説明

クリセン誘導体材料

エレクトロルミネッセンス組成物を提供する。本発明の組成物は式I
【化1】


で表される材料を含む。式I中:R1は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、およびシロキサンからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR1基が互いに連結して5または6員の脂肪族環を形成してもよく;Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり;aは0〜6の整数であり;bは0〜2の整数であり;cは0〜3の整数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、米国特許法第119(e)条に基づき、その記載内容全体が参照により援用される2009年8月13日に出願された米国仮特許出願第61/233,592号明細書の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、クリセン誘導体材料およびそれらの有機電子デバイス中での使用に関する。
【背景技術】
【0003】
有機電子デバイスは、多くの異なる種類の電子装置中に存在する。すべてのこのようなデバイスにおいては、2つの電極の間に有機電気活性層が挟まれている。このようなデバイスの一例は、電気接触層の間に発光層が存在する有機発光ダイオード(「OLED」)である。少なくとも1つの電気接触層は、光が電気接触層を通過できるように光透過性である。電気接触層に電気を印加すると、有機活性層は、光透過性電気接触層を透過する光を発する。発光層と電気接触層との間に、さらなる電気活性層が存在することができる。
【0004】
発光ダイオード中の活性成分として有機エレクトロルミネッセンス化合物を使用することは周知である。アントラセン、チアジアゾール誘導体類、およびクマリン誘導体留意などの単純な有機分子は、エレクトロルミネッセンスを示すことが知られている。場合によっては、これらの小分子材料は、加工性および/または電子特性を改善するために、ホスト材料中のドーパントとして存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子デバイス用の新規な材料が引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
式I
【0007】
【化1】

【0008】
(式中:
1は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、およびシロキサンからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR1基が互いに連結して5または6員の脂肪族環を形成してもよく、
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり、
aは0〜6の整数であり;
bは0〜2の整数であり;
cは0〜3の整数である)
で表されるクリセン誘導体を提供する。
【0009】
(a)前述の式Iで表されるホスト材料と、(b)380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性ドーパントとを含む電気活性組成物をさらに提供する。
【0010】
2つの電気接触層とそれらの間の有機電気活性層とを含む有機電子デバイスであって、電気活性層が前述の電気活性組成物を含む有機電子デバイスをさらに提供する。
【0011】
以上の概要および以下の詳細な説明は、単に例示的および説明的なものであり、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものではない。
【0012】
本明細書において提示される概念の理解を進めるために、添付の図面において実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】有機電子デバイスの一例の図である。
【0014】
当業者であれば理解しているように、図面中の物体は、平易かつ明快にするために示されており、必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。たとえば、実施形態を理解しやすいようにするために、図面中の一部の物体の寸法が他の物体よりも誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
多数の態様および実施形態を以上に説明しているが、これらは単に例示的で非限定的なものである。本明細書を読めば、本発明の範囲から逸脱しない他の態様および実施形態が実現可能であることが、当業者には分かるであろう。
【0016】
いずれか1つ以上の実施形態のその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。この詳細な説明では、最初に、用語の定義および説明を扱い、続いて、クリセン誘導体材料、電気活性組成物、有機電子デバイスを扱い、最後に実施例を扱う。
【0017】
1.用語の定義および説明
以下に説明する実施形態の詳細を扱う前に、一部の用語について定義または説明を行う。
【0018】
デバイス中の層に言及するために使用される場合、語句「隣接する」は、ある層が別の層のすぐ隣にあることを必ずしも意味するものではない。他方で、語句「隣接するR基」は、化学式中で互いに隣同士であるR基を意味するために使用される。したがって、隣接するR基は、1つの結合によって連結した原子上にあり、たとえば
【0019】
【化2】

【0020】
である。
【0021】
用語「脂肪族環」は、非局在化π電子を有さない環状基を意味することを意図している。ある実施形態においては、脂肪族環は不飽和を有さない。ある実施形態においては、この環は1つの二重結合または三重結合を有する。
【0022】
用語「アルキル」は、1つの結合点を有する脂肪族炭化水素から誘導される基を意味することを意図しており、線状、分岐、または環状の基が含まれる。この用語は、ヘテロアルキル類を含むことを意図している。用語「アルキレン」は、脂肪族炭化水素から誘導され2つ以上の結合点を有する基を意味することを意図している。ある実施形態においては、アルキル基は1〜20個の炭素原子を有する。
【0023】
用語「アリール」は、1つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。この用語は、1つの環を有する基と、単結合によって連結したり互いに縮合したりする場合がある複数の環を有する基とを含んでいる。この用語は、ヘテロアリールを含むことを意図している。用語「アリーレン」は、2つの結合点を有する芳香族炭化水素から誘導される基を意味することを意図している。ある実施形態においては、アリール基は3〜60個の炭素原子を有する。
【0024】
用語「青色発光材料」は、約400〜480nmの範囲内の波長において発光極大を有する放射線を発することができる材料を意味することを意図している。
【0025】
用語「分岐アルキル」は、少なくとも1つの第2級または第3級炭素を有するアルキル基を意味する。用語「第2級アルキル」は、第2級炭素原子を有する分岐アルキル基を意味する。用語「第3級アルキル」は、第3級炭素原子を有する分岐アルキル基を意味する。ある実施形態においては、分岐アルキル基は、第2級または第3級炭素を介して結合する。
【0026】
用語「化合物」は、分子から構成される非帯電物質であって、これらの分子は原子をさらに含み、これらの原子は物理的手段によって分離することができない、物質を意味することを意図している。
【0027】
用語「重水素化された」は、少なくとも1つの利用可能なHがDで置換されていることを意味することを意図している。用語「重水素化類似体」は、1つ以上の利用可能な水素が重水素で置換されている化合物または基の構造類似体を意味する。重水素化化合物または重水素化類似体中、重水素は、天然存在量の少なくとも100倍で存在する。
【0028】
用語「ドーパント」は、ホスト材料を含む層中で、その層の電子的特性、あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの目標波長を、そのような材料を含まない層の電子的特性、あるいは放射線の放出、受容、またはフィルタリングの波長に対して変化させる材料を意味することを意図している。
【0029】
層または材料に関して言及される場合の用語「電気活性」は、デバイスの動作を電子的に促進する層または材料を示すことを意図している。電気活性材料の例としては、電荷を伝導、注入、輸送、または遮断する材料であって、電荷が電子または正孔のいずれであってもよい材料、あるいは放射線を受けたときに放射線を放出する、または電子−正孔対の濃度変化を示す材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。不活性材料の例としては、平坦化材料、絶縁材料、および環境障壁材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
用語「エレクトロルミネッセンス」は、電流の通過に応答した材料からの発光を意味する。「エレクトロルミネッセンスの」は、エレクトロルミネッセンスが可能な材料を意味する。
【0031】
用語「発光極大」は、発せられる放射線の最高強度を意味することを意図している。発光極大は、対応する波長を有する。
【0032】
接頭語「フルオロ」は、1つ以上の利用可能な水素原子がフッ素原子で置き換えられていることを示すことを意図している。
【0033】
用語「緑色発光材料」は、約480〜600nmの範囲内の波長において発光極大を有する放射線を発することができる材料を意味することを意図している。
【0034】
接頭語「ヘテロ」は、1つ以上の炭素原子が異なる原子で置換されていることを示している。ある実施形態においては、この異なる原子はN、O、またはSである。
【0035】
用語「ホスト材料」は、ドーパントが加えられる材料を意味することを意図している。ホスト材料は、電子的特性、あるいは放射線を放出、受容、またはフィルタリングする能力を有する場合もあるし、有さない場合もある。ある実施形態においては、ホスト材料はより高濃度で存在する。
【0036】
用語「層」は、用語「膜」と同義的に使用され、所望の領域を覆うコーティングを意味する。この用語は大きさによって限定されることはない。この領域は、デバイス全体の大きさであってもよいし、実際の視覚的表示などの特定の機能領域の小ささ、または1つのサブピクセルの小ささであってもよい。層および膜は、気相堆積、液相堆積(連続的技術および不連続な技術)、および熱転写などの従来のあらゆる堆積技術によって形成することができる。連続堆積技術としては、スピンコーティング、グラビアコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、スプレーコーティング、および連続ノズルコーティングが挙げられるが、これらに限定されるものではない。不連続堆積技術としては、インクジェット印刷、グラビア印刷、およびスクリーン印刷が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
用語「有機電子デバイス」または場合により単に「電子デバイス」は、1つ以上の有機半導体層または材料を含むデバイスを意味することを意図している。
【0038】
用語「赤色発光材料」は、約600〜700nmの範囲内の波長において発光極大を有する放射線を発することができる材料を意味することを意図している。
【0039】
用語「シロキサン」は、基(RO)3Si−(式中、Rは、H、D、C1〜20アルキル、またはフルオロアルキルである)を意味する。
【0040】
用語「シリル」は、基R3Si−(式中、Rは、H、D、C1〜20アルキル、フルオロアルキル、またはアリールである)を意味する。ある実施形態においては、Rアルキル基中の1つ以上の炭素がSiで置換されている。ある実施形態においては、シリル基は、(ヘキシル)2Si(CH3)CH2CH2Si(CH32−および[CF3(CF26CH2CH22Si(CH3)−である。
【0041】
すべての基は、非置換の場合も置換されている場合もある。ある実施形態においては、置換基は、D、ハライド、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、およびフルオロアルキルからなる群から選択される。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなること」、「含む」、「含むこと」、「有する」、「有すること」、またはそれらの他のあらゆる変形は、非排他的な包含を扱うことを意図している。たとえば、ある一連の要素を含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されるわけではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に関して明示されず固有のものでもない他の要素を含むことができる。さらに、反対の意味で明記されない限り、「または」は、包含的なまたはを意味するのであって、排他的なまたはを意味するのではない。たとえば、条件AまたはBが満たされるのは、Aが真であり(または存在し)Bが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在せず)Bが真である(または存在する)、ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)のいずれか1つによってである。
【0043】
また、本明細書に記載される要素および成分を説明するために「a」または「an」が使用される。これは単に便宜的なものであり、本発明の範囲の一般的な意味を提供するために行われている。この記述は、1つまたは少なくとも1つを含むものと読むべきであり、明らかに他の意味となる場合を除けば、単数形は複数形をも含んでいる。
【0044】
元素周期表中の縦列に対応する族の番号は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,81st Edition(2000−2001)に見ることができる「新表記法」(New Notation)の規則を使用している。
【0045】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および材料を使用して、本発明の実施形態の実施または試験を行うことができるが、好適な方法および材料について以下に説明する。本明細書において言及されるあらゆる刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、特定の節が引用される場合を除けば、それらの記載内容全体が援用される矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。さらに、材料、方法、および実施例は、単に説明的なものであって、限定を意図したものではない。
【0046】
本明細書に記載されていない程度の、具体的な材料、処理行為、および回路に関する多くの詳細は従来通りであり、それらについては、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光電池、および半導体要素の技術分野の教科書およびその他の情報源中に見ることができる。
【0047】
2.クリセン誘導体材料
本発明のクリセン誘導体材料は式I
【0048】
【化3】

