説明

クリーニングブレード、画像形成装置及びプロセスカートリッジ

【課題】被清掃部材との当接部分の耐摩耗性を改善し、先端の稜線部のめくれを抑制するとともに該稜線部の被清掃部材の表面形状変化に対する追随性を良好なものとして、当接圧を維持することのできるクリーニングブレードを提供する。
【解決手段】被清掃部材の移動方向に直交する方向の長さに対応する幅をもつ短冊形状の弾性体基材621と、弾性体基材621の前記被清掃部材に面する主面の少なくとも端部に固設され、弾性体基材621の端部を補強するとともに前記被清掃部材の当該クリーニングブレード60が当接する稜線部62cにおける該被清掃部材の移動に伴う幅方向の表面形状変化に追従する可撓性を有する補強シート622と、補強シート622上の少なくとも前記被清掃部材表面に当接する稜線部62cに形成され、弾性体基材621よりも硬く、補強シート622よりも前記被清掃部材に対する摩擦係数が低い硬質潤滑膜623と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレード、画像形成装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式の画像形成装置では、被清掃部材たる感光体などの像担持体について、転写紙や中間転写体へトナー像を転写した後の表面に付着した不必要な転写残トナーはクリーニング手段たるクリーニング装置によって除去している。
【0003】
このクリーニング装置のクリーニング部材として、一般的に構成を簡単にでき、クリーニング性能も優れていることから、短冊形状のクリーニングブレードを用いたものがよく知られている。このクリーニングブレードは、ポリウレタンゴムなどの短冊形状の弾性体で構成されている。そして、クリーニングブレードの基端を支持部材で支持して先端稜線部を像担持体の周面に押し当て、像担持体上に残留するトナーをせき止めて掻き落とし除去する。
【0004】
また、近年の高画質化の要求に応えるべく、重合法等により形成された小粒径で球形に近いトナー(以下、重合トナー)を用いた画像形成装置が知られている。この重合トナーは、従来の粉砕トナーに比べて転写効率が高いなどの特徴があり、上記要求に応えることが可能である。しかし、重合トナーは、クリーニングブレードを用いて像担持体表面から除去しようとしても十分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題を有している。これは、小粒径で且つ球形度に優れた重合トナーが、ブレードと像担持体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けるからである。
【0005】
かかるすり抜けを抑えるには、像担持体とクリーニングブレードとの当接圧力を高めてクリーニング能力を高める必要がある。しかし、クリーニングブレードの当接圧を高めると、図7(a)に示すように、像担持体3とクリーニングブレード92との摩擦力が高まり、クリーニングブレード92が像担持体3の移動方向に引っ張られて、クリーニングブレード92の先端の稜線部92cがめくれてしまう。このめくれたクリーニングブレード92が、そのめくれに抗して原形状態に復元する際に異音が発生することがある。
さらに、クリーニングブレード92の稜線部92cがめくれた状態でクリーニングをし続けると、図7(b)に示すように、クリーニングブレード92の先端面92aの稜線部92cから数[μm]離れた場所に局所的な摩耗が生じてしまう。
このような状態で、さらにクリーニングを続けると、この局所的な摩耗が大きくなり、最終的には、図7(c)に示すように、稜線部92cが欠落してしまう。稜線部92cが欠落してしまうと、トナーを正常にクリーニングできなくなり、クリーニング不良を生じることとなった。
【0006】
特許文献1には、ポリウレタンエラストマーからなるクリーニングブレードの少なくとも当接部に、鉛筆硬度B〜6Hの皮膜硬度を有する樹脂からなる表面層を設けたものが記載されている。ゴム部材よりも硬い鉛筆硬度B〜6Hの皮膜硬度を有する表面層を設けることで、クリーニングブレード当接部の摩擦係数を下げることができ、クリーニングブレードの耐摩耗性を高めることができる。また、像担持体とクリーニングブレードとの摩擦力を低減させることができ、クリーニングブレードの先端の稜線部のめくれを良好に抑制することができる。さらに、鉛筆硬度B〜6Hの鉛筆硬度の表面層は、硬くて変形しにくいので、クリーニングブレードの先端の稜線部のめくれをより一層抑制することができる。
【0007】
また、特許文献2には、シリコン含有紫外線硬化材料を弾性ブレードに含浸させて膨潤させた後、紫外線照射処理して表面に硬化層を形成したクリーニングブレードが記載されている。このように、紫外線硬化材料からなる弾性ブレードよりも高硬度の硬化層を設けることでも、耐摩耗性を向上でき、クリーニングブレードの先端の稜線部のめくれを抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、表面層や硬化層を設けたクリーニングブレードでも、ブレード先端の稜線部のめくれを確実に抑制することは難しく、感光体の表面状態の変化によってめくれが生じてしまうことが避けられない。特に像担持体に形成される粉体量が非常に多い連続的なベタ画像形成時等の厳しい条件では、感光体表面の摩擦係数が上昇しやすく、それによってめくれが発生しやすくなる。
【0009】
また、設けられる表面層には硬化処理の簡便さ等から通常紫外線硬化樹脂が用いられるが、上記ゴム部材の先端面の長手方向にわたって紫外線硬化樹脂による表面層を設けるとき、硬化用紫外線による表面層近傍ゴム部材の劣化が避けられない。この劣化はゴム部材の弾性を低下させ、クリーニングブレードの先端の稜線部の像担持体表面への追随性が低下してしまう。また、この劣化によってゴム部材の耐摩耗性も低下してしまうので硬化処理の制御が難しい。
【0010】
本発明は、以上の従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、被清掃部材との当接部分の耐摩耗性を改善し、先端の稜線部のめくれを抑制するとともに該稜線部の被清掃部材の表面形状変化に対する追随性を良好なものとして、当接圧を維持することのできるクリーニングブレード、該クリーニングブレードを備える画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。なお、カッコ内に本発明を実施するための形態において対応する部位及び符号等を示す。
〔1〕 移動する被清掃部材(感光体3)の表面に当接して該被清掃部材表面の付着物を除去するクリーニングブレードにおいて、前記被清掃部材の移動方向に直交する方向の長さに対応する幅をもつ短冊形状の弾性体基材(弾性体基材621)と、前記弾性体基材の前記被清掃部材に面する主面(ブレード下面62b側の面)の少なくとも端部(稜線部62c側の端部)に固設され、前記弾性体基材の端部を補強するとともに前記被清掃部材の当該クリーニングブレードが当接する部分(稜線部62c)における該被清掃部材の移動に伴う幅方向の表面形状変化に追従する可撓性を有する補強シート(補強シート622)と、前記補強シート上の少なくとも前記被清掃部材表面に当接する部分(稜線部62c)に形成され、前記弾性体基材よりも硬く、前記補強シートよりも前記被清掃部材に対する摩擦係数が低い硬質潤滑膜(硬質潤滑膜623)と、を備えることを特徴とするクリーニングブレード(クリーニングブレード60、図3〜図5)。
〔2〕 前記硬質潤滑膜は、紫外線硬化樹脂膜またはダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴とする前記〔1〕に記載のクリーニングブレード。
〔3〕 前記紫外線硬化樹脂膜の厚さが5μm以上、50μm以下であることを特徴とする前記〔2〕に記載のクリーニングブレード。
〔4〕 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚が2μm以上、10μm以下であることを特徴とする前記〔2〕に記載のクリーニングブレード。
〔5〕 前記ダイヤモンドライクカーボン膜は、水素含有ダイヤモンドライクカーボン(a−C:H)または水素フリーダイヤモンドライクカーボン(ta−C)からなることを特徴とする前記〔2〕に記載のクリーニングブレード。
〔6〕 前記ダイヤモンドライクカーボン膜が前記補強シートの表裏面それぞれに均等に形成されてなることを特徴とする前記〔2〕に記載のクリーニングブレード(図5)。
〔7〕 前記補強シートは、金属薄板であることを特徴とする前記〔1〕に記載のクリーニングブレード。
〔8〕 前記金属薄板の厚さが0.03mm以上、0.1mm以下であることを特徴とする前記〔7〕に記載のクリーニングブレード。
