説明

クリーニング装置、定着装置及び画像形成装置

【課題】表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去する方式において、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状の板状繊維体を当接させて付着物を除去する構成で、被清掃体に対して板状繊維体を挟んで反対側の部材に除去した付着物が付着することを防止できるクリーニング装置、並びにこれを備えた定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】塗布部材クリーニング装置70では、帯状部材であるウェブ44の塗布ローラ41に当接する側の面は多数の繊維を薄い板状に加工した板状繊維体である不織布からなり、不織布における塗布ローラ41表面に当接する面の裏面に定着液やオフセットトナーTaが通過できない被膜であるフィルム部材を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に用いられるクリーニング装置、並びに、これを備えた定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。画像形成装置には種々の方式があるが、電子写真方式の画像形成装置が普通紙に高精細な画像を高速で形成することができる点から広くオフィスで使用されている。この電子写真方式の画像形成装置では、定着速度、定着画像品質等の点から記録媒体上のトナーを加熱して溶融させ、溶融したトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く普及している。
【0003】
このような熱定着方式を採用した電子写真方式の画像形成装置における消費電力の半分以上は、熱定着方式の定着装置においてトナーを加熱処理のために消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の画像形成装置が望まれている。そこで、従来の画像形成装置における消費電力の半分以上を消費する定着装置での省エネルギー化が求められている。従来の熱定着方式の定着装置では加熱処理に多くの電力を消費していたため、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させる定着方式、又は、トナーを加熱することを必要としない定着方式が望まれている。特に、トナーを加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方式が低消費電力の点で理想的である。
このような非加熱定着方式としては、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる湿式定着方式が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4に記載の定着装置で用いる定着方式)。このように、湿式定着方式の定着装置ではトナーを軟化させるために加熱処理を行う必要がないため、熱定着方式に比べて省エネルギー化を実現することができる。
【0004】
特許文献1〜特許文献4の何れの特許文献に記載の定着装置も、接触型の定着液付与手段である塗布ローラを用いて定着液を液状のまま記録媒体に塗布することで、定着液を記録媒体上の未定着トナー像に付与する構成である。このような液状の定着液をトナー像に塗布して定着を行う構成では、記録媒体上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラへのトナーオフセット防止を両立させることが極めて難しいという問題があった。以下、この問題について説明する。
【0005】
塗布ローラを用いて記録媒体上の未定着トナー像へ定着液を塗布する構成において、定着液を記録媒体に微量付与するために、塗布ローラ上の定着液の層の厚みが未定着トナー像の層よりも薄くした場合、次のような問題が生じることがあった。塗布ローラの表面が記録媒体と接触した後、塗布ローラの表面が記録媒体から剥離する位置で、記録媒体に付与されず塗布ローラ表面に残った定着液の液膜によって生じる表面張力で記録媒体上のトナー層のトナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布ローラの表面にオフセットしたトナー粒子が付着し、塗布ローラと剥離した後の記録媒体上のトナー像が大幅に乱れてしまう。
【0006】
逆に、塗布ローラ上の定着液の層の厚みを未定着トナー層よりも十分厚くすると、塗布ローラが記録媒体から剥離する位置では、液量が多いため塗布ローラの表面の液膜による表面張力が記録媒体上のトナー層のトナー粒子に作用しにくくなる。これにより、塗布ローラ側にトナーが付着しにくくなるが、記録媒体の表面に多量の定着液が塗布されるため、記録媒体上で過剰な定着液により定着液の拡散にともないトナー粒子が流れ画質劣化を生じたり、定着液の乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりしてしまう。また、記録媒体に著しい残液感(紙を手で触れたときの湿った感触)が発生する。また、定着液が水を含有するものであると、紙等のセルロースを含有する記録媒体への定着液の塗布量が多い場合、紙等の記録媒体が著しくカールし、画像形成装置などの装置内における記録媒体搬送時に紙詰まりが発生の恐れがある。
このように、塗布ローラを用いて定着液を塗布する構成では、定着液の塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、定着液の乾燥時間が長くなることによる定着応答性の低下、記録媒体によっては紙詰まりが発生しやすくなる、といった問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために定着液を微量塗布する構成とすると、上述したように塗布ローラの表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。
よって、塗布ローラで定着液を塗布する構成では、定着応答性向上や残液感低減やカール防止のために記録媒体上のトナー層に定着液を微量塗布することと塗布ローラへのトナーオフセットを防止することとを両立することが極めて難しい。
【0007】
定着液の微量塗布とトナーオフセットの防止とを両立することができる定着方式として、特許文献5には、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。このように、定着液を泡状とすることにより定着液の密度を下げることが出来るため、従来よりも少量の定着液で塗布ローラ表面上の定着液の膜厚を厚くすることが出来、液体の表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、少量の定着液であるため、記録媒体上の残液感を抑制することが出来、泡状の定着液は通常の液体状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。よって、特許文献5のように泡状定着液を用いて定着を行うことにより、従来よりも少量の定着液塗布量でトナー画像を乱すことなく定着することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献5に記載の定着装置のように、塗布ローラ等の塗布部材を用いて泡状定着液を記録媒体に塗布する構成の場合、記録媒体に泡状定着液を塗布したあとの塗布部材から除去手段によって除去する塗布部材クリーニング装置を設けることが望ましい。これは、記録媒体に泡状定着液を塗布する塗布位置を通過した後の塗布部材には記録媒体に塗布しきれずに残った残留泡状定着液が付着しており、この残留泡状定着液を回収するためである。残留泡状定着液は、泡状定着液として塗布部材に供給された後、時間が経過しており、且つ、塗布位置で機械的な力を受けているため、泡の一部が消泡するなど、塗布部材に供給されたときよりも泡状定着液の密度が上昇することが考えられる。このため、塗布部材に残留泡状定着液が残留している状態で新たな泡状定着液を塗布部材に供給すると、密度が異なる泡状定着液が混ざって記録媒体に泡状定着液を均一に付与することができなくなるおそれがある。さらに、泡状定着液を用いることにより、オフセットして塗布部材に付着するトナーは通常の液状の定着液を用いる構成に比べて少なくなるものの、オフセットは起こり得るものであり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写され、画像劣化となるおそれがある。このように、記録媒体に付与する泡状定着液が不均一になったり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写されたりすることを防止するために、塗布部材クリーニング装置を設けて残留泡状定着液を塗布部材表面から除去することが望ましい。
【0009】
しかしながら、本発明者らは、塗布部材クリーニング装置の除去部材として、塗布部材の表面に当接してその表面上のオフセットトナーを含んだ残留泡状定着液を除去するクリーニングブレードを設けたところ、次のような問題を引き起こしてしまった。すなわち、クリーニングブレードを塗布部材の表面に当接させると、クリーニングブレードと塗布部材との当接部の入口(当接部に対して塗布部材の表面移動方向上流側)でオフセットトナーを含んだ残留泡状定着液を塞き止め滞留させる。このオフセットトナーは、画像形成動作中には定着液によって軟化した状態になっているが、画像形成動作が停止して長期間放置されると、硬い樹脂の塊になる。この樹脂の塊は、除去部材であるクリーニングブレードと塗布部材表面との両方に対して固着した状態になる。この状態で画像形成動作を開始すると、硬い樹脂の塊を粉砕しながら、粉砕物をクリーニングブレードと塗布部材との当接部に進入させて、ブレード表面や塗布部材表面を傷付けてしまう。そして、この傷付きにより、クリーニング不良が発生してしまう。
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決するために特願2009−000125号(以下、「先願」という)に記載の定着装置を提案した。先願の定着装置では、塗布部材表面に対して、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状の布を当接させて、塗布部材表面に付着している不要な泡状定着液及び樹脂微粒子を塗布部材表面から除去する布式除去手段を備える。この定着装置では、定着動作中には、オフセットトナーを含んだ残留泡状定着液を、塗布部材表面と布式除去手段の布との当接部の入口に滞留させるが、布を適切なタイミングで巻き取ることで、塞き止めた残留泡状定着液に含まれるオフセットトナーを固化させる前に当接部の入口から取り去ることが可能である。これにより、除去部材と塗布部材表面との両方に対して樹脂の塊が固着することに起因する不具合を防止することが出来る。
【0011】
しかしながら、上記先願の定着装置では、次のような問題を引き起こしてしまった。すなわち、上記先願の定着装置は、塗布部材に対して布を押し付けて当接部を形成する押し付けローラを備えており、オフセットトナーを含んだ定着液が布の繊維の隙間を通過して押し付けローラに付着して、経時で硬化する。押し付けローラと布との間でオフセットトナーが硬化すると、両方に対して固着した状態になる。このような状態になると、布を巻き取るときに押し付けローラと布との固着した部分を強制的に引き離し、押し付けローラや布が損傷したり、固着によって押し付けローラと布とが固定され、布を巻き取ることができなくなったりするおそれがある。また、押し付けローラが弾性ローラである場合は布と固着しなくても、ローラの表面が硬くなり、塗布部材との当接部で所望のニップを形成できなくなったり、硬化したローラを押し付けることで塗布部材の表面を傷付けたりするおそれがある。さらに、塗布部材上の除去対象であるオフセットトナーとそれを含んだ定着液が布の繊維の隙間を通過するため、塗布部材に対して布を挟んで反対側の各部材にオフセットトナーや定着液が付着して、装置内汚れとなるおそれがある。
【0012】
このような問題は、塗布部材の表面上の泡状定着液を用紙などの最終的な記録媒体に塗布する構成ではなく、中間転写体などの中間的なトナー像担持体に塗布する構成でも生じ得る。また、定着液として泡状定着液を塗布する構成に限るものではなく、通常の液状の定着液を塗布する構成でも、同様の問題を生じ得る。
上述した問題のうち、除去対象が布を通過して固着する問題は、軟化させたトナー粒子が経時で硬化するような定着液を用いた定着装置の塗布部材クリーニング装置のように、被清掃体上の除去対象となる付着物が樹脂粒子とそれを軟化する樹脂軟化液とであるクリーニング装置において生じる。しかし、上述した装置内汚れの問題は、被清掃体上の除去対象となる付着物が他のものである場合も同様の問題を生じ得る。
例えば、被清掃体が加熱式の定着装置の定着部材であるクリーニング装置のように除去対象となる付着物がオフセットトナーの場合であっても、オフセットトナーが布の繊維の隙間を通過することで上述した装置内汚れと同様の不具合は生じ得る。さらに、被清掃体が感光体や中間転写体等のトナー像担持体であるクリーニング装置のように除去対象となる付着物が転写残トナーの場合であっても、上述した装置内汚れと同様の不具合は生じ得る。
さらに、このような問題は、帯状の除去部材が布である場合に限らず、耐久性の高い紙を帯状に形成して除去部材とするものであっても同様に生じ得る問題であり、帯状の除去部材として多数の繊維を薄い板状に加工したもの(以下、板状繊維体と呼ぶ。)を用いる構成であれば同様の問題が生じ得る。
【0013】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去する方式において、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状の板状繊維体を当接させて付着物を除去する構成で、被清掃体に対して板状繊維体を挟んで反対側の部材に除去した付着物が付着することを防止できるクリーニング装置、並びにこれを備えた定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去手段によって除去するクリーニング装置において、上記除去手段は、上記被清掃体の表面に対して、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状部材を当接させて該被清掃体表面に付着している付着物を該被清掃体表面から除去する帯状部材式除去手段を備え、該帯状部材の上記被清掃体に当接する側の面は多数の繊維を薄い板状に加工した板状繊維体からなり、該板状繊維体における該被清掃体表面に当接する面の裏面に付着物が通過できない被膜を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記板状繊維体の上記被清掃体表面に当接する面には繊維の凹凸によるスキ目が形成されており、該板状繊維体が上記被清掃体の表面に当接する位置では、該板状繊維体の該スキ目に沿う方向と該被清掃体の表面移動方向とが交差するように構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のクリーニング装置において、上記帯状部材は、上記板状繊維体と上記被膜とこれらを接着層との少なくとも3層以上の多層構造からなることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3のクリーニング装置において、上記帯状部材の多層構造の各層が該クリーニング装置の設置環境の温度と同等以上の耐熱温度を有することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記板状繊維体が上記被清掃体の表面に当接する位置に対して該被清掃体の表面移動方向下流側に該被清掃体の表面に当接する除去ブレード部材を備えることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記帯状の板状繊維体として、不織布を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記被清掃体は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する樹脂軟化液を表面に担持し得る表面移動体であり、上記フィルム部材は該樹脂軟化液に対して耐溶剤性を有することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記帯状部材は、巻き取りあるいは無端移動によって上記被清掃体の表面との当接位置で該被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、該樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に該泡状定着液を付与する泡状定着液付与手段とを有し、該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、上記定着液泡状化手段によって上記泡状定着液になり、上記定着液付与対象に付与されず、表面移動体に付着した状態の該泡状定着液をクリーニングする泡状定着液クリーニング手段を備え、該泡状定着液クリーニング手段として、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の定着装置において、上記泡状定着液付与手段は、表面移動する表面に供給された上記泡状定着液を、上記定着液付与対象と対向する塗布位置で該定着液付与対象の表面に塗布する塗布部材を有し、上記クリーニング装置を、該塗布位置を通過した後の該塗布部材の表面上の該泡状定着液をクリーニングする塗布部材クリーニング手段に用いることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、該定着手段として、請求項9または10に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、帯状の板状繊維体の繊維の隙間に付着物が入ったとしても付着物が通過できない被膜によって付着物が帯状部材の裏面に到達することを妨げられるため、被清掃体に対して板状繊維体を挟んで反対側の部材に除去した付着物が付着することを防止できるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の塗布部材クリーニング装置の拡大説明図。
