部分を挟み込む部材であることから、かかる部材の変形は、即座に挟み込みの不安定化につながることとなる。
よって、特に硬度が高く、変形が生じにくいS鋼を用いることがより好ましい。
【0027】
(3)L字状板ばね材
(3)−1 形状
図4(b)に示すように、L字状板ばね材22の形状は、板状の部材を概ねL字状に屈曲させた形状となっていればよい。
この理由は、かかるL字状の形状であれば、図4(d)に示すように、上述したL字状固定具21上にL字状ばね材22と、当該L字状ばね材22に固定された被処理物保持部23とを、隙間なく容易に重ね合わせることができるためである。
そして、図4(d)に示すようにこれらの各部材を重ね合わせることによって、簡易な構成であるにもかかわらず、被処理物保持部23に対して所定の可動性を付与することができるためである。
なお、ばね材をL字状の板ばね以外の構成とすることも可能である。このようなばね材としては、例えば、スプリング等の従来公知のばね材を挙げることができる。
【0028】
(3)−2 大きさ
また、L字状板ばね材における高さ(n1)を、例えば、5〜80mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状板ばね材における横の長さ(n2)を、例えば、10〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、L字状板ばね材の幅を5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状板ばね材の厚さ(n3)を0.1〜3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、L字状板ばね材の大きさをかかる範囲とすることにより、被処理物保持部の可動性を容易に調節することができるためである。
したがって、クランプがホルダー部分を挟み込む力を、容易に調節することができるためである。
【0029】
(3)−3 材質
また、L字状ばね板材の材質としては、被処理物保持部に対して所定の可動性を付与することができるような材質、すなわち、所定の弾性力を発揮させることができるような材質であれば、特に制限されるものではないが、次工程として、例えば、蒸着工程等の加熱をともなう工程が含まれている場合には、所定の耐熱性も要求される。
したがって、好適に用いられる材質としては、ステンレス(SW−C(80C)、SWP−A、SWP−B、SWOCV−V、SWOSC−V、SWOSC−B、SUP−10、SUS304WPB、SUS316WPA、SUS304、SUS316)等を挙げることができる。
特に、繰り返し使用した場合であっても、その優れた弾性力を保持することができることから、ステンレスの一種であるSUS304を用いることがより好ましい。
【0030】
(4)被処理物保持部
(4)−1 形状
図4(c)に示すように、被処理物保持部23の形状は、特に限定されるものではないが、少なくともホルダー部分を導入するための外曲部23aと、ホルダー部分を挟み込んで保持するための保持部23bと、を有していることが好ましい。
したがって、被処理物保持部の、ホルダーを含んだ状態の被処理物との当接面の断面形状を、波打状とすることが好ましい。
この理由は、かかる当接面の断面形状を波打状とすることによって、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができるためである。
すなわち、かかる当節面の断面形状が波打状であれば、簡易な構成であるにもかかわらず、上述した外曲部及び保持部を有した被処理物保持部を得ることができるためである。
なお、被処理物保持部23における断面形状を波打状とした場合には、その外曲部23aを形成するための角度(θ1)を、例えば、90〜150°の範囲内の値とすることが好ましく、その保持部23bを形成するための角度(θ2及びθ3)を、例えば、それぞれ90〜150°の範囲内の値とすることが好ましい。
【0031】
(4)−2 大きさ
また、被処理物保持部の高さ(o1)を、例えば、10〜150mmの範囲内の値とすることが好ましく、被処理物保持部の幅を、例えば、5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、被処理物保持部の厚さ(o2)を、例えば、0.5〜3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、被処理物保持部の大きさをかかる範囲とすることにより、所定の外曲部及び保持部を形成することが容易となることから、ホルダー部分を容易に挟み込んで固定しつつも、その後、容易に取り外すことができるためである。
【0032】
(4)−3 材質
また、被処理物保持部の材質としては、所定の強度を有するものであれば、特に制限されるものではないが、基本的に、上述したL字状固定具の材質と同様とすることができる。
【0033】
(5)その他の態様
なお、本発明におけるクランプの態様は、図4に示したものに限定されるものではない。
例えば、図5(a)〜(c)に示すような、L字状固定具21´と、L字状板ばね材22´と、被処理物保持部23´と、から、図5(d)に示すような別の態様のクランプ20´を構成してもよく、その他、様々な態様を採ることが可能である。
【0034】
(6)配置
また、上述した長尺物上におけるクランプの配置としては、図1に示すように、複数のクランプ20が、長尺物30の同一側に配置してあるとともに、長尺物30の短手方向に突出していることが好ましい。
この理由は、このようにクランプを配置することにより、被処理物搬送装置の移動手段上に連接されている複数のスピンドルに対して、より容易かつ正確にクランプ用棒冶具を適用することができるためである。
なお、長尺物に対して、クランプを配置変更するための箇所を予め設けておくことも好ましい。
より具体的には、クランプを配置変更した際に使用するねじ穴等を、予め設けておくことが好ましい。
この理由は、かかるクランプを配置変更するための箇所を予め設けておくことによって、適用するスピンドルの間隔が変更された場合であっても、かかるスピンドルの間隔に対応させて、長尺物上のクランプの配置を修正することができるためである。
【0035】
また、その他の配置としては、例えば、図6に示すように、複数のクランプ20が、長尺物30の両側に配置してあることも好ましい。
この理由は、両側に配置されたクランプの間隔を、図6(a)に示すように、それぞれ同一の距離とした場合であれば、1つのクランプ用棒冶具によって、2倍の被処理物をスピンドルから取り外して、移動させることができるためである。
また、両側に配置されたクランプの間隔を、図6(b)に示すように、それぞれ異なる距離とした場合であれば、1つのクランプ用棒冶具によって、スピンドルの間隔変更に対して容易に対応することができるためである。
【0036】
5.位置きめ部材
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、長尺物の端部に、駆動中のスピンドルにおけるホルダーを含んだ状態の被処理物に当接して、当該ホルダーを含んだ状態の被処理物を、クランプの所定場所に案内するための位置きめ部材を有することが好ましい。
この理由は、かかる位置きめ部材を設けることによって、スピンドルが駆動しているにもかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物と、クランプと、の間の位置きめを容易かつ正確にすることができるためである。
すなわち、駆動中のスピンドルに対して、クランプ用棒冶具を適用するためには、その前段階として、複数のクランプをそれぞれ対応する駆動中のスピンドルに対して正確に対向させる作業、すなわち位置きめをする必要がある。
一方、クランプ用棒冶具の位置きめの効率は、クランプ用棒冶具を適用しようとしている駆動中のスピンドルのうち先頭に位置するスピンドルと、長尺物の端部に配置されたクランプと、の位置きめの効率によって左右される。
したがって、長尺物の端部に位置きめ部材を設けることによって、かかる長尺物の端部に配置されたクランプの位置きめ、ひいては、クランプ用棒冶具全体としての位置きめを容易かつ正確にすることができる。
【0037】
より具体的には、図1に示すように、クランプ用棒冶具10を適用しようとしている駆動中のスピンドルのうち先頭に位置するスピンドルに適用されることとなる、長尺物30の端部30aに配置されたクランプ20aにおけるL字状固定具の高さを、他のクランプにおけるL字状固定具の高さよりも高くして、位置きめ部材50とすることが好ましい。
この理由は、位置きめ部材をL字状固定具と一体化した構成とすることによって、位置きめ部材によって位置きめされたクランプ用棒冶具を、そのまま駆動中のスピンドルに対して押接することで、容易に複数のクランプを、各スピンドル上のホルダーに対して装着させることができるためである。
さらには、簡易な構成であることから、L字状固定具のバリエーションとして、容易に製造することができるためである。
なお、かかる位置きめ部材は、通常のL字状固定具の高さを、例えば、10〜200mmの範囲内の値で延長して構成することが好ましい。また、その幅及び厚さは、L字状固定具と同様とすることができる。また、その材質についても、L字状固定具と同様とすることができる。
【0038】
また、位置きめ部材を図7に示すような位置きめ部材50´として構成することも好ましい。
この理由は、図7に示すように、上下方向用位置きめ部50a´を含んだ位置きめ部材であれば、クランプ用棒冶具の長手方向のみならず、上下方向についての位置きめについても、容易かつ正確に行うことに資することができるためである。
ただし、かかる位置きめ部材50´を適用するためには、図8(a)に示すように、上下方向位置きめ部50a´が当接するための凸部156aを有するホルダー156、あるいは、図8(b)に示すように、ホルダー156の一部としての取り外し補助部材156bを使用する必要がある。
【0039】
[第2の実施形態]
次いで、第2の実施形態として、第1の実施形態であるクランプ用棒冶具を適用するスピンドルについて、具体的に説明する。
すなわち、図9及び図10に示すように、複数のベアリングとして、第1のベアリング132、134及び第2のベアリング116、119、136を有するとともに、移動手段150に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドル110であって、下記部材(a)〜(c)を備えたスピンドル10である。
(a)移動手段150に固定された回転軸139に対して、第1のベアリング132、134を介して回転可能に装着される回転支持部材110a
(b)強制回転部材に接触する接触面120bを有するとともに、当該接触面120bの上方及び下方に第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)をそれぞれ備え、かつ、回転支持部材110aに固定される接触駆動部材110b
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材110bに固定される支持棒部材110c
すなわち、第1のベアリングのみならず、上下二箇所に備えた第2のベアリングによって、安定的に被処理物を回転させたり、搬送させたりすることができる。
したがって、重量物であっても効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をより安定的に適用することができる。
以下、図を適宜参照して、本発明の第1の実施形態であるスピンドルについて、構成要件ごとに具体的に説明する。
【0040】
1.回転支持部材
図9及び図10に示すように、回転支持部材110aは、移動手段150に固定された回転軸139に対して第1のベアリング132、134等を介して回転可能に装着されている。
この理由は、回転軸が移動手段に固定され、かつ、第1のベアリングを介して回転軸と回転支持部材とが接触していることによって、移動手段とスピンドルとを協調させて、それぞれの特性を発揮させることが容易となるためである。
すなわち、このような構成であれば、移動手段に直接固定された回転軸自体は、スピンドルを回転させた場合であってもなんら動作をするものではないため、移動手段の移動にも、また、スピンドルの回転にも、悪影響を及ぼさないためである。
【0041】
また、図9及び図10に示すように、回転支持部材110aは、接触駆動部材110bにおける空孔と嵌合するとともに、ねじ120d等で固定されることが好ましい。
この理由は、回転支持部材と回転軸とからなる回転機構が、接触駆動部材によって上方から覆われることになるため、塗装処理等を行った場合であっても、優れた回転性を発揮することができるためである。
すなわち、スピンドルに載置される被処理物は、回転支持部材よりも上方に位置することになるため、塗装処理等の際の塗料等は、スピンドルの上方から降りかかることになる。しかしながら、回転機構が接触駆動部材によって上方から覆われているため、そこに塗料等が浸入してくることを効果的に防ぐことができるためである。
【0042】
また、第1のベアリング132、134としては、回転軸139と、回転支持部材110aとを回転可能に接触させることができるものであれば特に制限されるものではないが、より摩擦を低下させることができることから、ボールベアリングを使用することが好ましい。
なお、かかる第1のベアリングの直径(外径)は、スピンドルのサイズ等にもよるが、一般的には20〜30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0043】
また、図9及び図10に示すように、回転支持部材110aが、第1のベアリングとして、複数のベアリング132、134を備えるとともに、当該複数のベアリング132、134の間に、回転軸139に接触しないボス部材133を備えることが好ましい。
この理由は、固定された回転軸と第1のベアリングとの間に複数の接触箇所を備えることで、当該複数の第1のベアリング間に所定の間隔をあけることができ、その結果、より安定的にスピンドルを回転させることができるためである。
すなわち、回転支持部材における第1のベアリングが複数であるとともに、それらが所定の間隔をもって配置されていることにより、回転軸と、スピンドルとがより安定的に装着されるためである。したがって、被処理物として重量物を載置した場合であっても、安定して回転及び搬送することができる。
また、このように構成することにより、第1のベアリングにかかる力を効果的に分散させることができることから、第1のベアリングを含めて、スピンドルの長寿命化にも寄与することができる。
なお、第1のベアリング間の間隔としては、スピンドル等の大きさによって好適な範囲は変化するものの、一般的には10〜100mmの範囲内の値であることが好ましく、15〜80mmの範囲内の値であることがより好ましい。
【0044】
また、ボス部材133の材料物質としては、真鍮を用いることが好ましい。
この理由は、ボス部材の材料物質として、平滑性や熱伝導性に優れた真鍮を用いることによって、回転支持部材と接触駆動部材とを嵌合させる場合であっても、あるいはこれらを分離させる場合であっても、金属部材同士の過度の摩擦を防止することができるためである。
なお、図9に示すように、回転支持部材110aの長さ(p3)を、例えば、50〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。また、一例であるが、その直径を20〜30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0045】
