説明

クリームチーズ類

【課題】口どけの良い食感と良好な割れ性を有し、かつ保存中の離水が少ない、新規なクリームチーズ類を提供する。
【解決手段】4.8ml/g以上の保水性を有する食物繊維を含有し、pHを5.3以下とし、かつ脂肪球径1.8μm以下に設定することにより、保存中の離水を抑制しながら、口どけの良い食感と良好な割れ性を付与する。なお、食物繊維の含有量を製品中1%以上とし、さらにゼラチンを製品中0.7%以下含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクリームチーズ類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、国内のナチュラルチーズおよびプロセスチーズの生産量および消費量は、直接消費用、原料用ともに増加傾向にあり、中でも、非熟成チーズであるフレッシュチーズの消費は拡大傾向にある。フレッシュチーズは脂肪含量および水分含量が高く、軟らかな物性であるため、パンやクラッカーにぬってそのまま食されるほか、製菓・製パン原料、加工食品原料、プロセスチーズ原料等にも広く利用されている。
フレッシュチーズのひとつであるクリームチーズは、良好な風味・組織を供えているが、非熟成チーズであるため保存中に風味や組織が劣化しやすく、長期間保存することができない。風味劣化は、製品中に残存するスターター乳酸菌による乳酸醗酵が保存中に促進され、醗酵臭の発生(フレッシュ感の消失)および酸度上昇による酸味変化が起こることに起因する。また、組織劣化は水分値が高いことに起因し、酸度変化や乳成分の形態変化によりクリームチーズの組織構造が壊れ、離水や組織変化が発生する。クリームチーズの保存性を高める方法としては、一般的に保存料を使用して微生物の繁殖を抑制する方法等が行われているが、その効果は限定的であり、組織劣化の防止効果は不十分である。
【0003】
クリームチーズの保存中の風味・組織劣化を抑制する方法としては、チーズ製造で一般に行われる加熱殺菌処理、すなわちプロセスチーズ等のチーズ類への加工も挙げられる。プロセスチーズ類へ加工することにより、チーズ内に残存していたスターター乳酸菌を加熱失活させ、保存中の酸度上昇を防止するものである。保存中の離水抑制を行う方法として、安定剤等を添加することも挙げられるが、安定剤は、チーズ類に特有の粘りを生じさせる傾向があり、この安定剤に特有の粘りは、チーズ類の口腔内での不快な歯への付着や、口どけの悪さ、開封時の剥離性の悪さ、チーズ類の指への付着、及び割れ性の悪化の原因となる。割れ性は、チーズ類において、手で割りやすい性質を指し、製品特長の一つであることから、製品における良好な割れ性の維持は重要である。また口どけの良い食感やフレッシュな風味もクリームチーズ類特有の性質であるが、安定剤を過度に添加した場合、チーズ類はゲル様の食感となるうえ、安定剤自体の風味が発現するため、これらを損なうことになる。このように、クリームチーズ類において、離水抑制と、良好な口どけ、及び良好な割れ性のすべてを具備させることは困難であった。
【0004】
例えば特許文献1では、殺菌フレッシュチーズとすることで、加熱処理に対して安定性が高く、離水が抑制されたフレッシュチーズが記載されているが、特許文献1には、口どけの良い食感や割れ性に関する記載はない。
また、特許文献2では、殺菌済み軟質ナチュラルチーズについて、風味や品質の劣化が防止され、離水がない事が記載されているが、製造に膜設備が必要であるうえに、口どけの良い食感や割れ性についての記載はない。
特許文献3でも、特定の安定剤配合による離水抑制と粘りの抑制について記載があるが、特許文献3に記載の方法では粘りの抑制が十分でなく、割れ性および口どけの良い食感の付与には至らない。
特許文献4については口どけの良い食感について記載されているが、離水の効果については記載されていない。
特許文献5には、口腔内で砕けやすく、口どけが良いプロセスチーズについて記載されているが、高熟度のナチュラルチーズを原料チーズとして用いるものであり、クリームチーズ類のような低熟度のものついてはなんら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-252866号公報
【特許文献2】特開2004-105048号公報
【特許文献3】特開2009-100663号公報
【特許文献4】特開2007-151418号公報