【図2】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図3】同プリンタのK用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図4】同プリンタの定着装置を示す拡大構成図。
【図5】同定着装置の定着液供給部を示す拡大構成図。
【図6】同定着装置における膜厚調整ブレードと塗布ローラとを示す拡大模式図。
【図7】図6よりも膜厚調整ギャップを狭くした状態の膜厚調整ブレードと塗布ローラとを示す拡大模式図。
【図8】塗布ニップにおける塗布ローラ表面と転写紙とを拡大して示す拡大模式図。
【図9】泡状定着液を示す拡大模式図。
【図10】定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的遅く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図。
【図11】定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的速く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図。
【図12】300[μm]のジルコニアビーズを用いたラージスケールモデル実験にて、泡状定着液の膜厚をトナー層の厚みと同等以上にした場合における塗布ニップを示す拡大模式図。
【図13】同ラージスケールモデル実験にて、泡状定着液の膜厚をトナー層の厚みよりも薄くした場合における塗布ニップを示す拡大模式図。
【図14】実験に用いた浸透時間測定装置の一例を示す概略図。
【図15】第1測定例における上部電極に形成した各泡状定着液層の厚みと、トナー層浸透時間との関係を示すグラフ。
【図16】第2測定例における塗布時圧力(=ニップ圧)と浸透時間との関係を示すグラフ。
【図17】泡状定着液の各泡粘度と、トナー層に対する泡の浸透時間との関係を示すグラフ。
【図18】画像濃度と泡状定着液の塗布量との関係を示すグラフ。
【図19】泡膜温度と、泡状定着液の泡粘度との関係を示すグラフ。
【図20】スキ目が明確な不織布の一例の表面の拡大図。
【図21】評価パターン画像の説明図。
【図22】オフセットトナー量を示すグラフ。
【図23】回収が良好だった条件のオフセットトナー量を示すグラフ。
【図24】第1変形例に係るプリンタの定着装置を示す拡大構成図。
【図25】第2変形例に係るプリンタの定着装置を示す拡大構成図。
【図26】(a)は、従来の定着装置において、比較的薄定着液の層を塗布ローラから転写紙に塗布している状態を示す模式図、(b)は、同状態における塗布ローラと転写紙との間の拡大して示す拡大模式図。
【図27】従来の液定着方式の定着装置における定着液塗布部を拡大して示す拡大構成図(液層厚みが比較的大きいとき)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタ100という)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタ100の基本的な構成について説明する。図2は、プリンタ100の要部を示す概略構成図である。同図において、プリンタ100は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3Y,M,C,K、転写ユニット20、紙搬送ユニット28、レジストローラ対15、定着装置30、図示しない光書込装置などを備えている。
【0018】
図示しない光書込装置は、レーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、プロセスユニット3Y,M,C,Kにおけるドラム状の感光体4Y,M,C,Kに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4Y,M,C,Kの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像になる。なお、符号の後に付されたY,M,C,Kという添字は、イエロー,マゼンタ,シアン,黒用の仕様であることを示している。
【0019】
プロセスユニット3Y,M,C,Kはそれぞれ、潜像担持体たる感光体4と、その周囲に配設される各種機器とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ本体に対して着脱可能になっている。黒用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、図3に示すように、感光体4Kの他、現像装置6K、帯電装置7K、除電ランプ8K、ドラムクリーニング装置9K等を備えている。
【0020】
感光体4Kとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。無端ベルト状のものを用いても良い。
【0021】
現像装置6Kは、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて静電潜像を現像してKトナー像を得る二成分現象方式のものである。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。感光体4Kの表面上で現像されたKトナー像は、後述する一次転写ニップで中間転写ベルト25に一次転写される。
【0022】
一次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置9Kによって感光体4K表面から除去される。同図では、ドラムクリーニング装置9Kとして、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレードによって転写残トナーを掻き取る方式のものを示しているが、他の方式によって転写残トナーを除去するものを用いてもよい。
【0023】
除電ランプ8Kは、光照射によって感光体4Kを除電する。除電された感光体4Kの表面は、帯電装置7Kによって一様に帯電せしめられることで、初期化する。帯電装置7Kとしては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4Kに当接させながら回転させるものを示したが、感光体4Kに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0024】
先に示した図2において、4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの感光体4Y,M,C,Kには、これまで説明してきたプロセスによってY,M,C,Kトナー像が形成される。4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの下方には、転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、複数の張架ローラ(21、22、23)によって張架している中間転写ベルト25を、感光体4Y,M,C,Kに当接させてY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト25を駆動ローラ21の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。
【0025】
Y,M,C,K用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ26Y,M,C,Kによって中間転写ベルト25を感光体4Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら一次転写ローラ26Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の一次転写ニップには、感光体4Y,M,C,K上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各一次転写ニップで各色トナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0026】
転写ユニット20の図中下方には、駆動ローラ29bと二次転写ローラ29aとの間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。この紙搬送ユニット28は、自らの二次転写ローラ29aと、転写ユニット20の中間転写ベルト25との間に、紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。
【0027】
紙搬送ユニット28の二次転写ローラには図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット20の中間転写ベルト25のループ内で、中間転写ベルト25が掛け回されている転写バックアップローラ23は、接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成されている。
【0028】
この二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対15が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括二次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置30へと搬送される。
【0029】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、二次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置24によって掻き取り除去される。
【0030】
図4は、実施形態に係るプリンタ100の定着装置30を示す拡大構成図である。この定着装置30は、転写紙Pに定着液を塗布する定着液塗布部140と定着液供給部130とからなる。
定着液塗布部140は、塗布ローラ41、加圧ローラ43、塗布部材クリーニング装置70などを備える。
【0031】
図5は、定着装置30の定着液供給部130を示す拡大構成図である。
定着液供給部130は、定着液収容器31内に収容されている液状定着液31aを泡化させながら、得られた泡状定着液Buを塗布ローラ41に供給するものである。具体的には、定着液収容器31内に収容されている液状定着液31aを、搬送ポンプ33及び液搬送パイプ34等からなる定着液輸送手段によって気体・液体混合部35に送る。
【0032】
搬送ポンプ33としては、ギヤポンプ、ベローズポンプ、チューブポンプ等を用いることが可能であるが、中でもチューブポンプを用いることが望ましい。ギヤポンプ等などのように、定着液中で駆動する機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下させるおそれがある。また、前述の機構を構成する材料によって定着液を汚染したり、機構を定着液で劣化させたりするおそれもある。これに対し、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であり、定着液内で駆動する機構がないため、それらの不具合を引き起こすことがない。
【0033】
気体・液体混合部35においては、液状定着液31aの流入とともに空気口36から空気を取り入れて液状定着液31aと空気とを混合しながら、それらを微小孔シート37に通すことで、定着液を泡化させる。微小孔シート37の孔径は、例えば30〜100[μm]程度である。微小孔シート37の代わりに、連泡構造の多孔質部材である焼結セラミックス板、不織布、発泡樹脂シート等を用いてもよい。また、液状定着液31aと空気口36からの空気とを羽根状攪拌子で攪拌して液に気泡を巻き込みませることで泡化させたり、搬送ポンプ33の吐出側に空気供給ポンプを接続して泡化させたりする構成を採用してもよい。
【0034】
気体・液体混合部35としては何れの構成であっても、例えば0.5〜1[mm]程度の比較的大きな泡径の泡をごく短時間で生成することができる。但し、後述するように、定着用の泡としては、できるだけ細かくする方が望ましい。そこで、プリンタ100では、気体・液体混合部35で得られた比較的大きな泡の泡状定着液Buを、泡微細化部38で微細化させる。
【0035】
気体・液体混合部35で生成された比較的大きな泡の泡状定着液Buは、泡搬送パイプ38cを通って泡微細化部38に供給される。
泡微細化部38は、比較的大きな泡径の泡をせん断力の付与によって2つ以上に分割して微細化させる。外側円筒38aの中に内側円筒38bを内包する二重円筒構造になっており、泡状定着液Buを不動の外側円筒38aと、回転する内側円筒38bとの隙間に通すことで、泡状定着液Buの比較的大きな泡径の泡にせん断力を付与する。このせん断力により、大きな泡を2つ以上の微小な泡に分割しながら、外側円筒38aに設けられた泡の出口38dからノズル39へ、所望の微小な泡径を有する泡状定着液Buを排出する。
【0036】
液搬送速度は、回転する内側円筒38bの回転数や、内側円筒38bの軸線方向長さに基づいて決定することが望ましい。外側円筒38aの内径をd1[mm]、内側円筒38bの軸線方向長さをL[mm]で表し、且つ内側円筒38bの外径d2[mm]、回転数をR[rpm]で表すと、微小な泡を生成するための液搬送速度V[mm/秒]は、「V=L×π×(d1−d2)/4/(1000/R)」という演算式で決まることがわかった。
【0037】
例えば、d1が10[mm]、d2が8[mm]、Lが50[mm]、回転数が1000[rpm]とすると、液搬送速度は約1400[mm/秒](1.4[cc/秒])となる。A4サイズの転写紙Pに定着処理を施すために必要な泡状定着液の量が3[cc]であると仮定すると、液状定着液31aから必要量の泡状定着液Buを生成するのに、約2秒の立ち上がり時間ですみ、極めて素早く、所望の泡径を有する泡状定着液Buを生成可能となる。なお、内側円筒38bにらせん状の溝を設けて、外側円筒38a内での搬送性を向上させてもよい。
【0038】
このように、液状定着液31aを大きな泡径の泡からなる泡状定着液Buへと泡化させる気体・液体混合部35と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡に分割する泡微細化部38とを組み合わせることで、液状定着液31aを極めて短時間に5〜50[μm]程度の微小な泡径の泡からなる泡状定着液Buに変化させることができる。
【0039】
泡状定着液Buのかさ密度としては、0.01〜0.1[g/cm]の範囲が望ましい。また、定着液は、転写紙P上のトナー等の樹脂含有微粒子の層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液収容器31内で泡状である必要はない。定着液収容器31中では気泡を含有しない液体の状態にしておき、容器から液を供給する時点や、樹脂含有微粒子の層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にすることで、定着液の輸送体積や保存体積の減容を図って、輸送コストや保存コストを低減することができる。
【0040】
泡微細化部38で得られた微細な泡状定着液Buについては、図4に示したように、ノズル39に通して、塗布ローラ41表面に供給する。供給された泡状定着液Buは、塗布ローラ41表面に対して自らの先端を所定の間隙を介して対向させている膜厚調整ブレード42により、塗布ローラ41表面上での膜厚が調整される。この膜厚調整ブレード42は、図6、図7に示すように、片持ち支持された状態で、固定端側のブレード回動軸42aを中心にして回動することで、自らの先端と、塗布ローラ41との間隙を変化させる。図示しない制御部は、モータ駆動によるブレード回動で前述の間隙を調整することで、図6に示すように、泡状定着液Buの塗布ローラ41表面上における膜厚を比較的薄くしたり、図7に示すように比較的厚くしたりする膜厚調整を行う。