2.接触駆動部材
また、図9及び図10に示すように、接触駆動部材110bは、後述する強制回転部材に接触する接触面120bを有するとともに、当該接触面120bの上方及び下方に第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)をそれぞれ備え、かつ、回転支持部材110aに固定される。
このように強制回転部材に対する接触面を有する理由は、かかる接触面を介して、スピンドルの側面と、強制回転部材とを接触させた際に生じる摩擦力によって、スピンドルを回転させるためである。
また、接触面の上方及び下方の二箇所に、第2のベアリングとして、複数のベアリングを備える理由は、かかる第2のベアリングと、側方に設けられたガイド部材とが当接することによって、安定的に被処理物の回転及び搬送をすることができるためである。そればかりか、ガイド部材の配置を変更することにより、強制回転をさせる工程を含む搬送工程において重量物等を搬送する場合であっても、安定的に搬送することができるためである。
【0046】
また、第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)としては、ガイド部材に対して回転可能に接触することができるものであれば特に制限されるものではないが、より摩擦を低下させることができることから、ボールベアリングを使用することが好ましい。
なお、かかる第2のベアリングの直径(外径)は、スピンドルのサイズ等にもよるが、一般的には25〜40mmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、図10に示すように接触駆動部材110bと、回転支持部材110aとが、ねじ120d等によって固定されていることによって、接触駆動部材110bにおける接触面120bで生じた摩擦力が回転支持部材110aに伝わり、回転軸139を中心として回転させることとなる。
【0047】
また、図9及び図10に示すように、接触駆動部材110bの接触面120bの上方に、第2のベアリングとして、複数のベアリング116、119を備えるとともに、当該複数のベアリング116、119における間隔を5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように第2のベアリングを配置することによって、スピンドルの安定性が向上するのみならず、塗装処理等を行った際に、かかる第2のベアリング間に塗料等が浸入して、硬化した場合であっても、容易に洗浄して回転機能を維持することができるためである。
すなわち、接触駆動部材における接触面の上方において、複数の第2のベアリングを備えることによって、スピンドルの上部を、スピンドルの進行方向に対して両側方から支持することができるとともに、スピンドルの移動にともなって、第2のベアリングが回転可能となるためである。したがって、スピンドルに対して重量物等を載置した場合であっても、十分安定して搬送することができる。
【0048】
また、複数の第2のベアリング116、119における間隔が5〜50mmの範囲内の値であることを好適とするのは、このような間隔であれば、スピンドルの安定性がさらに向上するとともに、所定の洗浄性が得られるためである。
したがって、複数のベアリング116、119における間隔を10〜40mmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜30mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
また、接触面120bを構成する材料物質が、アルミニウム系金属であることが好ましい。
この理由は、スピンドルの重量を、安定性及び移動手段に対する負荷の面で、好適な範囲内に調節することが容易となるとともに、加工性を向上させることができるためである。
すなわち、従来は、かかる接触面を構成する材料物質として、鉄を主体とした材料物質を使用していたため、スピンドルが非常に重いという問題が見られた。そのため、特に、スピンドルの進行路がカーブしている場合においては、スピンドル自体に発生する遠心力の影響で、スピンドルが傾斜し、安定的に搬送できない場合が見られた。
また、スピンドルが載置されている移動手段に対しても、非常に大きな負荷がかかり、特に移動手段下方における滑車部分や、滑車が走行するレール部材等の疲労が著しかった。
したがって、比較的軽量であるアルミ二ウム系金属を使用することによって、かかる搬送安定性や重量の問題点を解決することができる。
但し、アルミニウム系金属として、純アルミニウムを使用すると、軽量性には優れているものの、機械的強度や加工性が乏しくなって、却って、安定的に搬送できない場合が見られる。
したがって、アルミニウム系金属として、後述するように、銅(Cu)、珪素(Si)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)等を所定量含んだアルミニウムを用いることが好ましい。
【0050】
また、かかるアルミニウム系金属としては、特に、全体量に対して、銅を3〜8重量%の範囲内で含有させたアルミニウム系金属であることが好ましい。
この理由は、アルミニウムに対して銅を3〜8重量%の範囲内で加えることによって、その硬度が著しく向上し(ブリネル硬度(HB)>100)、機械的特性(引っ張り強さ>400N/mm2、せん断強さ>200N/mm2)や、加工性(伸び10〜45%)にさらに優れた材料となるためである。
すなわち、かかる銅の含有量が3重量%未満の値となると、銅を加えた効果が十分に発揮されず、機械的特性が十分に向上しない場合があるためである。例えば、ブリネル硬度(HB)が20以下と、1/5程度になったりする場合があるためである。また、引っ張り強さが70N/mm2以下と、1/5程度になったり、せん断強さが50N/mm2以下と、1/4程度になったりする場合があるためである。
一方、かかる銅の含有量が8重量%を超えた値となると、硬度が過度に高くなったり、青錆が発生しやすくなったりする場合がある。
したがって、アルミニウム系金属として、全体量に対する銅の含有量を4〜7重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜6重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0051】
なお、図9に示すように、接触駆動部材110bの長さ(p4)を、例えば、100〜150mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、支持棒部材装着部120aの長さ(p5)を、例えば、50〜70mmの範囲内とし、その直径を5〜30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、接触面120bの長さ(p6)を、例えば、25〜40mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0052】
3.支持棒部材
また、図9及び図10に示すように、支持棒部材110cは、直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための部材として、上述した接触駆動部材110bに固定される。
この理由は、かかる支持棒部材に対して被処理物を載置することによって、被処理物と、例えば、スプレーガン等の処理装置との距離を好適な範囲内とすることができるためである。また、かかる支持棒部材を備えることにより、上述した接触駆動部材や、後述する移動手段に対して、例えば、塗料等が直接的に付着することを抑制することができるためである。
より具体的には、図9及び図10に示すように、支持棒部材110cと、接触駆動部材110bとがねじ120c等によって固定されていることによって、上述した回転支持部材110a及び接触駆動部材110bの回転に連動して、支持棒部材110cを回転させることができるためである。
【0053】
また、接触駆動部材110bと支持棒部材110cとの固定の形態として、接触駆動部材110bと支持棒部材110cとが、嵌合して固定されるとともに、当該嵌合の深度を調節可能とすることが好ましい。
この理由は、スピンドルを装着する被処理物搬送装置、処理手段及び被処理物等が変化した場合であっても、長さの異なる支持棒部材を別途用意することなく、支持棒部材の長さを調節することができるためである。
すなわち、長さの異なる複数の支持棒部材を用意する必要がないことから、経済的に有利であるのみならず、支持棒部材の長さの変更が容易となるためである。
より具体的には、図11(a)及び(b)に示すように、接触駆動部材と固定するためのねじ120cと当接する溝部を任意の間隔で複数設けた支持棒部材110c´を用いることによって、接触駆動部材と支持棒部材との嵌合の深度を、容易に調節することができるようになる。
【0054】
また、塗装処理等を実施する際には、支持棒部材に対して、カバー部材を装着することが好ましい。
この理由は、支持棒部材に対して直接的に塗料等が付着することを防止しするためである。
すなわち、支持棒部材と接触駆動部材との固定部分等に対して塗料等が浸入して硬化した場合、支持棒部材と接触駆動部材とを分離したり、再び固定したりすることが困難となる場合があるためである。
したがって、例えば、図12(a)に示すように、支持棒部材110c全体を覆うことができる筒状のカバー部材155を、支持棒部材110cに対して装着することが好ましい。なお、図12(b)に示すように、塗装処理等を終えた後は、カバー部材155を取り外して、カバー部材155のみを洗浄することができる。
【0055】
また、支持棒部材に対してホルダーを介して被処理物を載置する場合には、例えば、図13(a)に示すようにして、被処理物を載置するためのホルダー156をスピンドルに対して装着することが好ましい。
すなわち、かかるホルダー156は、スピンドル110の支持棒部材110cの上部に対して取り外し可能に装着することができることが好ましい。
この理由は、ホルダーのみを取り替えることによって、多様な被処理物の処理に対応することができるためである。
また、ホルダーは被処理物を安定的に載置するために、被処理物の形状に適合した形状であることが好ましい。例えば、図13(b)及び(c)に示すように、被処理物157aの形状に合わせた突起156a等を設けることが好ましい。
なお、図9に示すように、支持棒部材110cの長さ(p2)としては、例えば、100〜500mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0056】
また、クランプをホルダー部分に対して容易かつ確実に装着させることができるとともに、ホルダー部分を容易かつ確実にスピンドルから取り外すことが可能となることから、ホルダーの下端に対し、ホルダーの一部としての取り外し補助部材を装着することが好ましい。
この理由は、かかる取り外し補助部材を、ホルダーとスピンドルとの間に介在させることによって、ホルダーに対して容易にクランプ箇所を設けることができることから、クランプ用棒冶具の位置きめ及び装着を、より容易かつ正確にすることができるためである。
また、ホルダーとスピンドル先端との嵌合具合を調節して、ホルダー部分を容易スピンドルから取り外すことができるためである。
より具体的に説明すると、図8(c)に示すように、取り外し補助部材156bは基本的に、スピンドル先端との第1嵌合部156cと、クランプ箇所156dと、ホルダーと嵌合するための羽状ばねを有する第2嵌合部156eと、から構成されることが好ましい。
また、クランプ箇所156dが凹部となるように構成することが好ましい。
この理由は、クランプ箇所が凹部となるように構成することによって、位置きめ部材による位置きめを、さらに容易かつ正確にすることができるとともに、ホルダー部分をさらに容易にスピンドルから取り外すことができるためである。
【0057】
4.移動手段及び強制回転手段
本発明におけるスピンドルは、移動手段に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転手段との接触によって回転可能なスピンドルである。
この理由は、スピンドルが、移動手段に固定されて水平方向に移動することによって、例えば、塗装装置としてのスプレーガンや、乾燥装置としての赤外線乾燥装置等をスピンドルの進行路の側面等に配置して、連続的、かつ、安定的に所望の処理を実施することができるためである。
また、強制回転手段によってスピンドルを回転させることによって、塗装処理や乾燥処理等を、被処理物に対して均一に施すことができるためである。
なお、これらの移動手段及び強制回転手段については、第3の実施形態において詳細に説明する。
【0058】
[第3の実施形態]
次いで、第3の実施形態として、第1の実施形態であるクランプ用棒冶具を適用するスピンドルを備えた被処理物搬送装置について、具体的に説明する。
すなわち、図9及び図10に示すように、複数のベアリングとして、第1のベアリング132、134及び第2のベアリング116、119、136を有するとともに、移動手段150に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドル110を備えた被処理物搬送装置であって、第2のベアリングが当接するガイド部材を備えるとともに、スピンドル110が、下記部材(a)〜(c)を備えた被処理物搬送装置である。
(a)移動手段150に固定された回転軸139に対して、第1のベアリング132、134を介して回転可能に装着される回転支持部材110a
(b)強制回転部材に接触する接触面120bを有するとともに、当該接触面120bの上方及び下方に第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)をそれぞれ備え、かつ、回転支持部材110aに固定される接触駆動部材110b
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材110bに固定される支持棒部材110c
すなわち、このように構成することにより、スピンドルの回転性能、及び安定性をより効果的に向上させることができる。
さらに、所定のベアリングが当接するガイド部材によって、クランプ用棒冶具を駆動中のスピンドルに対して押接した場合であっても、スピンドルのぶれを抑制することができる。
したがって、重量物であってもより効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をさらに安定的に適用することができる。
以下、第1及び第2の実施形態と異なる点を中心に、第3の実施形態の被処理物搬送装置を具体的に説明する。
【0059】
1.基本的構成
図14に示すように、本発明の被処理物搬送装置500は、第2の実施形態において説明した特定のスピンドル110と、スピンドル110を移動させるための移動手段150と、スピンドル110を回転させるための強制回転装置200と、スピンドル110における第2のベアリングが当接するためのガイド部材160、161、163と、を基本的に備えている。
したがって、本発明における被処理物搬送装置は、複数の第2のベアリングを所定箇所に備えたスピンドル及びかかる複数のベアリングと当接するガイド部材を有することにより、強制回転装置の強制回転部材と接触させた場合であっても、安定的に被処理物の回転及び搬送をすることができる。
