説明

クリーンルーム内の清浄空気流出遮断装置

【課題】クリーンルームの隔壁に大きな寸法の開口部を開口すると、クリーンルーム内の清浄な空気が大量に外部に流出してしまう。
【解決手段】クリーンルームの内部の圧力を、クリーンルームの外部の気圧よりも高い状態に設定する。クリーンルームと外部との境界の隔壁に開口部を設ける。開口部の一方に設けた噴出口から、開口部を遮断する方向に向けて加圧空気を供給する。供給した加圧空気は、開口部の他方に設けた吸引口で吸引する。吸引口で吸引した空気は、空気中の塵埃や化学物質を除去する除塵装置を通過させて、再度、開口部の一方に設けた噴出口から循環供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム内の清浄化した空気が外部へ流出することを遮断する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームに汚染された外気が侵入しないように出入り口の扉の外に空気圧を調整する調整室を設け、この調整室にも扉を設ける常にいずれかの扉が閉まった状態で人や物を出入りさせる構成が知られている。
したがって人や物は一度、調整室の大気圧側の扉を開けて調整室に入り、次の大気圧側の扉を閉めて、クリーンルーム側の扉を開けてクリーンルーム内部に入るという手段をとる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記したようにクリーンルームと大気圧との間に気圧の調整室を介在させて、この調整室の扉の開閉で大気圧が直接クリーンルームの扉の開閉に影響を与えない構造を採用すれば、人や物が独立して出入りする場合には問題がない。
しかしクリーンルーム内への資材の供給や製品の持ち出しにコンベアのように連続した装置を設置する必要が生じる場合がある。
このような連続した運搬を維持しようとする場合には扉を開閉するという構造を採用することができず、外気の遮断が困難であるという問題がある。
特に食品を扱うクリーンルームのように、製品のサイズが大きいと、コンベアを貫通する開口部の面積を大きく設定しなければならない。
開口部を大きくすれば、常に大量の空気がクリーンルームから外部に流出してしまう。
流出した空気を補うためには大容量のコンプレッサーが必要となり、その設費用、維持費用は大きなものとなり、きわめて不経済である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような従来の装置の課題を解決した本発明のクリーンルーム内の清浄空気流出遮断装置は、周囲を隔壁、天井、床で包囲して外気から遮断したクリーンルームにおいて、クリーンルームの内部の圧力を、クリーンルームの外部の気圧よりも高い状態に設定し、そのクリーンルームと外部との境界の隔壁に開口部を設け、開口部の一方に設けた噴出口から、開口部を遮断する方向に向けて加圧空気を供給し、供給した加圧空気は、開口部の他方に設けた吸引口で吸引し、吸引口で吸引した空気は、空気中の塵埃や化学物質を除去する除塵装置を通過させて、再度、開口部の一方に設けた噴出口から、開口部を遮断する方向に向けて加圧した状態で循環供給する、クリーンルーム内の清浄空気流出遮断装置を特徴としたものである。