【0041】
膜厚調整の構成としては、膜厚調整ブレード42の代わりに、ワイヤーバーによって膜厚を調整してもよい。この場合、膜厚調整ブレード42に比べ、塗布ローラ41表面上における軸線方向の膜厚を均一にすることが可能になる。
【0042】
トナー像が形成された転写紙Pに泡状定着液Buを塗布するための塗布ローラ41には、弾性ローラ部を具備する加圧ローラ43が当接して塗布ニップCを形成している。上述した紙搬送ベルト29によって二次転写ニップから定着装置30に向けて搬送される転写紙Pは、画像面を塗布ローラ41に向けた状態でこの塗布ニップC内に挟み込まれる。そして、塗布ニップC内において、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが画像面に塗布される。
【0043】
次に本発明に係る定着装置30の定着の原理について概説する。
本発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで樹脂を含有する微粒子を軟化させる軟化剤を含有した泡状定着液を、記録媒体等の定着液塗布対象の表面上の樹脂微粒子に付与する。これにより、定着液塗布対象の表面上の樹脂微粒子を軟化させ、樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着方法を取っている。言うまでもないことだが、ここで、表記している樹脂微粒子とは、特に何であるかを限定はしないが、画像形成装置に適用した場合だと、トナーのことを指す。
【0044】
ここで、従来の湿式定着方式を用いた定着装置について説明する。
上述した上記特許文献1には、トナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶な有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いる湿式定着方式の定着装置が記載されている。この定着装置では、未定着のトナーが所定位置に配設された被定着物の表面に対して定着液を噴霧または滴下してトナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させる構成である。
【0045】
しかし、上記特許文献1の定着装置では、水に不溶又は難溶な有機化合物が、水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いている。このため、多量の定着液を未定着トナーに付与した場合には、転写紙などの記録媒体(非定着物)が、定着液の水分を吸収し、記録媒体にシワやカールが発生する。これにより、画像形成装置に必要とされる安定かつ高速な記録媒体の搬送を著しく損なうこととなる。そこで、乾燥装置を用いて、定着液に含まれる多量の水を蒸発させることにより、記録媒体に付与された定着液から水分を除去しようとすると、熱定着方式を用いる画像形成装置の消費電力に匹敵する電力を必要とすることとなる。
【0046】
また、撥水性処理された未定着トナーを弾かない定着液として、油性溶媒に、トナーを溶解又は膨潤させる材料を溶解させた油性の定着液が従来よりいくつか提案されている。その一つとして例えば、上記特許文献2には、トナーを構成する樹脂成分を溶解又は膨潤させる材料を成分としての脂肪族二塩基酸エステル等を希釈液(溶媒)として不揮発性のジメチルシリコーンで希釈した(溶解させた)定着液が提案されている。また、上記特許文献3には、定着液として、トナーを溶解し、かつシリコーンオイルと相溶性を有する溶剤の100の容量に対し、シリコーンオイル8〜120容量部を混合してなる相溶状態の未定着トナー画像の定着液が提案されている。これにより、静電気的方式で形成された未定着トナー像を、画像を乱すことなく鮮明にかつ容易に記録媒体上に固着できる。このような油性の定着液は、撥水性処理された未定着トナーとの高い親和性を有する油性溶媒を含むため、撥水性処理された未定着トナーを弾くことなく、トナーを溶解又は膨潤させ、トナーを記録媒体に定着させることができる。
【0047】
このような従来の湿式定着方式では定着液を通常の液体状のまま記録媒体状のトナー像に付与していたため、記録媒体上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラへのトナーオフセット防止を両立することが極めて難しいという問題があった。この問題について図26及び図27を用いて説明する。
【0048】
図26は、従来の湿式定着方式の液状定着液を用いる定着装置60の説明図である。図26(a)は液状定着液を用いる定着装置60の概略説明図である。また、図26(b)は、液状定着液を用いる定着装置60における記録媒体である転写紙Pと転写紙Pに接触して液状定着液31aを塗布する塗布部材である塗布ローラ41との近接部の拡大説明図である。
図26(a)に示すように、塗布ローラ41を用いて転写紙P上の未定着のトナー層Tへ液状定着液31aを塗布する構成において、液状定着液31aを転写紙Pに微量付与するために、塗布ローラ41上の液状定着液31aの膜厚が未定着のトナー層Tの厚みよりも薄くなる場合、図26(b)のようになる。塗布ローラ41上の液状定着液31aには、塗布ローラ41の表面が転写紙Pと接触する塗布位置で塗布ローラ41から転写紙Pに付与されるものの他に、図26(b)中の矢印F1で示すように塗布位置を通過した後も塗布ローラ41の表面に残留するものがある。そして、塗布ローラ41の表面が転写紙Pから分離する位置で、塗布ローラ41表面に残留する液状定着液31aの液膜によって生じる表面張力(図26(b)中の矢印F2方向に働く)で未定着のトナー層Tのトナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布ローラ41の表面にオフセットトナーTaが付着し、塗布ローラ41と剥離した後の転写紙P上の定着トナー層Tbによって形成される画像が大幅に乱れてしまう。
【0049】
逆に、塗布ローラ41上の液状定着液31aの膜厚を未定着のトナー層Tよりも十分厚くすると、図27のようになる。塗布ローラ41の表面が転写紙Pから分離する位置では、液状定着液31aの液量が多いため塗布ローラ41表面の液膜による表面張力が未定着のトナー層Tのトナー粒子に作用しにくくなる。これにより、塗布ローラ41側にオフセットしたトナーが付着しにくくなるが、転写紙Pの紙面に多量の液状定着液31aが塗布されるため、過剰な液状定着液31aにより転写紙P上のトナー粒子が流され画質劣化を生じたり、転写紙Pに付与した液状定着液31aの乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりしてしまう。また、転写紙Pに著しい残液感(紙を手で触れたときの湿った感触)が発生する。さらに、液状定着液31aが水を含有するものであると、記録媒体として紙等のセルロースを含有する転写紙Pへの液状定着液31aの塗布量が多い場合、紙等の転写紙Pが著しくカールし、画像形成装置などの装置内における記録媒体搬送時に紙詰まりが発生する恐れがある。
このように、塗布ローラ41を用いて液状定着液31aを塗布する構成では、液状定着液31aの塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、液状定着液31aの乾燥時間が長くなることによる定着応答性の低下という問題が生じる。さらに、記録媒体の材質によっては紙詰まりが発生しやすくなるという問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために液状定着液31aを微量塗布する構成とすると、上述したように塗布ローラ41の表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。よって、定着応答性向上や残液感低減やカール防止のために転写紙P上のトナー層に定着液を微量塗布することと塗布ローラ41へのトナーオフセットを防止することとを両立することが極めて難しい。
【0050】
定着液の微量塗布とトナーオフセットの防止とを両立することができる定着方式として、上記特許文献5には、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を塗布ローラを用いて記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。このように、定着液を泡状とすることにより定着液の密度を下げることが出来るため、従来よりも少量の定着液で塗布ローラ表面上の定着液の膜厚を厚くすることが出来、液体の表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、少量の定着液であるため、記録媒体上の残液感を抑制することが出来、泡状の定着液は通常の液体状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。よって、上記特許文献5のように泡状定着液を用いて定着を行うことにより、従来よりも少量の定着液塗布量でトナー画像を乱すことなく定着することができる。
そして、本実施形態の定着装置30も上記特許文献5と同様に定着液を泡状にして記録媒体上のトナー層に塗布する構成である。
【0051】
また、上記特許文献5に記載の定着装置は、塗布部材である塗布ローラ上の泡状定着液の膜厚を制御する泡状定着液膜厚制御手段を備えている。そして、塗布ローラが記録媒体に接して泡状定着液を記録媒体上の樹脂微粒子に付与している時間が、塗布ローラによって塗布される泡状定着液が記録媒体上の樹脂微粒子層を浸透して記録媒体に到達する浸透時間より同じ又は長くなるように膜厚を制御する。これにより、樹脂微粒子の塗布ローラへのオフセット付着を防止でき、樹脂微粒子を乱すことなく、かつ樹脂微粒子を担持した記録媒体に定着液を塗布した後は素早く樹脂微粒子の記録媒体への定着が可能となる。このため、定着応答性に優れた定着を行うことができる。
【0052】
図8は、本実施形態の定着装置30において塗布ローラ41が転写紙Pと接触する部分(塗布ニップC)の拡大説明図である。
定着液を、少量であっても厚みの嵩張る泡状定着液Buの状態で転写紙Pに塗布することで、図示のように、液状の場合に比べてニップ出口から遠い位置で塗布ローラ41表面上の定着液と転写紙P上の定着液とを分離させる。更に、泡状にすることで、塗布ローラ41表面上の定着液の表面張力によるトナーの引き込みを解消する。これらの結果、塗布ローラ41へのトナーのオフセットを有効に抑えることができ、オフセットによる白抜け画像の発生を解消することができた。
【0053】
未定着のトナー層Tのトナー粒子Tpの粒径が5〜10[μm]程度である場合、未定着のトナー層Tを乱すことなく泡状定着液Buを未定着のトナー層Tに付与するには、泡状定着液Buの泡径範囲を5〜50[μm]程度にすることが望ましい。プリンタ100では、泡微細化部38での泡微細化により、このような微細な径の泡をつくり出している。
【0054】
また、泡微細化部38で微細化した泡は、図9に示すように、気泡Bu−Aと、それぞれの気泡Bu−Aを区切る液膜境界Bu−B(以下、プラトー境界と称す)とから主に構成されている。
【0055】
泡状定着液Buを用いることで液状の定着液に比べ微量塗布量で画像劣化のない定着が行えるようになったが、定着速度を速くすると塗布ローラ41にトナーをオフセットさせることがあった。
【0056】
図10は、定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的遅く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図である。なお、図示の塗布部材51は、撥液性を発揮し、且つ記録媒体53は親液性を発揮するものとする。この場合、塗布ニップにおいては、トナー同士、トナーと記録媒体53との間、トナーと塗布部材51との間に、それぞれ液の表面張力による結合力が生じる。但し、同図においては、次のことが可能になる程度まで定着速度を遅く設定している。即ち、塗布部材51の表面上の定着液52が記録媒体53上のトナー層54に接触・浸透し、記録媒体53まで到達した後のタイミングで塗布部材51を分離することが可能になる程度である。塗布部材51は撥液性を発揮する材料からなり、且つ記録媒体53は親液性を発揮する材料からなる。すると、トナーと記録媒体53との結合力が勝り、トナーは塗布部材51に付着することなく塗布部材51から分離される。
【0057】
図11は、定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的速く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図である。同図においては、塗布部材51がトナー層54に接触した後、定着液52がトナー層54を完全に浸透して記録媒体53まで到達する前に、塗布部材51が記録媒体53から分離している。このような条件において、定着液52の浸透したトナー同士や、トナーと塗布部材51との間には、液の表面張力による結合力が生ずる。この一方で、乾いたトナー間には弱い結合力しか生じないため、乾いたトナー間でトナー層54の分離が起こる。そして、塗布部材51にトナー層54のオフセットが発生してしまう。
【0058】
このようなオフセットの発生を防止するためには、塗布部材51の記録媒体53との接触時間が、トナー層54に対して定着液を浸透させて記録媒体53に到達させる時間よりも長くする必要がある。なお、ニップとは、塗布部材51の記録媒体53に対する接触開始点から分離開始点までの間の部分のことを示す。従って、ニップ時間は、接触開始から分離開始までの時間である。また、ニップ幅は、接触開始点から分離開始点までの長さを示す。また、ニップ圧は、ニップ部に加えられる圧力であり、ニップ部への加重をニップ部の面積で割った値を示す。
【0059】
本発明者らは、300[μm]のジルコニアビーズを用いたラージスケールモデル実験にて、泡状の定着液55がトナー層54に浸透する様子を光学顕微鏡観察した。その結果、図12に示すように、泡状の定着液55は、破泡することなく、ジルコニア粒子56の隙間を浸透し、ジルコニア粒子56に接した泡状の定着液55をその上部の泡が加圧しながらジルコニア粒子56の隙間を泡状の定着液55が浸透することがわかった。一般に、液体の場合、微粒子間を浸透する力は、液体の表面張力による毛管現象によるものである。これに対し、泡の場合、柔軟な連続体のような挙動を示し、微粒子間に浸透した泡をその上部の泡が押しながら連続的に泡が微粒子の隙間を埋めていくことが解った。トナーなどの6μmサイズの微粒子層においても、ラージスケールモデル実験と同様に、微粒子間に浸透した泡をその上部の泡が押しながら連続的に浸透すると考えられる。
【0060】
このようなラージスケールモデル実験にて、泡膜の厚みが微粒子層の厚みよりも薄い場合、図13に示すように、泡を押す力が途中で止まってしまい、泡状の定着液55は記録媒体53まですばやく到達できないことも観察された。
【0061】
また、上述した実験から、実際のスケールにおいて、泡状定着液Buの塗布部材51上の厚みと記録媒体53上におけるのジルコニア粒子56層の厚みは、定着液の粒子層に対する浸透時間と深い相関があることがわかった。
【0062】
そこで、本発明者らは、トナー等の樹脂含有微粒子層を定着液が浸透し記録媒体に到達するまでの時間(浸透時間と定義する)を測定しながら、樹脂含有微粒子層のニップ通過時間と、浸透時間との関係を調査してみた。
【0063】
図14は、実験に用いた浸透時間測定装置の一例を示す概略図である。なお、定着液としては泡状定着液を用い、且つ、トナーとしては樹脂製のものを用いた。定着液はイオン性の材料、例えばフォーム化に必要な起泡剤や分散剤が含有されているため、抵抗値10[Ω・cm]以下の導電性を発揮する。同図において、上部電極61は、定着装置の塗布部材に相当する。また、下部電極62は、定着装置内の記録媒体に相当する。上部電極61上に泡状の定着液63の層を形成し、下部電極62の面上にトナー層64を形成した。そして、下部電極62の下に加重検知ロードセル65を配置し、上下電極間には電圧を印加する。上部電極61を下部電極62に接触させると、加重検知ロードセル65が上部電極61の加重を検知し、接触開始点を決める。その後、泡状の定着液63がトナー層64を通過して下部電極62に到達すると電極間に電流が流れ、印加電圧値が変化する。加重検知ロードセル65の検出から電圧変化開始までのタイミングを測定することでトナー層浸透時間を計測することができる。
【0064】
図示の浸透時間測定装置を用いて浸透時間を測定した測定例について、説明する。
[第1測定例]
