説明

クリヤー塗料および皮膜検査方法

【課題】 塗膜の透明性を維持すると共に、皮膜の有無を簡易な方法で常時検査可能なクリヤー塗料を提供し、該クリヤー塗料の乾燥後の皮膜を容易に検査可能な皮膜検査方法を提供することである。
【解決手段】 多重反射機能もしくは光輝性を有する半透明もしくは透明な微小鱗片状顔料を不揮発分中の成分比で0.05〜3.0重量%配合したクリヤー塗料とし、倍率10倍程度のルーペを用いて、肉眼では確認されないが拡大視することで確認可能となる微小な光沢を検知し、多重反射機能もしくは光輝性を有し、塗膜が光沢を呈する微小鱗片状顔料が配合されたクリヤー塗料の乾燥後の皮膜の有無および皮膜の均一性を確認可能とする皮膜検査方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリヤー塗料に関し、特に、塗布した塗膜が確認容易なクリヤー塗料および該クリヤー塗料の乾燥後の皮膜検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基材や下塗り塗膜の模様や色合いを維持し、意匠性を高めるためにクリヤー塗料を上塗りして、保護塗膜層を形成することが行われている。
【0003】
上記の構成であれば、基材表面や下塗り塗膜の劣化を抑えることができ、外壁の意匠性を長期に亘って維持することができる。また、最近では、防汚機能や消臭機能や抗菌機能を発揮する光触媒コーティングを上塗り塗装することも行われている。
【0004】
上塗りするクリヤー塗料や光触媒塗料は一般に非常に薄い塗膜厚みであって、さらに透明性が高いので、塗布したところと塗布していないところを区別することは困難である。
【0005】
そのために、活性酸素により酸化分解する有機色素と、活性酸素を発生させる化合物とを配合して、塗布の有無を着色の有無で容易に目視により確認するようにした有機色素配合コーティング液が既に出願されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−241408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
透明もしくは半透明なクリヤー塗料や光触媒塗料を上塗りすることで、基材表面や下塗り塗膜の意匠性を発揮し維持することは可能である。しかし、上塗り塗膜が薄く透明性が高ければ、皮膜の有無を目視により簡単に確認することができない。
【0007】
また、活性酸素により酸化分解する有機色素を配合したコーティング液を上塗りして塗装部を確認する方法では、有機色素が完全に分解して無色になるまでの間(数日)は醜い塗布面を呈し、意匠性が悪化する。さらに、分解した後の色素成分が塗膜層に残留し、耐候性への悪影響が懸念される。また、一旦色が消えた後では、塗膜の有無の確認ができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、塗膜の透明性を維持すると共に、皮膜の有無を簡易な方法で常時検査可能なクリヤー塗料を提供し、該クリヤー塗料の乾燥後の皮膜を容易に検査可能な皮膜検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、多重反射機能もしくは光輝性を有する半透明もしくは透明な微小鱗片状顔料を不揮発分中の成分比で0.05〜3.0重量%配合したクリヤー塗料としたことを特徴としている。
【0010】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、多重反射機能もしくは光輝性を有する鱗片状顔料を含有しているので、クリヤー塗料塗布後の塗膜が光沢を発する。また、微小鱗片状顔料の配合割合を所定範囲とすることで、塗膜の透明性を維持し、目視では確認困難であるが、ルーペを用いて拡大視することで確認可能となる。そのために、塗布後の皮膜の有無をルーペを用いて容易に確認することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記微小鱗片状顔料が、マイカもしくはマイカに酸化チタンやそのたの金属酸化物をコーティングしたパール顔料、および、ガラスフレークの中から1種あるいは2種以上混合した顔料であることを特徴としている。
【0012】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、光の干渉でパール光沢を呈するパール顔料や光輝性を有するガラスフレークを配合することで、乾燥後の皮膜をルーペを用いて常時確認することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、倍率10倍程度のルーペを用いて、肉眼では確認されないが拡大視することで確認可能となる微小な光沢を検知して、多重反射機能もしくは光輝性を有し光の干渉で光沢を呈する微小鱗片状顔料が配合されたクリヤー塗料の乾燥後の皮膜の有無および皮膜の均一性を確認する皮膜検査方法であることを特徴としている。