【0049】
(式中:
1は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、およびシロキサンからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR1基が互いに結合して5または6員の脂肪族環を形成してもよく、
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり、
aは0〜6の整数であり;
bは0〜2の整数であり;
cは0〜3の整数である)
で表される。
【0050】
ある実施形態においては、R1がDであり、a、b、およびcの少なくとも1つが0を超える。ある実施形態においては、R1がDであり、a、b、およびcのすべてが0を超える。ある実施形態においては、R1がDであり、a=5〜6、b=1〜2、およびc=2〜3である。
【0051】
ある実施形態においては、少なくとも1つのR1は分岐アルキル基である。ある実施形態においては、この分岐アルキル基は2−プロピル基またはt−ブチル基である。
【0052】
ある実施形態においては、Ar1およびAr2は、D、アルキル、シリル、フェニル、ナフチル、N−カルバゾリル、およびフルオレニルからなる群から選択される置換基を有するフェニル基である。
【0053】
ある実施形態においては、Ar1およびAr2は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、4−ナフチルフェニル、4−フェナントリルフェニルからなる群から選択され、上記の基はいずれも、D、アルキル基、シリル基、およびフェニル、ならびに式II:
【0054】
【化4】

【0055】
(式中:
2は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、H、D、アルキル、アルコキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR2基が互いに連結して芳香族環を形成してもよく;
mは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数である)
で表される基からなる群から選択される1つ以上の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0056】
ある実施形態においては、Ar1およびAr2は、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、4−ナフチルフェニル、4−フェナントリルフェニルからなる群から選択され、上記の基はいずれも、D、アルキル基、シリル基、フェニル、および式III:
【0057】
【化5】

【0058】
(式中、R2およびmは、式IIに関する前出の定義の通りである)
で表される基からなる群から選択される1つ以上の置換基でさらに置換されていてもよい。ある実施形態においては、mは1〜3の整数である。
【0059】
本明細書において使用される場合、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、4−ナフチルフェニル、4−フェナントリルフェニル、およびN−カルバゾリルフェニルという用語は、以下の置換基を意味し、式中の破線は窒素に結合可能な箇所を示している:
ビフェニル:
【0060】
【化6】

【0061】
ナフチル:
【0062】
【化7】

【0063】
フェナントリル:
【0064】
【化8】

【0065】
4−ナフチルフェニル:
【0066】
【化9】

【0067】
4−フェナントリルフェニル:
【0068】
【化10】

【0069】
N−カルバゾリルフェニル」は基
【0070】
【化11】

【0071】
を意味する。上記の基はいずれも、D、アルキル、シリル、またはフェニル基でさらに置換されていてもよい。
【0072】
ある実施形態においては、Ar1およびAr2は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチルフェニル、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される。ある実施形態においては、Ar1≠Ar2である。
【0073】
ある実施形態においては、本発明のクリセン化合物は、以下の化合物C1からC5から選択される。
【0074】
【化12】

【0075】
【化13】

【0076】
本発明のクリセン誘導体は、周知のカップリング反応および置換反応によって調製することができる。代表的な調製を実施例において示している。
【0077】
3.電気活性組成物
電子デバイス中には、エレクトロルミネッセンス材料を含む電気活性組成物が存在する。エレクトロルミネッセンス材料は、多くの場合、ホスト材料中のドーパントとして存在する。特にリン光性金属錯体発光体の場合に、ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェノレートアルミニウム(BAlq)などのアルミニウムキノリン錯体が、ホスト材料として使用されることが多い。しかし、BAlq化合物は、空気および水分による影響を受けやすい。Ga−キノリン錯体などの可能性のある代替物は、より良好な空気および水分安定性を有するが、デバイス性能はより低くなる。したがって、より良いホストが必要である。
【0078】
本発明者らは、式Iのクリセン誘導体化合物が、大きな三重項エネルギーを有し、したがってリン光発光材料および蛍光発光材料の両方のホスト材料として好適であることを発見した。ある実施形態においては、第1のホスト材料は、三重項エネルギー準位が2.0eVを超える。これは、発光の消光を防止するためにドーパントがリン光材料である場合に特に有用となる。三重項エネルギーは、先験的に計算したり、あるいはパルス放射線分解または低温ルミネセンス分光法に測定したりすることができる。
【0079】
さらに、本明細書に記載のクリセン誘導体材料は、空気に対して安定であり、水分不感受性である。最長20時間空気に曝露した溶液は、効率および寿命に関して、空気に曝露していない溶液と同じ性能が得られることが分かっている。
【0080】
さらに、本明細書に記載のクリセン誘導体材料は、溶液処理用の液体組成物中に使用可能となるのに十分高いガラス転移温度(「Tg」)を有する。ある実施形態においては、Tgは95℃を超える。Tgが高いと、平滑で堅牢な膜を形成することができる。通常Tgが測定される方法は主として2つ存在し:示差走査熱量測定(「DSC」)、および熱機械分析(「TMA」)である。ある実施形態においては、TgはDSCによって測定される。ある実施形態においては、Tgは100℃〜150℃の間である。
【0081】
クリセン誘導体材料の処理溶媒に対する溶解性は、溶液処理の要求を満たすように調節することができることにも留意されたい。ある実施形態においては、クリセン誘導体のトルエンおよびアニソールに対する溶解性は、溶媒1ml当たり20mgを超える。溶解性が高いことで、電気活性デバイスのより良好な溶液処理が可能となる。
【0082】
ある電気活性組成物は、(a)式I
【0083】
【化14】

