説明

クリープ損傷評価装置、クリープ損傷評価方法およびプログラム

【課題】構造物全体の応力・温度分布、または応力の変化を反映し、かつ分散する微小粒子の粗大化や結晶粒径を考慮して、構造物全体のクリープ損傷評価を行うクリープ損傷評価装置、クリープ損傷評価方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】温度および応力の解析を行う温度・応力解析手段22と、微小領域における平均結晶粒径を算出する結晶粒径分布算出手段24と、微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する分散粒子分布算出手段25と、分散粒子の平均表面間距離を算出する分散粒子粗大化算出手段27と、微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する微小領域パラメータ算出手段28と、微小領域のボイド面積率を算出する微小領域クリープ損傷算出手段30と、構造物全体のクリープ損傷分布を算出するクリープ損傷算出手段31とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラント、原子力発電プラントなどで使用する部材におけるクリープ損傷を評価するクリープ損傷評価装置、クリープ損傷評価方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント、原子力発電プラントなどにおける、高温の環境下で使用される構造物においては、長時間の使用によりクリープ損傷が進行する。近年、このようなプラントは長期運用されるものも多く、構造物の保守管理においてクリープ損傷を評価することが益々重要になってきている。また、高温機器においては、高効率化を図るため使用温度が高くなる傾向にあり、高温機器を設計する際に、クリープによる損傷を評価し、さらにはクリープ損傷を基準以下に抑えるようにする必要がある。
【0003】
従来におけるクリープ損傷評価する方法として、金属組織のレプリカを実機から採取し、硬さの低下量や金属組織パラメータ(例えば、ボイド面積率等)の変化量からクリープ損傷量を求める方法がある(例えば、特許文献1−2参照。)。また、超音波検査装置を用いて、構造物中のクリープ損傷の程度を測定する方法もある(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平7−128328号公報
【特許文献2】特開2000−258306号公報
【特許文献3】特開2003−14705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した硬さや金属組織パラメータを用いてクリープ損傷を評価する従来の方法においては、構造物表面の硬さや金属組織情報を採取するため、構造物内部におけるクリープ損傷を評価することがきなかった。また、従来の超音波検査装置によるクリープ損傷の評価方法においては、構造物内部の損傷情報を得ることはできるが、クリープボイドなどの微小な欠陥の検知が難しい。そのため、構造物内部の損傷がある程度進行した状態でないと損傷評価ができないという問題があった。
【0005】
また、従来のクリープ損傷評価方法においては、構造物の表面または内部のみならず、表面および内部にわたる構造物全体のクリープボイド発生に関わるクリープ損傷評価を精度よく行うことはできないという問題があった。また、これら従来の方法は、実機を構成する構造物からデータを直接採取してクリープ損傷評価を行うものであり、クリープ損傷評価を行う毎にプラントを停止しなければならないという問題もあった。
【0006】
一方、プラントを停止せずに、かつ構造物全体に亘ってクリープ損傷評価を行うためには、実機の使用条件(応力や温度等)を考慮してクリープ損傷を算出する方法が考えられる。しかしながら、この方法においては、金属組織の変化を考慮して計算しなければ、精度よくクリープ損傷評価を行うことができない。
【0007】
ここで、構造物を形成する金属材料には、材料を強化する目的で材料中に微小粒子(例えば、炭化物等)が分散されているものがある。また、この微小粒子は、高温で長時間使用しているうちに粗大化して高温強度が低下することが知られている。上記した計算によりクリープ損傷評価を行う場合には、このような分散粒子の粗大化現象を考慮しなければ、精度よくクリープ損傷を評価することができない。また、結晶粒径等の金属組織パラメータもクリープ損傷の進行を支配する因子であり、これを考慮することもクリープ評価の高精度化に寄与する。また、構造物には応力・温度の分布があり、クリープが引き起こされると時間の経過とともに応力値が変化することから、部品全体を評価する場合には、このような応力や温度の分布、応力の変化を反映した計算が必要となる。しかしながら、従来のクリープ損傷評価方法では、構造物全体の応力・温度分布、または応力の変化を反映し、かつ分散する微小粒子の粗大化や結晶粒径を考慮して、クリープ損傷評価を行うものがなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、構造物全体の応力・温度分布、または応力の変化を反映し、かつ分散する微小粒子の粗大化や結晶粒径を考慮して、構造物全体のクリープ損傷評価を精度よく行うことができるクリープ損傷評価装置、クリープ損傷評価方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のクリープ損傷評価装置は、構造物の選定情報を入力する選定情報入力手段と、温度および応力を解析するための運転条件データを格納する運転条件データベースと、前記選定情報入力手段によって入力された構造物の選定情報および前記運転条件データベースに格納された運転条件データに基づいて、前記構造物の温度および応力の解析を行う温度・応力解析手段と、少なくとも、前記構造物に使用している材料の結晶粒径および分散粒子の分布、分散粒子粗大化速度を含む構造物材料データを格納する構造物材料データベースと、前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記構造物の所定の微小領域における平均結晶粒径を算出する結晶粒径分布算出手段と、前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する分散粒子分布算出手段と、前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データ、温度・応力解析手段によって解析された温度および応力データ、入力された前記構造物における運転時間データ、前記分散粒子分布算出手段によって算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、前記微小領域における粗大化した分散粒子の平均表面間距離を算出する分散粒子粗大化算出手段と、前記温度および応力データ、前記結晶粒径分布算出手段によって算出された平均結晶粒径、前記分散粒子粗大化算出手段によって算出された平均表面間距離および前記運転時間データに基づいて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する微小領域パラメータ算出手段と、少なくとも、計測されたクリープボイド面積率およびクリープボイド径の計測データを格納する実機データベースと、前記実機データベースに格納された計測データ、前記微小領域パラメータ算出手段によって算出された前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、前記微小領域のボイド面積率を算出する微小領域クリープ損傷算出手段と、少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出手段で算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出するクリープ損傷算出手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