また、強制回転をさせる工程を含む搬送工程において重量物を搬送する場合であっても、安定的に搬送することができる。より具体的には、スピンドルの傾斜や、過度の振動を抑制することができる。
さらに、スピンドルが、移動手段に固定された回転軸に対して第1のベアリングを介して上方から覆う形態で載置されていることから、塗装処理等を行った場合であっても、回転軸及び第1のベアリングからなる回転機構に塗料等が浸入することがないため、安定的な回転を効果的に維持することができる。
したがって、本発明としての被処理物搬送装置は、被処理物が重量物等であっても、安定的かつ効率的に被処理物を処理することができる。
なお、図14中、矢印Bが、スピンドル110の進行方向を示しており、矢印Cが、スピンドル110の回転方向を示している。
【0060】
2.強制回転装置
図14に示すように、本発明としての被処理物搬送装置500においては、移動しているスピンドル110に対して接触することによってスピンドル110を回転させるための強制回転部材を有する強制回転装置200を備える。
【0061】
(1)回転ベルト式強制回転装置
本発明に使用される強制回転装置200としては、図15に示すように、強制回転部材として駆動手段によって回転するベルト部材171を備えた回転ベルト式強制回転装置200aであることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、強制回転装置を簡易な構成とすることができるためである。したがって、駆動手段が1つであっても、効率的にスピンドルを回転させることができる。
すなわち、任意の長さのベルトを、1つの駆動手段によって回転させることができることから、簡易な構成で、かつ、必要に応じた規模の強制回転装置を得ることが容易となる。
また、強制回転部材が、駆動手段によって回転するベルト部材であることによって、かかるベルトの回転速度を調節することで、スピンドルの回転速度を任意に調節し、実施する処理に好適な回転速度とすることができるためである。
なお、このような形態の強制回転装置は、塗装処理のように、所定以上の回転速度(100〜400rpm)が要求される処理工程において好適に用いられる。
【0062】
また、図16を用いて、回転ベルト式強制回転装置200aの構成例を説明する。
まず、回転ベルト式強制回転装置200aは、駆動手段(図示せず)によって回転する回転ローラ174を有する。そして、かかる回転ローラ174の回転にともなって回転するベルト部材71を有する。
かかるベルト部材171を構成する材料物質としては、所定の弾性、耐摩耗性、耐熱性等を有していれば特に制限されるものではないが、好適に使用される材料物質としては、天然ゴム、ウレタンゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、EPDMゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。また、耐久性や機械的強度等を向上させるために、これらのゴム材料中に、カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、繊維、ガラスファイバー、金属粉、架橋剤等を添加することも好ましい。
また、かかる回転しているベルト部材171を、矢印Dの方向に、スピンドル110における接触面120bに対して、バネ170によって押し付けるための押し付けローラ167を複数備えていることが好ましい。
さらに、かかる回転ベルト式強制回転装置200a全体と、スピンドル110と、の距離を調節するための調節部材172を有することが好ましい。
この理由は、かかる構成とすることより、ベルトを安定的に回転させるとともに、回転しているベルトをスピンドルに対して、無理なく、かつ、確実に圧接させることができるためである。
【0063】
(2)固定式強制回転装置
また、別の強制回転装置として、図17に示すような支持部材166に固定された弾性体164を備えた固定式強制回転装置200bであることも好ましい。
この理由は、強制回転部材が、スピンドルの進行方向における側方において支持部材に固定された弾性体であることによって、弾性体を進行するスピンドルに押圧するだけで、回転力が生起されるためである。したがって、モータ等の駆動手段を別途設けることなく、さらに簡易な構成でスピンドルを、当該スピンドルを損傷させることなく、低速で安定的かつ静音で回転させることができる。
すなわち、移動手段によって移動するスピンドルの接触面と、支持部材に固定された弾性体とが接触することによって、回転力が生起され、自動的にスピンドルが回転するため、駆動手段を設けることなく、簡易な構成でスピンドルの回転が可能となる。また、スピンドルの移動速度や、接触駆動部材の直径、あるいは圧接力等を調節することによって、スピンドルの回転速度を、例えば、10〜60rpmの範囲に精度良く調節することが可能である。さらに、弾性体164を回転駆動源として利用するため、金属板等を接触させるのと異なり、スピンドルを損傷させることなく、低速で安定的かつ静音で回転させることができる。
そして、このような形態の固定式強制回転装置は、例えば、図17に示すように、併設した赤外線乾燥装置175を用いて、塗装処理後の被処理物(図示せず)を乾燥させるための乾燥処理工程において好適に用いられる。
この理由は、塗装処理後の被処理物を比較的緩やかに回転させることによって、全体に対して、均一かつ効率的な加熱が可能となって、得られる塗膜強度を高めたり、塗膜状態を安定化させたりすることができるためである。逆に、乾燥処理工程において過度に高速回転させた場合には、所定の遠心力が働く結果、表面のみ乾燥してしまい、内部に溶剤が残留しやすくなって、乾燥むらが生じる場合があるためである。
また、かかる固定式強制回転装置は、図17に示すように、併設した静電気除去装置176を用いて、塗装処理前の被処理物に対して静電気発生によるほこりの付着を防止するための静電気除去工程においても好適に用いられる。
この理由は、静電気除去工程において高速回転させた場合には、被処理物に到達する帯電粒子の量が低下し、静電気除去効果が著しく低下する場合があるためである。
なお、図9中、矢印Bが、スピンドル110の進行方向を示しており、矢印Cが、スピンドル110の回転方向を示している。
【0064】
また、図18を用いて、固定式強制回転装置200bの構成例をさらに詳細に説明する。
まず、弾性体164の形状としては、図示するように板状とすることが好ましい。
この理由は、板状であることにより、その厚さや幅を変えることによって、スピンドル110に対する圧接具合を調節することが容易となるためである。
また、かかる弾性体164の材料物質としては、所定の弾性、耐摩耗性、耐熱性等を有していれば特に制限されるものではないが、好適に使用される弾性体164としては、所定の耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等が挙げられる。
また、かかる弾性体164を固定する支持部材166は、弾性体164を接触面120bに対して斜め方向から圧接させるための角度(θ4)を有することが好ましい。
この理由は、弾性体164を斜めから圧接させることによって、圧接時における弾性体164の湾曲が緩やかになり、接触面120bに対して安定的に力を加えることができるためである。
なお、かかる角度(θ4)は、例えば、30〜70°の範囲内の値とすることが好ましい。
【0065】
3.ガイド部材
また、図14に示すように、本発明における被処理物搬送装置500においては、スピンドル110に備えられた第2のベアリングと回転可能に当接可能なガイド部材160、161、163を備える。
そして、かかるガイド部材は、以下に示す二つの工程において、それぞれ別の効果を発揮することができる。
【0066】
(1)強制回転工程
図16及び図18に示すように、ガイド部材160、163を、スピンドル110の進行方向に対して、強制回転装置200a、200bが設置された側とは反対側に備えることが好ましい。
この理由は、接触面に対して強制回転部材が圧接された場合であっても、スピンドルが傾斜することを効果的に防止しつつ、安定して回転及び移動させることができるためである。
すなわち、強制回転部材が圧接することによって、スピンドルは、スピンドルの進行方向に対して当該強制回転装置が設置された側とは反対側に向かって押されることとなる。
しかしながら、スピンドルにおける接触面の上方及び下方に備えられた複数の第2のベアリングが、スピンドルの進行方向に対して当該強制回転装置が設置された側とは反対側に備えられたガイド部材と当接することによって、押されているスピンドルを回転可能に支えることができるのである。
【0067】
また、図16及び図18に示すように、かかるガイド部材160、163は、被処理物搬送装置に固定された側壁160aに対して固定されていることが好ましい。
また、かかるガイド部材160、163の材料物質としては、所定の強度を有するものであれば特に制限されるものではなく、金属やセラミック、あるいは樹脂等を用いることができる。
なお、かかるガイド部材160、163の長さとしては、強制回転装置200a、200bの長さに対応していれば任意の長さとすることができるが、例えば、10〜1000cmの範囲内の値であることが好ましい。
【0068】
(2)強制回転工程を含む搬送工程
図19に示すように、接触面120bの上方に備えられた第2のベアリングとして、複数のベアリング116、119を備えるとともに、それぞれに片側から当接する複数のガイド部材160、161を備え、かつ、いずれか一方のガイド部材を、上述したガイド部材160とするとともに、もう一方のガイド部材161を、スピンドルの進行方向に対して、上述したガイド部材が設けられた側とは反対側に設けることが好ましい。
この理由は、スピンドルの上部を、スピンドルの進行方向に対して両側方から支持することができるとともに、スピンドルの移動にともなって第2のベアリングが回転可能となるためである。したがって、スピンドルに対して重量物を載置した場合であっても、より安定して搬送することができる。
すなわち、スピンドルの上部をスピンドルの進行方向に対して両側方から支持することにより、特に重量物を搬送する場合であっても、スピンドルの揺れを防止ししながら安定的に搬送することができる。
【0069】
また、それぞれの第2のベアリングに対して、スピンドルの進行方向に対して片側のみからガイド部材が当接するようにすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、当該第2のベアリングが回転してスピンドルをスムーズに移動させることができるためである。一方、第2のベアリング一つに対して、両側方からガイド部材を当接させた場合は、それぞれのガイド部材が第2のベアリングに対して、それぞれ逆回転をさせようとする力を及ぼすため、第2のベアリングの回転が困難となるためである。
なお、かかるガイド部材160、161の固定方法、材料物質及び長さ等は、上述した強制回転工程におけるガイド部材における内容と同様である。
【0070】
4.移動手段
本発明における被処理物搬送装置においては、スピンドルを水平方向に移動し、かつ、スピンドルを回転可能に装着するための回転軸を有する移動手段を備える。
また、かかる移動手段としては、スピンドルを水平方向に移動させることができるとともに、スピンドルを回転可能に装着するための回転軸を安定的に固定できるものであれば、特に制限されるものではないが、特に好ましいものとしては、図9に示すように、コンベヤチェーン150を用いることが好ましい。
この理由は、移動手段がコンベヤチェーンであれば、スピンドルの回転軸を固定することが容易となるばかりか、スピンドルの進行路を任意の方向へとカーブさせることも容易となるためである。
すなわち、図10に示すように、スピンドルの回転軸139と、コンベヤチェーンの構成要素140、141と、を一体化させて構成することが容易であるためである。また、このように構成することによって、スピンドルの回転軸を、水平面に対して垂直に備えることが容易となるためである。さらに、このように構成する結果、コンベヤチェーンとスピンドルとが、互いの機能を制限することなく、協調してそれぞれの特性を発揮することが容易となるためである。
【0071】
また、図20に示すように、移動手段150の下方に、滑車152およびレール部材162、162´を設けるとともに、当該レール部材162、162´の断面形状を、上に凸状とすることが好ましい。
この理由は、スピンドルの進行方向に対して側面から加わる力に対するスピンドルの安定性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、移動手段の下部に対して滑車を設けるとともに、滑車が走行するためのレール部材の断面の形状を上に凸状にすることによって、スピンドルに対してスピンドルの進行方向に対して側方からの力が加わった場合であっても、かかる滑車がレール部材から脱線しにくくなるためである。
レール部材の断面の形状としては、図20(a)に示すように、板材につき、角度をつけて曲げたレール部材162や、複数の板材につき、角度をつけて溶接したレール部材162、または、図20(b)に示すように、枕木177の上に角材162´を固定したレール部材等が好適に用いられる。また、図20(c)は、図20(b)のレール部材等の側面図である。
なお、図20中に示す角度(θ5)は、例えば、70〜110°の範囲内の値とすることが好ましく、80〜100°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のクランプ用棒冶具によれば、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプを有する所定の冶具により、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルからであっても、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動できるようになった。
したがって、本発明のクランプ用棒冶具は、スピンドルを用いた塗装及び乾燥工程等を経て製造される製品の製造効率の向上に、著しく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のクランプ用棒冶具を説明するために供する図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明のクランプ用棒冶具の使用態様を説明するために供する図である。
【図3】本発明のクランプ用棒冶具の使用態様を説明するために供する別の図である。
【図4】本発明におけるクランプを説明するために供する図である。
【図5】本発明におけるクランプを説明するために供する別の図である。
【図6】(a)〜(b)は、本発明のクランプ用棒冶具の使用態様を説明するために供する別の図である。
【図7】本発明におけるクランプを説明するために供する別の図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明におけるホルダーを説明するために供する図である。
【図9】本発明におけるスピンドルの基本的構成を説明するために供する図である。
【図10】本発明におけるスピンドルの内部構造を説明するために供する図である。
【図11】長さの調節が可能な支持棒部材を説明するために供する図である。
【図12】カバー部材を説明するために供する図である。
【図13】本発明におけるホルダーについて説明するための別の図である。
