説明

クリップ

【課題】操作性が良好であり、かつ、被保持物が脱落し難いクリップを提供する。
【解決手段】クリップ本体7を具備し、このクリップ本体7に、ケース体3が係合可能な保持具8を、クリップ本体7に対して回動可能に取り付ける。クリップ本体7は、被装着箇所を挟持してクリップ1を被装着箇所に装着する挟持部と、保持具8を回動可能に取り付ける保持具取付部とを有する。保持具8は、両端の一方の開口部および他方の開口部の開口方向を軸方向とした略筒状であり、周面部にケース体3の係合孔2を係合可能な保持具本体を有する。また、保持具取付部に回動可能に取り付け可能な被取付部を保持具本体の周面部の一部に形成する。さらに、保持具本体における周面部の被取付部に対向する箇所に、ケース体3の一部が挿通可能な挿通部38を一方の開口部から他方の開口部へわたって切り欠いて形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、係合孔を有する被保持物を係合して吊り下げた状態で保持し、衣類等の装着対象物の被装着箇所を挟持して装着されるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のクリップとしては、クリップ本体と、このクリップ本体に回動可能に取り付けられ、名札等の被保持物を係合可能なU字状の鈎片とを備え、この鈎片の両端が弾性的に離隔可能な構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、クリップ本体としての基部を備え、この基部は、名札等の被保持物としての表示片を挟持する第1のクリップ手段と、使用者の衣類等の装着対象物の被装着箇所を挟持する第2のクリップ手段とを有する構成のものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、名札等の被保持物を着脱するための開放口が形成されたフック部を有するクリップ本体と、このクリップ本体に回動可能に取り付けられた移動部材とを有し、前記移動部材を回動することにより、前記フック部の開放口が開閉可能であり、前記被保持物を取り付ける際には前記開放口を開放し、前記被保持物を取り付けた状態で前記移動部材にて前記開放口を閉塞して取り付けた状態を保持する構成のものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3086961号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献2】特許第3590326号公報(第2−4頁、図1,2)
【特許文献3】特開2006−322577号公報(第3−6頁、図1,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、U字状の鈎片に、被保持物の係合孔を挿通させて係合するだけであるので、鈎片がクリップ本体に対して回動し、鈎片の両端が下方を向いた際等には、被保持物が脱落し易い問題が考えられる。
【0007】
また、上述した特許文献2の構成では、使用の際には、第1のクリップに外力を与えてこの第1のクリップを一旦開いた状態で被保持物を挿入して被保持物を挟持させる必要があるので、被保持物を吊り下げる作業が煩雑であり、操作性が悪いとともに、第1のクリップおよび第2のクリップのいずれか開く際に、他方のクリップまで開いてしまう場合があるので、操作性が悪い問題が考えられる。
【0008】
さらに、上述した特許文献3の構成では、使用の際には、一旦移動部材を回動させてフック部材の開放口を開放し、被保持物の係合孔をフック部に挿通させて取り付けた後、移動部材を回動させてフック部材の開放口を閉塞させる必要があるので、被保持物を取り付ける作業が煩雑で、操作性が悪い問題が考えられる。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、操作性が良好であり、かつ、被保持物が脱落し難いクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、係合孔を有する被保持物が係合され吊り下げられた状態で被装着箇所に装着されるクリップであって、クリップ本体と、このクリップ本体に対して回動可能に取り付けられ前記被保持物が係合される保持具とを具備し、前記クリップ本体は、被装着箇所を挟持する挟持部と、前記保持具が回動可能に取り付けられる保持具取付部とを有し、前記保持具は、両端に開口部が形成されこれらの開口部の開口方向を軸方向とした略筒状であり周面部に前記被保持物の係合孔を係合可能な保持具本体と、この保持具本体の前記周面部の一部に形成され前記保持具取付部に回動可能に取り付けられる被取付部と、前記周面部の前記被取付部に対向する箇所に前記一方の開口部から他方の開口部へわたって切り欠かれて形成され前記被保持物の一部が挿通可能な挿通部とを有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保持具は、保持具本体の周面部に被保持物の一部が挿通可能な挿通部を有することにより、この挿通部に被保持物の一部を挿通して、この被保持物の係合孔を保持具本体の周面部に係合させるだけで、前記被保持物を吊り下げた状態にできるので、操作性が良好である。