平均泡径20[μm]の泡状定着液層を、0.05[g/cm]の嵩密度で上部電極61上に形成した。また、平均粒径6[μm]の球形トナーからなるトナー層64を30[μm]の厚みで下部電極62上に形成した。上部電極61、下部電極62としては、それぞれ同一材料(SUS304)からなるものを用いた。リニアステージに固定した状態の上部電極61に対して、下部電極62を0.03[kgf/cm]の圧力(塗布時圧力)で接触させた。電極間で定着液の電気分解が起こらないようにする狙いで、電圧間への印加電圧については0.8[V]とした。
【0065】
この第1測定例における上部電極61に形成した各泡状定着液層の厚みと、トナー層浸透時間との関係を図15に示す。泡状定着液層の厚みがトナー層の厚みと同じかそれ以上の場合には、浸透時間がほぼ一定の値になるが、泡状定着液層の厚みがトナー層厚みよりも薄い場合は、泡状定着液層の厚みが薄くなるほど、浸透時間が長くなる。このことは、図12や図13に示したように、トナー層の隙間に入った泡を上部の泡が連続的に泡の厚み分まで押し続けながら泡がトナー層の隙間を浸透することを裏付けている。
【0066】
[第2測定例]
平均泡径20[μm]の泡状定着液層を、0.05[g/cm]のかさ密度、且つ50[μm]の厚みで上部電極61上に形成した。また、平均粒径6[μm]の球形トナーからなるトナー層を、30[μm]の厚みで下部電極62上に形成した。上部電極61、下部電極62としては、それぞれ同一材料(SUS304)からなるものを用いた。リニアステージに固定した状態の上部電極61に対して、下部電極62を様々な圧力(塗布時圧力)の条件で接触させた。電極間で定着液の電気分解が起こらないようにする狙いから、電圧間への印加電圧については0.8[V]とした。
【0067】
この第2測定例における塗布時圧力(=ニップ圧)と浸透時間との関係を図16に示す。図示のように、塗布時圧力が高くなるほどトナー層に対する泡状定着液の浸透時間が短くなっていることがわかる。このことは、トナー層の隙間に泡が浸透し上部の泡が連続的に押す場合に、押す力が強くなるほど浸透速度が速くなる、即ち浸透時間が短くなることを裏付けている。
【0068】
[第3測定例]
平均泡径20[μm]の泡状定着液層を、0.05[g/cm]のかさ密度、50[μm]の厚みで上部電極61上に形成した。また、平均粒径6[μm]の球形トナーからなるトナー層を、30[μm]の厚みで下部電極62上に形成した。上部電極61、下部電極62としては、それぞれ同一材料(SUS304)からなるものを用いた。リニアステージに固定した上部電極61に対して、下部電極62を0.03[kgf/cm]の圧力で接触させた。電極間で定着液の電気分解が起こらないようにする狙いから、電圧間への印加電圧については0.8[V]とした。
【0069】
泡状定着液の各泡粘度と、トナー層に対する泡の浸透時間との関係を図17に示す。なお、泡粘度については、次のようにして測定した。即ち、コーンプレート式回転粘度計を用いた。回転しとしてはw、外径Φが60[mm]であるものを用いた。コーン角1度のコーン部とプレート部との隙間を3[mm]に設定し、25[℃]の液温にて、10秒で1回転する回転速度にて回転開始10秒後、つまり1回転後の回転粘度測定値を泡粘度とした。
【0070】
図17からわかるように、泡粘度が小さいほどトナー層浸透時間が短い。これは、トナー層隙間に泡が浸透し上部の泡が連続的に押す場合に、泡が柔らかいほど浸透速度が速くなり浸透時間が短くなることを裏付けている。
【0071】
以上の実験結果から、塗布部材へのトナー層のオフセットを防止するためには、塗布部材と記録媒体との接触部(塗布ニップ)に対するトナー層通過時間を、泡状定着液の浸透時間と同じかそれ以上に設定する必要があることがわかった。
【0072】
また、各測定例から、トナー粒子が5[μm]前後の粒径である場合、泡状定着液の浸透時間はおおよそ50ミリ秒から300ミリ秒の範囲にある。そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、塗布ニップに対する塗布対象の通過時間を、最低でも50ミリ秒から300ミリ秒の範囲を確保している。
【0073】
先に示した図4において、転写紙Pの塗布ニップ通過時間(例えば先端がニップ入口に進入してから先端がニップ出口から排出される間での時間)を、50ミリ秒から300ミリ秒の範囲に設定している。これにより、転写紙Pの塗布ニップ通過時間を、泡状定着液の浸透時間と同じかそれ以上にしている。塗布ニップ通過時間(以下、ニップ時間という)については、「(ニップ幅)/(紙の搬送速度)」という数式によって算出することが可能である。転写紙Pの搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、転写紙Pを塗布ローラ41及び対峙する加圧ローラ43に挟んで加圧(ローラは回転させない状態で)し、紙に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。転写紙Pの搬送速度に応じて、ニップ幅を調整することでニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。
【0074】
実施形態に係る定着装置30では、加圧ローラ43を弾性多孔質体(以下、スポンジと記す)とすることで、紙の搬送速度に応じて、塗布ローラ41とスポンジの加圧ローラ43の軸間距離を変更してニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに、弾性ゴムも適するが、スポンジは、弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ41の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
【0075】
定着液中には樹脂軟化剤または膨潤剤が含有されており、スポンジの加圧ローラ43に定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがある。このため、スポンジ素材の樹脂材は、軟化剤または膨潤剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が望ましい。また、ローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43については、ローラ表面を可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が軟化剤または膨潤剤で劣化する素材であっても、軟化剤または膨潤剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジの加圧ローラ43の劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを例示することができる。
【0076】
塗布ローラ41とローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43とが常時接触している場合、転写紙Pが搬送されていない時に塗布ローラ41上の泡状定着液Buがスポンジの加圧ローラ43に付着し汚す恐れがある。この付着を防止する狙いから、紙先端検知手段(図示せず)を塗布ローラ41へ紙が搬送される手前に設け、紙先端検知信号に応じて、紙の先端から後方にのみ泡状定着液Buが塗布されるようなタイミングで塗布ローラ41に泡状定着液Buを形成することが望ましい。
【0077】
加圧ローラ43は、図示しない接離機構により、待機時は塗布ローラ41から離間する位置まで移動される。塗布時だけ、前述の紙先端検知手段の検知結果に基づいて塗布ローラ41に圧接する位置まで接離機構によって移動せしめられる。塗布ローラ41から離間するタイミングについては、紙の後端検知結果に基づいて決定される。
【0078】
また、図17に示したように、泡状定着液の泡粘度により浸透時間が変化する。このため、ニップ時間及びニップ圧力一定であると、例えば定着液の処方の変更や使用環境温度の低下が原因で泡粘度が上昇した場合、泡のトナー層に対する浸透時間がニップ時間よりも長くなり画像劣化を起こす恐れがある。これを防止するため、ニップ圧力により浸透時間が変化することを利用し、泡状定着液の泡粘度に応じて、必ずニップ時間が浸透時間よりも同じか長くなるよう調整することが望ましい。この場合、定着装置30において泡状定着液の泡粘度を検知する必要がある。泡粘度は、上述したように、コーンプレート式回転粘度計における回転粘度であり、検知手段としては、この測定原理に近い手段を用いることが望ましい。例えば、図4において、所望の泡状定着液を作成した後、補給口であるノズル39から出す手前の流路パイプ内の回転子にかかるモータトルクを検出し、正式な回転粘度の代用値として泡粘度とみなす手段を例示することができる。カンチレバー型の振動子の固有振動数変化を検知し、正式な回転粘度の代用値として泡粘度とみなす手段であってもよい。また、ニップ圧力の調整手段としては、塗布ローラ41と加圧ローラ43との軸間距離を可変できる機構において、泡粘度検出信号に応じて、塗布ローラ41と加圧ローラ43との軸間距離を変える手段を例示することができる。
【0079】
泡のトナー層に対する浸透時間をなるべく短くするためには、上述したように、塗布ローラ41等の塗布部材上における泡状定着液Buの層厚を未定着のトナー層Tの厚み以上とする必要がある。カラー画像では、転写紙P上の未定着のトナー層Tの厚みは色や明暗により異なる。そこで、泡状定着液Buの層厚については、未定着のトナー層Tの転写紙P上における厚みの最大値を基準として設定する。画像信号から未定着のトナー層Tの厚みの最大値については、画像信号に基づいて求めることができる。画像信号に応じて、未定着のトナー層Tの最大値に対し、膜厚調整ブレード42の隙間制御により行い、必ず未定着のトナー層Tの厚みの最大値以上になるように泡状定着液Buの層厚を制御する。各画像機器において、転写紙P上の未定着のトナー層Tは、スキャナやPCからの画像信号に応じて設定テーブルに基づき算出された値によって一定に決まる。そこで、画像信号をもとに転写紙P上に付着する設定値の最大値に合わせてその最大値以上に塗布ローラ41上の泡状定着液Bu層厚を調整する。
【0080】
また、未定着のトナー層Tの厚みが異なると、泡のトナー層に対する浸透時間が異なる(トナー層が厚いほど浸透時間は長くなる)ことから、未定着のトナー層Tの厚みに応じてニップ時間を可変にする必要がある。ニップ時間可変手段としては、紙搬送速度を変化させる手段やニップ幅を変化させる手段が適する。画像情報信号から転写紙P上における未定着のトナー層Tの厚みの最大値を算出し、浸透時間を換算しその浸透時間以上となるようにニップ幅や紙搬送速度を変化させる。
【0081】
泡状の定着液は、上述したように、軟化剤を含有した液体中に気泡を含有するものである。軟化剤を含有した液体は、気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成する泡状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
【0082】
起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液の表面張力を下げ、定着液を発泡し易くするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなるまた、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましい。脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5〜15[℃]までの低気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において定着の安定を可能とし、また、定着液長期放置中の脂肪酸塩の定着液中分離を防止することができる。
【0083】
飽和脂肪酸塩に用いる脂肪酸としては、炭素数12、14、16及び18の飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が適する。炭素数が11以下の飽和脂肪酸塩は臭気が大きくなり、当該定着液を用いるオフィス・家庭で用いる画像形成機器に適さない。また、炭素数19以上の飽和脂肪酸塩は、水に対する溶解性が低下し、定着液の放置安定性を著しく低下させてしまう。これらの飽和脂肪酸による飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。
【0084】
また、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
【0085】
更に、上記飽和脂肪酸塩又は不飽和脂肪酸塩において、当該定着液の起泡剤として用いる場合、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアミン塩であることが望ましい。定着装置30に電源を投入後、素早く定着可能な状態にすることは定着装置30の商品価値として重要な要素である。定着装置30において定着可能な状態とするためには、定着液が適切な泡状となっていることが必須であるが、上述の脂肪酸塩を素早く起泡させることで、電源投入後定着可能な状態を短時間でつくることができる。特に、アミン塩とすることで、定着液にせん断力を加えたときに最も短時間で起泡させ、泡状定着液を容易に作製することが可能であり、定着装置への電源投入後の定着可能な状態を最も短時間でつくることができる。
【0086】
樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含んでいる。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
【0087】
更に、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
【0088】
オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率))を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
【0089】
上述の脂肪族エステルとしては、飽和脂肪族エステルを含むものが望ましい。上述の脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0090】
よって、定着液としては、上述の飽和脂肪族エステルが「R1COOR2」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基を示している。また、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。なお、その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0091】
上述の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについては、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0092】
また、定着液としては、上述の脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含むものを用いることが望ましい。上述の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60[ppm]程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上述した脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の、軟化剤の添加によって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる、軟化剤の含有量を低減することができる。
【0093】
上述の脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、「R3(COOR4)」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式において、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基を示している。また、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0094】
上述の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。更に、本発明における定着液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0095】