【発明の効果】
【0005】
本発明のクリーンルーム内の清浄空気流出遮断装置は以上説明したように周囲を隔壁、天井、床で包囲して外気から遮断したクリーンルームであり、クリーンルームの内部の圧力を、外気圧よりも高い状態に設定してある。
そして境界の隔壁に設けた開口部の一方に設けた噴出口から、開口部を遮断する方向に向けて加圧した空気を供給する構造である。
そのためにコンベアのように連続した装置を開口部に設置して、長時間にわたって開放状態であっても、汚染した外気がクリーンルーム内に侵入することを阻止することができる。
さらに例えば飲料水をコンベアで運搬する場合のように、開口部の面積が大きな場合でも、開口部を遮断する方向に向けて加圧した空気を常時供給しているから、クリーンルーム内からの清浄な空気を大量に浪費することがない。
そのために、クリーンルーム内へ圧縮空気を供給するコンプレッサーを最低限の規模で設置することができ、かつそのランニングコストも最低限に抑えることができる。
その結果、電力の消費量が減少して炭酸ガスの放出を抑え、地球温暖化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照しながら本発明のクリーンルーム内の清浄空気流出遮断装置の実施例を説明する。
【実施例】
【0007】
<1>クリーンルームの構成。
本発明のクリーンルームは、周囲を隔壁、天井、床で包囲して外気から遮断して構成してある。
なお、クリーンルームは大気圧に開放した一般の作業室に隣接して設けている場合もあるが、そのような作業室とクリーンルームの間に空気圧調整室を設けている場合もある。
その場合に、外気とか外気圧とはその調整室の圧力のことを意味するから必ずしも大気圧とは限らない。
すなわち本発明で外気とか、外気圧とはクリーンルームの外部の気圧状態を言う。
【0008】
<2>クリーンルームの内圧の設定。
本発明のクリーンルーム1では、その室内にコンプレッサー2で圧縮した加圧空気を供給しつづける。
その場合に、クリーンルーム1の内部の圧力を、外気圧3よりも高い状態に設定する。
したがって隔壁4に隙間があった場合、あるいは開口部5を設けた場合にもクリーンルーム1の内部から室外への空気の流れは発生するが、外部から室内への空気の流れが発生することはない。
【0009】
<3>開口部の開口。
そのクリーンルーム1と外気3との境界の隔壁4に開口部5を設ける。
この開口部5に例えばコンベア6を設置する。
このコンベア6は、ローラーコンベアのように運搬面には、その一部を切り欠き、あるいはスリットを開口した構造であることが望ましい。
切り欠きやスリットが存在することによって、後述するように、圧縮空気を噴出する噴出口7と吸引口8の間にエアカーテンを形成することができ、このエアカーテンによって開口部5を空気的に遮断することができるからである。
コンベア6に搭載した資材や部品や製品は連続してクリーンルーム1内へ供給され、あるいはクリーンルーム1から外部へ搬出される。
ただし、単に開口部5を開口しただけであったら、クリーンルーム1の内部の加圧空気は開口部5の開口面積に応じて連続して外部へ流出し続けることになり、きわめて不経済である。
そこで後述するように開口部5を遮断する方向へ向けて加圧空気を供給してエアカーテンを構成してクリーンルーム1内部の圧縮空気の散逸を可能な限り阻止する。
【0010】
<4>噴出口7の設置。
エアカーテンを構成するために開口部5の一方、例えば開口部5の上側、あるいは右側に圧縮空気の噴出口7を設ける。
この噴出口7にはコンプレッサー2で圧縮した圧縮空気の流路を接続する。
そしてこの噴出口7からは、開口部5を遮断する方向に向けて加圧空気を供給してエアカーテンを形成する。
【0011】
<5>吸引口8の設置。
エアカーテンを構成する加圧空気は噴射をしたままではなく、再利用する。
そのために開口部5の他方、例えば下側や左側に吸引口8を設ける。
この吸引口8で、噴出口7から供給した加圧空気を吸引する。
吸引口8はコンプレッサー2の負圧側に接続してあり、常に周囲よりも低い圧が供給されているから、噴出口7からの圧縮空気を吸引することができ開口部を遮断するエアカーテンを形成することができる。
吸引口8で吸引した空気は、排気通路9を通って、空気中の塵埃や化学物質を除去する除塵装置10を通過する。
そして、除塵装置10を通過した空気は、再度、開口部5の一方に設けた噴出口7から、開口部5を遮断する方向に向けて加圧状態で供給する。
すなわち圧縮空気は循環して供給されることになる。
【0012】
<6>エアカーテンの形成。
上記のような構成の結果、開口部5にはクリーンルーム1から外気3への空気の流れを遮断するエアカーテンが形成される。
このエアカーテンを貫通する状態でコンベア6上の製品や部品などが通過する。
クリーンルーム1と外気3とでは気圧差があり、かつ製品などが継続して開口部5を貫通して移動しているから、空気の流れを完全に遮断することは困難であるが、開口部5の面積が大きくともクリーンルーム1から外気3への浄化した空気の無用な流出を大幅に抑制することができる。
その結果、設置するコンプレッサー2の容量も小さく抑えることができ、そのランニングコストも経済的に削減することができる。
こうして使用する電力が少なくてすめば、発電にともなう炭酸ガスの放出が抑えられ、地球温暖化の抑制の一助ともなる。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のクリーンルーム内の清浄空気流出遮断装置の実施例の説明図。
【図2】開口部の外部から見た斜視図。
【符号の説明】
【0014】
1:クリーンルーム
3:外気
5:開口部
7:噴出口
8:吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲を隔壁、天井、床で包囲して外気から遮断したクリーンルームにおいて、
クリーンルームの内部の圧力を、クリーンルームの外部の気圧よりも高い状態に設定し、
そのクリーンルームと外部との境界の隔壁に開口部を設け、
開口部の一方に設けた噴出口から、開口部を遮断する方向に向けて加圧空気を供給し、
供給した加圧空気は、開口部の他方に設けた吸引口で吸引し、
吸引口で吸引した空気は、空気中の塵埃や化学物質を除去する除塵装置を通過させて、再度、開口部の一方に設けた噴出口から、開口部を遮断する方向に向けて加圧した状態で循環供給する、
クリーンルーム内の清浄空気流出遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−292201(P2006−292201A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110091(P2005−110091)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(596166025)日本エアーカーテン株式会社 (4)
【Fターム(参考)】