クルクリゴラティフォリア(C.latifolia)抽出物の使用
本発明は、クルクリゴラティフォリア(Curculigo latifolia(C.ラティフォリア(C. latifolia))抽出物であって、前記抽出物は、植物の異なる部分、例えば、果実、根、および葉などから、個々に、ならびにこれらの任意の組合せで、抽出され、代謝異常疾患、例えば、糖尿病、肥満症、心血管、およびアテローム性動脈硬化症などを治療および予防するための薬剤として使用されることを特徴とする抽出物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルクリゴラティフォリア(Curculigo latifolia)(C.latifolia)抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病などの不均一な代謝異常(hetetogeneous metabolic disorder)は、インスリンを産生するβ細胞が、末梢組織、例えば、肝臓、脂肪、および筋肉組織などにおいて起こっている需要およびインスリン抵抗性に追随するのが不十分であることによって主に生じる。それは別として、座りがちな生活様式、不健康な食習慣、および遺伝学的素因の組合せが、この問題の主な理由である。状態が制御されない場合、これは、肥満症、心血管疾患、腎不全、および失明などの他の健康問題に至る場合がある。
【0003】
最近、ハイポアディポネクチン(hypoadiponectin)、インスリン抵抗性、およびグルコース取込み活性における欠陥が、2型の病因における主要な問題となっている。アディポネクチンは、脂肪細胞分化の間に脂肪組織によってもっぱら分泌されているサイトカインである。これは、代謝において、インスリン感受性、糖耐性、および脂質プロファイルの改善に役割を果たす。しかし、糖尿病の状況では、アディポネクチンレベルは減少し、これは、インスリン抵抗性および高インスリン血症の発生の一因となり得る。インスリン抵抗性は、末梢組織である標的組織中へのインスリンで媒介されるグルコースクリアランスとして定義することができる。正常なシナリオでは、インスリンは、細胞の表面でインスリン受容体タンパク質に結合することによって、これらの組織におけるグルコースの取込みを誘発する。次いでインスリンは、細胞内の一連のタンパク質を活性化し、GLUT4を細胞表面上に移動させて、血流から細胞内にグルコースを取り込むが、2型糖尿病の状態では、グルコース取込み活性を欠いており、グルコースは血流中に残る。これらの機序は、ハイポアディノペクチン(hypoadinopectin)、高インスリン血症、およびハイパーグルコセミア(hyperglucosemia)は、2型糖尿病の症状であることを強調する。
【0004】
民族植物(ethobotanicals)は、東アジア諸国、主に発展途上国において長年にわたって広く使用されている。その一方で、西洋諸国において、ハーブ系サプリメントの使用は、この数十年にわたって着実に増加している。しかし、これらの民族植物の効力について、報告されている科学的証拠は限られている。最近、糖尿病治療における民族植物の使用が活発に増加している。この新たな興味は、抗糖尿病剤としての潜在性を有する可能性のある植物を探索および研究するための、科学者の間での協同的な仕事に導いた。多くの研究により、いくつかの民族植物は、2型糖尿病患者における血糖値を改善し、また糖尿病に関連する長期の合併症を予防する可能性があることが示された。さらなる研究により、これらの植物成分中の抗糖尿病剤は、末梢組織におけるインスリン感作および/または膵臓β細胞からのインスリン分泌作用の特性を示すことが実証された。
【0005】
C.ラティフォリア(C. latifolia)は、西マレーシアで成長する無茎のハーブであり、その果実は、甘味料として原住民によって使用されている。興味深いことに、甘味は、単離されたタンパク質、すなわち、C.ラティフォリアの果実中に存在するクルクリンに由来する。このタンパク質は、甘味活性および味覚修飾活性の両方を示す。しかし、糖尿病患者のための抗糖尿病剤としても、人工甘味料としてもその潜在的な用途についての適切な研究はまったくなく、その理由は、C.ラティフォリアの果実が、スクロースより9000倍甘いことが示されているためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Levin et. al.(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在では、いくつかの研究により、サッカリン、アスパルテーム、およびシクラメートなどの人工甘味料を摂取すると、副作用、例えば、心理学的な問題、精神障害、膀胱癌、心不全、および脳腫瘍などが生じることが示された。この問題を克服するために、天然源に由来する非炭水化物甘味料の探索により、人工甘味料を越える、多くの強烈に甘味のあるものが発見された。これらは天然であるため、これらは、アスパルテームおよび他の甘味料より安全となり得る。これは、糖尿病、肥満症、および他の代謝異常の潜在的な治療への新しいアプローチである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、クルクリゴラティフォリア(C. latifolia)抽出物であって、植物の異なる部分、例えば、果実、根および葉などから、個々に、およびこれらの任意の組合せで、抽出され、代謝異常疾患、例えば、糖尿病、肥満症、心血管、およびアテローム性動脈硬化症などを治療および予防するための薬剤として使用されることを特徴とする抽出物を提供する。
【0009】
本発明は、いくつかの新規の特徴、ならびに添付の説明および図面において以下に完全に記載および例示される部分の組合せからなり、細部における様々な変更を、本発明の範囲から逸脱することも、本発明のいずれの利点も犠牲にすることなく行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、本明細書で以下に提供される詳細な説明、および添付の図面から完全に理解されるが、これらは、例としてのみ提供され、したがって本発明を限定するものではない。
【図1a】BRIN−BD11膵細胞株の生存能に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図1b】3T3−L1脂肪細胞株の生存能に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図1c】L6筋管細胞株の生存能に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図2】30分の処置後のインスリン分泌における、BRIN−BD11細胞に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図3a】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの果実抽出物の効果を示す図である。
【図3b】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの根抽出物の効果を示す図である。
【図3c】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉(熱水)抽出物の効果を示す図である。
【図3d】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉抽出物の効果を示す図である。