上述の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、「R5(COOR6−O−R7)」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式において、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基を示している。また、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基を示している。また、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0096】
また、上述の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0097】
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
【0098】
泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
【0099】
定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、媒体は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても適用することが可能である。
【0100】
上述した樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本発明の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。媒体のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20[℃])における水に対する溶解度が、0.1[重量%]以下である性質を意味する。
【0101】
また、泡状となった定着液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20[mN/m]程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30[mN/m]であると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30[mN/m]であることが好ましい。
【0102】
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30[mN/m]とすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0103】
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
【0104】
定着中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。何れにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
【0105】
定着装置30には、定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を設けてもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0106】
次に、本発明者らが行った各定着実験例について説明する。以下に説明する各定着実験例では、樹脂含有微粒子としてトナーを用いた。
[第1定着実験例]
まず、次のような処方の、軟化剤を含有する液体を用意した。
(1)希釈溶媒
・イオン交換水:53[wt%]
(2)軟化剤
・コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES):10[wt%]
・炭酸プロピレン:20[wt%]
(3)増粘剤
・プロピレングリコール:10[wt%]
(4)増泡剤
・ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM):0.5[wt%]
(5)起泡剤
・パルミチン酸アミン:2.5[wt%]
・ミリスチン酸アミン:1.5[wt%]
・ステアリン酸アミン:0.5[wt%]
(6)分散剤
・POE(20)ラウリルソルビタン(花王 レオドールTW−S120V):1[wt%]
・ポリエチレングリコールモノステアレート(花王 エマノーン3199):1[wt%]
【0107】
分散剤は、軟化剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。脂肪酸アミンは、脂肪酸とトリエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。
【0108】
上述した処方にて、液温120[℃]で軟化剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、軟化剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて軟化剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
【0109】
大きな泡径の泡状定着液Buを生成するための構成については、次のようにした。定着液収容器31として、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂からなるボトルを用いた。また、搬送ポンプ33として、チューブポンプ(チューブ内径2[mm]、チューブ材質:シリコーンゴム)を用いた。また、液搬送パイプ34として、内径2[mm]のシリコーンゴムチューブを用いた。また、大きな泡を作るための微小孔シート37として、#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40[μm])を用いた。
【0110】
微小な泡径を生成するための構成については、次のようにした。2重円筒の内側円筒38bを回転軸に固定し、図示しない回転駆動モーターにより回転させた。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒38aとしては、内径10[mm]、長さ120[mm]のものを用いた。また、内側円筒38bとしては、外径8[mm]、長さ100[mm]のものを用いた。回転数については、1000〜2000[rpm]の範囲で可変とした。
【0111】
泡状定着液Buを塗布ローラ41の表面に供給するための構成については、次のようにした。微少な泡径の泡からなる泡状定着液Buを、ノズル39により、塗布ローラ41表面と、膜厚調整ブレード42との間に供給する構成とした。膜厚調整ブレード42と塗布ローラ41とのギャップについては、25[μm]と40[μm]の2通りに設定した。
【0112】
加圧ローラ43としては、アルミ合金製ローラ(φ10[mm])からなる芯金の表面上に、外径Φ50[mm]のポリウレタンフォーム材(イノアック社商品名「カラーフォームEMO」)からなるローラ部を形成したものを用いた。また、塗布ローラ41としては、PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30[mm])を用いた。また、膜厚調整ブレード42としては、アルミ合金製支持板に厚み1[mm]の並板ガラスを接着したものを用いた。これのガラス面を塗布ローラ41側に向け、10〜100[μm]の範囲で塗布ローラ41とガラス面との隙間を制御できるようにした。紙搬送速度については、150[mm/s]に設定した。
【0113】
以上の条件を具備させたプリンタ試験機(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像が形成されたPPC用紙(リコーT−6200)を定着装置30に挿入するタイミングで、搬送ポンプ33を駆動した。そして、定着液をくみ上げ、液流路を通過させながら、大きな泡径の泡状定着液Buを生成する大きな泡生成部である気体・液体混合部35と泡状定着液Buの泡を微小にする微小な泡生成部である泡微細化部38に定着液を通過させた。すると、ノズル39の液排出口から1秒後に泡径5〜30[μm]の微小な泡を有する泡状定着液Buを塗布ローラ41に供給することができた。このときの泡状定着液Buのかさ密度はおおよそ0.05[g/cm]であった。
【0114】
ローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43と、塗布ローラ41との軸間距離を変えて、ニップ幅1[mm](ニップ時間6[ms])、15[mm](ニップ時間100[ms])、21[mm](ニップ時間140[ms])における塗布テストを実施した。トナー層の厚みは30〜40[μm]とした。
【0115】
この結果を図18に示す。泡状定着液Buのトナー層に対する浸透時間は、80〜100[ms]であった。転写紙P上の泡状定着液Buの塗布量を0.15[g/A4サイズ紙]にした条件において、塗布ローラ41上での泡状定着液Buの厚み(以下、泡の膜厚という)は50[μm]程度であった。また、塗布量を0.1[g/A4サイズ紙]にした条件において、塗布ローラ41上での泡の膜厚は35[μm]程度であった。また、塗布量を0.2[g/A4サイズ紙]にした条件において、塗布ローラ41上での泡の膜厚は70[μm]程度であった。画像濃度の低下は、塗布ローラ41にトナーが付着しオフセットしてしまい、転写紙P上で画像抜けが発生することを意味している。
【0116】
図18のグラフより、泡の膜厚をトナー層の厚みよりも厚くした条件(塗布量=0.15[g/A4サイズ紙]以上)において、トナー層の浸透時間以上のニップ時間では、定着画像の濃度が画像抜けのない濃度であり、良好な定着性であることがわかる。逆に、膜厚をトナー層以上であっても、ニップ時間が浸透時間よりも短いと、塗布ローラ41にトナーがオフセットし、転写紙P上に画像抜けが発生し画像濃度が著しく低下することもわかった。
【0117】
また、泡の膜厚をトナー層の厚みよりも薄くした条件(塗布量=0.15[g/A4サイズ紙]以下)において、ニップ時間を100[ms]以上にしても、塗布ローラ41にトナーがオフセットし、転写紙P上に画像抜けが発生し画像濃度が著しく低下している。これは、図15に示したように、泡の膜厚をトナー層の厚みよりも薄くした条件では、泡のトナー層に対する浸透時間が極端に長くなるため、ニップ時間が浸透時間よりも短くなっていることが原因と思われる。
【0118】
[第2定着実験例]
定着液の処方や定着装置30の構成については、第1定着実験例と同じにした。但し、装置の使用環境温度を15[℃]、25[℃]、35[℃]にて定着テストを実施した。図19に、泡膜温度と、泡状定着液の泡粘度(上記のコーンプレート回転粘度測定。回転子径φ60[mm]、コーン角1度、回転子間ギャップ3[mm]、1秒当りの回転数10での測定結果)との関係を示す。同図より、温度により泡粘度が変化(高温で低粘度化)することがわかった。また、泡粘度によりトナー層浸透時間が変化することは、図17に示した通りである。そこで、図19のデータをテーブルデータとし、定着装置30内に温度検知手段を設け、温度信号に応じてニップ時間がトナー層浸透時間以上となるように塗布ローラ41とスポンジローラからなる加圧ローラ43の軸間距離を変化させる機構を設けた。
【0119】
かかる機構を設けたプリンタ試験機(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、15〜35[℃]の間で環境温度を変化させたが、いずれの使用環境においても画像抜けのない良好な定着を行うことができた。
【0120】
[第3定着実験例]
第1定着実験例において、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型の効果を確認するため、第1定着実験例と全て同じ処方、脂肪酸アルカノールアミドを除いた以外は同じ処方、及び(1:1)型の脂肪酸アルカノールアミドの代わりに脂肪酸アルカノールアミド(1:2)型(ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2)型(松本油脂 マーポンLS))を用いた以外は同じ処方の3通りの処方で、それぞれ定着液を準備した。そして、プリンタ試験機(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を作製し、それぞれの定着液に定着試験を行った。
【0121】
その結果、次の表1に示すように、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有した泡状定着液では、塗布ローラ41上に泡状液膜にピンホールはなく、均一な膜で、良好な定着が行えた。一方、脂肪酸アルカノールアミドを含有しない、または、(1:2)型を含有の定着液では、塗布ローラ上の泡状液膜に細かなピンホール(φ0.5[mm]程度)が発生し、定着後のトナー画像に、無数のピンホール状の定着不良が発生した。
以上のように、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有した泡状定着液の良好な効果が確認できた。
【表1】

【0122】
次に、図4を用いて塗布ローラ41のクリーニングについて説明する。
塗布ローラ41と接触する塗布位置である塗布ニップCを通過した転写紙P上の未定着のトナー層Tは、泡状定着液Buが付与されることで軟化する。泡状定着液Buを転写紙Pに塗布する塗布ローラ41は、転写紙P上の未定着のトナー層Tに対して接触しながら泡状定着液Buを付与する。このとき、転写紙Pが塗布ローラ41と接触する塗布位置である塗布ニップCを通過すると、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが全て転写紙Pに付与され、塗布ローラ41がクリーンな状態になるのが理想である。しかし、現実的には、部品や組み付けのばらつき、環境変動、経時変動等の影響により、全てのプロセスが理想どおりに進むとは考え難い。このため、塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41上に泡状定着液BuやオフセットトナーTaを残留させることがある。
【0123】
この塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41上に残留する泡状定着液Bu(以下、残留泡状定着液Baと呼ぶ)は、液状の定着液よりも塗布ローラ41の表面移動に対して追従した動きをとる。このため、塗布ローラ41の回転によってその表面が上昇移動をしたとしても、液状の定着液のように下方に流れず、塗布ローラ41表面の表面移動に伴って良好に上昇する。このため、残留泡状定着液Baは、殆ど液だれすることなく、塗布ニップCを通過後のほぼ全量が塗布ローラ41の表面に連れ回りながら移動する。
このような残留泡状定着液Baが塗布ローラ41上に残留したままだと、塗布ローラ41が1周したときに、上述したノズル39から塗布ローラ41に供給される新たな泡状定着液Buと、残留泡状定着液Baとが混ざることで塗布ローラ41上の泡膜の厚みが不安定になったり、オフセットトナーTaが転写紙Pに再転写して画像品質の低下を招いたりする恐れがある。さらには、トナーを含んだ残留泡状定着液Baが循環することになり、汚れた泡状定着液Buを用いることになって、定着の品質が低下する恐れがある。このため、塗布ローラ41に残留した残留泡状定着液BaやオフセットトナーTaを塗布ローラ41上から除去する必要がある。
【0124】
次に、プリンタ100の特徴的な構成について説明する。
図1は、塗布ローラ41と塗布部材クリーニング装置70との拡大説明図である。
定着装置30の定着液塗布部140は、転写紙Pに泡状定着液Buを塗布する塗布位置としての塗布ニップCを通過した後、定着液供給部130による泡状定着液Buの供給位置に進入する前の塗布ローラ41表面をクリーニングする塗布部材クリーニング装置70を備える。塗布部材クリーニング装置70は、塗布ローラ41表面に対して、帯状の布とフィルム部材とを接着した帯状部材としてのウェブ44を当接させ、この当接部が拭き取りニップEとなる帯状部材式除去手段を備える構成である。
【0125】
塗布部材クリーニング装置70は、帯状のウェブ44の一端が回転可能な繰り出し軸45の周面に固定され、繰り出し軸45ウェブ44を何重にも巻き付けて、繰り出しロール45rを形成する。帯状のウェブ44の他端は、回転可能な巻き取り軸46の周面に固定されている。巻き取り軸46が図中時計回り方向に回転駆動することで、巻き取り軸46がウェブ44を巻き取るとともに、その分だけ繰り出し軸45の繰り出しロール45rからウェブ44が図中の矢印Aで示すように送り出される。また、巻き取り軸46にウェブ44が巻き付くことで巻き取りロール46rが形成される。
【0126】
ウェブ44における繰り出し軸45と巻き取り軸46との間の箇所は、所定のテンションで張架されながら、押圧ロール36によって塗布ローラ41の表面に押圧されている。この押圧により、ウェブ44が塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41表面に圧接して拭き取りニップEを形成しながら、その表面に付着している残留泡状定着液BaやオフセットトナーTaを拭い取る。
