説明

クランプ装置

【課題】ネジを簡便に交換できるクランプ装置を提供すること。
【解決手段】 回動により支柱Sに押し当てる固定ネジ102と、固定ネジ102を螺合貫入させる基体であって、固定ネジ102に対向する位置のV字溝111と固定ネジ102との間で支柱Sを挟持するクランプ基体101と、クランプ基体101に嵌め込む可動式ナット103と、を有し、可動式ナット103をクランプ基体101に嵌め込んだ際に固定ネジ102を螺合貫入させるねじ孔Hが形成されるよう可動式ナット103とクランプ基体101それぞれにネジ山113、132が切られ、可動式ナット103をクランプ基体101から外した場合には固定ネジ102もクランプ基体101から取り外せるようにしたことを特徴とするクランプ装置100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に取り付けるクランプ装置に関し、特に、ネジを簡便に交換できるクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医療現場では、支柱には、輸液バッグのような比較的軽いものが固定されたり、人工心肺機能部品など数キロにおよぶ重い器具が固定されたりする。このような医療用具や医療用器械は、適宜ホルダを介して先端に設けられたクランプ装置が支柱を把持することにより固定される(図4)。
【0003】
このようなクランプ装置として代表的なものを図4に示す。クランプ装置は、ネジを回転することにより固定や取り外しをおこなうが、ネジ部分は常に摩擦力や圧力がかかるため、素材によってはさびやすく、また、水分が付着する可能性のある環境下や湿度の高い場所では、ネジ部分のさびを一層促進させてしまい、場合によっては使用できなくなってしまう。
【0004】
ところで、クランプ装置は、図示したように、一端にはねじ回しが容易なように回転ノブが、他端には支柱の把持を強固にするためにパッドが、それぞれ固着されている。したがって、ネジがさびた場合には、クランプ装置全体を交換しないといけないという問題点があった。
【0005】
特に、重量物を支柱に固定するために頑強に作られているクランプ装置や、ホルダと一体となったクランプ装置は、単価が高く、頻繁な買換えは敬遠されるという問題点があった。
【0006】
また、医療現場や化学実験現場で用いるクランプは、場合により洗浄等が必要となるが、ネジが常に螺合貫入している状態では、洗浄効率や乾燥効率に劣るという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−49892号公報
【特許文献2】特開2009−45114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、ネジを簡便に交換できるクランプ装置を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載のクランプ装置は、回動により支柱に押し当てるネジ体と、ネジ体を螺合貫入させる基体であって、ネジ体に対向する位置の当接部とネジ体との間で支柱を挟持するクランプ基体と、クランプ基体に嵌め込むネジ固定片と、を有し、ネジ固定片をクランプ基体に嵌め込んだ際にネジ体を螺合貫入させるネジ孔が形成されるようネジ固定片とクランプ基体それぞれにネジ山が切られ、ネジ固定片をクランプ基体から外した場合にはネジ体もクランプ基体から取り外せるようにしたことを特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項1にかかる発明は、ねじ孔を分割して(メスネジを分割して)ネジ体を軸の径方向から取り外せる。なお、副次的に、支柱太さに合わせたクランプ装置の固定を速やかにおこなうことも可能となる。
【0011】
なお、本願でいうクランプ装置は、ホルダなどと適宜一体的に形成されていてもよく、この意味において、クランプ装置は、クランプ機構、クランプ構造ということができる。また、嵌め込む、とは、差し込む態様のほか、広く、勘合するようにあてがう態様も含まれるものとする。
【0012】
ネジ体の先端には支柱の把持性を向上するためにパッド等が設けられていてもよいものとする。同様に当接部もゴムやV字溝などが設けられていても良い。ネジ体の他端には、回転ノブや回転つまみが形成されていても良い。
【0013】
クランプ基体の形状は、ネジ体との間で把持性や取扱性が良いものであれば特に限定されず、例えばその断面をC字、U字、コ字状とした柱体とすることができる。
【0014】
請求項2に記載のクランプ装置は、請求項1に記載のクランプ装置において、ネジ固定片は、ネジ体の進行方向に縮径した形状であり、ネジ体の進行方向に対して直角な方向を軸としてネジ固定片を軸回動させる回動軸をクランプ基体および/またはネジ固定片に有し、ネジ固定片を軸回動させてクランプ基体に被せるよう嵌め込むことを可能としたことを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項2にかかる発明は、ネジの進行方向(ねじ込み方向:通常は右回転により進む方向)にはネジ固定片の移動が規制されるため、ネジ孔形状がずれることなく安定的にネジ体をねじ込むことができ、反対に、ネジ体を逆回しにすると直ちにネジ固定片が緩み、簡便にネジ体を引き抜くことが可能となる。