【図4a】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの果実抽出物の効果を示す図である。
【図4b】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの根抽出物の効果を示す図である。
【図4c】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉(熱水)抽出物の効果を示す図である。
【図4d】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉抽出物の効果を示す図である。
【図5】インスリンの非存在下で30分処置した後のアディポネクチン分泌における、分化した3T3−L1脂肪細胞に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図6】インスリンの存在下で30分処置した後のアディポネクチン分泌における、分化した3T3−L1脂肪細胞に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7a】高脂肪を与えた食餌および低用量のSTZで誘発された糖尿病ラットの体重に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7b】高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、空腹時血糖に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7c】高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、インスリンレベルに対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7d】高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、アディポネクチンレベルに対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、クルクリゴラティフォリア(C.ラティフォリア)抽出物の使用に関する。以下、本明細書は、本発明の好適な実施形態によって本発明を説明する。しかし、本発明の好適な実施形態に説明を限定することは、単に本発明の考察を促進するためであることが理解されるべきであり、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変および等価物を考案することができることが想定される。
【0012】
より具体的には、本発明は、血糖、グルコース取込み活性、インスリンおよびアディポネクチンレベルを回復させるための方法に関する。治療方法は、C.ラティフォリア抽出物の投与を伴う。
【0013】
したがって、本発明の目的は、対象に有効量のC.ラティフォリア抽出物を投与することによって糖尿病を調節することができるC.ラティフォリア抽出物であって、この量のC.ラティフォリア抽出物により、糖尿病の症状が調節される抽出物を提供することである。
【0014】
上記目的を実現するために、インビトロおよびインビボでの広範な試験を行った。インビトロにおいて、有効量のC.ラティフォリア抽出物を、細胞株:BRIN−BD11、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞において試験した。その一方で、インビボにおいて、C.ラティフォリア抽出物を対象に経口投与した。
【0015】
したがって、これは、C.ラティフォリア抽出物で処置されたBRIN−BD11、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞毒性の方法であって、この量のC.ラティフォリア抽出物が、これらの細胞株に対して無毒性であることが見出される方法である。
【0016】
本発明の好適な実施形態は、C.ラティフォリア抽出物で処置された3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞株におけるグルコース取込みの方法であって、この量のC.ラティフォリア抽出物が、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞株におけるグルコース取込み活性を増大させることが見出される方法である。
【0017】
さらなる実施形態は、C.ラティフォリア抽出物で処置されたBRIN BD11細胞株内のインスリン、および3T3−L1脂肪細胞株内のアディポネクチンの分泌の方法であって、この量のC.ラティフォリア抽出物が、BRIN BD11細胞株内のインスリン、および3T3−L1脂肪細胞内のアディポネクチンの分泌を増大させることが見出される方法である。
【0018】
上記目的によれば、対象は、高脂肪食(HFD)、および低用量のストレプトゾトシン(STZ)の組合せによって糖尿病を発症させるように誘発された。
【0019】
糖尿病は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)である。糖尿病の症状は、高血糖、肥満症、インスリンレベルの増加、多食症、煩渇多飲症、および多尿症を示す群から選択することができる。
【0020】
なおさらに、対象は、1日当たり、体重1kg当たり約100mgである有効用量で経口投与された。より具体的には、対象は、30日間投与された。
【0021】
本発明の一実施形態は、有効量のC.ラティフォリア抽出物を投与することによって、糖尿病対象における血糖を低減する方法である。
【0022】
本発明の血糖値を回復させるための方法によれば、空腹時血糖および経口糖耐性(oral glucose tolerance)がモニターされる。
【0023】
C.ラティフォリア抽出物は、対象において、血糖値を低減し、インスリンおよびアディポネクチンレベルを増大させることが想定される。
【0024】
C.ラティフォリア抽出物は、対象における経口糖耐性を増加させることが、本試験でさらに想定される。
【0025】
なおさらに、C.ラティフォリア抽出物は、対象における食物摂取および体重を増加させたことが別に想定される。
【0026】
本発明によるC.ラティフォリア抽出物は、以下のプロセスに従って調製することができる。
【実施例1】
【0027】
植物抽出物の調製
C.ラティフォリアの果実抽出物
新鮮なC.ラティフォリアの果実を蒸留水で洗浄した。次いで、C.ラティフォリアの果実50gを、5lのビーカー中で蒸留水2lを用いて、室温で連続的に撹拌しながら24時間抽出した。この抽出物を、Whatman no.1濾紙に通して濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【0028】
C.ラティフォリアの葉抽出物
使用される2つの型の抽出物
【0029】
(1)熱水抽出物
C.ラティフォリアの葉の粉末5グラムを、沸騰(蒸留)水200ml中に入れた。次いでこれを熱源から取り出し、15分間煎じさせた。この懸濁液を、Whatman no.1濾紙を用いて濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【0030】
(2)通常水抽出物
C.ラティフォリアの葉の粉末5グラムを、蒸留水200mlを用いて抽出し、室温で連続的に撹拌しながら24時間浸漬した。この抽出物を、Whatman no.1濾紙に通して濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【0031】
C.ラティフォリアの根抽出物