このとき、ウェブ44の繊維が微細な泡を壊すことで、泡の液状化が促される。液状化した定着液はウェブ44の布部分に吸収されながら、ウェブ44に沿って重力方向下方に移動した後、所定位置において、自重又は絞り取られることにより、ウェブ44の布部分からこぼれ落ちる。このような構成においては、塗布ローラ41表面から除去した後の定着液を貯留するタンクとして、容積の嵩張る泡状の定着液を貯留するための大型のタンクではなく、容積の嵩張らない液状の定着液を貯留するための小型のタンクを用いることが可能になる。これにより、塗布ローラ41から除去した定着液を貯留するための貯留手段として、容積の嵩張る泡状定着液を貯留するための大型のものを用いることによる装置の大型化を回避することができる。
【0127】
定着動作中においては、ウェブ44と塗布ローラ41との当接部である拭き取りニップEの入口に、定着液によって軟化したオフセットトナーTaとを滞留させるが、定着動作中にはある程度の残留泡状定着液Baも滞留させるので、オフセットトナーTaを固化させることはない。定着動作(プリントジョブ)を終了すると、ジョブ時間に応じた時間だけ、ウェブ44の巻き取りを行う。
これにより、オフセットトナーTaを固化させる前に拭き取りニップEの入口から取り去ることができ、オフセットトナーTaの塊を塗布ローラ41表面に固着させることがなくなる。よって、オフセットトナーTaの塊を塗布ローラ41表面に固着させた状態で定着動作を開始することによる塗布ローラ41表面の傷付きの発生を回避する。これにより、塗布ローラ41表面の残留泡状定着液を長期間に渡って良好に除去することができる。
【0128】
塗布部材クリーニング装置70におけるウェブ44は、布部分の繊維によって残留泡状定着液Baを液化せしめながら吸収する。これにより、ブレード部材とは異なり、残留泡状定着液Baを自らの表面上に乗り越えさせてしまうことを防止して、塗布ローラ41表面上から良好に回収するという効果を発揮することもできる。但し、少量の定着液やオフセットトナーTaを塗布ローラ41表面に残してしまうことがある。その定着液は、ウェブ44による拭い取り位置で液状化が促されていることから、殆どが液の状態になっている。
【0129】
ウェブ44の巻き取り方向については、拭き取りニップEにおいて、ウェブ44を塗布ローラ41の表面移動方向とは逆方向に移動させる方向に設定している。このような設定により、ウェブ44のテンションの緩みを防止している。繰り出し軸45、巻き取り軸46、後述する押し付けローラ40の回転軸には、それぞれ1方向の回転のみを許容する図示しないワンウェイクラッチを設けている。また、繰り出し軸45には、バックテンションによるウェブ44のテンションの緩みを防止する狙いから、ブレーキパッドを当接させている。
【0130】
ウェブ44の巻き取り速度については、A4サイズ紙のプリントを5〜10枚実施する間に、0.5〜1[mm]程度の巻取りを行う速度に設定している。また、塗布部材クリーニング装置70では、帯状部材式除去手段を構成する各部材については、1つの支持体で支持してユニット化している。そして、そのユニットを図示しない加圧カム機構によって一体的に移動させることで、ウェブ44の塗布ローラ41に対する接離を行うようにしている。機械停止時には、ウェブ44を塗布ローラ41から離間させている。
【0131】
塗布部材クリーニング装置70は、帯状部材式除去手段よりも塗布ローラ41の表面移動方向の下流側にブレード式除去手段を備えている。このブレード式除去手段は、帯状部材式除去手段による除去位置である拭き取りニップEを通過した後、定着液供給部130による泡状定着液Buの供給位置に進入する前の塗布ローラ41表面に対して、ブレード部材47のエッジを当接させている。この当接により、塗布ローラ41表面から残留定着液を除去する。残留定着液は、上述したように液化しているので、ブレード部材47によって塗布ローラ41表面から容易に除去される。
このとき、残留定着液は、ブレード部材47のエッジから速やかに落下するので、周囲に散乱することはない。
【0132】
ウェブ44に求められる条件としては、布部分の繊維がほつれ難いこと、ある程度の強いテンションで張架しても切れないこと、長尺であっても比較的小さな巻き取り径で済むように薄厚であること、定着液に溶けないことなどが挙げられる。脂肪族エステルを主成分とする定着液に対し、それらの条件を具備するウェブ44の布部分の材料を調査した結果、アラミド系、又はペット系材質からなる超極細繊維が好適であった。但し、画像形成装置の分野で市販されているアラミド系繊維の多くは、定着ローラの摩耗を低減する狙いからオイルを含ませているのが一般的であり、本発明における帯状部材式除去手段では、そのオイルが発泡性や、トナー溶解性などに悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70においては、ウェブ44の布部分として、油分の含浸処理を施していないアラミド系、又はペット系材質の超極細繊維からなる、厚み30〜70[μm]の布を用いている。
本実施形態では、ウェブ44の布部分としてアラミド系繊維からなる不織布を用いているが、布部分としては多数の繊維を薄い板状に加工した板状繊維体であればよく、起毛布、マット加工の紙等を用いることが出来る。
【0133】
ウェブ44に吸い取られた定着液は、毛細管現象によってウェブ44内を移動する。毛細管現象では、定着液がウェブ44内を重力方向下方に向けて移動したり、上方に向けて移動したりするが、吸い取り液量が比較的多量になってくると、後者の移動量に比べて前者の移動量の方が多くなる。そして、ウェブ44における拭き取りニップEよりも重力方向下方の箇所から、定着液が滴り落ちるようになる。そこで、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70においては、ウェブ44における拭き取りニップEよりも重力方向下方の箇所から滴り落ちる定着液を受けて回収する液受け手段としての受け皿48を設けている。これにより、ウェブ44から定着液を周囲にまき散らすことなく回収することができる。
【0134】
受け皿48の下面には、下面から1〜3[mm]の高さで突出して転写紙Pの搬送方向に沿って延在するリブを複数設けており、これにより、転写紙Pの搬送性を向上させている。
【0135】
上述したように、ウェブ44による吸い取り液量が比較的多量になってくると、ウェブ44における拭き取りニップEよりも重力方向下方に向けてウェブ44内を移動しようとする液量が多量に出現する。このような状況において、ウェブ44を拭き取りニップEの付近で重力方向下方から上方に向けて移動させるように巻き取り機構あるいは無端移動機構を構成すると、ウェブ44内を拭き取りニップEよりも重力方向下方に向けて移動した定着液を、拭き取りニップEに戻して、ニップから絞り落としてしまうおそれがでてくる。
【0136】
そこで、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70においては、ウェブ44における拭き取りニップEで塗布ローラ41に当接した箇所を拭き取りニップEから重力方向下方に向けて移動させるように、ウェブ44を巻き取るようにしている。そして、受け皿48の真上にて、自らの周面にウェブ44を巻き掛けてウェブ44内の定着液を絞り取る絞り手段としての絞りローラ32を設けている。この絞りローラ32により、ウェブ44内の定着液を絞り落とすことで、ウェブ44内の定着液を周囲にまき散らすことなく確実に受け皿48に回収するとともに、ウェブ44内における拭き取りニップEから受け皿48付近までの液浸透性を高めることができる。
【0137】
次に、塗布部材クリーニング装置70のブレード式除去手段について説明する。
クリーニング手段として用いるブレード部材については、ウレタンゴムからなるものを採用するのが一般的である。しかしながら、本発明に係る定着装置30の場合には、脂肪族エステルを主成分とする定着液により、ウレタンゴムの膨潤を引き起こすことが判明した。そこで、ブレード式除去手段のブレード部材47について、脂肪族エステルを主成分とする定着液に膨潤しない適切な弾性材料を検討した。上述の定着液に膨潤しない弾性材料としては、EPDM、クロロプレン、シリコン、フッ素などが挙げられる。この中で、EPDMやクロロプレンは、エッジ精度や耐久性に劣る。また、フッ素ゴムは高価である。そこで、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、ブレード部材47として、シリコーンゴムからなるものを用いている。シリコーンゴムは、ウレタンよりも耐久性が劣るものの、定着液を用いるクリーニング方式では、ブレード部材と塗布部材との間に液を介在させることから、定着液を用いない場合に比べて、ブレード摩耗を大幅に低減することが可能であり、実用性として問題ない耐久性を発揮することを実験によって確かめた。
【0138】
ブレード部材47に用いる弾性材料の硬度としては、65〜80[度]が好適であり、エッジの加工精度を100[μR]以下にすることが望ましい。また、ブレード部材47には、図示しない接離手段を設けており、任意のタイミングでブレード部材47を塗布ローラ41に対して接離させることが可能になっている。
【0139】
塗布ニップCの出口においては、転写紙Pを塗布ローラ41から分離させる必要がある。曲率分離では、転写紙Pの腰の強さで塗布ローラ41からの分離を図っているが、紙は厚み、スキ目方向、湿度など、初期の条件、保管条件、セット条件など幾つかの要因で腰の強さが絶えず変わることから、分離できないケースも生じ得る。そこで、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、塗布ニップCの出口付近に分離爪49を設け、これによって転写紙Pを塗布ローラ41表面から強制的に分離している。但し、分離爪49を塗布ローラ41表面に当接させてしまうと、ローラ表面上の泡を掻き散らしてしまうため、分離爪49の先端を所定の微小ギャップGをもって塗布ローラ41表面に対向させている。この微小ギャップGとしては、塗布ローラ41の回転に伴う振動量(0.1〜0.2[mm]程度)と、泡の最大厚み(100[μm]程度)と、分離爪49を支持する支持部材の真直度(0.3前後)とを加味して、0.5[mm]以上、1.0[mm]以下に設定している。
【0140】
拭き取りニップEにおいては、泡の液化を促すために、ウェブ44をある程度の圧力で塗布ローラ41表面に押し付ける必要がある。拭き取りニップEにてウェブ44を所定の圧力で塗布ローラ41に押し付ける役割を果たしているのが、押し付けローラ40である。
ここで、ウェブ44が布のみからなる構成であると、定着液や定着液によって軟化したオフセットトナーTaが布の繊維の隙間を通過して、押し付けローラ40に付着するおそれがある。オフセットトナーTaが押し付けローラ40に付着すると、ウェブ44と押し付けローラ40との固着の不具合や、押し付けローラ40の表面が固くなる不具合が生じる。
【0141】
これに対して、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、ウェブ44の塗布ローラ41と接触する面は布部分とし、布部分の塗布ローラ41と接触する面に対して裏側の面に薄層のフィルム部材を貼り付けている。このフィルム部材としては、定着液に対して耐溶剤性のある材料からなるフィルムを用いる。
ウェブ44がこのようなフィルム部材を備えることにより、押し付けローラ40にオフセットトナーTaが付着することを防止し、一定の圧を掛け続けることが可能である。また、フィルム部材として薄層フィルムを用いることにより、帯状のウェブ44が表面移動方向に長尺であっても繰り出しロール45rや巻き取りロール46rの径が不織布などの布のみからなるウェブに比べて大幅に大きくなることを防止できる。
定着液に対して耐溶剤性のあるフィルム部材の材料としては、例えば、PET、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン等を挙げることができる。
【0142】
また、上述したようにブレード部材47に用いるゴム材料としても液状定着液31aに対して耐溶剤性を備えていることが求められる。本実施形態では、定着装置30で用いる液状定着液31aの成分のうちトナー樹脂を軟化させる軟化液に対するゴム材料の体積変化率が5[%]以下であれば、ブレード部材47が液状定着液31aに対して耐溶剤性を有するものとする。また、フィルム部材に用いる材料としても液状定着液31aに対して耐溶剤性を備えていることが求められる。そして、フィルム部材に用いる材料としても軟化液に対する体積変化率が5[%]以下の隊溶剤性を備えるものを用いる。
【0143】
ここで、液状定着液31aに対する体積変化率は次のようにして求める。まず、耐溶剤性を要する部材の材料の試験片の体積を測定する。次に、この試験片が定着液の軟化液の原液に完全に浸かるようにセットして24時間放置する。このとき、軟化液が揮発性を有する液体の場合は密閉容器内に軟化液及び試験片をセットして密閉した状態で24時間放置し、24時間経過後、試験片の体積を測定する。そして、軟化剤に浸ける前の試験片の体積をV1、軟化剤に浸けて24時間放置後の試験片の体積をV2としたときに、dV=100×(V2−V1)/V1で求まるdVの値が体積変化率である。
【0144】
ここで、ブレードに用いるゴム材料の体積変化率と、そのゴム材料からなるゴムブレードを塗布部材クリーニング装置70のブレード部材47として使用したときの、使用の可否を判定する実験を行った。
ゴム材料の体積変化率と使用の可否の実験結果とを表2に示す。
【表2】

表2の使用の可否の判定基準は以下の通りである。
「○」は、体積変化無く、形状変化も無い。
「△」は、体積変化は僅かに認められるが、クリーニング性能の劣化は求められない(初期のみ)。使用エッジ部の体積変化は目視でも分かるが、エッジ部全体が一様に僅かに膨潤している為、クリーニング性能の急激な劣化には至っていない状態。
「×」は、体積変化が大きく、形状変化も大きい。クリーニングとして使用できない。
なお、体積変化率の算出には、軟化液が100[%]の溶媒を用いたが、実験機で用いた定着液は軟化液の濃度が20[%]〜30[%]の溶媒である。
ゴム材質Cを用いた実験機では、ブレード部材47に若干の反りが発生していたが初期の品質には問題は無かった。本実験では、ブレード部材47の耐久や長期使用における品質までは未確認であるので、この結果を踏まえ、体積変化率の上限は、5[%]と設定している。
【0145】
本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、拭き取りニップEで除去されず、塗布ローラ41上に僅かに残ってしまったオフセットトナーTaはブレード部材47によって塞き止めることで、オフセットトナーTaの再転移による画像劣化の発生を防止することができる。しかし、軟化したオフセットトナーTaをブレード部材47によって塞き止めると、そのブレード先端部においてオフセットトナーTaが硬化して、ブレード部材47と塗布ローラ41の表面との間で固着するおそれがある。このため、塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41上に残留する定着液とオフセットトナーTaのうち、少なくともオフセットトナーTaは拭き取りニップEでほぼ100[%]の除去がなされ、拭き取りニップEよりも下流側へオフセットトナーTaが到達しない構成であることが望ましい。
【0146】
拭き取りニップEにおける除去性能には、押し付けローラ40がウェブ44を塗布ローラ41に押し付ける力、拭き取りニップEのニップ幅等の条件も大きく影響している。しかし、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、これらの条件が一定の条件下の場合であっても、ウェブ44の塗布ローラ41との当接面の表面状態によってクリーニング性能が大きく異なることが分かった。
そして、ウェブ44の塗布ローラ41と当接面に繊維の凹凸によるスキ目が形成されている場合は、拭き取りニップEでのウェブ44のスキ目に沿う方向と塗布ローラ41の表面移動方向とが交差するように構成することが望ましいことが分かった。
【0147】
図20は、スキ目が明確な不織布の一例の表面の拡大図である。
図20に示す不織布では表面の繊維は図中横方向に延在する傾向があり、図20中の矢印H方向がスキ目に沿う方向である。
図4に示す本実施形態の定着装置30の塗布部材クリーニング装置70が備えるウェブ44の布部分に図20に示す不織布を用いて、拭き取りニップEでの塗布ローラ41の表面移動方向が図20中の矢印H方向と平行となる場合(以下、縦目使用と呼ぶ)と、塗布ローラ41の表面移動方向が矢印H方向と直交する場合(以下、横目使用と呼ぶ)とでオフセットトナーTaの除去性能を評価し、比較する実験を行った。以下、この除去性能を比較する実験について説明する。
【0148】
