説明

クレープ用離型剤

【構成】(A)油類、
(B)アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である官能基を有する化合物を含有する乳化剤、及び
(C)水
を含有することを特徴とするクレープ用離型剤であり、 好ましくは、(B)乳化剤の化合物が、アルキレンオキサイド付加物であるクレープ用離型剤。
【効果】 本発明のクレープ用離型剤は、公知のクレープ用離型剤に比べ、水への分散性に優れるクレープ用離型剤を得ることができる効果を付与し、しかも、クレープ用離型剤が長期間において分離しない保存安定性を有するという優れた性質を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレープ用離型剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紙のクレープ用離型剤(剥離剤)として種々のものが使用できることがわかっている(例えば特許文献1、2)。しかし、従来の離型剤は、油類と種々の乳化剤からなるものであり、クレープ塗工液を調製する際に必要となる水媒体への分散性が十分ではなかった。また従来の離型剤は引火する危険性があり、使用、保管および運搬時の安全性に問題があった。このため、水を予めクレープ用離型剤に混合することも考えられたが、予め混合したものをクレープ用離型剤として貯蔵しておくと、保存安定性が悪く離型剤が分離してしまうトラブルが起こるため、そのようなクレープ用離型剤が上市されることはなかった。
【特許文献1】特表2002−522632号(10頁)
【特許文献2】特表平10−504615号(5頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、保存安定性に優れるとともに水への分散性に優れるクレープ用離型剤を提供することにある。また、従来の離型剤に比べ引火する危険性が低く、使用、保管および運搬時の安全性に優れるクレープ用離型剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の乳化剤を用いることにより、水への分散性に優れるクレープ用離型剤を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)(A)油類、
(B)アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である官能基を有する化合物を含有する乳化剤、及び
(C)水
を含有することを特徴とするクレープ用離型剤、
(2)(B)乳化剤の化合物が、アルキレンオキサイド付加物である前記(1)のクレープ用離型剤、
(3) (B)乳化剤の化合物を少なくとも2種類以上使用する前記(1)又は(2)のクレープ用離型剤、
(4)(D)脂肪酸類をさらに含有する前記(1)〜(3)のクレープ用離型剤、
(5)25℃において粘度が10〜300mPa・sである前記(1)〜(4)のクレープ用離型剤
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクレープ用離型剤は、公知のクレープ用離型剤に比べ、水への分散性に優れるクレープ用離型剤を得ることができる効果を付与し、しかも、クレープ用離型剤が長期間にわたって分離しないという保存安定性に優れた性質を有している。さらに従来の離型剤に比べ引火する危険性が低く、使用、保管および運搬時の安全性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係るクレープ用離型剤は、(A)油類、
(B)アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数4〜20である官能基を有する化合物を含有する乳化剤、及び
(C)水
により得られる。また、これらに加えて、(D)脂肪酸類を加えることにより、離型剤としての離型効果が向上するため、好ましい。
【0008】
これらは、通常、
(A)油類は、50〜94質量%、好ましくは、70〜85質量%であり、
(B)アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である官能基を有する化合物を含有する乳化剤は、5〜49質量%、好ましくは、10〜27質量%であり、
(C)水は、1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%である。
これらに加えて、(D)脂肪酸類を使用する場合は、(A)〜(C)の合計100質量%に対して10質量%以下で使用することができ、好ましくは、5質量%以下で使用する。
【0009】
本発明に使用される(A)油類としては、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素、オレフィン系炭化水素等を含有する鉱物油、シリコン油等などの合成油、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、ヒマシ油、トウモロコシ油、紅花油、ナタネ油、ユーカリ油などの植物油、肝油、アザラシ油、イワシ油などの動物油を挙げることができる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。これらの中でも鉱物油、具体的には、パラフィン系炭化水素を含有していることが好ましい。
【0010】
本発明の(B)乳化剤となるアルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である官能基を有する化合物は、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である官能基を有していれば乳化剤としての機能を有している限り、他の官能基を有していてもよく、例えば、アルキルアリール基のようなものもアルキル基の部分を有しているため含まれる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。また、前記化合物のイオン性はアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性のいずれであってもよいが、ノニオン性が好ましい。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。
【0011】