【図14】本発明における被処理物搬送装置を説明するために供する図である。
【図15】回転ベルト式強制回転装置を説明するために供する図である。
【図16】回転ベルト式強制回転装置とスピンドルとの関係を説明するために供する図である。
【図17】固定式強制回転装置を説明するために供する図である。
【図18】固定式強制回転装置とスピンドルとの関係を説明するために供する図である。
【図19】強制回転工程を含む搬送工程を説明するために供する図である。
【図20】レール部材について説明するために供する図である。
【図21】従来の被処理物搬送装置を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0074】
10:クランプ用棒冶具
20:クランプ
21:L字状固定具
22:L字状板ばね材
23:被処理物保持部
23a:外曲部
23b:保持部
30:長尺物
40:固定具
50:位置きめ部材
110:スピンドル
110a:回転支持部材
110b:接触駆動部材
110c:支持棒部材
110c´:長さを調節可能な指示棒部材
116、119、136:第2のベアリング
120a:支持棒部材装着部
120b:接触面
120c、120d:ねじ
132、134:第1のベアリング
133:ボス部材
139:回転軸
140、141:コンベヤチェーンの構成要素
150:移動手段(コンベヤチェーン)
152:滑車
155:カバー部材
156:ホルダー
156a:突起
157:被処理物
160、161、163:ガイド部材
162、162´:レール部材
164:弾性体
166:支持部材
167:押し付けローラ
170:バネ
171:ベルト部材
174:回転ローラ
175:乾燥装置(赤外線乾燥装置)
176:静電気除去装置
177:枕木
200:強制回転装置
200a:回転ベルト式強制回転装置
200b:固定式強制回転装置
500:被処理物搬送装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ用棒冶具に関し、特に、回転安定性に優れた、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品の容器や携帯電話機の外装体等に対して均一な塗装を行うために、塗装手段の近傍を通過する移動手段上に回転可能なスピンドルを連設し、かかるスピンドルの上方にホルダーを装着し、さらに、かかるホルダーに対して被処理物を取り付け、スピンドルを回転させながら塗装処理を行う方法が用いられている。
例えば、特許文献1では、携帯電話機の外装体に対して多色塗装を行う方法として、スピンドルを回転させながら塗装処理を行う方法を開示している。
より具体的には、図21に示すように、第1色の塗料を塗装した後の携帯電話機の外装体310を、コンベアライン303上に連設されたスピンドル304の上方に固定されたホルダー305に対して取り付けている。次いで、携帯電話機の外装体310上に第2色塗装用のマスキング型311を載置した後、上述したスピンドル304を回転させながら、スプレーガン塗装装置の噴射ノズル302にて、第2色を携帯電話機310の表面に吹き付け塗装している。
このような塗装方法は、多数の被処理物を連続的かつ均一に塗装することができ、生産性が非常に高いことから、多方面で使用されている。
そして、移動手段によって水平方向に移動しているスピンドルを回転させる方法としては、かかる移動しているスピンドルに対して強制回転部材を接触させて回転させる方法や、スピンドル自体に回転モータを備えることで回転させる方法が行われている。これらの回転方法の中でも、構成が容易であるとともに被処理物を大量に処理することに好適であることから、移動しているスピンドルに対して強制回転部材を接触させて回転させる方法が、広く採用されている。
【0003】
しかしながら、移動しているスピンドルに対して強制回転部材を接触させて回転させる方法を用いた場合、処理後の被処理物を、一つずつスピンドルから外して、次工程へと移動させなければならないという問題が見られた。すなわち、かかる処理後の被処理物を次工程、例えば、蒸着工程等へと移動させる段階で、製品の製造効率が著しく低下してしまうという問題が見られた。
そこで、スピンドルの構造を簡略化及び軽量化するとともに、かかるスピンドルを複数個、長尺物に対して回転可能に連設配置した、いわゆる長尺物一体型スピンドルが使用されている。
すなわち、かかる形態のスピンドルであれば、処理を施された複数個の被処理物がスピンドル上に載置されたままの状態で、長尺物ごと移動手段から取り外すことにより、容易に複数の被処理物を次工程へと移動させることができるためである。
【特許文献1】特開2003−103251(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる長尺物一体型スピンドルを用いた場合、スピンドルの構造が簡略化及び軽量化されていることから、例えば、プラスチック製品等の軽量物しか処理対象とすることができないという問題が見られた。
つまり、一升瓶等の重量物を安定的に処理することは困難であるという問題が見られた。
したがって、回転安定性に優れたスピンドルからであっても、処理後の被処理物を複数個同時に取り外して、そのまま移動するための技術が求められていた。
【0005】
そこで、本発明者らは、従来の問題を鋭意検討した結果、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプを有する所定の冶具により、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルからであっても、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動できることを見出した。そして、かかる所定の冶具を用いることにより、製品の製造効率を著しく向上させることができることを見出した。
すなわち、本発明の目的は、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動できるクランプ用棒冶具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、長尺物と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、を有することを特徴とするクランプ用棒冶具が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、かかるクランプ用棒冶具であれば、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動することができる。
したがって、製品の製造効率を著しく向上させることができる。
【0007】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、複数のクランプが、長尺物の同一側に配置してあるとともに、長尺物の短手方向に突出していることが好ましい。
このように構成することにより、被処理物搬送装置の移動手段上に連設されている複数のスピンドルに対して、より容易かつ正確にクランプ用棒冶具を適用することができる。
【0008】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、複数のクランプが、長尺物に対するL字状固定具と、L字状板ばね材と、当該L字状板ばね材と協働してホルダーを含んだ状態の被処理物を、L字状固定具に対して圧接保持するための被処理物保持部と、を有するが好ましい。
このように構成することにより、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができる。また、このように構成することにより、クランプが塑性変形することを有効に防止することができる。
【0009】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、長尺物に対して、L字状固定具の端部と、L字状板ばね材の端部と、が同一固定具によって、固定されているとともに、当該L字状板ばね材に対して、被処理物保持部が固定されていることが好ましい。
このように構成することにより、クランプが塑性変形することを有効に防止することができるとともに、クランプの組み立てや、損傷等した場合の交換も容易となる。
【0010】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、被処理物保持部の、ホルダーを含んだ状態の被処理物との当接面の断面形状を、波打状とすることが好ましい。
このように構成することにより、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができる。
【0011】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、長尺物の端部に、駆動中のスピンドルにおけるホルダーを含んだ状態の被処理物に当接して、当該ホルダーを含んだ状態の被処理物を、クランプの所定場所に案内するための位置きめ部材を有することが好ましい。
このように構成することにより、スピンドルが駆動しているにもかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物と、クランプとの間の位置きめを容易かつ正確にすることができる。
【0012】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、スピンドルが、複数のベアリングとして、第1のベアリング及び第2のベアリングを有するとともに、移動手段に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドルであって、下記部材(a)〜(c)を備えることが好ましい。
(a)移動手段に固定された回転軸に対して、第1のベアリングを介して回転可能に装着される回転支持部材
(b)強制回転部材に接触する接触面を有するとともに、当該接触面の上方及び下方に第2のベアリングをそれぞれ備え、かつ、回転支持部材に固定される接触駆動部材
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材に固定される支持棒部材
このように構成することにより、スピンドルの回転性能、及び安定性を効果的に向上させることができる。
したがって、重量物であっても効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をより安定的に適用することができる。
【0013】
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、第2のベアリングが当接するガイド部材を備えた被処理物搬送装置に対して、スピンドルが取り付けてあることが好ましい。
このように構成することにより、スピンドルの回転性能、及び安定性をより効果的に向上させることができる。
さらに、所定のベアリングが当接するガイド部材によって、クランプ用棒冶具を駆動中のスピンドルに対して押接した場合であっても、スピンドルのぶれを抑制することができる。
したがって、重量物であってもより効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をさらに安定的に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、長尺物と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、を有することを特徴とするクランプ用棒冶具である。
以下、各構成要件に分けて、具体的に説明する。
【0015】
1.基本的構成
図1に示すように、本発明のクランプ用棒冶具10は、基本的に長尺物30と、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプ20と、から成っている。
かかるクランプ用棒冶具10であれば、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動することができる。
したがって、処理後の被処理物を次工程、例えば、蒸着工程等へと移動させる段階で、製品の製造効率が著しく低下してしまうというという従来の問題点を、効果的に解決することができる。
【0016】
2.使用態様
(1)駆動中のスピンドル
本発明のクランプ用棒冶具が適用される駆動中のスピンドルとは、図2(a)に示すように、図示しない被処理物搬送装置が有する移動手段150に対して、回転可能に固定され、かつ、水平方向(A)に移動中のスピンドル110を意味する。
かかるスピンドルは、その上方に固定された被処理物、例えば、化粧瓶等を回転させるための回転安定性に優れた冶具であって、被処理物を回転させることによって、当該被処理物に対する塗装処理及び乾燥処理等を、均一に実施するための冶具である。
なお、かかるスピンドル及び被処理物搬送装置については、第2の実施形態および第3の実施形態において、それぞれ詳細に説明する。
また、言うまでもなく、本発明のクランプ用棒冶具は、駆動していないスピンドル対しても適用することができる。
【0017】
(2)ホルダーを含んだ状態の被処理物
また、本発明のクランプ用棒冶具によって、上述した駆動中のスピンドルから取り外されることとなるホルダーを含んだ状態の被処理物とは、図2(a)に示すように、ホルダー156に対して載置された状態の被処理物157を意味する。
かかるホルダー156は、スピンドル110に対して取り外し可能に装着することができるように構成されており、ホルダー156のみを取り替えることによって、多様な被処理物157の処理に対応することができるとともに、スピンドル110に対して被処理物157を安定的に載置することができる。
また、ホルダーを含んだ状態の被処理物は、駆動中のスピンドルから取り外す際に、そのホルダー部分をスピンドルから取り外すこととなるため、被処理物に対して直接触れることなく、被処理物を次工程に移動することが可能となる。
なお、ホルダーを含んだ状態の被処理物としては、ホルダーを後で外したような状態の被処理物も、広い意味で、この範疇に入るものである。
【0018】
(3)クランプ用棒冶具の装着
本発明のクランプ用棒冶具の使用態様としては、駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すために、まず、図2(b)に示すように、本発明のクランプ用棒冶具10を、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157に対して装着する。
すなわち、図3に示すように、クランプ用棒冶具10のクランプ20を、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157におけるホルダー156部分に対して、所定の力にて押接させることにより、クランプ20をホルダー156に対して装着させる。
【0019】
(4)スピンドルからの取り外し
次いで、図2(c)に示すように、本発明のクランプ用棒冶具10を、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157に対して装着した状態で、上方に力を加えて移動させることによって、駆動中のスピンドル110から、ホルダー156を含んだ状態の被処理物157を複数個同時に取り外すことができる。
したがって、このようにホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外した後は、そのままの状態で複数個の被処理物を、例えば、蒸着工程等の次工程へと効率的に移動させることができる。