〔9〕 前記弾性体基材は、ウレタン基を含むゴムからなることを特徴とする前記〔1〕に記載のクリーニングブレード。
〔10〕 前記補強シートに前記硬質潤滑膜が形成され、ついで該硬質潤滑膜が形成された補強シートが前記弾性体基材に固着されてなることを特徴とする前記〔1〕に記載のクリーニングブレード。
〔11〕 像担持体(感光体3)と、該像担持体の表面を帯電する帯電手段(帯電装置4)と、帯電した像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該像担持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー像化する現像手段(現像装置5)と、該像担持体表面のトナー像を転写体に転写する転写手段(転写装置7)と、該像担持体表面に当接して該像担持体表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段(クリーニング装置6)と、を備えた画像形成装置において、前記クリーニングブレードとして前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のクリーニングブレード(クリーニングブレード60)を用いることを特徴とする画像形成装置(図1)。
〔12〕 像担持体(感光体3)と、少なくとも該像担持体の表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段(クリーニング装置6)と、該像担持体表面に滑剤を塗布する滑剤塗布手段(潤滑剤塗布装置10)とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、前記クリーニングブレードとして、前記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載のクリーニングブレード(クリーニングブレード60)を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ(プロセスカートリッジ1、図1)。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクリーニングブレードによれば、弾性体基材上の補強シートが弾性体基材の端部を補強し、補強シート上に潤滑性を有する硬質潤滑膜が設けられるので、クリーニングブレードの被清掃部材との当接部分(先端の稜線部)のめくれを抑制することができる。また、補強シートがクリーニングブレードの先端の稜線部における被清掃部材の表面形状変化に対して追随するので、被清掃部材の全幅においてクリーニングブレードの先端の稜線部が常に所定の圧力で当接するようになる。またこれに加えて、硬質潤滑膜が優れた耐摩耗性、潤滑性を有するので、被清掃部材表面を傷つけることなく長期間、良好なクリーニング性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるプリンタの概略構成図である。
【図2】トナーの円形度の測定方法の説明図である。
【図3】本発明に係るクリーニングブレードの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明に係るクリーニングブレードの第1の実施形態の構成を示す拡大断面図である。
【図5】本発明に係るクリーニングブレードの第2の実施形態の構成を示す拡大断面図である。
【図6】実施例における弾性体ブレードの摩耗幅の測定箇所を示す模式図である。
【図7】従来のクリーニングブレードの先端の稜線部における状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のクリーニングブレードを画像形成装置である電子写真プリンタ(以下、単にプリンタという)に適用した実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る画像形成装置の一実施形態であるプリンタの要部を示す概略構成図である。プリンタは、単一色の複写を行うものであり、図示しない画像読み取り部で読み取った画像データに基づいてモノクロ画像形成を行う。
【0015】
図1に示すように、プリンタは、像担持体としてのドラム状の感光体3を備えている。感光体3はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
【0016】
感光体3の周囲には帯電手段としての帯電装置4、潜像をトナー像化する現像手段である現像装置5、トナー像を記録媒体としての転写紙に転写する転写手段としての転写装置7、転写後の感光体3上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニング装置6、感光体3上に滑剤を塗布する滑剤塗布手段としての潤滑剤塗布装置10、感光体3を除電する除電ランプ(不図示)等が配置されている。14は転写ベルトである。
【0017】
帯電装置4は、感光体3に所定の距離を持って非接触で配置され、感光体3を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。帯電装置4によって一様帯電された感光体3は、図示しない潜像形成手段たる露光装置から画像データに基づいて光Lが照射され静電潜像が形成される。
【0018】
帯電装置4には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)を始めとする公知の手段が用いられる。
これらの帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。
【0019】
また、図示しない露光装置、除電ランプ等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。
【0020】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0021】
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザーは照射エネルギーが高く、また600〜800[nm]の長波長光を有するため、良好に使用される。
【0022】
現像装置5は、現像剤担持体としての現像ローラ51を有している。この現像ローラ51には、図示しない電源から現像バイアスが印加されるようになっている。現像装置5のケーシング内には、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53が設けられている。また、現像ローラ51に担持された現像剤を規制するためのドクタ54も設けられている。供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53の2本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ51に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ54により規制され、感光体3と対向する現像領域でトナーが感光体3上の潜像に付着する。
【0023】
クリーニング装置6は、本発明のクリーニングブレード60を有している。クリーニングブレード60は、感光体3の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体3に当接している。なお、クリーニングブレード60の詳細については後述する。
【0024】
潤滑剤塗布装置10は、固形潤滑剤103、潤滑剤加圧スプリング(不図示)等を備え、固形潤滑剤103を感光体3上に塗布する塗布ブラシとしてファーブラシ101を用いている。固形潤滑剤103は、図示しないブラケットに保持され、潤滑剤加圧スプリング(不図示)によりファーブラシ101側に加圧されている。そして、感光体3の回転方向に対して連れまわり方向に回転するファーブラシ101により固形潤滑剤103が削られて感光体3上に潤滑剤が塗布される。感光体3への潤滑剤塗布により感光体3表面の摩擦係数が非画像形成時に0.1以下に維持される。
【0025】
次に、プリンタにおける画像形成動作を説明する。
図示しない操作部などからプリント実行の信号を受信したら、帯電装置4、現像ローラ51にそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、露光装置及び除電ランプなどにもそれぞれ所定の電圧又は電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータ(不図示)により感光体3が図中矢印方向に回転駆動される。
【0026】
感光体3が図中矢印方向に回転すると、まず感光体表面が、帯電装置4によって所定の電位に帯電される。そして、図示しない露光装置から画像信号に対応した光Lが感光体3上に照射され、光Lが照射された部分の感光体3上が除電され静電潜像が形成される。