ノニオン性乳化剤としては、例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミド、各種ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤(脂肪酸アルキレンオキサイドソルビタンエステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコール、ポリオキシアルキレン脂肪族アミン、ポリオキシアルキレン脂肪族メルカプタン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルアリールエーテル等)が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキル基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。
【0012】
カチオン性乳化剤としては、例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である長鎖アルキルアミン塩、ポリオキシアルキレンアミン、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリウム塩、アルキルホスホニウム塩、アルキルスルホニウム塩等が挙げられ、両性界面活性剤としては各種ベタイン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキル基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。
【0013】
アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアラルキルアリール硫酸エステル塩、アルキル─アリールスルホン酸塩及び各種スルホコハク酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキル基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。
【0014】
両性乳化剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミノカルボン酸塩系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも乳化分散性に優れるアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、さらにアルキレンオキサイドとして乳化剤1分子当たり1〜20モル付加していることが好ましい。アルキレンオキサイドのアルキル基の炭素数が2〜4であることが特に好ましい。
【0015】
アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である官能基を有する化合物の具体例としては、例えば、グリセロールモノステアレート、自己乳化型グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレン (20)ソルビタンヤシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン (6)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン (20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(160)ソルビタントリイソステアレート、ポリオキシエチレン(20) ソルビタンヤシ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(30)ソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン(40) ソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン(60) ソルビトールテトラオレエート等の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(5)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(7)ヤシアルコールエーテル、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(7)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(4)2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン(6)イソデシルエーテル、ポリオキシエチレン(8)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(15)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(4)イソステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(7)オレイルアミド、ポリオキシエチレン(4)モノオレエート、ポリオキシエチレン(4)モノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ヒマシ油、オレイン酸ジエタノールアマイド、ポリオキシエチレン(6)ポリオキシプロピレン(4)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレン(2)トリデシルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ポリオキシプロピレン(3)トリデシルエーテル、オレイン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン(4)ポリオキシプロピレン(12)オレイルエーテルのオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(3)ポリオキシプロピレン(9)のオレイン酸ジエステル等のノニオン性乳化剤、ポリオキシエチレン(5)ラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリル(7)アミン、ポリオキシエチレンプロピレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−シクロヘキシルアミン、1−ヒドロキシエチル−1−エチル−2−オレイルイミダゾリンエチル硫酸塩、ジメチルジラウリルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテルリン酸カリウム等のアニオン性乳化剤、2−オレイル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等の両性乳化剤などが挙げられる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。