このクリープ損傷評価装置によれば、微小領域パラメータ算出手段によって、温度および応力データ、平均結晶粒径、平均表面間距離および運転時間データに基づいて、微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出し、微小領域クリープ損傷算出手段によって、微小領域パラメータ算出手段によって算出された微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、微小領域のボイド面積率を算出することができる。また、クリープ損傷算出手段によって、微小領域クリープ損傷算出手段で算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出することができる。すなわち、構造物全体の応力や温度分布または応力の変化を反映し、かつ分散粒子の粗大化や結晶粒径の影響を考慮して、構造物全体のクリープ損傷を評価することができる。
【0011】
本発明のクリープ損傷評価方法は、構造物の選定情報を入力する選定情報入力ステップと、前記選定情報入力ステップにおいて入力された構造物の選定情報、温度および応力を解析するための運転条件データに基づいて、前記構造物の温度および応力の解析を行う温度・応力解析ステップと、前記構造物に使用している材料の結晶粒径の分布データに基づいて、前記構造物の所定の微小領域における平均結晶粒径を算出する結晶粒径分布算出ステップと、前記構造物に使用している材料の分散粒子の分布データに基づいて、前記微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する分散粒子分布算出ステップと、分散粒子に係る分散粒子粗大化速度データ、温度・応力解析ステップにおいて解析された温度および応力データ、入力された前記構造物における運転時間データ、前記分散粒子分布算出ステップにおいて算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、前記微小領域における粗大化した分散粒子の平均表面間距離を算出する分散粒子粗大化算出ステップと、前記温度および応力データ、前記結晶粒径分布算出ステップにおいて算出された平均結晶粒径、前記分散粒子粗大化算出ステップにおいて算出された平均表面間距離および前記運転時間データに基づいて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する微小領域パラメータ算出ステップと、計測されたクリープボイド面積率およびクリープボイド径の計測データ、前記微小領域パラメータ算出ステップにおいて算出された前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、前記微小領域のボイド面積率を算出する微小領域クリープ損傷算出ステップと、少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出ステップにおいて算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出するクリープ損傷算出ステップとを具備することを特徴とする。
【0012】
このクリープ損傷評価方法によれば、微小領域パラメータ算出ステップにおいて、温度および応力データ、平均結晶粒径、平均表面間距離および運転時間データに基づいて、微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出し、微小領域クリープ損傷算出ステップにおいて、微小領域パラメータ算出ステップで算出された微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、微小領域のボイド面積率を算出することができる。また、クリープ損傷算出ステップにおいて、微小領域クリープ損傷算出ステップで算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出することができる。すなわち、構造物全体の応力や温度分布または応力の変化を反映し、かつ分散粒子の粗大化や結晶粒径の影響を考慮して、構造物全体のクリープ損傷を評価することができる。
【0013】
本発明のプログラムは、構造物のクリープ損傷評価する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記コンピュータを、構造物の選定情報を入力する選定情報入力手段と、温度および応力を解析するための運転条件データを格納する運転条件データベースと、前記選定情報入力手段によって入力された構造物の選定情報および前記運転条件データベースに格納された運転条件データに基づいて、前記構造物の温度および応力の解析を行う温度・応力解析手段と、少なくとも、前記構造物に使用している材料の結晶粒径および分散粒子の分布、分散粒子粗大化速度を含む構造物材料データを格納する構造物材料データベースと、前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記構造物の所定の微小領域における平均結晶粒径を算出する結晶粒径分布算出手段と、前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する分散粒子分布算出手段と、前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データ、温度・応力解析手段によって解析された温度および応力データ、入力された前記構造物における運転時間データ、前記分散粒子分布算出手段によって算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、前記微小領域における粗大化した分散粒子の平均表面間距離を算出する分散粒子粗大化算出手段と、前記温度および応力データ、前記結晶粒径分布算出手段によって算出された平均結晶粒径、前記分散粒子粗大化算出手段によって算出された平均表面間距離および前記運転時間データに基づいて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する微小領域パラメータ算出手段と、少なくとも、計測されたクリープボイド面積率およびクリープボイド径の計測データを格納する実機データベースと、前記実機データベースに格納された計測データ、前記微小領域パラメータ算出手段によって算出された前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、前記微小領域のボイド面積率を算出する微小領域クリープ損傷算出手段と、少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出手段で算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出するクリープ損傷算出手段として機能させることを特徴とする。
【0014】
このプログラムによれば、コンピュータを上記各手段として機能させることができ、微小領域パラメータ算出手段によって、温度および応力データ、平均結晶粒径、平均表面間距離および運転時間データに基づいて、微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出し、微小領域クリープ損傷算出手段によって、微小領域パラメータ算出手段によって算出された微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、微小領域のボイド面積率を算出することができる。また、クリープ損傷算出手段によって、微小領域クリープ損傷算出手段で算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出することができる。すなわち、構造物全体の応力や温度分布または応力の変化を反映し、かつ分散粒子の粗大化や結晶粒径の影響を考慮して、構造物全体のクリープ損傷を適確に評価するようコンピュータを機能させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクリープ損傷評価装置、クリープ損傷評価方法およびプログラムによれば、構造物全体の応力・温度分布、または応力の変化を反映し、かつ分散する微小粒子の粗大化や結晶粒径を考慮して、構造物全体のクリープ損傷評価を精度よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態のクリープ損傷評価装置10の構成図である。図2は、粒子間距離を説明するための図である。図3Aおよび図3Bは、分散粒子粗大化速度データの一例を示す図である。図4は、ボイド面積率増加率データの一例を示す図である。図5は、クリープ損傷評価装置10の動作を示したフローチャートである。図6は、温度・応力解析手段22における温度および応力の解析の動作を示すフローチャートである。なお、クリープ損傷評価装置10は、例えば火力発電プラント、原子力発電プラントなどに備えられる構造物のクリープ損傷を評価するものである。