C.ラティフォリアの根の粉末5グラムを、蒸留水200mlを用いて抽出し、室温で連続的に撹拌しながら24時間浸漬した。この抽出物を、Whatman no.1濾紙に通して濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【実施例2】
【0032】
3T3−L1脂肪細胞、L6−筋管細胞、およびBRIN−BD11膵細胞株に対して試験したC.ラティフォリア抽出物のインビトロ細胞毒性試験
【0033】
細胞培養
5%のCO2の加湿雰囲気中で、37℃で、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン−ストレプトマイシン、および1%のグルタミンを補充したRPMI1640培地中で、BRIN−BD11細胞株を培養し、維持した。その一方で、3T3脂肪細胞およびL6筋管細胞を、ストレプトマイシン/ペニシリン抗生物質、および10%のウシ胎児血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。両細胞を、5%のCO2加湿雰囲気中で、37℃に維持した。培養フラスコから細胞を剥離するために、トリプシン−EDTAを使用して約80%のコンフルエンスで、2から3日毎に細胞を継代培養(subculture)した。血球計数器を使用して細胞計数を行った。分化のために、コンフルエンスになって4〜6日後に、2%のウシ胎児血清を含むDMEMにL6細胞を移した。分化の程度は、細胞の多核細胞化を観察することによって確認し、筋原細胞の筋管細胞への90%超の融合を考慮した。その一方で、3T3前脂肪細胞の分化をプレート内で増大させることによって、3日でコンフルエンスに到達させた。この時点(0日目)で、細胞を、分化培地(DMEM、10%のFBS、0.25μMのデキサメタゾン、0.25mMのIBMX、および1μg/mlのインスリン)に3日間切り替え、その間に1回培地交換を行った。3日目で、デキサメタゾンおよびIBMXを除去し、細胞上にインスリンをさらに4日間残し、培地を2日毎に交換した。その後、元の増殖DMEM中で細胞を維持し、使用するまで2〜3日毎に培地を交換した。細胞が90%超分化したプレートを、誘発して9日から12日後の間に実験に使用した。
【0034】
細胞生存能アッセイ
これまでに、生存能細胞を測定するために、様々な方法が開発され、導入されてきた。CellTiter 96(登録商標)水性非放射性細胞増殖アッセイ(Promega、Madison、WI)はこれらのうちの1つである。培地培養液100μl中で、2×105細胞/ウェルの濃度で、96ウェルプレート上に細胞を播種し、24時間付着させた。細胞単層を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄することによって、付着しなかった細胞を除去し、様々な濃度のC.ラティフォリアの果実、葉、および根の抽出物を含む新鮮な無血清培地中で、付着した細胞を72時間インキュベートした。次いで、テトラゾリウム塩溶液20μlを用いて、細胞を4時間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(Opsys MR、Thermolabsystems)を使用して各ウェルの吸光度を490nmで測定し、ホルマゾン(formazon)生成物を定量化した。培養液中の生細胞数は、存在するホルマゾン生成物の量に比例する。
【0035】
図1a、1b、および1cはそれぞれ、BRIN BD11、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞株に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例3】
【0036】
インビトロでのインスリン分泌
BRIN−BD11細胞株を使用し、インスリン分泌を評価した。インスリン分泌活性は、24ウェルプレートを使用して決定した。10%のウシ胎児血清、1%の抗生物質、および1%のグルタミンを含有するするRPMI1640中で、2×105細胞/ウェルの濃度で細胞を播種し、一晩付着させた。次いで、クレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液(KRB;115mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.28mMのCaCl2、1.2mMのKH2PO4、1.2mMのMgSO4、24mMのNaHCO3、10mMのHepesを含まない酸、1g/lのウシ血清アルブミン、1.1mMのグルコース;pH7.4)で細胞を3回洗浄し、KRB緩衝液中で、37℃で40分間プレインキュベートした。次いで、陽性対照として、C.ラティフォリア抽出物およびグリベンクラミドの非存在および存在下で、KRB緩衝液1mlを用いて30分間細胞をインキュベートした。アリコートを各ウェルから取り出し、−20℃で貯蔵して、後にインスリンアッセイを行った。
【0037】
インスリンアッセイ
インスリン濃度を定量化するために、インビトロ試験におけるインスリン分泌からのアリコートを使用し、アッセイは、Mercodia Rat Insulin ELISA(Uppsala、スウェーデン)プロトコールを使用して行った。各ウェルの吸光度を、マイクロプレートリーダー(Opsys MR、Thermolabsystems)を使用して450nmで測定することによって、インスリン濃度を定量化した。
【0038】
図2は、30分の処置後のインスリン分泌における、BRIN−BD11細胞に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例4】
【0039】
2−デオキシ−D−[1−3H]グルコース(2−DOG)取込み
グルコース取込みを、完全に分化したL6筋管細胞および3T3脂肪細胞において測定した。クレブスリンガーHEPES緩衝液(pH7.4)で細胞を3回すすいだ後、インスリン(100nM)の存在および非存在下で、C.ラティフォリア抽出物を用いて処置した。この処置を30分間進行させた。30分後、1μCi/mlの2−デオキシ−D−[1−3H]グルコースを添加し、30分間インキュベートさせた。細胞を消化する前に、培地をバイアルに収集し、アディポネクチン分析のために−20℃で凍結させたが、この収集プロセス(collected process)は氷床上で行った。次いで、氷冷したKRH緩衝液でプレートを3回洗浄し、0.1%のSDSを用いて細胞を消化した。アリコートを使用し、シンチレーションカクテルとしてUltima Gold(商標)LLT(Perkin Elmer、Boston、MA、USA)を使用して、シンチレーションカウンター(Tri−Carb 2300TR、Perkin Elmer Life and Analytical Services、Boston、MA、USA)を使用することにより放射能を測定した。グルコース取込みは、壊変毎分(dpm)として表した。
【0040】
図3a、3b、3c、および3dはそれぞれ、分化した3T3脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図4a、4b、4c、および4dはそれぞれ、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例5】
【0041】
アディポネクチンアッセイ
BioVision Rat Adiponectin ELISAアッセイ(Mountain View、USA)を使用し、C.ラティフォリア抽出物をスクリーニングして、分化した3T3脂肪細胞におけるアディポネクチン分泌を増強した。