【0020】
3.長尺物
(1)形状
図1に示すように、長尺物30の形状は、棒状であることを特徴とする。
この理由は、長尺物の形状を棒状とすることによって、クランプ用棒冶具の取り扱い性を向上させることができるためである。
すなわち、長尺物の形状が棒状であれば、クランプ用棒冶具が手で持ちやすくなることから、上述したホルダーを含んだ状態の被処理物への装着と、その後のスピンドルからの取り外しといった作業を、迅速かつ正確に行うことができるためである。
また、かかる簡易な形状であれば、クランプ用棒冶具を容易かつ安価に製造することに資することができる。
なお、長尺物の断面形状は、特に制限されるものではなく、例えば、正方形、長方形及び円形等、種々の形状を適宜選択することができる。
【0021】
(2)大きさ
また、長尺物の長さを、20〜200cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる長尺物の長さが20cm未満の値となると、駆動中のスピンドルから同時に取り外すことができる被処理物の数が過度に少なくなって、製品の製造効率を低下させてしまう場合があるためである。一方、かかる長尺物の長さが200cmを超えた値となると、クランプ用棒冶具の取り扱い性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、長尺物の長さを、50〜150cmの範囲内の値とすることがより好ましく、80〜120cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、長尺物の断面における直径は、十分な強度を保持でき、かつ、取り扱い性に支障がでない範囲であれば、特に制限されるものではないが、5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、10〜30mmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0022】
(3)材質
また、長尺物の材質としては、所定の強度を有するものであれば、特に制限されるものではないが、次工程として、例えば、蒸着工程等の加熱をともなう工程が含まれている場合には、所定の耐熱性も要求される。
したがって、好適に用いられる材質としては、アルミニウム、鋼、ステンレス、真鍮、銅等の金属が挙げられる。中でも、アルミニウムは、クランプ用棒冶具の軽量化にも資することができるばかりか、加工性にも優れることから、特に好ましい材質である。
【0023】
4.クランプ
(1)基本的構成
本発明におけるクランプは、ホルダーを含んだ状態の被処理物のホルダー部分に対して、所定の力で押接ことにより確実に装着させることができ、かつ、繰り返し使用した場合であっても、組成変形しにくいといった特性を有している限り、特に制限されるものではない。
このようなクランプとしては、図4(a)〜(d)に示すように、長尺物に対するL字状固定具21と、L字状板ばね材22と、当該板ばね材と協働してホルダーを含んだ状態の被処理物を、L字状固定具21に対して圧接保持するための被処理物保持部23と、を有するクランプ20であることが好ましい。
また、図4(d)に示すように、長尺物に対して、L字状固定具21の端部と、L字状板ばね材22の端部と、が同一固定具40a及び40bによって、固定されているとともに、当該L字状板ばね材22に対して、被処理物保持部23が固定されていることが好ましい。
この理由は、クランプを、このような3つの部材によって構成することにより、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができるためである。また、このように構成することにより、クランプが塑性変形することを有効に防止することができるためである。
すなわち、クランプを、ホルダーを含んだ状態の被処理物のホルダー部分に装着する際に、当該ホルダー部分を直接的に挟み込む部材であるL字状固定具及び被処理物保持部と、挟み込むための弾性力を付与するためのL字状板ばね材とを、それぞれ別個に準備するとともに、所定の構成となるように長尺物に対して固定することによって、それぞれの部材が有する特性をそれぞれ有効に発揮させることができるためである。
さらに、クランプの組み立てや、損傷等した場合の交換も容易に行うことができる。
なお、L字状固定具の端部と、L字状板ばね材の端部と、を長尺物に対して固定するための固定具としては、例えば、ねじ及びナットを用いることが好ましい。
また、L字状板ばね材に対して、被処理物保持部を固定する方法としては、例えば、スポット溶接を実施することが好ましい。
【0024】
(2)L字状固定具
(2)−1 形状
図4(a)に示すように、L字状固定具21の形状は、板状の部材を概ねL字状に屈曲させた形状となっていればよい。
この理由は、かかるL字状の形状であれば、L字状ばね部材22に固定された被処理物保持部23と、効果的に協働して、確実かつ容易にホルダー部分を挟み込むことができるためである。
また、かかる簡易な形状であれば、クランプ用棒冶具を容易かつ安価に製造することに資することができる。
なお、図4(a)に示すように、L字状固定具21の上端部を、外側に屈曲させることによって、より確実かつ容易にホルダー部分を挟み込むことができる。
【0025】
(2)−2 大きさ
また、L字状固定具における高さ(m1)を、例えば、10〜150mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状固定具における横の長さ(m2)を、例えば、10〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、L字状固定具の幅を5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状固定具における厚さ(m3)を0.5〜3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、L字状固定具の大きさをかかる範囲とすることにより、クランプ用棒冶具全体としての取り扱い性を保持しつつも、確実かつ容易にホルダー部分を挟み込むことができるばかりか、L字部材、ひいてはクランプ全体を、長尺物に対して安定的に固定することができるためである。
【0026】
(2)−3 材質
また、L字状固定具の材質としては、所定の強度を有するものであれば、特に制限されるものではないが、次工程として、例えば、蒸着工程等の加熱をともなう工程が含まれている場合には、所定の耐熱性も要求される。
したがって、好適に用いられる材質としては、S鋼、ステンレス、アルミニウム、真鍮及び銅等の金属や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリエステル等の熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂が挙げられる。一方、L字状固定具及び後述する被処理物保持部は、直接的にホルダー部分を挟み込む部材であることから、かかる部材の変形は、即座に挟み込みの不安定化につながることとなる。
よって、特に硬度が高く、変形が生じにくいS鋼を用いることがより好ましい。
【0027】
(3)L字状板ばね材
(3)−1 形状
図4(b)に示すように、L字状板ばね材22の形状は、板状の部材を概ねL字状に屈曲させた形状となっていればよい。
この理由は、かかるL字状の形状であれば、図4(d)に示すように、上述したL字状固定具21上にL字状ばね材22と、当該L字状ばね材22に固定された被処理物保持部23とを、隙間なく容易に重ね合わせることができるためである。
そして、図4(d)に示すようにこれらの各部材を重ね合わせることによって、簡易な構成であるにもかかわらず、被処理物保持部23に対して所定の可動性を付与することができるためである。
なお、ばね材をL字状の板ばね以外の構成とすることも可能である。このようなばね材としては、例えば、スプリング等の従来公知のばね材を挙げることができる。
【0028】
(3)−2 大きさ
また、L字状板ばね材における高さ(n1)を、例えば、5〜80mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状板ばね材における横の長さ(n2)を、例えば、10〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、L字状板ばね材の幅を5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、L字状板ばね材の厚さ(n3)を0.1〜3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、L字状板ばね材の大きさをかかる範囲とすることにより、被処理物保持部の可動性を容易に調節することができるためである。
したがって、クランプがホルダー部分を挟み込む力を、容易に調節することができるためである。
【0029】
(3)−3 材質
また、L字状ばね板材の材質としては、被処理物保持部に対して所定の可動性を付与することができるような材質、すなわち、所定の弾性力を発揮させることができるような材質であれば、特に制限されるものではないが、次工程として、例えば、蒸着工程等の加熱をともなう工程が含まれている場合には、所定の耐熱性も要求される。
したがって、好適に用いられる材質としては、ステンレス(SW−C(80C)、SWP−A、SWP−B、SWOCV−V、SWOSC−V、SWOSC−B、SUP−10、SUS304WPB、SUS316WPA、SUS304、SUS316)等を挙げることができる。
特に、繰り返し使用した場合であっても、その優れた弾性力を保持することができることから、ステンレスの一種であるSUS304を用いることがより好ましい。
【0030】
(4)被処理物保持部
(4)−1 形状
図4(c)に示すように、被処理物保持部23の形状は、特に限定されるものではないが、少なくともホルダー部分を導入するための外曲部23aと、ホルダー部分を挟み込んで保持するための保持部23bと、を有していることが好ましい。
したがって、被処理物保持部の、ホルダーを含んだ状態の被処理物との当接面の断面形状を、波打状とすることが好ましい。
この理由は、かかる当接面の断面形状を波打状とすることによって、ホルダーを含んだ状態の被処理物の大きさにかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物を、複数個同時に、かつ容易にクランプして、スピンドルから取り外すことができるためである。
すなわち、かかる当節面の断面形状が波打状であれば、簡易な構成であるにもかかわらず、上述した外曲部及び保持部を有した被処理物保持部を得ることができるためである。
なお、被処理物保持部23における断面形状を波打状とした場合には、その外曲部23aを形成するための角度(θ1)を、例えば、90〜150°の範囲内の値とすることが好ましく、その保持部23bを形成するための角度(θ2及びθ3)を、例えば、それぞれ90〜150°の範囲内の値とすることが好ましい。
【0031】
(4)−2 大きさ
また、被処理物保持部の高さ(o1)を、例えば、10〜150mmの範囲内の値とすることが好ましく、被処理物保持部の幅を、例えば、5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましく、被処理物保持部の厚さ(o2)を、例えば、0.5〜3mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、被処理物保持部の大きさをかかる範囲とすることにより、所定の外曲部及び保持部を形成することが容易となることから、ホルダー部分を容易に挟み込んで固定しつつも、その後、容易に取り外すことができるためである。
【0032】
(4)−3 材質
また、被処理物保持部の材質としては、所定の強度を有するものであれば、特に制限されるものではないが、基本的に、上述したL字状固定具の材質と同様とすることができる。
【0033】
(5)その他の態様
なお、本発明におけるクランプの態様は、図4に示したものに限定されるものではない。
例えば、図5(a)〜(c)に示すような、L字状固定具21´と、L字状板ばね材22´と、被処理物保持部23´と、から、図5(d)に示すような別の態様のクランプ20´を構成してもよく、その他、様々な態様を採ることが可能である。
【0034】
(6)配置
また、上述した長尺物上におけるクランプの配置としては、図1に示すように、複数のクランプ20が、長尺物30の同一側に配置してあるとともに、長尺物30の短手方向に突出していることが好ましい。
この理由は、このようにクランプを配置することにより、被処理物搬送装置の移動手段上に連接されている複数のスピンドルに対して、より容易かつ正確にクランプ用棒冶具を適用することができるためである。
なお、長尺物に対して、クランプを配置変更するための箇所を予め設けておくことも好ましい。
より具体的には、クランプを配置変更した際に使用するねじ穴等を、予め設けておくことが好ましい。
この理由は、かかるクランプを配置変更するための箇所を予め設けておくことによって、適用するスピンドルの間隔が変更された場合であっても、かかるスピンドルの間隔に対応させて、長尺物上のクランプの配置を修正することができるためである。
【0035】
また、その他の配置としては、例えば、図6に示すように、複数のクランプ20が、長尺物30の両側に配置してあることも好ましい。
この理由は、両側に配置されたクランプの間隔を、図6(a)に示すように、それぞれ同一の距離とした場合であれば、1つのクランプ用棒冶具によって、2倍の被処理物をスピンドルから取り外して、移動させることができるためである。
また、両側に配置されたクランプの間隔を、図6(b)に示すように、それぞれ異なる距離とした場合であれば、1つのクランプ用棒冶具によって、スピンドルの間隔変更に対して容易に対応することができるためである。
【0036】
5.位置きめ部材
また、本発明のクランプ用棒冶具を構成するにあたり、長尺物の端部に、駆動中のスピンドルにおけるホルダーを含んだ状態の被処理物に当接して、当該ホルダーを含んだ状態の被処理物を、クランプの所定場所に案内するための位置きめ部材を有することが好ましい。
この理由は、かかる位置きめ部材を設けることによって、スピンドルが駆動しているにもかかわらず、ホルダーを含んだ状態の被処理物と、クランプと、の間の位置きめを容易かつ正確にすることができるためである。
すなわち、駆動中のスピンドルに対して、クランプ用棒冶具を適用するためには、その前段階として、複数のクランプをそれぞれ対応する駆動中のスピンドルに対して正確に対向させる作業、すなわち位置きめをする必要がある。
一方、クランプ用棒冶具の位置きめの効率は、クランプ用棒冶具を適用しようとしている駆動中のスピンドルのうち先頭に位置するスピンドルと、長尺物の端部に配置されたクランプと、の位置きめの効率によって左右される。
したがって、長尺物の端部に位置きめ部材を設けることによって、かかる長尺物の端部に配置されたクランプの位置きめ、ひいては、クランプ用棒冶具全体としての位置きめを容易かつ正確にすることができる。
【0037】
より具体的には、図1に示すように、クランプ用棒冶具10を適用しようとしている駆動中のスピンドルのうち先頭に位置するスピンドルに適用されることとなる、長尺物30の端部30aに配置されたクランプ20aにおけるL字状固定具の高さを、他のクランプにおけるL字状固定具の高さよりも高くして、位置きめ部材50とすることが好ましい。