【0084】
(式中:
1は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、およびシロキサンからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR1基が互いに連結して5または6員の脂肪族環を形成してもよく、
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり、
aは0〜6の整数であり;
bは0〜2の整数であり;
cは0〜3の整数である)
で表されるホスト材料と;
(b)380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性ドーパントとを含む。
【0085】
ある実施形態においては、第2のホスト材料が存在する。ある実施形態においては、第2のホスト材料は、フェナントロリン類、キノキサリン類、フェニルピリジン類、ベンゾジフラン類、および金属キノリネート錯体類からなる群から選択される。
【0086】
ある実施形態においては、2種類以上のドーパントが存在する。
【0087】
ある実施形態においては、電気活性組成物は、(a)式Iで表されるホスト材料と、(b)380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性ドーパントとから実質的になる。
【0088】
ある実施形態においては、電気活性組成物は、(a)式Iで表されるホスト材料と、(b)380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性ドーパントと、(c)第2のホスト材料とから実質的になる。
【0089】
電気活性組成物中に存在するドーパントの量は、一般に、組成物の全重量を基準にして3〜20重量%の範囲内であり、ある実施形態においては5〜15重量%の範囲内である。第2のホストが存在する場合、第1のホスト対第2のホストの比は、一般に1:20〜20:1の範囲内であり、ある実施形態においては5:15〜15:5の範囲内である。ある実施形態においては、式Iで表される第1のホスト材料は、全ホスト材料の少なくとも50重量%であり、ある実施形態においては少なくとも70重量%である。
【0090】
a.ドーパント材料
本発明のドーパントは、380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性材料である。ある実施形態においては、ドーパントは、赤色、緑色、または青色の光を発する。
【0091】
赤色発光材料の例としては、フェニルキノリン配位子またはフェニルイソキノリン配位子を有するIrのシクロメタレート化錯体、ペリフランテン類、フルオランテン類、およびペリレン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。赤色発光材料は、たとえば、米国特許第6,875,524号明細書、および米国特許出願公開第2005−0158577号明細書に開示されている。
【0092】
緑色発光材料の例としては、ビス(ジアリールアミノ)アントラセン類、およびポリフェニレンビニレンポリマー類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。緑色発光材料は、たとえば、国際公開第2007/021117号パンフレットに開示されている。
【0093】
青色発光材料の例としては、ジアリールアントラセン類、ジアミノクリセン類、ジアミノピレン類、およびポリフルオレンポリマー類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。青色発光材料は、たとえば、米国特許第6,875,524号明細書、ならびに米国特許出願公開第2007−0292713号明細書および第2007−0063638号明細書に開示されている。
【0094】
ある実施形態においては、ドーパントは有機金属錯体である。ある実施形態においては、ドーパントは、イリジウムまたは白金のシクロメタレート化錯体である。このような材料は、たとえば、米国特許第6,670,645号明細書、ならびに国際公開第03/063555号パンフレット、国際公開第2004/016710号パンフレット、および国際公開第03/040257号パンフレットに開示されている。
【0095】
ある実施形態においては、ドーパントは、式Ir(L1)a(L2)b(L3)c
(式中、
L1は、炭素および窒素を介して配位するモノアニオン性二座シクロメタレート化配位子であり;
L2は、炭素を介しては配位しないモノアニオン性二座配位子であり;
L3は単座配位子であり;
aは1〜3であり;
bおよびcは独立して0〜2であり;
a、b、およびcは、イリジウムが六配位となり、錯体が電気的に中性となるように選択される)
で表される錯体である。この式の一部の例としては、Ir(L1)3;Ir(L1)2(L2);およびIr(L1)2(L3)(L3’)(式中、L3は陰イオン性であり、L3’は非イオン性である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
L1配位子の例としては、フェニルピリジン類、フェニルキノリン類、フェニルピリミジン類、フェニルピラゾール類、チエニルピリジン類、チエニルキノリン類、およびチエニルピリミジン類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書において使用される場合、特に明記しない限り、用語「キノリン類」は「イソキノリン類」を含んでいる。フッ素化誘導体は、1つ以上のフッ素置換基を有することができる。ある実施形態においては、配位子の非窒素環上に1〜3個のフッ素置換基が存在する。
【0097】
モノアニオン性二座配位子L2は、金属配位化学の分野においては周知である。一般に、これらの配位子は、N、O、P、またはSを配位原子として有し、イリジウムに配位すると5または6員環を形成する。好適な配位基としては、アミノ、イミノ、アミド、アルコキシド、カルボキシレート、ホスフィノ、チオレートなどが挙げられる。これらの配位子の好適な親化合物の例としては、β−ジカルボニル類(β−エノラート配位子)、ならびにそれらのNおよびS類似体;アミノカルボン酸類(アミノカルボキシレート配位子);ピリジンカルボン酸類(イミノカルボキシレート配位子);サリチル酸誘導体類(サリチレート配位子);ヒドロキシキノリン類(ヒドロキシキノリネート配位子)およびそれらのS類似体;ならびにホスフィノアルカノール類(ホスフィノアルコキシド配位子)が挙げられる。
【0098】
単座配位子L3は、アニオン性または非イオン性であってよい。アニオン性配位子としては、H-(「水素化物」)、ならびに配位原子としてC、O、またはSを有する配位子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。配位基としては、アルコキシド、カルボキシレート、チオカルボキシレート、ジチオカルボキシレート、スルホネート、チオレート、カルバメート、ジチオカルバメート、チオカルバゾン陰イオン、スルホンアミド陰イオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。場合によっては、β−エノラート類およびホスフィノアルコキシド類などのL2として前述した配位子が、単座配位子として機能する場合がある。単座配位子は、ハライド、シアニド、イソシアニド、ニトレート、サルフェート、ヘキサハロアンチモネートなどの配位陰イオンであってもよい。これらの配位子は一般に市販されている。
【0099】
単座L3配位子は、COまたは単座ホスフィン配位子などの非イオン性配位子であってもよい。
【0100】
ある実施形態においては、1つ以上の配位子は、Fおよびフッ素化アルキルからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する。
【0101】
イリジウム錯体ドーパントは、たとえば、米国特許第6,670,645号明細書に記載されるような標準的合成技術を使用して調製することができる。
【0102】
ある実施形態においては、ドーパントは赤色発光材料である。赤色ドーパントの一部の非限定的な例は以下の化合物D1からD7である。
【0103】
【化15】

【0104】
【化16】

【0105】
【化17】

【0106】
ある実施形態においては、ドーパントは有機化合物である。ある実施形態においては、ドーパントは、非ポリマーのスピロビフルオレン化合物およびフルオランテン化合物からなる群から選択される。
【0107】
ある実施形態においては、ドーパントは、アリールアミン基を有する化合物である。ある実施形態においては、エレクトロルミネッセンスドーパント(electroluminescentdopant)は以下の式:
【0108】
【化18】