【0016】
本発明の(B)乳化剤は、少なくとも2種類以上使用することが好ましい。少なくとも2種類以上使用することで、貯蔵時の多層分離を起こさず、水への希釈分散性に優れたクレープ用離型剤を容易に調製できる。さらに好ましい態様として少なくとも3種類以上使用することができる。
【0017】
本発明に使用される(C)水は、蒸留水やイオン交換水のようなものだけでなく、通常の工業用水も用いることができるが、そのイオン濃度が高い場合には、クレープ用離型剤が分離することがあるため、できるだけイオン濃度は低いことが好ましい。
【0018】
本発明に使用される(D)脂肪酸類は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、 リシノレン酸 などの不飽和脂肪酸を挙げることができ、これらのナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩も使用することができる。これらの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を併用することもできる。これらの中でも不飽和脂肪酸が好ましく、具体的には、オレイン酸、リノール酸が好ましい。なお、脂肪酸類は、前記脂肪酸のエステル類は含まず、前記脂肪酸エステル類は油類に分類される。
【0019】
本発明のクレープ用離型剤は、前記(A)〜(C)または、前記(A)〜(C)にさらに(D)などを加えたものを攪拌混合し得られる。攪拌混合する温度および時間は、配合物を均一に混合できればよく特に制限されないが、通常5〜60℃および10分〜5時間である。また、攪拌混合設備についても特に制限はないが、通常羽根型攪拌機、ラインミキサーなどを使用する。
【0020】
調製されたクレープ用離型剤の粘度(B型粘度計を用いて25℃にて測定)は、通常、10〜500mPa・sであり、10〜300mPa・sであることが好ましい。10mPa・s未満では、造膜性が悪く十分な離型効果が得られない場合があり、500mPa・sを越えると水への希釈分散性が劣り、操業の悪化に繋がる恐れがある。
【0021】
また、本発明のクレープ用離型剤は、クレープ用接着剤(コーティング剤)やクレープ助剤(モディファイヤー)などとともに使用することにより、例えば、ティシュペーパー等の家庭紙の製造工程で、すなわちヤンキードライヤー表面に接着した紙匹をヤンキードライヤー表面からドクターブレードで容易に剥離させることで優れたクレープを付与することができる。クレープ用離型剤としての使用方法としては、パルプスラリーに添加する方法、ヤンキードライヤーの前方で湿紙にスプレーする方法、ヤンキードライヤーの表面に直接スプレーする方法、及びこれら前記方法を組み合わせて行う方法がある。ヤンキードライヤーの表面に直接スプレーした方が離型剤としての効果が得られやすく、好ましい。
【0022】
通常、離型剤は、必要に応じてクレープ用接着剤やクレープ用接着助剤とともに使用され、同時または順次希釈混合した後、ドライヤー表面あるいは湿紙ウェブに対してスプレーされる。希釈の順番は特に限定されないが、接着剤、離型剤、接着助剤の順に希釈混合したほうが均一な分散液が得られやすく好ましい。
【0023】
クレープ用接着剤は、ポリアミドポリアミン・エピハロヒドリン樹脂、ポリアミドポリアミンポリ尿素・エピハロヒドリン樹脂及びポリアミン・エピハロヒドリン樹脂から選ばれる少なくとも1種類からなる樹脂であることが好ましい。
【0024】
クレープ用接着助剤は、リン酸塩類、硫酸塩類、カルボン酸塩類などが挙げられる。特にリン酸塩類が好ましい。
【0025】
クレープ用離型剤をスプレーする場合は、繊維ウェブの面積に対して、離型剤が0.01〜500mg/m、特に0.1〜300mg/mとなるようにドライヤー表面あるいは湿紙ウェブに対して使用することが好ましい。クレープ用離型剤を内添する場合は、パルプの乾燥質量当たり通常0.01〜5固形分質量%、好ましくは0.05〜3固形分質量%を使用することができる。
【0026】
本発明のクレープ用離型剤を適用する紙は、硫酸アルミニウムを用いる酸性系、または、硫酸アルミニウムを全く用いないかあるいは少量用いる中性系のいずれのパイプスラリーを用いても良い。また、パルプスラリーに対して、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、アルケニルもしくはアルキルコハク酸無水物系サイズ剤などを添加しても良い。サイズ剤の添加方法としては、例えば、パルプスラリーにサイズ剤を添加した後、湿潤紙力増強剤を添加する方法、湿潤紙力増強剤を添加した後、サイズ剤を添加する方法、サイズ剤に湿潤紙力増強剤を希釈して予め混合した後、添加する方法などが挙げられる。また、他に、パルプスラリーにサイズ定着剤、乾燥紙力増強剤、消泡剤、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン等の充填剤、pH調整剤、染料、蛍光増白剤等を適宜含有せしめてもよい。
【0027】
前記紙のパルプ原料としては、クラフトパルプ、及びサルファイトパルプの晒並びに未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ、及びサーモメカニカルパルプ等の晒並びに未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙及び脱墨古紙等の古紙パルプを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0028】
また、前記原料パルプからなるパルプスラリーに、填料、染料、乾燥紙力増強剤、歩留り向上剤、及びサイズ剤等の添加剤も必要に応じて使用しても良い。更にサイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、及びキャレンダー等で、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリルアミド系ポリマー等の表面紙力増強剤、表面サイズ剤、染料、コーティングカラー及び防滑剤等を必要に応じて塗布しても良い。
【0029】
本発明のクレープ用離型剤を用いて製造される紙としては、ティシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、ナプキン原紙のような衛生用紙等のクレープ処理が必要となる紙であればよい。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、各例中、%は特記しない限りすべて質量%である。
