説明

クレーンのフックブロック及びそのフックブロックを備えたクレーン並びにそのフックブロックで発電する発電方法

【課題】巻き上げ及び巻き下げにより発電して照明灯を点灯させることが可能なクレーンのフックブロック及びそのフックブロックで発電する発電方法を提供する。
【解決手段】クレーン1のフックブロック2は、シーブ7と、枠体8と、シーブ7に取り付けられたマグネット9と、マグネット9に近接するように枠体8に取り付けられたコイル10と、コイル10に誘起した交流電流を直流電流に変換するための整流器3と、整流器3により変換された直流電流にて充電される蓄電池4と、蓄電池4に接続された照明灯5と、を備える。フックブロック2を巻き上げ及び巻き下げる際のシーブ7の回転に伴うマグネット9の移動により、コイル10で誘起された交流電流は、整流器3で直流電流に変換されて蓄電池4に供給され、蓄電池4を充電する。蓄電池4に充電された電力によって適時に照明灯5を点灯させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻き上げ及び巻き下げにより発電可能なクレーンのフックブロック及びそのフックブロックを備えたクレーン並びにフックブロックで発電する発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンのオペレーターは、玉掛け時や揚重時において、吊り荷の状態及びフックブロックの位置を、肉眼による視認やブームの先端に取り付けられたカメラにて取得された映像により確認している。特に、夜間は、吊り荷やフックブロックに対して照明灯を照射させて、肉眼やカメラの映像でこれらを確認している。
夜間に吊り荷やフックブロックを照明灯で照射する方法の一つとして、例えば、構築予定構造物内に照明灯を高さ方向に複数台設置し、構築予定構造物の外方に向かって点灯させて、構築予定構造物の側方を昇降する吊り荷及びフックブロックを照射させることにより、肉眼やカメラの映像で確認する方法がある。
また、特許文献1には、クレーンのブームの先端に照明灯を垂下するように取り付けて、吊り荷及びフックブロックを照射する照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−003151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した確認方法には、それぞれ次のような問題点があった。
超高層構築予定構造物用のクレーンにおいては、オペレーターの位置やブームの先端からフックブロックまでの距離が長いため、昼間でも肉眼やカメラの映像では吊り荷及びフックブロックを確認することができない。
また、超高層構築予定構造物に照明灯を高さ方向に複数台設置し、点灯させる方法では、設備投資費及び光熱費が莫大となり、不経済である。さらに、超高層構築予定構造物内から複数の照明灯で外方を照射すると、周辺環境へ悪影響を及ぼす可能性がある。
また、超高層構築予定構造物用のクレーンのブームの先端に照明灯を垂下するように設置して下方を照射しても、地上付近まで照明灯の光りが届かないので、吊り荷及びフックブロックを確認することができない。
【0005】
そこで、本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、巻き上げ及び巻き下げにより発電して照明灯を点灯させることが可能なクレーンのフックブロック及びそのフックブロックで発電する発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ロープが巻回され、前記ロープの巻き取り及び繰り出しにより回転するシーブと、前記シーブを回転可能に支持する枠体と、前記枠体に吊り下げられたフック部と、を備えたクレーンのフックブロックであって、
前記シーブに取り付けられたマグネットと、
前記枠体の前記マグネットと所定の間隔で対向する位置に取り付けられたコイルと、
前記コイルに誘起した交流電流を直流電流に変換するための整流器と、
照明灯と、を備え、
前記フックブロックを巻き上げ及び巻き下げる際の前記シーブの回転に伴う前記マグネットの移動によって前記間隔が変化することにより、前記コイルに電流を誘起させるとともに、この電流によって前記照明灯を点灯させることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、フックブロックの巻き上げ及び巻き下げによりコイルに誘起した電流にて照明灯を点灯させることができる。そして、照明灯で吊り荷及びフックブロックを照射することにより、超高層構築予定構造物用のクレーンでもフックブロックを昇降させる際に、昼夜共に、吊り荷及びフックブロックの位置を確認することができる。したがって、安全に昇降作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明において、前記コイルに誘起した電流にて充填される蓄電池を更に備えることとしてもよい。