【0042】
グルコース取込みアッセイから収集したアリコートを使用し、アッセイは、キットの手順に従って行った。
【0043】
図5は、インスリンの非存在下での分化した3T3脂肪細胞におけるアディポネクチン分泌活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図6は、インスリンの存在下での分化した3T3脂肪細胞におけるアディポネクチン分泌活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例6】
【0044】
動物
合計42匹のオスのスプラーグドーリー(SD)ラット(160〜200g)を、この試験に使用した。これらは、ポリプロピレンケージ内に個々に収容し、12:12時間の明暗周期で、制御された室温(22±2℃)および湿度(55±5%)下に維持した。すべてのラットに、水および市販のラット用通常パレット(pallet)(NPD)への自由なアクセスを提供した後、周期に順応させた。動物の管理および使用についてのすべての実験プロトコールは、Faculty of Medicine and Health Sciences、Universiti Putra Malaysiaの動物管理使用委員会(ACUC)によって認可された。
【0045】
実験設計
フェーズI
高脂肪(HF)食餌の調製
HF食餌は、非特許文献1によって提供された組成物に基づいて処方した。これは、50%の通常のラット用固形飼料パレット、24%のトウモロコシ油(Mazolaブランド)、20%の全乳粉(NestleからのNesprayブランド)、および6%の糖の混合物から調製される。
【0046】
HFDを与え、低用量のSTZで処置した2型糖尿病ラットの開発
ラットは、食事のレジメン、すなわちNPDおよびHFDに基づいて2つの群に割り当て、これらに1カ月間給餌した。いずれかの食餌で1カ月の後、HFDを採用したラットを、一晩絶食させた後、ジエチルエーテルを用いて麻酔し、次いでSTZ(35mg/kg)を静脈内注射した。STZを注射した後、ラットに元の食餌(固形飼料または脂肪)および水を継続した。STZを注射して7日後に、糖尿病状態を、煩渇多飲症、多尿症によって、および空腹時血糖値を測定することによって同定し、170mg/dl超のグルコースレベルをこの試験に含めた。
【0047】
体重、食物消費量、および空腹時血糖を、毎週測定した。
【0048】
フェーズII
動物を、それぞれ3匹の動物の7つの群にランダムに分けた。
− 群1:正常な対照(通常のペレット食餌、非糖尿病、未処置)ラット
− 群2:糖尿病の対照(高脂肪を与えた食餌、糖尿病、未処置)ラット
− 群3:糖尿病の対照(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)ラット
− 群4:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、処置した)、体重当たりグリベンクラミド600μgで処置
− 群5:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)、体重当たりC.ラティフォリアの果実抽出物100mgで処置
− 群6:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)、体重当たりC.ラティフォリアの根抽出物100mgで処置
− 群7:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)、体重当たりC.ラティフォリアの根および果実の抽出物の組合せ100mgで処置
体重、食物消費量、および空腹時血糖を、毎週測定した。
【0049】
経口糖耐性試験(OGTT)
各ラットの空腹時血糖値を、ゼロ時間(水に自由にアクセスさせて一晩絶食させた後)に測定した。C.ラティフォリア抽出物またはグリベンクラミドを経口投与して30分後に、グルコース(体重1kg当たり2g)を経口投与した。血糖濃度は、試験試料を経口投与する直前、ならびに経口投与して30分、60分、および120分後に測定した。
【0050】
生物学的アッセイ
処置のすべてのフェーズの最後に血液試料を収集した。心穿刺によって血漿を収集して、様々な生物学的アッセイを行った。体重、食物摂取、血漿グルコース、インスリンおよびアディポネクチンレベルの変化などの物理学的および生化学的パラメータを得た。インスリンレベルは、標準物質としてラットインスリンを用いたInsulin ELISAキット(Mercodia AB、Uppsala、Sweeden)を使用して測定した。アディポネクチンレベルは、BioVision Rat Adiponectin ELISAアッセイ(Mountain View、USA)を使用して測定する。
【0051】
図7aは、高脂肪を与えた食餌および低用量のSTZで誘発された糖尿病ラットにおける体重に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図7bは、高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける空腹時血糖に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【0052】
一方、図7cは、高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、インスリンレベルに対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図7dは、高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、アディポネクチンレベルに対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルクリゴラティフォリア(Curculigo latifolia)(C.latifolia)抽出物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病などの不均一な代謝異常(hetetogeneous metabolic disorder)は、インスリンを産生するβ細胞が、末梢組織、例えば、肝臓、脂肪、および筋肉組織などにおいて起こっている需要およびインスリン抵抗性に追随するのが不十分であることによって主に生じる。それは別として、座りがちな生活様式、不健康な食習慣、および遺伝学的素因の組合せが、この問題の主な理由である。状態が制御されない場合、これは、肥満症、心血管疾患、腎不全、および失明などの他の健康問題に至る場合がある。
【0003】
最近、ハイポアディポネクチン(hypoadiponectin)、インスリン抵抗性、およびグルコース取込み活性における欠陥が、2型の病因における主要な問題となっている。アディポネクチンは、脂肪細胞分化の間に脂肪組織によってもっぱら分泌されているサイトカインである。これは、代謝において、インスリン感受性、糖耐性、および脂質プロファイルの改善に役割を果たす。しかし、糖尿病の状況では、アディポネクチンレベルは減少し、これは、インスリン抵抗性および高インスリン血症の発生の一因となり得る。インスリン抵抗性は、末梢組織である標的組織中へのインスリンで媒介されるグルコースクリアランスとして定義することができる。正常なシナリオでは、インスリンは、細胞の表面でインスリン受容体タンパク質に結合することによって、これらの組織におけるグルコースの取込みを誘発する。次いでインスリンは、細胞内の一連のタンパク質を活性化し、GLUT4を細胞表面上に移動させて、血流から細胞内にグルコースを取り込むが、2型糖尿病の状態では、グルコース取込み活性を欠いており、グルコースは血流中に残る。これらの機序は、ハイポアディノペクチン(hypoadinopectin)、高インスリン血症、およびハイパーグルコセミア(hyperglucosemia)は、2型糖尿病の症状であることを強調する。