【0018】
図1に示すように、クリープ損傷評価装置10は、選定情報入力手段20と、運転条件データベース21と、温度・応力解析手段22と、構造物材料データベース23と、結晶粒径分布算出手段24と、分散粒子分布算出手段25と、分散粒子粗大化算出手段27と、微小領域パラメータ算出手段28と、実機データベース29と、微小領域クリープ損傷算出手段30と、クリープ損傷算出手段31とから構成されている。
【0019】
選定情報入力手段20は、構造物の選定情報を入力する。入力される構造物の選定情報として、例えば、プラント名称、構造物部品名などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、選定情報入力手段20は、キーボード、マウス、外部入力インターフェースなどで構成される。ここで、構造物として、例えば、蒸気タービン弁、蒸気タービンケーシングなどが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0020】
運転条件データベース21は、温度および応力を解析するための運転条件データを記憶するものである。運転条件データとして、例えば、蒸気タービンを駆動させる蒸気の温度、圧力、流量、流速、構造物部品の形状などのデータが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、運転条件データベース21は、メモリ、ハードディスク装置などで構成される。
【0021】
温度・応力解析手段22は、選定情報入力手段20によって入力された構造物の選定情報および運転条件データベース21に格納された運転条件データに基づいて、構造物の温度解析を行い、温度分布を求め、求められた温度分布と蒸気圧力データから応力やひずみなどを算出する。ここで、温度・応力解析手段22における温度および応力の解析は、有限要素法により行われる。また、運転条件データである、蒸気の温度、圧力、流量、流速などのデータは、実機において計測することで得られたものであってもよいし、設計時に使用された設計値でもよい。この温度・応力解析手段22は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。
【0022】
構造物材料データベース23は、少なくとも、構造物に使用している材料の結晶粒径および分散粒子の分布、分散粒子粗大化速度を含む構造物材料データを記憶する。また、結晶粒径および分散粒子の分布として、例えば、実機から予め計測しておいた分布、または実機に使用されている材料と同等と見なせる材料から予め計測しておいた分布が用いられる。また、構造物材料データベース23は、メモリ、ハードディスク装置などで構成される。
【0023】
結晶粒径分布算出手段24は、構造物材料データベース23に記憶された結晶粒径の分布データに基づいて、平均結晶粒径を算出する。この結晶粒径分布算出手段24は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。
【0024】
分散粒子分布算出手段25は、構造物材料データベース23に記憶された分散粒子の分布データに基づいて、平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する。ここで、図2に示すように、分散粒子の分布データからは、粒子中心間距離Lおよび粒子径dが得られ、これらの入力データからそれぞれの平均値を算出する。なお、蒸気タービン材料においては、分散粒子は主に炭化物である。この分散粒子分布算出手段25は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。
【0025】
分散粒子粗大化算出手段27は、構造物材料データベース23に記憶された構造物を構成する実機材料の分散粒子粗大化速度データ、温度・応力解析手段22によって解析された温度および応力データ、入力された構造物における運転時間データ26、分散粒子分布算出手段25によって算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、粗大化した分散粒子の表面間距離を算出する。ここで、運転時間データ26とは、運転開始から評価する時点までの運転時間の積算値、あるいは、運転開始から評価する時点までの時間のうち、定格運転を行っていた時間の積算値のことである。この分散粒子粗大化算出手段27は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。
【0026】
図3Aおよび図3Bに示すように、分散粒子粗大化速度データは、温度、応力、時間に対する平均粒子中心間距離と平均粒子径の変化を示している。この分散粒子粗大化速度データにより、平均粒子中心間距離と平均粒子径の変化は、次の式(1)および式(2)で表すことができる。
ΔLave=f(σ、T、t) …式(1)
Δdave=g(σ、T、t) …式(2)
【0027】
ここで、ΔLaveは平均粒子間距離の変化、Δdaveは平均粒子径の変化、σは応力、Tは温度、tは運転時間データである。また、fおよびgは関数を意味する。
【0028】
また、分散粒子分布算出手段25によって算出された粒子中心間距離の平均値および粒子径の平均値をそれぞれLave、daveとし、温度・応力解析手段22によって算出された温度および応力データに基づく微小領域の温度および応力データをそれぞれT、σとすると、次の式(3)により分散粒子の平均表面間距離が算出される。ここで、微小領域とは、クリープ損傷評価の対象となる構造物表面における任意の節点または積分点を意味する。
λave=C・(Lave+ΔLave)−(dave+Δdave) …式(3)
【0029】
ここで、λaveは分散粒子の平均表面間距離であり、Cは定数である。
【0030】
微小領域パラメータ算出手段28は、温度および応力データ、結晶粒径分布算出手段24によって算出された平均結晶粒径データ、分散粒子粗大化算出手段27によって算出された平均表面間距離、および運転時間データに基づいて、微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度をそれぞれ次の式(4)〜式(6)を用いて算出する。
dε/dt=κ(b/d(σ/E)exp(−Q/RT)(D/b) …式(4)
σ=σ−σ(1−2δ/d …式(5)
σ=2Gb/λave …式(6)
【0031】
ここで、εは微小領域のクリープひずみ、tは運転時間データ、bはバーガースベクトルの大きさ、dは平均結晶粒径、σは微小領域にクリープ変形を引き起こすために有効に働く応力、σは微小領域の応力、σは分散粒子による変形抵抗応力、Gは剛性率、λaveは分散粒子の平均表面間距離、Eは弾性率、Qは活性化エネルギ、Rは気体定数、Tは微小領域の温度、Dは拡散係数、κ、δ、nは定数である。
【0032】
また、クリープボイド成長速度は、次の式(7)により計算する。
dr/dt=a(s/r)(dε/dt) …式(7)
【0033】
ここで、rはクリープボイドの半径、tは運転時間データ、dは平均結晶粒径、εは微小領域のクリープひずみ、aおよびsは定数である。
【0034】
また、この微小領域パラメータ算出手段28は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。
【0035】
実機データベース29は、少なくとも、計測されたクリープボイド面積率、クリープボイド径の計測データ、およびクリープボイド面積率増加率データを記憶する。なお、計測されたクリープボイド面積率、クリープボイド径の計測データは、後述する微小領域クリープ損傷算出手段30によってボイド面積密度を算出する際に、積分定数を決定するために用いられるものであり、一度だけ計測すれば良く、過去に計測したデータがあれば、その値を用いてもよい。また、実機データベース29は、メモリ、ハードディスク装置などで構成される。