また、前記挿通部は前記保持具本体の周面部の被取付部に対向する箇所に形成されているので、前記保持具本体に被保持物を保持し、クリップ本体が被装着箇所を挟持した状態において前記挿通部が前側に位置するため、前記保持具本体に前記係合孔が係合された被保持物が脱落し難い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のクリップにおける一実施の形態を示す平面図である。
【図2】同上クリップにおける被保持物を吊り下げていない状態を示す斜視図である。
【図3】(a)および(b)は同上クリップにおけるクリップ本体と保持具との取り付け方法を示す部分断面図である。
【図4】クリップにおける保持具の挿通部の変形例を示す平面図である。
【図5】クリップにおける保持具の挿通部の変形例を示す平面図である。
【図6】(a)および(b)はクリップにおける保持具の挿通部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態の構成について図1ないし図6を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、クリップ1は、係合孔2を有する被保持物としてのケース体3を係合して吊り下げた状態で保持するもので、このようにケース体3を吊り下げた状態にて、例えば使用者の衣類等の装着対象物の被装着箇所に装着される。
【0015】
ケース体3は、例えば使用者の身分を示す名札や社員証、学生証等のカード体4が収用されるもので、例えば透明な合成樹脂等にて略矩形状に形成されている。また、ケース体3は、クリップ1に吊り下げた状態にて上側となる端部の近傍に係合孔2が設けられている。さらに、被装着箇所に装着した状態にて裏側すなわち使用者側となる面には、カード体4を出し入れ可能な収用口5が形成されている。
【0016】
図2に示すように、クリップ1は、例えば合成樹脂や金属等にて形成されたクリップ本体7を備え、このクリップ本体7には、例えば合成樹脂や金属等にて形成された保持具8がクリップ本体7に対して回動可能に取り付けられている。この保持具8にはケース体3が係合可能である。
【0017】
クリップ本体7は、第1挟持部材11と、この第1挟持部材11に対向し、ピン12にて枢着された第2挟持部材13とから形成され、被装着箇所を挟持する挟持部14を有している。
【0018】
第1挟持部材11は、板状の挟持部材本体15を有している。この挟持部材本体15の一方の端部には挟持部材本体15から突出して形成された挟持爪部16が設けられている。また、挟持部材本体15の他方の端部には押圧部17が設けられている。さらに、挟持部材本体15における挟持爪部16と押圧部17との間には、挟持部材本体15から挟持爪部16と同じ方向へ突出して形成された枢着部18が設けられ、この枢着部18の略中央には、ピン12が挿通可能な円形の枢着孔19が形成されている。
【0019】
第2挟持部材13は、段状に屈曲した段部24が形成された挟持部材本体25を有している。この挟持部材本体25の一方の端部には、第1挟持部材11と第2挟持部材13とを枢着した状態において、挟持爪部16と対向するように挟持部材本体25から第1挟持部材11側へ突出して形成された挟持爪部26が設けられている。また、挟持部材本体25の他方の端部には押圧部27が設けられている。さらに、挟持部材本体25における挟持爪部26と押圧部27との間には、挟持部材本体25から挟持爪部26と同じ方向へ突出して形成された枢着部28が設けられ、この枢着部28の略中央には、ピン12が挿通可能な円形の図示しない枢着孔が形成されている。
【0020】