【0027】
静電潜像の形成された感光体3は、現像装置5との対向部で現像ローラ51上に形成された現像剤の磁気ブラシで感光体3表面を摺擦される。このとき、現像ローラ51上の負帯電トナーは、現像ローラ51に印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。このように、本実施形態では、感光体3上に形成された静電潜像は、現像装置5によって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。なお、本実施形態では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
【0028】
感光体3上に形成されたトナー像は、図示しない給紙部から上レジストローラと下レジストローラとの対向部を経て、感光体3と転写装置7との間に形成される転写領域に給紙される転写紙に転写される。このとき、転写紙は上レジストローラと下レジストローラとの対向部で画像先端と同期を取り供給される。また、転写紙への転写時には、所定の転写バイアスが印加される。トナー像が転写された転写紙は感光体3から分離され、図示しない定着手段としての定着装置へ搬送される。そして、定着装置を通過する事により、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙上に定着されて、転写紙は機外に排出される。
【0029】
一方、転写後の感光体3の表面は、クリーニング装置6で転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
【0030】
また、本プリンタにおいては、感光体3と、プロセス手段として帯電装置4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10などが枠体2に収められており、プロセスカートリッジ1として装置本体から一体的に着脱可能となっている。なお、本実施形態では、プロセスカートリッジ1としての感光体3とプロセス手段とを一体的に交換するようになっているが、感光体3、帯電装置4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10のような単位で新しいものと交換するような構成でもよい。
【0031】
次に、本プリンタに好適なトナーについて説明する。
本プリンタに用いるトナーとしては、画質向上のために、高円形化、小粒径化がし易い懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法により製造された重合トナーを用いるのが好ましい。特に、円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]以下の重合トナーを用いるのが好ましい。平均円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5[μm]のものを用いることにより、より高解像度の画像を形成することができる。
【0032】
ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に、分散剤として界面活性剤好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜0.5[ml]加え、更に測定試料(トナー)を0.1〜0.5[g]程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000〜1[万個/μl]となるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、図2(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をC1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図2(b)に示す真円の外周長をC2としたときのC2/C1を求め、その平均値を円形度とした。
【0033】
体積平均粒径については、コールターカウンター法によって求めることが可能である。具体的には、コールターマルチサイザー2e型(コールター社製)によって測定したトナーの個数分布や体積分布のデータを、インターフェイス(日科機社製)を介してパーソナルコンピューターに送って解析する。より詳しくは、1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液を電解液として用意する。そして、この電解水溶液100〜150[ml]中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1〜5[ml]加える。更に、これに被検試料としてのトナーを2〜20[mg]加え、超音波分散器で約1〜3分間分散処理する。そして、別のビーカーに電解水溶液100〜200[ml]を入れ、その中に分散処理後の溶液を所定濃度になるように加えて、上記コールターマルチサイザー2e型にかける。
【0034】
アパーチャーとしては、100[μm]のものを用い、50,000個のトナー粒子の粒径を測定する。チャンネルとしては、2.00〜2.52[μm]未満;2.52〜3.17[μm]未満;3.17〜4.00[μm]未満;4.00〜5.04[μm]未満;5.04〜6.35[μm]未満;6.35〜8.00[μm]未満;8.00〜10.08[μm]未満;10.08〜12.70[μm]未満;12.70〜16.00[μm]未満;16.00〜20.20[μm]未満;20.20〜25.40[μm]未満;25.40〜32.00[μm]未満;32.00〜40.30[μm]未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00[μm]以上32.0[μm]以下のトナー粒子を対象とする。そして、「体積平均粒径=ΣXfV/ΣfV」という関係式に基づいて、体積平均粒径を算出する。但し、Xは各チャンネルにおける代表径、Vは各チャンネルの代表径における相当体積、fは各チャンネルにおける粒子個数である。
【0035】
このような重合トナーにおいては、上述したように、粉砕トナーを感光体3表面から除去するときと同じようにして従来のクリーニングブレード92で除去しようとしても、その重合トナーを感光体3表面から十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生する。そこで、クリーニングブレード92の感光体3への当接圧を高めて、クリーニング性をアップしようとすると、クリーニングブレード92が早期に摩耗してしまうという問題があった。また、クリーニングブレード92と感光体3との摩擦力が高まって、クリーニングブレード92の感光体3と当接している先端の稜線部が感光体3の移動方向に引っ張られて、稜線部がめくれてしまった。クリーニングブレード92の稜線部がめくれると、異音や振動、稜線部の欠落などの様々な問題が生じてしまう。
そこで、発明者らは、この問題を解決すべく鋭意検討を行い、本発明を成すに至った。
【0036】
以下、本発明に係るクリーニングブレードの実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図3,図4を用いて、本発明に係るクリーニングブレードの第1の実施形態の構成について説明する。
図3は、本発明に係るクリーニングブレードの基本的構成を示す斜視図である。図3(a)はクリーニングブレード60の全体図、図3(b)は弾性体ブレード62の拡大図である。また、図4は、本発明に係るクリーニングブレードの第1の実施形態の構成を示す拡大断面図である。
【0037】
クリーニングブレード60は、図3(a),図4に示すように、金属や硬質プラスチックなどの剛性材料からなる短冊形状のホルダー61と、長手方向が感光体3の幅方向となる短冊形状の弾性体ブレード62と、で構成されている。また、弾性体ブレード62は、ホルダー61の一端側に接着剤などにより固定されており、ホルダー61の他端側は、クリーニング装置6のケースに片持ち支持されている。なお、62aは弾性体ブレード62の先端面、62bはブレード下面、62cは先端面62aとブレード下面62bで形成される稜線部(先端稜線部ともいう)である。
【0038】