【0016】
なお、縮径した形状とは、切頭錐のようにネジ体の進行方向に対して角度のついた斜面が形成された態様のほか、例えば蔵扉のように、順次小さくなる扁平な直方体を積み重ねて段差ができた形状のようなものであっても良い。なお、直角とは、ねじれの位置関係で直角という意義であって、回動軸とネジ体の軸とは交差しない。
【0017】
請求項3に記載のクランプ装置は、請求項2に記載のクランプ装置において、回動軸をピン体として、クランプ基体とネジ固定片とに当該ピン体を差し込むピン孔を設けたことを特徴とする。
【0018】
すなわち、請求項3にかかる発明は、クランプ基体とネジ固定片の嵌合形状を複雑化することなく、ピンの挿抜により簡便にネジ固定片の取り付け/取り外しが可能となる。また、ネジ固定片の位置決めや取り付け性も向上する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ネジを簡便に交換できるクランプ装置を提供することができる。具体的には、本発明(請求項1)によれば、ねじ孔を分割してネジ体を軸の径方向から取り外すことが可能となる。また、支柱太さに合わせたクランプ装置の固定を速やかにおこなうことも可能となる。また、本発明(請求項2)によれば、ネジ孔形状がずれることなく安定的にネジ体をねじ込むことができ、また、ネジ体を逆回しにすると直ちにネジ固定片が緩み、容易にネジ体を引き抜くことが可能となる。また、本発明(請求項3)によれば、クランプ基体とネジ固定片の嵌合形状を複雑化することなく、ピンの挿抜により簡便にネジ固定片の取り付け/取り外しが可能となる。また、ネジ固定片の位置決めや取り付け性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】人工心肺機能部品の使用状況を示した概略図である。
【図2】人工心肺機能部品ホルダのクランプ部分の説明図である。
【図3】クランプ基体と可動式ナットの他の結合方式を示した説明図である。
【図4】従来のクランプ装置の一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のクランプ装置の端部に設けられた人工心肺機能部品ホルダおよびその使用状況を示した概略図である。図2は、人工心肺機能部品ホルダのクランプ部分の説明図である。
【0022】
人工心肺機能部品ALは、心臓血管外科手術などにおいて使用され、一時的に患者の心肺機能を代行するものであり、患者から連続的な血液の供給を受けるものである。機能部品本体の重さは概ね1kg前後であるが、血液を最大約4リットル収容するものもあり、付属のチューブの重さも合わせると実質5kg程度となることがある。したがって、円柱状の支柱Sに取り付ける、あるいは位置を変更する場合、腕がつかれるため、速やかな取り付け、取り外し、上下移動が必要となる。
【0023】
ホルダAは、末端に本発明のクランプ装置100を備え、人工心肺機能部品ALを支柱Sに取り付ける。なお、支柱Sは、他の装置や器具も取り付けられる場合がある。
【0024】
クランプ装置100は、図2に示したように、クランプ基体101と、固定ネジ102と、可動式ナット103と、固定ピン104と、により構成される。
【0025】
クランプ基体101は、断面が所定の肉厚をもった略U字の柱体であり、ステンレスの削り出し部材である。大きさは支柱Sの太さによって適宜設定されるが、本実施の形態の場合は、重量物を固定するため、長辺約6cm×短辺約5cm×高さ約5cmの外形としている。クランプ基体101には、支柱Sをずれないように把持するV字溝111が設けられている。支柱Sは円柱棒であるので、V字溝111に押しつけられると2箇所で線接触し、把持性が高まり、支柱Sの固定がより確実なものとなる。
【0026】
クランプ基体101のV字溝111に対向する位置は、固定ネジ102を上から挿し込むための切欠部112が設けられており、切欠部112の下端には、固定ネジ102の溝と螺合するネジ山113が設けられている。また、切欠部112の左右の側面には、後述するように可動式ナット103を嵌める嵌合段114が設けられている。
【0027】
また、クランプ基体101の切欠部112の上部には固定ピン104を差し込むピンホール115があけられている。
【0028】
固定ネジ102は、表面にネジ山121が設けられた円柱状のネジ基体122を基調とし、その外側に固定ネジ102を手で回すための回転ノブ123と、内側に支柱SをV字溝111に向けて押しつけるパッド124が設けられている。ネジ山121は、ネジ山113と後述するネジ山132と螺合するように切られている。固定ネジ102を回転ノブ123を介してねじることにより、パッド124が支柱Sに押し当たり、V字溝111との間で強固な固定が実現される。
【0029】
可動式ナット103は、切欠部112に勘合する形状であり、嵌合段114と同形の嵌合段131が設けられたチップである。嵌合段131が図のようにクランプ基体101の内側に向かって凸(嵌合段114が内側に向かって凹)となっているので、可動式ナット103は、クランプ基体101に嵌め込み可能となると共に嵌った状態から内側への移動が規制される。
【0030】