【0036】
微小領域クリープ損傷算出手段30は、実機データベース29に記憶された実機材料のボイド面積率の増加率データ、クリープボイド面積率データ、クリープボイド径、微小領域パラメータ算出手段28によって算出された微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、微小領域のボイド面積率を算出する。この微小領域クリープ損傷算出手段30は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。
【0037】
図4に示すように、ボイド面積率の増加率データは、クリープひずみ速度に対するボイド面積率の増加速度を表すデータである。このボイド面積率増加率データにより、ボイド面積率増加率は、次の式(8)で示される。
d(logS)/dt=h(dε/dt) …式(8)
【0038】
ここで、Sはボイド面積率、tは運転時間データ、dε/dtは微小領域パラメータ算出手段28によって算出される微小領域のクリープひずみ速度であり、hは関数を意味する。
【0039】
この式(8)を積分し、実機データベース29に記憶されているクリープボイド面積率データを用いることにより積分定数を決定し、微小領域パラメータ算出手段28によって算出された微小領域のクリープひずみ速度および運転時間データtを積分した式に代入することにより、運転時間データtにおける微小領域のボイド面積率が算出される。
【0040】
また、微小領域パラメータ算出手段28において算出されたクリープボイド成長速度を用いる場合、クリープボイド成長速度を算出する式(7)を積分し、実機データベース29に記憶されているクリープボイド径のデータを用いることにより積分定数を決定し、運転時間データtを代入することにより、運転時間データtでのクリープボイド径が決定され、微小領域のボイド面積率が算出される。
【0041】
ここで、予めデータベース化されている実機材料のクリープ損傷データや、微小領域クリープ損傷算出手段30によって算出された微小領域のボイド面積率データからクリープ損傷量を算出して得られたクリープ損傷量データを、応力値を読み出した微小領域である節点または積分点に割り当てる。なお、微小領域クリープ損傷割当手段を設けて、この割り当てを微小領域クリープ損傷割当手段で行ってもよい。なお、この微小領域クリープ損傷割当手段は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。この割り当て処理が完了すると、他の微小領域である他の節点または積分点が選定され、上記した各手段における処理と同様の処理が行われる。
【0042】
なお、構造物のすべての微小領域である全節点または全積分点について、各手段において上記した処理を行い、微小領域クリープ損傷算出手段30において微小領域のボイド面積率を算出する。
【0043】
クリープ損傷算出手段31は、得られたボイド面積率であるクリープ損傷分布データを構造物モデル全体に亘って算出し記憶する。また、クリープ損傷算出手段31は、構造物モデルに対応して示されたクリープ損傷分布データを画面上に表示する機能を備えてもよい。
【0044】
次に、クリープ損傷評価装置10の動作について説明する。
【0045】
図5に示すように、まず、選定情報入力手段20によって入力された構造物の選定情報に基づいて、クリープ損傷の評価を行う構造物を特定する(ステップS100)。
【0046】
続いて、温度・応力解析手段22は、ステップS100で特定された構造物の情報および運転条件データベース21に格納された運転条件データに基づいて、構造物全体における温度分布、応力分布、ひずみ分布などを算出する(ステップS101)。
【0047】
ここで、図6に示すように、温度および応力の解析は、まず、運転条件データベース21に格納された、特定された構造物における温度、圧力、流量、流速などの運転条件データを読み込む(ステップS200)。続いて、読み込んだ運転条件データに基づいて、温度解析を実行する(ステップS201)。続いて、読み込んだ運転条件データおよびステップS201で算出された温度分布に基づいて、応力解析を実行する(ステップS202)。
【0048】
続いて、分散粒子粗大化算出手段27は、ステップS101において解析された構造物全体に係る温度分布および応力分布に基づいて、所定の微小領域における温度データおよび応力データを読み出す(ステップS102)。
【0049】
続いて、結晶粒径分布算出手段24は、構造物材料データベース23に記憶された結晶粒径の分布データに基づいて、ステップS102において温度データおよび応力データが読み出された微小領域における平均結晶粒径を算出する(ステップS103)。
【0050】
続いて、分散粒子分布算出手段25は、構造物材料データベース23に記憶された分散粒子の分布データに基づいて、上記した微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する(ステップS104)。
【0051】
続いて、分散粒子粗大化算出手段27は、運転時間データ26を入力し、ステップS102において読み出した温度データおよび応力データ、構造物材料データベース23に記憶された構造物を構成する実機材料の分散粒子粗大化速度データ、入力した運転時間データ26、ステップS104において算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、上記した微小領域における粗大化した分散粒子の表面間距離を算出する(ステップS105)。
【0052】
続いて、微小領域パラメータ算出手段28は、温度および応力データ、ステップS103において算出された平均結晶粒径データ、ステップS105において算出された平均表面間距離、および運転時間データに基づいて、微小領域におけるクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する(ステップS106)。
【0053】
続いて、微小領域クリープ損傷算出手段30は、実機データベース29に記憶された実機材料のボイド面積率の増加率データ、クリープボイド面積率データ、クリープボイド径を入力し、それらの実機データおよびステップS106において算出された微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、微小領域におけるボイド面積率を算出する(ステップS107)。
【0054】
ここで、予めデータベース化されている実機材料のクリープ損傷データや、ステップS107において算出された微小領域のボイド面積率データからクリープ損傷量を算出して得られたクリープ損傷量データを、上記した微小領域の情報として割り当てる(ステップS108)。この割り当ては、微小領域クリープ損傷算出手段30によって実行されてもよいし、微小領域クリープ損傷割当手段などを設けてこの微小領域クリープ損傷割当手段に実行させてもよい。
【0055】
ステップS108の処理を実行した後、他の微小領域である他の節点または積分点を選定し、上記したステップS102からの処理を実行する。
【0056】
続いて、構造物におけるすべての微小領域について、上記したステップS102〜ステップS108までの処理が実行された後、クリープ損傷算出手段31は、得られたボイド面積率であるクリープ損傷分布データを構造物モデル全体に亘って算出し記憶する(ステップS109)。なお、クリープ損傷分布データは、構造物全体に関するもの以外にも、例えば、特定の領域について算出し記憶されてもよい。また、クリープ損傷算出手段31は、算出したクリープ損傷分布データを、例えば画面などに表示させてもよい。
【0057】
上記した構造物のクリープ損傷を評価するための動作は、例えばコンピュータによって実行され、この処理を実行させるプログラムは、コンピュータを、選定情報入力手段20と、運転条件データベース21と、温度・応力解析手段22と、構造物材料データベース23と、結晶粒径分布算出手段24と、分散粒子分布算出手段25と、分散粒子粗大化算出手段27と、微小領域パラメータ算出手段28と、実機データベース29と、微小領域クリープ損傷算出手段30と、クリープ損傷算出手段31として機能させる。