また、クリーニングブレード60を構成する弾性体ブレード62は、図3(b),図4に示すように、被清掃部材である感光体3の移動方向(回転方向)に直交する方向の長さ(幅)に対応する幅をもつ短冊形状の弾性体基材621と、弾性体基材621の感光体3に面する主面(ブレード下面62b側)の少なくとも端部(先端面62a側)に固設され、弾性体基材621の端部を補強するとともに感光体3の当該クリーニングブレード60が当接する部分(稜線部62c)における感光体3の移動に伴う幅方向の表面形状変化に追従する可撓性を有する補強シート622と、補強シート622上の少なくとも感光体3表面に当接する部分(稜線部62c)に形成され、弾性体基材621よりも硬く、補強シート622よりも感光体3表面に対する摩擦係数が低い硬質潤滑膜623と、を備える。
【0039】
ここで、弾性体基材621は、感光体3の偏心や感光体3表面の微小なうねりなどに変形して追随できるように、高い反発弾性体率を有するものが好ましく、ウレタン基を含むゴムであるウレタンゴムなどが好適である。
【0040】
また、弾性体基材621の硬度としては、25℃における硬度が70〜75度(JIS A)のウレタンゴムが好ましい。ウレタンゴムの硬度が75度を超えると、柔軟性に乏しくなり、例えば、ホルダー61が微小に傾いてクリーニング装置6に取り付けられるなどしたときに、クリーニングブレード60の軸方向一端側と他端側とで当接圧が異なる所謂偏当りしやすくなり、軸方向で均一な当接圧が得にくくなる。その結果、クリーニング性が低下するおそれがある。
一方、硬度が70度未満の場合は、重合トナーでもクリーニングできるよう当接圧を高く設定したときに、クリーニングブレード60が反ってしまい、クリーニングブレード60の稜線部62cが浮きあがって、クリーニングブレード60のブレード下面62bが感光体3と当接する所謂腹当たり現象が生じてしまう。腹当たり現象が生じると、クリーニングブレード60と感光体3表面との当接面積が急激に増大するため、クリーニングブレード60を大きな力で押しつけても逆に当接圧は小さくなり、クリーニング性が低下してしまうため不適である。
【0041】
補強シート622は、適度な強度と可撓性を有する金属薄板であることが好ましく、例えばステンレス薄板やNi合金の薄板などでよい。ただし、補強シート622は、少なくとも、弾性体基材261の端部を補強する程度の剛性(強度)と、感光体3の当該クリーニングブレード60が当接する部分(稜線部62c)における感光体3の移動に伴う幅方向の表面形状変化に追従する可撓性と、を有する限り、その材質を金属に限定する必要はなく、樹脂やその他の材料でもよい。
【0042】
またこのとき、この金属薄板の厚さが0.03mm以上、0.1mm以下であることが好適である。すなわち、本実施形態においては、弾性体基材621のホルダー61とは反対側の面であるブレード下面62b側の面に、補強シート622として、金属薄板が固着されており、その金属薄板の厚さを0.03mm以上、0.1mm以下とすることにより、弾性体基材621の弾性を阻害することなく、感光体3の当該クリーニングブレード60が当接する部分(稜線部62c)における感光体3の移動に伴う幅方向の表面形状変化への追随性を確保している。なお、金属薄板の厚さが0.03mm未満では稜線部62cのめくれ抑制が十分でなく、厚さが0.1mmより大では金属薄板の剛性が強くなり感光体3の表面形状変化への追随性が劣るものとなってしまう。
【0043】
硬質潤滑膜623は、紫外線硬化樹脂膜であることが好ましく、例えばスプレー塗工、ディップ塗工、あるいはスクリーン印刷等により補強シート622の感光体3と当接する部分を被覆するように形成する。材料として紫外線硬化樹脂を用いることで、補強シート622の先端部に付着した樹脂に紫外線を照射させるだけで、所望の硬度を有する硬質潤滑膜623を得ることができ、クリーニングブレード60を安価に製造することができる。
【0044】
なお、ここで用いる紫外線硬化樹脂としては、一官能基あたりの分子量300〜1500のモノマーを用いることが好ましい。一官能基あたりの分子量が1500を越えると、硬質潤滑膜623は脆弱になり過ぎ、クリーニングブレード60の稜線部62cがめくれて図7(b)のような先端面摩耗を生じてしまい、長期に渡るクリーニング性を保持できなくなる。逆に分子量300を下回ると、硬質潤滑膜623が剛直となり過ぎて、硬質潤滑膜623の耐摩耗性能が低下したり、ビビリ音が発生しやすくなったりしてしまう。
【0045】
また、硬質潤滑膜623を、補強シート622の先端部領域、すなわち稜線部62cを含んで先端面62a側及びブレード下面62b側の感光体3と当接する可能性のある領域に形成するとよい。本実施形態では、金属薄板である補強シート622の先端面62a側、ブレード下面62b側それぞれにおいて、稜線部62cから50μm離れた位置までの領域であって、ブレード長手方向にわたって硬質潤滑膜623を形成している。
【0046】
また、硬質潤滑膜623である紫外線硬化樹脂膜の膜厚が5μm以上、50μm以下であることが好適である。紫外線硬化樹脂膜の膜厚が5μm未満だと、硬質潤滑膜623の摩耗に伴い補強シート622が早期に露出し、感光体3表面を傷つけるようになり耐久性が不十分となってしまうためである。また、紫外線硬化樹脂膜の膜厚が50μmを超えると、クリーニングブレード60の稜線部62cの剛性が大きくなってしまい感光体3の表面形状変化への追随性の低下からトナーのすり抜けが増大してクリーニング不良が発生しやすくなるためである。さらに、稜線部62cにおける硬質潤滑膜623の膜厚が50μmを超えると、稜線部62cから離れた位置において硬質潤滑膜623が非常に厚くなる。これは、スプレー塗工やディップ塗工のように、液体の材料を付着させて硬質潤滑膜623を形成するとき、稜線部62cは表面張力の関係で塗膜が形成されにくく、稜線部62cから離れるにつれて硬質潤滑膜623の膜厚は増加する傾向があるためである。その結果、クリーニングブレード60の稜線部62cのコーナー角度が鈍角となり、稜線部62cのコーナー角度が直角である場合に比べて、先端面62aと感光体3とがなす当接部の上流側の空隙X(図4参照)が狭くなってしまう。そうなると、長期に渡ってクリーニング動作を行うと空隙Xにトナーが堆積し、せき止められた空隙X内のトナーに逃げ場がなくなって、空隙X内のトナーが徐々に感光体3の下流側に押し出され、クリーニング不良が発生してしまうことになる。
【0047】
以上の構成のクリーニングブレード60を用いれば、先端部に硬質潤滑膜623を形成した金属薄板である補強シート622を設置することにより、弾性体基材621上の補強シート622が弾性体基材621の端部を補強するとともに、補強シート622上の硬質潤滑膜623が潤滑性(感光体3との摩擦抵抗が小さいこと)を示すので、クリーニングブレード60を感光体3に当接させた際に、その当接部分(稜線部62c)が感光体3の移動方向へ移動してめくれるのを抑制できるようになる。また、補強シート622が弾性体基材621の端部を補強しつつ、クリーニングブレード60の当接部分における感光体3の表面形状変化に対して追随するので、感光体3の全幅においてクリーニングブレード60の稜線部62cすなわち硬質潤滑膜623が常に所定の圧力で当接するようになる。またこれに加えて、硬質潤滑膜623が優れた耐摩耗性、潤滑性を有するので、感光体3表面を傷つけることなく長期間、良好なクリーニング性を維持することができる。
【0048】
(第2の実施形態)
図5を用いて、本発明に係るクリーニングブレードの第2の実施形態の構成について説明する。なお、本実施形態におけるクリーニングブレード60の基本的構成は、第1の実施形態と同じであり、図3に示す構成である。また、本実施形態のクリーニングブレード60は、硬質潤滑膜623が第1の実施形態のものと異なり、そのほかは第1の実施形態で示したものと同じであることから、以下、硬質潤滑膜623についてのみ説明する。
【0049】
すなわち硬質潤滑膜623は、ダイヤモンドライクカーボン膜であることが好ましく、例えばプラズマCVD法またはPVD法によって補強シート622の感光体3と当接する部分を被覆するように形成する。なお、ここで用いるダイヤモンドライクカーボン膜は、水素含有ダイヤモンドライクカーボン(a−C:H)、水素フリーダイヤモンドライクカーボン(ta−C)いずれでもよい。
【0050】
ダイヤモンドライクカーボンからなる硬質潤滑膜623は、耐摩耗性が極めて高く、かつ面粗度が低く、感光体3表面に対して低摩擦係数であるので良好なクリーニング性を長期に維持することができる。
【0051】
また、硬質潤滑膜623を、補強シート622の少なくとも先端部領域、すなわち稜線部62cを含んで先端面62a側及びブレード下面62b側の感光体3と当接する可能性のある領域に形成するとよい。本実施形態では、金属薄板である補強シート622の先端面62a側、ブレード下面62b側それぞれにおいて、稜線部62cから50μm離れた位置までの領域であって、ブレード長手方向にわたって硬質潤滑膜623を形成している。
【0052】