【0009】
本発明によれば、フックブロックを巻き上げ及び巻き下げる時だけでなく、適時に照明灯を点灯させることができる。
【0010】
また、本発明のクレーンは、上述したフックブロックを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、ロープが巻回され、前記ロープの巻き取り及び繰り出しにより回転するシーブと、前記シーブを回転可能に支持する枠体と、前記枠体に吊り下げられたフック部と、前記シーブに取り付けられたマグネットと、前記枠体の前記マグネットと所定の間隔で対向する位置に取り付けられたコイルと、前記コイルに誘起した交流電流を直流電流に変換するための整流器と、照明灯と、を備えたクレーンのフックブロックを用いる発電方法において、
前記フックブロックを巻き上げ及び巻き下げる際の前記シーブの回転に伴う前記マグネットの移動によって前記間隔が変化することにより、前記コイルに電流を誘起させるとともに、この電流によって前記照明を点灯させることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、フックブロックの巻き上げ及び巻き下げによりコイルに誘起した電流にて照明灯を点灯させることができる。そして、照明灯で吊り荷及びフックブロックを照射することにより、超高層構築予定構造物用のクレーンでもフックブロックを昇降させる際に、昼夜共に、吊り荷及びフックブロックの位置を確認することができる。したがって、安全に昇降作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、巻き上げ及び巻き下げにより発電して照明灯を点灯させることが可能なクレーンのフックブロック及びそのフックブロックで発電する発電方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るクレーンのフックブロックを示す図である。
【図2】図1のA部の拡大側面図である。
【図3】整流器、蓄電池、照明灯及びコイルの接続状態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るクレーン1のフックブロック2を示す図である。また、図2は、図1のA部の拡大側面図であり、図3は、整流器3、蓄電池4、照明灯5及びコイル10の接続状態を示す回路図である。
図1及び図2に示すように、クレーン1のフックブロック2は、ロープ6が巻回され、当該ロープ6の巻き取り及び繰り出しにより回転するシーブ7と、シーブ7を回転可能に支持する枠体8と、シーブ7に取り付けられたマグネット9と、マグネット9に近接するように枠体8に取り付けられたコイル10と、コイル10に誘起した交流電流を直流電流に変換するための整流器3と、整流器3により変換された直流電流にて充電される蓄電池4と、蓄電池4に接続された照明灯5と、枠体8に吊り下げられたフック部11と、を備える。
【0017】
マグネット9は、シーブ7の側面に等角度おきに複数取り付けられており、コイル側端部9aの極性がすべてN極(又はS極)となるように配置されている。
【0018】
コイル10は、枠体8のマグネット9と所定の間隔で対向する位置にそれぞれ取り付けられており、シーブ7の回転に伴うマグネット9の移動によって上記間隔が変化することにより、電流が誘起する。
各コイル10は、コイル10と同数設けられた整流器3にそれぞれ接続されている。
【0019】
図3に示すように、整流器3は、4個のダイオード3aをブリッジ接続してなる一般的な構成である。この整流器3は、複数のコイル10に誘起される交流電流の位相の不一致によって打ち消しが生じるのを防止するとともに、蓄電池4に充電するために必要となる直流電流を得るものであり、各整流器3はすべて蓄電池4に接続されている。
【0020】
フックブロック2を巻き上げ及び巻き下げる際のシーブ7の回転に伴うマグネット9の移動により、コイル10で誘起された交流電流は、整流器3で直流電流に変換されて蓄電池4に供給され、蓄電池4を充電する。
【0021】
蓄電池4は、スイッチ12を介して照明灯5に接続されている。照明灯5は、吊り荷及びフック部11をそれぞれ照射できるように、枠体8の下部に2台取り付けられている。
【0022】
スイッチ12を作動させることにより、蓄電池4に充電された電力によって適時に照明灯5を点灯させることができる。
【0023】