枢着部18の枢着孔19の内径と、枢着部28の枢着孔の内径と、ピン12の外径とは殆ど同径であり、第1挟持部材11および第2挟持部材13は、挟持爪部16と挟持爪部26とを対向させ、枢着部18の枢着孔19と枢着部28の枢着孔とが同心円状に重なった状態で、枢着部18の枢着孔19および枢着部28の枢着孔にピン12が挿嵌されている。また、挟持爪部16と挟持爪部26とによって挟持部14が構成され、挟持爪部16と挟持爪部26とにより被装着箇所を挟持する。さらに、挟持部材本体15と挟持部材本体25との間には、挟持爪部16と挟持爪部26とを接近させ、押圧部17と押圧部27とを離間させる方向へ第1挟持部材11および第2挟持部材13を付勢する付勢手段としての板ばね29が設けられている。そして、板ばね29の付勢力により、挟持部14に挟持力が付与され、この挟持力により、クリップ1は被装着箇所に装着された状態が保持される。
【0021】
第1挟持部材11と第2挟持部材13とを枢着させた状態における挟持部材本体25の外側面の段部24より挟持爪部26側には、挟持部材本体25から挟持爪部26とは反対方向へ向かって突出した突起状の保持具取付部30が形成されている。
【0022】
保持具8は、一端に一方の開口部32が形成され、他端に他方の開口部33が形成され、これら開口部32,33の開口方向を軸方向とした略円筒状の保持具本体34を有している。
【0023】
保持具本体34は、周面部35の一部に平坦に成形された被取付面36を有し、この被取付面36には、保持具取付部30と係合して取り付けられる孔状の被取付部37が形成されている。この被取付部37は、保持具本体34の内側へ細いテーパ状に形成されている。
【0024】
また、保持具本体34の周面部35における被取付部37に対向する箇所、すなわち、クリップ1が被装着箇所を挟持した状態において前側となる箇所には、ケース体3の一部が挿通可能に切り欠かれて開放された挿通部38が設けられている。この挿通部38は、保持具本体34の一方の開口部32から他方の開口部33へわたって切り欠かれ、保持具本体34の軸方向に対して傾斜した略直線状に形成されている。また、挿通部38の幅は、吊り下げることが想定されるケース体3の厚みと同等に設定されている。
【0025】
ここで、図3(a)に示すように、クリップ本体7の保持具取付部30は、基端部41と、この基端部41に接続され、間隙42を介して形成された軸部43,44が設けられている。また、また、これら軸部43,44の先端には、軸部43,44からそれぞれ外側へ突出した係合爪部45,46が設けられている。
【0026】
クリップ本体7に保持具8を取り付ける際には、軸部43,44および係合爪部45,46を間隙42へ向かって押圧して、軸部43,44を弾性変形させて係合爪部45と係合爪部46とを接近させた状態にて、保持具取付部30を被取付部37に挿通させる。すると、図3(b)に示すように、弾性変形させた軸部43,44が復原し、係合爪部45,46が保持具本体34の被取付部37の周縁近傍に係合可能な状態になり、保持具8がクリップ本体7に対して回動可能に取り付けられる。
【0027】
次に、上記の実施の形態の作用、動作および効果を説明する。
【0028】
クリップ1の使用に際しては、まず、カード体4が収納されたケース体3の係合孔2側の端部を挿通部38と平行な状態にする。
【0029】
また、係合孔2側の端部を保持具本体34の挿通部38に挿通させ、挿通部38間に係合孔2を位置させる。
【0030】
さらに、挿通部38から周面部35を係合孔2に挿通させ、保持具本体34の周面部35の内面側に係合孔2を係合させて、図1に示すようなクリップ1にケース体3を吊り下げた状態にする。
【0031】
このようにケース体3を吊り下げた状態のクリップ1において、クリップ本体7の押圧部17,27を板ばね29の付勢力に抗して押圧し、挟持爪部16と挟持爪部26とを離間させる。
【0032】
挟持部14が使用者の被装着箇所を挟持し、板ばね29の付勢力によってこの挟持状態が保持される。
【0033】
そして、クリップ1によれば、保持具8が、保持具本体34の周面部35に、一方の開口部32から他方の開口部33へわたって挿通部38が切り欠かれて形成され、この挿通部38がケース体3の一部を挿通可能であることにより、挿通部38にケース体3の係合孔2側の端部を挿通して、ケース体3の係合孔2を保持具本体34の周面部35に係合させるだけで、ケース体3を吊り下げた状態にできる。したがって、容易にケース体3を吊り下げた状態にできるので、クリップ1を使用する際の操作性が良好である。
【0034】
また、挿通部38は、保持具本体34の周面部35において、被取付部37が設けられた被取付面36と対向する箇所に形成されていることにより、保持具本体34に係合孔2が係合されたケース体3が、クリップ本体7に対する保持具8の回動により保持具本体34とともに回動したとしても、係合が解除されず係合状態を保持できるので、ケース体3が保持具本体34から脱落し難く、ケース体3の脱落を防止できる。
【0035】