また、ダイヤモンドライクカーボンからなる硬質潤滑膜623を補強シート622のブレード下面62b側とは反対側の面の先端部領域側にも形成するとよく、特に、図5に示すように、補強シート622の表裏面(ブレード下面62b側及びその反対側の面)それぞれに均等に形成するとよい。補強シート622の一方の主面(ブレード下面62b側の面)のみにダイヤモンドライクカーボンからなる硬質潤滑膜623を形成した場合、膜の内部応力等により弾性体ブレード62に反りが生じて、稜線部62cにおける感光体3表面への均一な当接が阻害されるところ、補強シート622の両面に硬質潤滑膜623を形成することにより、その両面において膜の内部応力を均衡させて弾性体ブレード62の反りを抑制し、稜線部62cにおける感光体3表面への均一な当接を実現することができる。
【0053】
また、硬質潤滑膜623であるダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚が2μm以上、10μm以下であることが好適である。ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚が2μm未満であると、硬質潤滑膜623の摩耗に伴い補強シート622が早期に露出し、感光体3表面を傷つけるようになり耐久性が不十分となってしまうためである。また、ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚が10μmを超えると、クリーニングブレード60の稜線部62cの剛性が大きくなってしまい感光体3の表面形状変化への追随性の低下からトナーのすり抜けが増大してクリーニング不良が発生しやすくなるためである。また、硬質潤滑膜623自体の剥離の可能性が生じ好ましくない。
【0054】
以上の構成のクリーニングブレード60を用いれば、第1の実施形態の場合と同様に、先端部に硬質潤滑膜623を形成した金属薄板である補強シート622を設置することにより、弾性体基材621上の補強シート622が弾性体基材621の端部を補強するとともに、補強シート622上の硬質潤滑膜623が潤滑性(感光体3との摩擦抵抗が小さいこと)を示すので、クリーニングブレード60を感光体3に当接させた際に、その当接部分(稜線部62c)が感光体3の移動方向へ移動してめくれるのを抑制できるようになる。また、補強シート622が弾性体基材621の端部を補強しつつ、クリーニングブレード60の当接部分における感光体3の表面形状変化に対して追随するので、感光体3の全幅においてクリーニングブレード60の稜線部62cすなわち硬質潤滑膜623が常に所定の圧力で当接するようになる。またこれに加えて、硬質潤滑膜623が優れた耐摩耗性、潤滑性を有するので、感光体3表面を傷つけることなく長期間、良好なクリーニング性を維持することができる。
【0055】
なお、第1,2の実施形態いずれにおいても、まず補強シート622に硬質潤滑膜623を形成し、ついで該硬質潤滑膜623が形成された補強シート622を弾性体基材621に固着してクリーニングブレード60を完成させるとよい。硬質潤滑膜623形成時の悪影響を弾性体基材621に及ぼさないためである。詳しくは、第1の実施形態では、樹脂を硬化させる際に照射する紫外線による弾性体基材621の劣化を回避し、第2の実施形態では、ダイヤモンドライクカーボン形成時の熱による弾性体基材621の劣化を回避する。
【実施例】
【0056】
以下、発明者らが行った本発明の検証実験について説明する。
〔実施例A〕
本発明の第1の実施形態において、弾性体ブレード62を構成する弾性体基材621、補強シート622、硬質潤滑膜623の条件をそれぞれ変化させて、クリーニングブレード60(図3,図4)を作製し、耐久試験を行った。
【0057】
[供試材]
弾性体基材621、補強シート622、硬質潤滑膜623の条件は次のとおりである。
(1)弾性体基材621
弾性体基材621としては、25[℃]における物性が以下の物性となっている4つのウレタンゴム(材質No.ウレタンゴム1〜4)を用いた。
ウレタンゴム1:硬度74度、反発弾性率49[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム2:硬度69度、反発弾性率50[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム3:硬度72度、反発弾性率31[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム4:硬度71度、反発弾性率18[%](東洋ゴム工業製)
【0058】
なお、ウレタンゴムの硬度は、島津製作所製デュロメーターを用い、JIS K6253に準じて測定した。試料は厚さ6[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
また、ウレタンゴムの反発弾性は、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用い、JIS K6255に準じて測定した。試料は厚さ4[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
【0059】
(2)補強シート622
補強シート622としては、以下の4つの金属薄板(材質No.金属薄板1〜4)を用いた。
金属薄板1:SUS304、板厚0.03[mm]
金属薄板2:SUS304、板厚0.1[mm]
金属薄板3:SUS304、板厚0.2[mm]
金属薄板4:Ni、板厚0.03[mm]
【0060】
(3)硬質潤滑膜623
硬質潤滑膜623としては、以下の5つの紫外線硬化樹脂膜(材質No.表面層A1〜A5)の材料を用いた。
(表面層A1)
ウレタンアクリレートオリゴマー1:根上工業 UN−904 0.5部
ウレタンアクリレートオリゴマー2:根上工業 UN−2700 19.5部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 2部
溶媒:2−ブタノン 78部
塗膜硬度:鉛筆硬度3H
摩擦係数:0.5
(表面層A2)
ウレタンアクリレートオリゴマー1:根上工業 UN−904 5部
ウレタンアクリレートオリゴマー2:根上工業 UN−2700 15部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 2部
溶媒:2−ブタノン 78部
塗膜硬度:鉛筆硬度4H
摩擦係数:0.4
(表面層A3)
ウレタンアクリレートオリゴマー1:根上工業 UN−904 8部
ウレタンアクリレートオリゴマー2:根上工業 UN−2700 12部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 2部
溶媒:2−ブタノン 78部
塗膜硬度:鉛筆硬度7H
摩擦係数:0.3
(表面層A4)
ウレタンアクリレートオリゴマー1:根上工業 UN−3320HA 5部
ウレタンアクリレートオリゴマー2:根上工業 UN−2700 15部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 2部
溶媒:2−ブタノン 78部
塗膜硬度:鉛筆硬度3H
摩擦係数:0.4
(表面層A5)
ウレタンアクリレートオリゴマー1:根上工業 UN−904 20部
重合開始剤:チバスペシャリティーケミカルズ社 イルガキュア184 2部
溶媒:2−ブタノン 78部
塗膜硬度:鉛筆硬度9H
摩擦係数:0.3
【0061】
なお、硬質潤滑膜623の鉛筆硬度は、コーテック株式会社製鉛筆引っかき試験機KTVF−2380を用い、JIS K5600−5−4に準じて測定した。試料は、50[mm]×50[mm]のガラス板上に硬質潤滑膜623の材料を約10[μm]スプレー塗工したものとした。
また、硬質潤滑膜623の摩擦係数は、新東科学製トライボギアミューズ94iを用い、最大静止摩擦係数を測定した。試料は、50[mm]×50[mm]のガラス板上にコーティング材料を約10[μm]スプレー塗工したものとした。
【0062】
[実験手順]
次に、検証実験の手順について説明する。
まず、補強シート622として、前記金属薄板1〜4のいずれかを用いて所定の寸法に成型し、稜線部62c側となる箇所に硬質潤滑膜623を形成した。硬質潤滑膜623はスプレー塗工により前記表面層A1〜A5のいずれかを形成した。具体的には、補強シート622に対し、ブレード下面62b側及び先端面62a側の2方向から10[mm/s]のスプレーガン移動速度にて所定の膜厚になるように重ね塗りを行い、3分間指触乾燥後紫外線露光(140[W/cm]×5[m/min]×5パス)を行った。ただし、ブレード下面62b側はマスキングテープにより先端3[mm]幅に硬質潤滑膜623が形成されるように規制した。その後、補強シート622に対して、厚さ1.8[mm]の前記ウレタンゴム1〜4のいずれかの弾性体基材621を貼り合わせて短冊形状の弾性体ブレード62を作製した。
