説明

クランプ部材および記録装置

【課題】曲がり易い線路/管路組立体302を形成する。
【解決手段】電気信号を伝播させるフラットケーブル146を保持する線路保持部303と、液体を流通させるフラットチューブ147を保持する管路保持部305とを一体的に備えたクランプ部材300であって、線路保持部303および管路保持部305の一方は、フラットケーブル146またはフラットチューブ147を把持して、フラットケーブル146またはフラットチューブ147の長手方向についてフラットケーブル146または管路に対して固定され、線路保持部303および管路保持部305の他方は、フラットケーブル146またはフラットチューブ147を把持しつつ、フラットケーブル146またはフラットチューブ147の長手方向についての変位を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクランプ部材および記録装置に関する。より詳細には、往復移動する記録ヘッドと本体を屈曲する線路および管路により結合した記録装置において線路および管路を結束するクランプ部材と、そのクランプ部材を備えた記録装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
微細なノズルを備えた記録ヘッドからインク等の液体を吐出して被記録媒体に付着させるインクジェット式記録装置がある。この種の記録装置は、記録ヘッドを所定の主走査方向に往復移動させる一方、主走査方向に対して交差する搬送方向に被記録媒体を移動させる搬送部を備え、主走査および搬送を組み合わせることにより被記録媒体上の任意の領域に液体を付着させて画像を形成する。
【0003】
このような構造を有する記録装置において、記録ヘッドは、主走査方向に往復移動しながら動作する。従って、動作速度の向上、振動の軽減等の観点から、記録ヘッドと共に往復移動する構造物を軽量化することが好ましい。
【0004】
そこで、インクを収容したインクカートリッジを記録装置本体側に固定して、記録ヘッドの往復移動に追従する柔軟な管路を介して記録ヘッドにインクを供給する構造が採られる場合がある。また、記録ヘッドには、その動作を制御する電気信号を供給するので、記録装置本体と記録ヘッドとは、記録ヘッドの往復移動に追従する柔軟な線路によっても接続される。
【0005】
また、多くの記録装置において、記録ヘッドには複数種類のインク、例えば、互いに色が異なるインクが供給される。更に、それに応じて、記録ヘッドには互いに異なるタイミングで動作するアクチュエータが設けられる。従って、上記の管路および線路は、いずれも複数の管路および線路を一体化したフラットチューブ構造またはフラットケーブル構造を有する。
【0006】
フラットチューブおよびフラットケーブルは、いずれも一定の幅を有するテープ状の形状を有する。そこで、これらを重ねて一体化して線路/管路組立体とすることにより、記録装置本体および記録ヘッドをひとつの部材で結合できる。このような線路/管路組立体は、記録装置本体および記録ヘッドの間でU字型に曲げて配置され、記録ヘッドの往復移動に伴ってU字型の部分が移動する。このような構造により、記録ヘッドの往復移動に対して線路/管路組立体が与える負荷を低減できる。
【0007】
下記の特許文献1には、記録ヘッドにインクを供給するインクチューブと、記録ヘッドに電気信号を伝達するフラットケーブルに加えて、テープ状の金属により形成された沿設部材を併せて結束具により結束して線路/管路組立体を形成することが記載される。これにより、線路/管路組立体の変形および屈曲部の移動を安定させることができる。
【特許文献1】特開2001−171145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、フラットチューブ、フラットケーブルおよび沿設部材を一体に結束した線路/管路組立体は、記録ヘッドの往復移動を妨げることなく柔軟に屈曲することが好ましい。しかしながら、例えば記録装置が大型化した場合に管路が太くなると、フラットチューブの厚さも大きくなる。厚いフラットチューブを曲げた場合はその表裏で曲率が異なるので、表裏いずれかの面において結束部材との間にずれが生じる。このため、結束具およびフラットチューブの間の摩擦により線路/管路組立体が曲がり難くなり、線路/管路組立体を小さく曲げることが難しく、記録装置の小型化に対する阻害要因となっていた。