【0058】
上記したように本発明に係る第1の実施の形態のクリープ損傷評価装置10およびクリープ損傷評価方法によれば、構造物全体の応力や温度分布または応力の変化を反映し、かつ分散粒子の粗大化や結晶粒径の影響を考慮して、構造物全体のクリープ損傷を評価することができる。これによって、実機構造物の表面、内部にかかわらず構造物全体のクリープ損傷の評価が可能となる。また、本クリープ損傷評価方法では、実機から採取するデータ計測は一度でよいことから、クリープ損傷の評価を行う毎にプラントを停止しなければならないという課題も解決することができる。
【0059】
また、第1の実施の形態のクリープ損傷評価方法によって算出されたクリープ損傷分布を得ることで、構造物の表面形状に対応する、例えば最大クリープ損傷部位などを特定することができる。また、構造物の表面形状を変化させ、最大クリープ損傷部位のクリープ損傷量などを評価することも可能となる。
【0060】
(第2の実施の形態)
図7は、本発明に係る第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置60の構成図である。図8は、クリープ損傷評価装置60の動作を示したフローチャートである。なお、第1の実施の形態のクリープ損傷評価装置10と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0061】
図8に示すように、クリープ損傷評価装置60は、選定情報入力手段20と、運転条件データベース21と、温度・応力解析手段22と、構造物材料データベース23と、結晶粒径分布算出手段24と、分散粒子分布算出手段25と、分散粒子粗大化算出手段27と、微小領域パラメータ算出手段28と、クリープひずみデータベース61と、クリープひずみ算出手段62と、実機データベース29と、微小領域クリープ損傷算出手段30と、クリープ損傷算出手段31とから構成されている。このクリープ損傷評価装置60の構成は、第1の実施の形態のクリープ損傷評価装置10に、クリープひずみデータベース61およびクリープひずみ算出手段62を付加した構成である。
【0062】
クリープひずみデータベース61は、予めクリープ試験で得られている、運転時間データ、温度、応力、平均結晶粒径、平均クリープひずみ、分散粒子の平均表面間距離、クリープひずみなどのデータが記憶されている。これらのデータは、微小領域パラメータ算出手段28によってクリープひずみを算出する際に、積分定数を決定するために用いられる。また、クリープひずみデータベース61は、メモリ、ハードディスク装置などで構成される。
【0063】
クリープひずみ算出手段62は、構造物のすべての微小領域である全節点または全積分点について、得られたクリープひずみデータを構造物モデル全体に亘って算出し記憶する。このクリープひずみ算出手段62は、メモリやハードディスクなどの記憶装置に記憶され、CPUなどの演算手段により実行されるプログラムとして機能する。
【0064】
また、ここでは、微小領域パラメータ算出手段28において、第1の実施の形態のクリープ損傷評価方法において説明した、クリープひずみ速度を算出する式(4)を積分し、クリープひずみデータベース61に記憶されたデータを用いて積分定数を決定する。また、この積分された式に、運転時間データtを代入することにより、運転時間データtでの微小領域のクリープひずみを算出する。
【0065】
次に、クリープ損傷評価装置60の動作について説明する。
【0066】
ステップS100〜ステップS105の処理後、微小領域パラメータ算出手段28は、温度および応力データ、ステップS103において算出された平均結晶粒径データ、ステップS105において算出された平均表面間距離、および運転時間データに基づいて、微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する(ステップS106)。さらに、クリープひずみデータベース61に記憶されたデータを用いて運転時間データtでの微小領域のクリープひずみを算出する(ステップS106)。
【0067】
ここで、算出された微小領域におけるクリープひずみは、その微小領域の情報として割り当てられる。この割り当ては、クリープひずみ手段62によって実行されてもよいし、微小領域クリープひずみ割当手段などを設けてこの微小領域クリープひずみ割当手段に実行させてもよい。
【0068】
ステップS108の処理を実行した後、他の微小領域である他の節点または積分点を選定し、上記したステップS102〜ステップS106の処理を実行し、構造物における全体の微小領域についてクリープひずみを算出する。
【0069】
続いて、構造物における全体の微小領域について、上記したステップS102〜ステップS106までの処理が実行された後、クリープひずみ手段62は、得られたクリープひずみ分布データを構造物モデル全体に亘って算出し記憶する(ステップS200)。
【0070】
続いて、クリープひずみ手段62は、微小領域のクリープひずみを応力解析に反映するために、均質化処理を実行する(ステップS201)。この均質化処理として、例えば、均質化法(「均質化入門」:寺田賢二郎・菊地昇著、日本計算工学会編、丸善)による処理が実行される。ここで、均質化処理とは、微小体積要素を設定して、微小領域内に発生した応力やひずみ状態、あるいは、微小領域内に非一様に分布する応力やひずみ状態を考慮し計算に反映することで、これらをミクロ構造における体積平均量に置き換えて全体構造物の挙動を計算する処理を行うことである。なお、この均質化処理は、温度・応力解析手段22におけるステップS102の処理で実行されてもよい。
【0071】
続いて、ステップS201で均質化処理された各微小領域におけるクリープひずみデータをステップS101における対応する微小領域の応力解析結果のひずみ値に加算し、再びステップS101において応力解析を実行し、ステップS102からの処理を実行する。
【0072】
なお、ステップS101〜ステップS200の処理を各微小領域について繰返し実行し、最大のひずみが認められる微小領域について、処理を繰り返す毎に前回の計算サイクルで得られたひずみデータとの差を求め、その差が基準値を下回った場合にのみ、ステップS107〜ステップS109の処理を実行するようにしてもよい。これにより、クリープひずみによる応力緩和が高精度に再現でき、より実機の状態を反映した応力値を用いたクリープ損傷評価が可能となる。
【0073】
上記した構造物のクリープ損傷を評価するための動作は、例えばコンピュータによって実行され、この処理を実行させるプログラムは、コンピュータを、選定情報入力手段20と、運転条件データベース21と、温度・応力解析手段22と、構造物材料データベース23と、結晶粒径分布算出手段24と、分散粒子分布算出手段25と、分散粒子粗大化算出手段27と、微小領域パラメータ算出手段28と、クリープひずみデータベース61と、クリープひずみ算出手段62と、実機データベース29と、微小領域クリープ損傷算出手段30と、クリープ損傷算出手段31として機能させる。
【0074】
上記したように、第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置60およびクリープ損傷評価方法によれば、均質化処理された各微小領域におけるクリープひずみデータを対応する微小領域の応力解析結果のひずみ値に加算し、再び応力解析を実行することで、クリープひずみを反映した応力分布が得られ、より実機の状態を反映した応力値を得ることができる。また、ここで得られた応力値を用いて、温度・応力解析手段22における温度および応力の解析を行うことで、より実機の状態を反映したクリープ損傷評価が可能となる。
【0075】
また、第2の実施の形態のクリープ損傷評価方法によって算出されたクリープ損傷分布を得ることで、構造物の表面形状に対応する、例えば最大クリープ損傷部位などを特定することができる。また、構造物の表面形状を変化させ、最大クリープ損傷部位のクリープ損傷量などを評価することも可能となる。
【0076】
(第3の実施の形態)