つぎに、得られた弾性体ブレード62をリコー製カラー複合機 imagio MP C4500に搭載できる板金ホルダー(ホルダー61)に接着剤により固定し、試作のクリーニングブレード60とした。
【0063】
これを同じくリコー製カラー複合機 imagio MP C4500(図1と同様の構成)に取り付け、実験例A1〜A8の画像形成装置を作製した。なお、クリーニングブレード60は、線圧:20[g/cm]、クリーニング角:79[°]となるように取り付けた。また、本装置は感光体3表面への潤滑剤塗布装置10を備えており、潤滑剤塗布により感光体3表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。このときの感光体表面の静止摩擦係数の測定は、公知のオイラーのベルトの静止摩擦係数の測定方法である(例えば、特開平9−166919号公報の段落番号0046〜0048に記載されている)。
【0064】
検証実験には、重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9[μm]
外添剤 :小粒径シリカ1.5部(クラリアント製H2000)
小粒径酸化チタン0.5部(テイカ製MT−150AI)
大粒径シリカ1.0部(電気化学工業製UFP−30H)
【0065】
[評価項目]
検証実験は、実験室環境:21[℃]・65[%RH]、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50000枚(コピー用紙A4横)を通紙して行った。
評価項目は以下のとおりである。
【0066】
(1)ブレードエッジ摩耗幅:図5に示すようにブレード下面62b側における摩耗幅
(2)クリーニング不良発生:50000枚連続通紙後に以下の評価画像を形成して、クリーニング不良の有無を目視観察した。
評価時画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43[mm]幅、3本チャート
出力20枚(コピー用紙A4横)
(3)異音発生:有無
(4)感光体表面傷の発生:有無(目視観察)
【0067】
以下に、実験例A1〜A8のクリーニングブレードの検証実験の条件及び結果を示す。
なお、硬質潤滑膜623の膜厚は、ブレード下面62b側の稜線部62cから感光体3移動方向に50μm離れた位置においてキーエンス製形状測定顕微鏡VK9500により測定した。
また、クリーニングブレード60の先端稜線部62cの摩擦係数は、新東科学株式会社製・摩擦摩耗試験機(ブレードホルダー装着)を使い測定した。具体的には、ガラス板上に感光体3表面層と同成分の被膜が形成された「擬似感光体」に、クリーニングブレード60を上述と同じ接触条件(角度:79°、線圧:20[g/cm])になるよう取り付け、ガラス板を動かしてその時の動摩擦係数を測定した。
【0068】
(実験例A1)
・弾性体基材621:ウレタンゴム2
・補強シート622:金属薄板1
・硬質潤滑膜623:表面層A3(膜厚:5[μm])
・先端摩擦係数:0.3
・ブレードエッジ摩耗幅:6[μm]
・クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0069】
(実験例A2)
・弾性体基材621:ウレタンゴム1
・補強シート622:金属薄板2
・硬質潤滑膜623:表面層A2(膜厚:10[μm])
・先端摩擦係数:0.3
・ブレードエッジ摩耗幅:7[μm]
・クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0070】
(実験例A3)
・弾性体基材621:ウレタンゴム3
・補強シート622:金属薄板4
・硬質潤滑膜623:表面層A5(膜厚:50[μm])
・先端摩擦係数:0.3
・ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
・クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0071】
(実験例A4)
・弾性体基材621:ウレタンゴム4
・補強シート622:金属薄板1
・硬質潤滑膜623:表面層A4(膜厚:10[μm])
・先端摩擦係数:0.4
・ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
・クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0072】
(実験例A5)
・弾性体基材621:ウレタンゴム2
・補強シート622:金属薄板4
・硬質潤滑膜623:表面層A1(膜厚:10[μm])
・先端摩擦係数:0.2
・ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
・クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0073】
(実験例A6)
・弾性体基材621:ウレタンゴム3
・補強シート622:金属薄板3
・硬質潤滑膜623:表面層A1(膜厚:20[μm])
・先端摩擦係数:0.2
・ブレードエッジ摩耗幅:8[μm]
・クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良5ヶ所
・異音発生:なし
【0074】
(実験例A7)
・弾性体基材621:ウレタンゴム4
・補強シート622:金属薄板2
・硬質潤滑膜623:なし
・先端摩擦係数:0.5
・ブレードエッジ摩耗幅:5[μm]
・クリーニング不良発生:スジ状クリーニング不良10ヶ所
・異音発生:なし
・感光体表面傷発生
【0075】
(実験例A8)
・弾性体基材621:ウレタンゴム3
・補強シート622:なし
・硬質潤滑膜623:表面層A4(膜厚:5[μm])
・先端摩擦係数:0.4
・ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
・クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良2ヶ所
・異音発生:ビビリ発生
・クリーニングブレードの先端面えぐれ摩耗発生
【0076】
【表1】

【0077】
表1は、実験例A1〜A8の検証実験の結果をまとめたものである。
実験例A1〜A5においては、いずれも、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができ、クリーニングブレード60の先端面のえぐれ摩耗、及び異音の発生も抑えることができた。
また、実験例A1〜A5においては、補強シート622(金属薄板)上に硬質潤滑膜623をあらかじめ形成するため、硬質潤滑膜623硬化のための紫外線による弾性体基材621のベースウレタンの劣化を回避することが可能で、かつ硬質潤滑膜623自体の硬化処理を適切に行うことができる。これにより耐摩耗性の高い硬質潤滑膜623を形成することができる。また、補強シート622(金属薄板)は十分に薄いものを用いることにより感光体3表面へのブレード先端の稜線部62cの密着性、追随性を損なうことが無く、弾性体基材621の弾性により良好なクリーニング性を維持できる。合わせて、稜線部62cにおいて補強シート622(金属薄板)は弾性体基材621(ウレタンゴム)よりもめくれが生じにくいので、先端面のえぐれ摩耗を抑制することができる。さらには、補強シート622(金属薄板)が弾性体基材621と積層されているためブレード先端に金属薄板のみでは回復不能な変形に至る大きな応力が加わった場合にも、変形することなく良好なクリーニング性を維持することができる。
【0078】
一方、実験例A6においては、クリーニング評価において、帯状クリーニング不良が発生した。これは、補強シート622(金属薄板)の厚さが0.2[mm]と厚いため、補強シート622の剛性が大きく感光体3表面への密着性、追随性が十分でなかったためと考えられる。
また、実験例A7においては、硬質潤滑膜623を形成せず補強シート622(金属薄板)が直接感光体3表面に接する構成となっている。このような状態では、感光体3表面との摩擦抵抗が大きくなりやすいと考えられ、感光体3表面に傷を発生させる結果となった。これによりスジ状の(帯状よりも幅の狭い)クリーニング不良が発生している。
また、実験例A8においては、補強シート622(金属薄板)を積層せず、弾性体基材621に直接硬質潤滑膜623が形成されているため、稜線部62cのめくれが回避できずクリーニングブレードにえぐれ摩耗が発生している。さらには、ビビリ異音も発生しており、これらにより帯状のクリーニング不良が発生する結果となった。
【0079】
〔実施例B〕