更に、結束具およびフラットチューブの間の摺動によりフラットチューブが磨耗して損傷する場合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解決することを目的に、本発明の第1の形態として、電気信号を伝播させる線路を保持する線路保持部と、液体を流通させる管路を保持する管路保持部とを一体的に備えたクランプ部材であって、線路保持部および管路保持部の一方は、線路または管路を把持して、線路または管路の長手方向について線路または管路に対して固定され、線路保持部および管路保持部の他方は、線路または管路を把持しつつ、線路または管路の長手方向についての変位を許容するクランプ部材が提供される。これにより、クランプ部材は線路を把持して長手方向に位置決めされると共に、管路の変位を許容するので、管路と摺動することがない。従って、線路/管路組立体が曲げ難くなり、あるいは摺動により管路が損傷することが防止される。
【0010】
また、上記クランプ部材において、線路保持部は、共通の平面上で一体的に結合された互いに平行な複数のワイヤを含むフレキシブルフラットケーブルを、平面に平行な一対の把持面により挟んで保持してもよい。これにより、線路を形成するフレキシブルフラットケーブルを広い面積で把持するので、線路に対して大きな圧力をかけることなく、確実に把持して固定できる。
【0011】
また、上記クランプ部材において、線路保持部は、フレキシブルフラットケーブルと、平面と平行に延在してフレキシブルフラットケーブルの曲げ剛性を補強する沿設部材とを併せて保持してもよい。これにより、沿設部材の幅方向への曲がりを規制して、線路/管路組立体を円滑に曲がらせることができる。
【0012】
また、上記クランプ部材において、管路保持部は、共通の平面上で一体的に結合された互いに平行な複数の管を含むフレキシブルマルチチューブを、平面に平行な一対の位置決め面により挟んで保持してもよい。これにより、管路を把持しつつもその長手方向の変位を許容することができる。
【0013】
また、上記クランプ部材において、管路保持部は、平面に対して平行な一対の軸の周りに回転自在に装着され、管路に連れ回されるローラを介してフレキシブルマルチチューブを挟んで保持してもよい。これにより、管路のクランプ部材に対する摩擦を低減できるので、線路/管路組立体を円滑に屈曲させ組立体ことができる。
【0014】
また、上記クランプ部材において、ローラは、軸を含む断面において滑らかな曲線を描く周面形状を有し、軸の延在方向の内側において外側よりも小さな径を有してもよい。これにより、ローラを介して把持された管路がクランプ部材の側方に変位することが防止される。
【0015】
また、本発明の第2の形態として、往復移動しつつインクを吐出する記録ヘッドと、記録ヘッドの往復移動を案内する案内部材と、案内部材を支持するフレームを含む本体と、本体および記録ヘッドの間で電気信号を伝播させる線路と、本体および記録ヘッドの間で液体を流通させる管路と、線路および管路を結束するクランプ部材とを備え、クランプ部材は、線路を保持する線路保持部、および、管路を保持する管路保持部を一体的に備え、線路保持部および管路保持部の一方は、線路または管路を把持して、線路または管路の長手方向について線路または管路に対して固定され、線路保持部および管路保持部の他方は、線路または管路を把持しつつ、線路または管路の長手方向についての変位を許容する記録装置が提供される。これにより、管路、線路およびクランプ部材により形成された管路/線路組立体を、小さく曲げても円滑に記録ヘッドが往復移動できるので、記録装置を小型化することができる。また、クランプ部材および管路の間で摺動が生じないので、管路が磨耗することも防止される。
【0016】
なお、上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。ただし、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、実施の形態に係るインクジェット式記録装置100の斜視図である。同図に示すように、このインクジェット式記録装置100は、長手方向が水平に配置された記録部140と、記録部140の端部に装着された筐体部110と、記録部140の上側に装着された装填部130と、記録部140および筐体部110を下方から支持する脚部170とを備える。
【0019】
装填部130には、長尺の被記録媒体191を巻き重ねたロール組立体190(図3参照)が装填されるが、この図ではロール組立体190はロールカバー132に覆われる。また、装填部130は、リリースレバー133を備え、装填されたロール組立体190の把持または開放できる。
【0020】
記録部140においても、その内部機構はトップカバー142およびフロントカバー144により覆われる。記録部140の内部には後述する記録ヘッド143が配置され、装填部130から記録部140に給送された被記録媒体191に向かってインクが吐出される。