【特許文献5】特再公表2009-048093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、口どけの良い食感と良好な割れ性を有し、かつ保存中の離水が少ない、新規なクリームチーズ類を提供することを課題とする。なお、本発明において、「口どけの良い食感」とは、テクスチャーアナライザを用いた圧縮試験により求めた圧縮エネルギーが50×10−3J以下であるものを指す。圧縮エネルギーが50×10−3Jを超えた場合、硬く口中へ広がりにくく、口どけが悪いものとなる。本発明において、「良好な割れ性」とは、テクスチャーアナライザを用いた3点曲げ試験でチーズ類を割った際に割れるまでのアダプターの進入距離が4.8mm以下であるものを指す。進入距離が4.8mmを超えたものは、指で押すとチーズ類が割れることなく変形するため、良好な割れ性は有さない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはクリームチーズ類のpH、平均脂肪球径等の各種パラメータと、クリームチーズ類の物性の変化に着目して鋭意研究を行い、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
(1)食物繊維を含有し、pHが5.3以下かつ、平均脂肪球径が1.8μm以下であることを特徴とするクリームチーズ類。
(2)前記食物繊維が4.8ml/g以上の保水性を有することを特徴とする(1)記載のクリームチーズ類。
(3)前記食物繊維が3ml/g以上の保水性を有することを特徴とする(1)記載のクリームチーズ類。
(4)前記食物繊維の含有量が製品中1%以上であることを特徴とする(2)に記載のクリームチーズ類。
(5)前記食物繊維の含有量が製品中2.5%以上であることを特徴とする(3)に記載のクリームチーズ類。
(6)さらにゼラチンを製品中0.7%以下含有することを特徴とする(1)乃至(5)記載のクリームチーズ類。
なお、本発明において、食物繊維の保水性は、AACC Method 56‐30記載の方法で測定したものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクリームチーズ類は、口どけの良い食感と割れ性を有し、かつ保存中の離水を抑制したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、チーズ類とは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード、または乳等を主要原料とする食品であり、クリームチーズ類とはこれらチーズ類の規格のいずれかを満たすものであって、一般にクリームチーズあるいはクリームチーズ様食品とされるものを包含する。
【0010】
本発明では、原料チーズに食物繊維を添加する。通常の増粘性多糖類に比べ、食物繊維は粘性がでにくく、かつ保水力が高いため、良好な割れ性を保ちつつ保存中の離水を抑制するのに効果的である。本発明で使用可能な食物繊維は、食品および食品添加物として一般に使用されているものであれば、いずれも使用可能であるが、例えばシトラスファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、粉末セルロース等は3ml/g以上の保水性を有しており適当である。
【0011】
本発明において、離水抑制の他に滑らかさ、硬さ等、求められる食感や風味がある場合、それらの付与に効果的な食物繊維以外の安定剤やフレーバー・果実等を添加することも可能である。ただし、過度に安定剤を添加すると割れ性が悪化するため、食物繊維以外の安定剤の添加量は割れ性を維持できる範囲に適宜調整するものとする。なお、水分値の高いシロップや果汁を添加した場合には、固形分の調整を目的としてバター、乳タンパク質等を用いることも可能である。また、一般にチーズ類は水分値が高いと割れ性が悪化し、水分値が低いと割れ性が良くなる傾向を示す。本発明においては特に水分値の制限はないが、特に良好な割れ性を期待する場合には、40〜65%の範囲に水分値を調整することが好ましい。
【0012】
本発明では、pHを5.3以下に調整する。pH調整剤を使用する場合は、一般にプロセスチーズ類製造で使用されているものであればいずれも使用可能である。水分値の高いクリームチーズ類においては、pHを高くすることは保水性増強と滑らかさの向上に効果がある。ただし、pHが高すぎる場合には、静電的相互作用によりタンパク質同士の結合が緩み、組織が柔らかく粘り、割れ性が損なわれるため、割れ性を付与するためにはpHは5.3以下が良好である。反対にpHが低すぎると、酸味が強くなり風味が悪化するためpH4.8以上が望ましい。
