説明

クリーンおよび安全な飲用缶の蓋

【課題】簡略な構造でありながら缶本体に充填する内容物を清潔で安全に飲用することを可能とする密閉した状態の重ね蓋を提供し、飲用後はリサイクルを考慮して缶本体と構成された同一素材の一体化をはかる。
【解決手段】開放部を介し、直接に内容物を飲用することを可能として構成された缶1において、利用者が開放部のある缶の上面に口を付ける部分は密閉された外蓋2と内蓋とで形成された重ね蓋の部分であり、外蓋を開放することによってそれと連動して密閉状態で清潔に保たれている内蓋に飲み口が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生的、且つ、安全に飲用できる飲用缶の蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、プルトップ或いはスイテオンタブ等と称する開放部が形成され、この開放部を開けて開口を形成し、且つ、この開口部を飲み口として内容物を飲むことができる。この構成の缶は特別な缶開け器を用いることなく缶の開口が可能であり、またグラス等の容器を用いることもなく屋外でも気軽に内容物を缶からそのまま飲むことができるために、極めて利便性の高いものとなっている。
【0003】
しかし、この種の缶では缶の開口部を中心として直接に口を付けて内容物を飲むために衛生上の問題を訴える利用者も多い。これらの缶が利用者に至るまでには複雑な流通経路を経て小売店や自動販売機等から利用者に直接触れる段階に至るのである。すなわち、この間には多数の人の手と機材や包装器具等との接触は想像以上に多くあり、不衛生なホコリや微細なゴミ等が付着する可能性はかなり高いものと考えられる。また、清涼飲料水等を多く飲用する幼児などの健康に関しては特に憂慮すべきことは確かなことである。
【0004】
上蓋の開口部では、飲み口を形成する開放片が内容物を充填している缶内に曲がりこむために、缶の表面に付着しているホコリや微細なゴミを缶内の内容物に混入させる可能性が甚だ高いと考えられる。そのため、衛生上は缶表面を常に清潔に保っておくか、飲用に際しては缶の表面を洗浄することが解決策のひとつではあるものの従来の上蓋の複雑な形状を考えると、簡単に清拭することには時間的な問題があり、それを屋外や人混みの中で実施することは極めて困難なことである。現在の自動販売機の周辺にはそれらの設備を見ることは皆無でもある。
【0005】
また、缶の開口部にある円周に沿った幅2mmほどの溝は、単に不潔な要素ばかりではなく想像以上の危険性を含んでいる。プルトップのタブを持ち上げる小さな窪みも同じことが説明できる。前者については、細い溝に入った不潔物はその形状から考えると携帯用のハンカチ等を使用しても簡単な作業で清潔にはできない。缶の飲み口から漏れた内容物はこの溝を伝って不潔物と混じり合って再び飲み口から人体へと流れこむのである。また、幼児が内容物の空になった缶で遊んでいた折、人差し指の爪を溝に入れて大怪我をした事実もあり、後者ではタブの持ち上げによって女性が人差し指の爪を剥がしたという事例も報告されている。
【0006】
上記の改善策として従来より多種多様の開発がなされてはきたが、不定形な切り溝による開放部が極端に大きいために、缶の容積を増大することで従来の内容物を保つのか、従来の内容物の量を少なくして充填しなければならないという欠点が生じて利用者の戸惑いを隠せなくなることは必至のことである。上端部の形状が極めて複雑なことから安全性を確保することには難があって製造上もコスト面などによる問題が極めて大である。また、飲用に際しては開放部を切り離して飲用することから周囲に散らばる可能性も大きく、素材が同一ではないために分別などのリサイクルの面からも不適切なものである。(特許文献1)
【0007】
上記の状況を鑑み、国民の健康志向と食に関する安全性を追求している我が国内で、今日までの長い期間、これらの不潔極まりない状況に何の対策も講じられないままで放置され利用者に流通していることへの現状こそが不条理であり、先進国としての責務を怠っていると言っても決して過言ではない。一日も早く、それらの不衛生と安全対策を講じることこそが国家としての急務なのである。
【特許文献1】特開平7−291283号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これら内容物を充填した缶が小売店もしくは自動販売機などで利用者の手に至るまでの複雑な流通経路の中であっても、常に缶と一体している飲み口を清潔に保ち、爪をはがす等の危険性を含んでいる箇所の問題点の解決に向けて、いままで以上に利便性の高い商品の流通を目指すものである。