また、挿通部38が、保持具本体34の軸方向に対して傾斜して形成されていることにより、吊り下げ状態にて、仮に、挿通部38が重力方向である下方を向く状態等になったとしても、ケース体3は、傾斜状の挿通部38からは脱落し難いので、より確実にケース体3の脱落を防止できる。
【0036】
さらに、挿通部38が略直線状に形成されることにより、ケース体3を吊り下げる際に、ケース体3の端部を挿通部38に平行な状態にして挿通させるだけであるので、保持具本体34にケース体3を容易に係合できる。
【0037】
保持具8がクリップ本体7に対して回動可能に取り付けられていることにより、クリップ本体の装着状態に関らず、例えば、挟持爪部16,26と押圧部17,27とが重力方向において同じ高さとなる状態、すなわちクリップ1が水平な状態で被装着箇所を挟持した場合等のように、挟持部14が鉛直方向の下側に位置しない場合であっても、保持具8が、ケース体3等の重量によってクリップ本体7に対して回動して、保持具本体34の軸方向が略水平な状態となり、ケース体3が保持具8に対して鉛直方向に吊り下げられた状態となる。したがって、ケース体3を、常にカード体4が確認し易い正しい状態で吊り下げることができる。
【0038】
また、保持具8がクリップ本体7に対して回動可能であり、保持具本体34が略筒状であるので、一方の面が前方を向き他方の面が使用者側を向いたケース体3を吊り下げた状態の保持具8を180度回動させ、そのケース体3を保持具本体34の周面部35に沿って反転させるだけで、ケース体3の一方の面を使用者側へ向け、他方の面を前方へ向けた状態にでき、ケース体3を容易に裏返すことができる。したがって、例えば、カード体4に記載された個人情報等を掲示したくない場合や、一方の面と他方の面とで異なる情報が記載され、目的に応じて一方の面と他方の面とを掲示する場合等に非常に便利である。
【0039】
クリップ1は、クリップ本体7と保持具8とから形成されたシンプルな構成であり、クリップ本体7および保持具8それぞれも特殊な構成ではないので、容易に製造できる。
【0040】
保持具本体34は、周面部35の一部が平坦な被取付面36を有することにより、クリップ本体7に対して安定して取り付けることができる。
【0041】
なお、被保持物は、カード体4を収用したケース体3には限定されず、保持具本体34の周面部35に係合可能な係合孔2を有する構成のものであればよい。
【0042】
クリップ本体7は、第1挟持部材11と第2挟持部材13とから形成された構成としたが、このような構成には限定されず、挟持部14を有する構成であればよい。
【0043】
また、クリップ本体7は、第1挟持部材11と第2挟持部材13とを付勢する付勢手段として板ばね29を設ける構成としたが、付勢手段は、第1挟持部材11と第2挟持部材13とを付勢できるものであればよい。
【0044】
さらに、クリップ本体7は、挟持爪部16と挟持爪部26とによって挟持部14を形成する構成としたが、このような構成には限定されず、挟持部14は、被装着箇所を挟持可能な構成であれば、例えば、挟持爪部16,26を設けない平坦な構成や、滑り止め等のずれ防止手段を設けた構成等にしてもよい。
【0045】
クリップ本体7の保持具取付部30が突起状に形成され、保持具8の被取付部37が孔状に形成された構成には限定されず、保持具取付部30と被取付部37とは、クリップ本体7に対して保持具8が回動可能に取り付けられる構成であればよい。
【0046】
保持具本体34は、略円筒状の構成には限定されず、保持具本体34が、一方の開口部32および他方の開口部33の開口方向を軸方向とする筒状の構成であれば、例えば四角筒状や三角筒状等の構成にしてもよい。
【0047】
保持具本体34は、周面部35の一部が平坦な構成には限定されず、保持具取付部30と被取付部37とが回動可能に取り付けることができる構成であれば、例えば、周面部35に平坦な被取付面36が形成されていない円筒状の構成等でもよい。
【0048】
挿通部38の切り欠きの幅は、吊り下げられることが想定される被保持物の厚みと同等に設定された構成としたが、このような構成には限定されない。例えば、被保持物の厚みより挿通部38の切り欠きの幅が大きい構成や、想定される被保持物の厚みより挿通部38の幅をやや小さく設定する構成等にしてもよい。想定される被保持物の厚みより挿通部38の幅をやや小さく設定する場合は、挿通部38に被保持具の一部を挿通する際に、保持具本体34を弾性変形させて挿通部38を拡げて、被保持具8の一部を挿通する。
【0049】