この理由は、位置きめ部材をL字状固定具と一体化した構成とすることによって、位置きめ部材によって位置きめされたクランプ用棒冶具を、そのまま駆動中のスピンドルに対して押接することで、容易に複数のクランプを、各スピンドル上のホルダーに対して装着させることができるためである。
さらには、簡易な構成であることから、L字状固定具のバリエーションとして、容易に製造することができるためである。
なお、かかる位置きめ部材は、通常のL字状固定具の高さを、例えば、10〜200mmの範囲内の値で延長して構成することが好ましい。また、その幅及び厚さは、L字状固定具と同様とすることができる。また、その材質についても、L字状固定具と同様とすることができる。
【0038】
また、位置きめ部材を図7に示すような位置きめ部材50´として構成することも好ましい。
この理由は、図7に示すように、上下方向用位置きめ部50a´を含んだ位置きめ部材であれば、クランプ用棒冶具の長手方向のみならず、上下方向についての位置きめについても、容易かつ正確に行うことに資することができるためである。
ただし、かかる位置きめ部材50´を適用するためには、図8(a)に示すように、上下方向位置きめ部50a´が当接するための凸部156aを有するホルダー156、あるいは、図8(b)に示すように、ホルダー156の一部としての取り外し補助部材156bを使用する必要がある。
【0039】
[第2の実施形態]
次いで、第2の実施形態として、第1の実施形態であるクランプ用棒冶具を適用するスピンドルについて、具体的に説明する。
すなわち、図9及び図10に示すように、複数のベアリングとして、第1のベアリング132、134及び第2のベアリング116、119、136を有するとともに、移動手段150に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドル110であって、下記部材(a)〜(c)を備えたスピンドル10である。
(a)移動手段150に固定された回転軸139に対して、第1のベアリング132、134を介して回転可能に装着される回転支持部材110a
(b)強制回転部材に接触する接触面120bを有するとともに、当該接触面120bの上方及び下方に第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)をそれぞれ備え、かつ、回転支持部材110aに固定される接触駆動部材110b
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材110bに固定される支持棒部材110c
すなわち、第1のベアリングのみならず、上下二箇所に備えた第2のベアリングによって、安定的に被処理物を回転させたり、搬送させたりすることができる。
したがって、重量物であっても効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をより安定的に適用することができる。
以下、図を適宜参照して、本発明の第1の実施形態であるスピンドルについて、構成要件ごとに具体的に説明する。
【0040】
1.回転支持部材
図9及び図10に示すように、回転支持部材110aは、移動手段150に固定された回転軸139に対して第1のベアリング132、134等を介して回転可能に装着されている。
この理由は、回転軸が移動手段に固定され、かつ、第1のベアリングを介して回転軸と回転支持部材とが接触していることによって、移動手段とスピンドルとを協調させて、それぞれの特性を発揮させることが容易となるためである。
すなわち、このような構成であれば、移動手段に直接固定された回転軸自体は、スピンドルを回転させた場合であってもなんら動作をするものではないため、移動手段の移動にも、また、スピンドルの回転にも、悪影響を及ぼさないためである。
【0041】
また、図9及び図10に示すように、回転支持部材110aは、接触駆動部材110bにおける空孔と嵌合するとともに、ねじ120d等で固定されることが好ましい。
この理由は、回転支持部材と回転軸とからなる回転機構が、接触駆動部材によって上方から覆われることになるため、塗装処理等を行った場合であっても、優れた回転性を発揮することができるためである。
すなわち、スピンドルに載置される被処理物は、回転支持部材よりも上方に位置することになるため、塗装処理等の際の塗料等は、スピンドルの上方から降りかかることになる。しかしながら、回転機構が接触駆動部材によって上方から覆われているため、そこに塗料等が浸入してくることを効果的に防ぐことができるためである。
【0042】
また、第1のベアリング132、134としては、回転軸139と、回転支持部材110aとを回転可能に接触させることができるものであれば特に制限されるものではないが、より摩擦を低下させることができることから、ボールベアリングを使用することが好ましい。
なお、かかる第1のベアリングの直径(外径)は、スピンドルのサイズ等にもよるが、一般的には20〜30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0043】
また、図9及び図10に示すように、回転支持部材110aが、第1のベアリングとして、複数のベアリング132、134を備えるとともに、当該複数のベアリング132、134の間に、回転軸139に接触しないボス部材133を備えることが好ましい。
この理由は、固定された回転軸と第1のベアリングとの間に複数の接触箇所を備えることで、当該複数の第1のベアリング間に所定の間隔をあけることができ、その結果、より安定的にスピンドルを回転させることができるためである。
すなわち、回転支持部材における第1のベアリングが複数であるとともに、それらが所定の間隔をもって配置されていることにより、回転軸と、スピンドルとがより安定的に装着されるためである。したがって、被処理物として重量物を載置した場合であっても、安定して回転及び搬送することができる。
また、このように構成することにより、第1のベアリングにかかる力を効果的に分散させることができることから、第1のベアリングを含めて、スピンドルの長寿命化にも寄与することができる。
なお、第1のベアリング間の間隔としては、スピンドル等の大きさによって好適な範囲は変化するものの、一般的には10〜100mmの範囲内の値であることが好ましく、15〜80mmの範囲内の値であることがより好ましい。
【0044】
また、ボス部材133の材料物質としては、真鍮を用いることが好ましい。
この理由は、ボス部材の材料物質として、平滑性や熱伝導性に優れた真鍮を用いることによって、回転支持部材と接触駆動部材とを嵌合させる場合であっても、あるいはこれらを分離させる場合であっても、金属部材同士の過度の摩擦を防止することができるためである。
なお、図9に示すように、回転支持部材110aの長さ(p3)を、例えば、50〜100mmの範囲内の値とすることが好ましい。また、一例であるが、その直径を20〜30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0045】
2.接触駆動部材
また、図9及び図10に示すように、接触駆動部材110bは、後述する強制回転部材に接触する接触面120bを有するとともに、当該接触面120bの上方及び下方に第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)をそれぞれ備え、かつ、回転支持部材110aに固定される。
このように強制回転部材に対する接触面を有する理由は、かかる接触面を介して、スピンドルの側面と、強制回転部材とを接触させた際に生じる摩擦力によって、スピンドルを回転させるためである。
また、接触面の上方及び下方の二箇所に、第2のベアリングとして、複数のベアリングを備える理由は、かかる第2のベアリングと、側方に設けられたガイド部材とが当接することによって、安定的に被処理物の回転及び搬送をすることができるためである。そればかりか、ガイド部材の配置を変更することにより、強制回転をさせる工程を含む搬送工程において重量物等を搬送する場合であっても、安定的に搬送することができるためである。
【0046】
また、第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)としては、ガイド部材に対して回転可能に接触することができるものであれば特に制限されるものではないが、より摩擦を低下させることができることから、ボールベアリングを使用することが好ましい。
なお、かかる第2のベアリングの直径(外径)は、スピンドルのサイズ等にもよるが、一般的には25〜40mmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、図10に示すように接触駆動部材110bと、回転支持部材110aとが、ねじ120d等によって固定されていることによって、接触駆動部材110bにおける接触面120bで生じた摩擦力が回転支持部材110aに伝わり、回転軸139を中心として回転させることとなる。
【0047】
また、図9及び図10に示すように、接触駆動部材110bの接触面120bの上方に、第2のベアリングとして、複数のベアリング116、119を備えるとともに、当該複数のベアリング116、119における間隔を5〜50mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように第2のベアリングを配置することによって、スピンドルの安定性が向上するのみならず、塗装処理等を行った際に、かかる第2のベアリング間に塗料等が浸入して、硬化した場合であっても、容易に洗浄して回転機能を維持することができるためである。
すなわち、接触駆動部材における接触面の上方において、複数の第2のベアリングを備えることによって、スピンドルの上部を、スピンドルの進行方向に対して両側方から支持することができるとともに、スピンドルの移動にともなって、第2のベアリングが回転可能となるためである。したがって、スピンドルに対して重量物等を載置した場合であっても、十分安定して搬送することができる。
【0048】
また、複数の第2のベアリング116、119における間隔が5〜50mmの範囲内の値であることを好適とするのは、このような間隔であれば、スピンドルの安定性がさらに向上するとともに、所定の洗浄性が得られるためである。
したがって、複数のベアリング116、119における間隔を10〜40mmの範囲内の値とすることがより好ましく、15〜30mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
また、接触面120bを構成する材料物質が、アルミニウム系金属であることが好ましい。
この理由は、スピンドルの重量を、安定性及び移動手段に対する負荷の面で、好適な範囲内に調節することが容易となるとともに、加工性を向上させることができるためである。
すなわち、従来は、かかる接触面を構成する材料物質として、鉄を主体とした材料物質を使用していたため、スピンドルが非常に重いという問題が見られた。そのため、特に、スピンドルの進行路がカーブしている場合においては、スピンドル自体に発生する遠心力の影響で、スピンドルが傾斜し、安定的に搬送できない場合が見られた。
また、スピンドルが載置されている移動手段に対しても、非常に大きな負荷がかかり、特に移動手段下方における滑車部分や、滑車が走行するレール部材等の疲労が著しかった。
したがって、比較的軽量であるアルミ二ウム系金属を使用することによって、かかる搬送安定性や重量の問題点を解決することができる。
但し、アルミニウム系金属として、純アルミニウムを使用すると、軽量性には優れているものの、機械的強度や加工性が乏しくなって、却って、安定的に搬送できない場合が見られる。
したがって、アルミニウム系金属として、後述するように、銅(Cu)、珪素(Si)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)等を所定量含んだアルミニウムを用いることが好ましい。
【0050】
また、かかるアルミニウム系金属としては、特に、全体量に対して、銅を3〜8重量%の範囲内で含有させたアルミニウム系金属であることが好ましい。
この理由は、アルミニウムに対して銅を3〜8重量%の範囲内で加えることによって、その硬度が著しく向上し(ブリネル硬度(HB)>100)、機械的特性(引っ張り強さ>400N/mm2、せん断強さ>200N/mm2)や、加工性(伸び10〜45%)にさらに優れた材料となるためである。
すなわち、かかる銅の含有量が3重量%未満の値となると、銅を加えた効果が十分に発揮されず、機械的特性が十分に向上しない場合があるためである。例えば、ブリネル硬度(HB)が20以下と、1/5程度になったりする場合があるためである。また、引っ張り強さが70N/mm2以下と、1/5程度になったり、せん断強さが50N/mm2以下と、1/4程度になったりする場合があるためである。
一方、かかる銅の含有量が8重量%を超えた値となると、硬度が過度に高くなったり、青錆が発生しやすくなったりする場合がある。
したがって、アルミニウム系金属として、全体量に対する銅の含有量を4〜7重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜6重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0051】
なお、図9に示すように、接触駆動部材110bの長さ(p4)を、例えば、100〜150mmの範囲内の値とすることが好ましい。
また、支持棒部材装着部120aの長さ(p5)を、例えば、50〜70mmの範囲内とし、その直径を5〜30mmの範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、接触面120bの長さ(p6)を、例えば、25〜40mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0052】
3.支持棒部材
また、図9及び図10に示すように、支持棒部材110cは、直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための部材として、上述した接触駆動部材110bに固定される。
この理由は、かかる支持棒部材に対して被処理物を載置することによって、被処理物と、例えば、スプレーガン等の処理装置との距離を好適な範囲内とすることができるためである。また、かかる支持棒部材を備えることにより、上述した接触駆動部材や、後述する移動手段に対して、例えば、塗料等が直接的に付着することを抑制することができるためである。
より具体的には、図9及び図10に示すように、支持棒部材110cと、接触駆動部材110bとがねじ120c等によって固定されていることによって、上述した回転支持部材110a及び接触駆動部材110bの回転に連動して、支持棒部材110cを回転させることができるためである。
【0053】
また、接触駆動部材110bと支持棒部材110cとの固定の形態として、接触駆動部材110bと支持棒部材110cとが、嵌合して固定されるとともに、当該嵌合の深度を調節可能とすることが好ましい。
この理由は、スピンドルを装着する被処理物搬送装置、処理手段及び被処理物等が変化した場合であっても、長さの異なる支持棒部材を別途用意することなく、支持棒部材の長さを調節することができるためである。
すなわち、長さの異なる複数の支持棒部材を用意する必要がないことから、経済的に有利であるのみならず、支持棒部材の長さの変更が容易となるためである。