【0109】
(式中:
Aは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Qは、単結合、または3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
nおよびmは独立して、1〜6の整数である)
から選択される。
【0110】
上記式のある実施形態においては、各式中のAおよびQの少なくとも1つが少なくとも3つの縮合環を有する。ある実施形態においては、mおよびnは1である。
【0111】
ある実施形態においては、Qは、スチリル基またはスチリルフェニル基である。
【0112】
ある実施形態においては、Qは、少なくとも2つの縮合環を有する芳香族基である。ある実施形態においては、Qは、ナフタレン、アントラセン、クリセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、およびルブレンからなる群から選択される。
【0113】
ある実施形態においては、Aは、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、ナフチル基、ナフチルフェニル基、およびアントラセニル基からなる群から選択される。
【0114】
ある実施形態においては、ドーパントは以下の式:
【0115】
【化19】

【0116】
(式中:
Yは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Q’は、芳香族基、二価のトリフェニルアミン残基、または単結合である)
で表される。
【0117】
ある実施形態においては、ドーパントはアリールアセンである。ある実施形態においては、ドーパントは非対称アリールアセンである。
【0118】
ある実施形態においては、ドーパントは式IV:
【0119】
【化20】

【0120】
(式中:
3は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、およびアリールからなる群から選択され、隣接するR3基は、互いに連結して5または6員の脂肪族環を形成することができ;
Ar3からAr6は、同じまたは異なるものであって、アリール基からなる群から選択され;
dは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜4の整数である)
で表されるアントラセン誘導体である;および
【0121】
ある実施形態においては、ドーパントは式V:
【0122】
【化21】

【0123】
(式中:
3は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシアリール、フルオロ、シアノ、ニトロ、−SO24からなる群から選択され、R4は、アルキルまたはパーフルオロアルキルであり、隣接するR3基は、互いに連結して5または6員の脂肪族環を形成することができ;
Ar3からAr6は、同じまたは異なるものであって、アリール基からなる群から選択され;
eは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、0〜5の整数である)
で表されるクリセン誘導体である。
【0124】
ある実施形態においては、ドーパントは緑色発光材料である。緑色ドーパントの一部の非限定的な例は、以下に示す化合物D8からD13である。
【0125】
【化22】

【0126】
【化23】

【0127】
【化24】

【0128】
【化25】

【0129】
ある実施形態においては、エレクトロルミネッセンスドーパントは青色発光材料である。青色ドーパントの一部の非限定的な例は、以下に示す化合物D14からD18である。
【0130】
【化26】