また、可動式ナット103の下端には、固定ネジ102と螺合するネジ山132が設けられている。可動式ナット103は、クランプ基体101に装着されたときに(嵌め込まれたときに)、ネジ山132とネジ山113とによりねじ孔Hを形成し、このねじ孔Hに、固定ネジ102が螺合して支柱Sを固定する。
【0031】
また、可動式ナット103の上部には固定ピン104を差し込むピンホール133があけられている。
【0032】
固定ピン104は、ピンホール115とピンホール133とを一直線にして差し込むピン体である。固定ピン104が差し込まれることにより、可動式ナット103の上方向の移動が規制されると共に、クランプ基体101外側方向への回動は可能となる。これにより、固定ネジ102が順方向にねじられるときには、ねじ孔Hの形状は崩れず、逆方向にねじられるときには、可動式ナット103がフラップのように外側に回動してねじ孔Hが分割されるので固定ネジ102を速やかに引き抜くことが可能となる。
【0033】
クランプ装置100の使用に際しては、まず、クランプ基体101に、固定ネジ102を挿入し、その後可動式ナット103をクランプ基体101にあてがって、固定ピン104を差し込み、両者を結合する。
【0034】
そして、この組み上がったクランプ装置100を支柱Sにあてがい、固定ネジ102を支柱Sに押し当て、可動式ナット103を回動させてクランプ基体101に嵌め込む。
【0035】
最後に、回動ノブ123を回し、支柱Sにクランプ装置100をしっかりと固定する。
【0036】
一方、クランプ装置100を支柱Sから取り外すときは、回動ノブ123を逆回転させれば、可動式ナット103が持ち上がり、ねじ孔Hが分かれるので、簡便に取り外しをおこなえる。
【0037】
固定ネジ102を交換する場合には、固定ピン104を抜き、適宜新しい固定ネジ102を差し込めばよい。
【0038】
本発明のクランプ装置100は、以上の構成であるので、簡便に固定ネジ102を交換できる。これにより、支柱Sの太さの違いに応じて、また、取り付ける機械器具の重さ等の違いに応じて、適正なパッドないし固定具を先端に備えた固定ネジ102を採用可能となる。また、クランプ装置100の洗浄や乾燥も容易となる。
【0039】
本発明は、上記の態様に限定されない。図3は、クランプ基体と可動式ナットのほかの結合方式を示した説明図である。図示したように、固定ピン104に代えて、可動式ナット103の上部に軸体134としてこれを一体的に凸設した形状としている。また、切欠部112の上部も、ピンホール115に代えて、L状の溝116を形成している。これにより、固定ピン104を用いずに、可動式ナット103をクランプ基体101に容易に装着、取り外し可能となる。
【0040】
このほか可動式ナット103を回動してクランプ基体101にあてがうように嵌める態様に代えて、図示は省略するが、切欠部112にスライド溝を設け、ここに可動式ナットを挿入するようにして可動式ナット103をクランプ基体101に嵌め込むようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、固定ネジが螺合貫入していて事実上取り外しができない従来品と異なり、固定ネジ102が簡便に交換できるので、汎用性が高まり、コスト削減にもつながり、また、支柱Sに適した固定も可能となる。
【符号の説明】
【0042】
100 クランプ装置
101 クランプ基体
102 固定ネジ(請求項にいうネジ体)
103 可動式ナット(請求項にいうネジ固定片)
104 固定ピン
111 V字溝(請求項にいう当接部)
112 切欠部
113 ネジ山
114 嵌合段
115 ピンホール
116 溝
121 ネジ山
122 ネジ基体
123 回転ノブ
124 パッド
131 嵌合段
132 ネジ山
133 ピンホール
134 軸体
AL 人工心肺機能部品
H ねじ孔
A ホルダ
S 支柱



【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動により支柱に押し当てるネジ体と、
ネジ体を螺合貫入させる基体であって、ネジ体に対向する位置の当接部とネジ体との間で支柱を挟持するクランプ基体と、
クランプ基体に嵌め込むネジ固定片と、
を有し、
ネジ固定片をクランプ基体に嵌め込んだ際にネジ体を螺合貫入させるネジ孔が形成されるようネジ固定片とクランプ基体それぞれにネジ山が切られ、
ネジ固定片をクランプ基体から外した場合にはネジ体もクランプ基体から取り外せるようにしたことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
ネジ固定片は、ネジ体の進行方向に縮径した形状であり、
ネジ体の進行方向に対して直角な方向を軸としてネジ固定片を軸回動させる回動軸をクランプ基体および/またはネジ固定片に有し、
ネジ固定片を軸回動させてクランプ基体に被せるよう嵌め込むことを可能としたことを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
回動軸をピン体として、クランプ基体とネジ固定片とに当該ピン体を差し込むピン孔を設けたことを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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