【0021】
装填部130から給送されて記録部140において画像を形成された被記録媒体191は、記録部140の下方に形成された排出部160に排出される。なお、脚部170は、排出部160に排出された被記録媒体191をスタックするスペースを形成する目的で装着される。
【0022】
筐体部110は、休止した記録部140から退避した記録ヘッド143が待機するホームポジションのスペースを形成すると共に、その下部に、カートリッジホルダ120を有する。カートリッジホルダ120には、記録ヘッド143に供給するインクを収容したインクカートリッジ124が収容される。また、記録部140の稼働中はホルダカバー122により覆われる。
【0023】
また、筐体部110の上面には、操作パネル180が配置される。操作パネル180は、ユーザが操作するスイッチ182の他、インクジェット式記録装置100の動作状態を示す表示部184も含む。
【0024】
図2は、フロントカバー144を取り外して記録部140の内部を露出させたインクジェット式記録装置100の斜視図である。同図に示すように、記録部140の内部には、その全幅にわたってプラテンプレート152が配置される。プラテンプレート152は、後述するようにその表面に負圧が形成され、ロール組立体190から給送された被記録媒体191を吸着する。これにより、プラテンプレート152上において、被記録媒体191が平坦になると共に、その位置が決められる。
【0025】
また、フロントカバー144を取り外した状態では、開口の下端に沿って、記録部フレーム141が露出する。記録部フレーム141は、記録部140の強度を担保する構造材であると同時に、後述する管路/線路組立体を支持する部材でもある。
【0026】
図3は、インクジェット式記録装置100の内部機構200における被記録媒体191の給送経路を示す模式的な断面図である。同図に示すように、給送経路は、装填部130内のロール組立体190から、記録部140内を経て排出部160に至る。
【0027】
装填部130においては、ロールカバー132の内部にロール組立体190が装填される。ロール組立体190は、芯となる紙管192の外面に長尺の連続した被記録媒体191を巻き重ねて形成される。これにより、大判の被記録媒体191を取り扱い易くしている。
【0028】
更に、紙管192の内側には金属製のスピンドル部材194が挿通される。スピンドル部材194の両端は、装填部130に形成されたスピンドル支持部134に支持される。なお、被記録媒体191は、紙の他、樹脂フィルム、テキスタイル製品等の場合もある。
【0029】
記録部140には、被記録媒体191を給送する給送部111、被記録媒体191にインクを吐出する記録ヘッド143、記録ヘッド143を搭載したキャリッジ148、被記録媒体191を支持するプラテンプレート152等が配置される。給送部111は、図示していない給送モータにより回転駆動される給送駆動ローラ112と、給送駆動ローラ112に当接して連れ回される給送従動ローラ114とを含む。被記録媒体191は、給送駆動ローラ112および給送従動ローラ114の間に挟まれ、給送従動ローラ114により給送駆動ローラ112に押し付けられることにより、給送駆動ローラ112の回転に従ってロール組立体190から引き出される。
【0030】
ロール組立体190から引き出されて給送部111を通過した被記録媒体191は、記録ヘッド143に対向する位置を通過する。このとき、被記録媒体191は、記録ヘッド143と対向する側においてプラテンプレート152により支持される。これにより、プラテンプレート152上の被記録媒体191は、記録ヘッド143に対して一定の間隔をおいて位置決めされる。
【0031】
ここで、プラテンプレート152の後方(図上右側)、つまり、被記録媒体を支持する面と反対側には、図示していないファンユニットが配置され、図中に矢印Aにより示すように、プラテンプレート152から吸引した空気を排出ダクト159から外部へ排出する。これにより、プラテンプレート152の表面に負圧が形成されて、被記録媒体191がプラテンプレート152に吸いつけられる。従って、ロール組立体190において巻き癖がついた被記録媒体191も、プラテンプレート152上では平坦になる。
【0032】
記録ヘッド143はキャリッジ148に搭載され、キャリッジ148はガイドレール145から懸架される。ガイドレール145は、図3の紙面に垂直に、記録部140の略全幅にわたって延在して、キャリッジ148の往復移動を案内する。なお、記録ヘッド143が吐出するインクは、図示していないパイプを通じてインクカートリッジ124から供給される。従って、キャリッジ148にはインクカートリッジ124は搭載されず、往復移動するキャリッジ148および記録ヘッド143の組立体が軽量になる。