図9は、本発明に係る第3の実施の形態のクリープ損傷評価装置70の構成図である。図10は、クリープ損傷評価装置70の動作を示したフローチャートである。なお、第1および第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置10、60と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0077】
図9に示すように、クリープ損傷評価装置70は、選定情報入力手段20と、運転条件データベース21と、温度・応力解析手段22と、構造物材料データベース23と、結晶粒径分布算出手段24と、分散粒子分布算出手段25と、分散粒子粗大化算出手段27と、微小領域パラメータ算出手段28と、クリープひずみデータベース61と、クリープひずみ算出手段62と、実機データベース29と、微小領域クリープ損傷算出手段30と、微少時間クリープ損傷算出手段71と、クリープ損傷算出手段31とから構成されている。このクリープ損傷評価装置70の構成は、第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置60に、微少時間クリープ損傷算出手段71を付加した構成である。
【0078】
ここで、運転時間データ26には、前述した運転開始から評価する時点までの運転時間の積算値のデータ、あるいは、運転開始から評価する時点までの時間のうち、定格運転を行っていた時間の積算値のデータの他に、この運転時間を予め決められた数に分割した微小時間Δtのデータが含まれる。
【0079】
微少時間クリープ損傷算出手段71は、構造物のすべての微小領域である全節点または全積分点における、微小時間Δtに対して得られたボイド面積率であるクリープ損傷分布データを構造物モデル全体に亘って算出し記憶する。
【0080】
次に、クリープ損傷評価装置70の動作について説明する。
【0081】
ここで、運転時間データ26としては、微小時間Δtのデータが入力される。また、分散粒子粗大化算出手段27によるステップS105の処理における式(1)〜式(3)、微小領域パラメータ算出手段28によるステップS106の処理における式(4)〜式(7)および微小領域クリープ損傷算出手段30によるステップS107の処理における式(8)の運転時間データには、微小時間Δtが用いられる。
【0082】
ステップS101〜ステップS107の処理を実行することで算出された、微小時間Δtにおける微小領域のボイド面積率データからクリープ損傷量を算出して得られたクリープ損傷量データを、上記した微小領域の情報として割り当てる(ステップS108)。この割り当ては、微小領域クリープ損傷算出手段30によって実行されてもよいし、微小領域クリープ損傷割当手段などを設けてこの微小領域クリープ損傷割当手段に実行させてもよい。
【0083】
ステップS108の処理を実行した後、他の微小領域である他の節点または積分点を選定し、上記したステップS102〜ステップS108(ステップS200およびステップS201を含む)の処理を実行する。構造物における全体の微小領域について、上記したステップS102〜ステップS108(ステップS200およびステップS201を含む)までの処理が実行された後、微少時間クリープ損傷算出手段71は、微小時間Δtにおいて得られたボイド面積率であるクリープ損傷分布データを構造物モデル全体に亘って算出し記憶する(ステップS202)。
【0084】
続いて、運転時間データに微小時間Δtを加算し、すなわち、運転時間データを2Δtとして、上記した処理と同様に、ステップS102〜ステップS202(ステップS109を除く)の処理を構造物におけるすべての微小領域について実行する。このように、運転時間データを微小時間Δtずつ加算(運転時間をΔtずつ進め)して、ステップS102〜ステップS202(ステップS109を除く)の処理を構造物におけるすべての微小領域について実行し、最終的に運転時間データが、分割する前の運転時間データtになるまで上記した処理を繰り返す。
【0085】
続いて、構造物におけるすべての微小領域について、運転時間データがtになるまで上記したステップS102〜ステップS202(ステップS109を除く)までの処理が実行された後、クリープ損傷算出手段31は、得られたボイド面積率であるクリープ損傷分布データを構造物モデル全体に亘って算出し記憶する(ステップS109)。なお、クリープ損傷分布データは、構造物全体に関するもの以外にも、例えば、特定の領域について算出し記憶されてもよい。また、クリープ損傷算出手段31は、算出したクリープ損傷分布データを、例えば画面などに表示させてもよい。
【0086】
上記した構造物のクリープ損傷を評価するための動作は、例えばコンピュータによって実行され、この処理を実行させるプログラムは、コンピュータを、選定情報入力手段20と、運転条件データベース21と、温度・応力解析手段22と、構造物材料データベース23と、結晶粒径分布算出手段24と、分散粒子分布算出手段25と、分散粒子粗大化算出手段27と、微小領域パラメータ算出手段28と、クリープひずみデータベース61と、クリープひずみ算出手段62と、実機データベース29と、微小領域クリープ損傷算出手段30と、微少時間クリープ損傷算出手段71と、クリープ損傷算出手段31として機能させる。
【0087】
上記したように第3の実施の形態のクリープ損傷評価装置70およびクリープ損傷評価方法によれば、運転時間データを分割して微小時間Δtとし、構造物におけるすべての微小領域について、運転時間データがtになるまでステップS102〜ステップS202(ステップS109を除く)までの処理を繰り返し実行することで、微小時間経過ごとにクリープひずみを反映した応力再分布を再現して、クリープ損傷評価を行うことができる。また、第1および第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置10、60における効果に加え、時間経過に沿った現象の進行と、より実機の状態に近い応力値を用いることができ、より実機の状態を反映したクリープ損傷評価が可能となる。
【0088】
なお、第3の実施の形態のクリープ損傷評価装置70は、第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置60に、クリープひずみデータベース61およびクリープひずみ算出手段62を設けた一例を示したが、第1の実施の形態のクリープ損傷評価装置10に設けてもよい。この場合にも同様の作用効果が得られる。
【0089】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態では、微小領域パラメータ算出手段28において、微小領域の結晶粒界をモデル化して粒界近傍の応力分布データを用いることでクリープ損傷を評価する方法について、図11および図12を参照して説明する。
【0090】
図11は、粒界中心を説明するための図であり、図12は、ボロノイ図法により結晶粒界をモデル化した図である。
【0091】
まず、結晶粒径分布算出手段24において、平均結晶粒径を算出するために用いた結晶粒の写真上で、図11に示すように、X軸、Y軸を設定する。ここで、結晶粒300のX軸寸法305とY軸寸法310の各々の中心線が交わる点を粒界中心320と呼ぶ。
【0092】
続いて、写真上のすべての粒界中心320のX座標およびY座標を読み取り、その座標点に基づいてボロノイ図法により結晶粒界モデルを作成する。ここで、ボロノイ図とは、図12に示すように、任意の3点から等距離にある点を結線することで形成される図である。
【0093】
このようにしてモデル化した結晶粒界モデルを有限要素メッシュに要素分割し、結晶粒内と結晶粒界の要素にそれぞれ個別の材料物性値を与えて、各微小領域に対応する温度および応力データを読み出し、この読み出された温度および応力を負荷した条件での解析を行う。その結果、結晶粒界モデルの粒界、粒内の各部位おける局所的な応力が算出される。なお、結晶粒界モデルを有限要素メッシュに要素分割して局所的な応力計算をする代わりに、粒界、粒内の要素を一定の大きさの粒子の集合でモデル化し、粒子法により局所的な応力を算出してもよい。
【0094】
この応力値を、微小領域パラメータ算出手段28において用いる微小領域の応力値として用いて、微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する。
【0095】