【0013】
また、本発明では適宜乳化剤を用いることも可能である。本発明のクリームチーズ類の製造で使用できる乳化剤は、一般にプロセスチーズ類製造で使用されている乳化剤であればよく、ジリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0014】
本発明のクリームチーズ類の製造方法としては、例えば、まず原料チーズに副原料を混合した後、加熱殺菌および乳化を行う。乳化機は直接加熱または間接加熱、撹拌シェアの違い等で様々存在するが、いずれの乳化機でも構わない。加熱乳化を行うことで、適度に脂肪球を分散し、タンパク質を緻密化することで、保存性が良く、均一で良好な割れ性が付与できる。適度に脂肪球が分散した状態とは、乳化物の平均脂肪球径が1.8μm以下である状態を指し、乳化物の平均脂肪球径が1.8μm以上であれば、さらにシェアを加え、平均脂肪球径が1.8μm以下となるよう調製する。シェアを加える機械は特に限定はなく、例えばインラインホモミキサー、均質機、TKホモミキサー等を使用すれば良い。このようにして得たクリームチーズ類は、口どけの良い食感と良好な割れ性を有し、保存時の離水が少ないという特徴を有している。
【0015】
以下に本発明の実施例を示して詳細に説明し、本発明の効果をより明瞭にする。ただし、実施例は本発明の態様の1つであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0016】
ナチュラルクリームチーズ30kgに、食物繊維として保水量が8.8ml/gのシトラスファイバー1%、ゼラチン0.2%、ポリリン酸ナトリウム2%、バター15%、pH5.2となるよう重曹を添加し、最終水分量が53%となるよう加水した後、ケトル釜にて150rpmで、85℃達温まで加熱乳化した。その後、5Mpa(実施例品1)、10Mpa(実施例品2)、20MPa(実施例品3)の各均質圧で均質処理をおこなって、約35kgのクリームチーズを得た。比較対照として、均質処理を行わない点以外は同様の製造方法によって、約35kgのクリームチーズを得た(比較例品1)。
【0017】
[試験例1]
得られたクリームチーズについて、以下に示す方法で、(1)圧縮エネルギー測定、(2)口どけについての官能評価、(3)破断時の進入距離測定、(4)割れ性についての官能評価、(5)離水量測定、(6)脂肪球平均径測定を実施した。
(1)圧縮エネルギーの測定試験
各実施例で得られたクリームチーズを、10mm角に調整し、10℃に温度調整したものを、テクスチャーアナライザを用いて、サンプルの上面からアダプター(75mm平板プレート)を0.5mm/sの速度で降下させ、80%(8mm)圧縮した際の圧縮荷重を測定した。試験を始めてから80%圧縮するまでの圧縮荷重の積算値を圧縮エネルギーとした。なお、圧縮エネルギーが小さい程口どけが良い傾向であり、50×10−3J以下で口どけが良い食感であるとして評価した。
(2)口どけについての官能評価
官能評価により、口どけを評価した。評価は訓練をつんだ専門パネラー5人によって、絶対評価3点法で行なった。
(3)破断時の進入距離の測定試験
各実施例で得られたクリームチーズを、ピアノ線でカットして38mm×38mm×11mmに調整し10℃に温度調整したものを、テクスチャーアナライザを用いて3点曲げ試験に供与した。すなわち、サンプルの幅である38mmから支持体の厚みを引いた28mm間隔を空けて設置した2つの支持体(長さ90mm、厚み5mm、高さ32mm)に、サンプルを水平に乗せ、上面からアダプター(長さ90mm、厚み5mm、高さ13mm、先端は直径5mmの半円形)を0.5mm/sの速度でサンプル接触から10mm降下させる試験を行った。アダプターの降下中にチーズに割れ目が生じた時点を破断点とし、アダプターの進入距離を求めた。なお、破断点におけるアダプター進入距離が4.8mm以下のものを良好な割れ性として評価した。
(4)割れ性についての官能評価
官能評価により、割れ性を評価した。評価は訓練をつんだ専門パネラー5人によって、絶対評価3点法で行なった。
(5)離水量の測定試験