本発明の第2の実施形態において、弾性体ブレード62を構成する弾性体基材621、補強シート622、硬質潤滑膜623の条件をそれぞれ変化させて、クリーニングブレード60(図3,図5)を作製し、耐久試験を行った。
【0080】
[供試材]
弾性体基材621、補強シート622、硬質潤滑膜623の条件は次のとおりである。
(1)弾性体基材621
弾性体基材621としては、25[℃]における物性が以下の物性となっている4つのウレタンゴム(材質No.ウレタンゴム1〜4)を用いた。
ウレタンゴム1:硬度74度、反発弾性率49[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム2:硬度69度、反発弾性率50[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム3:硬度72度、反発弾性率31[%](東洋ゴム工業製)
ウレタンゴム4:硬度71度、反発弾性率18[%](東洋ゴム工業製)
【0081】
なお、ウレタンゴムの硬度は、島津製作所製デュロメーターを用い、JIS K6253に準じて測定した。試料は厚さ6[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
また、ウレタンゴムの反発弾性は、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用い、JIS K6255に準じて測定した。試料は厚さ4[mm]以上となるように約2[mm]のシートを重ね合わせたものとした。
【0082】
(2)補強シート622
補強シート622としては、以下の4つの金属薄板(材質No.金属薄板1〜4)を用いた。
金属薄板1:SUS304、板厚0.03[mm]
金属薄板2:SUS304、板厚0.1[mm]
金属薄板3:SUS304、板厚0.2[mm]
金属薄板4:Ni、板厚0.03[mm]
【0083】
(3)硬質潤滑膜623
硬質潤滑膜623としては、以下の5つのダイヤモンドライクカーボン膜(材質No.表面層B1〜B5)を用いた。
(表面層B1)
水素フリーダイヤモンドライクカーボン(ta−C)膜(膜厚2μm)
摩擦係数:0.2
(表面層B2)
ta−C膜(膜厚10μm)
摩擦係数:0.15
(表面層B3)
ta−C膜(膜厚0.3μm)
摩擦係数:0.3
(表面層B4)
ta−C膜(膜厚20μm)
摩擦係数:0.15
(表面層B5)
水素含有ダイヤモンドライクカーボン(a−C:H)膜(膜厚5μm)
摩擦係数:0.2
【0084】
なお、硬質潤滑膜623の摩擦係数は、新東科学製トライボギアTYPE HHS2000にボール圧子を装着して、最大静止摩擦係数を測定した。
【0085】
[実験手順]
次に、検証実験の手順について説明する。
まず、補強シート622として、前記金属薄板1〜4のいずれかを用いて所定の寸法に成型し、稜線部62c側となる箇所にPVD法により硬質潤滑膜623を形成した。前記表面層B1〜表面層B5はいずれも先端面62a側、ブレード下面62b側及びブレード下面62b側とは反対側の面で3[mm]幅に硬質潤滑膜623が形成されるようにマスキングして形成した。その後、補強シート622に対して、厚さ1.8[mm]の前記ウレタンゴム1〜4のいずれかの弾性体基材621を貼り合わせて短冊形状の弾性体ブレード62を作製した。
つぎに、得られた弾性体ブレード62をリコー製カラー複合機 imagio MP C4500に搭載できる板金ホルダー(ホルダー61)に接着剤により固定し、試作のクリーニングブレード60とした。
【0086】
これを同じくリコー製カラー複合機 imagio MP C4500(図1と同様の構成)に取り付け、実験例B1〜B8の画像形成装置を作製した。なお、クリーニングブレード60は、線圧:20[g/cm]、クリーニング角:79[°]となるように取り付けた。また、本装置は感光体3表面への潤滑剤塗布装置10を備えており、潤滑剤塗布により感光体3表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。このときの感光体表面の静止摩擦係数の測定は、公知のオイラーのベルトの静止摩擦係数の測定方法である(例えば、特開平9−166919号公報の段落番号0046〜0048に記載されている)。
【0087】
検証実験には、重合法により作製したトナーを用いた。なお、トナーの物性は、以下のとおりである。
トナー母体:円形度0.98、平均粒径4.9[μm]
外添剤 :小粒径シリカ1.5部(クラリアント製H2000)
小粒径酸化チタン0.5部(テイカ製MT−150AI)
大粒径シリカ1.0部(電気化学工業製UFP−30H)
【0088】
[評価項目]
検証実験は、実験室環境:21[℃]・65[%RH]、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50000枚(コピー用紙A4横)を連続通紙して行った。
評価項目は以下のとおりである。
【0089】
(1)ブレードエッジ摩耗幅:図5に示すようにブレード下面62b側における摩耗幅
(2)クリーニング不良発生:連続通紙開始直後(初期)と50000枚連続通紙後に以下の評価画像を形成して、クリーニング不良の有無を目視観察した。
・評価画像:縦帯パターン(紙進行方向に対して)43[mm]幅、3本チャート
出力20枚(コピー用紙A4横)
(3)異音発生:有無
(4)感光体表面傷の発生:有無(目視観察)
【0090】
以下に、実験例B1〜B8のクリーニングブレードの検証実験の条件及び結果を示す。
なお、硬質潤滑膜623の膜厚は、ブレード下面62b側の稜線部62cから感光体3移動方向に50μm離れた位置においてキーエンス製形状測定顕微鏡VK9500により測定した。
また、クリーニングブレード60の先端稜線部62cの摩擦係数は、新東科学株式会社製・摩擦摩耗試験機(ブレードホルダー装着)を使い測定した。具体的には、ガラス板上に感光体3表面層と同成分の被膜が形成された「擬似感光体」に、クリーニングブレード60を上述と同じ接触条件(角度:79°、線圧:20[g/cm])になるよう取り付け、ガラス板を動かしてその時の動摩擦係数を測定した。
【0091】
(実験例B1)
・弾性体基材621:ウレタンゴム3
・補強シート622:金属薄板1
・硬質潤滑膜623:表面層B1(膜厚:2[μm])
・先端摩擦係数:0.2
・ブレードエッジ摩耗幅:2[μm]
・初期クリーニング不良発生:なし
・連続通紙後クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0092】
(実験例B2)
・弾性体基材621:ウレタンゴム2
・補強シート622:金属薄板2
・硬質潤滑膜623:表面層B2(膜厚:10[μm])
・先端摩擦係数:0.15
・ブレードエッジ摩耗幅:1[μm]
・初期クリーニング不良発生:なし
・連続通紙後クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0093】
(実験例B3)
・弾性体基材621:ウレタンゴム4
・補強シート622:金属薄板1
・硬質潤滑膜623:表面層B5(膜厚:5[μm])
・先端摩擦係数:0.2
・ブレードエッジ摩耗幅:2[μm]
・初期クリーニング不良発生:なし
・連続通紙後クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0094】
(実験例B4)
・弾性体基材621:ウレタンゴム1
・補強シート622:金属薄板1
・硬質潤滑膜623:表面層B1(膜厚:2[μm])
・先端摩擦係数:0.2
・ブレードエッジ摩耗幅:1.5[μm]
・初期クリーニング不良発生:なし
・連続通紙後クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0095】
(実験例B5)
・弾性体基材621:ウレタンゴム2
・補強シート622:金属薄板4
・硬質潤滑膜623:表面層B1(膜厚:2[μm])
・先端摩擦係数:0.2
・ブレードエッジ摩耗幅:1[μm]
・初期クリーニング不良発生:なし
・連続通紙後クリーニング不良発生:なし
・異音発生:なし
【0096】
(実験例B6)
・弾性体基材621:ウレタンゴム3
・補強シート622:金属薄板2
・硬質潤滑膜623:表面層B3(膜厚:0.3[μm])
・先端摩擦係数:0.3
・ブレードエッジ摩耗幅:10[μm]
・初期クリーニング不良発生:なし
・連続通紙後クリーニング不良発生:スジ状クリーニング不良7ヶ所
・異音発生:なし
・感光体表面傷発生
【0097】
(実験例B7)
・弾性体基材621:ウレタンゴム2
・補強シート622:金属薄板3
・硬質潤滑膜623:なし
・先端摩擦係数:0.5
・ブレードエッジ摩耗幅:15[μm]
・初期クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良数ヶ所