【0131】
【化27】

【0132】
【化28】

【0133】
4.電子デバイス
本明細書に記載のクリセン誘導体材料を含む1つ以上の層を有することが有益となり得る有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(たとえば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、点灯装置、照明器具、またはダイオードレーザー)、(2)電子的過程を介して信号を検出するデバイス(たとえば、光検出器、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、光電管、IR検出器、バイオセンサー)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(たとえば、光起電力デバイスまたは太陽電池)、ならびに(4)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品(たとえば、トランジスタまたはダイオード)を含むデバイスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
有機電子デバイス構造の一例を図1に示している。デバイス100は、第1の電気接触層であるアノード層110、および第2の電気接触層であるカソード層160、およびそれらの間の電気活性層140を有する。アノードに隣接して、正孔注入層120が存在し、これは場合により緩衝層と呼ばれる。正孔注入層に隣接して、正孔輸送材料を含む正孔輸送層130が存在する。カソードに隣接して、電子輸送材料を含む電子輸送層150が存在することができる。選択肢の1つとして、デバイスは、アノード110の隣に1つ以上の追加の正孔注入層または正孔輸送層(図示せず)、および/またはカソード160の隣に1つ以上の追加の電子注入層または電子輸送層(図示せず)を使用することができる。
【0135】
層120から150は、個別におよび集合的に活性層と呼ばれる。
【0136】
一実施形態においては、種々の層は以下の範囲の厚さを有する:アノード110、500〜5000Å、一実施形態においては1000〜2000Å;正孔注入層120、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;正孔輸送層130、50〜2000Å、一実施形態においては200〜1000Å;電気活性層140、10〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;電子輸送層150、50〜2000Å、一実施形態においては100〜1000Å;カソード160、200〜10000Å、一実施形態においては300〜5000Å。デバイス中の電子−正孔再結合領域の位置、したがってデバイスの発光スペクトルは、各層の相対厚さによって影響されうる。層の厚さの望ましい比は、使用される材料の厳密な性質に依存する。
【0137】
デバイス100の用途に依存して、電気活性層140は、印加電圧によって活性化する発光層(発光ダイオード中または発光電気化学セル中など)、放射エネルギーに応答し、バイアス電圧の印加を使用してまたは使用せずに信号を発生する材料層(光検出器中またはバイオセンサー中など)であってよい。光検出器の例としては、光導電セル、フォトレジスタ、光スイッチ、光トランジスタ、および光電管、ならびに光起電力セルが挙げられ、これらの用語はMarkus,John,Electronics and Nucleonics Dictionary,470 and 476(McGraw−Hill,Inc.1966)に記載されている。バイオセンサーの例としては、出入りする赤色光強度を測定することによってヘモグロビンに結合した酸素の変化を検出するパルス酸素濃度計が挙げられる。
【0138】
本明細書に記載の電気活性組成物は、電気活性層140として有用である。デバイス中の他の層は、そのような層中で有用となることが知られているあらゆる材料でできていてよい。
【0139】
アノード110は、正電荷キャリアの注入に特に有効な電極である。アノードは、たとえば金属、混合金属、合金、金属酸化物、または混合金属酸化物を含有する材料でできていてもよいし、導電性ポリマー、およびそれらの混合物であってもよい。好適な金属としては、11族金属、4〜6族の金属、および8〜10族の遷移金属が挙げられる。アノードが光透過性となるべき場合には、インジウムスズ酸化物などの12族、13族、および14族の金属の混合金属酸化物が一般に使用される。アノード110は、”Flexible light−emitting diodes made from soluble conducting polymer”,Nature vol.357,pp 477−479(11 June 1992)に記載されるようなポリアニリンなどの有機材料を含むこともできる。アノードおよびカソードの少なくとも1つは、発生した光を観察できるように、少なくとも部分的に透明となるべきである。
【0140】
正孔注入層120は、正孔注入材料を含み、限定するものではないが、下にある層の平坦化、電荷輸送および/または電荷注入特性、酸素または金属イオンなどの不純物の捕捉、ならびに有機電子デバイスの性能を促進または改善する他の特徴などの、1つまたは複数の機能を有機電子デバイス中で有することができる。正孔注入材料は、ポリマー、オリゴマー、または小分子であってよい。これらは、気相堆積することもできるし、溶液、分散体、懸濁液、エマルジョン、コロイド混合物、またはその他の組成物の形態であってよい液体から堆積することもできる。
【0141】
正孔注入層は、プロトン酸がドープされることが多いポリアニリン(PANI)またはポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)などのポリマー材料を使用して形成することができる。プロトン酸は、たとえば、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)などであってよい。正孔注入層は、銅フタロシアニンやテトラチアフルバレン−テトラシアノキノジメタン系(TTF−TCNQ)などの電荷輸送化合物などを含むことができる。ある実施形態においては、正孔注入層は、少なくとも1つの導電性ポリマーおよび少なくとも1つのフッ素化酸ポリマーを含む。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004−0102577号明細書、第2004−0127637号明細書、および第2005/205860号明細書に記載されている。
【0142】
層130は正孔輸送材料を含む。正孔輸送層の正孔輸送材料の例は、たとえば、Y.WangによりKirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Vol.18,p.837−860,1996にまとめられている。正孔輸送小分子および正孔輸送ポリマーの両方を使用することができる。一般に使用される正孔輸送分子としては:4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(TDATA);4,4’,4”−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(MTDATA);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD);4、4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル(CBP);1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP);1,1−ビス[(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC);N,N’−ビス(4−メチルフェニル)−N,N’−ビス(4−エチルフェニル)−[1,1’−(3,3’−ジメチル)ビフェニル]−4,4’−ジアミン(ETPD);テトラキス−(3−メチルフェニル)−N,N,N’,N’−2,5−フェニレンジアミン(PDA);α−フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン(TPS);p−(ジエチルアミノ)−ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);トリフェニルアミン(TPA);ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)メタン(MPMP);1−フェニル−3−[p−(ジエチルアミノ)スチリル]−5−[p−(ジエチルアミノ)フェニル]ピラゾリン(PPRまたはDEASP);1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン(DCZB);N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TTB);N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス−(フェニル)ベンジジン(α−NPB);および銅フタロシアニンなどのポルフィリン系化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般に使用される正孔輸送ポリマーは、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)−ポリシラン、およびポリアニリンである。ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのポリマー中に、上述のものなどの正孔輸送分子をドープすることによって、正孔輸送ポリマーを得ることもできる。場合によっては、トリアリールアミンポリマー類、特にトリアリールアミン−フルオレンコポリマー類が使用される。場合によっては、これらのポリマー類およびコポリマー類は架橋性である。架橋性正孔輸送ポリマーの例は、たとえば、米国特許出願公開第2005−0184287号明細書および国際公開第2005/052027号パンフレットに見ることができる。ある実施形態においては、正孔輸送層は、テトラフルオロテトラシアノキノジメタンおよびペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸−3,4,9,10−二無水物などのp−ドーパントでドープされる。
【0143】
層140は、本明細書に記載の新規な電気活性組成物を含む。ある実施形態においては、1種類以上の追加のホスト材料が存在する。ある実施形態においては、1種類以上の追加のドーパント材料が存在する。ある実施形態においては、層140は、(a)式Iで表されるホスト材料と(b)380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性ドーパントとから実質的になる。ある実施形態においては、層140は、(a)式Iで表されるホスト材料と、(b)380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性ドーパントと、(c)第2のホスト材料とから実質的になる。ある実施形態においては、第2のホスト材料は、フェナントロリン類、キノキサリン類、フェニルピリジン類、ベンゾジフラン類、および金属キノリネート錯体類からなる群から選択される。
【0144】
層150は、電子輸送を促進するため、層界面における励起子の消光を防止する正孔注入層または閉じ込め層としての機能との両方で機能することができる。好ましくは、この層は、電子移動を促進し、励起子の消光を減少させる。層150中に使用することができる電子輸送材料の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(AlQ)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、テトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ハフニウム(HfQ)、およびテトラキス−(8−ヒドロキシキノラト)ジルコニウム(ZrQ)などの金属キノレート誘導体類などの金属キレート化オキシノイド化合物類;ならびに2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、および1,3,5−トリ(フェニル−2−ベンゾイミダゾール)ベンゼン(TPBI)などのアゾール化合物類;2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリンなどのキノキサリン誘導体類;4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DPA)および2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(DDPA)などのフェナントロリン類;ならびにそれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、電子輸送材料は、金属キノレート類およびフェナントロリン誘導体類からなる群から選択される。ある実施形態においては、電子輸送層はn−ドーパントをさらに含む。n−ドーパント材料は周知である。n−ドーパントとしては、1族および2族金属;LiF、CsF、およびCs2CO3などの1族および2族金属の塩;Liキノレートなどの1族および2族金属の有機化合物;ならびにロイコ染料などの分子n−ドーパント、W2(hpp)4(式中、hpp=1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−2H−ピリミド−[1,2−a]−ピリミジンである)およびコバルトセンなどの金属錯体、テトラチアナフタセン、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン、複素環式ラジカルまたはジラジカル、ならびに複素環式ラジカルまたはジラジカルのダイマー、オリゴマー、ポリマー、ジスピロ化合物、および多環式化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
カソード160は、電子または負電荷キャリアの注入に特に効率的な電極である。カソードは、アノードよりも低い仕事関数を有するあらゆる金属または非金属であってよい。カソードの材料は、1族のアルカリ金属(たとえば、Li、Cs)、2族(アルカリ土類)金属、12族金属、たとえば希土類元素およびランタニド、ならびにアクチニドから選択することができる。アルミニウム、インジウム、カルシウム、バリウム、サマリウム、およびマグネシウム、ならびにそれらの組み合わせなどの材料を使用することができる。動作電圧を低下させるために、Li含有有機金属化合物、LiF、Li2O、Cs含有有機金属化合物、CsF、Cs2O、およびCs2CO3を有機層とカソード層との間に堆積することもできる。
【0146】
有機電子デバイス中に他の層を有することが知られている。たとえば、注入される正電荷量を制御するため、および/または層のバンドギャップの整合性を得るため、あるいは保護層として機能させるために、アノード110および正孔注入層120との間に層(図示せず)が存在してもよい。銅フタロシアニン、オキシ窒化ケイ素、フルオロカーボン類、シラン類、またはPtなどの金属の超薄層などの、当技術分野において周知の層を使用することができる。あるいは、アノード層110、活性層120、130、140、および150、あるいはカソード層160の一部またはすべては、電荷キャリア輸送効率を増加させるために表面処理を行うことができる。各構成層の材料の選択は、好ましくは、高いエレクトロルミネッセンス効率を有するデバイスを得るために発光層中の正電荷および負電荷の釣り合いを取ることによって決定される。
【0147】
各機能層は2つ以上の層で構成されてよいことを理解されたい。
【0148】
本発明のデバイス層は、気相堆積、液相堆積、および熱転写などのあらゆる堆積技術または技術の組み合わせによって形成することができる。ガラス、プラスチック、および金属などの基体を使用することができる。熱蒸着、化学蒸着などの従来の気相堆積技術を使用することができる。有機層は、限定するものではないが、スピンコーティング、浸漬コーティング、ロール・トゥ・ロール技術、インクジェット印刷、連続ノズル印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷などの従来のコーティングまたは印刷技術を使用して、好適な溶媒中の溶液または分散体から塗布することができる。
【0149】
ある実施形態においては、デバイスは、正孔注入層、正孔輸送層、およびエレクトロルミネッセンス層(electroluminescentlayer)の液相堆積と、アノード、電子輸送層、電子注入層、およびカソードの気相堆積とによって製造される。
【0150】
本明細書に記載の電気活性組成物を使用して作製されたデバイスの効率は、デバイス中の別の層を最適化することによってさらに改善できることを理解されたい。たとえば、Ca、Ba、またはLiFなどのより効率的なカソードを使用することができる。動作電圧を下げたり量子効率を増加させたりする成形基体および新規な正孔輸送材料も利用可能である。種々の層のエネルギー準位を調整しエレクトロルミネッセンスを促進するために追加層を加えることもできる。
【実施例】
【0151】
本明細書に記載の概念を、以下の実施例においてさらに説明するが、これらの実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0152】
実施例1
この実施例では、化合物C1の調製を説明する。
【0153】
a.3−ブロモクリセンの調製
【0154】
【化29】