このように、微小領域の結晶粒界をモデル化して粒界近傍の応力分布データを用いてクリープ損傷を評価することで、結晶粒界モデルの粒界、粒内の各部位のミクロな領域のクリープ損傷から蒸気タービン部品の構造全体に亘るクリープ損傷分布を算出することができる。
【0096】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0097】
例えば、クリープ損傷評価部350と表面形状最適化部360とを組み合わせたクリープ損傷評価装置370を構成することもできる。図13は、このクリープ損傷評価装置370の構成を模式的に示す図である。
【0098】
図13に示すように、このクリープ損傷評価装置370では、構造物の体積(重量)を制約条件とし、クリープ損傷量を基準以下に抑えるような構造物の形状を収得することができる。なお、このクリープ損傷評価装置370において、表面形状を変化させる最適化手法として力法を用いている。
【0099】
このクリープ損傷評価装置370によれば、クリープ損傷評価部350と表面形状最適化部360とを組み合わせることで、構造物の重量の増加を抑制しながら、クリープ損傷を抑えることができる構造物を設計することができる。これによって、低コストで信頼性の高い製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のクリープ損傷評価装置の構成図。
【図2】粒子間距離を説明するための図。
【図3A】分散粒子粗大化速度データの一例を示す図。
【図3B】分散粒子粗大化速度データの一例を示す図。
【図4】ボイド面積率増加率データの一例を示す図。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態のクリープ損傷評価装置の動作を示したフローチャート。
【図6】温度・応力解析手段における温度および応力の解析の動作を示すフローチャート。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置の構成図。
【図8】本発明に係る第2の実施の形態のクリープ損傷評価装置の動作を示したフローチャート。
【図9】本発明に係る第3の実施の形態のクリープ損傷評価装置の構成図。
【図10】本発明に係る第3の実施の形態のクリープ損傷評価装置の動作を示したフローチャート。
【図11】粒界中心を説明するための図。
【図12】ボロノイ図法により結晶粒界をモデル化した図。
【図13】クリープ損傷評価部と表面形状最適化部とを組み合わせたクリープ損傷評価装置の構成を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0101】
10…クリープ損傷評価装置、20…選定情報入力手段、21…運転条件データベース、22…温度・応力解析手段、23…構造物材料データベース、24…結晶粒径分布算出手段、25…分散粒子分布算出手段、26…運転時間データ、27…分散粒子粗大化算出手段、28…微小領域パラメータ算出手段、29…実機データベース、30…微小領域クリープ損傷算出手段、31…クリープ損傷算出手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の選定情報を入力する選定情報入力手段と、
温度および応力を解析するための運転条件データを格納する運転条件データベースと、
前記選定情報入力手段によって入力された構造物の選定情報および前記運転条件データベースに格納された運転条件データに基づいて、前記構造物の温度および応力の解析を行う温度・応力解析手段と、
少なくとも、前記構造物に使用している材料の結晶粒径および分散粒子の分布、分散粒子粗大化速度を含む構造物材料データを格納する構造物材料データベースと、
前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記構造物の所定の微小領域における平均結晶粒径を算出する結晶粒径分布算出手段と、
前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する分散粒子分布算出手段と、
前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データ、温度・応力解析手段によって解析された温度および応力データ、入力された前記構造物における運転時間データ、前記分散粒子分布算出手段によって算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、前記微小領域における粗大化した分散粒子の平均表面間距離を算出する分散粒子粗大化算出手段と、
前記温度および応力データ、前記結晶粒径分布算出手段によって算出された平均結晶粒径、前記分散粒子粗大化算出手段によって算出された平均表面間距離および前記運転時間データに基づいて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する微小領域パラメータ算出手段と、
少なくとも、計測されたクリープボイド面積率およびクリープボイド径の計測データを格納する実機データベースと、
前記実機データベースに格納された計測データ、前記微小領域パラメータ算出手段によって算出された前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、前記微小領域のボイド面積率を算出する微小領域クリープ損傷算出手段と、
少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出手段で算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出するクリープ損傷算出手段と
を具備することを特徴とするクリープ損傷評価装置。
【請求項2】
前記微小領域パラメータ算出手段によって各微小領域のクリープひずみ速度から算出された各微小領域の平均的なクリープひずみに基づいて、構造物全体のクリープひずみを算出し記憶するクリープひずみ算出手段をさらに具備し、
前記クリープひずみ算出手段によって算出された前記各微小領域の平均的なクリープひずみを前記温度・応力解析手段で算出された各微小領域のクリープひずみに加算し、再度前記温度・応力解析手段における温度および応力の解析を行い、前記クリープ損傷算出手段によって構造物全体のクリープ損傷分布を算出することを特徴とする請求項1記載のクリープ損傷評価装置。
【請求項3】
前記クリープひずみ算出手段によって算出された平均的なクリープひずみに均質化処理を施して、前記均質化処理が施されたクリープひずみを前記温度・応力解析手段で算出された各微小領域のクリープひずみに加算することを特徴とすることを特徴とする請求項2記載のクリープ損傷評価装置。
【請求項4】
前記運転時間データが、運転時間を予め決められた数に分割した微小時間に設定され、
前記微小時間における、少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出手段で算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出する微小時間クリープ損傷算出手段をさらに具備し、
前記微小時間クリープ損傷算出手段によって算出された構造物全体のクリープ損傷分布に基づいて、前記運転時間データにさらに前記微小時間を加算して、前記運転時間となるまでクリープ損傷分布を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のクリープ損傷評価装置。
【請求項5】
前記微小領域パラメータ算出手段において用いられる応力データが、前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、結晶粒界モデルをモデル化して算出された応力データであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のクリープ損傷評価装置。
【請求項6】
前記微小領域パラメータ算出手段において、前記微小領域を要素に分割したモデルまたは前記微小領域を粒子の集合としたモデルを用いて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のクリープ損傷評価装置。
【請求項7】