・連続通紙後クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良5ヶ所
・異音発生:なし
・感光体表面傷発生
【0098】
(実験例B8)
・弾性体基材621:ウレタンゴム2
・補強シート622:金属薄板2
・硬質潤滑膜623:表面層B4(膜厚:20[μm])
・先端摩擦係数:0.15
・ブレードエッジ摩耗幅:2[μm]
・初期クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良数ヶ所
・連続通紙後クリーニング不良発生:帯状クリーニング不良4ヶ所
・異音発生:なし
【0099】
【表2】

【0100】
表2は、実験例B1〜B8の検証実験の結果をまとめたものである。
実験例B1〜B6においては、いずれも、通紙初期において良好なクリーニング性を維持することができ、クリーニングブレード60の先端面のえぐれ摩耗、及び異音の発生も抑えることができた。また、実験例B1〜B5においては、いずれも、経時にわたり良好なクリーニング性を維持することができ、クリーニングブレード60の先端面のえぐれ摩耗、及び異音の発生も抑えることができた。
実験例B1〜B6においては、補強シート622(金属薄板)上に耐摩耗性がきわめて高く、低摩擦係数の硬質潤滑膜623を形成したため、クリーニングブレード60の摩耗は良好に抑制することができた。また、補強シート622(金属薄板)は十分に薄いものを用いることにより感光体3表面へのブレード先端の稜線部62cの密着性、追随性を損なうことが無く、弾性体基材621の弾性により良好なクリーニング性を維持できる。合わせて、稜線部62cにおいて補強シート622(金属薄板)は弾性体基材621(ウレタンゴム)よりもめくれが生じにくいので、先端面のえぐれ摩耗を抑制することができる。さらには、補強シート622(金属薄板)が弾性体基材621と積層されているためブレード先端に金属薄板のみでは回復不能な変形に至る大きな応力が加わった場合にも、変形することなく良好なクリーニング性を維持することができる。
【0101】
なお、実験例B6においては、クリーニング評価において、50000枚連続通紙後にスジ状(帯状よりも幅の狭い)クリーニング不良が発生した。これは、ダイヤモンドライクカーボンからなる硬質潤滑膜623の膜厚が0.3[μm]と薄いため、早期に硬質潤滑膜623が摩耗し、補強シート622(金属薄板)が露出してしまった為と考えられる。
【0102】
一方、実験例B7においては、硬質潤滑膜623を形成せず補強シート622(金属薄板)が直接感光体3表面に接する構成となっている。このような状態では、感光体3表面との摩擦抵抗が大きくなりやすいと考えられ、感光体3表面に傷を発生させる結果となった。さらに、補強シート622(金属薄板)が0.2[mm]と厚く、感光体3表面への密着性、追随性が十分でなかったことも考えられ、これらにより帯状のクリーニング不良が発生したと考えられる。
また、実験例B8においては、補強シート622(金属薄板)上に形成した硬質潤滑膜623の膜厚が20[μm]と厚く、高硬度の硬質潤滑膜623の影響により補強シート622が撓むことができず感光体3表面への密着性、追随性が十分でなかったことから帯状クリーニング不良が生じる結果となった。
【0103】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
1 プロセスカートリッジ
2 枠体
3 感光体
4 帯電装置
5 現像装置
6 クリーニング装置
7 転写装置
10 潤滑剤塗布装置
14 転写ベルト
51 現像ローラ
52 供給スクリュ
53 攪拌スクリュ
54 ドクタ
60,92 クリーニングブレード
61 ホルダー
62 弾性体ブレード
62a,92a 先端面
62b,92c ブレード下面
62c,92c 稜線部
101 ファーブラシ
103 固形潤滑剤
621 弾性体基材
622 補強シート
623 硬質潤滑膜
L 光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特許第3602898号公報
【特許文献2】特開2004−233818号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する被清掃部材の表面に当接して該被清掃部材表面の付着物を除去するクリーニングブレードにおいて、
前記被清掃部材の移動方向に直交する方向の長さに対応する幅をもつ短冊形状の弾性体基材と、
前記弾性体基材の前記被清掃部材に面する主面の少なくとも端部に固設され、前記弾性体基材の端部を補強するとともに前記被清掃部材の当該クリーニングブレードが当接する部分における該被清掃部材の移動に伴う幅方向の表面形状変化に追従する可撓性を有する補強シートと、
前記補強シート上の少なくとも前記被清掃部材表面に当接する部分に形成され、前記弾性体基材よりも硬く、前記補強シートよりも前記被清掃部材に対する摩擦係数が低い硬質潤滑膜と、
を備えることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
前記硬質潤滑膜は、紫外線硬化樹脂膜またはダイヤモンドライクカーボン膜であることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
前記紫外線硬化樹脂膜の厚さが5μm以上、50μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のクリーニングブレード。
【請求項4】
前記ダイヤモンドライクカーボン膜の膜厚が2μm以上、10μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のクリーニングブレード。
【請求項5】
前記ダイヤモンドライクカーボン膜は、水素含有ダイヤモンドライクカーボン(a−C:H)または水素フリーダイヤモンドライクカーボン(ta−C)からなることを特徴とする請求項2に記載のクリーニングブレード。
【請求項6】
前記ダイヤモンドライクカーボン膜が前記補強シートの表裏面それぞれに均等に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載のクリーニングブレード。
【請求項7】
前記補強シートは、金属薄板であることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項8】
前記金属薄板の厚さが0.03mm以上、0.1mm以下であることを特徴とする請求項7に記載のクリーニングブレード。
【請求項9】
前記弾性体基材は、ウレタン基を含むゴムからなることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項10】
前記補強シートに前記硬質潤滑膜が形成され、ついで該硬質潤滑膜が形成された補強シートが前記弾性体基材に固着されてなることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項11】
像担持体と、該像担持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像担持体表面に静電潜像を形成する潜像形成手段と、該像担持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー像化する現像手段と、該像担持体表面のトナー像を転写体に転写する転写手段と、該像担持体表面に当接して該像担持体表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、を備えた画像形成装置において、
前記クリーニングブレードとして請求項1〜10のいずれかに記載のクリーニングブレードを用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
像担持体と、少なくとも該像担持体の表面に付着した残トナーを除去するクリーニングブレードを有するクリーニング手段と、該像担持体表面に滑剤を塗布する滑剤塗布手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジにおいて、
前記クリーニングブレードとして、請求項1〜10のいずれかに記載のクリーニングブレードを用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−58359(P2012−58359A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199515(P2010−199515)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】