【0009】
そのためには衛生上、缶の飲み口を密閉した上蓋で覆って清潔さを保ち、切り離された開放片が内容物の中に曲がり込むことのないように改善を加える。また、缶の円周方向に沿った狭い溝は、衛生面や安全を保つ観点からも無い方が望ましく、缶蓋の形状を変えることによって製造上それを可能とした衛生的、且つ安全な缶蓋を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、上記の問題点に鑑み構成されたものであり、開放部を介して直接に内容物を飲用することが可能に構成された缶において開放部がある缶の上面では、利用者が口を付ける部分で密閉された外蓋と内蓋とで形成された重ね蓋の部分のうち、外蓋を本体から開放することによって、それと連動して内蓋の表面に飲み口が形成されることで衛生的に保持されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
内蓋の表面に飲用口を設けてその部分を覆っている外蓋は、缶の内容物を飲用するまでは内蓋の飲用口を衛生的に保護し、且つ、内容物の飲用時には外蓋を開放することで連動して内蓋の表面に飲み口が形成される。このため、飲み口たる内蓋の開放部周辺は外蓋とによって密閉されているために、複雑な流通経路などで人手や不潔物と接触を繰り返したとしても、その形状から汚染されてはおらず、図1の5で示すように外蓋と一体となって本体の周壁部に垂直に張り出している平面略扇型のカバーで覆われている部分も密閉されて清潔な飲み口を確保しており、利用者は衛生的に内容物を飲用できることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
上記の説明からも本発明は簡単な構造と理論によるものであることは明らかである。開放部を介して利用者が直接に内容物を飲用することを可能として構成された缶において、利用者が直接に口を付ける内蓋の部分を外蓋で覆うことによって重ねた蓋の間を密閉して衛生的に保つことが可能であり、外蓋を開放することで連動して内蓋の表面に飲み口が形成されるという特徴を考えると、いつ、だれが、どんな場所においても直接に缶から衛生的に且つ、安全にその内容物を飲用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。下記の説明によって本発明が限定されることはない。本発明でいう内蓋とは現在市場の飲用缶のほとんどがそうである上端および下端にある蓋を示すものである。ここで言う缶とは缶本体と別に加工して被せるもの、缶本体をプレスなどの加工で成形するものを含む。他方、外蓋は内蓋に一体に構成されること、および内蓋の一部である飲用口を形成するためのピンと強力に一体化されていることが重要である。外蓋は内蓋の外側に位置している。外蓋は内蓋の一部に強力に一体化されており、一体化する方法は特定するものではないが、例えば溶着されている。同様に外蓋は内蓋の一部にある飲用口を形成する部分にあるピンと強力に一体化されており、その方法は特に限定するものではないが、例えばかしめ加工や溶着加工がされている。外蓋は比較的小さな力で開放できることが望ましい。外蓋を開けると連動して内蓋に飲用口を形成可能にすることになる。本発明の密閉とは、空気などの気体が全く漏れないことが条件ではなく、外気に含まれるチリやホコリが外蓋の内側に入らない程度になっていれば事が足りるのである。言うまでもなく、気体が漏れない程度の密閉であっても何ら差し障りはない。本発明は、飲用口を衛生的に保護するためのカバーを設けることが好ましく、カバーは飲用缶本体の上部は勿論のことではあるが、本体の上端から1cm以上下方方向に伸びていることが好ましく、特に2cmから5cm下方に伸びていることが最も望ましい形状である。
【0014】
以下、本発明をより詳細に記述するために、実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明による外蓋と内蓋とで一体に構成され、その間を密閉状態として形成されている重ね蓋を示す全体図である。図2は本発明による外蓋と内蓋とで一体に構成され、その間を密閉状態として形成されている重ね蓋のうち、外蓋を開蓋した状態を示す平面図である。図3は本発明による外蓋と内蓋とで一体に構成され、その間を密閉状態として形成されている重ね蓋を示す平面図である。図4は外蓋と一体に形成された飲み口を清潔に覆うカバーの側面図であり、外蓋と内蓋の関係を示す断面図である。5のカバーを上部に引っ張り上げることで外蓋を開放し、内蓋に形成された3の開放部を開放することを目的としている。
【0015】