【0155】
(i)1−(4−ブロモスチリル)ナフタレンの調製
オーブンで乾燥させた2リットルの4口丸底フラスコに、磁気撹拌子、添加漏斗、温度計アダプタ、および窒素入口を取り付け、(1−ナプチルメチル)トリフェニルホスホニウムクロライド(49.87g、113.6mmol)および乾燥THF(970ml)を投入した。得られたスラリーを−5℃まで冷却し、添加漏斗を使用して25分かけてn−BuLi(50ml、125mmol、2.5M溶液)を加えた。残留するn−BuLiを10mLのTHFで添加漏斗から洗い出した。濃い暗赤色溶液が形成され、15分間撹拌を続けた。次に反応混合物を−75℃まで冷却し、乾燥THF(約75ml)中に溶解させた4−ブロモベンズアルデヒド(21.0g、113.6mmol)を30分かけて滴下しながら、−75℃に温度を維持した。残留するアルデヒドを20mLのTHFで添加漏斗から洗い出した。終夜撹拌しながら反応合物を冷却浴中に維持して段階的に室温まで温めた。翌日、水(30ml)で反応をクエンチし、揮発分をロータバップ(rotavap)上で除去した。残留物を500mlのヘキサン中で撹拌し、次に濾過した。固形分をヘキサンで洗浄した。濾液を濃縮すると粗生成物が得られ、これをカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中0〜100%のCH2Cl2)によって精製した。収量17.7g(50%)。構造を1H NMR分光法によって確認した。
【0156】
(ii)3−ブロモクリセンの調製
窒素入口および撹拌子を取り付けた1リットルの光化学容器中で1−(4−ブロモスチリル)ナフタレン(5.0g、16.2mmol)を乾燥トルエン(1L)中に溶解させた。乾燥プロピレンオキシドの入った瓶を氷水で冷却した後、100mlのエポキシドをシリンジで抜き取り、反応混合物に加えた。最後にヨウ素(4.2g、16.5mmol)を加えた。光化学容器の上部に冷却器を取り付け、ハロゲンランプ(Hanovia、450W)のスイッチを入れた。ヨウ素が反応混合物中に残存しないことを、ヨウ素の色が消失したことで明らかとなってから、ランプのスイッチを切ることで、反応を停止させた。この反応は2時間で完了した。トルエンおよび過剰のプロピレンオキシドを減圧下で除去すると、暗黄色固体が得られた。粗生成物をジエチルエーテルで洗浄すると、3.4g(68%)の3−ブロモクリセンがオフホワイト固体として得られた。構造を1H NMR分光法によって確認した。
【0157】
b.N−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−4−アミンの調製
【0158】
【化30】

【0159】
ドライボックス中で、4−アミノビフェニル(0.542g)および4−ブロモ−1,1’:3’,1’’−ターフェニル(0.89g)を丸底フラスコ中で混合し、10mlの乾燥トルエン中に溶解させた。トリス(tert−ブチル)ホスフィン(0.022g、0.11mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.05g、0.055mmol)を10mlの乾燥トルエン中に溶解させ、5分間撹拌した。この触媒溶液を上記反応混合物に加え、2分間撹拌し、続いてナトリウムtert−ブトキシド(0.32g、3.3mmol)を加えた。フラスコに蓋をして、ドライボックス中で室温において終夜撹拌を続けた。翌日、ドライボックスから反応混合物を取り出し、上部にセライトを有する1インチのシリカゲルプラグで濾過し、500mlのジクロロメタンで洗浄した。減圧下で揮発分を除去すると、黄色固体が得られた。粗生成物にジエチルエーテルを加えて粉砕することで精製して、0.85g(73%)の白色固体を得た。構造を1H NMR分光法によって確認した。
【0160】
c.C1の調製
【0161】
【化31】

【0162】
ドライボックス中で、N−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−4−アミン(2.02mmol)および3−ブロモクリセン(1.85mmol)を厚肉ガラス管中で混合し、20mlの乾燥トルエン中に溶解させた。トリス(tert−ブチル)ホスフィン(7.5mg、0.037mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(17mg、0.019mmol)を10mlの乾燥トルエン中に溶解させ、10分間撹拌した。この触媒溶液を上記反応混合物に加え、5分間撹拌し、続いてナトリウムtert−ブトキシド(0.194g、2.02mmol)および20mlの乾燥トルエンを加えた。さらに10分後、反応フラスコをドライボックスから取り出し、80℃の浴中に入れて終夜撹拌した。翌日、反応混合物を室温まで冷却し、2分の1インチのCeliteを上部に有する3インチのシリカゲルプラグで濾過し、400mlのクロロホルムで洗浄した。減圧下で揮発分を除去すると、黄色固体が得られた。粗生成物を、ヘキサン中のクロロホルムを使用したカラムクロマトグラフィーで精製した。1.05g(87.5%)の白色固体が得られた。1H NMR、質量分析、および液体クロマトグラフィーによって、生成物の同定および純度の確認を行った。この化合物の性質を表1中に示している。
【0163】
実施例2
この実施例では、化合物C3の調製を説明する。
【0164】
【化32】

【0165】
a.3−ブロモクリセンの調製
実施例1のパートaに記載の手順を使用して(1−ナプチルメチル)トリフェニルホスホニウムクロライドおよび4−ブロモベンズアルデヒドから3−ブロモクリセンを調製した。
【0166】
b.N−(ビフェニル−4−イル)−N−(4−tert−ブチルフェニル)クリセン−3−アミンである化合物C3の調製
ドライボックス中で、3−ブロモクリセン(0.869g、2.83mmol)およびN−(4−tert−ブチルフェニル)ビフェニル−4−アミン(0.9g、2.97mmol)を厚肉ガラス管中で混合し、20mlの乾燥o−キシレン中に溶解させた。トリス(tert−ブチル)ホスフィン(0.01g)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.023g)を10mlの乾燥o−キシレン中に溶解させ、10分間撹拌した。この触媒溶液を上記反応混合物に加え、5分間撹拌し、続いてナトリウムtert−ブトキシド(0.27g、2.83mmol)および25mlの乾燥o−キシレンを加えた。さらに10分後、反応フラスコをドライボックスから取り出し、窒素ラインに取り付けて、75℃において終夜撹拌した。翌日、反応混合物を室温まで冷却し、1インチのシリカゲルプラグおよび1インチのセライトで濾過し、ジクロロメタンで洗浄した。揮発分を減圧下で除去すると、固体が得られ、これにジエチルエーテルを加えて粉砕した。収量1.27g(85.2%)。化合物の同定を1H NMRによって行った。この化合物の性質を表1中に示している。
【0167】
類似の手順を使用して化合物C4およびC5を調製した。これらの化合物の性質を表1中に示している。
【0168】
実施例3
この実施例では、化合物C2の調製を説明する。
【0169】
a.パージュウテロ−3−ブロモクリセンの調製
【0170】
【化33】

【0171】
実施例1のパートaに記載の手順を使用して、(1−ナプチルメチル)トリフェニルホスホニウムクロライドおよび4−ブロモベンズアルデヒドから3−ブロモクリセンを調製した。
【0172】
グローブボックス中で、3−ブロモクリセン(2g、6.5mmol)をフラスコ中に入れ、100mlの乾燥C66中に溶解させた。次に三塩化アルミニウム(0.26g、1.95mmol)を加え、続いてさらに20mlのC66を加えた。反応混合物葉5分以内に暗色になり、30分間撹拌を続けた。混合物をD2O(20ml)でクエンチし、25分間撹拌し(暗色は消えた)、分液漏斗に移した。有機層を取り出し、水(2回)およびブライン(3回)で洗浄した。その有機相をMgSO4上で乾燥させ、次に濃縮して粗生成物を得て、これにジエチルエーテルを加えて粉砕した。1.8g(87%)の白色固体が得られた。内部標準に対して1H NMR分光法によって測定すると、この生成物は95.4%が重水素化されている。質量分析および液体クロマトグラフィーによって生成物の同定および純度の確認を行った。
【0173】
b.パージュウテロ−N−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−4−アミンの調製
【0174】
【化34】