【0033】
図4は、インクジェット式記録装置100における記録部140の内部機構200を部分的に抜き出して示す図である。同図に示すように、記録部140の全幅にわたってキャリッジエンコーダスケール150およびガイドレール145が配置される。記録ヘッド143を搭載したキャリッジ148は、ガイドレール145に沿って往復移動すると共に、キャリッジエンコーダスケール150を利用して移動量を検知する。
【0034】
ここで、キャリッジ148に搭載された記録ヘッド143には、インクと駆動信号が供給される。このため、記録ヘッド143には、フラットチューブ147およびフラットケーブル146の一端が結合される。
【0035】
一方、キャリッジ148から出たフラットチューブ147およびフラットケーブル146は、下方に屈曲した後、記録部フレーム141に沿って延在して、やがて、記録部フレーム141の下に入り込む。フラットチューブ147の他端は、カートリッジホルダ120に収容されたインクカートリッジ124に連通する。また、フラットケーブル146の他端は、インクジェット式記録装置100の内部回路(不図示)に結合される。
【0036】
更に、記録部フレーム141上では、フラットチューブ147およびフラットケーブル146はクランプ部材300により結束されて組立体を形成する。この組立体は、記録部フレーム141に対して固定されず、載っているに過ぎない。従って、キャリッジ148が移動した場合に、その屈曲部が移動してキャリッジ148に追従する。なお、図4では、キャリッジ148はガイドレール145右端のホームポジションに位置している。
【0037】
図5は、記録部140に装着されたフラットチューブ147およびフラットケーブル146を部分的に拡大して示す図である。同図に示すように、フラットチューブ147およびフラットケーブル146は、略等間隔で配置された多数のクランプ部材300により結束されて組立体を形成する。また、この実施形態では、フラットチューブ147およびフラットケーブル146の間に挟まれた沿設部材149も、併せて一体化される。
【0038】
なお、沿設部材149は、屈曲し易く、且つ、塑性変形の少ないステンレス等の金属材料により形成された帯状の部材により形成される。このような沿設部材149を沿わせて一体化することにより、フラットチューブ147およびフラットケーブル146の折損を防止すると共に、不要な変形およびそれに起因する振動を防止できる。
【0039】
図6は、フラットチューブ147を把持したクランプ部材300のひとつを抜き出して示す図である。また、図7は、クランプ部材300を正面から見た様子を示す図である。これらの図に示すように、クランプ部材300は、フラットケーブル146保持する線路保持部303と、フラットチューブ147を保持する管路保持部305とを一体化して形成される。
【0040】
線路保持部303は、後述する管路保持部305と共通の中桟320と、中桟320に対して平行な下桟310とを、各側端部で結合して形成された矩形の枠体をなす。ここで、下桟310の側方の一端(図6の左端、図7の右端)には、中桟320の一部と相補的な形状を有する嵌合部351が形成される。また、下桟310の他方の側端部には、中桟320から下方に延在する下側係合部354に噛み合うラッチ部314が形成される。これにより、当初は別体である下桟310および中桟320は、相互に組み合わされて一体化される。
【0041】
管路保持部305は、線路保持部303と共通の中桟320と、その両側端から立ち上がる一対の支柱330と、支柱330の上端を結合する上桟332とにより形成された矩形の枠体をなす。ここで、中桟320の側方の一端(図7の右端)には、支柱330の一部と相補的な形状を有する嵌合部353が形成される。また、中桟320の他方の側端部には、支柱330の下端から下方に延在する上側係合部352と噛み合うフック部(不図示)が形成される。これにより、当初は別体である中桟320および支柱330は、相互に組み合わされて一体化される。
【0042】
更に、管路保持部305は、上桟332から垂下された一対の軸支部341と、中桟320の上面から上方に立ち上がった一対の軸支部343と、軸支部341、343に支持された一対のローラ部材340とを備える。一対のローラ部材340は互いに平行で、軸支部341、343に対して回転自在に装着される。また、ローラ部材340の各々は、その長手方向に延在する軸部342と、軸部342の両端に形成された大径のフランジ部344とを有する。