【0004】
民族植物(ethobotanicals)は、東アジア諸国、主に発展途上国において長年にわたって広く使用されている。その一方で、西洋諸国において、ハーブ系サプリメントの使用は、この数十年にわたって着実に増加している。しかし、これらの民族植物の効力について、報告されている科学的証拠は限られている。最近、糖尿病治療における民族植物の使用が活発に増加している。この新たな興味は、抗糖尿病剤としての潜在性を有する可能性のある植物を探索および研究するための、科学者の間での協同的な仕事に導いた。多くの研究により、いくつかの民族植物は、2型糖尿病患者における血糖値を改善し、また糖尿病に関連する長期の合併症を予防する可能性があることが示された。さらなる研究により、これらの植物成分中の抗糖尿病剤は、末梢組織におけるインスリン感作および/または膵臓β細胞からのインスリン分泌作用の特性を示すことが実証された。
【0005】
C.ラティフォリア(C. latifolia)は、西マレーシアで成長する無茎のハーブであり、その果実は、甘味料として原住民によって使用されている。興味深いことに、甘味は、単離されたタンパク質、すなわち、C.ラティフォリアの果実中に存在するクルクリンに由来する。このタンパク質は、甘味活性および味覚修飾活性の両方を示す。しかし、糖尿病患者のための抗糖尿病剤としても、人工甘味料としてもその潜在的な用途についての適切な研究はまったくなく、その理由は、C.ラティフォリアの果実が、スクロースより9000倍甘いことが示されているためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Levin et. al.(1989)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在では、いくつかの研究により、サッカリン、アスパルテーム、およびシクラメートなどの人工甘味料を摂取すると、副作用、例えば、心理学的な問題、精神障害、膀胱癌、心不全、および脳腫瘍などが生じることが示された。この問題を克服するために、天然源に由来する非炭水化物甘味料の探索により、人工甘味料を越える、多くの強烈に甘味のあるものが発見された。これらは天然であるため、これらは、アスパルテームおよび他の甘味料より安全となり得る。これは、糖尿病、肥満症、および他の代謝異常の潜在的な治療への新しいアプローチである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、クルクリゴラティフォリア(C. latifolia)抽出物であって、植物の異なる部分、例えば、果実、根および葉などから、個々に、およびこれらの任意の組合せで、抽出され、代謝異常疾患、例えば、糖尿病、肥満症、心血管、およびアテローム性動脈硬化症などを治療および予防するための薬剤として使用されることを特徴とする抽出物を提供する。
【0009】
本発明は、いくつかの新規の特徴、ならびに添付の説明および図面において以下に完全に記載および例示される部分の組合せからなり、細部における様々な変更を、本発明の範囲から逸脱することも、本発明のいずれの利点も犠牲にすることなく行うことができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、本明細書で以下に提供される詳細な説明、および添付の図面から完全に理解されるが、これらは、例としてのみ提供され、したがって本発明を限定するものではない。
【図1a】BRIN−BD11膵細胞株の生存能に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図1b】3T3−L1脂肪細胞株の生存能に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図1c】L6筋管細胞株の生存能に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図2】30分の処置後のインスリン分泌における、BRIN−BD11細胞に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図3a】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの果実抽出物の効果を示す図である。
【図3b】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの根抽出物の効果を示す図である。
【図3c】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉(熱水)抽出物の効果を示す図である。
【図3d】インスリンの存在および非存在下での、分化した3T3−L1脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉抽出物の効果を示す図である。
【図4a】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの果実抽出物の効果を示す図である。
【図4b】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの根抽出物の効果を示す図である。
【図4c】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉(熱水)抽出物の効果を示す図である。
【図4d】インスリンの存在および非存在下での、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対する、C.ラティフォリアの葉抽出物の効果を示す図である。
【図5】インスリンの非存在下で30分処置した後のアディポネクチン分泌における、分化した3T3−L1脂肪細胞に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図6】インスリンの存在下で30分処置した後のアディポネクチン分泌における、分化した3T3−L1脂肪細胞に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7a】高脂肪を与えた食餌および低用量のSTZで誘発された糖尿病ラットの体重に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7b】高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、空腹時血糖に対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7c】高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、インスリンレベルに対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【図7d】高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、アディポネクチンレベルに対する、C.ラティフォリア抽出物の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、クルクリゴラティフォリア(C.ラティフォリア)抽出物の使用に関する。以下、本明細書は、本発明の好適な実施形態によって本発明を説明する。しかし、本発明の好適な実施形態に説明を限定することは、単に本発明の考察を促進するためであることが理解されるべきであり、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な改変および等価物を考案することができることが想定される。