各実施例で得られたクリームチーズを、遠沈管に50g計量し、遠心分離機を用いて、20℃、14000rpmで20分間遠心し、分離した水分重量を測定し、サンプル50gに含まれる全水分量に対する、分離した水分重量の百分率を算出し、離水量とした。なお、離水量15%未満を離水が抑制されたと評価した。
(6)脂肪球平均径測定試験
各実施例で得られたクリームチーズを、液体窒素を用いて凍結割断しクライオ走査型顕微鏡観察した。得られた画像における脂肪球について、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて粒子径解析を行い、脂肪球径の分布を算出した。脂肪球径分布より求めた平均径を脂肪球平均径とした。
以上の結果を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
上記表1の結果より、均質処理なし、均質圧5〜20MPaで作成したクリームチーズ類の平均脂肪球径は、高い均質圧で均質処理したものほど小さくなった。また、比較例品および実施例品は、いずれも圧縮エネルギーが良好な口どけを示す50×10−3J以下であり、また官能評価においても、良好な口どけを有するとの結果であった。しかし、割れ性については、平均脂肪球径が2.1μmの比較例品は、進入距離測定試験の結果が9.9mmであり、官能評価においても、割れ性はないとの評価結果であった。平均脂肪球径が1.8μm、1.4μmである実施例品では、進入距離測定試験の結果はいずれも4.8mm以下であり、また官能評価においても良好な割れ性を有するとの評価であった。離水については、比較例品、実施例品のいずれにおいても、離水量が15%以下であり離水は抑制されていた。
【実施例2】
【0020】
ナチュラルクリームチーズ30kgに、食物繊維として保水量8.8ml/gのシトラスファイバーを1%、ゼラチン0.2%、ポリリン酸ナトリウム2%、バター15%、pH4.6(実施例4)、pH4.8(実施例5)、pH5.3(実施例6)となるようそれぞれ乳酸または重曹を添加して、最終水分量が53%となるよう加水し、ケトル釜にて150rpmで、85℃達温まで加熱乳化した。その後10MPaで均質処理をおこない、約35kgのクリームチーズを得た。比較対照としてpH5.4となるよう調整した以外は同様の製造方法によって、約35kgのクリームチーズを得た(比較例品2)。
【0021】
[試験例2]
各実施例で得られたクリームチーズについて、試験例1と同様の方法で、(1)圧縮エネルギー測定、(2)口どけについての官能評価、(3)破断時の進入距離測定、(4)割れ性についての官能評価、(5)離水量測定、(6)脂肪球平均径測定を実施した。
以上の結果を表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
上記表2の結果より、比較例品、実施例品のいずれにおいても圧縮エネルギー測定値は50×10−3J以下であり、官能評価においても良好な口どけを有していた。一方、割れ性については、実施例品では、いずれも進入距離測定試験の結果が4.8mm以下であったが、比較例品2では7.4mmであり、官能評価においても割れ性が良くないとの結果であった。離水については、比較例品、実施例品のいずれにおいても、離水量が15%以下であり離水は抑制されていた。
【実施例3】
【0024】
ナチュラルクリームチーズ30kgに、食物繊維として保水量4.8ml/gの小麦ファイバーをそれぞれ0.5%(実施例品7)、1%(実施例品8)、1.25%(実施例品9)配合し、ポリリン酸ナトリウム2%、最終水分量が53%となるよう加水し、ケトル釜にて150rpmで、85℃達温まで加熱乳化した。その後、10MPaで均質処理をおこない、約35kgのクリームチーズを得た。比較対照として、シトラスファイバーを添加しない点以外は同様の製造方法により、約35kgのクリームチーズを得た(比較例品3)。
【0025】
[試験例3]
各実施例で得られたクリームチーズについて、試験例1と同様の方法で、(1)圧縮エネルギー測定、(2)口どけについての官能評価、(3)破断時の進入距離測定、(4)割れ性についての官能評価、(5)離水量測定、(6)脂肪球平均径測定を実施した。
以上の結果を表3に示す。
【0026】
【表3】

【0027】