【0043】
上記のような構造を有する管路保持部305において、フラットチューブ147は、ローラ部材340の軸部342およびフランジ部344により画成された略矩形の間隙に挿通される。この状態でフラットチューブ147がその長手方向に移動した場合、ローラ部材340はフラットチューブ147に連れ回されるので、管路保持部305により保持されることによりフラットチューブ147の長手方向の変位が妨げられることはない。一方、管路保持部305において、フラットチューブ147の各側面は、ローラ部材340の軸部342およびフランジ部344により包囲されるので、フラットチューブ147の長手方向に直交する方向の変位は確実に規制される。
【0044】
上記のような機能を有する管路保持部305に対して、線路保持部303においては、以下に説明するように、中桟320の下面および下桟310の上面がフラットケーブル146等に対して当接してこれを保持する。
【0045】
図8は、図6および図7に示したクランプ部材300にフラットケーブル146およびフラットチューブ147を保持させて形成された線路/管路組立体301の構造を示す縦断面図である。同図に示すように、管路保持部305においては、一対のローラ部材340の軸部342の間にフラットチューブ147が挟まれている。
【0046】
既に説明したようにローラ部材340は回転自在に装着されているので、フラットチューブ147は、その長さ方向に容易に変位する。従って、フラットチューブ147の変位に対してクランプ部材300が抵抗を生じることはない。また、管路保持部305とフラットチューブ147との間で摺動が生じることがないので、フラットチューブ147の変位によりその表面が磨耗することもない。
【0047】
一方、線路保持部303においては、下桟310および中桟320が、フラットケーブル146および沿設部材149を強く把持している。従って、線路保持部303は、フラットケーブル146に対して、その長手方向に変位することがない。
【0048】
このように、クランプ部材300は、フラットチューブ147に対して長手方向の変位を許す管路保持部305と、フラットケーブル146に対して長手方向に固定された線路保持部303とを一体化している。従って、図4に示したように、長いフラットチューブ147およびフラットケーブル146をクランプ部材300により結束した場合、クランプ部材300の各々はフラットケーブル146に対して固定されて、当初の間隔を維持し続ける。一方で、キャリッジ148の移動に伴ってフラットチューブ147が変形した場合に、管路保持部305はフラットチューブ147の長手方向の移動を許すので、線路/管路組立体301の変形が妨げられることがない。
【0049】
図9は、他の線路/管路組立体302の構造を縦断面図である。同図に示すように、この線路/管路組立体302においては、沿設部材149が省略される。このような構造においても、線路保持部303はフラットケーブル146に対して固定される一方、管路保持部305は、フラットチューブ147の変位を許す。
【0050】
以上の実施形態では、インクジェット式記録装置100を例に挙げて具体的な構成を説明したが、この記録装置は、例えば、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの製造における色材噴射装置、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の製造における電極形成装置、バイオチップ製造に使用する試料噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド、付け爪に絵、文字等を描く装置等としても実施でき、更に、これらに限定されない。
【0051】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることは当業者に明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】インクジェット式記録装置100の外観を示す斜視図である。
【図2】記録部140を露出させたインクジェット式記録装置100の斜視図である。
【図3】被記録媒体191の内部機構200における被記録媒体191の給送経路を示す図である。
【図4】インクジェット式記録装置100における記録ヘッド143周りの内部機構200を示す図である。
【図5】内部機構200における線路/管路組立体を拡大して示す図である。
【図6】フラットチューブ147を把持したクランプ部材300のひとつを抜き出して示す図である。