【0012】
より具体的には、本発明は、血糖、グルコース取込み活性、インスリンおよびアディポネクチンレベルを回復させるための方法に関する。治療方法は、C.ラティフォリア抽出物の投与を伴う。
【0013】
したがって、本発明の目的は、対象に有効量のC.ラティフォリア抽出物を投与することによって糖尿病を調節することができるC.ラティフォリア抽出物であって、この量のC.ラティフォリア抽出物により、糖尿病の症状が調節される抽出物を提供することである。
【0014】
上記目的を実現するために、インビトロおよびインビボでの広範な試験を行った。インビトロにおいて、有効量のC.ラティフォリア抽出物を、細胞株:BRIN−BD11、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞において試験した。その一方で、インビボにおいて、C.ラティフォリア抽出物を対象に経口投与した。
【0015】
したがって、これは、C.ラティフォリア抽出物で処置されたBRIN−BD11、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞毒性の方法であって、この量のC.ラティフォリア抽出物が、これらの細胞株に対して無毒性であることが見出される方法である。
【0016】
本発明の好適な実施形態は、C.ラティフォリア抽出物で処置された3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞株におけるグルコース取込みの方法であって、この量のC.ラティフォリア抽出物が、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞株におけるグルコース取込み活性を増大させることが見出される方法である。
【0017】
さらなる実施形態は、C.ラティフォリア抽出物で処置されたBRIN BD11細胞株内のインスリン、および3T3−L1脂肪細胞株内のアディポネクチンの分泌の方法であって、この量のC.ラティフォリア抽出物が、BRIN BD11細胞株内のインスリン、および3T3−L1脂肪細胞内のアディポネクチンの分泌を増大させることが見出される方法である。
【0018】
上記目的によれば、対象は、高脂肪食(HFD)、および低用量のストレプトゾトシン(STZ)の組合せによって糖尿病を発症させるように誘発された。
【0019】
糖尿病は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)である。糖尿病の症状は、高血糖、肥満症、インスリンレベルの増加、多食症、煩渇多飲症、および多尿症を示す群から選択することができる。
【0020】
なおさらに、対象は、1日当たり、体重1kg当たり約100mgである有効用量で経口投与された。より具体的には、対象は、30日間投与された。
【0021】
本発明の一実施形態は、有効量のC.ラティフォリア抽出物を投与することによって、糖尿病対象における血糖を低減する方法である。
【0022】
本発明の血糖値を回復させるための方法によれば、空腹時血糖および経口糖耐性(oral glucose tolerance)がモニターされる。
【0023】
C.ラティフォリア抽出物は、対象において、血糖値を低減し、インスリンおよびアディポネクチンレベルを増大させることが想定される。
【0024】
C.ラティフォリア抽出物は、対象における経口糖耐性を増加させることが、本試験でさらに想定される。
【0025】
なおさらに、C.ラティフォリア抽出物は、対象における食物摂取および体重を増加させたことが別に想定される。
【0026】
本発明によるC.ラティフォリア抽出物は、以下のプロセスに従って調製することができる。
【実施例1】
【0027】
植物抽出物の調製
C.ラティフォリアの果実抽出物
新鮮なC.ラティフォリアの果実を蒸留水で洗浄した。次いで、C.ラティフォリアの果実50gを、5lのビーカー中で蒸留水2lを用いて、室温で連続的に撹拌しながら24時間抽出した。この抽出物を、Whatman no.1濾紙に通して濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【0028】
C.ラティフォリアの葉抽出物
使用される2つの型の抽出物
【0029】
(1)熱水抽出物
C.ラティフォリアの葉の粉末5グラムを、沸騰(蒸留)水200ml中に入れた。次いでこれを熱源から取り出し、15分間煎じさせた。この懸濁液を、Whatman no.1濾紙を用いて濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【0030】
(2)通常水抽出物
C.ラティフォリアの葉の粉末5グラムを、蒸留水200mlを用いて抽出し、室温で連続的に撹拌しながら24時間浸漬した。この抽出物を、Whatman no.1濾紙に通して濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【0031】
C.ラティフォリアの根抽出物
C.ラティフォリアの根の粉末5グラムを、蒸留水200mlを用いて抽出し、室温で連続的に撹拌しながら24時間浸漬した。この抽出物を、Whatman no.1濾紙に通して濾過した。次いで濾液を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料は、使用するまで−80℃に維持した。
【実施例2】
【0032】
3T3−L1脂肪細胞、L6−筋管細胞、およびBRIN−BD11膵細胞株に対して試験したC.ラティフォリア抽出物のインビトロ細胞毒性試験
【0033】
細胞培養
5%のCO2の加湿雰囲気中で、37℃で、10%のウシ胎児血清、1%のペニシリン−ストレプトマイシン、および1%のグルタミンを補充したRPMI1640培地中で、BRIN−BD11細胞株を培養し、維持した。その一方で、3T3脂肪細胞およびL6筋管細胞を、ストレプトマイシン/ペニシリン抗生物質、および10%のウシ胎児血清を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で培養した。両細胞を、5%のCO2加湿雰囲気中で、37℃に維持した。培養フラスコから細胞を剥離するために、トリプシン−EDTAを使用して約80%のコンフルエンスで、2から3日毎に細胞を継代培養(subculture)した。血球計数器を使用して細胞計数を行った。分化のために、コンフルエンスになって4〜6日後に、2%のウシ胎児血清を含むDMEMにL6細胞を移した。分化の程度は、細胞の多核細胞化を観察することによって確認し、筋原細胞の筋管細胞への90%超の融合を考慮した。その一方で、3T3前脂肪細胞の分化をプレート内で増大させることによって、3日でコンフルエンスに到達させた。この時点(0日目)で、細胞を、分化培地(DMEM、10%のFBS、0.25μMのデキサメタゾン、0.25mMのIBMX、および1μg/mlのインスリン)に3日間切り替え、その間に1回培地交換を行った。3日目で、デキサメタゾンおよびIBMXを除去し、細胞上にインスリンをさらに4日間残し、培地を2日毎に交換した。その後、元の増殖DMEM中で細胞を維持し、使用するまで2〜3日毎に培地を交換した。細胞が90%超分化したプレートを、誘発して9日から12日後の間に実験に使用した。