【0031】
実施例1
撹拌機を備えた200mLのフラスコに(A)油類としてパラフィン系炭化水素の鉱物油(密度0.86g/cm)を76部、(B)アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数4〜20である官能基を有する化合物を含有する乳化剤としてポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノオレエートを20部、(C)水としてイオン交換水を4部、を混合攪拌することで分散させることによりクレープ用離型剤Aを得た。得られたクレープ用離型剤Aの25℃での粘度は118mPa・sだった。
【0032】
実施例2〜8、比較例1〜3
表1の(A)油類、(B)乳化剤、(C)水の種類と量及び必要に応じて表1の(D)脂肪酸類の種類と量を用いる以外は実施例1と同様にして実施例用のクレープ用離型剤B〜H(実施例2〜8)及び比較例用のクレープ用離型剤a〜c(比較例1〜3)を得た。また、得られたクレープ用離型剤B〜H(実施例2〜8)及びクレープ用離型剤b〜c(比較例2〜3)の粘度も表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1中、
(註1)のアルキレンオキサイド化合物Iは、
ポリオキシエチレン(4)ポリオキシプロピレン(12)オレイルエーテルのオレイン酸エステル:
CH(CH)CH=CH(CH)CHO(EO)(PO)12OCO(CHCH=CH(CHCHに相当する。
(註2)は乳化剤ではあるが、本発明の(B)乳化剤に該当しないことを示す。
(註3)はサンプルが2層分離し、粘度を測定できなかったことを示す。
「−」は使用しなかったことを示す。
【0035】
<クレープ用離型剤としての静置安定性の評価試験>
実施例1〜8、比較例1〜3で得られた実施例用のクレープ用離型剤A〜H(実施例1〜8)及び比較例用のクレープ用離型剤a〜c(比較例1〜3)を25℃で1ヶ月間静置したときの安定性を調べた。調べた結果を表2にまとめる。評価は、クレープ用離型剤が、25℃で1ヶ月間静置したとき目視で多層分離していない場合を○、多層分離したものと認められる場合を×と評価した。
【0036】
<分散性の評価試験>
30ミリリットルのビーカーにクレープ剤CA6004(星光PMC株式会社製・クレープ用接着剤)の1%水溶液20ミリリットルを調製し、調製した溶液を回転数300rpm(回転子30×直径7mm)で攪拌しながら冷却し、使用液の温度を5℃にし、そのまま攪拌をしつつ、水溶液に添加したクレープ用離型剤A〜H(実施例1〜8)及び比較例用のクレープ用離型剤a〜c(比較例1〜3)を100マイクロリットル添加して目視にて均一になるまでの時間を10秒単位(10未満は切り上げ)で120秒まで測定した。数値の低いほど分散性に優れることを示す。結果を表2に示す。また、前記の水溶液の温度を、25℃の温度に調整する以外は同様にして測定を行った結果も表2に示す。
【0037】
<剥離効果の評価試験>
クレープ剤CA6004(星光PMC株式会社製・クレープ用接着剤)の0.1%とクレープ用離型剤A〜H(実施例1〜8)及び比較例用のクレープ用離型剤a〜c(比較例1〜3)0.1%、クレープ用接着助剤としてリン酸水素二アンモニウム0.02%を含む水溶液のサンプル液を噴霧器でアルミ箔(3×11cm)に0.1gスプレーし、ホットプレート上で加熱乾燥させた。サンプルが乾燥したアルミ箔の面に湿紙(3×12cm)を貼り合わせ、120℃、3分−100kgf/cmで熱プレスし、湿紙の余分な水分を取り除くと同時にアルミ箔と紙を接着させた。アルミ箔から紙を剥離するときの剥離強度をJ.TAPPI−19−(2)−B法に準拠して測定し、クレープ用離型剤を含まないクレープ剤CA6004(星光PMC株式会社製・クレープ用接着剤)0.1%単独のスプレー液での剥離強度を1とした指数で表2に示す。数値が1より小さいほど離型剤の剥離効果が大きいことを示す。なお、剥離効果が0.1未満の場合は剥離効果が強過ぎて、クレーピングの操業性に支障をきたす恐れがあることから、0.1以上であることが好ましい。
【0038】
<引火点の測定>
日本工業規格JIS K 2265に従ってクリーブランド開放式引火点測定器で測定した。なお、予期引火点以下55℃まで毎分14〜17℃の割合で、予期引火点以下28℃から引火点に達するまで毎分5.5±0.5℃の割合で温度を上昇できず、試験サンプルが試料カップより溢れでて測定不能となった場合は”引火点なし”とした。
【0039】
【表2】

【0040】
表2中、離型剤bの<0.1は紙が接着しなかったこと、離型剤aの(註4)はサンプルが2層分離したため測定しなかったこと、引火点の欄の「なし」は引火点がなかったことを示す。
【0041】
表2に示す結果から明らかな通り、本発明のクレープ用離型剤である実施例1〜8を用いたものは、剥離効果が0.4〜0.7と適度な強さを示しており、クレーピング用離型剤として適しているとともに、本発明のクレープ用離型剤が水への分散性に優れることが判る。また、従来のクレープ用離型剤と異なり引火する危険性が低いため、離型剤の使用、保管および運搬などに伴う制限が著しく軽減できるというメリットがあり、実用上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)油類、
(B)アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4〜20である官能基を有する化合物を含有する乳化剤、及び
(C)水
を含有することを特徴とするクレープ用離型剤。
【請求項2】
(B)乳化剤の化合物が、アルキレンオキサイド付加物であることを特徴とする請求項1に記載のクレープ用離型剤。
【請求項3】
(B)乳化剤の化合物を少なくとも2種類以上使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のクレープ用離型剤。
【請求項4】
(D)脂肪酸類を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクレープ用離型剤。
【請求項5】
25℃において粘度が10〜300mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクレープ用離型剤。

【公開番号】特開2008−19525(P2008−19525A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191955(P2006−191955)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】