オフセットトナーTaの除去性能を比較する場合は、塗布ニップCを通過した塗布ローラ41の表面上に付着するオフセットトナーTaの量が通常の画像形成時よりも多くなるように設定することが望ましい。そして、定着装置30でオフセットトナーTaの量が多くなるように、すなわち、オフセットが生じやすいように、塗布ニップCよりも上流側の塗布ローラ41に供給する泡状定着液Buの量を少なくしたところ、泡状定着液Buの量の僅かな変動によってオフセットトナーTaの量が大きく変動することが分かった。
また、オフセットトナーTaの量を算出する方法としては、オフセットした分だけトナーの量が減少するため、記録媒体に未定着トナー像を作成した状態の重量と定着後の重量とを測定し、その重量差でオフセットした分のトナーの量を算出することが考えられる。しかし、定着装置30は定着液を塗布して定着を行うため、どの程度の定着液が記録媒体に塗布され、どの程度の定着液がオフセットトナーとともに塗布ローラ41に残留したのか不明である。このため、定着前後の重量を測定する方法ではオフセットトナーTaの量を算出することは出来ない。
このようにオフセットトナーTaの量が大きく変動する課題や、定着前後の重量差ではオフセットトナーTaの量を算出できない課題がある定着装置30で除去性能を適正に評価できるように、本実験では次のような手順でオフセットトナーTaの除去性能を評価した。
【0149】
(1)OHPシート上に全面ベタ画像を作成し、ベタ画像の1[cm]あたりのトナー重量を算出し、これをベタ画像の標準付着量とする。
(2)OHPシート上に図21に示す評価パターン画像を作成。図21の評価パターン画像は矢印Iで示す通紙方向の長さが異なる5つのブロックからなり、後述する定着を行うときに図21中の矢印I方向に通紙することで、一回の通紙で幅方向の位置の違いでオフセット量を異ならせることが出来る。単純に通紙方向に長い画像ほどオフセット量が多くなる。
(3)オフセットなしの画像を作成するため、上記(2)の画像を作成したOHPシートの一枚に対してローラ等の画像面に接触する定着部材を用いずに熱定着。
(4)上記(3)で評価パターン画像を定着させたOHPシートの画像を形成した面の裏面から反射濃度を測定。ここでは、5つのブロックのそれぞれについて5点平均の値の測定結果とする。そして、この測定結果をオフセットなし画像の反射濃度とする。
(5)オフセットありの画像を作成するため、上記(2)の画像を作成したOHPシートに対して図3で示す本実施形態の定着装置30の実験機を用いて定着を行う。ウェブ44の塗布ローラ41との当接面の表面状態の条件を変えて複数枚のオフセットあり画像を作成する。なお、同じ条件に設定しても泡状定着液Buの量の僅かな変動によってもオフセットトナーTaの量が大きく変動するため、同じ条件で複数枚のオフセットありの画像を作成してもよい。なお、本実験における拭き取りニップEのニップ幅は3[mm]であった。
(6)上記(5)で評価パターン画像を定着させたOHPシートの画像を形成した面の裏面から反射濃度を測定。上記(4)と同様に、5つのブロックのそれぞれについて5点平均の値の測定結果とする。そして、この測定結果を各オフセットあり画像の反射濃度とする。
(7)(6)で求めた一つのブロックのオフセットあり画像の反射濃度を(4)で求めた対応するブロックのオフセットなし画像の反射濃度で除した値からオフセット率を算出し、オフセット率に上記(1)で求めた標準付着量とブロックの長さとを掛けてそのブロックにおけるオフセット量を算出する。一例として、ある一枚の1×5のブロックについて、オフセットあり画像の反射濃度をオフセットなし画像の反射濃度で除した値が0.7であった場合、オフセット率は、1.0−0.7=0.3で、0.3となる。ここで、標準付着量が仮に1.0[mg]だとすると、この1×5のブロックのオフセットトナー量は、0.3×1.0×5=1.5で1.5[mg]と算出することが出来る。
(8)上記(5)の複数毎のオフセットあり画像を作成する毎に、拭き取りニップEの塗布ローラ41の表面、拭き取りニップEとブレード部材47の当接位置との間の塗布ローラ41の表面、及び、ブレード部材47の表面の3個所についてオフセットトナーTaの残留状態を確認するためにテープ転写を行う。そして、このテープ転写を用いて幅方向の各ブロックが通過した位置におけるオフセットトナーの回収の可否を目視で評価し、回収状態がOKとなったブロックのなかで上記(7)で算出したオフセットトナー量が最も多いブロックのオフセットトナー量をその条件における回収トナー量とする。
なお、目視での評価は、目視でトナー付着が確認された場合をNGとし、量的によく見ないと分かりにくい程度のトナー付着量の場合をOKとした。
【0150】
なお、本実験において、記録媒体としてOHPシートを用いたのは、OHPシート上の画像は普通紙に比べオフセットしやすく、さらに、OHPシートであれば裏面からの濃度測定が可能となるためである。画像の反射濃度を測定する場合、光を照射する側の画像面の表面が平滑であるほど反射量が大きくなり、トナーの付着量が同じであってもトナー像の表面平滑性によって反射濃度が異なってくる。これに対して、本実験のようにOHPシートの裏面から反射濃度を測定することで、トナー像の表面平滑性の影響を受けることなく、トナーの付着量が同じであれば同じ反射濃度を得ることが出来る。
【0151】
ここで、一例として、上記(5)の複数枚のオフセットあり画像の作成として、ウェブ44の塗布ローラ41との当接面の表面状態の条件を2条件(α及びβ)を用意して、各条件について二枚ずつの計4枚(α1、α2、β1、β2)のオフセットあり画像を作成した場合について説明する。
図22は、上記(7)に記載の算出方法で算出した、各OHPシートのそれぞれのブロックについてのオフセットトナー量を示すグラフである。オフセットが発生する塗布ニップCは拭き取りニップEよりも上流側であるため、α及びβといったウェブ44の表面状態の違いの影響も受けず、オフセットトナー量に影響する条件で設定可能な条件は4枚のOHPシートの何れを通紙させた場合も同じ条件としている。しかし、泡状定着液Buの量の僅かな変動によってオフセットトナーTaの量が大きく変動するため、図22に示すように、通紙毎にオフセットトナー量は大きく変動する。
【0152】
図23は、図22でオフセットトナー量を示した各OHPシートについて、上記(8)の回収状態の評価で回収状態がOKとなったブロックとそのときのオフセットトナー量を示すグラフである。すなわち、図22に記入されたプロットのうち、図23に記入されていないプロットは、回収状態がNGと評価された条件である。
α1のOHPシートでは1×5のブロックの回収状態の評価がNGであったため、1×3のブロックのオフセットトナー量である0.6[mg]が回収トナー量となる。同様に、α2は0.5[mg]、β1は0.3[mg]、β2は0.175[mg]がそれぞれ回収トナー量となる。
そして、α1及びα2より、表面状態の条件αの回収トナー量は0.6[mg]となり、β1及びβ2より、表面状態の条件βの回収トナー量は0.3[mg]となる。
このように表面状態の条件によって回収トナー量を算出することで、その条件における除去性能を評価することが出来る。
【0153】
上述した縦目使用と横目使用とを比較する実験として、図20に拡大図を示す不織布について、縦目使用と横目使用との2つの条件のそれぞれについて、上述した方法により、回収トナー量を求めた。
その結果、縦目使用の回収トナー量は、0.08[mg]であり、横目使用の回収トナー量は、0.40[mg]であった。すなわち、この実験では、同じ材質からなるウェブ44を用いたとしても横目使用と縦目使用とで回収トナー量にして5倍という除去性能に大きな差が生じることが分かった。
このように、ウェブ44の布部分として同じ不織布を用いたとしても、そのスキ目の方向と塗布ローラ41の表面移動方向との関係によって除去性能は大きく異なる。そして、ウェブ44の塗布ローラ41と当接面に繊維の凹凸によるスキ目が形成されている場合は、拭き取りニップEでのウェブ44のスキ目に沿う方向と塗布ローラ41の表面移動方向とが交差するように構成することが望ましいことが分かった。なお、ウェブ44のスキ目に沿う方向と塗布ローラ41の表面移動方向とが直交する構成が最も好ましいが、ウェブ44のスキ目に沿う方向と塗布ローラ41の表面移動方向とが交差する構成であれば、平行な構成(縦目使用)に比べて除去性能の向上を図ることができる。
【0154】
上述した塗布ニップCにおいては、加圧ローラ43が塗布ローラ41に当接している。塗布ローラ41に対しては、通紙時のみ泡状定着液Buを供給するように定着液供給部130の駆動を制御しているが、それでも、加圧ローラ43の表面上に対して塗布ローラ41の表面上の泡状定着液Buを転移させてしまう。塗布ニップCに対する転写紙Pの進入タイミングずれ、連続通紙時の紙間タイミングにおける両ローラの直接接触などが起こるからである。また、加圧ローラ43の表面に転移した泡状定着液Buの中には、ドロドロの状態のトナーが含まれていることもある。加圧ローラ43の表面に対する泡状定着液Buの転移量が比較的多くなってくると、転写紙Pの裏面に定着液を浸透させて定着装置30以降の部材に悪影響を及ぼすおそれがでてくる。また、裏汚れなどの不具合も発生する。
【0155】
そこで、本実施形態の定着装置30においては、加圧ローラ43に転移した泡状定着液Buを除去する加圧除去ブレード部材71を設けている。加圧ローラ43に対する泡状定着液Buの付着量は、塗布ローラ41に比べて大幅に少ないので、加圧除去ブレード部材71でも、周囲へのまき散らしを引き起こすことなく、泡状定着液Buの除去が可能である。但し、付着量によっては、加圧除去ブレード部材71に代えて、帯状部材式除去手段を採用した方がよい場合もある。何れにしても、帯状部材式除去手段とブレード部材とを併用せずに、何れか一方で足りる。付着量が比較的少量である場合には、定着液やトナーを確実に除去し得るブレード部材を採用する一方で、付着量が比較的多量である場合には、消泡性や吸液性のある帯状部材式除去手段を採用することが望ましい。
【0156】
次に、実施形態に係るプリンタの各変形例について説明する。なお、如何に特筆しない限り、各変形例に係るプリンタ100の構成は、実施形態と同様である。
[第1変形例]
図24は、第1変形例に係るプリンタ100の定着装置30を示す拡大構成図である。この定着装置30においては、塗布部材として、塗布ローラ41の代わりに、塗布ベルト72を用いている。無端状の塗布ベルト72は、複数の塗布張架ローラ73によって張架されながら、何れか1つの塗布張架ローラ73の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。そして、ローラ間の展張箇所を加圧ローラ43に当接させて塗布ニップCを形成している。塗布ベルト72を加圧ローラ43の表面に沿って柔軟に湾曲させることで、塗布ローラ41を用いる場合に比べてニップ幅の長い塗布ニップCを形成することができる。塗布ベルト72としては、例えばシームレスニッケルベルトやシームレスPETフィルムなどの基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いている。
【0157】
このように、塗布ベルト72を用いる構成では、塗布ニップCのニップ幅を容易に広くして、ニップ時間の拡大化を図ることができる。
【0158】
加圧ローラ43に付着した泡状定着液Buを除去する除去手段として、塗布ベルト72の除去部材である塗布部材クリーニング装置70が備える帯状部材式除去手段と同様の構成の加圧部材クリーニング装置74を設けている。上述したように、加圧ローラ43に対する泡状定着液Buの付着量は、塗布部材に比べれば大幅に少ないため、加圧ローラ43用の加圧部材クリーニング装置74が備えるウェブ44に対するトナー付着量も、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44に比べて遙かに少なくなる。このため、ウェブ44の寿命も、塗布部材クリーニング装置70のものに比べて長くなる。但し、泡の回収を促す目的から、ウェブ44の巻き取りは必要である。その巻き取り速度について検討したところ、加圧ローラ43に対する泡状定着液Buの付着量が塗布部材に比べて大幅に少ないことから、塗布部材クリーニング装置70のウェブの巻き取り速度よりも、遅くすることが可能であることがわかった。
【0159】
そこで、第1変形例においては、加圧ローラ43用の加圧部材クリーニング装置74のウェブ44の巻き取り速度を、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44の巻き取り速度よりも遅くしている。より詳しくは、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44の巻き取り速度を、加圧部材クリーニング装置74のウェブ44の巻き取り速度の整数倍にしている。それぞれのウェブ44としては同じ長さのものを用いている。これにより、例えば、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44を2回交換する毎に、加圧部材クリーニング装置74のウェブ44を1回交換するなど、定期的に2つのウェブ44の交換タイミングを同期させて、メンテナンス性を高めることができる。なお、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44として、長さを、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44の巻き取り速度と、加圧部材クリーニング装置74のウェブ44の巻き取り速度との比率に応じた分だけ、加圧部材クリーニング装置74のウェブ44よりも長くしたものを用いて、2つのウェブ44の交換タイミングを完全に同期させてもよい。
【0160】
先に示した図4において、塗布ニップCの前後には、転写紙Pを塗布ニップCの入口に導いたり、塗布ニップCの出口から排出される転写紙Pを受けたりするガイド板16が配設されている。このガイド板16における転写紙Pとの接触面には、直径50〜200[μm]程度の微細なガラスビーズを含有するICPフィルムが貼り付けられている。このICPフィルムにより、ガイド板16に対する転写紙Pの貼り付きや汚れの発生を防止している。
【0161】
[第2変形例]
図25は、第2変形例に係るプリンタ100の定着装置30を示す拡大構成図である。この定着装置30においては、塗布ニップCで塗布部材に当接する部材として、加圧ローラの代わりに、加圧ベルト75を用いている。無端状の加圧ベルト75は、複数の加圧張架ローラ76によって張架されながら、何れか1つの加圧張架ローラ76の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。そして、ローラ間の展張箇所を塗布ローラ41に当接させて塗布ニップCを形成している。加圧ベルト75を塗布ローラ41の表面に沿って柔軟に湾曲させることで、加圧ローラ43を用いる場合に比べてニップ幅の長い塗布ニップCを形成することができる。加圧ベルト75としては、例えばシームレスニッケルベルトやシームレスPETフィルムなどの基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いている。
【0162】
上述した実施形態及び各変形例では、帯状部材が巻き取り可能に張架されたウェブ44である構成について説明したが、押し付けローラ40と塗布ローラ41との間に挟まれる帯状部材としては、無端移動するループ状の部材であってもよい。
なお、上述した塗布部材クリーニング装置70のように、除去部材として、被清掃体表面に接触し、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状部材を備え、帯状部材が被清掃体表面に接触する面が板状繊維体からなり、裏面がフィルム部材からなる構成は、塗布部材や加圧部材のクリーニング装置に限らず適用可能である。すなわち、定着装置に限らず、被清掃体の表面にクリーニングするクリーニング装置であれば、適用可能である。
なお、加熱定着を行う定着装置の定着部材のクリーニング装置として使用する場合は、帯状部材を構成する板状繊維体及びフィルム部材とこれらを固定する接着層との耐熱温度が加熱定着の定着温度以上であることが求められる。また、高温の定着部材に接触しながら巻き取りの引張り力に対応でき、ウェブ状のものであれば、ウェブの繰り出し側、巻き取り側のウェブのロール径が大きくなるとレイアウト的に不利であるため、帯状部材としても薄いものが求められる。さらに、加熱定着の定着装置に用いるクリーニング装置の帯状部材としては自己潤滑性が必要で、シリコンオイルを含浸する際のオイル保持機能が求められる。
一方、本実施形態の定着装置30のように定着液を用いる定着装置の定着部材のクリーニング装置として使用する場合は、帯状部材を構成する各層を構成する部材としては耐熱温度が低いものを使用することができる。また、定着液が存在する部材の表面に接触するため、自己潤滑性は不要である。
【0163】