【0175】
パージュウテロ−3−ブロモクリセンに介して前述した方法と同様にして4−ブロモビフェニルおよび4−ブロモ−1,1’:3’,1’’−ターフェニルの重水素化を行った。1H NMR分光法、質量分析および液体クロマトグラフィーによって、これらの生成物の同定および純度の確認を行った。
【0176】
(i)パージュウテロ−4−アミノビフェニルの調製
ドライボックス中で、[1,1’−ビフェニル]−2−イルジシクロヘキシルホスフィン(34.7mg、0.099mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(37.8mg、0.041mmol)、およびリチウムヘキサメチルジシラジド(1.66g、9.91mmol)を厚肉ガラス管中に入れた。パージュウテロ−4−ブロモビオフェニル(perdeutero−4−bromobiophenyl)を19mlのトルエン中に溶解させ、上記混合物に加えた。管を封止し、ドライボックスから取り出し、80℃で16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、80mlの1MのHCl水溶液でクエンチした。混合物を5分間撹拌した後、2MのNaOH水溶液でpH=11まで中和した。有機物をCH2Cl2(2×40ml)で抽出し、次にブライン(150ml)およびNa2SO4で乾燥させた。揮発分をロータバップ上で除去した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中70〜85%のCH2Cl2)で精製した。収量820mg(56%)。生成物は、内部標準に対して1H NMR分光法によって測定した重水素化度を維持していた。1H NMR分光法、質量分析、および液体クロマトグラフィーによって、生成物の同定および純度の確認を行った。
【0177】
(ii)パージュウテロ−N−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−4−アミンの調製
ドライボックス中で、パージュウテロ−4−アミノビフェニル(0.542g、3.04mmol)およびパージュウテロ−4−ブロモ−1,1’:3’,1’’−ターフェニル(0.89g、2.76mmol)を丸底フラスコ中で混合し、10mlの乾燥トルエン中に溶解させた。トリス(tert−ブチル)ホスフィン(0.022g、0.11mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.05g、0.055mmol)を10mlの乾燥トルエン中に溶解させ、5分間撹拌した。この触媒溶液を上記反応混合物に加え、2分間撹拌し、続いてナトリウムtert−ブトキシド(0.32g、3.3mmol)を加えた。フラスコに蓋をして、ドライボックス中で室温において終夜撹拌を続けた。翌日、反応混合物をドライボックスから取り出し、上部にセライトを有する1インチのシリカゲルプラグで濾過し、500mlのジクロロメタンで洗浄した。減圧下で揮発分を除去すると、黄色固体が得られた。粗生成物にジエチルエーテルを加えて粉砕することによって精製して、0.85g(73%)の白色固体を得た。内部標準に対して1H NMR分光法によって測定すると、生成物は80%重水素化されている。質量分析および液体クロマトグラフィーによって、生成物の同定および純度の確認を行った。
【0178】
c.パージュウテロ−N−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−N−([1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−4−イル)クリセン−3−アミンである化合物C2の調製
【0179】
【化35】

【0180】
ドライボックス中で、パージュウテロ−N−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−4−アミン(0.849g、2.02mmol)およびパージュウテロ−3−ブロモクリセン(0.59g、1.85mmol)を厚肉ガラス管中で混合し、20mlの乾燥トルエン中に溶解させた。トリス(tert−ブチル)ホスフィン(7.5mg、0.037mmol)およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(17mg、0.019mmol)を10mlの乾燥トルエン中に溶解させ、10分撹拌した。この触媒溶液を上記反応混合物に加え、5分間撹拌し、続いてナトリウムtert−ブトキシド(0.194g、2.02mmol)および20mlの乾燥トルエンを加えた。さらに10分後、反応フラスコをドライボックスから取り出し、80℃の浴中に入れて終夜撹拌した。翌日、反応混合物を室温まで冷却し、上部に2分の1インチのCeliteを有する3インチのシリカゲルプラグで濾過し、400mlのクロロホルムで洗浄した。減圧下で揮発分を除去すると、黄色固体が得られた。粗生成物を、ヘキサン中のクロロホルムを使用してカラムクロマトグラフィーによって精製した。1.05g(87.5%)の白色固体が得られた。質量分析および液体クロマトグラフィーによって、生成物の同定および純度の確認を行った。化合物C2の溶解特性は、表1に示す化合物C1の溶解特性と非常に類似している。
【0181】
【表1】

【0182】
実施例4および5
これらの実施例では、赤色ドーパント、式Iで示される第1のホスト、および第2のホスト材料を有する電気活性層を有するデバイスの製造および性能を示す。
【0183】
実施例4においては、第1のホストは化合物C1である。
【0184】
実施例5においては、第1のホストは化合物C2である。
【0185】
第2のホスト材料であるホスト2は、電子輸送特性を有するフェナントロリン誘導体であり、電子輸送材料としても使用された。その構造を以下に示す。
【0186】
【化36】

【0187】
デバイスは、ガラス基体上に以下の構造を有した:
インジウムスズ酸化物(ITO):50nm
正孔注入層=HIJ−1(50nm)、これは導電性ポリマーおよびポリマーフッ素化スルホン酸の水性分散体である。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2004/0102577号明細書、米国特許出願公開第2004/0127637号明細書、米国特許出願公開第2005/0205860号明細書、および国際公開第2009/018009号パンフレットに記載されている。
【0188】
正孔輸送層=HT−1(20nm)、これはトリアリールアミン含有コポリマーである。このような材料は、たとえば、国際公開第2009/067419号パンフレットに記載されている。
【0189】
エレクトロルミネッセンス層=67:25:8の重量比の第1のホスト:ホスト2:D7(75nm)
電子輸送層=ホスト2(10nm)
カソード=CsF/Al(0.7/100nm)
【0190】
OLEDデバイスは、溶液処理および熱蒸着技術との組み合わせによって製造した。Thin Film Devices,Incのパターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)がコーティングされたガラス基体を使用した。これらのITO基体は、30Ω/□のシート抵抗および80%の光透過率を有するITOがコーティングされたCorning 1737ガラスを主とするものである。これらのパターン化されたITO基体は、水性洗剤溶液中で超音波洗浄し、蒸留水ですすいだ。続いて、このパターン化されたITOを、アセトン中で超音波洗浄し、イソプロパノールですすぎ、窒素気流中で乾燥させた。
【0191】
デバイス製造の直前に、このパターン化されたITO基体を洗浄したものをUVオゾンで10分間処理した。冷却した直後に、HIJ−1の水性分散体をITO表面上にスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、次に基体に正孔輸送材料の溶液をスピンコーティングし、次に加熱して溶媒を除去した。冷却後、基体に電気活性層材料のトルエン溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基体をマスクし、真空チャンバーに入れた。電子輸送層を熱蒸着によって堆積し、続いてCsF層を堆積した。次に減圧下でマスクを交換し、Al層を熱蒸着によって堆積した。チャンバーに通気し、ガラス蓋、乾燥剤、およびUV硬化性エポキシを使用してデバイスを封入した。
【0192】
OLED試料の特性決定は、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネッセンス放射輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネッセンススペクトル対電圧を測定することによって行った。3つすべての測定を同時に行い、コンピュータで制御を行った。LEDのエレクトロルミネッセンス放射輝度を、デバイスを動作させるために必要な電流密度で割ることによって、ある電圧におけるデバイスの電流効率が求められる。この単位はcd/Aである。結果を以下の表2中に示す。
【0193】
【表2】

【0194】
実施例6および7
この実施例では、赤色ドーパント、式Iで表される第1のホスト、および第2のホスト材料を有するエレクトロルミネッセンス組成物の空気安定性および水分不感受性を示す。第2のホスト材料であるホスト3は、電子輸送特性を有するフェナントロリン誘導体である。その構造を以下に示す。
【0195】
【化37】