【0034】
細胞生存能アッセイ
これまでに、生存能細胞を測定するために、様々な方法が開発され、導入されてきた。CellTiter 96(登録商標)水性非放射性細胞増殖アッセイ(Promega、Madison、WI)はこれらのうちの1つである。培地培養液100μl中で、2×105細胞/ウェルの濃度で、96ウェルプレート上に細胞を播種し、24時間付着させた。細胞単層を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄することによって、付着しなかった細胞を除去し、様々な濃度のC.ラティフォリアの果実、葉、および根の抽出物を含む新鮮な無血清培地中で、付着した細胞を72時間インキュベートした。次いで、テトラゾリウム塩溶液20μlを用いて、細胞を4時間インキュベートした。マイクロプレートリーダー(Opsys MR、Thermolabsystems)を使用して各ウェルの吸光度を490nmで測定し、ホルマゾン(formazon)生成物を定量化した。培養液中の生細胞数は、存在するホルマゾン生成物の量に比例する。
【0035】
図1a、1b、および1cはそれぞれ、BRIN BD11、3T3−L1脂肪細胞、およびL6筋管細胞の細胞株に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例3】
【0036】
インビトロでのインスリン分泌
BRIN−BD11細胞株を使用し、インスリン分泌を評価した。インスリン分泌活性は、24ウェルプレートを使用して決定した。10%のウシ胎児血清、1%の抗生物質、および1%のグルタミンを含有するするRPMI1640中で、2×105細胞/ウェルの濃度で細胞を播種し、一晩付着させた。次いで、クレブス−リンガー重炭酸塩緩衝液(KRB;115mMのNaCl、4.7mMのKCl、1.28mMのCaCl2、1.2mMのKH2PO4、1.2mMのMgSO4、24mMのNaHCO3、10mMのHepesを含まない酸、1g/lのウシ血清アルブミン、1.1mMのグルコース;pH7.4)で細胞を3回洗浄し、KRB緩衝液中で、37℃で40分間プレインキュベートした。次いで、陽性対照として、C.ラティフォリア抽出物およびグリベンクラミドの非存在および存在下で、KRB緩衝液1mlを用いて30分間細胞をインキュベートした。アリコートを各ウェルから取り出し、−20℃で貯蔵して、後にインスリンアッセイを行った。
【0037】
インスリンアッセイ
インスリン濃度を定量化するために、インビトロ試験におけるインスリン分泌からのアリコートを使用し、アッセイは、Mercodia Rat Insulin ELISA(Uppsala、スウェーデン)プロトコールを使用して行った。各ウェルの吸光度を、マイクロプレートリーダー(Opsys MR、Thermolabsystems)を使用して450nmで測定することによって、インスリン濃度を定量化した。
【0038】
図2は、30分の処置後のインスリン分泌における、BRIN−BD11細胞に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例4】
【0039】
2−デオキシ−D−[1−3H]グルコース(2−DOG)取込み
グルコース取込みを、完全に分化したL6筋管細胞および3T3脂肪細胞において測定した。クレブスリンガーHEPES緩衝液(pH7.4)で細胞を3回すすいだ後、インスリン(100nM)の存在および非存在下で、C.ラティフォリア抽出物を用いて処置した。この処置を30分間進行させた。30分後、1μCi/mlの2−デオキシ−D−[1−3H]グルコースを添加し、30分間インキュベートさせた。細胞を消化する前に、培地をバイアルに収集し、アディポネクチン分析のために−20℃で凍結させたが、この収集プロセス(collected process)は氷床上で行った。次いで、氷冷したKRH緩衝液でプレートを3回洗浄し、0.1%のSDSを用いて細胞を消化した。アリコートを使用し、シンチレーションカクテルとしてUltima Gold(商標)LLT(Perkin Elmer、Boston、MA、USA)を使用して、シンチレーションカウンター(Tri−Carb 2300TR、Perkin Elmer Life and Analytical Services、Boston、MA、USA)を使用することにより放射能を測定した。グルコース取込みは、壊変毎分(dpm)として表した。
【0040】
図3a、3b、3c、および3dはそれぞれ、分化した3T3脂肪細胞におけるグルコース取込み活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図4a、4b、4c、および4dはそれぞれ、分化したL6筋管細胞におけるグルコース取込み活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例5】
【0041】
アディポネクチンアッセイ
BioVision Rat Adiponectin ELISAアッセイ(Mountain View、USA)を使用し、C.ラティフォリア抽出物をスクリーニングして、分化した3T3脂肪細胞におけるアディポネクチン分泌を増強した。
【0042】
グルコース取込みアッセイから収集したアリコートを使用し、アッセイは、キットの手順に従って行った。
【0043】
図5は、インスリンの非存在下での分化した3T3脂肪細胞におけるアディポネクチン分泌活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図6は、インスリンの存在下での分化した3T3脂肪細胞におけるアディポネクチン分泌活性に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【実施例6】
【0044】
動物
合計42匹のオスのスプラーグドーリー(SD)ラット(160〜200g)を、この試験に使用した。これらは、ポリプロピレンケージ内に個々に収容し、12:12時間の明暗周期で、制御された室温(22±2℃)および湿度(55±5%)下に維持した。すべてのラットに、水および市販のラット用通常パレット(pallet)(NPD)への自由なアクセスを提供した後、周期に順応させた。動物の管理および使用についてのすべての実験プロトコールは、Faculty of Medicine and Health Sciences、Universiti Putra Malaysiaの動物管理使用委員会(ACUC)によって認可された。
【0045】
実験設計
フェーズI
高脂肪(HF)食餌の調製
HF食餌は、非特許文献1によって提供された組成物に基づいて処方した。これは、50%の通常のラット用固形飼料パレット、24%のトウモロコシ油(Mazolaブランド)、20%の全乳粉(NestleからのNesprayブランド)、および6%の糖の混合物から調製される。
【0046】
HFDを与え、低用量のSTZで処置した2型糖尿病ラットの開発
ラットは、食事のレジメン、すなわちNPDおよびHFDに基づいて2つの群に割り当て、これらに1カ月間給餌した。いずれかの食餌で1カ月の後、HFDを採用したラットを、一晩絶食させた後、ジエチルエーテルを用いて麻酔し、次いでSTZ(35mg/kg)を静脈内注射した。STZを注射した後、ラットに元の食餌(固形飼料または脂肪)および水を継続した。STZを注射して7日後に、糖尿病状態を、煩渇多飲症、多尿症によって、および空腹時血糖値を測定することによって同定し、170mg/dl超のグルコースレベルをこの試験に含めた。