【図7】クランプ部材300を正面から見た様子を示す図である。
【図8】線路/管路組立体301の構造を示す縦断面図である。
【図9】線路/管路組立体302の構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0053】
100 インクジェット式記録装置、110 筐体部、111 給送部、112 給送駆動ローラ、114 給送従動ローラ、120 カートリッジホルダ、122 ホルダカバー、124 インクカートリッジ、130 装填部、132 ロールカバー、133 リリースレバー、134 スピンドル支持部、140 記録部、141 記録部フレーム、142 トップカバー、143 記録ヘッド、144 フロントカバー、145 ガイドレール、146 フラットケーブル、147 フラットチューブ、148 キャリッジ、149 沿設部材、150 キャリッジエンコーダスケール、152 プラテンプレート、159 排出ダクト、160 排出部、170 脚部、180 操作パネル、182 スイッチ、184 表示部、190 ロール組立体、191 被記録媒体、192 紙管、194 スピンドル部材、200 内部機構、300 クランプ部材、301、302 線路/管路組立体、303 線路保持部、305 管路保持部、310 下桟、320 中桟、330 支柱、332 上桟、340 ローラ部材、341、343 軸支部、342 軸部、344 フランジ部、351、353 嵌合部、352 上側係合部、354 下側係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を伝播させる線路を保持する線路保持部と、
液体を流通させる管路を保持する管路保持部と
を一体的に備えたクランプ部材であって、
前記線路保持部および前記管路保持部の一方は、前記線路または前記管路を把持して、前記線路または前記管路の長手方向について前記線路または前記管路に対して固定され、
前記線路保持部および前記管路保持部の他方は、前記線路または前記管路を把持しつつ、前記線路または前記管路の長手方向についての変位を許容するクランプ部材。
【請求項2】
前記線路保持部は、共通の平面上で一体的に結合された互いに平行な複数のワイヤを含むフレキシブルフラットケーブルを、前記平面に平行な一対の把持面により挟んで保持する請求項1に記載のクランプ部材。
【請求項3】
前記線路保持部は、前記フレキシブルフラットケーブルと、前記平面と平行に延在して前記フレキシブルフラットケーブルの曲げ剛性を補強する沿設部材とを併せて保持する請求項2に記載のクランプ部材。
【請求項4】
前記管路保持部は、共通の平面上で一体的に結合された互いに平行な複数の管を含むフレキシブルマルチチューブを、前記平面に平行な一対の位置決め面により挟んで保持する請求項1に記載のクランプ部材。
【請求項5】
前記管路保持部は、前記平面に対して平行な一対の軸の周りに回転自在に装着され、前記管路に連れ回されるローラを介して前記フレキシブルマルチチューブを挟んで保持する請求項4に記載のクランプ部材。
【請求項6】
前記ローラは、前記軸を含む断面において滑らかな曲線を描く周面形状を有し、前記軸の延在方向の内側において外側よりも小さな径を有する請求項5に記載のクランプ部材。
【請求項7】
往復移動しつつインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドの往復移動を案内する案内部材と、
前記案内部材を支持するフレームを含む本体と、
前記本体および前記記録ヘッドの間で電気信号を伝播させる線路と、
前記本体および前記記録ヘッドの間で液体を流通させる管路と、
前記線路および前記管路を結束するクランプ部材と
を備え、
前記クランプ部材は、前記線路を保持する線路保持部、および、前記管路を保持する管路保持部を一体的に備え、
前記線路保持部および前記管路保持部の一方は、前記線路または前記管路を把持して、前記線路または前記管路の長手方向について前記線路または前記管路に対して固定され、
前記線路保持部および前記管路保持部の他方は、前記線路または前記管路を把持しつつ、前記線路または前記管路の長手方向についての変位を許容する記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−23169(P2009−23169A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187582(P2007−187582)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】