図1は重ね蓋全体を示し、缶本体1の上部にかしめられた外蓋と内蓋で一体に構成された重ね蓋である。ビール或いは清涼飲料等を充填した缶の大半は全体が絞り加工されて缶本体となり、この缶本体に対して前記の外蓋と内蓋とで一体に構成された重ね蓋が取り付けられることにより、重ねられた蓋の内部が密閉状態であるために内蓋に形成されている開放部と、図4で示すようにカバーで覆われた飲み口を清潔に保つように構成されている。
【0016】
3は重ね蓋である内蓋に形成された開放部であってピン3aは外蓋2のカバー側の位置で強力に一体化されたものである。カバー5は開放部3を中心として内蓋4の一部と缶本体の一部を覆うように設けられ、外蓋2と一体となるように構成されており、その形状は図1、図3、図4に示すように、開放部3を中心として平面略扇型に展開し、缶本体の周壁部に沿って垂直に展開し、重ね蓋の密閉状態と同様に清潔を保つ飲み口の部分である。
【0017】
従って、カバー5により外蓋2を持ち上げて重ね蓋の固定部7まで開蓋すると、外蓋2と連動して内蓋に形成されている開放部3が6の切り溝から離脱して3aの固定ピンによって8の接合部まで開放された後に外蓋2の内面に密着する。その場合、外蓋2と内蓋の開放部3とを固定したピンの位置は開放部3が容易に切り溝6の位置から離脱させるために、極力切り溝に近い位置に設けるのが望ましい。また、外蓋2と内蓋4の重なる部分は、7の接合面までの位置でも問題ないが、図4中に破線で示したように内蓋の全体と重なって、両蓋の接合面の位置を変更することも可能である。それら開放部分を含めて、缶本体と一体になっている重ね蓋を形成する外蓋2と内蓋4は外蓋の開蓋によって内容物を飲用した後もリサイクルの目的に向けてそれぞれの部材が分離して散らばることを防ぐために一体化を保つ構造になっている。
【0018】
また、外蓋2と一体となっているカバー5は外蓋2を容易に開蓋するだけではなく、缶側の飲み口を衛生的に保護するという目的も兼ね備えている。そのためには外蓋2を含めて必要最小限の厚さを有し、取り扱いが簡便であることが条件であり、その目的を考えると缶本体1よりも大幅に肉厚を薄くしても構造上では何ら問題はないと思われる。また、内容物の飲用後は、カバーの先を折り曲げるようにして飲み口の開放部分に挿入して廃棄するのが適切な処理方法であり、肉厚が薄い素材であることからそれも十分に可能なのである。
【0019】
次に重ね蓋を構成する材料としては、外蓋2と内蓋4の開放部3とを固定するピン3aを含めて各種のものが考えられるが、上記で述べたようにリサイクルを目的とした分別収集、並びに資源回収の簡便さと有効な処理を考えると缶本体と同一の材料であることが望ましいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の全体図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態の外蓋開蓋図である。
【図3】本発明を実施するための最良の形態の重ね蓋の平面図である。
【図4】本発明を実施するための最良の形態のカバー側面図であり、外蓋と内蓋の位置関係を詳細に示す断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 密閉の状態で構成された重ね蓋を形成する缶本体
2 缶本体と一体に構成された重ね蓋の外蓋
3 内蓋に形成された開放部分である飲み口
3a 外蓋と開放部の先端を固定するピン
4 缶本体と一体に構成された重ね蓋の内蓋
5 外蓋と一体に形成された飲み口のカバー
6 内蓋に形成された開放部の切断線
7 外蓋と内蓋との接合面
8 開放部分と内蓋との接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外蓋と内蓋を一体で構成し、その間を密閉状態にする蓋であって、外蓋の開蓋と連動して内蓋に飲用口を形成可能とすることを特徴とする重ね蓋。
【請求項2】
外蓋と内蓋を一体で構成し、その間を密閉状態にする蓋であって、飲用口を衛生的に保護するためのカバーを設けることを特徴とする請求項1記載の重ね蓋。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−276824(P2007−276824A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104995(P2006−104995)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(502455555)
【Fターム(参考)】