ここで、上記実施の形態では、挿通部38が、保持具本体34の軸方向に対して傾斜した直線状の形状の構成として説明にしたが、このような構成には限定されず、例えば、保持具本体34の軸方向に平行な直線状の構成、湾曲した形状の構成にしてもよく、また、図4、図5および図6に示すような構成等にしてもよい。
【0050】
図4に示す構成では、挿通部48は、略直線状の第1切欠部49と略直線状の第2切欠部50とから形成されている。第1切欠部49は、一端が一方の開口部32に接続し、他端が一方の開口部32と他方の開口部33との間に位置し、保持具本体34の軸方向に対して傾斜状に形成されている。第2切欠部50は、第1切欠部49の他端から他方の開口部33へわたって連続して形成され、保持具本体34の軸方向に対して傾斜し、かつ、第1切欠部49とは同一直線上に位置せず異なる方向へのびている。すなわち、挿通部48は、第1切欠部49と第2切欠部50とが接続した境界部にて屈曲した略へ字形に形成されている。
【0051】
そして、このように挿通部48が第1切欠部49と第2切欠部50との境界部にて屈曲した形状に形成されていることにより、クリップ1の使用中に、ケース体3の係合孔2の内周縁における保持具本体34の周面部35に接触している部分と、挿通部48とが平行になり難いので、例えば挿通部48が下向きになった場合等でも、挿通部48からケース体3が抜け落ち難く、ケース体3の脱落をより確実に防止できる。また、ケース体3を挿通部48に挿通する際には、ケース体3の端部を少し屈曲させるだけでよいので、容易に挿通でき、操作性も良好である。
【0052】
図5に示す構成では、挿通部52は、第1切欠部としての端切欠部53と、第2切欠部としての端切欠部54と、これら端欠部53および端切欠部54に接続した第3切欠部55とを有している。端切欠部53は、一端が一方の開口部32に接続し、他端が周面部35上に位置し、保持具本体34の軸方向と平行な直線状に形成されている。端切欠部54は、一端が他方の開口部33に接続し、他端が周面部35上に位置し、保持具本体34の軸方向と平行な直線状に形成されている。第3切欠部55は、保持具本体34の軸方向の略中央に位置し、端切欠部54の他端から端切欠部55の他端へわたって連続して形成されている。また、第3切欠部55は、一端が端切欠部53の他端に接続し、この端切欠部53に対して垂直な補助切欠部56と、一端が端切欠部54の他端に接続し、この端切欠部54に対して垂直な補助切欠部57と、補助切欠部56の他端から補助切欠部57の他端へわたって設けられ、保持具本体34の軸方向と平行な中央切欠部58とから形成されている。ここで、端切欠部53と端切欠部54とは同一直線上に位置しているが、第3切欠部55は、中央切欠部58が端切欠部53,54と平行であるものの、同一直線上には位置しておらず、補助切欠部56,57および中央切欠部58のいずれも、端切欠部53,54とは同一直線上に位置しないように配置されている。すなわち、挿通部52は、端切欠部53,54の内端から保持具本体34の周方向へ折曲し、周方向へ凸状に形成されている。
【0053】
そして、挿通部52が保持具本体34の周方向へ折曲状に形成されていることにより、クリップ1の使用中に、ケース体3の係合孔2の内周縁における保持具本体34の周面部35に接触している部分と、挿通部48とが平行になり難いので、ケース体3の係合孔2の内周面は略直線状であるので、例えば挿通部52が下向きになった場合等でも、ケース体3が挿通部52から抜け落ち難く、吊り下げられたケース体3の脱落をより確実に防止できる。また、ケース体3の一部を挿通部52に挿通させる際には、ケース体3の挿通する部分を凸状に折曲する必要があるので、多少挿通させ難いものの、ケース体3の係合状態が解除され難く、確実に保持できる。
【0054】
なお、この図5の構成では、第3切欠部55が端切欠部53および端切欠部54と同一直線上に位置しないように配置された構成としたが、第3切欠部55が、端切欠部53および端切欠部54の少なくともいずれか一方と同一直線上に位置しないように配置されていればよい。また、第3切欠部55は、補助切欠部56,57および中央切欠部58から形成された構成としたが、このような構成には限定されず、第3切欠部55が端切欠部53の他端と端切欠部54の他端との間に連続して形成されていれば、第3切欠部55の形状は適宜設定できる。
【0055】
図6(a)に示す構成では、挿通部61は、切欠部62にて形成されている。この切欠部62は、一方の開口部32から他方の開口部33へわたって連続して設けられ、一方の開口部32の一部と他方の開口部33の一部とを結ぶ線分を弦とする円弧状に形成されている。
【0056】