【0196】
実施例6および7のデバイスは、ホストおよびエレクトロルミネッセンスドーパントを含有する溶液の処理を除けば、同様に製造した。どちらの溶液も、トルエン中1.35重量%の固体を含有した。デバイス製造前に、実施例6の溶液は、アルゴンを満たしたグローブボックス中に終夜保管し、一方、実施例7の溶液は、周囲空気および湿度条件下で終夜保管した。
【0197】
デバイスは、ガラス基体上に以下の構造を有した:
インジウムスズ酸化物(ITO):80nm
正孔注入層=HIJ−1(65nm)
正孔輸送層=HT−2(20nm)、これはフルオレン−トリアリールアミンコポリマーである。このような材料は、たとえば、米国特許出願公開第2008−0071049号明細書に記載されている。
【0198】
電気活性層=75:17:8の重量比のC3:ホスト3:D7(50nm)
電子輸送層=2,4,7,9−テトラフェニルフェナントロリン(20nm)
カソード=CsF/Al(0.7/100nm)
【0199】
OLEDデバイスは、溶液処理および熱蒸着技術との組み合わせによって製造した。Thin Film Devices,Incのパターン化されたインジウムスズ酸化物(ITO)がコーティングされたガラス基体を使用した。これらのITO基体は、30Ω/□のシート抵抗および80%の光透過率を有するITOがコーティングされたCorning 1737ガラスを主とするものである。これらのパターン化されたITO基体は、水性洗剤溶液中で超音波洗浄し、蒸留水ですすいだ。続いて、このパターン化されたITOを、アセトン中で超音波洗浄し、イソプロパノールですすぎ、窒素気流中で乾燥させた。
【0200】
デバイス製造の直前に、このパターン化されたITO基体を洗浄したものをUVオゾンで10分間処理した。冷却した直後に、HIJ−1の水性分散体をITO表面上にスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。冷却後、次に基体に正孔輸送材料の溶液をスピンコーティングし、次に加熱して溶媒を除去した。冷却後、基体に前述の電気活性溶液をスピンコーティングし、加熱して溶媒を除去した。基体をマスクし、真空チャンバーに入れた。電子輸送層を熱蒸着によって堆積し、続いてCsF層を堆積した。次に減圧下でマスクを交換し、Al層を熱蒸着によって堆積した。チャンバーに通気し、ガラス蓋、乾燥剤、およびUV硬化性エポキシを使用してデバイスを封入した。
【0201】
OLED試料の特性決定は、(1)電流−電圧(I−V)曲線、(2)エレクトロルミネッセンス放射輝度対電圧、および(3)エレクトロルミネッセンススペクトル対電圧を測定することによって行った。3つすべての測定を同時に行い、コンピュータで制御を行った。LEDのエレクトロルミネッセンス放射輝度を、デバイスを動作させるために必要な電流密度で割ることによって、ある電圧におけるデバイスの電流効率が求められる。この単位はcd/Aである。出力効率は、電流効率を動作電圧で割った値である。この単位はlm/Wである。結果を以下の表3に示す。
【0202】
【表3】

【0203】
上記結果から分かるように、空気中に保管し酸素および水分に曝露した材料(実施例7)は、酸素および水分に実質的に曝露しなかった材料(実施例6)と同様の性能を示した。多くのホスト材料では、このように酸素および/または水分に曝露すると、デバイス性能、特にデバイス寿命の顕著な低下が生じる。
【0204】
一般的説明または実施例において前述した全ての行為が必要であるとは限らず、特定の行為の一部は不要である場合があり、記載の行為に加えて1つ以上のさらなる行為を行うことができることを留意されたい。さらに、行為が記載される順序は、必ずしもそれらが行われる順序ではない。
【0205】
以上の明細書において、特定の実施形態を参照しながら本発明の概念を説明してきた。しかし、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱せずに種々の修正および変更を行えることが理解できよう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく説明的なものであると見なすべきであり、すべてのこのような修正は本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0206】
特定の実施形態に関して、利益、その他の利点、および問題に対する解決法を以上に記載してきた。しかし、これらの利益、利点、問題の解決法、ならびに、なんらかの利益、利点、または解決法を発生させたり、より顕著にしたりすることがある、あらゆる特徴が、特許請求の範囲のいずれかまたはすべての重要、必要、または本質的な特徴であるとして解釈すべきではない。
【0207】
別々の実施形態の状況において、明確にするために本明細書に記載されている特定の複数の特徴は、1つの実施形態の中で組み合わせても提供できることを理解されたい。逆に、簡潔にするため1つの実施形態の状況において説明した種々の特徴も、別々に提供したり、あらゆる副次的な組み合わせで提供したりすることができる。さらに、ある範囲内で記載される値に対する言及は、その範囲内にある個別のあらゆる値を含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

(式中:
1は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、およびシロキサンからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR1基が互いに連結して5または6員の脂肪族環を形成してもよく、
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり、
aは0〜6の整数であり;
bは0〜2の整数であり;
cは0〜3の整数である)
で表される、化合物。
【請求項2】
電気活性組成物であって、(a)式I
【化2】

(式中:
1は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、D、アルキル、アルコキシ、シリル、およびシロキサンからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR1基が互いに連結して5または6員の脂肪族環を形成してもよく、
Ar1およびAr2は、同じまたは異なるものであって、アリール基であり、
aは0〜6の整数であり;
bは0〜2の整数であり;
cは0〜3の整数である)
で表されるホスト材料と、
(b)380〜750nmの間の発光極大を有するエレクトロルミネッセンスが可能な電気活性ドーパントと;
(c)任意選択的に、フェナントロリン類、キノキサリン類、フェニルピリジン類、ベンゾジフラン類、および金属キノリネート錯体類からなる群から選択される第2のホスト材料とを含む、電気活性組成物。
【請求項3】
1がDであり、a、b、およびcの少なくとも1つが0を超える、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1がDであり、a=5〜6、b=1〜2、およびc=2〜3である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
少なくとも1つのR1が分岐アルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Ar1およびAr2が、フェニル、ビフェニル、ナフチル、フェナントリル、アントラセニル、4−ナフチルフェニル、4−フェナントリルフェニルからなる群から選択され、上記基はいずれも、D、アルキル基、シリル基、およびフェニル、ならびに式II:
【化3】

(式中:
2は、出現ごとに同じまたは異なるものであって、H、D、アルキル、アルコキシ、シロキサン、およびシリルからなる群から選択されるか、あるいは隣接するR2基が互いに連結して芳香族環を形成してもよく;
mは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、1〜6の整数である)
で表される基からなる群から選択される1つ以上の置換基でさらに置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Ar1およびAr2が、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、ナフチルフェニル、およびそれらの重水素化類似体からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Ar1≠Ar2である、請求項1または7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
化合物C1からC5:
【化4】

【化5】

からなる群から選択される、クリセン化合物。
【請求項10】
前記ドーパントがイリジウムのシクロメタレート化錯体である、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
前記ドーパントが式Ir(L1)a(L2)b(L3)c
(式中、
L1は、炭素および窒素を介して配位するモノアニオン性二座シクロメタレート化配位子であり;
L2は、炭素を介しては配位しないモノアニオン性二座配位子であり;
L3は単座配位子であり;
aは1〜3であり;
bおよびcは独立して0〜2であり;
a、b、およびcは、イリジウムが六配位となり、錯体が電気的に中性となるように選択される)
で表される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
L1が、フェニルピリジン類、フェニルキノリン類、フェニルピリミジン類、フェニルピラゾール類、チエニルピリジン類、チエニルキノリン類、およびチエニルピリミジン類からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ドーパントが、緑色発光材料であって、非ポリマーのスピロビフルオレン化合物、フルオランテン化合物、およびアリールアミン基を有する化合物からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項14】
前記ドーパントが式
【化6】

(式中:
Aは、出現ごとに同じまたは異なるものであって、3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
Qは、単結合、または3〜60個の炭素原子を有する芳香族基であり;
nおよびmは独立して、1〜6の整数である)
から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項15】
Qが、ナフタレン、アントラセン、クリセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、およびルブレンからなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−501783(P2013−501783A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524689(P2012−524689)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068956
【国際公開番号】WO2011/019360
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】