以上、本実施形態の定着装置30が備える塗布部材クリーニング装置70は、表面移動する被清掃体である塗布ローラ41の表面上の付着物である残留泡状定着液Ba及びオフセットトナーTaを除去手段によって除去するクリーニング装置である。そして、この除去手段は、塗布ローラ41の表面に対して、巻き取り可能に張架した帯状部材であるウェブ44を当接させて塗布ローラ41の表面に付着している残留泡状定着液Ba及びオフセットトナーTaを塗布ローラ41の表面から除去する帯状部材式除去手段を備える。そして、帯状部材式除去手段のウェブ44の塗布ローラ41に当接する側の面は多数の繊維を薄い板状に加工した板状繊維体である不織布からなり、不織布における塗布ローラ41表面に当接する面の裏面に定着液やオフセットトナーTaが通過できない被膜であるフィルム部材を設けたため、不織布からなる布部分の繊維の隙間に定着液や定着液によって軟化したオフセットトナーTaが入ったとしてもフィルム部材によってウェブ44の裏面に到達することを妨げられる。これにより、塗布ローラ41に対して不織布を挟んで反対側の部材である押し付けローラ40に除去した定着液やオフセットトナーTaが付着することを防止できる。オフセットトナーTaが押し付けローラ40に付着することを防止できるため、押し付けろーラ40とウェブ44との間でオフセットトナーTaが固着する不具合や、押し付けローラ40のローラ表面が硬化する不具合の発生を防止することができる。また、定着液が押し付けローラ40に付着することを防止できるため、押し付けローラ40の材料として定着液に対する耐溶剤性が低い材料でも使用することができるようになり、材料選択の自由度が広がる。
【0164】
また、不織布からなる布部分の塗布ローラ41表面に当接する面には繊維の凹凸によるスキ目が形成されている場合は、布部分が塗布ローラ41の表面に当接する拭き取りニップEでは、布部分表面のスキ目に沿う方向と塗布ローラ41の表面移動方向とが交差するように構成する。ウェブ44の布部分として使用する材料にはよるスキ目がはっきりしたものがあり、スキ目に沿う方向と塗布ローラ41の表面移動方向とが平行である(縦目使用)と極端にクリーニング性能が低下することわかった。このため、スキ目がはっきりした布部分を備えたウェブ44を用いる場合には、塗布ローラ41の表面移動方向に対してスキ目に沿う方向が直交する(横目使用)ように設定することにより、縦目使用の場合に比して除去性能を大きく向上することができる。
【0165】
また、ウェブ44は、帯状の布部分と帯状のフィルム部材とこれらを接着層との少なくとも3層以上の多層構造からなる。接着層を備えることにより、布部分とフィルム部材とを固定し、背面に構成された薄層フィルムと表面の不織布とが一体的となり、塗布ローラ41の表面移動方向に対して、逆方向でウェブ44を巻き取っても、布部分とフィルム部材との間にズレが生じることがなく、安定した除去性能を維持することが出来る。
さらに、不織布とフィルムとの間に別の機能を有するフィルムを接着し多層フィルムとすることも可能である。表面の不織布は多くの隙間を有しており、その隙間を利用し下層の表面が露出する。この表面が露出する層がポーラスなものであれば、第三の液の保持に利用できる。それは初期に新しいフィルムに含浸させておき、塗布部のニップ間で機能する場合、又は、何も含浸させる事なく、塗布ニップで泡が消泡後の液を吸収する部材でもよい。
泡を消す手段としては多くの事例が過去紹介されている。本発明者らは簡単にかつ、安全な手段として高濃度の塩水をウェブに湿らせて泡回収を実施したところ、早い時間での消泡効果を確認できた。特に消泡効率と塩水濃度との関係は把握していない簡易テストではあったがその効果を確認できた。このことからウェブへの消泡材の事前塗布、又は含浸で効率的な効果を期待できる。含浸手段としてはウェブ中に保持させるやり方や使用直前にウェブに塗布する等考えられる。
【0166】
また、ウェブ44の多層構造の各層が塗布部材クリーニング装置70の設置環境の温度と同等以上の耐熱温度を有するため、温度によってウェブ44が変質することはない。定着装置30は湿式定着方式であるため、加熱定着方式に比べて定着装置30の温度の上昇が非常に小さく、ウェブ44を構成する各部材の耐熱温度は設置環境の温度程度でよい。したがって、定着熱を考慮しない機械使用温湿度環境での品質保証があれば十分なので材料の選択肢は広い。定着液に耐する溶剤性がベースとなるフィルム部材にあれば、常時巻き取りに対する耐久性を必要としない表面の不織布の組み合わせで十分である。
【0167】
また、塗布部材クリーニング装置70は、布部分が塗布ローラ41の表面に当接する拭き取りニップEに対して、塗布ローラ41の表面移動方向下流側に塗布ローラ41の表面に当接する除去ブレード部材であるブレード部材47を備える。これにより、拭き取りニップEで除去し切れなかった定着液を除去することができ、さらに下流側で塗布ローラ41上に供給される泡状定着液Buの特性に影響を及ぼすことを防止できる。
【0168】
また、塗布部材クリーニング装置70は、ウェブ44の布部分として、アラミド系の不織布を用いている。不織布としては他の材料からなるものであってもよく、布部分としては不織布以外の布でもよい。さらに、多数の繊維を薄い板状に加工した板状繊維体であればよいため、紙も使用することができる。
【0169】
また、塗布部材クリーニング装置70がクリーニングを行う塗布ローラ41は、トナーの樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する樹脂軟化液としての定着液を表面に担持する表面移動体であり、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44を構成するフィルム部材は定着液に対して耐溶剤性を有する。これにより、ウェブ44自体が定着液によって劣化しないため、巻き上げ時のテンションによって破断や変形が起きることを防止することができ、ウェブ44を巻き上げるときの巻上げ条件の安定性が確保できる。
【0170】
また、塗布部材クリーニング装置70のウェブ44は、巻き取りによって拭き取りニップEで塗布ローラ41の表面移動方向に対して逆方向に表面移動する。拭き取りニップEでのウェブ44の表面移動方向が塗布ローラ41の表面移動方向と同方向であると、ウェブ44に緩みが生じるおそれがあるが、逆方向に表面移動するように巻き取ることでウェブ44に緩みが発生することを防止できる。
【0171】
また、本実施形態の定着装置30は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液31aを液中に気泡が分散した泡状定着液Buとする定着液泡状化手段である定着液供給部130と、樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層である未定着のトナー層Tを担持する定着液付与対象である転写紙Pの表面に泡状定着液Buを付与する泡状定着液付与手段である定着液塗布部140とを有し、泡状定着液Buを付与することで軟化したトナー粒子が軟化した未定着のトナー層を記録媒体である転写紙Pに定着する定着装置である。定着液供給部130によって泡状定着液Buになり、転写紙Pに付与されず、表面移動体である塗布ローラ41及び加圧ローラ43に付着した状態の泡状定着液Buをクリーニングする泡状定着液クリーニング手段として、塗布部材クリーニング装置70を備える。泡状の定着液を用いることで、転写紙P上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラ41へのトナーオフセット防止を両立することができる。ここで、塗布ニップCで転写紙Pに付与されなかった泡状定着液Bu(残留泡状定着液Ba)が塗布ローラ41に付着したままとなると新しい泡状定着液Buと混ざって適切な定着が出来なくなるおそれがある。これに対して、定着装置30は、塗布部材クリーニング装置70によって塗布ローラ41を長期間に渡って良好にクリーニングすることができるので、塗布ローラ41に泡状定着液Buが付着したままとなることに起因する不具合を防止することができる。さらに、定着液や定着液で軟化したオフセットトナーが押し付けローラ40に付着することを防止でき、塗布ローラ41に対して安定したクリーニングを行うことができるため、定着装置30は、経時に渡って安定した定着を行うことが出来る。
【0172】
また、本実施形態の定着装置30の泡状定着液付与手段である定着液塗布部140は、表面移動する表面に供給された泡状定着液Buを、定着液付与対象である転写紙Pと対向する塗布位置である塗布ニップCで転写紙Pの表面に塗布する塗布部材である塗布ローラ41を有し、塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41の表面上の泡状定着液Buである残留泡状定着液Baをクリーニングする塗布部材クリーニング手段として、塗布部材クリーニング装置70を用いる。残留泡状定着液Baとともに塗布部材クリーニング装置70によってクリーニングされる位置に到達するオフセットトナーTaは、軟化し形態が変化している。そして、このオフセットトナーTaは、粘性が高く、流動性はほとんど無いため、当接位置でクリーニング部材に付着すると付着したままとなり、そのまま硬化することがあるが、塗布部材クリーニング装置70ではウェブ44に付着したオフセットトナーTaをウェブ44の表面移動によって当接位置である拭き取りニップEから強制的に回収する。これにより、拭き取りニップEでオフセットトナーTaが硬化することに起因する不具合を防止することができる。
【0173】
本実施形態の画像形成装置としてのプリンタ100は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体である転写紙P上に未定着のトナー層Tを形成するトナー像形成手段であるプロセスユニット3等と、転写紙P上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備え、定着手段として、本実施形態の定着装置30を用いる。定着装置30では塗布ローラ41上の残留泡状定着液Ba及びオフセットトナーTaを良好に回収することができるため、プリンタ100では、残留泡状定着液Ba及びオフセットトナーTaが塗布ローラ41に残留することに起因する定着不良や画像品質の低下を防止することができ、良好な画像形成を行うことができる。さらに、定着装置30は非加熱の定着方式であるため、熱定着方式の定着装置を備えた構成よりも省エネルギー化を実現できる。
【符号の説明】
【0174】
3 プロセスユニット
4 感光体
6 現像装置
7 帯電装置
8 除電ランプ
9 ドラムクリーニング装置
15 レジストローラ対
20 転写ユニット
21 駆動ローラ
23 転写バックアップローラ
24 ベルトクリーニング装置
25 中間転写ベルト
26 一次転写ローラ
28 紙搬送ユニット
29 紙搬送ベルト
29a 二次転写ローラ
29b 駆動ローラ
30 定着装置
31 定着液収容器
31a 液状定着液
32 絞りローラ
33 搬送ポンプ
34 液搬送パイプ
35 気体・液体混合部
38 泡微細化部
38a 外側円筒
38b 内側円筒
38c 泡搬送パイプ
38d 泡の出口
39 ノズル
41 塗布ローラ
42 膜厚調整ブレード
42a ブレード回動軸
43 加圧ローラ
44 ウェブ
45 繰り出し軸
45r 繰り出しロール
46 巻き取り軸
46r 巻き取りロール
47 ブレード部材
48 受け皿
49 分離爪
51 塗布部材
52 定着液
53 記録媒体
54 トナー層
55 泡状の定着液
56 ジルコニア粒子
60 液状定着液を用いる定着装置
61 上部電極
62 下部電極
63 泡状の定着液
64 トナー層
65 加重検知ロードセル
70 塗布部材クリーニング装置
71 加圧除去ブレード部材
72 塗布ベルト
73 塗布張架ローラ
74 加圧部材クリーニング装置
75 加圧ベルト
76 加圧張架ローラ
100 プリンタ
130 定着液供給部
140 定着液塗布部
Ba 残留泡状定着液
Bu 泡状定着液
Bu−A 気泡
Bu−B 液膜境界
C 塗布ニップ
E 拭き取りニップ
G 微小ギャップ
P 転写紙
T 未定着のトナー層
Ta オフセットトナー
Tb 定着トナー層
Tp トナー粒子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0175】
【特許文献1】特許第3290513号公報
【特許文献2】特開2004−109749号公報
【特許文献3】特開昭59−119364号公報
【特許文献4】特開2004−109747号公報
【特許文献5】特開2007−219105号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去手段によって除去するクリーニング装置において、
上記除去手段は、上記被清掃体の表面に対して、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状部材を当接させて該被清掃体表面に付着している付着物を該被清掃体表面から除去する帯状部材式除去手段を備え、
該帯状部材の上記被清掃体に当接する側の面は多数の繊維を薄い板状に加工した板状繊維体からなり、
該板状繊維体における該被清掃体表面に当接する面の裏面に付着物が通過できない被膜を設けたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記板状繊維体の上記被清掃体表面に当接する面には繊維の凹凸によるスキ目が形成されており、
該板状繊維体が上記被清掃体の表面に当接する位置では、該板状繊維体の該スキ目に沿う方向と該被清掃体の表面移動方向とが交差するように構成したことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1または2のクリーニング装置において、
上記帯状部材は、上記板状繊維体と上記被膜とこれらを接着層との少なくとも3層以上の多層構造からなることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項3のクリーニング装置において、
上記帯状部材の多層構造の各層が該クリーニング装置の設置環境の温度と同等以上の耐熱温度を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記板状繊維体が上記被清掃体の表面に当接する位置に対して該被清掃体の表面移動方向下流側に該被清掃体の表面に当接する除去ブレード部材を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記帯状の板状繊維体として、不織布を用いたことを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記被清掃体は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する樹脂軟化液を表面に担持し得る表面移動体であり、
上記被膜は該樹脂軟化液に対して耐溶剤性を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記帯状部材は、巻き取りあるいは無端移動によって上記被清掃体の表面との当接位置で該被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、
該樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に該泡状定着液を付与する泡状定着液付与手段とを有し、
該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、
上記定着液泡状化手段によって上記泡状定着液になり、上記定着液付与対象に付与されず、表面移動体に付着した状態の該泡状定着液をクリーニングする泡状定着液クリーニング手段を備え、
該泡状定着液クリーニング手段として、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項9の定着装置において、
上記泡状定着液付与手段は、表面移動する表面に供給された上記泡状定着液を、上記定着液付与対象と対向する塗布位置で該定着液付与対象の表面に塗布する塗布部材を有し、
上記クリーニング装置を、該塗布位置を通過した後の該塗布部材の表面上の該泡状定着液をクリーニングする塗布部材クリーニング手段に用いることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、
記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、
該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、
該定着手段として、請求項9または10に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−48218(P2011−48218A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197686(P2009−197686)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】