また、図6(b)に示す構成では、挿通部61は、連続して形成された切欠部63および切欠部64を有している。切欠部63は、一端が一方の開口部32に接続し、他端が周面部35上に位置し、これら一端と他端とを結ぶ線分を弦とする円弧状に形成されている。また、切欠部64は、一端が他方の開口部33に接続し、他端が周面部35上の切欠部63の他端に接続し、これら一端と他端とを結ぶ線分を弦とする円弧状に形成されている。
【0057】
なお、図6(a)および図6(b)の構成では、挿通部61が円弧状の切欠部62にて形成された構成、挿通部61が円弧状の切欠部63,64にて形成された構成としたが、これらの構成には限定されず、挿通部61は、一方の開口部32から他方の開口部33へわたって連続した少なくとも1つの略円弧状の切欠部にて形成された構成であればよい。
【0058】
そして、このように、挿通部61が少なくとも1つの円弧状の切欠部にて形成されることにより、クリップ1の使用中に、ケース体3の係合孔2の内周縁における保持具本体34の周面部35に接触している部分と、挿通部48とが平行になり難いので、例えば挿通部61が下向きになった場合等でも、挿通部61からケース体3が抜け落ち難く、ケース体3の脱落をより確実に防止できる。また、ケース体3を挿通部に挿通する際には、ケース体3の端部を少し屈曲させるだけでよいので、容易に挿通でき、操作性も良好である。
【符号の説明】
【0059】
1 クリップ
2 係合孔
3 被保持物としてのケース体
7 クリップ本体
8 保持具
14 挟持部
30 保持具取付部
32 一方の開口部
33 他方の開口部
34 保持具本体
35 周面部
37 被取付部
38 挿通部
48 挿通部
49 第1切欠部
50 第2切欠部
52 挿通部
53 第1切欠部としての端切欠部
54 第2切欠部としての端切欠部
55 第3切欠部
61 挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合孔を有する被保持物が係合され吊り下げられた状態で被装着箇所に装着されるクリップであって、
クリップ本体と、
このクリップ本体に対して回動可能に取り付けられ前記被保持物が係合される保持具とを具備し、
前記クリップ本体は、被装着箇所を挟持する挟持部と、前記保持具が回動可能に取り付けられる保持具取付部とを有し、
前記保持具は、両端に開口部が形成されこれらの開口部の開口方向を軸方向とした略筒状であり周面部に前記被保持物の係合孔を係合可能な保持具本体と、この保持具本体の前記周面部の一部に形成され前記保持具取付部に回動可能に取り付けられる被取付部と、前記周面部の前記被取付部に対向する箇所に前記一方の開口部から他方の開口部へわたって切り欠かれて形成され前記被保持物の一部が挿通可能な挿通部とを有する
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
挿通部は、保持具本体の軸方向に対して傾斜して形成された
ことを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
挿通部は、一端が一方の開口部に接続し他端が周面部上に位置する第1切欠部と、この第1切欠部の他端から他方の開口部へわたって連続して形成され前記第1切欠部とは異なる方向へのびる第2切欠部とを有し、前記第1切欠部と前記第2切欠部との境界部にて屈曲した形状に形成された
ことを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項4】
挿通部は、一端が一方の開口部に接続し他端が周面部上に位置する直線状の第1切欠部と、一端が他方の開口部に接続し他端が周面部上に位置する直線状の第2切欠部と、これら第1切欠部の他端と第2切欠部の他端との間に連続して形成された第3切欠部とを有し、この第3切欠部は前記第1切欠部および前記第2切欠部の少なくともいずれか一方と同一直線上に位置しないように配置されている
ことを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項5】
挿通部は、一方の開口部から他方の開口部へわたって連続した少なくとも1つの略円弧状の切欠部にて形成された
ことを特徴とする請求項1記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−281390(P2010−281390A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135327(P2009−135327)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(000129437)株式会社キングジム (241)
【Fターム(参考)】