上記表3の結果より、比較例品、実施例品のいずれにおいても圧縮エネルギーが50×10−3J以下であり、官能評価においても良好な口どけの食感を有するとの結果であった。また、割れ性についても、比較例品、実施例品のいずれも進入距離測定試験、官能評価ともに、良好な割れ性を有するとの結果であった。一方、離水については、食物繊維を添加しなかった比較例品3では、離水量が18.8%であり、離水が発生していた。一方、小麦ファイバーを添加した実施例品においてはいずれも離水は15%以下であり、抑制されていた。特に、小麦ファイバーを1%以上添加した実施例品8、9においては、離水量は10%以下であり、離水がより抑制された。
【実施例4】
【0028】
ナチュラルクリームチーズ30kgに、食物繊維として保水量3.4ml/gの粉末セルロースをそれぞれ2.5%(実施例品10)、3%(実施例品11)添加し、ポリリン酸ナトリウム2%添加して、最終水分量が53%となるよう加水し、ケトル釜にて150rpmで、85℃達温まで加熱乳化した。その後10MPaで均質処理をおこない、約35kgのクリームチーズを得た。比較対照として、粉末セルロースを添加しない点以外は同様の製造方法により、約35kgのクリームチーズを得た(比較例品3)。
【0029】
[試験例4]
各実施例で得られたクリームチーズについて、試験例1と同様の方法で、(1)圧縮エネルギー測定、(2)口どけについての官能評価、(3)破断時の進入距離測定、(4)割れ性についての官能評価、(5)離水量測定、(6)脂肪球平均径測定を実施した。
以上の結果を表4に示す。
【0030】
【表4】

【0031】
上記表4の結果より、口どけの良さについて評価すると、比較例品、実施例品ともに圧縮エネルギーが50×10−3J以下であり、圧縮エネルギー評価、官能評価ともに良好な口どけの食感を有していた。割れ性については、比較例品、実施例品ともに進入距離、官能評価結果より、良好な割れ性を有していた。一方、離水については、食物繊維を未添加である比較例品では、離水量が18.8%であり離水が発生したが、保水量が3.4ml/gの粉末セルロースを2.5、3%含有するいずれの実施例品においても離水は10%以下に抑制された。
【実施例5】
【0032】
ナチュラルクリームチーズ30kgに、保水量8.8ml/gのシトラスファイバー1.25%、ゼラチンをそれぞれ0.1%(実施例品12)、0.5%(実施例品13)、0.7%(実施例品14)、ポリリン酸ナトリウム2%、バター15%、pH5.2となるよう乳酸を添加して、最終水分量が53%となるよう加水し、ケトル釜にて150rpmで、85℃達温まで加熱乳化した。その後、10MPaで均質処理をおこない、約35kgのクリームチーズを得た。比較対照として、ゼラチンを0.75%添加し、それ以外は同様にして約35kgのクリームチーズを得た(比較例品4)。
【0033】
[試験例5]
各実施例で得られたクリームチーズについて、試験例1と同様の方法で、(1)圧縮エネルギー測定、(2)口どけについての官能評価、(3)破断時の進入距離測定、(4)割れ性についての官能評価、(5)離水量測定、(6)脂肪球平均径測定を実施した。
以上の結果を表5に示す。
【0034】
【表5】

【0035】
上記表5の結果より、口どけの良さについて評価すると、比較例品、実施例品ともに圧縮エネルギーが50×10−3J以下であり、圧縮エネルギー評価、官能評価ともに良好な口どけの食感を有していた。割れ性については、ゼラチン含有量が0.1、0.5、0.7%の実施例品では進入距離測定試験、官能評価結果ともに、良好な割れ性を有していた。一方ゼラチン含有量0.75%の比較例品4では進入距離、官能評価結果ともに良好な割れ性を有していなかった。なお、ゼラチンの添加量によらず離水は発生せず、いずれも離水抑制されていた。食物繊維にゼラチンを併用することで離水抑制効果が増した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食物繊維を含有し、pHが5.3以下かつ、平均脂肪球径が1.8μm以下であることを特徴とするクリームチーズ類。
【請求項2】
前記食物繊維が4.8ml/g以上の保水性を有することを特徴とする請求項1記載のクリームチーズ類。
【請求項3】
前記食物繊維が3ml/g以上の保水性を有することを特徴とする請求項1記載のクリームチーズ類。
【請求項4】
前記食物繊維の含有量が製品中1%以上であることを特徴とする請求項2に記載のクリームチーズ類。
【請求項5】
前記食物繊維の含有量が製品中2.5%以上であることを特徴とする請求項3に記載のクリームチーズ類。
【請求項6】
さらにゼラチンを製品中0.7%以下含有することを特徴とする請求項1乃至5記載のクリームチーズ類。