【0014】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、肉眼では確認できない透明なクリヤー塗膜であっても、塗膜乾燥後の塗膜の光沢を拡大視して確認することで、皮膜の有無と均一性を確認することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、所定のクリヤー塗料に所定の微小鱗片状顔料を予め規定して混合しておき、前記光沢の程度により、前記クリヤー塗膜の有無と塗装ムラの検査と前記クリヤー塗料の同定を行うことを特徴としている。
【0016】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、肉眼では確認できない透明なクリヤー塗膜であっても、ルーペを用いることで塗膜の有無と塗装ムラを容易に検査することができる。さらに、予め所定の鱗片状顔料を配合しておき、得られる光沢を予め定めておくことで、乾燥後のクリヤー塗膜の成分を同定することも可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多重反射機能もしくは光輝性を有する半透明もしくは透明な微小鱗片状顔料をごく少量、好ましくは不揮発分中の成分比で0.05〜3.0重量%程度配合したクリヤー塗料としたので、塗布後の乾燥した皮膜の有無をルーペを用いて容易に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るクリヤー塗料および皮膜検査方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明に係るクリヤー塗料は、塗膜乾燥後に容易に確認可能となるように、多重反射機能もしくは光輝性を有する半透明もしくは透明な微小鱗片状顔料をごく少量配合している。その配合割合は、塗料の不揮発分中の成分比で0.05〜3.0重量%程度としている。これは、もともと透明なクリヤー塗料の透明性を維持するためであるが、ごく微量な配合量であっても、ルーペを用いて拡大視することで、微小鱗片状顔料の多重反射もしくは光沢を確認することが可能である。
【0020】
多重反射機能を有する鱗片状顔料としては、例えばパール顔料が挙げられる。パール顔料は、もともと、光の干渉でパール光沢を呈するものであり化粧品に好適に利用されているものである。
【0021】
前記パール顔料は、一般に、天然のマイカ(雲母)に、酸化チタンや酸化鉄などの金属酸化物をコートした顔料であって、光の屈折率の低いマイカと、屈折率の高い金属酸化物とで異なる反射光の干渉により、パール光沢を呈するものとされている。
【0022】
そのために、金属酸化物の被覆率や膜厚により、種々の色合いを呈することが可能となる。つまり、不揮発成分として配合するパール顔料を選択することで、所望される色合いを呈する塗膜を形成するも可能である。
【0023】
ただし、パール顔料の配合量を少量とし、膜厚を薄くすることで、クリヤー塗膜の透明性を維持することが可能であって、通常数ミクロン以下の薄い膜厚のクリヤー塗膜においては3%以下の配合量が適当である。また、ルーペを用いて拡大視することで、多重反射を確認するためには、0.05重量%以上の配合量とし、倍率10倍で拡大視すればよいことを見出した。そのために、微小鱗片状顔料をごく少量、好ましくは不揮発分中の成分比で0.05〜3.0重量%程度の配合割合とすることで、目視では確認困難であるが倍率10倍程度のルーペを用いて確認可能となる。
【0024】
また、光輝性を有する鱗片状顔料としてガラスフレークを用いることも可能である。さらに、前記ガラスフレークに酸化チタンやそのたの金属酸化物をコーティングしたものを用いることもできる。
【0025】
また、種々のパール顔料、ガラスフレークの中から1種あるいは2種以上を混合した顔料を配合することも可能であり、所定のクリヤー塗料に予め所定の成分からなる鱗片状顔料を配合しておくことで、それぞれのクリヤー塗料に応じたパール光沢を予め定めておくことができる。そのために、塗膜乾燥後の検査時に検知されるパール光沢に合致するクリヤー塗料を同定することが可能となる。
【0026】
クリヤー塗料に配合する鱗片状顔料は微小であることが好ましく、例えば平均粒径が1〜25μmで、平均厚さが0.01〜2.0μm程度の微小鱗片状顔料を用いることができる。