フックブロック2の巻き上げ及び巻き下げによって生ずる電力量は、コイル10の巻き線量及びマグネット9の種類を選択することによって調節可能であり、例えば、コイル10の巻き線量を増加したり、コバルト、ストロンチューム、ネオジウム等を含む希土類系マグネット9を用いたりすれば、電力量を増加させることができる。これによって、照明灯5の数を増加させたり、その他の電気機器、例えば、警報用サイレンを取り付けて作動させたりすることができる。
【0024】
以上説明した本実施形態におけるクレーン1のフックブロック2によれば、フックブロック2の巻き上げ及び巻き下げによりコイル10に誘起した電流にて蓄電池4を充電することができる。
また、蓄電池4を備えているので、適時に照明灯5を点灯させることができる。そして、照明灯5で吊り荷及びフック部11を照射することにより、超高層構築予定構造物のクレーン1でもフックブロック2を昇降させる際に、昼夜共に、吊り荷及びフック部11の位置を確認することができる。したがって、安全に昇降作業を行うことができる。
【0025】
また、蓄電池4を備えているので、フックブロック2を巻き上げ及び巻き下げる時だけでなく、適時に照明灯5を点灯させることができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、整流器3を蓄電池4に接続し、この蓄電池4を照明灯5に接続した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、整流器3を照明灯5に直接、接続して蓄電池4を用いなくてもよい。これにより、フックブロック2が昇降している時だけ照明灯5が点灯することとなる。係る場合においては、蓄電池4が不要なので、蓄電池4を取り付けるためのスペースを確保できない小型のフックブロック2にも本発明を適用することができる。
【0027】
なお、本発明のフックブロック2は、天井クレーン、ジブクレーン、タワークレーン、橋形クレーン等の各種クレーンに適用可能であり、クレーンの形式は問わない。
【符号の説明】
【0028】
1 クレーン
2 フックブロック
3 整流器
3a ダイオード
4 蓄電池
5 照明灯
6 ロープ
7 シーブ
8 枠体
9 マグネット
9a コイル側端部
10 コイル
11 フック部
12 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープが巻回され、前記ロープの巻き取り及び繰り出しにより回転するシーブと、前記シーブを回転可能に支持する枠体と、前記枠体に吊り下げられたフック部と、を備えたクレーンのフックブロックであって、
前記シーブに取り付けられたマグネットと、
前記枠体の前記マグネットと所定の間隔で対向する位置に取り付けられたコイルと、
前記コイルに誘起した交流電流を直流電流に変換するための整流器と、
照明灯と、を備え、
前記フックブロックを巻き上げ及び巻き下げる際の前記シーブの回転に伴う前記マグネットの移動によって前記間隔が変化することにより、前記コイルに電流を誘起させるとともに、この電流によって前記照明灯を点灯させることを特徴とするクレーンのフックブロック。
【請求項2】
前記コイルに誘起した電流にて充電される蓄電池を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のクレーンのフックブロック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフックブロックを備えることを特徴とするクレーン。
【請求項4】
ロープが巻回され、前記ロープの巻き取り及び繰り出しにより回転するシーブと、前記シーブを回転可能に支持する枠体と、前記枠体に吊り下げられたフック部と、前記シーブに取り付けられたマグネットと、前記枠体の前記マグネットと所定の間隔で対向する位置に取り付けられたコイルと、前記コイルに誘起した交流電流を直流電流に変換するための整流器と、照明灯と、を備えたクレーンのフックブロックで発電する発電方法において、
前記フックブロックを巻き上げ及び巻き下げる際の前記シーブの回転に伴う前記マグネットの移動によって前記間隔が変化することにより、前記コイルに電流を誘起させるとともに、この電流によって前記照明を点灯させることを特徴とする発電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−102168(P2011−102168A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257406(P2009−257406)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000198363)IHI運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】