【0047】
体重、食物消費量、および空腹時血糖を、毎週測定した。
【0048】
フェーズII
動物を、それぞれ3匹の動物の7つの群にランダムに分けた。
− 群1:正常な対照(通常のペレット食餌、非糖尿病、未処置)ラット
− 群2:糖尿病の対照(高脂肪を与えた食餌、糖尿病、未処置)ラット
− 群3:糖尿病の対照(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)ラット
− 群4:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、処置した)、体重当たりグリベンクラミド600μgで処置
− 群5:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)、体重当たりC.ラティフォリアの果実抽出物100mgで処置
− 群6:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)、体重当たりC.ラティフォリアの根抽出物100mgで処置
− 群7:糖尿病の試験ラット(高脂肪を与えた食餌、STZで誘発、糖尿病、未処置)、体重当たりC.ラティフォリアの根および果実の抽出物の組合せ100mgで処置
体重、食物消費量、および空腹時血糖を、毎週測定した。
【0049】
経口糖耐性試験(OGTT)
各ラットの空腹時血糖値を、ゼロ時間(水に自由にアクセスさせて一晩絶食させた後)に測定した。C.ラティフォリア抽出物またはグリベンクラミドを経口投与して30分後に、グルコース(体重1kg当たり2g)を経口投与した。血糖濃度は、試験試料を経口投与する直前、ならびに経口投与して30分、60分、および120分後に測定した。
【0050】
生物学的アッセイ
処置のすべてのフェーズの最後に血液試料を収集した。心穿刺によって血漿を収集して、様々な生物学的アッセイを行った。体重、食物摂取、血漿グルコース、インスリンおよびアディポネクチンレベルの変化などの物理学的および生化学的パラメータを得た。インスリンレベルは、標準物質としてラットインスリンを用いたInsulin ELISAキット(Mercodia AB、Uppsala、Sweeden)を使用して測定した。アディポネクチンレベルは、BioVision Rat Adiponectin ELISAアッセイ(Mountain View、USA)を使用して測定する。
【0051】
図7aは、高脂肪を与えた食餌および低用量のSTZで誘発された糖尿病ラットにおける体重に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図7bは、高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける空腹時血糖に対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【0052】
一方、図7cは、高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、インスリンレベルに対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示し、一方、図7dは、高脂肪を与えた食餌で誘発された糖尿病ラットにおける、アディポネクチンレベルに対するC.ラティフォリア抽出物の効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクリゴラティフォリア(Curculigo latifolia(C. latifolia))抽出物であって、前記抽出物は、植物の異なる部分、例えば、果実、根、および葉などから、個々に、ならびにこれらの任意の組合せで、抽出され、代謝異常疾患、例えば、糖尿病、肥満症、心血管、およびアテローム性動脈硬化症などを治療および予防するための薬剤として使用されることを特徴とする抽出物。
【請求項2】
新鮮で乾燥した果実、根、および葉が、蒸留水で抽出されることを特徴とする、請求項1に記載のC.ラティフォリア抽出物。
【請求項3】
治療および予防を必要とする対象における代謝異常疾患、例えば、糖尿病、肥満症、心血管、およびアテローム性動脈硬化症などを治療および予防するための医薬の製造における、有効量のC.ラティフォリア抽出物の使用。
【請求項4】
前記対象が糖尿病を罹患していることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記糖尿病がI型またはII型糖尿病であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記抽出物が経口投与または静脈内投与されることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項1】
クルクリゴラティフォリア(Curculigo latifolia(C. latifolia))抽出物であって、前記抽出物は、植物の異なる部分、例えば、果実、根、および葉などから、個々に、ならびにこれらの任意の組合せで、抽出され、代謝異常疾患、例えば、糖尿病、肥満症、心血管、およびアテローム性動脈硬化症などを治療および予防するための薬剤として使用されることを特徴とする抽出物。
【請求項2】
新鮮で乾燥した果実、根、および葉が、蒸留水で抽出されることを特徴とする、請求項1に記載のC.ラティフォリア抽出物。
【請求項3】
治療および予防を必要とする対象における代謝異常疾患、例えば、糖尿病、肥満症、心血管、およびアテローム性動脈硬化症などを治療および予防するための医薬の製造における、有効量のC.ラティフォリア抽出物の使用。
【請求項4】
前記対象が糖尿病を罹患していることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記糖尿病がI型またはII型糖尿病であることを特徴とする、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記抽出物が経口投与または静脈内投与されることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の使用。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図4d】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【公表番号】特表2012−506855(P2012−506855A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533124(P2011−533124)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/MY2009/000112
【国際公開番号】WO2010/050793
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511094510)ユニバーシティ プトラ マレーシア (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/MY2009/000112
【国際公開番号】WO2010/050793
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(511094510)ユニバーシティ プトラ マレーシア (1)
【Fターム(参考)】
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