【0027】
パール顔料やガラスフレークなどの微小鱗片状顔料は、ごく微量でも光が当たるとキラキラ光る。このキラキラ光る光沢は、ルーペを用いて拡大視することで詳細に観察することができる。また、これらの微小鱗片状顔料は隠蔽力が弱くて、ごく微量では全く着色しないため、透明なクリヤー塗料の透明性を悪化することがなく好適である。
【0028】
さらに、パール顔料やガラスフレークなどの微小鱗片状顔料は、耐候性を備え、いつまでも塗膜中に留まっているので、塗膜寿命を長くすることができると共に、いつでも検査可能となる。
【0029】
上記したように、本発明に係るクリヤー塗料は、多重反射機能もしくは光輝性を有する微小鱗片状顔料を含有しているので、クリヤー塗料塗布後の乾燥した皮膜の有無をルーペを用いて何時でも、また容易に確認可能となる。
【0030】
そのために、多重反射機能もしくは光輝性を有する微小鱗片状顔料が配合されたクリヤー塗料からなる塗膜は乾燥した後、ルーペを用いて常時確認可能な皮膜となる。つまり、従来困難であった、乾燥後のクリヤー塗膜の有無の確認を行う皮膜検査方法を確立することができる。
【0031】
上記したように本発明に係る皮膜検査方法は、倍率10倍程度のルーペを用いて、肉眼では確認されないが拡大視することで確認可能となる微小な光沢を検知するので、多重反射機能もしくは光輝性を有して乾燥後に光沢を呈する鱗片状顔料が配合されたクリヤー塗料の皮膜の有無および皮膜の均一性を確認する皮膜検査方法となる。
【0032】
また、肉眼では確認できない透明なクリヤー塗膜であっても、ルーペを用いることで塗膜からの光沢を容易に検査することができ、予め所定の微小鱗片状顔料を配合しておくことで、乾燥後のクリヤー塗膜の成分を同定することが可能な皮膜検査方法となる。
【0033】
上記のクリヤー塗膜は光触媒コーティングであってもよく、高価な光触媒コーティングの有無や塗装ムラや成分の同定を可能とする皮膜検査方法ともなる。また、塗装の施工現場における確認や調査にも適用可能な検査方法となる。
【0034】
クリヤー塗膜が光触媒コーティングであれば、防汚機能や消臭機能や抗菌機能を発揮する塗膜となって、建物の外壁に塗装するのに好適なクリヤー塗料となる。
【0035】
前記の光触媒としては、例えば酸化チタンが好適に適用可能であり、酸化チタンを含有した塗料を塗布すれば、その表面が上記した種々の光触媒機能を発揮するだけでなく、水との接触角が20°以下の親水性をも発揮する。親水性を発揮する表面は、曇りを防止するだけではなく、汚れを付きにくくする働きもある。特に、光触媒作用による親水性では、水との接触角が5°以下の超親水性となり、汚染防止効果は甚大である。
【0036】
上記したように、本発明によれば、多重反射機能もしくは光輝性を有する半透明もしくは透明な微小鱗片状顔料をごく少量、好ましくは不揮発分中の成分比で0.05〜3.0重量%程度配合したクリヤー塗料としたので、塗布後の乾燥した皮膜の有無をルーペを用いて容易に確認することができるクリヤー塗料および皮膜検査方法となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重反射機能もしくは光輝性を有する半透明もしくは透明な微小鱗片状顔料を不揮発分中の成分比で0.05〜3.0重量%配合したことを特徴とするクリヤー塗料。
【請求項2】
前記微小鱗片状顔料が、マイカもしくはマイカに酸化チタンやそのたの金属酸化物をコーティングしたパール顔料、および、ガラスフレークの中から1種あるいは2種以上混合した顔料であることを特徴とする請求項1に記載のクリヤー塗料。
【請求項3】
倍率10倍程度のルーペを用いて、肉眼では確認されないが拡大視することで確認可能となる微小な光沢を検知して、多重反射機能もしくは光輝性を有し光の干渉で光沢を呈する微小鱗片状顔料が配合されたクリヤー塗料の乾燥後の皮膜の有無および皮膜の均一性を確認することを特徴とする皮膜検査方法。
【請求項4】
所定のクリヤー塗料に所定の微小鱗片状顔料を予め規定して混合しておき、前記光沢の程度により、前記クリヤー塗膜の有無と塗装ムラの検査と前記クリヤー塗料の同定を行うことを特徴とする請求項3に記載の皮膜検査方法。

【公開番号】特開2008−260872(P2008−260872A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105493(P2007−105493)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(591164794)株式会社ピアレックス・テクノロジーズ (25)
【Fターム(参考)】