前記応力データとして、クリープ変形を引き起こすために有効に働く応力値が用いられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のクリープ損傷評価装置。
【請求項8】
構造物の選定情報を入力する選定情報入力ステップと、
前記選定情報入力ステップにおいて入力された構造物の選定情報、温度および応力を解析するための運転条件データに基づいて、前記構造物の温度および応力の解析を行う温度・応力解析ステップと、
前記構造物に使用している材料の結晶粒径の分布データに基づいて、前記構造物の所定の微小領域における平均結晶粒径を算出する結晶粒径分布算出ステップと、
前記構造物に使用している材料の分散粒子の分布データに基づいて、前記微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する分散粒子分布算出ステップと、
分散粒子に係る分散粒子粗大化速度データ、温度・応力解析ステップにおいて解析された温度および応力データ、入力された前記構造物における運転時間データ、前記分散粒子分布算出ステップにおいて算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、前記微小領域における粗大化した分散粒子の平均表面間距離を算出する分散粒子粗大化算出ステップと、
前記温度および応力データ、前記結晶粒径分布算出ステップにおいて算出された平均結晶粒径、前記分散粒子粗大化算出ステップにおいて算出された平均表面間距離および前記運転時間データに基づいて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する微小領域パラメータ算出ステップと、
計測されたクリープボイド面積率およびクリープボイド径の計測データ、前記微小領域パラメータ算出ステップにおいて算出された前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、前記微小領域のボイド面積率を算出する微小領域クリープ損傷算出ステップと、
少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出ステップにおいて算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出するクリープ損傷算出ステップと
を具備することを特徴とするクリープ損傷評価方法。
【請求項9】
前記微小領域パラメータ算出ステップにおいて各微小領域のクリープひずみ速度から算出された各微小領域の平均的なクリープひずみに基づいて、構造物全体のクリープひずみを算出するクリープひずみ算出ステップをさらに具備し、
前記クリープひずみ算出ステップにおいて算出された前記各微小領域の平均的なクリープひずみを前記温度・応力解析ステップにおいて算出された各微小領域のクリープひずみに加算し、再度前記温度・応力解析ステップにおける温度および応力の解析を行い、前記クリープ損傷算出ステップにおいて構造物全体のクリープ損傷分布を算出することを特徴とする請求項8記載のクリープ損傷評価方法。
【請求項10】
前記クリープひずみ算出ステップにおいて算出された平均的なクリープひずみに均質化処理を施して、前記均質化処理が施されたクリープひずみを前記温度・応力解析ステップにおいて算出された各微小領域のクリープひずみに加算することを特徴とすることを特徴とする請求項9記載のクリープ損傷評価方法。
【請求項11】
前記運転時間データが、運転時間を予め決められた数に分割した微小時間に設定され、
前記微小時間における、少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出ステップにおいて算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出して記憶する微小時間クリープ損傷算出ステップをさらに具備し、
前記微小時間クリープ損傷算出ステップにおいて算出された構造物全体のクリープ損傷分布に基づいて、前記運転時間データにさらに前記微小時間を加算して、前記運転時間となるまでクリープ損傷分布を算出することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項記載のクリープ損傷評価方法。
【請求項12】
前記微小領域パラメータ算出ステップにおいて用いられる応力データが、前記結晶粒径の分布データに基づいて、結晶粒界モデルをモデル化して算出された応力データであることを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項記載のクリープ損傷評価方法。
【請求項13】
前記微小領域パラメータ算出ステップにおいて、前記微小領域を要素に分割したモデルまたは前記微小領域を粒子の集合としたモデルを用いて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出することを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項記載のクリープ損傷評価方法。
【請求項14】
前記応力データとして、クリープ変形を引き起こすために有効に働く応力値が用いられることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項記載のクリープ損傷評価方法。
【請求項15】
構造物のクリープ損傷評価する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
構造物の選定情報を入力する選定情報入力手段と、
温度および応力を解析するための運転条件データを格納する運転条件データベースと、
前記選定情報入力手段によって入力された構造物の選定情報および前記運転条件データベースに格納された運転条件データに基づいて、前記構造物の温度および応力の解析を行う温度・応力解析手段と、
少なくとも、前記構造物に使用している材料の結晶粒径および分散粒子の分布、分散粒子粗大化速度を含む構造物材料データを格納する構造物材料データベースと、
前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記構造物の所定の微小領域における平均結晶粒径を算出する結晶粒径分布算出手段と、
前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データに基づいて、前記微小領域における平均粒子中心間距離および平均粒子径を算出する分散粒子分布算出手段と、
前記構造物材料データベースに格納された構造物材料データ、温度・応力解析手段によって解析された温度および応力データ、入力された前記構造物における運転時間データ、前記分散粒子分布算出手段によって算出された平均粒子中心間距離および平均粒子径に基づいて、前記微小領域における粗大化した分散粒子の平均表面間距離を算出する分散粒子粗大化算出手段と、
前記温度および応力データ、前記結晶粒径分布算出手段によって算出された平均結晶粒径、前記分散粒子粗大化算出手段によって算出された平均表面間距離および前記運転時間データに基づいて、前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度を算出する微小領域パラメータ算出手段と、
少なくとも、計測されたクリープボイド面積率およびクリープボイド径の計測データを格納する実機データベースと、
前記実機データベースに格納された計測データ、前記微小領域パラメータ算出手段によって算出された前記微小領域のクリープひずみ速度またはクリープボイド成長速度に基づいて、前記微小領域のボイド面積率を算出する微小領域クリープ損傷算出手段と、
少なくとも、前記微小領域クリープ損傷算出手段で算出された各微小領域のボイド面積率に基づいて、構造物全体のクリープ損傷分布を算出するクリープ損傷算出手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−64570(P2008−64570A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241950(P2006−241950)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】