より具体的には、図11(a)及び(b)に示すように、接触駆動部材と固定するためのねじ120cと当接する溝部を任意の間隔で複数設けた支持棒部材110c´を用いることによって、接触駆動部材と支持棒部材との嵌合の深度を、容易に調節することができるようになる。
【0054】
また、塗装処理等を実施する際には、支持棒部材に対して、カバー部材を装着することが好ましい。
この理由は、支持棒部材に対して直接的に塗料等が付着することを防止しするためである。
すなわち、支持棒部材と接触駆動部材との固定部分等に対して塗料等が浸入して硬化した場合、支持棒部材と接触駆動部材とを分離したり、再び固定したりすることが困難となる場合があるためである。
したがって、例えば、図12(a)に示すように、支持棒部材110c全体を覆うことができる筒状のカバー部材155を、支持棒部材110cに対して装着することが好ましい。なお、図12(b)に示すように、塗装処理等を終えた後は、カバー部材155を取り外して、カバー部材155のみを洗浄することができる。
【0055】
また、支持棒部材に対してホルダーを介して被処理物を載置する場合には、例えば、図13(a)に示すようにして、被処理物を載置するためのホルダー156をスピンドルに対して装着することが好ましい。
すなわち、かかるホルダー156は、スピンドル110の支持棒部材110cの上部に対して取り外し可能に装着することができることが好ましい。
この理由は、ホルダーのみを取り替えることによって、多様な被処理物の処理に対応することができるためである。
また、ホルダーは被処理物を安定的に載置するために、被処理物の形状に適合した形状であることが好ましい。例えば、図13(b)及び(c)に示すように、被処理物157aの形状に合わせた突起156a等を設けることが好ましい。
なお、図9に示すように、支持棒部材110cの長さ(p2)としては、例えば、100〜500mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0056】
また、クランプをホルダー部分に対して容易かつ確実に装着させることができるとともに、ホルダー部分を容易かつ確実にスピンドルから取り外すことが可能となることから、ホルダーの下端に対し、ホルダーの一部としての取り外し補助部材を装着することが好ましい。
この理由は、かかる取り外し補助部材を、ホルダーとスピンドルとの間に介在させることによって、ホルダーに対して容易にクランプ箇所を設けることができることから、クランプ用棒冶具の位置きめ及び装着を、より容易かつ正確にすることができるためである。
また、ホルダーとスピンドル先端との嵌合具合を調節して、ホルダー部分を容易スピンドルから取り外すことができるためである。
より具体的に説明すると、図8(c)に示すように、取り外し補助部材156bは基本的に、スピンドル先端との第1嵌合部156cと、クランプ箇所156dと、ホルダーと嵌合するための羽状ばねを有する第2嵌合部156eと、から構成されることが好ましい。
また、クランプ箇所156dが凹部となるように構成することが好ましい。
この理由は、クランプ箇所が凹部となるように構成することによって、位置きめ部材による位置きめを、さらに容易かつ正確にすることができるとともに、ホルダー部分をさらに容易にスピンドルから取り外すことができるためである。
【0057】
4.移動手段及び強制回転手段
本発明におけるスピンドルは、移動手段に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転手段との接触によって回転可能なスピンドルである。
この理由は、スピンドルが、移動手段に固定されて水平方向に移動することによって、例えば、塗装装置としてのスプレーガンや、乾燥装置としての赤外線乾燥装置等をスピンドルの進行路の側面等に配置して、連続的、かつ、安定的に所望の処理を実施することができるためである。
また、強制回転手段によってスピンドルを回転させることによって、塗装処理や乾燥処理等を、被処理物に対して均一に施すことができるためである。
なお、これらの移動手段及び強制回転手段については、第3の実施形態において詳細に説明する。
【0058】
[第3の実施形態]
次いで、第3の実施形態として、第1の実施形態であるクランプ用棒冶具を適用するスピンドルを備えた被処理物搬送装置について、具体的に説明する。
すなわち、図9及び図10に示すように、複数のベアリングとして、第1のベアリング132、134及び第2のベアリング116、119、136を有するとともに、移動手段150に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドル110を備えた被処理物搬送装置であって、第2のベアリングが当接するガイド部材を備えるとともに、スピンドル110が、下記部材(a)〜(c)を備えた被処理物搬送装置である。
(a)移動手段150に固定された回転軸139に対して、第1のベアリング132、134を介して回転可能に装着される回転支持部材110a
(b)強制回転部材に接触する接触面120bを有するとともに、当該接触面120bの上方及び下方に第2のベアリング116、119(上方)、136(下方)をそれぞれ備え、かつ、回転支持部材110aに固定される接触駆動部材110b
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材110bに固定される支持棒部材110c
すなわち、このように構成することにより、スピンドルの回転性能、及び安定性をより効果的に向上させることができる。
さらに、所定のベアリングが当接するガイド部材によって、クランプ用棒冶具を駆動中のスピンドルに対して押接した場合であっても、スピンドルのぶれを抑制することができる。
したがって、重量物であってもより効果的に処理することができるばかりか、駆動しているスピンドルに対して、クランプ用棒冶具をさらに安定的に適用することができる。
以下、第1及び第2の実施形態と異なる点を中心に、第3の実施形態の被処理物搬送装置を具体的に説明する。
【0059】
1.基本的構成
図14に示すように、本発明の被処理物搬送装置500は、第2の実施形態において説明した特定のスピンドル110と、スピンドル110を移動させるための移動手段150と、スピンドル110を回転させるための強制回転装置200と、スピンドル110における第2のベアリングが当接するためのガイド部材160、161、163と、を基本的に備えている。
したがって、本発明における被処理物搬送装置は、複数の第2のベアリングを所定箇所に備えたスピンドル及びかかる複数のベアリングと当接するガイド部材を有することにより、強制回転装置の強制回転部材と接触させた場合であっても、安定的に被処理物の回転及び搬送をすることができる。
また、強制回転をさせる工程を含む搬送工程において重量物を搬送する場合であっても、安定的に搬送することができる。より具体的には、スピンドルの傾斜や、過度の振動を抑制することができる。
さらに、スピンドルが、移動手段に固定された回転軸に対して第1のベアリングを介して上方から覆う形態で載置されていることから、塗装処理等を行った場合であっても、回転軸及び第1のベアリングからなる回転機構に塗料等が浸入することがないため、安定的な回転を効果的に維持することができる。
したがって、本発明としての被処理物搬送装置は、被処理物が重量物等であっても、安定的かつ効率的に被処理物を処理することができる。
なお、図14中、矢印Bが、スピンドル110の進行方向を示しており、矢印Cが、スピンドル110の回転方向を示している。
【0060】
2.強制回転装置
図14に示すように、本発明としての被処理物搬送装置500においては、移動しているスピンドル110に対して接触することによってスピンドル110を回転させるための強制回転部材を有する強制回転装置200を備える。
【0061】
(1)回転ベルト式強制回転装置
本発明に使用される強制回転装置200としては、図15に示すように、強制回転部材として駆動手段によって回転するベルト部材171を備えた回転ベルト式強制回転装置200aであることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、強制回転装置を簡易な構成とすることができるためである。したがって、駆動手段が1つであっても、効率的にスピンドルを回転させることができる。
すなわち、任意の長さのベルトを、1つの駆動手段によって回転させることができることから、簡易な構成で、かつ、必要に応じた規模の強制回転装置を得ることが容易となる。
また、強制回転部材が、駆動手段によって回転するベルト部材であることによって、かかるベルトの回転速度を調節することで、スピンドルの回転速度を任意に調節し、実施する処理に好適な回転速度とすることができるためである。
なお、このような形態の強制回転装置は、塗装処理のように、所定以上の回転速度(100〜400rpm)が要求される処理工程において好適に用いられる。
【0062】
また、図16を用いて、回転ベルト式強制回転装置200aの構成例を説明する。
まず、回転ベルト式強制回転装置200aは、駆動手段(図示せず)によって回転する回転ローラ174を有する。そして、かかる回転ローラ174の回転にともなって回転するベルト部材71を有する。
かかるベルト部材171を構成する材料物質としては、所定の弾性、耐摩耗性、耐熱性等を有していれば特に制限されるものではないが、好適に使用される材料物質としては、天然ゴム、ウレタンゴム、ニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム、EPDMゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。また、耐久性や機械的強度等を向上させるために、これらのゴム材料中に、カーボンブラック、シリカ、酸化チタン、繊維、ガラスファイバー、金属粉、架橋剤等を添加することも好ましい。
また、かかる回転しているベルト部材171を、矢印Dの方向に、スピンドル110における接触面120bに対して、バネ170によって押し付けるための押し付けローラ167を複数備えていることが好ましい。
さらに、かかる回転ベルト式強制回転装置200a全体と、スピンドル110と、の距離を調節するための調節部材172を有することが好ましい。
この理由は、かかる構成とすることより、ベルトを安定的に回転させるとともに、回転しているベルトをスピンドルに対して、無理なく、かつ、確実に圧接させることができるためである。
【0063】
(2)固定式強制回転装置
また、別の強制回転装置として、図17に示すような支持部材166に固定された弾性体164を備えた固定式強制回転装置200bであることも好ましい。
この理由は、強制回転部材が、スピンドルの進行方向における側方において支持部材に固定された弾性体であることによって、弾性体を進行するスピンドルに押圧するだけで、回転力が生起されるためである。したがって、モータ等の駆動手段を別途設けることなく、さらに簡易な構成でスピンドルを、当該スピンドルを損傷させることなく、低速で安定的かつ静音で回転させることができる。
すなわち、移動手段によって移動するスピンドルの接触面と、支持部材に固定された弾性体とが接触することによって、回転力が生起され、自動的にスピンドルが回転するため、駆動手段を設けることなく、簡易な構成でスピンドルの回転が可能となる。また、スピンドルの移動速度や、接触駆動部材の直径、あるいは圧接力等を調節することによって、スピンドルの回転速度を、例えば、10〜60rpmの範囲に精度良く調節することが可能である。さらに、弾性体164を回転駆動源として利用するため、金属板等を接触させるのと異なり、スピンドルを損傷させることなく、低速で安定的かつ静音で回転させることができる。
そして、このような形態の固定式強制回転装置は、例えば、図17に示すように、併設した赤外線乾燥装置175を用いて、塗装処理後の被処理物(図示せず)を乾燥させるための乾燥処理工程において好適に用いられる。
この理由は、塗装処理後の被処理物を比較的緩やかに回転させることによって、全体に対して、均一かつ効率的な加熱が可能となって、得られる塗膜強度を高めたり、塗膜状態を安定化させたりすることができるためである。逆に、乾燥処理工程において過度に高速回転させた場合には、所定の遠心力が働く結果、表面のみ乾燥してしまい、内部に溶剤が残留しやすくなって、乾燥むらが生じる場合があるためである。
また、かかる固定式強制回転装置は、図17に示すように、併設した静電気除去装置176を用いて、塗装処理前の被処理物に対して静電気発生によるほこりの付着を防止するための静電気除去工程においても好適に用いられる。
この理由は、静電気除去工程において高速回転させた場合には、被処理物に到達する帯電粒子の量が低下し、静電気除去効果が著しく低下する場合があるためである。
なお、図9中、矢印Bが、スピンドル110の進行方向を示しており、矢印Cが、スピンドル110の回転方向を示している。
【0064】
また、図18を用いて、固定式強制回転装置200bの構成例をさらに詳細に説明する。
まず、弾性体164の形状としては、図示するように板状とすることが好ましい。
この理由は、板状であることにより、その厚さや幅を変えることによって、スピンドル110に対する圧接具合を調節することが容易となるためである。
また、かかる弾性体164の材料物質としては、所定の弾性、耐摩耗性、耐熱性等を有していれば特に制限されるものではないが、好適に使用される弾性体164としては、所定の耐熱性を有するシリコーンゴムやフッ素ゴム等が挙げられる。
また、かかる弾性体164を固定する支持部材166は、弾性体164を接触面120bに対して斜め方向から圧接させるための角度(θ4)を有することが好ましい。
この理由は、弾性体164を斜めから圧接させることによって、圧接時における弾性体164の湾曲が緩やかになり、接触面120bに対して安定的に力を加えることができるためである。
なお、かかる角度(θ4)は、例えば、30〜70°の範囲内の値とすることが好ましい。
【0065】
3.ガイド部材
また、図14に示すように、本発明における被処理物搬送装置500においては、スピンドル110に備えられた第2のベアリングと回転可能に当接可能なガイド部材160、161、163を備える。
そして、かかるガイド部材は、以下に示す二つの工程において、それぞれ別の効果を発揮することができる。
【0066】
(1)強制回転工程
図16及び図18に示すように、ガイド部材160、163を、スピンドル110の進行方向に対して、強制回転装置200a、200bが設置された側とは反対側に備えることが好ましい。
この理由は、接触面に対して強制回転部材が圧接された場合であっても、スピンドルが傾斜することを効果的に防止しつつ、安定して回転及び移動させることができるためである。
すなわち、強制回転部材が圧接することによって、スピンドルは、スピンドルの進行方向に対して当該強制回転装置が設置された側とは反対側に向かって押されることとなる。
しかしながら、スピンドルにおける接触面の上方及び下方に備えられた複数の第2のベアリングが、スピンドルの進行方向に対して当該強制回転装置が設置された側とは反対側に備えられたガイド部材と当接することによって、押されているスピンドルを回転可能に支えることができるのである。
【0067】
また、図16及び図18に示すように、かかるガイド部材160、163は、被処理物搬送装置に固定された側壁160aに対して固定されていることが好ましい。
また、かかるガイド部材160、163の材料物質としては、所定の強度を有するものであれば特に制限されるものではなく、金属やセラミック、あるいは樹脂等を用いることができる。
なお、かかるガイド部材160、163の長さとしては、強制回転装置200a、200bの長さに対応していれば任意の長さとすることができるが、例えば、10〜1000cmの範囲内の値であることが好ましい。
【0068】
(2)強制回転工程を含む搬送工程
図19に示すように、接触面120bの上方に備えられた第2のベアリングとして、複数のベアリング116、119を備えるとともに、それぞれに片側から当接する複数のガイド部材160、161を備え、かつ、いずれか一方のガイド部材を、上述したガイド部材160とするとともに、もう一方のガイド部材161を、スピンドルの進行方向に対して、上述したガイド部材が設けられた側とは反対側に設けることが好ましい。
この理由は、スピンドルの上部を、スピンドルの進行方向に対して両側方から支持することができるとともに、スピンドルの移動にともなって第2のベアリングが回転可能となるためである。したがって、スピンドルに対して重量物を載置した場合であっても、より安定して搬送することができる。
すなわち、スピンドルの上部をスピンドルの進行方向に対して両側方から支持することにより、特に重量物を搬送する場合であっても、スピンドルの揺れを防止ししながら安定的に搬送することができる。
【0069】
また、それぞれの第2のベアリングに対して、スピンドルの進行方向に対して片側のみからガイド部材が当接するようにすることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、当該第2のベアリングが回転してスピンドルをスムーズに移動させることができるためである。一方、第2のベアリング一つに対して、両側方からガイド部材を当接させた場合は、それぞれのガイド部材が第2のベアリングに対して、それぞれ逆回転をさせようとする力を及ぼすため、第2のベアリングの回転が困難となるためである。
なお、かかるガイド部材160、161の固定方法、材料物質及び長さ等は、上述した強制回転工程におけるガイド部材における内容と同様である。
【0070】
4.移動手段
本発明における被処理物搬送装置においては、スピンドルを水平方向に移動し、かつ、スピンドルを回転可能に装着するための回転軸を有する移動手段を備える。
また、かかる移動手段としては、スピンドルを水平方向に移動させることができるとともに、スピンドルを回転可能に装着するための回転軸を安定的に固定できるものであれば、特に制限されるものではないが、特に好ましいものとしては、図9に示すように、コンベヤチェーン150を用いることが好ましい。
この理由は、移動手段がコンベヤチェーンであれば、スピンドルの回転軸を固定することが容易となるばかりか、スピンドルの進行路を任意の方向へとカーブさせることも容易となるためである。
すなわち、図10に示すように、スピンドルの回転軸139と、コンベヤチェーンの構成要素140、141と、を一体化させて構成することが容易であるためである。また、このように構成することによって、スピンドルの回転軸を、水平面に対して垂直に備えることが容易となるためである。さらに、このように構成する結果、コンベヤチェーンとスピンドルとが、互いの機能を制限することなく、協調してそれぞれの特性を発揮することが容易となるためである。
【0071】
また、図20に示すように、移動手段150の下方に、滑車152およびレール部材162、162´を設けるとともに、当該レール部材162、162´の断面形状を、上に凸状とすることが好ましい。
この理由は、スピンドルの進行方向に対して側面から加わる力に対するスピンドルの安定性をさらに向上させることができるためである。
すなわち、移動手段の下部に対して滑車を設けるとともに、滑車が走行するためのレール部材の断面の形状を上に凸状にすることによって、スピンドルに対してスピンドルの進行方向に対して側方からの力が加わった場合であっても、かかる滑車がレール部材から脱線しにくくなるためである。
レール部材の断面の形状としては、図20(a)に示すように、板材につき、角度をつけて曲げたレール部材162や、複数の板材につき、角度をつけて溶接したレール部材162、または、図20(b)に示すように、枕木177の上に角材162´を固定したレール部材等が好適に用いられる。また、図20(c)は、図20(b)のレール部材等の側面図である。
なお、図20中に示す角度(θ5)は、例えば、70〜110°の範囲内の値とすることが好ましく、80〜100°の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のクランプ用棒冶具によれば、長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプを有する所定の冶具により、回転安定性に優れた駆動中のスピンドルからであっても、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外して、次工程へと、複数個の被処理物をそのまま移動できるようになった。
したがって、本発明のクランプ用棒冶具は、スピンドルを用いた塗装及び乾燥工程等を経て製造される製品の製造効率の向上に、著しく寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明のクランプ用棒冶具を説明するために供する図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明のクランプ用棒冶具の使用態様を説明するために供する図である。
【図3】本発明のクランプ用棒冶具の使用態様を説明するために供する別の図である。
【図4】本発明におけるクランプを説明するために供する図である。
【図5】本発明におけるクランプを説明するために供する別の図である。
【図6】(a)〜(b)は、本発明のクランプ用棒冶具の使用態様を説明するために供する別の図である。
【図7】本発明におけるクランプを説明するために供する別の図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明におけるホルダーを説明するために供する図である。
【図9】本発明におけるスピンドルの基本的構成を説明するために供する図である。
【図10】本発明におけるスピンドルの内部構造を説明するために供する図である。
【図11】長さの調節が可能な支持棒部材を説明するために供する図である。
【図12】カバー部材を説明するために供する図である。
【図13】本発明におけるホルダーについて説明するための別の図である。
【図14】本発明における被処理物搬送装置を説明するために供する図である。
【図15】回転ベルト式強制回転装置を説明するために供する図である。
【図16】回転ベルト式強制回転装置とスピンドルとの関係を説明するために供する図である。
【図17】固定式強制回転装置を説明するために供する図である。
【図18】固定式強制回転装置とスピンドルとの関係を説明するために供する図である。
【図19】強制回転工程を含む搬送工程を説明するために供する図である。
【図20】レール部材について説明するために供する図である。
【図21】従来の被処理物搬送装置を説明するために供する図である。
【符号の説明】
【0074】
10:クランプ用棒冶具
20:クランプ
21:L字状固定具
22:L字状板ばね材
23:被処理物保持部
23a:外曲部
23b:保持部
30:長尺物
40:固定具
50:位置きめ部材
110:スピンドル
110a:回転支持部材
110b:接触駆動部材
110c:支持棒部材
110c´:長さを調節可能な指示棒部材
116、119、136:第2のベアリング
120a:支持棒部材装着部
120b:接触面
120c、120d:ねじ
132、134:第1のベアリング
133:ボス部材
139:回転軸
140、141:コンベヤチェーンの構成要素
150:移動手段(コンベヤチェーン)
152:滑車
155:カバー部材
156:ホルダー
156a:突起
157:被処理物
160、161、163:ガイド部材
162、162´:レール部材
164:弾性体
166:支持部材
167:押し付けローラ
170:バネ
171:ベルト部材
174:回転ローラ
175:乾燥装置(赤外線乾燥装置)
176:静電気除去装置
177:枕木
200:強制回転装置
200a:回転ベルト式強制回転装置
200b:固定式強制回転装置
500:被処理物搬送装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、
長尺物と、
前記長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、
を有することを特徴とするクランプ用棒冶具。
【請求項2】
前記複数のクランプが、前記長尺物の同一側に配置してあるとともに、前記長尺物の短手方向に突出していることを特徴とする請求項1に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項3】
前記複数のクランプが、前記長尺物に対するL字状固定具と、L字状板ばね材と、当該L字状板ばね材と協働してホルダーを含んだ状態の被処理物を、前記L字状の固定具に対して圧接保持するための被処理物保持部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項4】
前記長尺物に対して、前記L字状固定具の端部と、前記L字状板ばね材の端部と、が同一固定具によって、固定されているとともに、前記L字状板ばね材に対して、前記被処理物保持部が固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項5】
前記被処理物保持部の、前記ホルダーを含んだ状態の被処理物との当接面の断面形状を、波打状とすることを特徴とする請求項3または4に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項6】
前記長尺物の端部に、前記駆動中のスピンドルにおけるホルダーを含んだ状態の被処理物に当接して、当該ホルダーを含んだ状態の被処理物を、前記クランプの所定場所に案内するための位置きめ部材を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項7】
前記スピンドルが、複数のベアリングとして、第1のベアリング及び第2のベアリングを有するとともに、移動手段に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドルであって、下記部材(a)〜(c)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のクランプ用棒冶具。
(a)移動手段に固定された回転軸に対して、第1のベアリングを介して回転可能に装着される回転支持部材
(b)強制回転部材に接触する接触面を有するとともに、当該接触面の上方及び下方に第2のベアリングをそれぞれ備え、かつ、回転支持部材に固定される接触駆動部材
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材に固定される支持棒部材
【請求項8】
前記第2のベアリングが当接するガイド部材を備えた被処理物搬送装置に対して、前記スピンドルが取り付けてあることを特徴とする請求項7に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項1】
駆動中のスピンドルから、ホルダーを含んだ状態の被処理物を複数個同時に取り外すとともに、そのままの状態で複数個の被処理物を移動可能とするためのクランプ用棒冶具であって、
長尺物と、
前記長尺物の長手方向に沿って配置された複数のクランプと、
を有することを特徴とするクランプ用棒冶具。
【請求項2】
前記複数のクランプが、前記長尺物の同一側に配置してあるとともに、前記長尺物の短手方向に突出していることを特徴とする請求項1に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項3】
前記複数のクランプが、前記長尺物に対するL字状固定具と、L字状板ばね材と、当該L字状板ばね材と協働してホルダーを含んだ状態の被処理物を、前記L字状の固定具に対して圧接保持するための被処理物保持部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項4】
前記長尺物に対して、前記L字状固定具の端部と、前記L字状板ばね材の端部と、が同一固定具によって、固定されているとともに、前記L字状板ばね材に対して、前記被処理物保持部が固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項5】
前記被処理物保持部の、前記ホルダーを含んだ状態の被処理物との当接面の断面形状を、波打状とすることを特徴とする請求項3または4に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項6】
前記長尺物の端部に、前記駆動中のスピンドルにおけるホルダーを含んだ状態の被処理物に当接して、当該ホルダーを含んだ状態の被処理物を、前記クランプの所定場所に案内するための位置きめ部材を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のクランプ用棒冶具。
【請求項7】
前記スピンドルが、複数のベアリングとして、第1のベアリング及び第2のベアリングを有するとともに、移動手段に載置されて水平方向に移動し、かつ、強制回転装置の強制回転部材との接触によって回転可能なスピンドルであって、下記部材(a)〜(c)を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のクランプ用棒冶具。
(a)移動手段に固定された回転軸に対して、第1のベアリングを介して回転可能に装着される回転支持部材
(b)強制回転部材に接触する接触面を有するとともに、当該接触面の上方及び下方に第2のベアリングをそれぞれ備え、かつ、回転支持部材に固定される接触駆動部材
(c)直接またはホルダーを介して被処理物を載置するための支持棒部材であって、接触駆動部材に固定される支持棒部材
【請求項8】
前記第2のベアリングが当接するガイド部材を備えた被処理物搬送装置に対して、前記スピンドルが取り付けてあることを特徴とする請求項7に記載のクランプ用棒冶具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−6259(P2009−6259A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169864(P2007−169864)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【特許番号】特許第4197536号(P4197536)
【特許公報発行日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(500352801)株式会社スガノ (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【特許番号】特許第4197536号(P4197536)
【特許公報発行日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(500352801)株式会社スガノ (3)
【Fターム(参考)】
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